特許第6626554号(P6626554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6626554
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】住宅用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20191216BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   F24F5/00 K
   F24F5/00 101B
   E04B1/76 200Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-198862(P2018-198862)
(22)【出願日】2018年10月23日
【審査請求日】2018年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 恵一
(72)【発明者】
【氏名】浦野 勝博
(72)【発明者】
【氏名】清水 正三
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−300135(JP,A)
【文献】 特開2003−207174(JP,A)
【文献】 特開2004−177050(JP,A)
【文献】 特開2004−177052(JP,A)
【文献】 特開2004−346715(JP,A)
【文献】 特開2005−195319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/02
F24F 5/00
F24F 7/00−7/10
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換用水と空調用空気とを熱交換して前記空調用空気を居住空間(S)に出す空調機(9)と、前記熱交換用水と熱源用空気とを冷媒を介して熱交換する水熱交換器(12)と空気熱交換器(13)と圧縮機(14)とが一体となったヒートポンプ(15)を有する熱源機(1)と、前記熱源機(1)を設置する床下収納部(2)と、前記熱源機(1)と前記空調機(9)とに前記熱交換用水を循環させる水配管(3)と、を備え
前記ヒートポンプ(15)の前記空気熱交換器(13)で熱交換する前記熱源用空気として利用するように前記居住空間(S)の空気を前記床下収納部(2)に送る還気ダクト(4)を、備えたことを特徴とする住宅用空気調和装置。
【請求項2】
前記床下収納部(2)が、住宅基礎の一部の縦壁(30)で囲まれた仕切部(31)と、前記仕切部(31)の上の床部(32)と、前記床部(32)に設けられて前記床下収納部(2)の前記熱源機(1)を保守点検するために開閉する蓋部(33)と、を備えた請求項1に記載の住宅用空気調和装置。
【請求項3】
前記熱源機(1)の前記空気熱交換器(13)で熱交換した空気を前記床下収納部(2)から床下(36)を介して前記屋外に出す排気路(8)を、備えた請求項1又は2に記載の住宅用空気調和装置。
【請求項4】
屋外から前記空調機(9)に外気を取り入れる外気ダクト(49)を、備えた請求項1から3のいずれかに記載の住宅用空気調和装置。
【請求項5】
前記空調機(9)が、前記居住空間(S)に前記空調用空気を出しつつ前記空調用空気の熱を放射する放射ユニット(R)を、備えた請求項1から4のいずれかに記載の住宅用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に住宅では、各部屋にエアーコンディショナー(エアコン)を設置して空調している。このエアコンはセパレートタイプが主流で、分離した室内機と室外機を冷媒配管で接続する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−148366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、部屋毎にエアコンが複数必要で、設置スペースを取り、冷媒配管施工に伴う冷媒漏れや冷暖房能力低下の問題があった。また、室外機は、エクセルギー(ある系が周囲と平衡状態に達するまでに取り出すことのできる最大エネルギー)が低い外気を熱源としているためエネルギー消費効率が悪く、騒音発生の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、熱交換用水と空調用空気とを熱交換して前記空調用空気を居住空間に出す空調機と、前記熱交換用水と熱源用空気とを冷媒を介して熱交換する水熱交換器と空気熱交換器と圧縮機とが一体となったヒートポンプを有する熱源機と、前記熱源機を設置する床下収納部と、前記熱源機と前記空調機とに前記熱交換用水を循環させる水配管と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、熱源機から各部屋の空調機へ水配管を介して熱交換用水を送って空調する方式なので、部屋毎のエアコン設置と冷媒配管の施工が不要となる。水熱交換器、空気熱交換器及び圧縮機が一体となったヒートポンプなので、冷媒漏れがなく、冷媒配管長の増加に伴う冷暖房能力低下がない。床下のデッドスペースに熱源機を収納するので、生活スペースが無駄に制限されない。床下収納なので熱源機の騒音漏れを防ぐことができ、近隣に迷惑がかからない。エクセルギーの高い居住空間の空気を、熱源機の熱源用空気として利用するので、熱源機のデフロスト運転の軽減と、熱交換用水の温度調整能力の高効率化を図れる。
【0007】
請求項2の発明によれば、床下収納部は、住宅基礎と部屋の床を利用しているので施工が簡単でコストダウンできる。蓋部を開閉して熱源機やその他の部品を容易に保守点検でき便利である。
【0008】
請求項の発明によれば、熱源機の空気熱交換器で熱交換した空気を排気路を介して屋外に排気することで床下の換気を行える。また、居住空間の空気を熱源機の熱源用空気として利用する場合には、居住空間と床下の換気を同時に行える。しかも、別個に換気装置を設置せずに済みコストダウンできる。
請求項の発明によれば、空調機を使って居住空間の外気冷房ができる。
請求項の発明によれば、空調機の放射ユニットの熱放射の作用によりドラフト感や温度ムラのない快適空調を行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の住宅用空気調和装置の簡略説明図である。
図2図1に示す熱源機の平面図と住宅基礎部分の断面図である。
図3】熱源機と空調機の構造を示す簡略説明図である。
図4】水熱交換器の構造を示す断面図である。
図5】空調機の底面側斜視図である。
図6図5に示す空調機の底面図である。
図7図6に示す空調機のA−A断面図である。
図8図7に示す空調機のB−B断面図である。
図9図7に示す空調機のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1から図6は、本発明の住宅用空気調和装置の一実施例を示している。この住宅用空気調和装置は、熱源機1、床下収納部2、水配管3、還気ダクト4、排気ダクト5、還気用ファン6、外気路7、排気路8、空調機9、吸込口10及び制御器11を、備えている。空調機9は、熱交換用水と空調用空気とを熱交換して、熱交換した空調用空気を居住空間Sに出して空調する。熱源機1は、空調機9で使用する熱交換用水の温度調整を行う。図1においてダクトは太い実線で簡略化して示す。また、各図の太い点線の矢印は外気、還気、排気、その他の空気の流れを示す。
【0011】
熱源機1は、熱交換用水と熱源用空気とを冷媒を介して熱交換する水熱交換器12と空気熱交換器13と圧縮機14とを一体にしたヒートポンプ15と、空気熱交換用ファン16と、送水ポンプ17と、クッションタンク18と、ケーシング19と、を備えている。ヒートポンプ15、空気熱交換用ファン16、送水ポンプ17及びクッションタンク18は、ケーシング19内に設ける。
【0012】
ヒートポンプ15は、冷媒の蒸発工程と凝縮工程であって互いに異なる工程を担う水熱交換器12及び空気熱交換器13と、冷媒を圧縮して搬送する圧縮機14と、冷媒を膨張させる膨張弁等の減圧部20と、水熱交換器12及び空気熱交換器13の蒸発工程と凝縮工程を切換えるバルブ等の切換部21と、を少なくとも備え、これらを冷媒が循環するように配管接続して成る。熱源機1による熱交換用水の冷却運転と加熱運転の切換は、切換部21にて行う。
【0013】
空気熱交換器13は、伝熱板22に伝熱管23を挿着して構成する。圧縮機14にて伝熱管23の内部に冷媒を流し、空気熱交換用ファン16にて伝熱板22及び伝熱管23に空気を接触させることで、伝熱板22及び伝熱管23を介して、空気と冷媒を熱交換する。
【0014】
水熱交換器12は、中空部を伝熱板24で区画して構成する。この区画された中空部分に圧縮機14と送水ポンプ17にて熱交換用水と冷媒を流し、伝熱板24を介して、熱交換用水と冷媒を熱交換する。水熱交換器12で熱交換された熱交換用水は冷水又は温水となりクッションタンク18に送られる。空調機9の冷房運転時は熱交換用水として冷水が使用され、空調機9の暖房運転時は熱交換用水として温水が使用される。
【0015】
水配管3は往管25と還管26を備えている。往管25と還管26は、水熱交換器12、クッションタンク18、送水ポンプ17、空調機9の熱交換器40に水が循環するように配管接続する。送水ポンプ17にて、熱源機1から空調機9に往管25を介して熱交換用水を送り、空調機9から熱源機1に還管26を介して熱交換用水を戻す。図例では、空調機9への供給水量確保と供給水温の安定化のためにクッションタンク18を設けているが省略してもよい。
【0016】
床下収納部2には熱源機1を設置する。床下収納部2は、住宅基礎の一部の縦壁30で囲まれた仕切部31と、仕切部31の上のキッチンその他の部屋の床部32と、床部32に設けられて床下収納部2の熱源機1を保守点検するために開閉する蓋部33と、を備えている。
【0017】
空調機9は寝室、リビングやキッチンなどの居住空間Sの天井部34に設置する。吸込口10及び還気ダクト4は、廊下や階段、室内などの居住空間Sの空気を床下収納部2に送るように設けて、熱源機1の空気熱交換器13で熱交換する熱源用空気として利用する。具体的には、空気が通るように吸込口10と床下収納部2を還気ダクト4でつないで、還気用ファン6にて居住空間Sの空気(還気)を床下収納部2に送っている。還気用ファン6は保守点検のために床下収納部2に設置する。
【0018】
外気路7は、屋外から床下収納部2に外気を取り入れるように設ける。図例では、床下収納部2を構成する住宅基礎のうち屋外と隣接する縦壁30に空気が通るように外気穴35を貫通させて、外気路7としている。図示省略するが、外気穴35に替えてダクトを設けて外気路7としてもよい。
【0019】
還気用ファン6と空気熱交換用ファン16にて送風することにより、還気ダクト4と床下収納部2を介して居住空間Sの還気が熱源機1に取り入れられつつ、屋外から床下収納部2を介して外気が熱源機1に取り入れられる。この外気と還気が、空気熱交換器13にて冷媒と熱交換される。空気熱交換器13を通過した空気は空気熱交換用ファン16にて熱源機1から外部へ出る。
【0020】
排気路8は、熱源機1の空気熱交換器13で熱交換した空気を床下収納部2から床下36を介して屋外に出すように設ける。図例では、住宅基礎のうち屋外と隣接する縦壁30と、床下36を仕切っている住宅基礎の縦壁30と、床下収納部2を構成する住宅基礎の縦壁30と、に排気穴37を貫通させて空気が通るようにつなぐと共に、熱源機1と床下収納部2の排気穴37を空気が通るように排気ダクト5でつないで、排気路8としている。
【0021】
図5から図9に示すように、空調機9は、放射ユニットRと、外気と居住空間Sの空気(還気)を空調用空気として熱交換する熱交換器40と、空調用空気を放射ユニットRに送る給気用ファン41と、ドレンパン42と、ケーシング43と、を備えている。放射ユニットRは、空調用空気が流れる第1チャンバ部44と、第1チャンバ部44から入った空調用空気を室内などの居住空間Sに出しつつ空調用空気の熱を放射する第2チャンバ部45と、第1チャンバ部44から第2チャンバ部45に出る空調用空気の風速及び分布を調節する気流調節部46と、を備えている。
【0022】
空調機9は、第2チャンバ部45の底面を居住空間Sに向けた状態で、居住空間Sの天井に設置する。熱交換器40、給気用ファン41及び第1チャンバ部44は、ケーシング43の内部に設ける。ケーシング43は、天井チャンバTや図示省略のダクト等を介して居住空間Sの空気(還気)を取入れる還気入口部47と、外気を取入れる外気入口部48と、を有している。外気取入口48は、外気ダクト49を介して屋外に接続する。
【0023】
図3に示すように、熱交換器40は、伝熱板50に伝熱管51を挿着して構成する。伝熱管51の水入口には水配管3の往管25を接続し、伝熱管51の水出口には水量調整弁52を介して水配管3の還管26を接続する。送水ポンプ17にて伝熱管51の内部に熱交換用水を流し、給気用ファン41にて伝熱板50及び伝熱管51に空気を接触させることで、伝熱板50及び伝熱管51を介して、空気と熱交換用水を熱交換する。伝熱管51は、外周を楕円形にするのが好ましいが円形でもよい。
【0024】
図5から図9に示すように、気流調節部46は、空調用空気を第2チャンバ部45に出す第1貫孔53の群を備え、第2チャンバ部45は、空調用空気を居住空間Sに出す第2貫孔54の群を備えている。第1チャンバ部44は、第2チャンバ部45に接して第2チャンバ部45に空調用空気を出す平板形状の第1通気部55を、備えている。この第1通気部55に第1貫孔53の群を形成する。第1チャンバ部44の空調用空気が通過する断面積(図8の切断面と平行な方向の面積)は、風上側から風下側に向かって狭める。
【0025】
第2チャンバ部45は、居住空間Sに接して居住空間Sに空調用空気を出す平板形状の第2通気部56と、蓄熱部57と、第2通気部56及び蓄熱部57を取付ける鍔付の枠体58と、を備えている。この第2通気部56に第2貫孔54の群を形成する。第2貫孔54の群の全体の開口面積は第1貫孔53の群の開口面積よりも大きく設定する。第1貫孔53と第2貫孔54の形状は、真円、楕円、長穴、細溝など各種の形状に変更するも自由である。
【0026】
蓄熱部57は、空調用空気が通る隙間をあけて配置されると共に空調用空気の熱を蓄めて放射するプレート59の群にて構成する。プレート59と第2通気部56は、熱伝達及び熱放射率が高いアルミ等を用いる。このプレート59の群を空調用空気が分流拡散しながら整流状に通過して第2通気部56の第2貫孔54から居住空間Sへ出る。空調用空気の熱はプレート59の群と第2通気部56に熱伝達し、第2貫孔54の群を通してプレート59の群から、及び、第2通気部56から、居住空間Sへ放射される。
【0027】
第1チャンバ部44及び第2チャンバ部45は、厚みが薄い箱形に形成し、厚みの方向へ第1チャンバ部44と第2チャンバ部45を隣り合わせて設ける。図例では、第1チャンバ部44と第2チャンバ部45は長方形の扁平形状としたが細長、真四角、丸など各種の扁平形状に変更するも自由である。
【0028】
図1図3に示すように、制御器11は、空調機9から居住空間Sに出す空調用空気の風量を増減調整すると共に熱交換器40で空調用空気と授受する熱交換用水の熱エネルギーを増減調整する。具体的には、制御器11の操作で、空調機9の給気用ファン41の回転数を増減させると共に、熱交換器40の熱交換用水の通水量を水量調整弁52にて増減させることで、室内の温度調整をして複数の居住空間Sを個別に空調する。制御器11は、部屋毎又は一部屋にまとめて設ける。
【0029】
なお、本発明は上述の実施例に限定されない。たとえば、吸込口10、還気ダクト4及び還気用ファン6を省略し、熱源機1の空気熱交換器13で冷媒と外気のみとを熱交換するも自由である。さらに、空調機9の外気入口部48及び外気ダクト49を省略し、居住空間Sの空気(還気)のみを空調用空気として熱交換してもよい。また、空調機9は、放射ユニットRのない従来公知のファンコイルユニットとするも自由である。
【符号の説明】
【0030】
1 熱源機
2 床下収納部
4 還気ダクト
8 排気路
9 空調機
12 水熱交換器
13 空気熱交換器
14 圧縮機
15 ヒートポンプ
30 縦壁
31 仕切部
32 床部
33 蓋部
36 床下
49 外気ダクト
R 放射ユニット
S 居住空間
【要約】
【課題】 冷媒漏れがなく高効率の空調ができ施工が簡単な住宅用空気調和装置を得る。
【解決手段】 熱交換用水で空調用空気を熱交換して居住空間(S)に出す空調機(9)と、熱交換用水と熱源用空気とを冷媒を介して熱交換する水熱交換器(12)と空気熱交換器(13)と圧縮機(14)とが一体となったヒートポンプ(15)を有する熱源機(1)と、熱源機(1)を設置する床下収納部(2)と、熱源機(1)と空調機(9)とに熱交換用水を循環させる水配管(3)と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9