特許第6626600号(P6626600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6626600-アンカ先端の距離センサ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626600
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】アンカ先端の距離センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20191216BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G01B21/00 A
   E04B1/41 503F
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-510863(P2019-510863)
(86)(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公表番号】特表2019-528447(P2019-528447A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】EP2017070082
(87)【国際公開番号】WO2018041558
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年2月22日
(31)【優先権主張番号】16186306.3
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トイフェルハルト
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−58311(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0345110(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第4427244(DE,A1)
【文献】 特開平7−197457(JP,A)
【文献】 実開平4−78315(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 −21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(5)の孔(99)にアンカ(1)を留め付けるため、の前方領域(32)に留め付け領域(22)を有する前記アンカ(1)と、引張力を導入するため、後方領域(33)に荷重受け具(18)と、を備えた留め付けシステムであって、
前記基板(5)の基準位置から前方領域(32)までの距離を測定するためのセンサ(40)が配置されている、ことを特徴とする留め付けシステム。
【請求項2】
前記センサ(40)は前記アンカ(1)に組み込まれている、ことを特徴とする請求項1に記載の留め付けシステム。
【請求項3】
前記センサ(40)の少なくとも1つの要素が前記アンカ(1)から分離されている、ことを特徴とする請求項1に記載の留め付けシステム。
【請求項4】
前記アンカ(1)はボルト(10)を備え、前記基板(5)の基準位置から前記ボルト(10)の前記前方領域(32)までの距離を測るための前記センサ(40)が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項5】
前記アンカ(10)は拡張アンカであり、前記ボルト(10)に設けられる前記ダボ本体(20)の拡張体(12)とともに、前記留め付け領域(22)で前記ボルト(10)に隣接する、拡張スリーブであるダボ本体(20)を備える、ことを特徴とする請求項4に記載の留め付けシステム。
【請求項6】
前記センサ(40)の少なくとも1つの要素は前記ボルト(10)に位置する、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の留め付けシステム。
【請求項7】
前記センサ(40)は、前記ボルト(10)の前面から発信する信号を送信するための送信要素(41)を備える、ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項8】
前記送信要素(41)は前記ボルト(10)の前端面(31)に配置されている、ことを特徴とする請求項7に記載の留め付けシステム。
【請求項9】
前記センサ(40)は、前記基板(5)により反射される信号を検出するための受信要素(42)を備える、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項10】
前記受信要素(42)は前記ボルト(10)の前記前端面(31)に配置されている、ことを特徴とする請求項9に記載の留め付けシステム。
【請求項11】
前記留め付けシステムは、前記アンカ(1)の発生し得る変位を判定するために、前記センサ(40)により生成される信号を異なる時点で評価することができる評価装置(43)を備える、ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載の留め付けシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1つに記載の留め付けシステムが設けられ、前記基準位置からの前記前方領域(32)の前記距離と相関する信号が、前記センサ(40)により生成される、ことを特徴とする測定方法。
【請求項13】
前記基準位置からの前記前方領域(32)の前記距離と相関する前記信号は、発生し得る前記アンカ(1)の変位を異なる時点において判定するために評価される、ことを特徴とする請求項12に記載の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の規定に基づく留め付けシステムに関する。この種の留め付けシステムは、前方領域に基板の孔にアンカを留めるための留め付け領域を有するアンカと、後方領域に引張力を導入するための荷重受け具とを備える。本発明は、この種の留め付けシステムを用いた測定方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
留め付けシステムのための拡張アンカは、例えば、特許文献1から既知である。これらは構成要素たる基板(被留め付け部材)、例えば、壁又は天井の基板の孔に挿入され、そして拡張アンカのボルトに配置されたナットを締めることにより予備拡張される。ボルトの予備拡張中に、ボルトに設けられた拡張体が拡張スリーブとして構成されたダボ本体に引き込まれ、よってダボ本体は径方向に拡張して径方向外側に押し出され、よって拡張ダボは基板に留め付けられる。所定の予備拡張力を加えるために、トルクレンチを拡張アンカに用い得る。
【0003】
特許文献2は、1種のワッシャとして構成される予備拡張制御要素を記載し、この予備拡張制御要素は拡張アンカで使用され、検出可能な必要な予備拡張力に到達することを目的としている。
【0004】
特許文献3は、高荷重用のアンカにおける予備拡張力の光ファイバ測定のための装置であって、測定に用いる光ファイバ導波路が圧力分散ワッシャに配置された装置を記載している。
【0005】
特許文献4は、組み込みセンサを有するねじを記載している。この組み込みセンサはねじの内部で軸方向に延びるめくら穴へ光を発し、エコー信号を評価する。ねじの変形及び引張荷重に関する情報は、この信号から得られる。
【0006】
特許文献5は、ねじ接続を製造し及び監視するための装置を示している。この装置により2つの要素が所定の予備拡張力で互いに押圧される。特許文献5によると、めくら穴として構成され且つねじの軸方向に動く測定孔が設けられ、測定孔では深さ測定が行われ、対応の深さ測定装置が外部に、具体的には自動又は手動のねじ回しのねじ工具に配置されている。予備拡張力と密接に相関する信号が深さ測定中に得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0514342号明細書
【特許文献2】独国特許第4421959号明細書
【特許文献3】独国特許第4037077号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/150544号
【特許文献5】独国特許第19705346号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に強固で確実な締結を特に容易に可能とするアンカを備えた留め付けシステムに加え、この種の留め付けシステムにおける測定方法を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、請求項1の技術的特徴を有する留め付けシステム及び請求項12の技術的特徴を有する測定方法により達成される。好ましい実施例は、従属項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の留め付けシステムは、基板(被留め付け部材)の基準位置から前方領域までの距離を測定するためのセンサが配置されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明は、ねじ、ナット、及びワッシャからなる純粋なねじ接続の作用においては、一般的に非常に重要とされ、そのため先行技術ではセンサで頻繁に監視されるボルトの予備拡張は、拡張アンカとして構成されるアンカではそれほど重要視しなくてもよい、という知見に基づいている。結局のところ、拡張アンカとして構成されるアンカの拡張機構は、拡張の原理によりアンカの再拡張が可能であり、予備拡張のレベルが低下した後でもなお拡張アンカを頻繁に留め付けることができる。
【0012】
さらなる知見としては、この種の拡張アンカにおいて、孔沿いの前方領域の位置、すなわち拡張機構が含まれる留め付け領域が設けられる領域の位置、及び特にこの位置の経時的変化は、留め付けシステムの即時の性能を示すより好都合な指標となり得ることである。そのため、初期拡張及び可能であればその後の再拡張は常に拡張機構の変位を伴う。結果として、特に孔の拡張機構に設けられる前方領域の位置の自動測定は、拡張挙動及びそれ故に留め付け挙動の監視を効率化することができ、留め付けシステムの性能及び信頼性を特に容易に向上させることができる。
【0013】
この点において本発明は有用であり、本発明によれば、基板上に又は基板内に位置する基準位置からのアンカの前方領域、特にそのボルトの前方領域までの距離を測定することができ、この距離と相関する信号、特に電気信号を出力することができるセンサが提供される。これは、基板、例えば、コンクリート基板はアンカの一般的用途の場合には比較的剛性が高く、通常の供用中に変形はほとんどないという知見に基づく。そのため、基板の基準位置は、アンカが留め付けられた孔に対し、一般的に比較的位置が安定している。そのため、本発明の距離測定により、孔のアンカの関連する位置データは特に容易且つ確実に検出することができ、すでに説明した通り、拡張アンカの拡張挙動に起こりうる変化及びそれ故に発生し得る留め付けシステムの耐荷重力の変化についての結論を導き出すことができる。起こりうる損傷も検出することができる。結果として、拡張アンカによる特に強力且つ確実な留め付けを、本発明のセンサにより特に容易に実現することができる。
【0014】
孔及び/又は周囲の基板に対する前方領域の変位についての上述の判定に加え、本発明のセンサから受信する信号は、その他のパラメータの直接的又は間接的な判定、例えば、外力又は留め付けシステムの剛性の判定にも用いてよい。
【0015】
本発明の留め付けシステムで用いるアンカは、例えば、拡張アンカでよい。拡張アンカとは、特にアンカのボルトの機械的効果、好ましくは引張力により、拡張アンカを留め付けるための、その留め付け領域に径方向に拡張する拡張機構を備えるアンカと理解してよく、この機械的効果により拡張アンカは孔の壁に留め付けられる。拡張アンカは、別の工具又はアンカ自身を用いて予め形成される孔のアンダーカットに留め付けられるアンダーカットアンカとしても構成してもよい。
【0016】
アンカは、しかしながら、化合物アンカでもよい。化合物アンカとは、特に、硬化性化合物により孔に固定されるアンカと理解してよい。
【0017】
荷重受け具を用いて、アンカ、特にそのボルトに、特に引抜き方向の引張力を導入するとともに横方向力をも導入すると特に好ましい。それは、特にボルトに位置してよい。荷重受け具は、雄ねじとして構成される。しかし、雌ねじ又は頭部として構成してもよい。
【0018】
前方領域はアンカの先端の近くに位置するため、前方領域は先端領域と定義してもよい。前方領域は前端領域であることが好ましい。それは、例えば、アンカの長さの最大50%、30%、又は10%を超えて延びていてもよい。後方領域は、前方領域の反対側に位置する。留め付け領域が位置する前方領域は、特にアンカのボルトの前方領域である。後方領域は、特にアンカのボルトの後方領域である。
【0019】
すなわち、アンカが孔に入れられた場合及び特に孔に留め付けられた場合に、センサが用いられ、作動状態にあるアンカの位置を判定する。そのため、センサは、特に基板の基準位置から孔に配置された前方領域までの距離を測定するために設けられる。本発明のセンサは、必要に応じ、他のセンサ、例えば、アンカのボルトの予備拡張を判定するためのセンサと組み合わせてもよい。
【0020】
本発明の留め付けシステムは、アンカを入れる孔を有する基板(被留め付け部材)を覆うものである。しかし、基板は、留め付けシステムとは別の部品とも考えてよい。この基板は、鉱物質建築材料、好ましくはコンクリートから形成される。
【0021】
基準位置は基板の壁、例えば、孔の壁、孔の基底、又は孔から離れた基板の外面に設けられる。この基準位置は基板の内部に位置され得るが、その場合、例えば、基板に内蔵された基準物、例えば、内蔵の基準磁石により規定してもよい。そのため、基準位置は、基板上だけでなく、基板内にも位置し得る。
【0022】
センサがアンカに組み込まれ、特にアンカにすべてのセンサ要素が含まれることが特に好ましい。この場合、センサがアンカとともに取り付けられているため、特に優れた使い易さ且つ高い信頼性が実現し得る。
【0023】
しかし、センサの少なくとも1つの要素、例えば、基準要素は、特にこの要素を含むことが可能な、別部品としてアンカから分離されていてもよい。例えば、センサの送信要素は、基板内及びアンカの受信要素に配置してよい。これが測定精度に関して都合が良いのは、少なくとも1つの要素が基準位置に位置し得るからである。さらに、この種の構成が費用面からも都合が良いのは、例えば、複数のセンサが1つの要素、例えば、送信要素を共有する場合である。基本的に、センサはアンカから完全に分離していてもよいのは、例えば、センサがレーザー三角測量センサであるか又はアンカのボルトが挿入されるコイルを備える場合である。しかし、センサの少なくとも1つの要素は、アンカ、特にボルトに位置することが好ましい。
【0024】
センサは以下のような測定の原則に基づいており、とりわけ、
1.アンカと孔の基底との間の測定は、
−超音波、例えば、伝播時間の測定により行う。
2.検出要素と基準要素との間の測定:
−基板に内蔵された又は基板表面上(例えば、孔の基底上、孔の壁上、又は孔の外側)の基準要素、例えば、磁石又は鉄筋とアンカ上の検出要素、例えば、磁界検出器;
−基板に内蔵された又は基板表面上の検出要素とアンカ上の基準要素。
3.アンカと孔の壁の間の測定
−例えば、カメラ又は形状のスキャニングによる孔の壁の表面構造の検出。
【0025】
既に何回か述べた通り、アンカがボルトを備えると都合がよい。センサにより基準位置からの距離が判定される前方領域は、ボルトの前方領域が好ましい。すなわち、センサが基板の基準位置からボルトの前方領域までの距離を測るために配置されることが好ましい。結果として、ボルトの前方領域の位置、特に、拡張アンカにダボ本体の拡張体が配置されている領域に関する知見により、アンカの状態についての結論が特に容易に得ることができる。そのため、特に本発明では、ボルトを有するアンカを備えた留め付けシステムであって、アンカはボルトの前方領域に、基板の孔にアンカを留めるための留め付け領域を有するとともに、特にボルトの後方領域にボルトに引張力を導入するために荷重受け具を有することが好ましく、基板の基準位置からボルトの前方領域までの距離を測るためのセンサが設けられている。
【0026】
上述の通り、アンカは、その留め付け領域において、ボルトと隣接するダボ本体、特に拡張スリーブと、ボルトに配置されたダボ本体のための拡張体と、を備える拡張アンカであることが特に好ましい。この種の拡張アンカにおいて、本発明のセンサにより得られた測定値は特に有意義となり得る。アンカは、特に力制御方式の拡張アンカの種類でよい。
【0027】
ダボ本体に対する拡張体の軸方向変位中にダボ本体を径方向に変位させるため、すなわちダボ本体に対してボルトの引抜き方向に拡張体を径方向に動かして、ダボ本体を拡張体により径方向外側に変位させ、基板の孔の壁に押圧するために、拡張体が設けられる。操作中、特に拡張体に設けられた斜面において実行され、拡張スリーブとして構成することが好ましいダボ本体により、拡張アンカは孔に留め付けられる。引抜き方向は、ボルトの長手方向軸に平行か及び/又は孔を起点とすることが好ましい。特に、ボルトの長手方向軸から拡張体表面までの距離は、拡張体上の引抜き方向に増加する。
【0028】
ダボ本体が少なくとも部分的にボルトを囲む拡張スリーブであり、及び/又は拡張体が拡張コーンであると特に都合がよい。これにより周方向での特に一様な力の導入が達成される。ボルトの長手方向軸の周りの拡張スリーブの拡張角度は、少なくとも270°である。拡張コーンは拡張スリーブを広げるために、具体的には、拡張スリーブを径方向に拡張するために配置される。拡張コーンは、数学的に厳密な円錐面を有し得るが、これは必ずしも必要ではない。
【0029】
特に、拡張体の引抜き方向の方向ベクトルは、荷重受け具に向けて方向付けられる。ボルトの長手方向軸から拡張体の表面までの距離は、荷重受け具からの距離の増加とともに増加することが好ましい。ダボ本体は、特にボルト沿いに、可動に位置し、特にボルトに留め付けられる。「径方向」及び「軸方向」とは、特にボルト及び/又はアンカの長手方向軸に当てはまり、特にボルト又はアンカの対称軸及び/又は中心軸であり得る。
【0030】
センサの少なくとも1つの要素、特に送信要素又は受信要素は、ボルトに位置していることが特に好ましい。センサ全体がボルトに位置していることが好ましい。このような配置において、基準位置からボルトの前方領域までの距離は特に容易に判定することができる。
【0031】
センサは、ボルトの前側から発信する信号を送信するための送信要素を備えると都合がよい。こうすると、測定精度及び信頼性において好都合である。信号は、例えば、超音波信号でよい。
【0032】
送信要素がボルトの前端面に配置されると、エネルギー消費、測定精度、及び製造上の煩雑性において好都合である。前端面は必ずしも平坦である必要はないものの、例えば、以下でさらに述べる送信要素及び/又は受信要素が配置されためくら穴を有してもよい。
【0033】
センサは、基板から反射される信号、特に基板からボルトに反射される信号を検出するための受信要素を備えることが好ましい。これにより、測定精度及び信頼性において好都合である。反射信号は、特に送信要素により送信され、基板、例えば、その表面により反射される信号である。例えば、特に信号が超音波信号の場合、センサは伝播時間計測向けの構成を有し得る。
【0034】
送信要素がボルトの前端面に有効に配置されると、エネルギー消費、測定精度、及び製造上の複雑さの観点において好都合となり得る。
【0035】
本発明のさらなる好ましい実施例において、留め付けシステムは評価装置を備え、この評価装置は異なる時点でセンサにより生成される信号を評価し、アンカの発生し得る変位、特にそのボルトの変位を判定することができる。そのため、前方領域の位置だけでなく、この位置の経時的変化、換言すると、前方領域の変位が検出される。この種の測定は、アンカの荷重挙動に対しても特に有意義となり得る。そのため、特にセンサは、アンカの変位と相関する信号、好ましくは電気信号を生成し、特に好ましくはアンカのボルトの変位と相関する信号、好ましくは電気信号を生成することができる。
【0036】
アンカが拡張アンカとして構成される場合は、それはボルト型拡張アンカであることが好ましい。この種の拡張アンカにおいては、拡張アンカが設置されてた場合に拡張体がダボ本体に引き込まれる。これはボルトのダボ本体に対する軸方向変位によるものである。ボルト型拡張アンカにおいて、ボルトは一体型であることが好ましい。特に、拡張体は隣接するボルトの領域と一体となるように構成される。止め具、例えば、環状ショルダを、ボルトに形成することが好ましい。この止め具は、ダボ本体が拡張体からの変位するのを阻止する。
【0037】
以上に代わり、拡張アンカをスリーブ型の拡張アンカとしてもよい。スリーブ型の拡張アンカにおいて、ボルトは拡張体とは別のアンカーロッドを備え、拡張体は対応のねじを介してアンカーロッドに接続されることが好ましい。拡張アンカを設置する場合の拡張体のダボ本体への引き込みは、少なくとも部分的にはアンカーロッドの拡張体に対する回転により行われるのであって、対応のねじにより形成される主軸駆動により、この回転は拡張体がアンカーロッドに対して軸方向運動となるよう変換される。スリーブ型の拡張アンカにおいて、特に多部品構成でもよいダボ本体は、孔の口まで延びていてもよい。
【0038】
本発明はまた測定方法であって、本発明の留め付けシステムが設けられ、基準位置から前方領域までの距離と相関する信号がセンサにより生成される、ことを特徴とする測定方法にも関する。そのように、センサは意図した通りに使用される。
【0039】
特に、基準位置から前方領域までの距離と相関する信号は評価され、異なる時点におけるアンカの起こり得る変位が判定されることとなる。そのため、前方領域の位置だけでなく、この位置の経時的変化、換言すると、前方領域の変位が検出される。このような測定は、アンカの荷重挙動について特に有意義である。
【0040】
本発明は、添付の図面に概略的に描かれた好ましい実施例に基づき以下で詳細に説明される。基本的に、本発明の技術的範囲内で、以下で記載する実施例の個別の機能を個別に又は任意に組み合わせて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の留め付けシステムの1つの実施例を概略的に示す部分的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の留め付けシステムの実施例を示す。図1が示す通り、留め付けシステムは孔99を有する基板(被留め付け部材)5と、例えば、拡張アンカとして構成され、孔99に留め付けられたアンカ1とを備える。
【0043】
アンカ1は、ボルト10と、拡張スリーブとして構成され、ボルト10の前方領域32に配置された留め付け領域22でボルト10を囲むダボ本体20と、を備える。留め付け領域22において、ボルト10は、例えば、拡張コーンとして図示されている、ダボ本体20の拡張体12を備える。拡張体12上で、ボルト10は後方から前方へと伸びる(下記でより詳細に記載する通り、荷重受け具18の長さの増加とともに)。ボルト10の断面積は、ボルト10の長手方向軸100からボルト面までの距離の増加につれ、ボルト10沿いに後方から前方へと増加する。拡張体12がダボ本体20を径方向外側に押し出得るのは、拡張体12、特にボルト10が拡張体12とともに引抜き方向101に、ダボ本体20に対して軸沿いに、移動する場合である。ダボ本体20は孔99の壁98に押圧され、アンカ1は孔99に留め付けられる。拡張体12及びダボ本体20は、孔99にアンカ1を留めるための留め付け領域22に配置される拡張機構を形成する。
【0044】
ボルト10の前方領域32の反対側の後方領域33において、ボルト10は荷重受け具18を備え、この荷重受け具18はアンカ1に、特にそのボルト10に、引張力を引抜き方向101に印加する。この場合の荷重受け具18は、例えば、雄ねじとして図示されている。
【0045】
アンカ1のボルト10はアッタチメント6を通って基板5の孔99に入り、アンカ1の前方領域32は基板5の孔99に位置し、アンカ1の後方領域33は少なくとも部分的に孔99に位置する。ナット8は雄ねじとして構成される荷重受け具18にねじ止められ、アッタチメント6をアンカ1に、それ故に基板5に保持する。ナット8を締めることにより、引抜き方向101に向かう引張力が、拡張機構を作動させるボルト10に加えられ得る。
【0046】
ボルト10は止め具17を有し、この止め具17は拡張スリーブとして構成されるダボ本体20の例えば、環状段部として構成されることが好ましく、この止め具17はダボ本体20のボルト10に対する後方、特に後方領域33へ移動するのを阻止する。
【0047】
アンカ1が設置されると、ボルト10は、前方領域32を先頭にして、ボルト10の長手方向軸100と平行に、引抜き方向101とは反対方向に、孔99へと押し込まれる。止め具17により、拡張スリーブとして構成されるダボ本体20も基板5の孔99へと導入される。次にボルト10は、長手方向軸100と平行な引抜き方向101に、例えば、締付ナット8を締め付けることにより、孔99から短い長さ分だけ再度引き抜かれる。孔99の壁98との摩擦により、拡張スリーブとして構成されたダボ本体20は後方に残り、ボルト10がダボ本体20に対し変位する。この変位の発生中に、ボルト10の拡張体12はダボ本体20の奥深くへと貫入し、ダボ本体20は拡張体12により径方向に拡張し、孔99の壁98に押し付けられる。この仕組みにより、アンカ1は基板5に固定される。
【0048】
留め付けシステムはセンサ40をさらに備え、このセンサ40は、評価装置43を含む、送信要素41と受信要素42とを有する。この実施例において、送信要素41と受信要素42の両方がアンカ1、特にそのボルト10に配置される。しかし、基本的に、これらの要素41又は42の1つは、例えば、基板5に配置してもよい。
【0049】
特に、送信要素41と受信要素42の両方は前端面31に、すなわち、特に前方に向かってボルト10を閉鎖し、孔99の基底97に対向し、及び/又は前方領域32を前方に制限する端面に配置される。
【0050】
図1の矢印が示す通り、送信要素41は、ボルト10の前側から出射する、音響信号、特に超音波信号を発信する。この音響信号は基板5、特に孔99の基底97により、ボルト10の方向に反射され、反射信号はボルト10の受信要素42により検出される。センサ40は反射信号の伝播時間を評価し、それに基づき、センサ40の軸方向位置及びそれ故に孔99の前方領域32の軸方向位置に相関する信号、特に孔99の基盤97から前方領域32までの距離に相関する電気信号を生成する。
【0051】
孔99の前方領域32の軸方向位置に相関する電気信号は、異なる時点においてセンサ40の評価装置43により評価される。この評価に基づき、センサ40、特に評価装置43は孔99のボルト10の変位に相関する信号、特に電気信号を生成する。この信号により、アンカ1の耐荷重力についての結論を得ることができる。

図1