【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、独立請求項において磁気共鳴撮像システム、コンピュータ・プログラム・プロダクトおよび方法を提供する。実施形態は従属請求項において与えられる。
【0011】
当業者は理解するであろうが、本発明の諸側面は装置、方法またはコンピュータ・プログラム・プロダクトとして具現されうる。よって、本発明の諸側面は完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)または本稿でみな一般に「回路」「モジュール」または「システム」として言及されうるソフトウェアおよびハードウェア側面を組み合わせた実施形態の形を取ることができる。さらに、本願の諸側面は、コンピュータ実行可能なコードが具現されている一つまたは複数のコンピュータ可読媒体において具現されるコンピュータ・プログラム・プロダクトの形を取ることができる。
【0012】
一つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。コンピュータ可読媒体はコンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体でありうる。本稿で使われるところの「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピューティング装置のプロセッサによって実行可能な命令を記憶しうる任意の有体の記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読な非一時的な記憶媒体と称されることもある。コンピュータ可読記憶媒体は、有体なコンピュータ可読媒体と称されることもある。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティング装置のプロセッサによってアクセスされることができるデータを記憶できてもよい。コンピュータ可読記憶媒体の例は、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、固体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスクおよびプロセッサのレジスタ・ファイルを含むがこれに限られない。光ディスクの例は、コンパクトディスク(CD)およびデジタル多用途ディスク(DVD)、たとえばCD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RWまたはDVD-Rディスクを含む。コンピュータ可読記憶媒体の用語は、ネットワークまたは通信リンクを介してコンピュータ装置によってアクセスされることのできるさまざまな型の記録媒体をも指す。たとえば、データはモデムを通じて、インターネットを通じてまたはローカル・エリア・ネットワークを通じて取得されてもよい。コンピュータ可読媒体上に具現されるコンピュータ実行可能コードは、無線、有線、光ファイバーケーブル、RFなどを含むがそれに限られない任意の適切な媒体または上記の任意の好適な組み合わせを使って伝送されうる。
【0013】
コンピュータ可読信号媒体は、たとえばベースバンドにおいてまたは搬送波の一部としてコンピュータ実行可能コードが具現されている伝搬されるデータ信号を含みうる。そのような伝搬される信号は、電磁、光またはその任意の好適な組み合わせを含むがそれに限られない多様な形の任意のものを取りうる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、装置またはデバイスによってまたは命令実行システム、装置またはデバイスとの関連で使用されるためのプログラムを通信する、伝搬させるまたは転送することができる任意のコンピュータ可読媒体でありうる。
【0014】
「コンピュータ・メモリ」または「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。コンピュータ・メモリは、プロセッサにとって直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶」または「記憶」はコンピュータ可読記憶媒体のさらなる例である。コンピュータ記憶は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。いくつかの実施形態では、コンピュータ記憶はコンピュータ・メモリであってもよいし、逆にコンピュータ・メモリがコンピュータ記憶であってもよい。
【0015】
本稿で用いるところの「プロセッサ」は、プログラムまたは機械実行可能な命令またはコンピュータ実行可能コードを実行できる電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を有するコンピューティング装置への言及は、二つ以上のプロセッサまたは処理コアを含む可能性があると解釈されるべきである。プロセッサはたとえば、マルチコア・プロセッサであってもよい。プロセッサはまた、単一コンピュータ・システム内のまたは複数のコンピュータ・システムの間に分散されたプロセッサの集まりを指すこともある。コンピューティング装置という用語は、それぞれが単数または複数のプロセッサを有するコンピューティング装置の集合またはネットワークを指す可能性もあると解釈されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同じコンピューティング装置内にあってもよく、または複数のコンピューティング装置の間に分散されていてもよい複数のプロセッサによって実行されてもよい。
【0016】
コンピュータ実行可能コードは、プロセッサに本発明のある側面を実行させる機械実行可能な命令またはプログラムを含んでいてもよい。本発明の側面のための動作を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、ジャバ、スモールトーク、C++などといったオブジェクト指向プログラミング言語および「C」プログラミング言語といった従来型の手続き型プログラミング言語または同様のプログラミング言語を含む、一つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれてもよく、機械実行可能な命令にコンパイルされてもよい。いくつかの事例では、コンピュータ実行可能コードは高水準言語の形であっても、あるいは事前コンパイルされた形であってもよく、オンザフライで機械実行可能な命令を生成するインタープリターとの関連で使われてもよい。
【0017】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザーのコンピュータ上で、部分的にユーザーのコンピュータ上で、スタンドアローンのソフトウェア・パッケージとして、部分的にはユーザーのコンピュータ上で部分的にはリモート・コンピュータ上で、あるいは完全にリモート・コンピュータまたはサーバー上で実行されうる。この最後のシナリオでは、リモート・コンピュータはユーザーのコンピュータに、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を含む任意の型のネットワークを通じて接続されてもよく、あるいは(たとえばインターネット・サービス・プロバイダーを使ってインターネットを通じて)外部コンピュータに接続がされてもよい。
【0018】
本発明の諸側面は、本発明の実施形態に基づく方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム・プロダクトのフローチャート図および/またはブロック図を参照して記述される。フローチャート、図および/またはブロック図の各ブロックまたはブロックの一部は、適用可能な場合にはコンピュータ実行可能コードの形のコンピュータ・プログラム命令によって実装されることができることは理解される。さらに、背反でない場合には、異なるフローチャート、図および/またはブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わされてもよいことが理解される。これらのコンピュータ・プログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに与えられて、該コンピュータまたは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサによって実行される該命令が前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装する手段を作り出すよう、機械を生成してもよい。
【0019】
これらのコンピュータ・プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスが特定の仕方で機能するよう指令することができるコンピュータ可読媒体に記憶され、それにより、該コンピュータ可読媒体に記憶される命令は、前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装する命令を含む製造物を作り出してもよい。
【0020】
コンピュータ・プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置または他のデバイスにロードされて、該コンピュータ、他のプログラム可能な装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、前記コンピュータまたは他のプログラム可能な装置上で実行される前記命令が前記フローチャートおよび/またはブロック図の単数または複数のブロックにおいて特定されている機能/工程を実装するためのプロセスを提供するようなコンピュータ実装されたプロセスを作り出してもよい。
【0021】
本稿で用いるところの「ユーザー・インターフェース」は、ユーザーまたは操作者がコンピュータまたはコンピュータ・システムと対話することを許容するインターフェースである。「ユーザー・インターフェース」はまた、「ヒューマン・インターフェース装置」と称されてもよい。ユーザー・インターフェースは情報またはデータを操作者に提供し、および/または情報またはデータを操作者から受け取ってもよい。ユーザー・インターフェースは操作者からの入力がコンピュータによって受け取れるようにしてもよく、コンピュータからユーザーに出力を提供してもよい。換言すれば、ユーザー・インターフェースは操作者がコンピュータを制御もしくは操作することを許容してもよく、該インターフェースはコンピュータが操作者の制御または操作の効果を示すことを許容してもよい。データまたは情報のディスプレイまたはグラフィカル・ユーザー・インターフェース上への表示は、情報を操作者に提供することの例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティング・スティック、グラフィック・タブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ペダル、ワイヤードグローブ、リモコンおよび加速度計を通じたデータの受領はみな、操作者からの情報またはデータの受領を可能にするユーザー・インターフェース・コンポーネントの例である。
【0022】
本稿で用いるところの「ハードウェア・インターフェース」は、コンピュータ・システムのプロセッサが外部のコンピューティング装置および/または装置と対話するおよび/またはこれを制御することを可能にするインターフェースを包含する。ハードウェア・インターフェースは、プロセッサが、制御信号または命令を外部のコンピューティング装置および/または装置に送ることを許容してもよい。ハードウェア・インターフェースは、プロセッサが、外部のコンピューティング装置および/または装置とデータを交換することを可能にしてもよい。ハードウェア・インターフェースの例は、これに限られないが、ユニバーサル・シリアル・バス、IEEE1394ポート、パラレル・ポート、IEEE1284ポート、シリアル・ポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、ブルートゥース(登録商標)接続、無線ローカル・エリア・ネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェースおよびデジタル入力インターフェースを含む。
【0023】
本稿で用いるところの「ディスプレイ」または「表示装置」は、画像またはデータを表示するよう適応された出力装置またはユーザー・インターフェースを包含する。ディスプレイは視覚的、聴覚的およびまたは触覚的データを出力してもよい。ディスプレイの例は、コンピュータ・モニタ、テレビジョン画面、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字画面、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクター・ディスプレイ、フラットパネル・ディスプレイ、真空蛍光(vacuum fluorescent)ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エネクトロルミネッセント・ディスプレイ(ELD: Electroluminescent display)、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード・ディスプレイ(OLED)、プロジェクターおよびヘッドマウント・ディスプレイを含むがこれに限られない。
【0024】
磁気共鳴(MR)データは本稿では、磁気共鳴撮像スキャンの間に、原子スピンによって放出された高周波信号の磁気共鳴装置のアンテナを使っての測定として定義される。磁気共鳴データは医療画像データの例である。磁気共鳴撮像(MRI)画像は本稿では、磁気共鳴撮像データ内に含まれる解剖学的データの再構成された二次元または三次元の視覚化として定義される。この視覚化はコンピュータを使って実行されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
ある側面では、本発明は、撮像ゾーン内の被験体から磁気共鳴データを収集するための磁気共鳴撮像システムを提供する。磁気共鳴撮像システムは、機械実行可能命令を記憶するとともにパルス・シーケンス・データを記憶するためのメモリを有する。本稿で使われるところのパルス・シーケンス・データは、特定の磁気共鳴撮像プロトコルに従って磁気共鳴データを収集するよう磁気共鳴撮像システムを制御するために使用されうるデータを包含する。パルス・シーケンス・データはたとえば、実行されうるコマンドの形であってもよく、あるいはタイミング図またはタイミング情報の形であってもよく、それがプログラムによって磁気共鳴撮像システムを制御するためのコマンドに変換されてもよい。パルス・シーケンス・データは、n点ディクソン磁気共鳴撮像法を使って磁気共鳴データを収集するためのコマンドを含む。nは2以上である。一般的なディクソン技法のレビューはたとえば非特許文献1に見出されうる(第857〜887頁参照)。
【0026】
磁気共鳴撮像システムはさらに、磁気共鳴撮像システムを制御するプロセッサを有する。前記命令の実行は、前記プロセッサに、磁気共鳴データを収集するようパルス・シーケンス・データをもって磁気共鳴撮像システムを制御させる。この段階において、前記実行可能命令は、前記プロセッサに、前記パルス・シーケンス・データを実行させ、前記パルス・シーケンス・データはn点ディクソン磁気共鳴撮像法に従って収集される。次に、機械実行可能命令の実行は、前記プロセッサに、n点ディクソン磁気共鳴撮像法に従って前記磁気共鳴データを使って二つの位相候補マップを構築させる。ディクソン法を実行するとき、ディクソン方程式には複数の解があるので、一般には、二つの位相候補マップが構築される。それらの位相候補マップは「位相マップ」または「B0マップ」と称されてもよい。方程式を正しく解くために、前記二つの位相候補マップが構築され、アルゴリズムの後のほうで、後述するように、各ボクセルについて正しい位相候補が選択される。二つの位相候補マップのそれぞれは画像空間にある。二つの位相候補マップのそれぞれはまた、ボクセルの集合を含む。ボクセルの該集合をもつ前記二つの位相候補マップはディクソン方程式への解を含み、二つの解のそれぞれは対応する脂肪対水比をもつ。二つの位相候補マップのそれぞれにおいて、各ボクセルは位相マップ値をもつ。二つの位相候補マップは、フィールド・マップ候補と称されてもよい。
【0027】
ディクソン法では、測定された信号についてのモデルが画像領域で定式化される。m=0…M−1として、エコー時間t
mにおいてサンプリングされた画像空間での複素合成信号s
mは次式によってモデル化される。
【0028】
【数1】
ここで、wおよびfはエコー時間t
m=0における複素数の水(water)および脂肪(fat)信号であり、Δf
0はB0場を表わし、追加の位相因子φ
mは、渦電流もしくは他の効果に起因しうる追加の位相誤差を表わす。二つより多くのエコーをもつディクソン法については、項Δf
0は、厳密に、主磁場のその公称値からの逸脱に対応する周波数を表わす。該逸脱の空間分布はしばしば「フィールド・マップ」と称される。本発明における「位相項」という句は、この場合、その後のエコー間の対応する位相差:2πΔf
0Δtを指す。ここで、Δtは相続くエコー間のエコー時間の差である。
【0029】
二点ディクソンについては、上記のモデルは次のようにも書ける。
【0030】
【数2】
ここで、位相項φ
0,1は今やB0場に起因する位相および渦電流に起因する位相を含む組み合わされた位相項を表わす。ディクソン・データの処理においては、用語「位相項」は今や、二つのエコーの間の位相差:φ
1−φ
0を指す。三つ以上のエコーについての上記の定式化での差は、この位相差が渦電流にも起因するということである。そのほかは、意味は同一である。式0.2において、緩和は無視している。しかしながら、緩和は、nが3以上のn点ディクソン法では典型的には無視されない。
【0031】
機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、オブジェクト識別アルゴリズムを使って前記ボクセルの集合のそれぞれを、オブジェクト・ボクセルの集合中および背景ボクセルの集合中に分割させる。この段階において、各位相候補マップにおけるボクセルは、被験体の画像であるボクセルであると考えられるオブジェクト・ボクセルまたは背景ボクセルの集合のボクセルであることに分類される。背景ボクセルは、被験体を含まない領域であるボクセルである。さまざまな型のオブジェクト識別アルゴリズムが使用されうる。たとえば、信号の強度が使用されてもよく、たとえば特定のボクセル内に何も存在していなければ測定すべき磁気共鳴撮像信号はないであろう。他の場合には、被験体の解剖構造の知識が、境界ボクセルの集合を少なくとも部分的に識別するために使用されてもよい。別の例では、前記ボクセルの集合においてどこでオブジェクトが始まり、背景が始まるかを識別するために、エッジ発見アルゴリズムが使われてもよい。
【0032】
機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、選別位相候補マップを前記メモリにおいて生成させる。選別位相候補マップは、前記ボクセルの集合を含む。この例では、前記メモリにおいて、選別位相候補マップを生成しており、該選別位相候補マップは、前記二つの位相候補マップから値が入れられる、あるいは前記二つの位相候補マップを使って計算される。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、前記二つの位相候補マップから、前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部について、選別位相マップ値を選択させる。該位相マップ値は、各位相候補マップにおける前記境界ボクセルの集合の各ボクセルについての位相候補マップ値を比較して、最低の脂肪対水比を示す候補位相マップ値を選択することによって選ばれる。
【0033】
この段階において、皮膚からなっている可能性が高いかもしれない被験体の境界が、前記二つの位相候補マップのうちの最低の脂肪対水比をもつという想定がされている。これはたとえば、皮膚について合理的である値を選択することにつながる。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、位相候補選択アルゴリズムに従ってオブジェクト・ボクセルの位相マップ値を計算させる。位相候補選択アルゴリズムのための入力は、前記二つの位相候補マップと、前記二つの位相候補マップからの前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部についての前記選別位相マップ値とを含む。次いで、前記位相候補選択アルゴリズムは、前記選別位相候補マップをなす位相マップ値を計算するために使われる。これらは、前記境界値をなめらかにして、中間の境界値について解くアルゴリズムを含んでいてもよい。そうしたアルゴリズムは、値を逐次反復式に計算するまたは値を解を伝搬させることによって計算する。
【0034】
この実施形態は、被験体の表面の構成の知識が、前記二つの位相候補マップから前記選別位相候補マップを計算することにおいて有用である境界値の集合によって使用されうるので、有益でありうる。
【0035】
もう一つの例では、前記境界ボクセルの集合の要素ではないオブジェクト・ボクセルの値が、前記位相マップ値が計算されるときに入力される所定の値に設定される。たとえば、逐次反復式位相候補推定アルゴリズムが使われる場合、該アルゴリズムを初期化するために前記位相マップ値を0または他の何らかの小さな値に設定することが有用であることがある。
【0036】
もう一つの実施形態では、前記オブジェクト識別アルゴリズムが前記ボクセルの集合のボクセルをオブジェクト・ボクセルとして識別するのは、そのボクセルが入力データセットにおけるノイズの標準偏差のx倍より大きい絶対値をもち、入力データセットにおける最大振幅の少なくともyの振幅をもつときである。xは第一の所定の値であり、yは1以下である第二の所定の値である。これは、ボクセルがオブジェクトを表わすか背景を表わすかを識別するための一つの可能なアルゴリズムの例である。この例は、実際上うまく機能する例を表わすために含められている。
【0037】
もう一つの実施形態では、xは3から5の間である。
【0038】
もう一つの実施形態では、xは3.5から4.5の間である。
【0039】
もう一つの実施形態では、xは2から4の間である。
【0040】
もう一つの実施形態では、xは4から6の間である。
【0041】
もう一つの実施形態では、yは0.06から0.08の間である。
【0042】
もう一つの実施形態では、yは0.05から0.07の間である。
【0043】
もう一つの実施形態では、yは0.07から0.09の間である。
【0044】
もう一つの実施形態では、yは1/14から1/16の間である。
【0045】
もう一つの実施形態では、yは1/13から1/15の間である。
【0046】
もう一つの実施形態では、yは1/15から1/17の間である。
【0047】
xおよびyについての上記の値は、前記二つの位相候補マップにおけるオブジェクト・ボクセルを識別することにおいて有効でありうるxおよびyの例である。
【0048】
もう一つの実施形態では、前記ボクセルの集合は縁をもつ。前記境界識別アルゴリズムは、前記プロセッサに、前記背景ボクセルの集合を介して前記縁に経路で接続されているオブジェクト・ボクセルから前記境界ボクセルを識別させる。この実施形態は、被験体の内部にある境界ボクセルを識別することを除外しうる。たとえば、このアルゴリズムの使用は、被験体の皮膚を前記境界ボクセルの集合として識別するよう前記アルゴリズムに強制することがあるとともに、肺に存在するような他の境界ボクセルを無視させる。この実施形態はすべての事例に適用可能ではないことがある。たとえば、場合によっては、信号位相分散および対応する振幅減衰のために、被験体またはボディの最上部が非常に弱い信号をもつことがある。このためたとえば、肺によって引き起こされる空洞が背景領域に接続されることになりうる。他の例では、肺の識別は、被験体の解剖構造の知識をも考慮に入れるアルゴリズムを使うことによって回避されうる。たとえば、変形可能な形状モデルは被験体の解剖構造のさまざまな構成要素を識別し、被験体の外側表面または皮膚上の位置をよりよく識別するために使われてもよい。
【0049】
もう一つの実施形態では、前記境界識別アルゴリズムは、前記プロセッサに、前記背景ボクセルの集合から選ばれた少なくとも一つの背景ボクセルに隣接する前記オブジェクト・ボクセルの集合から選ばれたオブジェクト・ボクセルを識別することによって、前記境界ボクセルの集合を識別させる。下記では、位相に関係した何らかの処理は、実際の処理は、iが虚数単位であるとして、関係式phasor=exp(i*phase)によって位相(phase)に関係付けられるフェーザー(phasor)に対して実行されるという点で理解される。
【0050】
もう一つの実施形態では、前記位相候補選択アルゴリズムは、前記プロセッサに、前記オブジェクト・ボクセルの前記位相マップ値を計算することを、前記境界ボクセルの集合の各ボクセルについて初期に選ばれた位相マップ値を使って前記オブジェクト・ボクセルの位相マップ値を補間し、次いで前記オブジェクト・ボクセルの位相マップ値を前記二つの位相候補マップを用いて補正することによって逐次反復式アルゴリズムに従って実行させる。たとえば、初期には内部ボクセルが特定の値に設定されてもよい。たとえば、0に等しくなるよう設定されてもよい。次いで、前記境界ボクセルの集合の値が、他のオブジェクト・ボクセルの値を補間するために使われる。これが次いで、前記オブジェクト・ボクセルのそれぞれについての前記二つの位相マップ値と比較されてもよく、次いで前記選別位相候補マップにおける前記位相マップ値が、前記二つの位相候補マップを使って補正されてもよい。次いで、補間は再び実行されてもよく、前記二つの位相候補マップとの比較も。これは、前記選別位相候補マップにおけるオブジェクト・ボクセルの解がある解に収束するまで繰り返されてもよい。
【0051】
もう一つの実施形態では、前記逐次反復式アルゴリズムは、前記選別位相候補マップにおける前記位相マップ値に最も近い前記二つの位相候補マップからの位相マップ値を選ぶことによって、前記内部ボクセルの集合の各ボクセルについての暫定位相マップ値を選択することを含む。次に、逐次反復式アルゴリズムは、各オブジェクト・ボクセルについての位相マップ値を暫定位相マップ値で置き換えることをも含む。逐次反復式アルゴリズムはさらに、空間的平滑化フィルタを使ってオブジェクト・ボクセルの位相マップ値を平滑化することを含む。逐次反復式アルゴリズムはさらに、前記オブジェクト・ボクセルの集合の各ボクセルについての位相マップ値が所定の基準に収束するまで、該逐次反復式アルゴリズムを繰り返すことを含む。所定の基準(単数または複数)はたとえば、逐次反復ループ当たりの諸ボクセルの値の最大の変化あるいは値が全体的にどのくらい変化するかを測る統計的測度であってもよい。
【0052】
もう一つの実施形態では、オブジェクト・ボクセルの位相マップ値は空間的平滑化フィルタを使って補間される。
【0053】
もう一つの実施形態では、前記逐次反復式アルゴリズムは、前記選別位相候補マップにおける局所的なボクセルの値に最も近い前記二つの位相候補マップからの位相マップ値を選ぶことによって、局所的なボクセルについての前記選別位相マップ値を選択することを含む。前記局所的なボクセルは、前記内部ボクセルの集合から選ばれ、前記境界ボクセルの集合から所定の距離以内である。逐次反復式アルゴリズムはさらに、前記局所的なボクセルを前記内部ボクセルの集合から前記境界ボクセルの集合に移すことを含む。逐次反復式アルゴリズムはさらに、前記境界ボクセルの集合の各ボクセルについての選別位相マップ値を使って前記オブジェクト・ボクセルの集合内の内部ボクセルの値を補間することを含む。逐次反復式アルゴリズムはさらに、前記内部ボクセルの集合全部が前記境界ボクセルの集合の要素になるまで逐次反復式アルゴリズムを繰り返すことを含む。この実施形態では、前記境界ボクセルの集合近くのオブジェクト・ボクセルの値が計算される。これは、前記二つの位相候補マップからのボクセルのどれが選択されるべきかを正確に決定するために、既知の境界条件に隣接する真の位相マップの値が使用できると想定されるからである。ひとたびボクセルが選択されたら、それに隣接する値ボクセルを計算するために、これが使用されることができる。このように、この実施形態は、さまざまなボクセルを通じた伝搬として解を計算する。
【0054】
もう一つの実施形態では、前記メモリはさらに事前の位相マップを有している。位相候補選択アルゴリズムは前記プロセッサに、最小化アルゴリズムを解くことによってオブジェクト・ボクセルの位相マップ値を計算させる。最小化アルゴリズムは、境界ボクセルの位相マップ値の、事前の位相マップにおける対応するボクセルからの逸脱を測る第一のペナルティー項を有する。最小化アルゴリズムは、オブジェクト・ボクセルの位相マップの空間変動を測る第二のペナルティー項を有する。この例では、選別位相候補マップの計算は、事前の位相マップからの事前の知識を使うことによって改善される。
【0055】
もう一つの実施形態では、位相候補選択アルゴリズムは、前記プロセッサに、TRWSアルゴリズムに従って内部ボクセルの位相マップ値を計算させる。
【0056】
もう一つの実施形態では、機械実行可能命令は、前記プロセッサにさらに、磁気共鳴データおよび前記選別位相マップを用いて磁気共鳴画像を再構成させる。この段階において、ディクソン法が完了し、磁気共鳴画像が再構成される。
【0057】
もう一つの側面では、本発明は、撮像ゾーン内の被験体から磁気共鳴データを収集するために磁気共鳴撮像システムを制御するプロセッサによる実行のための機械実行可能命令を有するコンピュータ・プログラム・プロダクトを提供する。磁気共鳴撮像システムは、パルス・シーケンス・データを記憶するためのメモリを有する。パルス・シーケンス・データは、n点ディクソン磁気共鳴撮像法を使って磁気共鳴データを収集するためのコマンドを含む。nは2以上である。前記命令の実行は、前記プロセッサに、磁気共鳴データを収集するようパルス・シーケンス・データをもって磁気共鳴撮像システムを制御させる。機械実行可能命令の実行は、前記プロセッサにさらに、n点ディクソン磁気共鳴撮像法に従って前記磁気共鳴データを使って二つの位相候補マップを構築させる。二つの位相候補マップのそれぞれは画像空間にある。二つの位相候補マップのそれぞれは、ボクセルの集合を含む。ボクセルの該集合は同一であってもよい。各ボクセルは位相マップ値をもつ。
【0058】
機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、オブジェクト識別アルゴリズムを使って前記ボクセルの集合のそれぞれを、オブジェクト・ボクセルの集合中および背景ボクセルの集合中に分割させる。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、前記境界識別アルゴリズムを使って境界ボクセルの集合および内部ボクセルを前記オブジェクト・ボクセルの集合内で識別させる。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、選別位相候補マップを前記メモリにおいて生成させる。選別位相候補マップは、前記ボクセルの集合を含む。前記選別位相候補マップは、前記二つの位相候補マップのいずれかと異なる値をもっていてもよい独自のボクセルの集合をもつ。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部について、前記二つの位相候補マップから選別位相マップ値を選択させる。該位相マップ値は、前記二つの位相候補マップのそれぞれにおける前記境界ボクセルの集合の各ボクセルについての候補位相マップ値を比較することによって、最低の脂肪対水比を示す候補位相マップ値を選択することによって、選ばれる。機械実行可能命令の実行はさらに、前記プロセッサに、位相候補選択アルゴリズムに従ってオブジェクト・ボクセルの位相マップ値を計算させる。
【0059】
位相候補選択アルゴリズムのための入力は、前記二つの位相候補マップと、前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部についての前記選別位相マップ値とを含む。
【0060】
もう一つの側面では、本発明は、撮像ゾーン内の被験体から磁気共鳴データを収集するために有用な、磁気共鳴撮像システムを動作させる方法を提供する。本方法は、磁気共鳴データを収集するようパルス・シーケンス・データをもって磁気共鳴撮像システムを制御する段階を含む。パルス・シーケンス・データは、n点ディクソン磁気共鳴撮像法を使ってまたはそれに従って磁気共鳴データを収集するためのコマンドを含む。nは2以上である。nは整数であってもよい。本方法はさらに、n点ディクソン磁気共鳴撮像法に従って前記磁気共鳴データを使って二つの位相候補マップを構築する段階を含む。二つの位相候補マップのそれぞれは画像空間にある。二つの位相候補マップのそれぞれは、ボクセルの集合を含む。二つの位相候補マップのそれぞれにおけるボクセルの該集合は異なる値を有していてもよい。前記ボクセルの集合の各ボクセルは位相マップ値をもつ。各ボクセルの値は他とは異なっていてもよい。本方法はさらに、オブジェクト識別アルゴリズムを使って前記ボクセルの集合のそれぞれを、オブジェクト・ボクセルの集合中および背景ボクセルの集合中に分割することを含む。
【0061】
本方法は、境界識別アルゴリズムを使って境界ボクセルの集合および内部ボクセルを前記オブジェクト・ボクセルの集合内で識別することを含む。本方法はさらに、選別位相候補マップを生成することを含む。選別位相候補マップは、前記ボクセルの集合を含む。これはたとえば、コンピュータのメモリにおいてなされてもよい。本方法はさらに、前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部について、選別位相マップ値を前記二つの位相候補マップから選択する段階を含む。位相マップ値は、前記二つの位相候補マップのそれぞれにおける前記境界ボクセルの集合の各ボクセルについての候補位相マップ値を比較し、最低の脂肪対水比を示す候補位相マップ値を選択することによって、選ばれる。これは個々の各ボクセルについてなされる。各ボクセルについての脂肪対水比は比較され、最低の値をもつものが選択される。本方法はさらに、位相候補選択アルゴリズムに従ってオブジェクト・ボクセルの位相マップ値を計算することを含む。位相候補選択アルゴリズムのための入力は、前記二つの位相候補マップと、前記選別位相マップにおける前記境界ボクセルの集合の少なくとも一部についての前記選別位相マップ値とを含む。
【0062】
本発明の上述した実施形態の一つまたは複数が、それらが互いに背反でない限り、組み合わされてもよいことは理解される。