特許第6626524号(P6626524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626524
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】電気加熱型触媒用担体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20191216BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20191216BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20191216BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20191216BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20191216BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   B01J35/02 GZAB
   B01J35/04 301F
   B01D53/86 100
   F01N3/20 K
   F01N3/28 301P
   B01D53/94 100
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-65721(P2018-65721)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171345(P2019-171345A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 尚哉
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−149311(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098889(WO,A1)
【文献】 特開2014−155884(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/063353(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086815(WO,A1)
【文献】 特開2018−172258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周壁に配設された一対の電極層と、
一対の電極部と、を備え、
各電極層が、前記ハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極層が前記ハニカム構造体の中心を挟んで対向するように配設され、各電極層が、導電性を有し、互いに離間した2つ以上の下地層を介して各電極部と電気的に接合され、
各電極部は、2つ以上の電極を有し、各電極は、前記下地層の外表面に固定される電気加熱型触媒用担体。
【請求項2】
各下地層が円形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の直径Bとが、B/A≦0.9の関係を満たす請求項1に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項3】
B/A≦0.7の関係を満たす請求項2に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項4】
各下地層が矩形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の長辺Cとが、C/A≦0.9の関係を満たす請求項1に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項5】
C/A≦0.7の関係を満たす請求項4に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項6】
流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周壁に配設された一対の電極層と、
一対の電極部と、を備え、
各電極層が、前記ハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極層が前記ハニカム構造体の中心を挟んで対向するように配設され、各電極層が、導電性を有し、互いに離間した2つ以上の下地層を介して各電極部と電気的に接合され、
各電極部は、2つ以上の電極を有し、前記電極は、固定層により前記下地層の外表面に固定される電気加熱型触媒用担体。
【請求項7】
各下地層が円形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の直径Bとが、B/A≦0.9の関係を満たす請求項6に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項8】
B/A≦0.7の関係を満たす請求項7に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項9】
各下地層が矩形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の長辺Cとが、C/A≦0.9の関係を満たす請求項6に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項10】
C/A≦0.7の関係を満たす請求項9に記載の電気加熱型触媒用担体。
【請求項11】
前記下地層の表面粗さRaが3μm以上である請求項6〜10のいずれかに記載の電気加熱型触媒用担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱型触媒用担体に関する。とりわけ、ハニカム構造体、電極層及び電極部を有し、当該電極層及び当該電極部が下地層を介して電気的に接合される電気加熱型触媒用担体において、下地層のクラック発生を効果的に抑制できる電気加熱型触媒用担体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェライトや炭化珪素を材料とするハニカム構造体に触媒を担持したものが、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このようなハニカム構造体は、排ガスの流路となり一方の底面から他方の底面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する柱状のハニカム構造体を一般に有する。
【0003】
ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題が従来生じていた。そこで、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン始動前又はエンジン始動時に活性温度まで昇温する電気加熱触媒(EHC)と呼ばれるシステムが開発されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1においては、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することができるハニカム構造体が提案されている。具体的には、柱状のハニカム構造体の側面に一対の電極部をハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に配設し、セルの延びる方向に直交する断面において、一対の電極部における一方の電極部を、一対の電極部における他方の電極部に対して、ハニカム構造体の中心を挟んで反対側に配設することで電圧を印加したときの温度分布の偏りを抑制することが提案されている。
【0005】
ハニカム構造体に対して十分な通電性能を満たすためには、電極部がハニカム構造体に対して十分に接合されている必要がある。特許文献2では、その方策の一つとして、電極層と電極部の金属電極界面でのクラックまたは破断を避けるために、熱膨張差の緩和のために下地層を電極層と金属電極の間に形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/146955号
【特許文献2】特許第5246337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、金属電極を固定する範囲全面に下地層を形成した場合、金属電極を固定した下地層と固定していない下地層の間に温度差が発生し、下地層にクラックが発生する問題があった。下地層にクラックが発生すると、使用中の自動車の振動で下地層が剥がれたり、電流が予期通りに流れなかったりする可能性があり、また外観上好ましくない。そのため、下地層としての熱膨張差を緩和する機能を保持しつつ、温度差を緩和して下地層のクラックを防止することが必要となる。
【0008】
本発明は以上の問題を勘案してされたものであり、ハニカム構造体、電極層及び電極部を有し、当該電極層及び当該電極部が下地層を介して電気的に接合される電気加熱型触媒用担体において、下地層のクラック発生を効果的に抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、下地層の形状、配置等を制御することにより、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下のように特定される。
(1)流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周壁に配設された一対の電極層と、
一対の電極部と、を備え、
各電極層が、前記ハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極層が前記ハニカム構造体の中心を挟んで対向するように配設され、各電極層が、導電性を有し、互いに離間した2つ以上の下地層を介して各電極部と電気的に接合され、
各電極部は、2つ以上の電極を有し、各電極は、前記下地層の外表面に固定される電気加熱型触媒用担体。
(2)各下地層が円形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の直径Bとが、B/A≦0.9の関係を満たす(1)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(3)B/A≦0.7の関係を満たす(2)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(4)各下地層が矩形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の長辺Cとが、C/A≦0.9の関係を満たす(1)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(5)C/A≦0.7の関係を満たす(4)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(6)流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外周壁に配設された一対の電極層と、
一対の電極部と、を備え、
各電極層が、前記ハニカム構造体のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極層が前記ハニカム構造体の中心を挟んで対向するように配設され、各電極層が、導電性を有し、互いに離間した2つ以上の下地層を介して各電極部と電気的に接合され、
各電極部は、2つ以上の電極を有し、前記電極は、固定層により前記下地層の外表面に固定される電気加熱型触媒用担体。
(7)各下地層が円形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の直径Bとが、B/A≦0.9の関係を満たす(6)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(8)B/A≦0.7の関係を満たす(7)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(9)各下地層が矩形であり、下地層間のピッチAと、各下地層の長辺Cとが、C/A≦0.9の関係を満たす(6)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(10)C/A≦0.7の関係を満たす(9)に記載の電気加熱型触媒用担体。
(11)前記下地層の表面粗さRaが3μm以上である(6)〜(10)のいずれかに記載の電気加熱型触媒用担体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハニカム構造体、電極層及び電極部を有し、当該電極層及び当該電極部が下地層を介して電気的に接合される電気加熱型触媒用担体において、下地層のクラック発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明におけるハニカム構造体の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態における電気加熱型触媒用担体の断面図である。
図3】本発明の一実施形態における下地層の配置を示す図である。
図4】本発明の別の実施形態における下地層の配置を示す図である。
図5】本発明の一実施形態における電極部の固定状態を示す図である。
図6】本発明の別の実施形態における電極部の固定状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の電気加熱型触媒用担体の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0013】
(1.ハニカム構造体)
図1は本発明におけるハニカム構造体の一例を示すものである。ハニカム構造体10は、流体の流路となり流体の流入側の端面である流入端面から流体の流出側の端面である流出端面まで延びる複数のセル12を区画形成する多孔質の隔壁11と、最外周に位置する外周壁とを有する。セル12の数、配置、形状等及び隔壁11の厚み等は制限されず、必要に応じて適宜設計することができる。
【0014】
ハニカム構造体10は導電性を有する限り特に材質に制限はなく、金属やセラミックス等を使用可能である。特に、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造体10の材質は、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素であることが更に好ましい。ハニカム構造体の電気抵抗率を下げるために、ケイ化タンタル(TaSi2)、ケイ化クロム(CrSi2)を配合することもできる。ハニカム構造体10が珪素−炭化珪素複合材を主成分とするというのは、ハニカム構造体10が珪素−炭化珪素複合材(合計質量)を、ハニカム構造体全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、ハニカム構造体10が炭化珪素を主成分とするというのは、ハニカム構造体10が炭化珪素(合計質量)を、ハニカム構造体全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0015】
ハニカム構造体10の電気抵抗率は、印加する電圧に応じて適宜設定すればよく、特段の制限はないが、例えば0.001〜200Ω・cmとすることができる。64V以上の高電圧用には2〜200Ω・cmとすることができ、典型的には5〜100Ω・cmとすることができる。また、64V未満の低電圧用には0.001〜2Ω・cmとすることができ、典型的には0.001〜1Ω・cmとすることができ、より典型的には0.01〜1Ω・cmとすることができる。
【0016】
ハニカム構造体10の隔壁11の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、35〜45%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0017】
ハニカム構造体10の隔壁11の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0018】
セル12の流路方向に直交する断面におけるセル12の形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体100に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0019】
ハニカム構造体10の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体10の大きさは、耐熱性を高める(外周側壁の周方向に入るクラックを防止する)という観点から、底面の面積が2000〜20000mm2であることが好ましく、4000〜10000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体10の軸方向の長さは、耐熱性を高める(外周側壁において中心軸方向に平行に入るクラックを防止する)という観点から、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0020】
また、ハニカム構造体10に触媒を担持することにより、ハニカム構造体10を触媒用担体として使用することが可能である。
【0021】
ハニカム構造体の作製は、公知のハニカム構造体の製造方法におけるハニカム構造体の作製方法に準じて行うことができる。例えば、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、3〜40μmが更に好ましい。金属珪素粉末における金属珪素粒子の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。尚、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0022】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0023】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0024】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0025】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0026】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム構造体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム構造体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム構造体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム構造体の両底部を切断して所望の長さとすることができる。
【0027】
(2.電極層)
図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体10は、その外周壁に一対の電極層13a、13bが配設され、各電極層13a、13bは、ハニカム構造体10のセル12の延びる方向に延びる帯状に形成される。また、セル12の延びる方向に直交するハニカム構造体10断面において、一対の電極層13a、13bはハニカム構造体10の中心を挟んで対向するように配設される。当該構成により、ハニカム構造体10は、電圧を印加した時に、ハニカム構造体10内を流れる電流の偏りを抑制することができ、ハニカム構造体10内の温度分布の偏りを抑制することができる。
【0028】
電極層13a、13bは導電性を有する材料で形成される。電極層13a、13bは、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極層13a、13bはが炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極層13a、13bの成分とハニカム構造体10の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造体の材質が炭化珪素である場合)となる。そのため、電極層13a、13bとハニカム構造体の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、材質が同じもの又は近いものになるため、電極層13a、13bとハニカム構造体10との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極層13a、13bがハニカム構造体10から剥れたり、電極層13a、13bとハニカム構造体10との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0029】
また、図2に示されるように、ハニカム構造体10は、一対の電極部14a、14bを備える。電極層13a、13b、下地層16を介して各電極部14a、14bと電気的に接合される。ここで、各電極部14a、14bは、それぞれ2つ以上の電極15を有し(図3を併せて参照)、各電極は、下地層16の外表面に固定される。これにより、電極部14a、14bは、電極層13a、13bを介して電圧を印加すると通電してジュール熱によりハニカム構造体10に発熱させることが可能である。よって、ハニカム構造体10はヒーターとして好適に用いることができる。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0030】
(3.下地層)
下地層16は、導電性を有する。下地層16は、溶射により電極層13a、13bの表面上に形成でき、略平板状(具体的には、電極層13a、13bの外側表面に沿うように湾曲状)に形成されている。電極層13a、13bの外側表面の一部に設けられている。下地層16は、電極層13a、13bの熱膨張率(電極層13a、13bの線膨張係数は比較的小さい。)と電極15の熱膨張率(電極部14a、14bの線膨張係数は比較的大きい。)との間の熱膨張率を有する金属材料(例えば、NiCr系材料)により構成されることができ、電極層13a、13bと電極15との間に生じる熱膨張差を吸収する機能を有している。
【0031】
ここで、電極層13a、13bのそれぞれの表面において、互いに離間した2つ以上の下地層を形成することが肝要である。前述のように、電極を固定する範囲全面に下地層を形成した場合、電極を固定した下地層と固定していない下地層の間に温度差が発生し、下地層にクラックが発生する問題がある。そこで、電極15を固定する範囲全面に下地層を形成するのではなく、それぞれ電極15を固定するのに必要な範囲について下地層を設けることで、下地層同士が離間し、これにより電極を固定した下地層と固定していない下地層の間に温度差が緩和され、下地層のクラックを効果的に抑制することができる。
なお、図2では電極層13a、13bの外側表面にそれぞれ3つの下地層16が形成された実施態様を示しているが、下地層16は互いに離間するように2つ以上形成すればよく、その数は制限されず、電極15を固定するのに必要な範囲内で適宜設定できる。
【0032】
下地層16は、電極15を固定するのに必要な範囲にわたって形成すればよく、その形は制限されないが、生産性及び実用性の観点から、円形又は矩形であることが好ましい。
【0033】
図3図2の断面と直交する方向において電気加熱型触媒用担体の外周表面上の構造を示す図である。また、説明のため、電極部14a、14b及び電極15を図示していない。下地層16が円形である場合、下地層間のピッチAと、各下地層の直径Bとが、B/A≦0.9の関係を満たすことが好ましい。ここで下地層間のピッチAとは、隣り合う下地層16の円心間の距離をいう。B/Aを0.9以下とすることにより、下地層同士を十分に引き離すことができ、電極を固定した下地層と固定していない下地層の間に温度差がさらに緩和される。この観点から、B/Aは0.7以下であることがさらに好ましい。
【0034】
図4図3における実施態様から、下地層16の形状を矩形に変形したものである。下地層16が矩形である場合、下地層間のピッチAと、各下地層の長辺Cとが、C/A≦0.9の関係を満たすことが好ましい。ここで下地層間のピッチAとは、隣り合う下地層16のそれぞれの対角線の交点間の距離をいう。C/Aを0.9以下とすることにより、下地層同士を十分に引き離すことができ、電極を固定した下地層と固定していない下地層の間に温度差がさらに緩和される。この観点から、C/Aは0.7以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また、下地層16の厚みは、電極層13a、13bと電極15との間熱応力の低減と通電効率とが両立されるように設定されることができる。
【0036】
そして、後述のように、固定層17により下地層16の外表面に電極15を固定する場合、固定層17と下地層16との接合強度を得る観点から、下地層16の表面粗さRaは3μm以上であることが好ましい。
【0037】
(4.電極部)
電極部14a、14bは金属やセラミックス等を使用可能である。金属としては、限定的ではないが、入手のし易さから銀、銅、ニッケル、金、パラジウム、ケイ素等が代表的である。炭素を用いることも可能である。セラミックスとしては、限定的ではないが、Si、Cr、B、Fe、Co、Ni、Ti、Taの少なくとも一種を含むセラミックス、例示的には炭化珪素、ケイ化クロム、炭化ホウ素、ホウ化クロム、ケイ化タンタルが挙げられる。金属とセラミックスを組み合わせて複合材としてもよい。
【0038】
電極部14a、14bは2つ以上の電極15を有し、各電極15は、下地層16の外表面に固定される。ここで、電極15は、溶接により下地層16に固定されてもよく、後述のように、溶射により形成される固定層17で下地層16に固定されてもよい(図6参照)。
【0039】
図5に示される実施形態では、電極部14a、14bはそれぞれ3つの櫛状電極15を有し、それぞれの電極15は2つの下地層16に固定されている。このように、櫛状電極15と電極層13a、13bとの電気的接続は、互いに離間した2つ以上の下地層16により実現される。
【0040】
なお、本実施形態では電極は櫛状に成形されているが、下地層に固定され電極層と電気的に接続し得る限り、いかなる形状も採用できる。
【0041】
(5.固定層)
本発明の別の実施形態において、電極15は、固定層17により下地層16の外表面に固定される(図6参照)。固定層17は、電極15及び下地層16の双方と接合し、これにより電極層13a及び13bは電極部14a及び14bと電気的に接合される。なお、この場合、固定層を経由して電気を伝導することが可能であるので、電極15は下地層16と直接接触しなくてもよい。
【0042】
固定層17は、電極15の熱膨張率と下地層16の熱膨張率との間の熱膨張率を有する金属材料(例えば、NiCr系材料やCoNiCr系材料)により構成されており、導電性を有している。固定層17は、櫛状電極15及び下地層16の表面上の複数箇所に点在するように設けられており、櫛状電極15及び下地層16と局所的に接合している。また、図6の実施形態では、固定層17の表面積は下地層16の表面積より小さい。
【0043】
各固定層17はそれぞれ、櫛状電極15及び下地層16の表面上に半球状に形成されている。各固定層17はそれぞれ、各櫛状電極15の線幅xよりも大きな径を有している。各固定層17はそれぞれ、その頂点が櫛状電極15の中心線上に位置することで、櫛状電極15と下地層16の櫛状電極15を挟んで櫛状電極15の長手方向に直交する方向の両側に位置する表面部位とを互いに繋げるように形成されている。すなわち、各固定層17はそれぞれ、櫛状電極15と接合すると共に、下地層16の、その櫛状電極15を挟んで櫛状電極15の長手方向に直交する方向の両側に位置する表面部位の双方と接合する。
【0044】
櫛状電極15の長手方向に直交する方向に面する側面は両側とも、固定層17により覆われている。固定層17による櫛状電極15及び下地層16との接合は、下地層16上に載置された電極部14a又は14bの上方から櫛状電極15の中心に向けて固定層17を溶射することにより実現される。
【0045】
固定層17は、電極部14a又は14bの各櫛状電極15一本当たり、複数(図6では2箇所)設けられており、互いに離間した位置に配置されている。各櫛状電極15はそれぞれ、複数の互いに離間した位置で局所的に固定層17と接合される。各櫛状電極15はそれぞれ、複数の互いに離間した位置で局所的に固定層17が櫛状電極15及び下地層16と接合することで電極層13a又は13bに対して固定される。電極層13a又は13bの軸方向に並んだ互いに隣接する櫛状電極15同士において、固定層17は下地層16の表面上で斜めの位置に配置されている。
【0046】
なお、下地層16を有する実施形態においても、電気加熱型触媒用担体の他の構成は前述の実施形態と共通する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0048】
(1)ハニカム乾燥体の作製
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合してセラミック原料を調製した。そして、セラミック原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0049】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形し、各セルの断面形状が正方形の柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両底面を所定量切断し、ハニカム乾燥体とした。
【0050】
(2)電極層の形成
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合してセラミック原料を調製した。そして、セラミック原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水及び界面活性剤を添加して成形原料とした。成型原料を混錬機によって混錬し、ペースト原料とした。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに2質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに40質量部とした。界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに2質量部とした。レーザー回折法で測定した炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
このペースト原料を曲面印刷機によって、ハニカム乾燥体に対して適切な面積及び膜厚で塗布し、さらに熱風乾燥機で120℃、30分乾燥した後、ハニカム乾燥体と共にAr雰囲気にて1400℃x3hrで焼成し、ハニカム焼成体とした。
【0051】
(3)下地層の形成
金属粉(NiCr系材料、ステンレス等の金属粉)と酸化物粉(Cd,アルミナ,ムライト等の酸化物粉)を体積割合で金属比率20−85%、酸化物粉を15−80%で混合し、セラミック原料を作製した。このセラミック原料に対してバインダを1質量%、界面活性剤を1質量%、水を20〜40質量%加えてペースト原料を作製した。レーザー回折法で測定した金属粉の平均粒子径は10μmであり、酸化物粉の平均粒子径は5μmであった。
このペースト原料を曲面印刷機によって、ハニカム焼成体に対して、表1に示される配置となるように塗布し、さらに熱風乾燥機で120℃、30分乾燥した後、Ar雰囲気にて1100℃x1hrで焼成した。
【0052】
(4)下地層の表面粗さRa
各比較例及び実施例のハニカム構造体について、30×30×70mmのハニカム構造体切り出し品に作製し、前述の下地層ペースト原料を用いて20mm×50mmの面積に0.5mmの厚みで印刷し、接触式表面粗さ測定器にて表面粗さ測定を行った。測定の際の条件として、測定距離を15mm、助走距離(測定前接触部の加速分)を0.3mm、測定速度を0.25mm/secとした。
【0053】
(5)電極の固定
i.溶射による固定方法:
前述の方法により複数の下地層が形成された各ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各下地層の位置に合わせて、穴を開けた溶射マスクをハニカム構造体上に乗せ、下地層上にのみ溶射されるように表面を覆うようにして、溶射マスク上から溶射材を溶射し、下地層上に配置した櫛状電極の上からCoCrAlYとムライトの混合溶射材を堆積させ、固定層を形成し、櫛状電極の各電極層を下地層の外表面に固定した。なお、固定層により各電極部は下地層と電気的に接続されるため、各電極と下地層と直接接触するようにする必要はない。
ii.溶接による固定方法:
前述の方法により複数の下地層が形成された各ハニカム構造体上に櫛状電極を配置し、各櫛状電極と下地層が重なった部分について、φ0.5mmの径でレーザー溶接した。
【0054】
(6)金属電極固定試験
上記の方法にて1対の電極を固定したハニカム構造体に対して金属電極固定試験を行った。金属電極固定試験は一対の櫛状電極間に50Vの電圧を印加して20秒行った。溶射による固定方法の例については下地層−溶射層−櫛状電極間のクラック・破壊の有無、溶接による固定方法の例については下地層−櫛状電極間のクラック・破壊の有無を目視で確認し、クラック・破壊がない場合は「接合OK」とした。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示される結果から、本発明の実施例では、比較例に比べてクラックが有効に抑制されていることが理解できる。特に、下地層が円形又は矩形である場合、B/A又はC/Aが0.7以下となれば、金属電極固定試験の結果がすべてOKとなった。下地層同士が離れることで、局所的な温度差が緩和し、クラック・破壊の発生が防止されることが理解できる。
一方、比較例1は電極層13a、13bのそれぞれの表面において下地層をそれぞれ1つのみ形成したので、クラック・破壊が多発した。比較例2は電極層13a、13bのそれぞれの表面において下地層をそれぞれ1つのみ形成したが、下地層が隣接してしまったので局所的な温度差緩和効果が不十分で、クラック・破壊が多発した。
【符号の説明】
【0057】
10…ハニカム構造体
11…隔壁
12…セル
13a、13b…電極層
14a、14b…電極部
15…電極
16…下地層
17…固定層
図1
図2
図3
図4
図5
図6