特許第6626500号(P6626500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626500
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】アルミナ焼結体及び光学素子用下地基板
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/115 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   C04B35/115
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-517974(P2017-517974)
(86)(22)【出願日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2016064095
(87)【国際公開番号】WO2016182011
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-98525(P2015-98525)
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-11190(P2016-11190)
(32)【優先日】2016年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 潔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 守道
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−112912(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082396(WO,A1)
【文献】 特開2001−064075(JP,A)
【文献】 特開2006−310272(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0039085(US,A1)
【文献】 HING, P.,The Influence of Some Processing Parameters on the Optical and Microstructural Properties of Sintered Aluminas,SCIENCE of CERAMICS,1976年 1月,Vol.8,PP.159-172,全17頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/10−35/119
G01N 23/207
G02B 1/02
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射したときの2θ=20°〜70°の範囲におけるX線回折プロファイルを用いてロットゲーリング法により求めたc面配向度が5%以上の面を有し、
Mg,Fを含み、Mg/Fの質量比が0.2〜3.5、Mgの含有量が100〜1500質量ppmであり、
結晶粒径が15〜200μmであり、
縦1340.4μm×横1607.0μmの視野を倍率500倍で撮影した写真を目視したときの直径1μm以上の気孔が50個以下である、
アルミナ焼結体。
【請求項2】
前記結晶粒径が20〜200μmである、
請求項1に記載のアルミナ焼結体。
【請求項3】
0.5mm厚の前記アルミナ焼結体の300〜1000nmにおける直線透過率が60%以上である、
請求項1又は2に記載のアルミナ焼結体。
【請求項4】
前記直線透過率が80%以上である、
請求項3に記載のアルミナ焼結体。
【請求項5】
Fの含有量が200ppm以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミナ焼結体。
【請求項6】
Mg,C,F以外の不純物元素の含有量が50ppm以下である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミナ焼結体。
【請求項7】
結晶粒径が20〜100μmである、
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルミナ焼結体。
【請求項8】
ロッキングカーブ測定におけるXRC半値幅が15°以下である、
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルミナ焼結体。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルミナ焼結体からなる光学素子用下地基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ焼結体及び光学素子用下地基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミナ焼結体として透明なものが知られている。例えば、非特許文献1では、MgOを加えたアルミナ懸濁液に磁場をかけてスリップキャストを行い、真空中1850℃で5時間焼成することにより、配向した粒子を備えた透明なアルミナ焼結体を作製している。例えば、12テスラの磁場をかけて作製したアルミナ焼結体は、波長600nmにおける直線透過率が70.3%であり、配向度も97%と高い。また、8テスラの磁場をかけて作製したアルミナ焼結体は、波長600nmにおける直線透過率が56%程度であり、配向度は78%とやや高い。更に、磁場が6テスラ、4テスラと低下するのに伴い、直線透過率も配向度も低下している。これらの結果から、磁場の強さが増すにつれて直線透過率や配向度が高くなると結論づけている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ceramics International vol.38, pp5557-5561(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1では、12テスラという高磁場をかけないと、配向度が十分高くならず直線透過率が60%以上のアルミナ焼結体を得ることができなかった。このような高磁場をかけながらスリップキャストを行う装置は、現在のところ限られた施設にしか存在しない。更に、得られた焼結体には多くの気孔がある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、気孔が少なく直線透過率が高いアルミナ焼結体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアルミナ焼結体は、X線を照射したときの2θ=20°〜70°の範囲におけるX線回折プロファイルを用いてロットゲーリング法により求めたc面配向度が5%以上の面を有し、Mg,Fを含み、Mg/Fの質量比が0.05〜3500、Mgの含有量が30〜3500質量ppmであり、結晶粒径が15〜200μmであり、縦1340.4μm×横1607.0μmの視野を倍率500倍で撮影した写真を目視したときの直径1μm以上の気孔が50個以下である。本発明のアルミナ焼結体は、厚み0.5mmとしたとき、波長300nm〜1000nmにおける直線透過率が60%以上であり、透明性に優れる。これまでは非特許文献1にあるような高配向とした場合にのみ高い直線透過率が得られると考えられてきた。にもかかわらず、本願発明によれば、c面配向度が5%以上であれば高い直線透過率を有するアルミナ焼結体が得られる。このようにc面配向度が非特許文献1に記載されているような高配向でなくても透明性に優れる理由は定かではないが、Mg,Fを適量含んでいることや結晶粒径の下限値が15μmと大きいこと、直径1μm以上の気孔の数が少ないことなどが複合的に寄与している結果であろうと考えられる。
【0007】
本発明の光学素子用下地基板は、上述した本発明のアルミナ焼結体からなる基板である。光学素子としては、例えばLED、LD、太陽電池、センサ、フォトダイオード、光学部材、窓材等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】TGG法でアルミナ焼結体を作製する工程の模式図。
図2】発光素子10の概略断面図。
図3】横型発光素子20の概略断面図。
図4】縦型発光素子30の製造工程を示す概略断面図。
図5】板状アルミナ粒子の模式図であり、(a)は平面図、(b)は正面図。
図6】アルミナ焼結体のサンプルの外観写真。
図7】チルト角の説明図。
図8】ロッキングカーブ測定の説明図。
図9】高倍率写真を連続的な写真となるように並べた様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について以下に説明する。本実施形態のアルミナ焼結体は、X線を照射したときの2θ=20°〜70°の範囲におけるX線回折プロファイルを用いてロットゲーリング法により求めたc面配向度が5%以上の面を有し、Mg,Fを含み、Mg/Fの質量比が0.05〜3500、Mgの含有量が30〜3500質量ppmであり、結晶粒径が15〜200μmであり、縦1340.4μm×横1607.0μmの視野を倍率500倍で撮影した写真を目視したときの直径1μm以上の気孔が50個以下のものである。
【0010】
c面配向度は、XRD装置(例えばリガク製、RINT−TTR III)を用いてアルミナ焼結体の所定の断面(例えばc面に平行な断面)を平滑に研磨加工した後、その面に対してX線を照射したときの2θ=20°〜70°の範囲におけるX線回折プロファイルを用いて、以下の式により算出する。c面とはアルミナの(006)面である。式中、Pは本実施形態のアルミナ焼結体のXRDから得られた値であり、P0は標準α−アルミナ(JCPDSカードNo.46−1212)から算出された値である。本実施形態のアルミナ焼結体は、c面配向度が5%以上の高配向なアルミナ焼結体である。
【0011】
【数1】
【0012】
Mg,Fの含有量は、MgについてはICP(誘導結合プラズマ)発光分析、FについてはD−SIMS(ダイナミック二次イオン質量分析)で測定する。Mg/Fの質量比は0.05〜3500が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.2〜3.5が更に好ましい。Mgの含有量は、30〜3500質量ppmが好ましく、100〜2000質量ppmがより好ましく、100〜1500質量ppmが更に好ましい。Mgの添加形態としては、MgOやMgF2、MgNO3などが挙げられる。MgとFの含有量を上記の範囲とすることで、高い直線透過率を得ることができる。また、直線透過率を高める観点では、Mg,C,F以外の不純物元素は、各50ppm以下であることが好ましく、各10ppm以下であることがより好ましい。Cについては100ppm以下であることが好ましく、70ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが更に好ましい。これらの含有量は、例えば、C,Sについては燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法、Nについては不活性ガス融解−熱伝導度法、Hについては不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法、それ以外の元素(主にSi,Fe,Ti,Na,Ca,K,P,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Pb,Bi,Li,Be,B,Cl,Sc,Ga,Ge,As,Se,Br,Rb,Sr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Hg,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)についてはICP発光分析やICP質量分析で測定することができる。一方、焼結体の曲げ強さの観点ではFの含有量は少ない方が好ましく、200質量ppm以下が好ましい。
【0013】
結晶粒径は、焼結粒径の平均値であり、15〜200μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、20〜150μmがより好ましく、20〜100μmが更に好ましい。結晶粒径は、アルミナ焼結体の所定の断面(例えばc面に平行な断面)を鏡面研磨した面にサーマルエッチング処理を施したあとその面の画像を撮影し、得られた画像において矩形の視野範囲を設定し、矩形の視野範囲に2本の対角線を引いたときに対角線が交わる全ての粒子に対し、粒子の内側の線分の長さを求め、それを平均した値に1.5を乗じた値とした。
【0014】
直径1μm以上の気孔の数は、以下のようにしてカウントする。すなわち、本実施形態のアルミナ焼結体の任意の断面をイオンミリングによって研磨したあと、その研磨した断面を走査型電子顕微鏡にて倍率500倍で調べて、気孔の数をカウントする。例えば、研磨した断面を走査型電子顕微鏡にて縦223.4μm×横321.4μmの視野を500倍に拡大した写真を、縦6枚分、横5枚分(縦1340.4μm×横1607.0μm)で連続的な写真となるように30枚撮影し、その30枚について気孔の数を目視でカウントする。イオンミリングによって研磨するのは、断面から脱粒が生じないからである。なお、イオンミリングを用いる研磨装置としては、例えば、日本電子製のクロスセクションポリッシャが挙げられる。倍率500倍に拡大した写真では気孔は黒点として現れるため、目視で十分認識することができる。直径1μm以上の気孔の数は、50個以下が好ましく、20個以下がより好ましい。この気孔の数が少ないほど直線透過率が高くなる傾向がある。
【0015】
本実施形態のアルミナ焼結体は、該アルミナ焼結体から取り出した厚み0.5mmの試料の波長300〜1000nmにおける直線透過率が60%以上になるものが好ましい。直線透過率は、分光光度計(例えばPerkin Elmer製、Lambda900)を用いて測定することができる。なお、試料の厚みを他の厚みに換算する場合には、以下の換算式を利用すればよい。この式は、Scripta Materialia vol.69, pp362-365(2013)から引用した。式中、T1は直線透過率の実測値、T2は換算後の直線透過率、t1は厚みの実測値、t2は換算後の厚み、Rは材料由来の表面反射(アルミナの場合0.14)である。
T2=(1-R)(T1/(1-R))(t2/t1)
【0016】
本発明者らは、アルミナ焼結体の配向軸(例えばc軸)と各アルミナ粒子の結晶軸の傾斜(チルト角)が小さくなることで、透明性が向上することを見出した。チルト角は透明アルミナ焼結体の表面をX線ロッキングカーブ法(オメガスキャン)で測定したX線ロッキングカーブの半値幅(XRC・FWHM)によって評価することができる。チルト角は透明性の観点では小さい方が好ましく、XRC・FWHMは15°以下が好ましく、10°以下がより好ましく、7.5°以下が更に好ましく、5°以下が特に好ましく、4°以下が一層好ましく、1°以下がより一層好ましい。
【0017】
本実施形態のアルミナ焼結体は、膜を形成するための下地基板として利用可能であり、例えば、GaN,ZnO,AlN,SiC,InNなどを成膜するための下地基板として利用可能である。本実施形態のアルミナ焼結体は、成膜する前に表面を研磨することが好ましい。こうすれば、表面の凹凸がなくなるため、成膜しやすいし膜に欠陥が生じにくい。
【0018】
本実施形態のアルミナ焼結体は、例えば、板状アルミナ粉末と平均粒径が板状アルミナ粉末よりも小さい微細アルミナ粉末とを混合した混合粉末を成形、焼成することにより製造することができる。板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末の混合粉末を成形することにより、成形時(テープ成形、押出成形、鋳込み成形、射出成形、一軸プレス成形等)に板状粒子が配向しやすくなる。また、焼成時に、板状アルミナ粉末が種結晶(テンプレート)となり、微細アルミナ粉末がマトリックスとなって、テンプレートがマトリックスを取り込みながらホモエピタキシャル成長する。こうした製法は、TGG(Templated Grain Growth)法と呼ばれる。TGG法でアルミナ焼結体を作製する工程の模式図を図1に示す。TGG法では、板状アルミナ粉末と微細アルミナ粉末の粒径や混合比によって、得られるアルミナ焼結体の微細構造を制御することができ、板状アルミナ粉末単体を焼成する場合に比べて緻密化しやすく、配向度が向上しやすい。
【0019】
本実施形態のアルミナ焼結体は、成形体を加圧焼成(例えばホットプレス焼成やHIP焼成など)したものである。なお、加圧焼成前に常圧予備焼成を行ってもよい。HIP焼成を行うときにはカプセル法を用いることもできる。焼成温度は1800〜2050℃が好ましい。ホットプレス焼成の場合の圧力は50kgf/cm2以上が好ましく、200kgf/cm2以上がより好ましい。HIP焼成の場合の圧力は1000kgf/cm2以上が好ましく、2000kgf/cm2以上がより好ましい。混合粉末中の板状アルミナ粉末の含有量は0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましい。
【0020】
光学素子用下地基板は、上述した本実施形態のアルミナ焼結体からなる基板である。光学素子としては、発光素子や受光素子が挙げられる。例えば、この光学素子用下地基板にGaN層を成膜することで、サファイアを下地基板に用いた場合に比べて大型で安価なLED等の発光基板として用いることができる。この光学素子用下地基板は、透明なためレーザーリフトオフによる基板剥離が可能となる。また、下地基板を剥離しない場合には、下地基板側からも光を取り出すことができる。なお、GaN層のほかにZnO層,AlN層,InN層なども形成することができる。
【0021】
こうした光学素子用下地基板を発光素子に利用した例を以下に示す。発光素子10は、図2に示すように、下地基板12と、下地基板12上に形成された発光機能層14とを備えている。発光機能層14は、電圧を印加することによりLEDの発光原理に基づき発光するものであり、ここでは下地基板12に近い側からn型層14c、活性層14b、p型層14aの順に積層されている。この発光機能層14は、GaN系材料、ZnO系材料、AlN系材料などで作製されている。
【0022】
横型発光素子20は、図3に示すように、発光素子10のうち発光機能層14の外周部にn型層14cの表面が段差面となるように形成され、n型層14cの段差面にカソード電極22が取り付けられ、p型層14aの表面に透光性アノード電極24を介してアノード電極パッド25が設けられたものである。この横型発光素子20によれば、発光機能層14の法線方向だけでなく、水平方向にも電流が流れる。
【0023】
縦型発光素子30は、図4に示すように、発光機能層14のn型層14cの表面にカソード電極34、p型層14aの表面にアノード電極32を介して実装基板16が取り付けられたものである。この縦型発光素子30は、発光素子10のp型層14aの表面にアノード電極32を形成し、実装基板16にアノード電極32を接合し、下地基板12をレーザーリフトオフ法で除去し、露出したn型層14cの表面にカソード電極34を形成することにより作製される。この縦型発光素子30によれば、発光機能層14の法線方向に電流が流れる。このようにレーザーリフトオフ法が利用できるのは、下地基板12の直線透過率が大きく透光性が高いからである。
【実施例】
【0024】
[実験例1]
1.アルミナ焼結体の作製
(1)板状アルミナ粉末の作製
高純度γ−アルミナ粉末(TM−300D、大明化学製)96質量部と、高純度AlF3粉末(関東化学製、鹿特級)4質量部と、種結晶として高純度α−アルミナ粉末(TM−DAR、大明化学製、D50=1μm)0.17質量部とを、溶媒をIPA(イソプロピルアルコール)としてφ2mmのアルミナボールを用いて5時間ポットミルで混合した。ポットミル混合した後、IPAをエバポレータにて乾燥し、混合粉末を得た。得られた混合粉末300gを純度99.5質量%の高純度アルミナ製のさや(容積750cm3)に入れ、純度99.5質量%の高純度アルミナ製の蓋をして電気炉内でエアフロー中、900℃、3時間熱処理した。エアーの流量は25000cc/minとした。熱処理後の粉末を大気中、1150℃で42.5時間アニール処理した後、φ2mmのアルミナボールを用いて4時間粉砕して平均粒径2μm、厚み0.3μm、アスペクト比約7の板状アルミナ粉末を得た。粒子の平均粒径、平均厚み、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)で板状アルミナ粉末中の任意の粒子100個を観察して決定した。平均粒径は、粒子板面の長軸長の平均値、平均厚みは、粒子の短軸長(厚み)の平均値、アスペクト比は、平均粒径/平均厚みである。図5は、板状アルミナ粒子の模式図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。板状アルミナ粒子は、平面視したときの形状が略六角形状であり、その粒径は図5(a)に示したとおりであり、厚みは図5(b)に示したとおりである。
【0025】
(2)テープ成形
上記(1)で作製した板状アルミナ粉末1.5質量部と、平均粒径がこの板状アルミナ粉末の厚みより小さい微細アルミナ粉末(TM−DAR、平均粒径0.1μm、大明化学製)98.5質量部とを混合した。この混合アルミナ粉末100質量部に対し、酸化マグネシウム(500A、宇部マテリアルズ製)0.025質量部と、バインダーとしてポリビニルブチラール(品番BM−2、積水化学工業製)7.8質量部と、可塑剤としてジ(2−エチルヘキシル)フタレート(黒金化成製)3.9質量部と、分散剤としてトリオレイン酸ソルビタン(レオドールSP−O30、花王製)2質量部と、分散媒として2−エチルヘキサノールとを加えて混合した。分散媒の量は、スラリー粘度が20000cPとなるように調整した。このようにして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によってPETフィルムの上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにシート状に成形した。得られたテープを口径50.8mm(2インチ)の円形に切断した後150枚積層し、厚さ10mmのAl板の上に載置した後、パッケージに入れて内部を真空にすることで真空パックとした。この真空パックを85℃の温水中で100kgf/cm2の圧力にて静水圧プレスを行い、円板状の成形体を得た。
【0026】
(3)焼成
得られた成形体を脱脂炉中に配置し、600℃で10時間の条件で脱脂を行った。得られた脱脂体を黒鉛製の型を用い、ホットプレスにて窒素中1975℃で4時間、面圧200kgf/cm2の条件で焼成し、その後降温し、1200℃になった時点で面圧を開放し、直径50.8mmのアルミナ焼結体を得た。得られたアルミナ焼結体のサンプルの外観写真(2μmのダイヤモンド砥粒で鏡面研磨後)を図6に示した。図6に描かれたNGKのロゴ入りマークは日本碍子(株)の登録商標である。
【0027】
(4)表面研磨
得られたアルミナ焼結体の板面に対しダイヤモンド砥粒を用いて表裏両面を鏡面研磨して厚さ0.5mmとし、研磨した焼結体(試料)をアセトン、エタノール、イオン交換水の順でそれぞれ10分間洗浄し、c面配向度、直線透過率、D−SIMS分析用の試料を得た。
【0028】
2.アルミナ焼結体の特性
(1)c面配向度の算出
得られたアルミナ焼結体の配向度を確認するため、XRDによりc面配向度を測定した。鏡面研磨後のアルミナ焼結体に対し、その研磨面に対してXRD装置(リガク製、RINT−TTR III)を用いてX線を照射したときの2θ=20〜70°の範囲でXRDプロファイルを測定した。具体的には、CuKα線を用いて電圧50kV、電流300mAという条件で測定した。c面配向度は、ロットゲーリング法によって算出した。具体的には、前出の式により算出した。実験例1のアルミナ焼結体のc面配向度は96.1%であった。
【0029】
(2)チルト角
チルト角は、結晶軸の傾き分布であり、アルミナの結晶方位がc軸からどの程度の頻度で傾いているかを評価するパラメータである。図7にチルト角の模式的な説明図を示す。ここでは、チルト角をX線ロッキングカーブ(XRC)半値幅(FWHM)で表す。XRC・FWHMは、アルミナ焼結体の板面(c面配向度測定と同じ面)に対し、図8のようにX線源と検出器を連動させてスキャンし、得られたカーブの半値幅を測定した。このように2θ(検出器と入射X線とのなす角度)の値をその回折ピーク位置に固定し、ω(試料基板面と入射X線とのなす角度)のみ走査する測定方法をロッキングカーブ測定とよぶ。装置はリガク製、RINT−TTR IIIを用い、CuKα線を用いて電圧50kV、電流300mAという条件でωの走査範囲を3.8°〜38.8°とした。実験例1のアルミナ焼結体のXRC・FWHMは4.5°であった。
【0030】
(3)純度
(3−1)Al,O,F以外の元素について
アルミナ焼結体を純度99.9%のアルミナ乳鉢で粉砕した後、Al,O,F以外の元素について、下記方法により定量分析した。実験例1のアルミナ焼結体のAl,O,F以外の元素は、Mgが112ppm、Cが40ppm検出され、それ以外の元素は検出されなかった。
C,S:炭素・硫黄分析装置(LECO製CS844)を用いて燃焼(高周波加熱)−赤外線吸収法にて分析した。検出下限は10ppmである。
N:酸素・窒素分析装置(堀場製作所製EMGA−650W)を用いて不活性ガス融解−熱伝導度法にて分析した。検出下限は10ppmである。
H:水素分析装置(堀場製作所製EMGA−921)を用いて不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法にて分析した。検出下限は10ppmである。
上記以外の元素(主にSi,Fe,Ti,Na,Ca,Mg,K,P,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Pb,Bi,Li,Be,B,Cl,Sc,Ga,Ge,As,Se,Br,Rb,Sr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,Hf,Ta,W,Ir,Pt,Au,Hg,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,):JISR1649に準拠した加圧硫酸分解法にてアルミナ粉末を溶解し、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置(日立ハイテクサイエンス製PS3520UV−DD)にて分析した。検出下限は10ppmである。
なお、Ba、Sr、Pbについては別途以下の方法を用いて分析したが、検出されなかった。
Ba,Sr,Pb: 炭酸ナトリウム融液にてアルミナ粉末を融解し、ICP(誘導結合プラズマ)質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンス製iCAPQC)にて分析した。
【0031】
(3−2)Fについて
鏡面研磨後のアルミナ焼結体をダイナミック二次イオン質量分析(D−SIMS)した。測定装置は、PHI社製ADEPT1010を用いた。測定条件は下記のとおりとした。
・一次イオン種:Cs+
・一次イオン加速エネルギー:3keV
・二次イオン極性:Negative
・電荷補償:E−gun
・スパッタサイクル:100〜500サイクル
200−300スパッタサイクル間の平均値をF量として用いた。定量分析の際は分析試料と同組成(AlO)の濃度既知の標準試料を分析試料と同条件で測定し、相対感度係数を求めて定量を行った。結果、焼結体中のF量は59ppmであった。
【0032】
(3−3)Mg/Fについて
上記(3−1)で求めたMg量(質量ppm)を、上記(3−2)で求めたF量(質量ppm)で除して、Mg/Fの値を求めた。実験例1のMg/Fの値は1.9であった。
【0033】
(4)気孔
得られたアルミナ焼結体の任意の断面をダイヤモンド砥粒を用いて予備研磨した後、クロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子製、IB−09010CP)で研磨した。CPはイオンミリングの範疇に属する。CPを用いたのは、研磨面に脱粒が生じないからである。得られた断面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6390)にて撮影した。観察する倍率は、具体的には、縦223.4μm×横321.4μmの視野を倍率500倍で撮影した写真を、図9のように縦6枚分、横5枚分連続的な写真(縦1340.4μm×横1607.0μm)となるように並べ、目視により直径1μm以上の気孔の数をカウントした。このとき、観察された気孔の最長辺を直径とした。気孔と気孔でない部分とは、明暗がはっきりしているため目視で容易に区別することができる。実験例1のアルミナ焼結体で確認された気孔数は0個であった。
【0034】
(5)結晶粒径
鏡面研磨後のアルミナ焼結体を、純度99.5質量%の高純度アルミナ製のさや(容積750cm3)に入れ、大気中で1550℃で45分間、サーマルエッチング処理を行った。本サーマルエッチング処理を行うことにより、粒内部と粒界部でエッチンングレートが異なるために粒界を鮮明に観察できるようになる。そのサーマルエッチング処理を行った面の画像を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−6390)にて撮影した。視野範囲は、次のようにして設定した。すなわち、得られた画像上に長方形を配置してその対角線を引いた場合に、いずれの対角線も10個から30個の粒子と交わるように長方形のサイズを設定し、その長方形を視野範囲に設定した。そして、その長方形の2本の対角線と交わる全ての粒子に対し、個々の粒子の内側の線分の長さを平均したものに1.5を乗じた値を板面の平均粒径とした。実験例1の平均粒径(結晶粒径)は63μmであった。
【0035】
(6)直線透過率
鏡面研磨後のアルミナ焼結体を分光光度計(Perkin Elmer製、Lambda 900)を用いて波長300〜1000nmにおける直線透過率を測定した。実験例1の直線透過率は79.1%以上であった。
【0036】
(7)四点曲げ強さ
鏡面研磨後のアルミナ焼結体から4×0.5×20mmの棒を切り出し、四点曲げ強さを測定した。外部支点間距離は15mm、内部支点間距離は5mmとし、試験片が破断したときの荷重を用いてJIS1601:2008に記載の四点曲げ強さの計算式にて算出した。
【0037】
[実験例2]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(3)の焼成において焼成温度を1900℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0038】
[実験例3]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末0.75質量部と微細アルミナ粉末99.25質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1900℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0039】
[実験例4]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において酸化マグネシウムの添加量を0.05質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1900℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0040】
[実験例5]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し、酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1900℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0041】
[実験例6]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1950℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0042】
[実験例7]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1850℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0043】
[実験例8]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1850℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0044】
[実験例9]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末5.0質量部と微細アルミナ粉末95.0質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.25質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0045】
[実験例10]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末5.0質量部と微細アルミナ粉末95.0質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.1質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0046】
[実験例11]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末5.0質量部と微細アルミナ粉末95.0質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0047】
[実験例12]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末10.0質量部と微細アルミナ粉末90.0質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.25質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。なお、XRC・FWHMはロッキングカーブのピークが出なかったため測定できなかった。
【0048】
[実験例13]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時に900℃で3時間のアニール処理を実施したこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1950℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0049】
[実験例14]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時に900℃で3時間のアニール処理を実施したこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1900℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0050】
[実験例15]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し、酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0051】
[実験例16]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.05質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1850℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0052】
[実験例17]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において、微細アルミナ粉末にAKP−20(平均粒径0.5μm、住友化学製)、及び板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し、酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0053】
[実験例18]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時に1150℃で42.5時間アニール処理した後、φ2mmのアルミナボールを用いて50時間粉砕して平均粒径1μm、厚み0.3μm、アスペクト比約3の板状アルミナ粉末としたこと、及び、上記1.(2)のテープ成形において、板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し、酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0054】
[実験例19]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時にアニール処理を実施しなかったこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.5質量部と微細アルミナ粉末97.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.05質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1990℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0055】
[実験例20]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末を用いず微細アルミナ粉末のみ使用したこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0056】
[実験例21]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時に900℃で1時間のアニール処理を実施したこと、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末30.0質量部と微細アルミナ粉末70.0質量部とを混合したこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0057】
[実験例22]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(1)の板状アルミナ作製時に1250℃で12時間のアニール処理を実施したこと、及び、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末0.5質量部と微細アルミナ粉末99.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.7質量部にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0058】
[実験例23]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末0.5質量部と微細アルミナ粉末99.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.007質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を2000℃にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。この実験例では、異常粒成長が多数認められ、異常粒の外周にクラックが発生していた。
【0059】
[実験例24]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末2.0質量部と微細アルミナ粉末98.0質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.035質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1600℃としたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0060】
[実験例25]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末0.5質量部と微細アルミナ粉末99.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を1.0質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1800℃にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0061】
[実験例26]
アルミナ焼結体を作製するにあたり、上記1.(2)のテープ成形において板状アルミナ粉末0.5質量部と微細アルミナ粉末99.5質量部とを混合し酸化マグネシウムの添加量を0.003質量部にしたこと、及び、上記1.(3)の焼成温度を1700℃にしたこと以外は、実験例1と同様にしてアルミナ焼結体を作製した。得られたアルミナ焼結体につき、上記2.(1)〜(7)の特性を求めた。その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
[評価]
実験例1〜19のアルミナ焼結体は、いずれも、c面配向度が5%以上の面を有し、不純物としてMg,Fを含み、Mg/Fの質量比やMgの含有量が適量であり、結晶粒径や気孔の個数も適正範囲であった。これらの実験例で得られたアルミナ焼結体は、厚みを0.5mmとしたとき、波長300nm〜1000nmにおける直線透過率が60%以上であった。つまり、c面配向度が比較的低くても直線透過率は高く透明性に優れていた。また、実験例1〜11,13〜18ではXRC・FWHMが15°以下であった。更に実験例1〜8,13〜15,17,18はFの含有量が200ppm以下であり、四点曲げ強さは350MPa以上と相対的に高く、高強度の観点では良好であった。実験例9〜12、16、19は直線透過率の観点では良好だが、四点曲げ強さは300MPa以下と若干低い値であった。
【0064】
一方、実験例20のアルミナ焼結体はc面配向度がゼロであり、実験例21,22のアルミナ焼結体はMg/Fが適正範囲を外れ、実験例23のアルミナ焼結体は結晶粒径が適正範囲を外れ、実験例24のアルミナ焼結体は気孔数が適正範囲を外れ、実験例25,26のアルミナ焼結体はMg量が適正範囲を外れていた。そのため、いずれのアルミナ焼結体も、厚みを0.5mmとしたとき、波長300nm〜1000nmにおける直線透過率が60%未満であり、透明性が優れているとはいえなかった。
【0065】
なお、実験例1〜19が本発明の実施例に相当し、実験例20〜26が比較例に相当する。本発明は、上述した実験例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0066】
本出願は、2015年5月13日に出願された日本国特許出願第2015−98525号及び2016年1月25日に出願された日本国特許出願第2016−11190号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば光学素子用下地基板に利用可能である。光学素子としては、例えばLED、LD、太陽電池、センサ、フォトダイオード、光学部材、窓材等が挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
10 発光素子、12 下地基板、14 発光機能層、14a p型層、14b 活性層、14c n型層、16 実装基板、20 横型発光素子、22 カソード電極、24 透光性アノード電極、25 アノード電極パッド、30 縦型発光素子、32 アノード電極、34 カソード電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9