特許第6626523号(P6626523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626523
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20191216BHJP
   B60W 40/068 20120101ALI20191216BHJP
【FI】
   B60W30/02 310
   B60W40/068
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-62729(P2018-62729)
(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公開番号】特開2019-172078(P2019-172078A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 能英瑠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章也
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−230543(JP,A)
【文献】 特開2011−001003(JP,A)
【文献】 特許第4277799(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/023305(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 − 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が接触している路面の摩擦係数である第1の路面摩擦係数を算出する第1の路面摩擦係数算出部と、
路面状態を非接触で検出する非接触センサからの検出値に基づいて第2の路面摩擦係数を算出する第2の路面摩擦係数算出部と
記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で車両の制駆動力を制御し、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両前方に摩擦係数が低い低摩擦路面が存在すると判定された場合は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に前記第2の路面摩擦係数に基づいて前記摩擦円を縮小しながら前記摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御し、前記低摩擦路面に前記車両が到着した後に、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御する制駆動力制御部と、
を備える、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制駆動力制御部は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に、前記摩擦円の大きさを、前記第1の路面摩擦係数に相当する大きさから前記第2の路面摩擦係数に相当する大きさまで縮小することを特徴とする、請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
車両前方に前記低摩擦路面が存在するか否かを判定する低摩擦路面判定部を備え、
前記第2の路面摩擦係数算出部は、所定の制御周期毎に前記第2の路面摩擦係数を算出し、
前記低摩擦路面判定部は、前回の制御周期よりも現制御周期の方が前記第2の路面摩擦係数の値が小さい場合に、車両前方に前記低摩擦路面が存在すると判定することを特徴とする、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制駆動力制御部は、車両が所定の距離を走行する間に前記低摩擦路面が存在することが少なくとも2回判定された場合に、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両の制駆動力を制御することを特徴とする、請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制駆動力制御部は、車両前方に前記低摩擦路面が存在すると判定された場合に、前記第2の路面摩擦係数に基づいて前輪の駆動力をトルクダウンするとともに、後輪をトルクアップすることを特徴とする、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記第1の路面摩擦係数算出部は、車軸に設けられたハブユニットセンサ からの検出値に基づいて前記第1の路面摩擦係数を算出することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
車輪が接触している路面の摩擦係数である第1の路面摩擦係数を算出するステップと、
路面状態を非接触で検出する非接触センサからの検出値に基づいて第2の路面摩擦係数を算出するステップと
記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で車両の制駆動力を制御し、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両前方に摩擦係数が低い低摩擦路面が存在すると判定された場合は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に前記第2の路面摩擦係数に基づいて前記摩擦円を縮小しながら前記摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御し、前記低摩擦路面に前記車両が到着した後に、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御するステップと、
を備える、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置及び車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1には、前後駆動力配分制御手段および制動力制御手段を適切に制御することで前後左右全4輪のタイヤ力を最大限活用し、タイヤ限界付近における車両安定性を維持しつつ限界性能を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ力を最大限活用して車両の制駆動力を制御するため、摩擦係数に基づく制御を行うことが望ましい。一方、摩擦係数を正確に推定することには一定の困難が伴う。更に、摩擦係数を正確に推定できたとしても、車両が現在走行している路面が高μであり、車両前方に低μの路面が存在している場合は、車両が突然低μ路に突入し、車両挙動が不安定になる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、車両が走行している路面と車両前方の路面の摩擦係数に基づいて車両を最適に制御することが可能な、新規かつ改良された車両の制御装置及び車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車輪が接触している路面の摩擦係数である第1の路面摩擦係数を算出する第1の路面摩擦係数算出部と、路面状態を非接触で検出する非接触センサからの検出値に基づいて第2の路面摩擦係数を算出する第2の路面摩擦係数算出部と、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で車両の制駆動力を制御し、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両前方に摩擦係数が低い低摩擦路面が存在すると判定された場合は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に前記第2の路面摩擦係数に基づいて前記摩擦円を縮小しながら前記摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御し、前記低摩擦路面に前記車両が到着した後に、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御する制駆動力制御部と、を備える、車両の制御装置が提供される。
【0008】
また、前記制駆動力制御部は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に、前記摩擦円の大きさを、前記第1の路面摩擦係数に相当する大きさから前記第2の路面摩擦係数に相当する大きさまで縮小するものであっても良い。
【0009】
また、車両前方に前記低摩擦路面が存在するか否かを判定する低摩擦路面判定部を備え、前記第2の路面摩擦係数算出部は、所定の制御周期毎に前記第2の路面摩擦係数を算出し、前記低摩擦路面判定部は、前回の制御周期よりも現制御周期の方が前記第2の路面摩擦係数の値が小さい場合に、車両前方に前記低摩擦路面が存在すると判定することを特徴とするものであっても良い。
【0010】
また、前記制駆動力制御部は、車両が所定の距離を走行する間に前記低摩擦路面が存在することが少なくとも2回判定された場合に、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両の制駆動力を制御するものであっても良い。
【0011】
また、前記制駆動力制御部は、車両前方に前記低摩擦路面が存在すると判定された場合に、前記第2の路面摩擦係数に基づいて前輪の駆動力をトルクダウンするとともに、後輪をトルクアップするものであっても良い。また、前記第1の路面摩擦係数算出部は、車軸に設けられたハブユニットセンサ からの検出値に基づいて前記第1の路面摩擦係数を算出するものであっても良い。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車輪が接触している路面の摩擦係数である第1の路面摩擦係数を算出するステップと、路面状態を非接触で検出する非接触センサからの検出値に基づいて第2の路面摩擦係数を算出するステップと、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で車両の制駆動力を制御し、前記第2の路面摩擦係数に基づいて車両前方に摩擦係数が低い低摩擦路面が存在すると判定された場合は、前記低摩擦路面に車両が到達するまでの間に前記第2の路面摩擦係数に基づいて前記摩擦円を縮小しながら前記摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御し、前記低摩擦路面に前記車両が到着した後に、前記第1の路面摩擦係数によって定まる摩擦円の範囲内で前記制駆動力を制御するステップと、を備える、車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、車両が走行している路面と車両前方の路面の摩擦係数に基づいて車両を最適に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両システムの構成について説明するための模式図である。
図3A】第2の摩擦係数算出部が路面状態を判定する際に使用するマップを示す模式図である。
図3B図3Aのマップ3次元マップを2次元マップに分解して示す模式図である。
図3C図3Aのマップ3次元マップを2次元マップに分解して示す模式図である。
図3D図3Aのマップ3次元マップを2次元マップに分解して示す模式図である。
図3E図3Aのマップ3次元マップを2次元マップに分解して示す模式図である。
図4】路面状態と摩擦係数の関係を予め規定したデータベースの例を示す模式図である。
図5】本実施形態の車両システムの基本的な処理を示すフローチャートである。
図6】コーナリングフォースFと横すべり角βによって定まるコーナリングスティフネス(傾き)を示す模式図である。
図7図5のステップS30における、前方低μ路検出時制御のフローを詳細に示すフローチャートである。
図8図5のステップS28、図7のステップS56における、摩擦円に基づく制駆動力制御を示す模式図である。
図9図7のステップS56の処理を詳細に示す模式図である。
図10】通常走行時に前輪と後輪のそれぞれについて、Fx,Fyの合力が摩擦円(μcmaxFz)の範囲内で制駆動力制御されている様子を示す模式図である。
図11】車両前方に低μ路が検出された場合に行われる前輪と後輪の制駆動力制御を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る車両2000の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る車両2000を示す模式図である。図1に示すように、車両2000は、前輪100,102、後輪104,106、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動する駆動力発生装置(モータ)108,110,112,114、モータ108,110,112,114の駆動力を前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれに伝達するギヤボックス116,118,120,122及びドライブシャフト131,132,133,134、モータ108,110,112,114のそれぞれを制御するインバータ123,124,125,126、後輪104,106のそれぞれの車輪速(車両速度V)を検出する車輪速センサ127,128、前輪100,102を操舵するステアリングホイール130、舵角センサ138、パワーステアリング機構140、を有して構成されている。
【0017】
また、車両2000は、路面摩擦係数を取得するための第1のセンサ150(ハブユニットセンサ)及び第2のセンサ160(非接触式センサ)、アクセル開度センサ170、ブレーキセンサ180、車速センサ190、横方向加速度センサ195、制御装置(コントローラ)200を有して構成されている。
【0018】
本実施形態に係る車両2000は、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動するためにモータ108,110,112,114が設けられている。このため、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれで駆動トルクを制御することができる。従って、前輪100,102の操舵によるヨーレート発生とは独立して、前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれを駆動することで、トルクベクタリング制御によりヨーレートを発生させることができ、これによってステアリング操舵のアシストを行うこともできる。
【0019】
各モータ108,110,112,114は、制御装置200の指令に基づき各モータ108,110,112,114に対応するインバータ123,124,125,126が制御されることで、その駆動が制御される。各モータ108,110,112,114の駆動力は、各ギヤボックス116,118,120,122及びドライブシャフト131,132,133,134を介して前輪100,102及び後輪104,106のそれぞれに伝達される。
【0020】
パワーステアリング機構140は、ドライバーによるステアリングホイール130の操作に応じて、トルク制御又は角度制御により前輪100,102の舵角を制御する。舵角センサ138は、運転者がステアリングホイール130を操作して入力したステアリング操舵角θhを検出する。
【0021】
なお、本実施形態はこの形態に限られることなく、後輪104,106のみが独立して駆動力を発生する車両であっても良い。
【0022】
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る車両システム1000の構成について説明する。この車両システム1000は、車両2000に搭載される。図2に示すように、本実施形態に係る車両システム1000は、第1のセンサ150、第2のセンサ160、アクセル開度センサ170、ブレーキセンサ180、車速センサ190、横方向加速度センサ195、制御装置200、ブレーキアクチュエータ300、インバータ123,124,125,126、モータ108,110,112,114、を有して構成されている。
【0023】
制御装置200は、車両システム1000の全体を制御する。制御装置200は、第1の路面摩擦係数算出部210、第2の路面摩擦係数算出部220、低摩擦路面判定部225、制駆動力制御部230、を有している。図2に示す制御装置200の構成要素は、回路(ハードウェア)、またはCPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成することができる。
【0024】
第1のセンサ150、及び第2のセンサ160は、路面摩擦係数を取得するための各種パラメータを検出する。第1のセンサ150は、車輪のハブに設けられるハブユニットセンサから構成され、前輪100,102及び後輪104,106に作用する作用力を検出する。第1のセンサ150によって検出される作用力には、前後方向力Fx、横力Fyおよび上下力Fzを含む三方向の分力と、ハブ(車軸)の軸周りのトルクTyとがある。前後方向力Fxは、前輪100,102及び後輪104,106の接地面に発生する摩擦力のうち車輪中心面に平行な方向(x軸方向、前後方向)に発生する分力であり、横力Fyは、車輪中心面に直角な方向(y軸方向、横方向)に発生する分力である。なお、車輪中心面は、車軸と直交し、車輪幅の中央を通る面をいうものとする。一方、上下力Fzは、鉛直方向(z軸)に作用する力、いわゆる、垂直荷重である。トルクTyは、タイヤ800の車軸回りのトルク(ねじり力)である。
【0025】
例えば、前輪100,102及び後輪104,106は、ひずみゲージと、このひずみゲージから出力される電気信号を処理し、作用力に応じた検出信号を生成する信号処理回路とを主体に構成されている。ハブに生じる応力は作用力に比例するという知得に基づき、ひずみゲージをハブに埋設することにより、作用力が直接的に検出される。なお、検出部420の具体的な構成については、例えば、特開平04−331336号公報、特開平10−318862号公報、特許第4277799号等に開示されている構成を採用できる。第1のセンサ150は、ドライブシャフト131,132,133,134に設けられていても良い。
【0026】
制御装置200の第1の摩擦係数算出部210は、第1のセンサ150により前後方向力Fx、横力Fyおよび上下力Fzを含む三方向の分力が検出されると、これに基づいて路面の摩擦係数をリアルタイムに算出する。路面摩擦係数μcは、以下の式から算出することができる。
μc=√(Fx+Fy)/Fz
なお、上述の説明では、第1のセンサ150の検出値に基づいて車輪が接触している路面の路面摩擦係数μcを算出する例を示したが、例えば、タイヤ内に設けられたセンサや加速度計から車輪が接触している路面の摩擦係数を求めても良い。
【0027】
第1の摩擦係数算出部210により路面摩擦係数μcを算出し、タイヤの摩擦円に基づく制駆動力制御を行うことで、車両挙動を安定させることができる。一方、第1の摩擦係数算出部210が算出した路面摩擦係数μcは、路面摩擦係数を計測しようとする路面にタイヤが実際に接地してから計測され、現在走行中の路面の摩擦係数である。このため、路面摩擦係数μcに基づいて制駆動力制御を行うと、例えば、車両が高μ路から凍結路などの極端な低μ路に突入した場合に、FxとFyの合力のベクトルが低μ路でのタイヤ摩擦円(μFz)の半径よりはみ出してしまい、適切な制駆動力制御を実施する前にスリップを引き起こす可能性がある。
【0028】
このため、本実施形態では、第1のセンサ150を用いた路面摩擦係数μcの推定とは別に、第2のセンサ160を用いて、タイヤがまだ接地していない車両前方の路面の摩擦係数を推定する。第2のセンサ160は、車両前方を撮像するカメラ、温度センサ(外気温センサ、路面温度センサ)、近赤外線センサ、レーザ光センサ(TOF(Time of Flight)センサ)等の非接触式センサを備えるハイブリッドタイプのセンサであり、車両前方の画像、温度、路面状態等を検出する。なお、第2のセンサ160による路面状態の判別の際に、例えば特開2006−46936号公報に記載されている方法を採用しても良い。
【0029】
制御装置200の第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160により車両前方の画像、温度等が検出されると、これに基づいて路面の摩擦係数をリアルタイムに算出する。
【0030】
具体的に、第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160のカメラの画像から車両前方の路面の色、路面粗さ等を取得する。また、第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160の非接触式温度計から、外気温、路面温度を取得する。
【0031】
また、第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160の近赤外線センサの検出値から、路面の水分量を取得する。近赤外線を路面に照射した際に、路面に水分が多いと近赤外線の反射量が少なくなり、路面に水分が少ないと近赤外線の反射量が多くなる。従って、第2の摩擦係数算出部220は、近赤外線センサの検出値に基づいて、路面の水分量を取得することができる。
【0032】
また、第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160のレーザ光センサから、路面の粗さを取得する。より詳細には、レーザ光を照射してからその反射光が検出されるまでの時間に基づいて、車両前方の路面の粗さ(凹凸)を取得することができる。なお、第2の摩擦係数算出部220は、車両速度に基づいて、車両走行に伴う路面の移動分を考慮して、車両前方の領域の路面の粗さを取得する。
【0033】
第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160から取得したこれらの情報から、路面状態がドライ(D)、ウェット(W)、雪(S)、氷(I)であるかを判定する。図3Aは、第2の摩擦係数算出部220が路面状態を判定する際に使用するマップを示す模式図である。図3Aに示すマップは、路面温度、路面凹凸、及び路面の水分量のそれぞれを正規化した値をパラメータとする、3次元マップとされている。図3B図3Eは、図3Aのマップ3次元マップを2次元マップに分解して示す模式図である。図3Bは、路面温度(Z軸)、路面凹凸(X軸)、及び路面の水分量(Y軸)の座標系を、図3C図3Bの(1)面の2次元マップを、図3D図3Bの(2)面の2次元マップを、図3E図3Bの(3)面の2次元マップを、それぞれ示している。第2の摩擦係数算出部220は、第2のセンサ160による検出値から取得した路面温度、路面凹凸、路面水分量を図3Aのマップに当てはめて、路面状態を判定する。
【0034】
そして、第2の摩擦係数算出部220は、図3Aのマップから判定した路面状態を、路面状態と路面摩擦係数の関係を予め規定したデータベースに反映させることで、路面摩擦係数μNを算出する。図4は、路面状態と摩擦係数の関係を予め規定したデータベースの例を示す模式図である。図4に示す路面状態と摩擦係数との関係として、(株)日本交通事故鑑識研究所のホームページ(http://weekend.nikkouken.com/week47/409/)に記載された摩擦係数表を用いることができる。図4に示すデータベースでは、縦方向では、路面状況である「アスファルト」、「コンクリート」、「砂利」、「氷」、「雪」に応じた摩擦係数が示されている。また、横方向では、路面状況として、乾(ドライ(D))、濡(ウェット(W))に応じた摩擦係数が示されている。
【0035】
第2の摩擦係数算出部220は、図3Aのマップから判定した路面状態を図4のデータベースに当てはめ、路面摩擦係数μを算出する。この際、「アスファルト」、「コンクリート」、「砂利」の判定については、第2のセンサ160のカメラから取得した路面の画像と、予め取得しておいた「アスファルト」、「コンクリート」、「砂利」の各画像との類似度を判定した結果から、車両前方の路面が「アスファルト」、「コンクリート」、「砂利」のいずれであるかを判定する。
【0036】
更に、第2の摩擦係数算出部220は、車両前方の路面が「アスファルト」であると判定した場合に、第2のセンサ160のカメラから取得した路面の画像と、予め取得しておいた「新舗装」、「普通舗装」、「舗装摩減」、「タール過剰」の各画像との類似度を判定した結果から、車両前方の路面が「アスファルト」であり、「新舗装」、「普通舗装」、「舗装摩減」、「タール過剰」ののいずれであるかを判定する。第2の摩擦係数算出部220は、車両前方の路面が「コンクリート」、「砂利」であると判定した場合も同様に、更に細分化した判定を行うことができる。
【0037】
以上により、第2の摩擦係数算出部220は、路面状況と車両速度に基づいて、図4のデータベースから、車両前方の路面摩擦係数μfを算出する。例えば、第2のセンサ160のカメラの画像から、路面が「アスファルト」の「新舗装」であることが判定され、車速センサ190又は車輪速センサ127,128から検出される車両速度が40km/hであり、図3のマップから路面状況が乾(ドライ(D))と判定された場合、路面摩擦係数μfの値は0.8〜1.0として算出される。
【0038】
本実施形態では、第1のセンサ150と第2のセンサ160を組み合わせることで、通常走行時は第1のセンサ150による精度の高い制駆動制御を実施する。また、車両が高μ路から低μ路(低摩擦路面)に突入する前に、第2のセンサ160から推定した路面状態に基づいて、低摩擦路面判定部225が車両前方に低摩擦路面が存在するか否かを判定する。そして、車両前方に低摩擦路面が存在する場合は、制駆動力制御部230が、第2のセンサ160により算出された路面摩擦係数μfから摩擦円を演算し、低μ路に突入する前にスリップを最小限に抑制するための制駆動力制御を実施する。また、制駆動力制御部230は、摩擦円の大きさに基づいてインバータ123,124,125,126を制御することで、車両2000を駆動するモータ108,110,112,114の制駆動力を制御する。制駆動力制御部230は、摩擦円の大きさに基づいて、車両2000を制動するブレーキのブレーキアクチュエータ300を制御することで、制動力を制御する。
【0039】
図5は、本実施形態の車両システム1000の基本的な処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、主に制御装置200により、所定の制御周期毎(例えば、100ms毎)に行われる。先ず、ステップS10では、第1のセンサ150によりFx,Fy,Fzを検出する。次のステップS12では、横方向加速度センサ195が検出した車両の横方向加速度の値を積分して、横方向速度Vyを算出する。
【0040】
次のステップS14では、車両の進行方向速度Vx(車両速度V)と横方向速度Vyより車両横すべり角βを算出する。車両横すべり角βは、以下の式から算出することができる。
β=tan−1(Vy/Vx)
【0041】
次のステップS16では、車両横すべり角βからコーナリングフォースFを算出する。コーナリングフォースFは、以下のMagic Formulaの式に車両横すべり角βを代入することで求めることができる。なお、下式において、B,C,D,Eは所定の係数である。
F=Dsin(Ctan−1(Bβ−E(Bβtan−1(Bβ)))
【0042】
次のステップS18では、コーナリングフォースFと横すべり角βよりコーナリングスティフネス(傾き)を算出し、車両が現在走行している路面の最大摩擦係数μcmaxを推定する。図6は、コーナリングフォースFと横すべり角βによって定まるコーナリングスティフネス(傾き)を示す模式図である。図6に示すように、最小二乗法等を用いてコーナリングスティフネス(傾き)を推定し、最大摩擦係数μcmaxを推定する。図6に示すように、コーナリングスティフネス(傾き)が大きいほど、摩擦係数は大きくなる。なお、簡易的には、前述した演算式により路面摩擦係数μcを求め、最大摩擦係数μcmaxの代わりに路面摩擦係数μcを用いても良い。
【0043】
次のステップS20では、第2のセンサ160で車両前方の路面状態を判別するためのパラメータを取得する。次のステップS22では、第2の路面摩擦係数算出部220が、図3で説明した判定方法を用いて、ステップS20で取得したパラメータにより車両前方の路面状態を判別する。
【0044】
次のステップS24では、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも低μであるか否かを判定し、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも低μの場合は、ステップS26へ進む。なお、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも低μの場合とは、例えば、前回の制御周期で取得した前方路面状態がウェット(WET)であり、今回の制御周期で取得した前方路面状態がドライ(DRY)である場合が該当する。ステップS24の判定は、低摩擦路面判定部225により行われる。
【0045】
また、第2の路面摩擦係数算出部220は、図4で説明した方法で車両前方の路面摩擦係数μfを算出できるため、ステップS24では、前回の制御周期で取得した前方の路面摩擦係数μfが今回の制御周期で取得した路面摩擦係数μfよりも小さいか否かを判定し、前回の制御周期で取得した前方の路面摩擦係数μfが今回の制御周期で取得した路面摩擦係数μfよりも小さい場合にステップS26へ進むようにしても良い。
【0046】
ステップS26へ進んだ場合、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも低μであり、今回の制御周期で取得した路面状態の方が高μであることから、低摩擦路面判定部225が、車両前方に低摩擦路面が存在しないと判定している。このため、ステップS26では、現在の路面の最大摩擦係数μcmaxによる摩擦円(μcmaxFz)を演算する。摩擦円(μcmaxFz)は、以下の式から演算することができる。
μcmaxFz=μcmax*Fz
【0047】
次のステップS28では、第1のセンサ150から検出されるFx,Fyの合力が摩擦円(μcmaxFz)の半径に収まるように制駆動力制御を行う。
【0048】
一方、ステップS24において、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも低μではない場合は、ステップS30へ進む。ステップS30に進んだ場合、前回の制御周期で取得した前方路面状態が今回の制御周期で取得した前方路面状態よりも高μであり、今回の制御周期で取得した路面状態の方が低μであることから、車両の前方に車両位置よりも低μの路面を検出していることになる。つまり、低摩擦路面判定部225は、車両前方に低摩擦路面が存在すると判定している。従って、この場合は、前方低μ路検出時制御のフローに移行する。
【0049】
図7は、図5のステップS30における、前方低μ路検出時制御のフローを詳細に示すフローチャートである。先ず、ステップS40では、車両前方に低μ路を検出してから所定のしきい値[m]以上の距離を車両が進んだか否かを判定する。そして、車両前方に低μ路を検出してから所定のしきい値[m]以上の距離を車両が進んだ場合は、ステップS42へ進む。一方、車両前方に低μ路を検出してから所定のしきい値[m]以上の距離を車両が進んでいない場合は、ステップS40で待機する。
【0050】
ステップS42では、第2のセンサ160で車両前方の路面状態を判別するためのパラメータを取得する。ステップS42の処理は、図5のステップS22と同様に行われる。次のステップS44では、ステップS20で取得したパラメータにより車両前方の路面状態を判別する。次のステップS46では、車両前方が低μ路であるか否かを判定し、低μ路の場合はステップS48以降の処理へ進み、前方低μ路検出時制御を行う。ステップS46の判定は、図5のステップS24の判定と同様に行われる。一方、ステップS46で車両前方が低μ路でない場合は、図5の処理に戻る。
【0051】
このように、図5のステップS24で最初に低μ路を検出した後、車両2000が所定のしきい値以上の距離を進んだ場合に、図7のステップS46にて、車両前方が低μ路であるか否かの判定を再度行う。そして、車両前方が低μ路であることが再度検出された場合に、前方低μ路検出時制御が行われる。これにより、例えば前方に水溜りなど一時的に低μ路が検出された場合に、前方低μ路検出時制御が行われてしまうことを回避できる。第2のセンサ160により検出した低μ路が、濡れたマンホールに起因する場合など、低μ路の区間距離が非常に短く部分的であり、トルクダウンせずに通過したほうがよい場合には、不要なトルクダウンを行わないようにすることができる。従って、部分的な低μ路を通過する際に、駆動力を必要以上に低減をせずに通過することができる。
【0052】
ステップS48では、第2の摩擦係数算出部220が、車両前方の路面摩擦係数(μf)を推定する。次のステップS50では、路面摩擦係数(μf)に基づいて、車両前方の路面の摩擦円(μfFz)を演算する。摩擦円(μfFz)は、以下の式から演算することができる。なお、Fzは第1のセンサ150から検出できる。
μfFz=μf*Fz
【0053】
次のステップS52では、車両速度Vおよび車両前方の低μ路までの距離を取得する。次のステップS54では、車両前方の低μ路に到達するまでの制御ステップ回数(N)を推定する。
【0054】
次のステップS56では、ステップS50で演算した摩擦円を制御ステップ毎に徐々に小さくする。次のステップS58では、Fx,Fyの合力が摩擦円の半径に収まるように制駆動力制御を行う。
【0055】
次のステップS60では、制御ステップの回数がNに到達したか否かを判定し、制御ステップの回数がNに到達した場合はステップS62へ進む。ステップS62では、第1のセンサ150の検出値に基づいて、車両が低μ路に突入したことを検出する。第1のセンサ150の検出値により、車両2000が走行している路面の摩擦係数(第1の路面摩擦係数)を推定できるため、車両が低μ路に突入した後は、第1の路面摩擦係数に基づいて制駆動力制御が行われる。ステップS62の後は図5の基本フローチャートに戻る。
【0056】
また、ステップS60で制御ステップの回数がNに到達していない場合は、ステップS52に戻り、ステップS52以降の処理を引き続き行う。
【0057】
図8は、図5のステップS28、図7のステップS56における、摩擦円に基づく制駆動力制御を示す模式図である。図8に示す「通常走行時」の摩擦円(μcmaxFz)は、ステップS28の制駆動力制御に対応しており、その半径はμcmax*Fzである。図8に示すように、通常走行時には、摩擦円(μcmaxFz)の範囲内にFx,Fyの合力が収まるように制駆動力制御を行う。
【0058】
具体的に、車両がスリップしないためのFxの最大値Fmaxを以下の式より算出し、制駆動力がFmaxを超えないように制駆動力制御を行う。
Fmax=√(μcmax−Fy
【0059】
また、図8に示す「前方低μ路検出時」、「低μ路突入時」は、図7のステップS56の制駆動力制御に対応している。図8の「前方低μ路検出時」に示すように、前方低μ路を検出した場合は、矢印A1で示すように、摩擦円の大きさが制御ステップ毎に摩擦円(μfFz)まで縮小される。そして、制御ステップ毎に摩擦円を縮小していく過程で、摩擦円の範囲内にFx,Fyの合力が収まるように制駆動力制御を行う。図7のステップS60で制御ステップ回数がNに到達すると、摩擦円の大きさは図8に示す「低μ路突入時」の破線の摩擦円(μfFz)まで縮小している。低μ路の突入時は、この摩擦円(μfFz)の範囲内にFx,Fyの合力が収まるように制駆動力制御を行う。
【0060】
つまり、図7のステップS48で推定した車両前方の路面摩擦係数(μf)に基づいて摩擦円(μfFz)を演算し、ステップS56で摩擦円(μcmaxFz)から摩擦円(μfFz)へ徐々に縮小することで、低μ路への突入前にFx,Fyの合力が摩擦円(μfFz)内に収まるように制駆動力制御を行う。図8に示す「低μ路突入時」の実線の摩擦円は、制駆動力制御が行われた実際のFx,Fyの合力を示している。
【0061】
このように、前方の低μ路を検出した時点から摩擦円を縮小していくことにより、車両が低μ路に突入した時点では、図8に示す「低μ路突入時」の破線の摩擦円まで摩擦円(μfFz)の大きさが縮小している。従って、車両が低μ路に突入した際にスリップの発生を抑止して車両挙動を確実に安定させることができる。低μ路突入時に第1のセンサ150に基づいて取得した路面摩擦係数μcが第2のセンサ160に基づいて取得した路面摩擦係数μfより小さくても、スリップを抑制した制駆動力制御を行うことができる。
【0062】
以上にように、第2のセンサ160の検出に基づいて車両前方に低μ路を検知してから、低μ路に突入するまでに徐々に面摩擦円の径を小さくし、摩擦円の径に応じて、徐々にトルク制限を実施するトルクダウンを行う。車両2000が実際に走行する路面が低μ路になってから制駆動力制御を実施するのではなく、低μ路に突入するまでに制駆動力制御を実施することで、急な加減速を低減することができるとともに、低μ路に突入した際の車両挙動を確実に安定させることができる。また、車両2000が低μ路に突入してから制動が必要な場合、低μ路に突入するまでにトルクダウンが行われているため、制動距離を抑えることができる。また、摩擦円を大きく超えない範囲で制駆動制御を実施することが可能であるため、車両2000の操縦安定性を確保することができる。
【0063】
一方、ステップS56の処理を実施しない場合、図8に示す「低μ路突入時」の合力ベクトルPに示すように、合力ベクトルPが摩擦円から逸脱するため、車両にスリップが発生して車両挙動が不安定になる可能性がある。
【0064】
図9は、図7のステップS56の処理を詳細に示す模式図である。ここでは、車両が時速54kmで走行中に、車両よりも前方6mの位置に低μ路を検出した場合を例に挙げて説明する。制御周期を100msとすると、制御周期毎に車両が進む距離は1.5mであるから、低μ路を検出してから低μ路に到達するまでの制御ステップ数は“4”となる。
【0065】
図7のステップS56では、図9に示すように、制御ステップ4回目の路面摩擦係数の半径がμf×Fzとなるように、ステップ毎に路面摩擦係数の半径を小さくし、駆動力を路面摩擦係数の半径に収まるようにトルクダウンする。
【0066】
制御周期が短いほど、また第2のセンサ160の前方検出距離が長い程、摩擦円の径を小さくするためのステップ数が多くなり、細かいトルクダウン制御を実施することができる。
【0067】
次に、前輪100,102の駆動力を上述した手法によりトルクダウンした場合に、車両の総駆動力の低下を後輪104,106の駆動力によって補償する手法について説明する。図10は、通常走行時に前輪100,102と後輪104,106のそれぞれについて、Fx,Fyの合力が摩擦円(μcmaxFz)の範囲内で制駆動力制御されている様子を示している。
【0068】
図11は、車両前方に低μ路が検出された場合に行われる前輪100,102と後輪104,106の制駆動力制御を示す模式図である。図10に示す状態で、車両前方に低μ路が検出されると、前輪100,102の駆動力は、上述した手法により、摩擦円(μfFz)の範囲内にFx,Fyの合力が収まるように制御される。つまり、前輪100,102については、摩擦円(μfFz)の範囲内にFx,Fyの合力が収まるようにトルクダウンが行われる。つまり、Fx,Fyの合力が破線に示す合力から実線で示す合力になるようにトルクダウンが行われる。
【0069】
一方、後輪104,106については、Fx,Fyの合力が破線に示す合力から実線で示す合力になるようにトルクアップが行われる。具体的に、後輪104,106については、摩擦円(μcmaxFz)に収まる範囲内で、前輪100,102でトルクダウンされた分の駆動力を付与することにより、車両全体としての総駆動力を低減することなくトルク制御を実施することができる。上述の制御により、前輪100,102のトルクダウンは低μ路に突入するまでの間に徐々に行われるため、後輪104,106のトルクアップも徐々に行われる。従って、車両2000が低μ路に到達するまでの間に、車両2000が過度に減速することを抑制でき、車両2000の乗員に対し、トルクダウンをできるだけ感知させないようにすることができる。一方、車両2000が低μ路に到達する直前には、後輪104,106についてもトルクダウンを行うことが望ましい。これにより、車両2000が低μ路に突入する際に、車両挙動を安定させることができる。
【0070】
このように、第2のセンサ160により前方に低μ路を検知してから、低μ路に突入するまでに前輪100,102のトルクダウンを実施し、前輪100,102でトルクダウンした分を、摩擦円の径に収まる範囲で後輪の駆動力へ配分することで総駆動力を維持することができる。これにより、前輪100,102のスリップを抑制するように低μ路に突入することができ、且つ、総駆動力の低下を抑制することが可能となる。前輪側の駆動力を低減した分を、後輪の駆動力へ配分することで、不必要に駆動力を低減することなく、かつ安全に低μ路に突入することができる。
【0071】
以上説明したように本実施形態によれば、通常時は第1のセンサ150の検出値から推定した第1の路面摩擦係数に基づいて制駆動力を制御し、車両前方に低摩擦路面が存在する場合は、第2の路面摩擦係数に基づいて制駆動力を制御するようにしたため、車両が低摩擦路面に突入する際に車両挙動を安定させることが可能となる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
150 第1のセンサ
160 第2のセンサ
200 制御装置
210 第1の摩擦係数算出部
220 第2の摩擦係数算出部
225 低摩擦路面判定部
230 制駆動力制御部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11