特許第6626557号(P6626557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6626557
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20191216BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20191216BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191216BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20191216BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20191216BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20191216BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   H01M10/0587
   H01M10/04 W
   H01M10/052
   H01M2/26 A
   H01M4/13
   H01G11/26
   H01M2/34 B
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-213828(P2018-213828)
(22)【出願日】2018年11月14日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木村 長幸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 佳実
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−080427(JP,A)
【文献】 特開2001−357892(JP,A)
【文献】 特開2002−134096(JP,A)
【文献】 特開2011−175760(JP,A)
【文献】 特開2007−026786(JP,A)
【文献】 特開2006−024375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00−10/0587
H01M 4/00− 4/62
H01M 2/20− 2/34
H01G 11/00−11/86
H01G 13/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して互いに重ね合わされて扁平に捲回された負極体および正極体を有する積層電極体と、
前記積層電極体に貼り付けられた第1絶縁テープと、
を備え、
前記負極体は、
展開状態で第1方向に並んで配置された複数の負極本体と、
展開状態で隣り合う一対の前記負極本体を接続し、前記一対の負極本体が互いに重なり合うように折り返された少なくとも1つの負極接続部と、
を有し、
前記複数の負極本体は、最外周に配置される外端側負極本体、および最内周に配置される内端側負極本体を有し、
前記複数の負極本体のうち前記外端側負極本体を除く前記負極本体の前記第1方向の寸法は、前記外端側負極本体から離れるに従い小さくなり、
前記外端側負極本体には、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体に前記外端側負極本体が重ならない非被覆部を設ける避け部が形成され、
前記第1絶縁テープは、前記避け部を跨って前記積層電極体の外周面に貼り付けられている、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
前記外端側負極本体の外形は、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体の外形よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記正極体は、
展開状態で第2方向に並んで配置された複数の正極本体と、
展開状態で隣り合う一対の前記正極本体を接続し、前記一対の正極本体が前記負極本体に重なるように折り返された少なくとも1つの正極接続部と、
を有し、
前記複数の正極本体のうち前記外端側負極本体に前記セパレータを介して対向する前記正極本体の外形は、前記外端側負極本体の外形よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記正極体は、正極活物質としてリチウム化合物を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記積層電極体に貼り付けられた第2絶縁テープをさらに備え、
前記正極体は、
展開状態で第2方向に並んで配置された複数の正極本体と、
展開状態で隣り合う一対の前記正極本体を接続し、前記一対の正極本体が前記負極本体に重なるように折り返された少なくとも1つの正極接続部と、
を有し、
前記複数の正極本体は、最外周に配置される外端側正極本体を有し、
前記外端側正極本体の外形は、前記外端側正極本体に前記セパレータを介して対向する前記負極本体の外形よりも小さく、
前記第2絶縁テープは、前記外端側正極本体の外縁を跨って前記積層電極体の外周面に貼り付けられている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記負極体は、展開状態で前記外端側負極本体から前記内端側負極本体とは反対側に延出するタブを備え、
前記複数の負極本体は、前記第1方向に直交する方向を向く外縁を備え、
前記外端側負極本体の前記外縁は、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体の前記外縁よりも、前記複数の負極本体の重なる方向から見て内側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの負極接続部は、前記内端側負極本体に接続する内端側負極接続部を備え、
前記少なくとも1つの負極接続部それぞれの前記第1方向の寸法は、前記内端側負極接続部から離れるに従い大きくなる、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやウエアラブル機器、補聴器などの小型機器の電源として、リチウムイオン二次電池や電気化学キャパシタ等の電気化学セルが広く活用されている。
このような電気化学セルにおいては、電池容量並びに充電電流および放電電流を大きくする観点から、電気化学セル内で対向している電極同士の面積を大きくすることが必要である。電気化学セルの構造としては、一対の帯状の電極を帯状のセパレータを介して対向させてケースに収め、電解液を電極及びセパレータに含浸させた構造が知られている。例えば、帯状の電極および帯状のセパレータを巻回し、筒状またはコイン状のケースに収容した構造や、扁平状に変形させた後にラミネートフィルムに収容した構造が知られている。
【0003】
また、下記特許文献1には、正極板および負極板がそれぞれ複数の積層面を連結片で連結した帯状に形成され、正極板の積層面と負極板の積層面とがセパレータを介して交互に積層されるように、正極板および負極板を連結片で折り曲げて扁平形状に捲回して極板群を形成した電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第02/13305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術にあっては、帯状の電極を捲回した後に扁平状に変形させる場合、変形後の形状が直方体状等の比較的単純な形状に限定される。このため、直方体状以外の所望の形状に形成された外装体に電極を高密度で配置することが困難である。また、連結片を折り曲げて扁平形状に捲回する場合、積層面の積層方向から見て、連結片が積層面から突出するように配置される。このため、電極の外形が複雑になり、外装体内で電極の周囲に隙間が形成されやすい。よって、所望の形状に形成された外装体に電極を高密度で配置することが困難である。したがって、従来技術の電気化学セルにあっては、形状の自由度の向上、および容量の確保を両立するという点で改善の余地がある。
【0006】
さらに、捲回された電極を有する電気化学セルにあっては、電極の巻き解けを防止するための構造を設けることが望ましい。特に、特許文献1に記載の技術のように連結片を折り曲げる構成では、捲回された電極を直方体状以外の形状にも形成できるが、捲回された電極の形状が複雑になると電極の巻き解けを防止するための構造にも工夫が必要になる。電極の巻き解けが生じると、負極および正極の相対位置がずれる。すると、電気化学セルの容量低下等が発生するおそれがあり、信頼性の低下につながる。しかしながら、特許文献1には電極の巻き解けを防止するための構造について開示されていない。
【0007】
そこで本発明は、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルにおいて、信頼性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気化学セルは、セパレータを介して互いに重ね合わされて扁平に捲回された負極体および正極体を有する積層電極体と、前記積層電極体に貼り付けられた第1絶縁テープと、を備え、前記負極体は、展開状態で第1方向に並んで配置された複数の負極本体と、展開状態で隣り合う一対の前記負極本体を接続し、前記一対の負極本体が互いに重なり合うように折り返された少なくとも1つの負極接続部と、を有し、前記複数の負極本体は、最外周に配置される外端側負極本体、および最内周に配置される内端側負極本体を有し、前記複数の負極本体のうち前記外端側負極本体を除く前記負極本体の前記第1方向の寸法は、前記外端側負極本体から離れるに従い小さくなり、前記外端側負極本体には、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体に前記外端側負極本体が重ならない非被覆部を設ける避け部が形成され、前記第1絶縁テープは、前記避け部を跨って前記積層電極体の外周面に貼り付けられている、ことを特徴とする。
【0009】
ここで、複数の負極本体のうち外端側負極本体を除き、展開状態で隣り合う一対の負極本体に着目する。本発明によれば、一対の負極本体のうち外周側の負極本体は、内周側の負極本体よりも第1方向に大きく形成される。このため、複数の負極本体が互いに重なった状態で、複数の負極本体が重なる方向(以下、積層方向という)から見て、外周側の負極本体には内周側の負極本体が重ならない非重畳領域が設けられる。内周側の負極本体に接続して積層方向に延びる負極接続部を、積層方向から見て外周側の負極本体における非重畳領域に配置することで、積層方向から見て負極接続部が外周側の負極本体から突出することを抑制できる。よって、積層電極体を突出部のない所望の扁平形状に捲回して外装体内に高密度で配置することが可能となる。したがって、電気化学セルの形状の自由度の向上、および容量の確保を図ることができる。
次いで、外端側負極本体、および外端側負極本体よりも1層内側に配置された負極本体に着目する。外端側負極本体よりも1層内側に配置された負極本体には、外端側負極本体の避け部によって外端側負極本体が重ならない非被覆部が設けられている。第1絶縁テープは、避け部を跨って積層電極体の外周面に貼り付けられているので、外端側負極本体を外端側負極本体よりも内層の部材に固定することができる。したがって、負極体の巻き解けを防止して、電気化学セルの信頼性の低下を抑制することができる。
以上により、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルにおいて、信頼性の低下を抑制することができる。
【0010】
上記の電気化学セルにおいて、前記外端側負極本体の外形は、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体の外形よりも小さい、ことが望ましい。
【0011】
本発明によれば、外端側負極本体よりも1層内側に配置された負極本体が外端側負極本体の外縁よりも外側に突出するように配置されるので、外端側負極本体の外縁の一部を避け部として機能させることができる。したがって、上述した作用効果を奏する電気化学セルを形成することができる。
【0012】
上記の電気化学セルにおいて、前記正極体は、展開状態で第2方向に並んで配置された複数の正極本体と、展開状態で隣り合う一対の前記正極本体を接続し、前記一対の正極本体が前記負極本体に重なるように折り返された少なくとも1つの正極接続部と、を有し、前記複数の正極本体のうち前記外端側負極本体に前記セパレータを介して対向する前記正極本体の外形は、前記外端側負極本体の外形よりも小さい、ことが望ましい。
【0013】
リチウムイオン電池において、仮に正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在すると、電気化学セルの充電時において正極体から移動してきたリチウムイオンがエッジ効果によって負極体の端縁に集中して針状に析出する可能性がある。このように、リチウムイオンがリチウム金属として析出すると、セパレータを突き抜けて、負極体と正極体とを短絡させる可能性がある。本発明によれば、正極本体が対向する部分に外端側負極本体の端縁が存在することを回避できる。したがって、負極体と正極体との短絡が抑制され、電気化学セルの信頼性を向上させることができる。
【0014】
上記の電気化学セルにおいて、前記正極体は、正極活物質としてリチウム化合物を含む、ことが望ましい。
【0015】
本発明によれば、正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在することを回避することで、リチウムイオンを負極体の負極活物質に吸収させることができる。よって、負極体から針状のリチウムが析出することを抑制できる。したがって、負極体と正極体との短絡が抑制され、電気化学セルの信頼性を向上させることができる。
【0016】
上記の電気化学セルにおいて、前記積層電極体に貼り付けられた第2絶縁テープをさらに備え、前記正極体は、展開状態で第2方向に並んで配置された複数の正極本体と、展開状態で隣り合う一対の前記正極本体を接続し、前記一対の正極本体が前記負極本体に重なるように折り返された少なくとも1つの正極接続部と、を有し、前記複数の正極本体は、最外周に配置される外端側正極本体を有し、前記外端側正極本体の外形は、前記外端側正極本体に前記セパレータを介して対向する前記負極本体の外形よりも小さく、前記第2絶縁テープは、前記外端側正極本体の外縁を跨って前記積層電極体の外周面に貼り付けられている、ことが望ましい。
【0017】
本発明によれば、外端側正極本体にセパレータを介して対向する負極本体を外端側正極本体の外縁よりも外側に突出するように設けることができる。第2絶縁テープは、外端側正極本体の外縁を跨ぐように積層電極体の外周面に貼り付けられているので、外端側正極本体を外端側正極本体よりも内層の部材に固定することができる。よって、正極体の巻き解けを防止することができる。したがって、積層電極体の巻き解けを防止して、電気化学セルの信頼性の低下を抑制することができる。
【0018】
上記の電気化学セルにおいて、前記負極体は、展開状態で前記外端側負極本体から前記内端側負極本体とは反対側に延出するタブを備え、前記複数の負極本体は、前記第1方向に直交する方向を向く外縁を備え、前記外端側負極本体の前記外縁は、前記外端側負極本体よりも1層内側に配置された前記負極本体の前記外縁よりも、前記複数の負極本体の重なる方向から見て内側に配置されている、ことが望ましい。
【0019】
仮に、外端側負極本体から内端側負極本体とは反対側にタブが延びていない場合には、外端側負極本体における展開状態で内端側負極本体とは反対側を向く外縁を跨ぐように絶縁テープを貼り付けることで、外端側負極本体を外端側負極本体よりも内層の部材に固定することができる。
本発明によれば、上述したように外端側負極本体に避け部を設けることで、タブを避けつつ第1絶縁テープを貼り付けて、外端側負極本体を固定することができる。したがって、負極体の巻き解けを防止できる。
【0020】
上記の電気化学セルにおいて、前記少なくとも1つの負極接続部は、前記内端側負極本体に接続する内端側負極接続部を備え、前記少なくとも1つの負極接続部それぞれの前記第1方向の寸法は、前記内端側負極接続部から離れるに従い大きくなる、ことが望ましい。
【0021】
ここで、展開状態で隣り合う一対の負極本体に着目する。一対の負極本体の捲回状態における間隔は、一対の負極本体が外周側に位置する負極本体の対であるほど、一対の負極本体の間に配置される負極本体等の層数が増える分、大きくなる。本発明によれば、負極接続部の第1方向の寸法が内端側負極接続部から離れるに従い大きくなることで、一対の負極本体の間隔を確保でき、一対の負極本体の捲回状態における互いの位置ずれを抑制できる。よって、積層方向から見て、複数の負極本体の位置ずれが抑制され、負極体を所望の扁平形状に捲回できる。したがって、電気化学セルの形状の自由度の向上、および容量の確保を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルにおいて、信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の電池の斜視図である。
図2】実施形態の電池の断面図である。
図3】実施形態の積層電極体の断面図である。
図4】実施形態の積層電極体の一部を拡大して示す断面図である。
図5】実施形態の積層電極体を示す斜視図である。
図6】実施形態の負極体および正極体を示す平面図である。
図7】実施形態の負極体および正極体の捲回方法を示す図である。
図8】実施形態の積層電極体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また以下の説明では、電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0025】
図1は、実施形態の電池の斜視図である。図2は、実施形態の電池の断面図である。
図1および図2に示すように、電池1は、平面視長円形状(角丸長方形状)の電池である。電池1は、積層電極体2と、積層電極体2に含浸される電解質溶液(図示せず)と、積層電極体2が収容された外装体3と、積層電極体2に貼り付けられた第1絶縁テープ60および第2絶縁テープ70(いずれも図5参照)と、を備える。
【0026】
(外装体)
外装体3は、積層電極体2が収容される収容部4と、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられた封止部5と、を備える。封止部5は、例えば絞り成形によって、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられている。
【0027】
また、外装体3は、積層電極体2を間に挟む第1容器10および第2容器20を備える。第1容器10および第2容器20は、それぞれラミネートフィルムにより形成されている。ラミネートフィルムは、金属層(金属箔)と、重ね合わせ面(内側面)に設けられ金属箔を被覆する樹脂製の融着層と、外側面に設けられ金属箔を被覆する樹脂製の保護層と、を有する。金属層は、例えばステンレスやアルミニウム等の外気や水蒸気を遮断する金属材料を用いて形成されている。重ね合わせ面の融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。外側面の保護層は、例えば、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等を用いて形成されている。
【0028】
第1容器10は、長円形状の第1底壁部11と、第1底壁部11の外周から筒状に延びる第1周壁部12と、を備える。第1底壁部11には、第1貫通孔13が形成されている。第1貫通孔13は、第1底壁部11の中心に形成されている。
【0029】
第1底壁部11の内面には、第1シーラントリング14を介して銅プレート15が熱融着されている。第1シーラントリング14は、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成された、シーラントフィルムをリング状にしたものである。
【0030】
銅プレート15の内面は、積層電極体2の後述する負極体30(図3参照)に接続されている。銅プレート15の外面の中央には、ニッケルプレート16が溶接されている。ニッケルプレート16は、第1貫通孔13を貫通して外部に露出され、電池1の負極端子として機能する。また、銅プレート15をニッケル製とすれば、ニッケルプレート16はなくともよい。
【0031】
第2容器20は、長円形状の第2底壁部21と、第2底壁部21の外周から筒状に延びる第2周壁部22と、第2周壁部22の開口縁から第2周壁部22の外側に向けて折り曲げられて第2底壁部21側に延びる折曲部23と、を備える。
【0032】
第2底壁部21は、積層電極体2を挟んで第1容器10の第1底壁部11とは反対側に配置されている。第2底壁部21は、第1容器10の第1底壁部11よりも僅かに小さく形成されている。第2底壁部21には、第2貫通孔24が形成されている。第2貫通孔24は、第2底壁部21の中心に形成されている。
【0033】
第2底壁部21の内面には、第2シーラントリング25を介してアルミニウムプレート26が熱融着されている。第2シーラントリング25は、第1シーラントリング14と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0034】
アルミニウムプレート26の内面は、積層電極体2の後述する正極体40(図3参照)に接続されている。アルミニウムプレート26の外面の中央には、ニッケルプレート27が溶接されている。ニッケルプレート27は、第2貫通孔24を貫通して外部に露出され、電池1の正極端子として機能する。なお、例えば、アルミニウムプレート26に代えて、ステンレス鋼製のプレート材を用いることもできる。
【0035】
第2周壁部22は、第2底壁部21の外周から第1容器10の第1底壁部11に向けて延びている。第2周壁部22は、収容部4の外周4aを形成する。折曲部23は、第2周壁部22のうち、第1底壁部11側の端部から第2周壁部22に沿って第2底壁部21側へ筒状に折り曲げられている。折曲部23は、第2周壁部22に対して外側に間隔をおいて配置されている。
【0036】
第2周壁部22は、第1周壁部12の内側で、かつ、折曲部23の内側に配置されている。また、折曲部23は、第1周壁部12の内側に配置されている。折曲部23の融着層と第1周壁部12の融着層とが熱融着されている。
【0037】
折曲部23の融着層と第1周壁部12の融着層とが熱融着されることにより、封止部5が形成される。よって、収容部4の外周が封止部5で封止される。これにより、第1容器10および第2容器20が重ね合わされて外装体3が形成される。封止部5は、収容部4の外側に筒状に形成され、かつ、収容部4の外周4aに沿って折り曲げられている。
収容部4には、第1容器10と第2容器20とが重ね合されることにより密封空間が形成される。具体的には、収容部4は、第1底壁部11、第2底壁部21、および第2周壁部22により画成され、平面視で長円形状に形成されている。
【0038】
(積層電極体)
図3は、実施形態の積層電極体の断面図である。図4は、実施形態の積層電極体の一部を拡大して示す断面図である。
図3および図4に示すように、積層電極体2は、シート状の負極体30、正極体40およびセパレータ50を備える。積層電極体2は、負極体30および正極体40を互い違いに積層するように折り畳まれた積層タイプの電極体である。具体的に、積層電極体2は、セパレータ50を介して負極体30と正極体40とを重ね合わせて扁平に捲回されることにより形成されている。負極体30は、上述した銅プレート15に接続している。正極体40は、上述したアルミニウムプレート26に接続している。
【0039】
セパレータ50は、負極体30および正極体40の層間に配置され、負極体30と正極体40とを絶縁している。例えば、セパレータ50は、正極体40をその厚み方向の両側から挟むように配置された状態で、負極体30および正極体40とともに捲回される。なお、図3においてはセパレータ50の図示を省略しているが、セパレータ50は少なくとも負極体30と正極体40とが対向する領域の全体で負極体30と正極体40との間に介在するように配置されているものとする。以下、負極体30および正極体40が互い違いに積層された方向を積層方向と称する。なお、捲回とは、特定の位置の周囲を一方向に周回するように巻かれることである。
【0040】
負極体30は、金属材料により形成された負極集電箔と、負極集電箔に塗工された負極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。負極集電箔は、例えば銅やステンレス等の金属箔により形成されている。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。
【0041】
正極体40は、金属材料により形成された正極集電箔と、正極集電箔に塗工された正極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。正極集電箔は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。
【0042】
セパレータ50は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ50は、例えばポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体等により形成されている。
【0043】
図5は、実施形態の積層電極体を示す斜視図である。なお、図5では、負極体30の外周面および内周面に沿って配置されたセパレータ50を、厚みを無視してハッチングで図示している。また、正極体40の一部は、後述するように負極体30よりも小さく形成されているので、負極体30の層間に配置されることで図5の視点では積層電極体2の表面に露出していない。
図5に示すように、積層電極体2は、外装体3の収容部4内に高密度で配置されるように、収容部4内の密封空間の形状に対応する形状に形成されている(図2参照)。すなわち、積層電極体2は、積層方向から見て、長円形状(角丸長方形状)に形成されている。なお、積層電極体2を積層方向から見た形状を基本形状と定義する。
【0044】
ここで、積層電極体2の展開状態における負極体30の形状について説明する。
図6は、実施形態の負極体および正極体を示す平面図である。
図6に示すように、負極体30は、一列に並んで配置された複数(図示の例では8個)の負極本体31と、隣り合う一対の負極本体31を接続する少なくとも1つ(図示の例では7個)の負極接続部32と、負極本体31から延出する負極タブ35と、を備える。を有する。負極本体31は、積層電極体2において積層方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である(図3および図5参照)。負極接続部32は、複数の負極本体31が互いに重なるように、積層電極体2の側部において折り返される部分である(図3および図5参照)。負極タブ35は、上述した銅プレート15に接続される部分である。負極本体31および負極接続部32それぞれの全体の表面には、負極活物質が配置されている。負極タブ35の先端部の表面には、負極集電箔が露出している。
【0045】
以下、複数の負極本体31が並ぶ方向を負極連結方向(第1方向)と称し、負極連結方向に直交する方向を負極幅方向と称する。また、負極連結方向において、複数の負極本体31のうち積層電極体2の最も捲回中心側に配置される負極本体31に対し、積層電極体2の外周側に配置される負極本体31側を「外周側」と定義し、その反対方向を「内周側」と定義する。また、以下では、複数の負極本体31について、最内周の負極本体31から外周側に順に序数を付して説明する。換言すると、Nを自然数とし、最内周の負極本体31から外周側に数えてN番目の負極本体を第N負極本体と称する。例えば、最内周の負極本体31は、第1負極本体である。複数の負極接続部32についても同様である。第1負極本体は、「内端側負極本体」の一例である。第8負極本体は、「外端側負極本体」の一例である。第1負極接続部は、「内端側負極接続部」の一例である。
【0046】
複数の負極本体31は、負極連結方向から見て負極幅方向の中心が互いに重なるように配置されている。複数の負極本体31は、上記基本形状の一部が欠けた形状に形成されている。すなわち、複数の負極本体31は、長円形状の一部が欠けた形状に形成されている。複数の負極本体31は、長軸A1が負極幅方向に指向するように配置されている。各負極本体31の外形は、負極幅方向に直線状に延びる一対の直線部33と、一対の直線部33の端部同士を接続する円弧状の一対の曲線部34と、により形成されている。曲線部34は、負極体30の外縁のうち、負極幅方向を向く部分の一部を構成している。負極本体31のうち最外周に配置される第8負極本体31Hを除く負極本体31は、上記基本形状に対して負極連結方向の寸法を小さくするように、負極連結方向の直線部33全体が上記基本形状に対して長軸A1寄りに設けられている。複数の負極本体31のうち第8負極本体31Hを除く負極本体31それぞれの負極連結方向における寸法D1は、第8負極本体31Hから離れるに従い小さくなっている。換言すると、複数の負極本体31のうち第8負極本体31Hを除く負極本体31は、内周側に隣り合う負極本体31よりも負極連結方向に大きく形成されている。
【0047】
第8負極本体31Hの外形は、第8負極本体31Hの2つ内周側に配置された第6負極本体31Fの外形よりも小さい。すなわち、第8負極本体31Hは、第6負極本体31Fに重ねられた場合、全体が第6負極本体31Fに重なるように形成されている。第6負極本体31Fは、捲回状態で第8負極本体31Hよりも1層内側に配置される負極本体31である。第8負極本体31Hの一対の曲線部34は、避け部36を備える。避け部36は、一対の曲線部34における長軸A1よりも外周側の箇所である。避け部36は、上記基本形状よりも負極幅方向の内側に位置するように形成されている。避け部36は、負極体30が捲回された状態で内層の負極本体31およびセパレータ50のうち少なくともいずれか一方を露出させる(詳細は後述)。
【0048】
複数の負極接続部32は、負極連結方向で隣り合う一対の負極本体31の間に設けられている。各負極接続部32は、負極連結方向の中間部が最も幅狭になるように形成されている。なお、中間部とは、対象の両端間の中央のみならず、対象の両端間の内側の範囲を含む意とする。負極接続部32の負極幅方向の両側の外縁は、負極幅方向に窪む円弧状に延びている。負極接続部32の負極幅方向両側の外縁は、負極本体31の曲線部34に連続的に接続している。具体的に、負極接続部32の負極幅方向両側の外縁は、負極本体31の曲線部34に対して変曲点を介して接続している。換言すると、負極体30の負極幅方向の外縁における変曲点を通り負極幅方向を延びる直線が、負極本体31と負極接続部32との境界になる。複数の負極接続部32の負極連結方向における寸法D2は、最内周に配置される第1負極接続部32Aから離れるに従い大きくなっている。換言すると、複数の負極接続部32は、内周側に隣り合う負極接続部32よりも負極連結方向に大きく形成されている。
【0049】
負極タブ35は、第8負極本体31Hから第1負極本体31Aとは反対側に延出している。負極タブ35は、複数の負極接続部32よりも狭い幅で負極連結方向に延びている。負極タブ35は、第8負極本体31Hの外周側の直線部33全体に接続している。負極タブ35の外縁は、変曲点を介して第8負極本体31Hの一対の曲線部34に接続している。
【0050】
次に、積層電極体2の展開状態における正極体40の形状について説明する。
正極体40は、一列に並んで配置された複数(図示の例では8個)の正極本体41と、隣り合う一対の正極本体41を接続する少なくとも1つ(図示の例では7個)の正極接続部42と、正極本体41から延出する正極タブ45と、を有する。正極本体41は、積層電極体2において積層方向の垂直面に沿って平坦に延びる部分である(図3参照)。正極接続部42は、複数の正極本体41が負極本体31に重なるように、積層電極体2の側部において折り返される部分である(図3参照)。正極タブ45は、上述したアルミニウムプレート26に接続される部分である。正極本体41および正極接続部42それぞれの全体の表面には、正極活物質が配置されている。正極タブ45の先端部の表面には、正極集電箔が露出している。
【0051】
以下、複数の正極本体41が並ぶ方向を正極連結方向(第2方向)と称し、正極連結方向に直交する方向を正極幅方向と称する。また、正極連結方向において、複数の正極本体41のうち積層電極体の最も捲回中心側に配置される正極本体41に対し、積層電極体2の外周側に配置される正極本体41側を「外周側」と定義し、その反対方向を「内周側」と定義する。また、以下では、複数の正極本体41および複数の正極接続部42について、負極本体31および負極接続部32と同様に序数を付して説明する。第8正極本体は、「外端側正極本体」の一例である。
【0052】
複数の正極本体41は、負極本体31と同数設けられている。複数の正極本体41は、正極連結方向から見て正極幅方向の中心が互いに重なるように配置されている。各正極本体41の外形は、正極幅方向に延びる一対の直線部43と、一対の直線部43の端部同士を接続する円弧状の一対の曲線部44と、により形成されている。複数の正極本体41は、正極幅方向に指向する長軸A2を有する長円形状に対し、直線部43が長軸A2寄りに設けられた形状に形成されている。複数の正極本体41は、積層電極体2においてセパレータ50を介して対向する負極本体31の外形よりも小さく形成されている。例えば、第1正極本体41Aの外形は、セパレータ50を介して対向する第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bの外形よりも小さい。第7正極本体41Gの外形は、セパレータ50を介して対向する第8負極本体31Hおよび第6負極本体31Fの外形よりも小さい。第8正極本体41Hの外形は、セパレータ50を介して対向する第7負極本体31Gの外形よりも小さい。
【0053】
複数の正極接続部42は、正極連結方向で隣り合う一対の正極本体41の間に設けられている。各正極接続部42は、正極連結方向の中間部が最も幅狭になるように形成されている。正極接続部42の正極幅方向の両側の外縁は、正極幅方向に窪む円弧状に延びている。正極接続部42の正極幅方向両側の外縁は、正極本体41の曲線部44に連続的に接続している。具体的に、正極接続部42の正極幅方向両側の外縁は、正極本体41の曲線部44に対して変曲点を介して接続している。換言すると、正極体40の正極幅方向の外縁における変曲点を通り正極幅方向を延びる直線が、正極本体41と正極接続部42との境界になる。
【0054】
正極接続部42の正極連結方向における寸法は、以下の条件に基づいて設定されている。第N正極接続部42は、第N正極接続部42に隣接する第N正極本体41および第(N+1)正極本体41の長軸A2間の距離D3が、第N負極本体31および第(N+1)負極本体31の長軸A1間の距離D4に一致するように形成されている。例えば、第1正極本体41Aの長軸A2と第2正極本体41Bの長軸A2との距離は、第1負極本体31Aの長軸A1と第2負極本体31Bの長軸A1との距離と一致している。
【0055】
正極タブ45は、第8正極本体41Hから第1正極本体41Aとは反対側に延出している。正極タブ45は、複数の正極接続部42よりも狭い幅で正極連結方向に延びている。正極タブ45は、第8正極本体41Hの外周側の直線部43全体に接続している。正極タブ45の外縁は、変曲点を介して第8正極本体41Hの一対の曲線部44に接続している。
【0056】
次に、負極体30および正極体40の捲回構造について説明する。
図7は、実施形態の負極体および正極体の捲回方法を示す図である。
図7に示すように、最初に、負極体30の第1負極本体31Aと正極体40の第1正極本体41Aとを互いに重ねる。この際、第1負極本体31A、および第1正極本体41Aは、それぞれの長軸A1,A2(図6参照)が互いに重なるとともに、長軸A1の中心点と長軸A2の中心点とが重なるように配置される。また、負極体30および正極体40は、第1負極本体31Aおよび第1正極本体41Aから互いに反対方向に延びるように配置される。以下、第1負極本体31Aと第1正極本体41Aとが重ねられた部分を基準重ね合わせ部と称する。
【0057】
続いて、基準重ね合わせ部を捲回中心とするように、負極体30および正極体40を基準重ね合わせ部回りに捲回する。具体的に、負極体30および正極体40を以下の手順で捲回する。負極体30の第1負極接続部32Aを折り返し、第1負極本体31Aとは反対側で第1正極本体41Aに第2負極本体31Bを重ねる。この際、第1負極本体31Aおよび第2負極本体31Bは、積層方向から見て互いに長軸A1が互いに重なるように配置される。また、正極体40の第1正極接続部42Aを折り返し、第1正極本体41Aとは反対側で第1負極本体31Aに第2正極本体41Bを重ねる。この際、第1正極本体41Aおよび第2正極本体41Bは、積層方向から見て互いに長軸A2が互いに重なるように配置される。その後も、各負極本体31が互いに重なるように各負極接続部32を折り返すとともに、各正極本体41が互いに重なるように各正極接続部42を折り返す。これにより、負極体30および正極体40の捲回が完了する。その後、負極タブ35を第8負極本体31Hの外周面に沿わせるように折り返すとともに、正極タブ45を第8正極本体41Hの外周面に沿わせるように折り返す。この際、負極タブ35における負極集電箔が露出する部分が正極体40に対向しないように負極タブ35を折り返す。
【0058】
なお、図示しないが、セパレータ50は、負極体30および正極体40の両方よりも幅広の帯状に形成され、負極体30および正極体40とともに捲回された後、積層方向から見て負極体30の外形に沿って余分な部分が切り落とされる。これにより、セパレータ50は、負極体30および正極体40それぞれの内周面および外周面の略全面に沿って配置されている。セパレータ50は、第8負極本体31Hにおける負極タブ35との接続部近傍および避け部36を外側から被覆しないように形成されている(図5参照)。また、セパレータ50は、第8正極本体41Hにおける正極タブ45との接続部近傍を外側から被覆しないように形成されている(図8参照)。
【0059】
図5に示すように、積層方向から見て第8負極本体31Hは、第7正極本体41G(図5では不図示)および第6負極本体31Fに重なるように配置されている。第7正極本体41Gの外形は、第8負極本体31Hの外形よりも小さい。これにより、第8負極本体31Hは、第7正極本体41Gの全体を覆っている。第8負極本体31Hの外形は第6負極本体31Fの外形よりも小さい。具体的に、第8負極本体31Hの一対の曲線部34の避け部36は、積層方向から見て第6負極本体31Fの一対の曲線部34よりも負極幅方向の内側に位置するように形成されている。これにより、避け部36は、第6負極本体31Fに第8負極本体31Hが重ならない非被覆部31aを設けている。そして、第6負極本体31Fの非被覆部31a、および第8負極本体31Hよりも内層のセパレータ50のうち少なくともいずれか一方は、捲回中心とは反対側に避け部36から露出している。本実施形態では、第8負極本体31Hの内周面に沿って延びるセパレータ50が避け部36から突出して露出している。
【0060】
図8は、実施形態の積層電極体の平面図である。なお、図8では、セパレータ50にハッチングを付している。
図8に示すように、積層方向から見て第8正極本体41Hは、第7負極本体31Gに重なるように配置されている。第8正極本体41Hの外形は第7負極本体31Gの外形よりも小さい。これにより、第7負極本体31G、および第8正極本体41Hよりも内層のセパレータ50のうち少なくともいずれか一方は、第8正極本体41Hの周囲で捲回中心とは反対側に露出している。本実施形態では、第7負極本体31Gの外周面に沿って延びるセパレータ50が第8正極本体41Hの周囲で露出している。
【0061】
(第1絶縁テープおよび第2絶縁テープ)
図5に示すように、第1絶縁テープ60は、積層電極体2の外周面のうち、積層方向で捲回中心に対して第8負極本体31Hが配置される側の面に貼り付けられている。例えば、第1絶縁テープ60は、ポリイミドテープである。第1絶縁テープ60は、第8負極本体31Hの避け部36を跨って積層電極体2の外周面に貼り付けられている。具体的に、第1絶縁テープ60は、第8負極本体31Hと、避け部36から露出するセパレータ50と、の両方にわたって貼り付けられている。さらに、第1絶縁テープ60は、第8負極本体31Hの外周面に沿って配置されたセパレータ50にも貼り付けられている。第1絶縁テープ60は、積層方向から見て第8負極本体31Hの長軸A1から負極タブ35側の領域に貼り付けられている。第1絶縁テープ60は、帯状の状態で第8負極本体31Hの長軸A1に沿って貼り付けられた後、積層方向から見て積層電極体2の外形に沿って余分な部分が切り落とされている。
【0062】
図8に示すように、第2絶縁テープ70は、積層電極体2の外周面の内、積層方向で捲回中心に対して第8正極本体41Hが配置される側の面に貼り付けられている。例えば、第2絶縁テープ70は、ポリイミドテープである。第2絶縁テープ70は、第8正極本体41Hの外縁を跨って積層電極体2の外周面に貼り付けられている。具体的に、第2絶縁テープ70は、第8正極本体41Hと、第8正極本体41Hの周囲で露出するセパレータ50と、の両方にわたって貼り付けられている。さらに、第2絶縁テープ70は、第8正極本体41Hの外周面に沿って配置されたセパレータ50にも貼り付けられている。第2絶縁テープ70は、積層方向から見て第8正極本体41Hの長軸A2から正極タブ45側の領域に貼り付けられている。第2絶縁テープ70は、帯状の状態で第8正極本体41Hの長軸A2に沿って貼り付けられた後、積層方向から見て積層電極体2の外形に沿って余分な部分が切り落とされている。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態では、複数の負極本体31のうち最外周に配置される第8負極本体31Hを除く負極本体31の負極連結方向の寸法は、第8負極本体31Hから離れるに従い小さくなっている。ここで、複数の負極本体31のうち第8負極本体31Hを除き、展開状態で隣り合う一対の負極本体31に着目する。本実施形態によれば、一対の負極本体31のうち外周側の負極本体31は、内周側の負極本体31よりも負極連結方向に大きく形成される。このため、複数の負極本体31が互いに重なった状態で、積層方向から見て、外周側の負極本体31には内周側の負極本体31が重ならない非重畳領域が設けられる。例えば、図3に示すように、積層方向から見て、第7負極本体31Gには第6負極本体31Fが重ならない非重畳領域Rが設けられる。内周側の負極本体31に接続して、積層方向に延びる負極接続部32を、積層方向から見て外周側の負極本体31における非重畳領域に配置することで、積層方向から見て負極接続部32が外周側の負極本体31から突出することを抑制できる。よって、積層電極体2を突出部のない所望の扁平形状に捲回して外装体3内に高密度で配置することが可能となる。したがって、電池1の形状の自由度の向上、および容量の確保を図ることができる。
次いで、第8負極本体31H、および第8負極本体31Hよりも1層内側に配置された第6負極本体31Fに着目する。第6負極本体31Fには、第8負極本体31Hの避け部36によって第8負極本体31Hが重ならない非被覆部31aが設けられている。第1絶縁テープ60は、避け部36を跨って積層電極体2の外周面に貼り付けられているので、第8負極本体31Hを第8負極本体31Hよりも内層の部材(第6負極本体31Fまたはセパレータ50)に固定することができる。したがって、負極体30の巻き解けを防止することができる。
以上により、形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電池1において、信頼性の低下を抑制することができる。
【0064】
また、第8負極本体31Hの外形は、第8負極本体31Hよりも1層内側に配置された第6負極本体31Fの外形よりも小さい。この構成によれば、第6負極本体31Fが第8負極本体31Hの外縁よりも外側に突出するように配置されるので、第8負極本体31Hの外縁の一部を避け部36として機能させることができる。したがって、上述した作用効果を奏する電池1を形成することができる。
【0065】
また、第8負極本体31Hにセパレータ50を介して対向する第7正極本体41Gの外形は、第8負極本体31Hの外形よりも小さい。
ここで、リチウムイオン電池においては、仮に正極本体が対向する部分に負極体の端縁が存在すると、電池の充電時において正極体から移動してきたリチウムイオンがエッジ効果によって負極体の端縁に集中して針状に析出する可能性がある。このように、リチウムイオンがリチウム金属として析出すると、セパレータを突き抜けて、負極体と正極体とを短絡させる可能性がある。
本実施形態によれば、第7正極本体41Gが対向する部分に第8負極本体31Hの外縁が存在することを回避できる。したがって、負極体30と正極体40との短絡が抑制され、電池1の信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、第8正極本体41Hの外形は、第8正極本体41Hにセパレータ50を介して対向する第7負極本体31Gの外形よりも小さく、第2絶縁テープ70は、第8正極本体41Hの外縁を跨って積層電極体2の外周面に貼り付けられている。この構成によれば、第7負極本体31Gを第8正極本体41Hの外縁よりも外側に突出するように設けることができる。第2絶縁テープ70は、第8正極本体41Hの外縁を跨ぐように積層電極体2の外周面に貼り付けられているので、第8正極本体41Hを第8正極本体41Hよりも内層の部材(第7負極本体31Gまたはセパレータ50)に固定することができる。よって、正極体40の巻き解けを防止することができる。したがって、積層電極体2の巻き解けを防止して、電池1の信頼性の低下を抑制することができる。
【0067】
また、負極体30は展開状態で第8負極本体31Hから第1負極本体31Aとは反対側に延出する負極タブ35を備え、第8負極本体31Hの曲線部34は第8負極本体31Hよりも1層内側に配置された第6負極本体31Fの曲線部34よりも積層方向から見て内側に配置されている。
ここで、仮に第8負極本体31Hから第1負極本体31Aとは反対側に負極タブが延びていない場合には、第8負極本体31Hにおける展開状態で第1負極本体31Aとは反対側を向く外縁を跨ぐように絶縁テープを貼り付けることで、第8負極本体31Hを第8負極本体31Hよりも内層の部材に固定することができる。
本発明によれば、上述したように第8負極本体31Hに避け部36を設けることで、負極タブ35を避けつつ第1絶縁テープ60を貼り付けて、第8負極本体31Hを固定することができる。したがって、負極体30の巻き解けを防止できる。
【0068】
また、負極接続部32それぞれの負極連結方向の寸法は、第1負極本体31Aから離れるに従い大きくなっている。
ここで、展開状態で隣り合う一対の負極本体31に着目する。一対の負極本体31の捲回状態における間隔は、一対の負極本体31が外周側に位置する負極本体31の対であるほど、一対の負極本体31の間に配置される負極本体31等の層数が増える分、大きくなる。本実施形態によれば、負極接続部32の負極連結方向の寸法が第1負極本体31Aから離れるに従い大きくなることで、一対の負極本体31の間隔を確保でき、一対の負極本体31の捲回状態における互いの位置ずれを抑制できる。よって、積層方向から見て、複数の負極本体31の位置ずれが抑制され、負極体30を所望の扁平形状に捲回できる。したがって、電池1の形状の自由度の向上、および容量の確保を図ることができる。
【0069】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、電気化学セルの一例として、二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、電気二重層キャパシタおよび一次電池等に上述した構成を適用してもよい。また、電池としてリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、これに限らず、金属リチウム二次電池等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池であってもよい。
なお、電気二重層キャパシタに上述した構成を適用する場合、電気二重層キャパシタは機能上正負の区別がない一対の電極を備えるが、一方の電極を上記負極体と同様に構成し、他方の電極を上記正極体と同様に構成すればよい。
【0070】
また、上記実施形態では、積層電極体2が積層方向から見て長円形状に形成されているが、これに限定されず、外装体の形状に応じて様々な形状に形成できる。例えば、積層電極体は、積層方向から見て円形状または楕円形状に形成されていてもよいし、菱形や矩形等の四角形状に形成されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、電池1は外装体3の貫通孔を通じて露出した正極端子および負極端子を備えているが、これに限定されない。電池は、外装体の封止部において第1容器と第2容器との間を通って外装体の内部から外部に延出するタブ状の端子を備えていてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第1絶縁テープ60は、第8負極本体31Hに貼り付けられているが、これに限定されない。例えば、セパレータ50が第8負極本体31Hの外周面の全体を覆うように配置され、第1絶縁テープが第8負極本体31Hの外周面上でセパレータ50のみに貼り付けられていてもよい。この場合、第8負極本体31Hの外周面を覆うセパレータ50が、第8負極本体31Hよりも内層の部材に固定されるので、セパレータ50に覆われた第8負極本体31Hも、第8負極本体31Hよりも内層の部材に固定することができる。第2絶縁テープ70および第8正極本体41Hについても同様である。
【0073】
また、上記実施形態では、第8正極本体41Hの避け部36が外縁に形成されているが、これに限定されない。避け部は、第7負極本体31Gに非被覆部を設けることができればよく、例えば第8正極本体を厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよい。この場合であっても、貫通孔の開口縁を跨ぐように絶縁テープを貼り付けることで、第8正極本体を第8正極本体よりも内層の部材に固定することができる。
【0074】
また、セパレータ50は、負極体30と正極体40との間に介在すればよいので、例えば負極体30よりも小さく形成されていてもよい。この場合、避け部36からセパレータ50が露出しないので、第1絶縁テープ60は第8負極本体31Hの非被覆部31aと第6負極本体31Fとにわたって貼り付けられる。
【0075】
また、上記実施形態では、第1容器10に負極端子を設け、第2容器20に正極端子を設けているが、これに限定されない。すなわち、第1容器に正極端子を設け、第2容器に負極端子を設けてもよい。
【0076】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…電池(電気化学セル) 2…積層電極体 30…負極体 31…負極本体 31A…第1負極本体(内端側負極本体) 31a…非被覆部 31H…第8負極本体(外端側負極本体) 32…負極接続部 32A…第1負極接続部(内端側負極接続部) 35…負極タブ(タブ) 36…避け部 40…正極体 41…正極本体 41H…第8正極本体(外端側正極本体) 42…正極接続部 50…セパレータ 60…第1絶縁テープ 70…第2絶縁テープ
【要約】
【課題】形状の自由度の向上、および容量の確保が図られた電気化学セルにおいて、信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】電池は、互いに重ね合わされて扁平に捲回された負極体30および正極体40を有する積層電極体2と、積層電極体2に貼り付けられた第1絶縁テープ60と、を備える。負極体30は、複数の負極本体31と、少なくとも1つの負極接続部32と、を有する。複数の負極本体31のうち第8負極本体31Hを除く負極本体31の負極連結方向の寸法は、第8負極本体31Hから離れるに従い小さくなる。第8負極本体31Hには、第8負極本体31Hよりも1層内側に配置された第6負極本体31Fに第8負極本体31Hが重ならない非被覆部31aを設ける避け部36が形成されている。第1絶縁テープ60は、避け部36を跨って積層電極体2の外周面に貼り付けられている。
【選択図】図5
図1
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図5
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図8