特許第6626568号(P6626568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧
特許6626568合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス
<>
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000003
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000004
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000005
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000006
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000007
  • 特許6626568-合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626568
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20191216BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20191216BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20191216BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20191216BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20191216BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20191216BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20191216BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   C08J9/00 ACES
   H01M2/16 P
   B29C67/20 B
   H01G11/52
   H01G9/02
   H01G11/84
   B29C55/06
   B29L7:00
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-510540(P2018-510540)
(86)(22)【出願日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2018004499
(87)【国際公開番号】WO2018147395
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年5月30日
(31)【優先権主張番号】特願2017-22339(P2017-22339)
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中楯 順一
(72)【発明者】
【氏名】八木 一成
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−017249(JP,A)
【文献】 特開2016−062642(JP,A)
【文献】 特開2016−006175(JP,A)
【文献】 特開平06−256549(JP,A)
【文献】 特開平05−331306(JP,A)
【文献】 特開2008−218085(JP,A)
【文献】 再公表特許第2012/042716(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2012/029881(JP,A1)
【文献】 国際公開第2016/085970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
B29C 55/00−55/30
B29C 67/20
H01G 9/02−9/035
H01G 11/00−11/86
H01M 2/14−2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂を含有している合成樹脂を含み且つ延伸された合成樹脂微多孔フィルムであって、
上記合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向及び延伸方向に沿った断面において、
厚み方向に延びる複数個の支持部と、
上記支持部間に形成された複数個のフィブリルとを有し、
上記支持部と上記フィブリルとで囲まれた部分に微小孔部が形成されており、
上記支持部の分岐構造の数が、100μm2当たり150個以下である、合成樹脂微多孔フィルム。
【請求項2】
透気度が10sec/100mL/16μm以上、150sec/100mL/16μm以下で且つ空孔率が40%以上、70%以下である、請求項1に記載の合成樹脂微多孔フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の合成樹脂微多孔フィルムを含む、蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイス用セパレータを含む、蓄電デバイス。
【請求項5】
合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機の先端に取り付けたTダイから押出すことにより合成樹脂フィルムを得る押出工程と、
上記押出工程で得られた上記合成樹脂フィルムをその表面温度が(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂樹脂の融点−1℃)となるようにして1分以上養生する養生工程と、
上記養生工程後の上記合成樹脂フィルムを歪み速度10%/分以上、250%/分以下且つ延伸倍率1.5倍以上、2.8倍以下にて一軸延伸する延伸工程と、
上記延伸工程後の上記合成樹脂フィルムをアニールするアニーリング工程とを含む、合成樹脂微多孔フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス用セパレータ並びに蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスが用いられている。例えば、リチウムイオン電池は、一般的に正極と、負極と、セパレータとを電解液中に配設することによって構成されている。正極は、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムが塗布されてなる。負極は、銅箔の表面にカーボンが塗布されてなる。そして、セパレータは、正極と負極とを仕切るように配設され、正極と負極との短絡を防止している。
【0003】
リチウムイオン電池の充電時には、正極からリチウムイオンが放出されて負極内に進入する。一方、リチウムイオン電池の放電時には、負極からリチウムイオンが放出されて正極に移動する。このような充放電がリチウムイオン電池では繰り返される。従って、リチウムイオン電池に用いられているセパレータには、リチウムイオンが良好に透過できることが必要とされる。
【0004】
リチウムイオン電池の充放電を繰り返すと、負極端面にリチウムのデンドライト(樹枝状結晶)が発生する。このデンドライトは、セパレータを突き破って正極と負極との微小な短絡(デンドライトショート)を生じる。
【0005】
近年、自動車用のリチウムイオン電池のような大型電池は高出力化が進んでおり、リチウムイオンがセパレータを通過する際の低抵抗化が求められている。そのため、セパレータには高い透気性を有していることが必要とされている。更に、大型のリチウムイオン電池の場合には、長寿命、長期安全性の保障も重要となる。
【0006】
セパレータとして、ポリプロピレンからなる多孔フィルムが種々提案されている。特許文献1には、例えば、ポリプロピレン、ポリプロピレンより溶融結晶化温度の高いポリマー、及びβ晶核剤を含む組成物を押出してシート状に成形した後、少なくとも一軸延伸することを特徴とするポリプロピレン微多孔性フィルムの製造方法が提案されている。
【0007】
又、特許文献2には、ポリオレフィン樹脂多孔膜の少なくとも片面に、無機フィラー、又は融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂を含有し且つ厚さが0.2μm以上100μm以下である多孔層を備え、透気度が1〜650秒/100ccである多層多孔膜が提案されている。
【0008】
更に、特許文献3には、ポリプロピレンフィルムを一軸延伸して多孔化する多孔質ポリプロピレンフィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−199742号公報
【特許文献2】特開2007−273443号公報
【特許文献3】特開平10−100344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のポリプロピレン微多孔性フィルムの製造方法で得られたポリプロピレン微多孔性フィルムは、透気性が低く、リチウムイオンの透過性が不充分である。そのため、このようなポリプロピレン微多孔性フィルムは、高出力を要するリチウムイオン電池に用いることは困難である。
【0011】
又、特許文献2の多層多孔膜も、リチウムイオンの透過性が不充分であるため、高出力を要するリチウムイオン電池に用いることは困難である。
【0012】
更に、引用文献3の方法で得られた多孔質ポリプロピレンフィルムでは、孔が均一に形成されていないため、リチウムイオンの透過性も不均一となる。そのため、多孔質ポリプロピレンフィルム中でリチウムイオンの透過性が高い部位と低い部位とが生じる。このような多孔質ポリプロピレンフィルムでは、リチウムイオンの透過性が高い部位にデンドライトが発生して微小な短絡が起こり易くなり、長寿命や長期安全性が充分ではないという問題点を有する。
【0013】
本発明は、リチウムイオンの透過性に優れており、高性能のリチウムイオン電池、キャパシタ、コンデンサなどの蓄電デバイスを構成することができ、高出力用途に用いてもデンドライトによる正極と負極の短絡や放電容量の急激な低下が生じにくい合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[合成樹脂微多孔フィルム]
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、
合成樹脂且つ延伸された合成樹脂微多孔フィルムであって、
上記合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向及び延伸方向に沿った断面において、
厚み方向に延びる複数個の支持部と、
上記支持部間に形成された複数個のフィブリルとを有し、
上記支持部と上記フィブリルとで囲まれた部分に微小孔部が形成されており、
上記支持部の分岐構造の数が、100μm2当たり150個以下である。
【0015】
合成樹脂微多孔フィルムは合成樹脂を含んでいる。合成樹脂としては、オレフィン系樹脂が好ましく、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
【0016】
プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。延伸法によって合成樹脂微多孔フィルムが製造される場合には、ホモポリプロピレンが好ましい。プロピレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。プロピレン系樹脂中におけるプロピレン成分の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0017】
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。
【0018】
エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、及びエチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。また、エチレン系樹脂微多孔フィルムは、エチレン系樹脂を含んでいれば、他のオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。エチレン系樹脂中におけるエチレン成分の含有量は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは80質量%以上である。
【0019】
オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜50万が好ましく、5万〜48万がより好ましい。プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、25万〜50万が好ましく、28万〜48万がより好ましい。エチレン系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、3万〜25万が好ましく、5万〜20万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、製膜安定性に優れていると共に、微小孔部が均一に形成されている合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
【0020】
オレフィン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、特に限定されないが、5〜30が好ましく、7.5〜25がより好ましい。プロピレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、7.5〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。エチレン系樹脂の分子量分布は、特に限定されないが、5.0〜30が好ましく、8.0〜25がより好ましい。分子量分布が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、高い表面開口率を有していると共に、機械的強度にも優れている合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
【0021】
ここで、オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、オレフィン系樹脂6〜7mgを採取し、採取したオレフィン系樹脂を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含んでいるo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてオレフィン系樹脂濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0022】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転数25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてオレフィン系樹脂をo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってオレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
【0023】
オレフィン系樹脂における重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0024】
オレフィン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜170℃が好ましく、133〜165℃がより好ましい。プロピレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、160〜170℃が好ましく、160〜165℃がより好ましい。エチレン系樹脂の融点は、特に限定されないが、130〜140℃が好ましく、133〜139℃がより好ましい。融点が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、製膜安定性に優れていると共に、高温下における機械的強度の低下が抑制されている合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
【0025】
なお、本発明において、オレフィン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル社 装置名「DSC220C」など)を用い、下記手順に従って測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂10mgを25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで加熱し、250℃にて3分間に亘って保持する。次に、オレフィン系樹脂を250℃から降温速度10℃/分にて25℃まで冷却して25℃にて3分間に亘って保持する。続いて、オレフィン系樹脂を25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで再加熱し、この再加熱工程における吸熱ピークの頂点の温度を、オレフィン系樹脂の融点とする。
【0026】
合成樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を含んでいる。微小孔部は、フィルムの厚み方向に貫通していることが好ましく、これにより合成樹脂微多孔フィルムに優れた透気性を付与することができる。このような合成樹脂微多孔フィルムはその厚み方向にリチウムイオンなどのイオンを透過させることが可能となる。なお、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向とは、合成樹脂微多孔フィルムの主面に対して直交する方向をいう。合成樹脂微多孔フィルムの主面とは、合成樹脂微多孔フィルムの表面のうち、最も面積の大きい面をいう。
【0027】
合成樹脂微多孔フィルムは、延伸によって微小孔部が形成されている。合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に沿った断面において、微小孔部の平均孔径が20〜100nmが好ましく、20〜70nmがより好ましく、30〜50nmが特に好ましい。
【0028】
微小孔部の平均孔径は下記の要領で測定された値をいう。先ず、合成樹脂微多孔フィルムをその厚み方向及び延伸方向に沿って(合成樹脂微多孔フィルムの主面に対して直交し且つ延伸方向に沿った面に沿って)切断し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大倍率1万倍で切断面の拡大写真を撮影する。なお、拡大写真の縦方向が厚み方向となるように調整し、厚み方向の中心部を撮影箇所とする。得られた拡大写真の全範囲を測定区画と定める。
【0029】
合成樹脂微多孔フィルムの切断面のSEM写真は以下の要領で撮影される。先ず、合成樹脂微多孔フィルムを銅テープなどで切断しやすいように補強した後、クロスセクションポリッシャー(例えば、日本電子社から商品名「IB−19500CP」にて市販されているクロスセクションポリッシャー)を用いて切断する。次に、チャージアップによる画像の乱れを防ぐため、切断面に金属膜(例えば、金、白金、オスミウム、カーボンなどの金属膜)を蒸着させた後、SEM(例えば、日立社から商品名「S−4800S」にて市販されているSEM)を用いて、加速電圧1.0kVの条件で切断面を撮影する。上記要領にて測定することで、鮮明な拡大写真を撮影することが可能となるが、鮮明な拡大写真を得ることができれば、上述した方法に限定されるものではない。
【0030】
次に、拡大写真中にあらわれた微小孔部を包囲し且つ長軸及び短軸が共に最短となる楕円を微小孔部ごとに描く。この楕円の長軸の長さと短軸の長さの相加平均値を微小孔部の孔径とする。測定区画内にある微小孔部の孔径の相加平均値を微小孔部の平均孔径とする。なお、測定区画内に全てが入っている微小孔部のみを測定対象とする。
【0031】
合成樹脂微多孔フィルムをその厚み方向及び延伸方向に沿った断面、即ち、上記の要領で撮影された拡大写真を見ると、図1に示したように、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に複数個の支持部1が延びている。更に、支持部1間に複数個のフィブリル2が架け渡された状態に形成されている。支持部1及びフィブリル2によって囲まれた部分に微小孔部3が形成されている。合成樹脂延伸フィルムに微多孔構造を形成する延伸工程において、合成樹脂フィルムを延伸することにより、合成樹脂フィルムのラメラ間に亀裂を発生させ、この亀裂を起点として合成樹脂部分が延伸され、フィブリル2が形成される。このとき、延伸されなかった合成樹脂部分が支持部1となる。
【0032】
フィブリル2とは、延伸工程において合成樹脂が延伸されることにより、延伸方向に指向して繊維状に形成された合成樹脂部分であって、合成樹脂微多孔フィルムAの厚み方向D1に直交する方向D2及びこの方向D2に対して10°以内の方向に延び且つ合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向の幅が0.15μm以下である合成樹脂部分をいう(図2参照)。図2において、D3は、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向D1に直交する方向D2に対して10°の方向を示す。
【0033】
支持部1とは、フィブリル2以外の合成樹脂部分であって、幅が0.1μm以上である合成樹脂部分をいう。合成樹脂部分の幅とは、測定対象となる点Pを定め、この点Pを通り且つ両端が合成樹脂部分の外形線上に到達している最短の長さを有する直線Lの長さをいう。例えば、図1において、点P1における合成樹脂部分の幅は、直線L1の長さとなる。点P2における合成樹脂部分の幅は、直線L2の長さとなる。支持部1を幅が0.1μm以上のものに限定したのは、幅が0.1μm未満のものは、イオンなどの透過性に殆ど影響を及ぼさないためである。
【0034】
合成樹脂微多孔フィルムにおいて、支持部1の分岐構造の数は、100μm2当たり、150個以下であり、100個以下が好ましく、70個以下がより好ましく、50個以下が特に好ましい。分岐構造の数が150個以下であると、支持部1が合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に概ね直線状に延びている。そして、支持部1、1間には微小孔部3が合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に概ね直線状に連続的に連なった状態で形成されている。従って、支持部1は、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向において、イオンなどの透過を殆ど妨げることはなく、イオンなどは直線状に連なった微小孔部を円滑に透過し、合成樹脂微多孔フィルムは、イオンなどの透過性に優れている。
【0035】
また、支持部1は、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向に概ね直線状に延びていることから、合成樹脂微多孔フィルムの厚み方向の圧縮応力に対して高い抵抗力を有している。従って、合成樹脂微多孔フィルムは、その使用中に圧力によって微小孔部3が圧壊されることはなく、長期間に亘って優れた透気性を維持し、合成樹脂微多孔フィルムを用いた蓄電デバイスは、長期間に亘って高い出力を維持する。
【0036】
このように、合成樹脂微多孔フィルムは、支持部1、1間に形成された、直線状に連なる微小孔部においてイオンなどの透気性を確保している。更に、支持部1の形成された部分において合成樹脂微多孔フィルムの機械的強度、特に、厚み方向における機械的強度を確保しており、厚み方向への圧壊による微小孔部3の消失を防止している。
【0037】
合成樹脂微多孔フィルムは、できるだけ分岐させることなく概ね厚み方向に直線状に延びる支持部1を形成すると共に微小孔部3をできるだけ厚み方向に連続した直線状に形成することによって、従来の合成樹脂微多孔フィルムと同程度の空孔率でありながら、優れた透気性及び厚み方向における機械的強度に優れている。
【0038】
特に、合成樹脂微多孔フィルムは、微小孔部が厚み方向に直線状に近い状態に連続的に形成されていることから、イオンなどが円滑に透過することができる。従って、合成樹脂微多孔フィルムは、高出力を必要とする蓄電デバイス〔リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)、コンデンサなど〕のセパレータとして好適に用いることができる。
【0039】
上記支持部1の分岐構造の数は下記の要領で測定される。先ず、微小孔部の平均孔径の測定要領と同様の要領で拡大写真の測定区画を特定する。測定区画内において、支持部が分岐している部分(分岐構造)の数を数える。得られた分岐構造の数を測定区画の面積(μm2)で除した値に100を乗じた値を支持部1の100μm2当たりの分岐構造の数とする。
【0040】
支持部1が分岐しているか否かは以下の要領で判断する。図3及び図4に示したように、2個の支持部1a、1b同士の接続部分において、2個の支持部1a、1bの外形線11a、11bが鋭角に交差している点1cを定める。この点1cを通り且つ支持部1内に収まる最大径を有する円Cを描く。この円Cの中心Pと支持部の外形線上の点11cとを結ぶ直線のうち、最も長くなる直線Dを描く。この直線Dの長さが0.3μm以上である場合、支持部は分岐していると判断する。一方、直線Dの長さが0.3μm未満である場合には、点11cと、点11cを基準として円Cの中心Pから離れる方向にある支持部の外形線上の点11dとを結ぶ直線のうち、最も長くなる直線Eを描く。この直線Eの長さが0.3μm以上となる場合、支持部は分岐していると判断する一方、直線Eの長さが0.3μm未満となる場合、支持部は分岐していないと判断する。なお、直線D及びEはその全てが支持部1内に存在するように描かれる。
【0041】
合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、10〜150sec/100mL/16μmが好ましく、30〜100sec/100mL/16μmがより好ましく、30〜80sec/100mL/16μmが特に好ましい。透気度が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、機械的強度とイオン透過性の双方に優れている合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
【0042】
なお、合成樹脂微多孔フィルムの透気度は下記の要領で測定された値とする。温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所における透気度を測定し、その相加平均値を算出する。得られた相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚み(μm)で除して得られた値に16(μm)を乗じた値(規格値)を算出する。得られた規格値は、厚み16μm当たりに規格化された値である。得られた規格値を合成樹脂微多孔フィルムの透気度(sec/100mL/16μm)とする。
【0043】
合成樹脂微多孔フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0044】
なお、本発明において、合成樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、次の要領に従って行うことができる。すなわち、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所をダイヤルゲージを用いて測定し、その相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚みとする。
【0045】
合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は、40〜70%が好ましく、50〜67%がより好ましい。空孔率が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムは、透気性及び機械的強度に優れている。
【0046】
なお、合成樹脂微多孔フィルムの空孔率は下記の要領で測定することができる。先ず、合成樹脂微多孔フィルムを切断することにより縦10cm×横10cmの平面正方形状(面積100cm2)の試験片を得る。次に、試験片の重量W(g)を及び厚みT(cm)を測定し、下記により見掛け密度ρ(g/cm3)を算出する。なお、試験片の厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いて、試験片の厚みを15箇所測定し、その相加平均値とする。そして、この見掛け密度ρ(g/cm3)及び合成樹脂微多孔フィルムを構成している合成樹脂自体の密度ρ(g/cm3)を用いて下記に基づいて合成樹脂微多孔フィルムの空孔率P(%)を算出することができる。
見掛け密度ρ(g/cm3)=W/(100×T)
空孔率P[%]=100×[(ρ−ρ)/ρ
【0047】
[合成樹脂微多孔フィルムの製造方法]
合成樹脂微多孔フィルムの製造方法を説明する。
合成樹脂微多孔フィルムは、下記工程、
合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、上記押出機の先端に取り付けたTダイから押出すことにより合成樹脂フィルムを得る押出工程と、
上記押出工程で得られた上記合成樹脂フィルムをその表面温度が(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂樹脂の融点−1℃)となるようにして1分以上養生する養生工程と、
上記養生工程後の上記合成樹脂フィルムを歪み速度10〜250%/分且つ延伸倍率1.5〜2.8倍にて一軸延伸する延伸工程と、
上記延伸工程後の上記合成樹脂フィルムをアニールするアニーリング工程と、を含む方法によって製造することができる。以下、合成樹脂微多孔フィルムの製造方法について、順を追って説明する。
【0048】
(押出工程)
先ず、合成樹脂を押出機に供給して溶融混練し、押出機の先端に取り付けたTダイから押出すことにより合成樹脂フィルムを得る押出工程を行う。
【0049】
合成樹脂を押出機にて溶融混練する際の合成樹脂の温度は、(合成樹脂の融点+20℃)〜(合成樹脂の融点+100℃)が好ましく、(合成樹脂の融点+25℃)〜(合成樹脂の融点+80℃)がより好ましい。合成樹脂の温度が上記範囲内であると、合成樹脂の配向性が向上し、合成樹脂のラメラを高度に形成することができる。
【0050】
合成樹脂を押出機からフィルム状に押出す際におけるドロー比は、50〜300が好ましく、55〜280がより好ましく、65〜250が特に好ましく、70〜250が最も好ましい。ドロー比が50以上であると、合成樹脂を充分に分子配向させて、合成樹脂のラメラを充分に生成させることができる。ドロー比が、300以下であると、合成樹脂フィルムの製膜安定性が向上し、合成樹脂フィルムの厚み精度及び幅精度を向上させることができる。
【0051】
なお、ドロー比とは、TダイのリップのクリアランスをTダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みで除した値をいう。Tダイのリップのクリアランスの測定は、JIS B7524に準拠したすきまゲージ(例えば、株式会社永井ゲージ製作所製 JISすきまゲージ)を用いてTダイのリップのクリアランスを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。また、Tダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みは、ダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製 シグナルABSデジマチックインジケータ)を用いてTダイから押出された合成樹脂フィルムの厚みを10箇所以上測定し、その相加平均値を求めることにより行うことができる。
【0052】
合成樹脂フィルムの製膜速度は、10〜300m/分が好ましく、15〜250m/分がより好ましく、15〜30m/分が特に好ましい。合成樹脂フィルムの製膜速度が10m/分以上であると、合成樹脂を充分に分子配向させて、合成樹脂のラメラを充分に生成させることができる。また、合成樹脂フィルムの製膜速度が300m/分以下であると、合成樹脂フィルムの製膜安定性が向上し、合成樹脂フィルムの厚み精度及び幅精度を向上させることができる。
【0053】
Tダイから押出された合成樹脂フィルムをその表面温度が(合成樹脂の融点−100℃)以下となるまで冷却することが好ましい。これにより、合成樹脂が結晶化してラメラを生成することを促進させることができる。溶融混練した合成樹脂を押出すことにより、合成樹脂フィルムを構成している合成樹脂分子を予め配向させた上で、合成樹脂フィルムを冷却することにより、合成樹脂が配向している部分においてラメラの生成を促進させることができる。
【0054】
冷却された合成樹脂フィルムの表面温度は、合成樹脂の融点よりも100℃低い温度以下が好ましく、合成樹脂の融点よりも140〜110℃低い温度がより好ましく、合成樹脂の融点よりも135〜120℃低い温度が特に好ましい。冷却された合成樹脂フィルムの表面温度が合成樹脂の融点よりも100℃低い温度以下であると、合成樹脂フィルムを構成している合成樹脂のラメラを十分に生成することができる。
【0055】
(養生工程)
次に、上述した押出工程により得られた合成樹脂フィルムを養生する。この合成樹脂フィルムの養生工程は、押出工程において合成樹脂フィルム中に生成させたラメラを成長させるために行う。このことにより、合成樹脂フィルムの押出方向に結晶化部分(ラメラ)と非結晶部分とが交互に配列してなる積層ラメラ構造を形成させることができ、後述する合成樹脂フィルムの延伸工程において、ラメラ内ではなく、ラメラ間において亀裂を発生させ、この亀裂を起点として微小な貫通孔(微小孔部)を形成することができる。
【0056】
合成樹脂フィルムの養生温度は、(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂の融点−1℃)が好ましく、(合成樹脂の融点−25℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)がより好ましい。合成樹脂フィルムの養生温度が(合成樹脂の融点−30℃)以上であると、合成樹脂の分子を十分に配向させてラメラを十分に成長させることができる。また、合成樹脂フィルムの養生温度が(合成樹脂の融点−1℃)以下であると、合成樹脂の分子を十分に配向させてラメラを十分に成長させることができる。なお、合成樹脂フィルムの養生温度とは、合成樹脂フィルムの表面温度をいう。
【0057】
合成樹脂フィルムの養生時間は、1分以上が好ましく、3分以上がより好ましく、5分以上が特に好ましく、10分以上が最も好ましい。合成樹脂フィルムを1分以上養生させることにより、合成樹脂フィルムのラメラを十分に且つ均一に成長させることができる。また、養生時間が長すぎると、合成樹脂フィルムが熱劣化する虞れがある。したがって、養生時間は、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましい。
【0058】
(延伸工程)
次に、養生工程後の合成樹脂フィルムを一軸延伸する延伸工程を行う。延伸工程では、合成樹脂フィルムを好ましくは押出方向にのみ一軸延伸する。
【0059】
延伸工程における合成樹脂フィルムの延伸方法としては、合成樹脂フィルムを一軸延伸することができれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂フィルムを一軸延伸装置を用いて所定温度にて一軸延伸する方法などが挙げられる。合成樹脂フィルムの延伸は、複数回分割して行う逐次延伸が好ましい。逐次延伸をすることによって、得られる合成樹脂微多孔フィルムの透気度又は空孔率が向上する。
【0060】
合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度は、10〜250%/分が好ましく、30〜245%/分がより好ましく、35〜240%/分が特に好ましい。合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度を上記範囲内に調整することによって、ラメラ間において不規則に亀裂が発生するのではなく、合成樹脂フィルムの延伸方向に所定間隔毎に配列し且つ合成樹脂フィルムの厚み方向に延びる仮想直線上にあるラメラ間において規則的に亀裂が発生する。従って、合成樹脂微多孔フィルムには、概ね厚み方向に延びる支持部が形成されると共に微小孔部ができるだけ厚み方向に連続した直線状に形成される。合成樹脂フィルムの延伸時における歪み速度とは、下記式に基づいて算出された値をいう。なお、延伸倍率λ[%]、ライン搬送速度V[m/分]及び延伸区間路長F[m]に基づいて算出される、単位時間当たりの変形歪みε[%/分]をいう。ライン搬送速度Vとは、延伸区間の入口での合成樹脂フィルムの搬送速度をいう。延伸区間路長Fとは、延伸区間の入口から出口までの搬送距離をいう。
歪み速度ε=λ×V/F
【0061】
延伸工程において、合成樹脂フィルムの表面温度は、(合成樹脂の融点−100℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)が好ましく、(合成樹脂の融点−30℃)〜(合成樹脂の融点−10℃)がより好ましい。上記表面温度が上記範囲内にあると、合成樹脂フィルムを破断させることなく、ラメラ間の非結晶部において円滑に亀裂を発生させて微小孔部を生成することができる。
【0062】
延伸工程において、合成樹脂フィルムの延伸倍率は、1.5〜2.8倍が好ましく、2.0〜2.6倍がより好ましい。上記延伸倍率が上記範囲内であると、合成樹脂フィルムに微小孔部を均一に形成することができる。
【0063】
なお、合成樹脂フィルムの延伸倍率とは、延伸後の合成樹脂フィルムの長さを延伸前の合成樹脂フィルムの長さで除した値をいう。
【0064】
(アニーリング工程)
次に、延伸工程後の合成樹脂フィルムにアニール処理を施すアニーリング工程を行う。このアニーリング工程は、上述した延伸工程において加えられた延伸によって合成樹脂フィルムに生じた残存歪みを緩和して、得られる合成樹脂微多孔フィルムに加熱による熱収縮が生じることを抑えるために行われる。
【0065】
アニーリング工程における合成樹脂フィルムの表面温度は、(合成樹脂フィルムの融点−30℃)〜(合成樹脂の融点−5℃)が好ましい。上記表面温度が低いと、合成樹脂フィルム中に残存した歪みの緩和が不充分となって、得られる合成樹脂微多孔フィルムの加熱時における寸法安定性が低下することがある。また、上記表面温度が高いと、延伸工程で形成された微小孔部が閉塞してしまうことがある。
【0066】
アニーリング工程における合成樹脂フィルムの収縮率は、30%以下が好ましい。上記収縮率が大きいと、合成樹脂フィルムにたるみを生じて均一にアニールできなくなったり、微小孔部の形状が保持できなくなったりすることがある。
【0067】
なお、合成樹脂フィルムの収縮率とは、アニーリング工程時における延伸方向における合成樹脂フィルムの収縮長さを、延伸工程後の延伸方向における合成樹脂フィルムの長さで除して100を乗じた値をいう。
【発明の効果】
【0068】
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、概ね直線状に延びる支持部間に微小孔部が厚み方向に概ね直線状に連続した状態で形成されていることから、リチウムイオンなどのイオンが円滑に透過することができる。従って、このような合成樹脂微多孔フィルムを、例えば、蓄電デバイスのセパレータとして用いることで、イオンが合成樹脂微多孔フィルム中を円滑に通過することができ、高出力な蓄電デバイスを提供することができる。
【0069】
さらに、本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、支持部ができるだけ分岐構造を有することなく厚み方向に直線状に形成されていることから、特に厚み方向における機械的強度に優れている。従って、合成樹脂微多孔フィルムは、使用時に加わる圧縮力によって厚み方向に圧壊されることはなく、内部に形成された微小孔部の閉塞が抑制され、長期間に亘って優れた透気性を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】実施例1で製造された合成樹脂微多孔フィルム(ホモポリプロピレン微多孔フィルム)の厚み方向及び延伸方向に沿った断面の拡大写真である。
図2】フィブリルであるか否かを判断する際の方向の考え方を示した模式図である。
図3】支持部同士が分岐しているか否かを判断するための要領を示した模式図である。
図4】支持部同士が分岐しているか否かを判断するための要領を示した模式図である。
図5】実施例1で製造された合成樹脂微多孔フィルム(ホモポリプロピレン微多孔フィルム)の厚み方向及び延伸方向に沿った断面の拡大写真である。
図6】比較例1で製造された合成樹脂微多孔フィルム(ホモポリプロピレン微多孔フィルム)の厚み方向及び延伸方向に沿った断面の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0072】
[実施例1〜6、比較例1]
(押出工程)
表1に示した重量平均分子量、数平均分子量、及び融点を有するホモポリプロピレンを押出機に供給して表1に示した樹脂温度にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出した後、表面温度が30℃となるまで冷却して、厚みが30μmで且つ幅が200mmの長尺状のホモポリプロピレンフィルムを得た。なお、製膜速度、押出量及びドロー比は表1に示した通りであった。
【0073】
(養生工程)
次に、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した養生温度となるようにして表1に示した時間(養生時間)の間、養生した。
【0074】
(延伸工程)
次に、養生を施したホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が表1に示した温度となるようにして表1に示した歪み速度にて表1に示した延伸倍率に押出方向にのみ一軸延伸装置を用いて一軸延伸した。
【0075】
(アニーリング工程)
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムを熱風炉に供給し、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が130℃となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして1分間に亘って走行させて、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施した。厚みが25μmであり且つ長尺状のホモプロピレン微多孔フィルムを得た。なお、アニーリング工程におけるホモポリプロピレンフィルムの収縮率は表1に示した値とした。
【0076】
[評価]
得られたホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、100μm2当たりの支持部の分岐構造の数を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0077】
得られたホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、透気度、収縮率(90℃及び120℃)、空孔率及び厚みを測定し、その結果を表1に示した。
【0078】
得られたホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、直流抵抗及び耐デンドライト性を測定し、その結果を表1に示した。
【0079】
実施例1で製造されたホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、厚み方向及び延伸方向に沿った断面の拡大倍率1万倍の拡大写真を図5に示した。
【0080】
比較例1で製造されたホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、厚み方向及び延伸方向に沿った断面の拡大倍率1万倍の拡大写真を図6に示した。
【0081】
(収縮率)
ホモポリプロピレンの90℃及び120℃における収縮率を下記の要領で測定した。室温にてホモポリプロピレン微多孔フィルムから、一辺がMD方向(押出方向)に平行になるようにして12cm×12cmの正方形に切り出して試験片を作製した。上記試験片の中心部に、長さが10cmの直線をMD方向(押出方向)に平行に描いた。上記試験片のシワを伸ばすため、一辺15cmの平面長方形状で且つ厚みが2mmの青板フロートガラス2枚の間に試験を挟んだ状態で、室温(25℃)にて直線の長さを2次元測長機(チェンウェイ社製 商品名「CW−2515N」)を用いて1/10μmの位まで読み取り、直線の長さを初期長さL3とした。次に、試験片を90℃又は120℃となるように設定した恒温槽(アズワン社製 商品名「OF−450B」)に1週間保管した後、取り出した。加熱後の試験片において、室温(25℃)にて直線の長さを2次元測長機(チェンウェイ社製 商品名「CW−2515N」)を用いて1/10μmの位まで読み取り、直線の長さを加熱後長さL4とした。下記式に基づいて、90℃及び120℃における収縮率を求めた。
収縮率(%)=100×[(初期長さL3)−(加熱後長さL4)]/(初期長さL3
【0082】
(直流抵抗)
下記要領で正極及び負極を作成し、小型電池を作製した。得られた小型電池について直流抵抗の測定を行った。
【0083】
<正極の作製方法>
Li2CO3と、Ni0.5Co0.2Mn0.3(OH)2で表される共沈水酸化物とをLiと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理した後に粉砕することにより、正極活物質として、平均二次粒子径が約12μmのLi1.04Ni0.5Co0.2Mn0.32を得た。
【0084】
上記のように得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製 商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)とを91:4.5:4.5(質量%)の割合で混合し、この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合してスラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、1.6g/cm3であった。アルミニウム箔をプレスして切断し、正極を作製した。
【0085】
<負極の作製方法>
チタン酸リチウム(石原産業社製 商品名「XA−105」、メジアン径:6.7μm)と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製 商品「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)とを90:2:8(質量%)の比率で混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。このスラリー状の溶液をアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ:20μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、2.0g/cm3であった。アルミニウム箔をプレスして切断して負極を作製した。
【0086】
<直流抵抗の測定>
正極を直径14mmの円形状に、負極を直径15mmの円形状に打ち抜いた。小型電池は、正極及び負極との間に合成樹脂微多孔フィルムを介在させた状態で合成樹脂微多孔フィルムに電解液を含浸させることで構成した。
【0087】
電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7混合溶媒に、1Mになるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を使用した。
【0088】
小型電池の充電は、予め設定した上限電圧まで電流密度0.20mA/cm2で充電した。放電は、予め設定した下限電圧まで、電流密度0.20mA/cm2で放電した。上限電圧は2.7V、下限電圧は2.0Vであった。1サイクル目に得られた放電容量を電池の初期容量とした。その後、初期容量の30%まで充電した後、60mA(I1)で10秒間放電したときの電圧(E1)、144mA(I2)で10秒間放電したときの電圧(E2)をそれぞれ測定した。
【0089】
上記の測定値を用いて、30℃における直流抵抗値(Rx)を以下の式により算出した。
Rx=|(E1−E2)/放電電流(I1−I2)|
【0090】
(耐デンドライト性)
下記の条件で正極及び負極を作成した後、小型電池を作成した。得られた小型電池について耐デンドライト性の評価を行った。耐デンドライト性の評価は次の手順で行なった。同一条件で小型電池を3つ作成した。下記の評価の結果、全てが短絡していないものをA、1つ短絡したものをB、2つ以上短絡したものをCとした。
【0091】
<正極の作製方法>
Li2CO3と、Ni0.33Co0.33Mn0.33(OH)2で表される共沈水酸化物とを、Liと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、正極活物質として、平均二次粒子径が約12μmのLi1.04Ni0.33Co0.33Mn0.332を得た。
【0092】
上記のように得られた正極活物質と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製、HS−100)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン((株)クレハ製、#7208)とを92:4:4(質量%)の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。このスラリーをアルミニウム箔(東海東洋アルミ販売社製、厚さ15μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、2.9g/cm3であった。その後、アルミニウム箔をプレスして正極を作製した。
【0093】
<負極の作製方法>
負極活物質として天然黒鉛(平均粒径10μm)と、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製 商品名「HS−100」)と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ社製 商品名「#7208」)を95.7:0.5:3.8(質量%)の比率で混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに投入混合して、スラリー状の溶液を作製した。得られたスラリーを圧延銅箔(UACJ製箔社製、厚さ10μm)にドクターブレード法で塗布し、乾燥した。合剤塗布量は、1.5g/cm3であった。その後、圧延銅箔をプレスして負極を作製した。
【0094】
<耐デンドライト性の測定>
正極を直径14mm、負極を直径15mmの円形に打ち抜いて電極を作製した。小型電池は、正極と負極との間にホモポリプロピレン微多孔フィルムを介在させた状態でホモポリプロピレン微多孔フィルムに電解液を含浸させることで構成した。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比3:7混合溶媒に、1Mになるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を使用した。小型電池の充電は、予め設定した上限電圧4.6Vまで電流密度0.2mA/cm2で充電した。上記の小型電池を60℃の送風オーブン中に入れ、6ヶ月間電圧変化を観察した。デンドライトによる短絡有無は、小型電池の電圧変化が−Δ0.5V/min以上変化するとデンドライト発生により内部短絡が発生したと判断した。
【0095】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の合成樹脂微多孔フィルムは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオンなどのイオンを円滑に且つ均一に透過させることができる。しがって、合成樹脂微多孔フィルムは、蓄電用デバイスのセパレータとして好適に用いられる。
【0097】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年2月9日に出願された日本国特許出願第2017−22339号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 支持部
2 フィブリル
3 微小孔部
A 合成樹脂微多孔フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6