(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の仮想光源のうち、第1の仮想光源には白色の光源色を割り当て、前記第1の仮想光源以外の第2の仮想光源には、彩度が高い成分の白色以外の光源色を割り当てて計算を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のレンダリング計算方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、自動車の計器板に設置されるメータユニットの表示画面に、自動車の外観等を表す画像を表示したい場合がある。ここで表示する画像の品質を上げることにより、メータユニットおよび自動車の商品価値を高めることができる。
【0007】
このような画像の表示を行う場合に、例えば特許文献1の技術を採用することが考えられる。また、深みのある色の表示を可能にするために、
図6のように薄い塗装皮膜が多層に積層された実際の車体外装と同様の状態を、表示により再現することが考えられる。
【0008】
しかしながら、車両上のメータユニット等の電装品が採用している表示器においては、表示能力の限界により、表示画素の分解能や、表示可能な色の分解能よりも細かい反射色を表現できない。したがって、実際の車体外装のように深みのある色を表示により再現することは困難である。
【0009】
そこで、
図7に示すように互いに異なる位置に配置した複数の光源を想定し、物体の同じ表面からの複数の反射光を加算した結果が視点の位置で視認される場合と同じ状態を、表示により再現することが考えられる。しかし、この場合には複数の光源からの光が物体表面上の互いに位置のずれた複数の領域に当たることになるため、視点の位置で視認される像において陰影のコントラストが低下する。したがって、深みのある色を再現できない。しかも、光源の数が増えると、レンダリングの際に光源毎に、物体表面からの拡散光の成分と鏡面反射光の成分とをそれぞれ計算しなければならないので、計算の負荷が膨大になり、自動車上の電装品に搭載されるような比較的安価なプロセッサでは計算処理を実現できない。
【0010】
また、
図8に示すように、複数の光源を同じ視線上に並べて配置した場合を想定して計算を行うと、コントラストが低下することはないが、現実世界では実際の車体外装を視た場合と同じような深みのある色が再現されることもない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高性能の表示器を採用することなく深みのある色の再現を可能にすると共に、これを実現するために必要な計算の負荷を削減することが可能なレンダリング計算方法および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るレンダリング計算方法および表示装置は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 所定の視点位置で視認される物体の色を、所定の光源の影響を反映させた表示色として再現するレンダリング計算方法であって、
複数の仮想光源を前記物体を経て前記視点に至る光路上で同じ位置に割り当て、
前記物体の表面から前記視点に到達する光の成分のうち、環境光の成分と、拡散光の成分と、鏡面反射光の成分とをそれぞれ算出し、
前記鏡面反射光の成分を計算する際には、前記複数の仮想光源のそれぞれについて互いに異なる光源色を割り当て、前記複数の仮想光源のそれぞれについて鏡面反射光を算出する、
ことを特徴とする。
【0013】
上記(1)のレンダリング計算方法によれば、前記複数の仮想光源を同じ光路上に配置するので、これらの光源からの光が当たる物体表面の領域が増えることはなく、コントラストの低下を防止できる。また、前記複数の仮想光源についてそれぞれ異なる光源色を割り当てるので、単一の光源を用いて計算する場合の反射光と比べて複雑な物体色、つまり深みのある色を表現できる。
【0014】
(2) 前記(1)に記載のレンダリング計算方法であって、
前記複数の仮想光源のうち、第1の仮想光源には白色の光源色を割り当て、前記第1の仮想光源以外の第2の仮想光源には、彩度が高い成分の白色以外の光源色を割り当てて計算を行う、
ことを特徴とする。
【0015】
上記(2)のレンダリング計算方法によれば、前記第1の仮想光源が赤、緑、および青の全ての色成分を含む白色の光源色であるため、この光に基づいて前記鏡面反射光を計算することにより、表示のコントラストを上げることができる。また、前記第2の仮想光源が白色以外の光源色であるため、この光に基づいて前記鏡面反射光を計算することにより、表示色に特徴的な色成分を加算することができる。
【0016】
(3) 前記(1)に記載のレンダリング計算方法であって、
前記拡散光の成分を算出する際には、1つに集約した光源色のみに限定して計算を行う、
ことを特徴とする。
【0017】
上記(3)のレンダリング計算方法によれば、深みのある色を表現するために多数の仮想光源を用意する場合であっても、前記拡散光の成分を算出する際の光源色が1つのみであるため、計算の負荷を大幅に低減できる。拡散光の成分については、光源色毎に独立して計算しなくても人間の視覚上の特性により違和感が生じにくい。したがって、光源を1つに集約して計算を行っても問題ない。
【0018】
(4) 前記(2)に記載のレンダリング計算方法であって、
前記第1の仮想光源の光について鏡面反射光を算出するための第1の鏡面反射計算処理を実施した後、
前記第1の鏡面反射計算処理の際に得られた計算結果の一部を、前記第2の仮想光源の光について鏡面反射光を算出するための第2の鏡面反射計算処理で計算に流用する、
ことを特徴とする。
【0019】
上記(4)のレンダリング計算方法によれば、前記第1の仮想光源と前記第2の仮想光源とが同じ位置に存在するので、前記第1の鏡面反射計算処理の計算結果の一部分を、前記第2の鏡面反射計算処理でそのまま計算に流用できる。これにより、多数の仮想光源を用いる場合であっても、必要な計算の処理量が増えるのを抑制できる。
【0020】
(5) 所定の視点位置で視認可能な物体の色を、所定の光源の影響を反映させて表示色として再現し表示する表示装置であって、
複数の仮想光源を前記物体を経て前記視点に至る光路上で同じ位置に割り当て、前記物体の表面から前記視点に到達する光の成分のうち、環境光の成分と、拡散光の成分と、鏡面反射光の成分とをそれぞれ算出し、前記鏡面反射光の成分を計算する際には、前記複数の仮想光源のそれぞれについて互いに異なる光源色を割り当て、前記光源色に基づき、前記複数の仮想光源のそれぞれについて鏡面反射光を算出する計算処理部と、
前記計算処理部が算出した、前記環境光の成分と、前記拡散光の成分と、前記鏡面反射光の成分とを加算した結果を表示する表示制御部と、
を備える。
【0021】
上記(5)の表示装置によれば、前記環境光の成分と、前記拡散光の成分と、前記鏡面反射光の成分とを加算した結果を用いて深みのある色で画像等を表示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレンダリング計算方法および表示装置によれば、高性能の表示器を採用することなく深みのある色の再現を可能にすると共に、これを実現するために必要な計算の負荷を削減することが可能である。
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
まず、物体色Coの計算について説明する。
本発明のレンダリング計算方法を採用する場合の各光源、物体、視点および光路の例を
図1に示す。また、光源の光および反射光の方向の例を
図2に示す。
【0026】
本実施形態では、
図1に示すような状況を想定している。つまり、視点22の位置でユーザが視認可能な物体21を照明する光源として、環境光の他に、複数のN個の仮想光源23(1)、23(2)、・・・、23(N)が存在する。現実の物体21としては、車両ボディなどが想定される。
【0027】
また、本実施形態では、
図1に示すようにN個の仮想光源23(1)〜23(N)が全て同じ位置に存在するように1点に集める。各仮想光源23(1)〜23(N)からの光は入射光24として物体21の表面に入射し、この表面における反射および拡散の影響を受け、物体21からの反射光25として視点22に向かう。したがって、全ての仮想光源23(1)〜23(N)の影響を受けた物体21からの反射光25をユーザは視点22の位置で視認できる。
【0028】
本実施形態では、深みのある色を再現するために、視点22の位置で視認できる物体色Coを次式により算出する。
物体色Co=Am+Di+Sp(1)+Sp(2)+・・・+Sp(N) ・・・(1)
但し、
Am:環境光(ambient)
Di:拡散光(diffuse)
Sp(1)〜Sp(N):1番〜N番の各仮想光源23の光に対応する鏡面反射光(Specular)
深みのある色を再現するために、まず、クックトランスモデルを適用する場合を想定する。クックトランスの式は、環境光と、拡散光と、鏡面反射光との足し算であり、物体の色Iは次の第(2)式で表される。
【数1】
次に、フォンモデルを適用する場合を想定する。フォンモデルの式は、環境光と、拡散光と、鏡面反射光との足し算であり、物体の色Iは次の第(3)式で表される。
【数2】
上記第(2)式、第(3)式のいずれも、上記第(1)式で表現することが可能である。したがって、クックトランスモデル、フォンモデルのいずれを採用する場合であっても、上記第(1)式に基づいて計算を行うことができる。
【0029】
また、本実施形態では、
図1に示すN個の仮想光源23(1)〜23(N)のうち、1番目の仮想光源23(1)の光源色を、表示色の中でハイライトとなる白色、つまり赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の全ての成分を含む色に定める。また、2番目以降の各仮想光源23(2)〜23(N)のそれぞれの光源色については、1番目の仮想光源23(1)とは異なる色(彩度の高い色)に定める。
【0030】
したがって、上記第(1)式における1番目の鏡面反射光Sp(1)の成分については、表示色全体の濃淡を強調しコントラストを上げる効果がある。また、2番目〜N番目の各鏡面反射光Sp(2)〜Sp(N)の成分については、それぞれ異なる色特性を持つので、これらの全体により、深い色あいを表現する効果が得られる。仮想光源23の数Nは2以上であればよいが、数Nを増やすことでより複雑な色あいを表現可能になる。
【0031】
上記第(1)式において、拡散光Diの成分については、1番目の仮想光源23(1)の白色、あるいは特定の1つの基準色のみに基づいて計算を行う。この場合、拡散光Diの計算において、鏡面反射光Sp(1)〜Sp(N)のような複雑な色を表現することはできない。しかし、人間の視覚は、拡散光の影響をキャンセルする傾向にある。例えば、青い色のボールを赤い色の照明下で視た場合、実際のボールの色は紫色になるが、この場合でも人間はこれが青いボールである事を認識できる。したがって、上記第(1)式により計算される物体色Coについて、拡散光の成分が鏡面反射光の成分に比べて大きな誤差を含んでいたとしても、それによって人間が違和感を感じる可能性は小さい。また、拡散光Diの成分の計算を1色だけに限定し他の色の計算を省略することにより、仮想光源23の数が増えた場合に計算の負荷を大幅に削減できる。
【0032】
上記の鏡面反射光Sp(1)〜Sp(N)は、「クックトランスの鏡面反射」を表す次式で計算できる。
【数3】
但し、
F:フレネル項
D(Distribution):微小面の分布関数であり、ベックマン分布を用いる。
G:幾何学的減衰係数
N:法線
L:光源へのベクトル
V:視点へのベクトル
I:光の強さ
S:見た目の調整係数
dω:立体角であり距離の二乗でわったもの
なお、本来のクックトランスの式では、係数Sは鏡面反射と拡散反射との割合を示すために利用されるが、本実施形態では拡散反射の成分を利用しないので、見た目の調整用にこの係数Sを利用する。
また、フレネル項Fは、次の近似式で表される。
F=Fo+(1−Fo)(1−cosθ)
5 ・・・(6)
上記第(6)式におけるFoは、R、G、Bの色毎に変更する。
また、幾何学的減衰係数Gは次式で表される。
【数4】
また、微少面の分布関数Dは次式で表される。
【数5】
ここで、係数mは、光の数(specular)毎に異なり、この係数により各層毎の違いを表現する。
【0033】
つまり、前記第(1)式の物体色Coを表す鏡面反射光Sp(1)〜Sp(N)の各成分を計算する際には、上記第(5)式、第(6)式、第(7)式、および第(8)式の計算を行うことになる。但し、本実施形態の場合はN個の仮想光源23(1)〜23(N)が全て同じ位置に存在しているので、一部分の計算値は全ての光源について共通になる。具体的には、第(5)式に含まれている(N・V)の計算値は、鏡面反射光Sp(1)〜Sp(N)の全ての計算について共通である。更に、フレネル項Fの計算式で用いる係数FoもRGB毎に鏡面反射光Sp(1)〜Sp(N)の全ての計算について共通である。
【0034】
本実施形態では、1番目の鏡面反射光Sp(1)からN番目の鏡面反射光Sp(N)までをそれぞれ順番に計算することになるが、2番目以降の鏡面反射光Sp(2)〜Sp(N)の各々を計算する際には、1番目の鏡面反射光Sp(1)の計算の際に求めた(N・V)の計算値をそのまま流用する。また、2番目以降の鏡面反射光Sp(2)〜Sp(N)の各々を計算する際には、フレネル項Fの計算において、1番目の鏡面反射光Sp(1)の計算と同じ係数FoをRGB毎に採用して計算を実施する。このように、計算の一部分を省略することにより計算の総量を減らし負荷を大幅に削減できる。
また、幾何学的減衰係数Gの計算についても、2番目以降の鏡面反射光Sp(2)〜Sp(N)の各々を計算する際に、1番目の鏡面反射光Sp(1)の計算と同じ値の係数Gを採用して計算を実施する。
なお、クックトランスの式においては、フレネル項Fの計算をベクトルとしてRGB毎にそれぞれ実施するが、スカラーとしてRGB共通の計算を行うこともできる。RGB毎にそれぞれ独立して計算する場合には視る角度に応じて色が変化するが、RGB共通の計算を行う場合には、鏡面反射の強弱に影響が現れる。
また、フォンモデルを採用して計算する場合には、前記第(3)式に示したように、鏡面反射光を次式で計算する。
鏡面反射光=Ii・Ks(R・V)
n ・・・(9)
ここで、係数nは光毎(specular毎)に異なる。この係数nにより、面の各層毎の違いを表現する。
【0035】
表示装置10の構成例を
図3に示す。この表示装置10は、例えばメータユニットの一部分として車両に搭載し、様々な情報を可視情報としてユーザすなわち運転者に提示するために利用できる。
【0036】
図3に示すように、この表示装置10はマイクロコンピュータ(CPU)11、GDC(グラフィックディスプレイコントローラ)12、一時記憶用メモリ(RAM)13、読み出し専用メモリ(ROM)14、車両情報取得部15、操作部16、フレームバッファ17、および表示部(Display)18を備えている。
【0037】
マイクロコンピュータ11は、予め用意されたプログラムを実行することにより、表示装置10の様々な機能を実現するために必要な制御を実施する。
【0038】
表示部18は、例えば液晶表示器として構成され、各々の階調および表示色を個別に制御可能な多数の表示画素を縦方向および横方向に並べた二次元表示画面を備えている。
【0039】
フレームバッファ17は、表示部18の表示画面に表示する内容のデータを1フレーム毎に保持する比較的容量の大きいメモリで構成されている。つまり、各表示フレームについて全ての画素の階調および表示色を表すデータを保持する。フレームバッファ17上のデータは、GDC12の書き込みにより逐次更新される。
【0040】
GDC12は、グラフィック情報を生成してフレームバッファ17に書き込むための専用のコントローラであり、マイクロコンピュータ11から指示されたプログラムやデータに基づいて様々なグラフィック表示を実現する。
【0041】
読み出し専用メモリ14は、予め用意された様々なプログラム、様々な定数データ、データテーブルなどを予め保持している。また、一時記憶用メモリ13は、データの書き込みおよび読み出しが自在なメモリであり、マイクロコンピュータ11が生成した一時的なデータやプログラムを保持するために利用される。
【0042】
図3の表示装置10においては、一時記憶用メモリ13上のデータおよび読み出し専用メモリ14上のデータは、マイクロコンピュータ11およびGDC12のどちらからでもアクセスして読み出すことができる。
【0043】
車両情報取得部15は、例えばCAN(Controller Area Network)等の通信規格に従って車両上のネットワークとの間でデータ通信を行うインタフェースを備えており、車両上の様々な情報をこのネットワークを経由して例えば上位の電子制御ユニット(ECU:図示せず)から取得して、マイクロコンピュータ11に与えることができる。
【0044】
操作部16は、ユーザが操作可能なスイッチやボタンを備えている。マイクロコンピュータ11は、ユーザの操作入力を操作部16から読み取り、この操作入力に従って、例えば表示部18の表示画面に表示する内容を切り替えることができる。
【0045】
表示装置10における画面描画処理の手順を
図4に示す。すなわち、マイクロコンピュータ11の動作およびGDC12の動作により
図4の手順を実行することにより、表示部18の表示画面に様々なグラフィック情報を描画することができる。
【0046】
なお、
図4中に示した「仮想カメラ」の文言は、3DCG(立体コンピュータグラフィックス)の仮想空間に配置されるカメラを表し、
図1に示した視点22に相当する。また、「仮想光源」の文言は、
図1に示した仮想光源23(1)、23(2)、・・・、23(N)に相当する。
【0047】
また、「3Dオブジェクト」の文言は、3DCGの仮想空間に配置される各物体、つまり表示対象の物体21を表す。この「3Dオブジェクト」は、複数のポリゴンの組み合わせとして構成されている。表示装置10においては様々な「3Dオブジェクト」のデータが予め作成され、読み出し専用メモリ14に格納されている。
【0048】
また、「ポリゴン」の文言は、「3Dオブジェクト」を構成するための表示要素を表す多角形を意味しており、実際には多角形の各頂点の座標データの集合として構成されている。
【0049】
また、「シェーダプログラム」の文言は、ポリゴンを描画するために必要な頂点情報やピクセル描画方法(色の計算を含む)を示すデータを表す。「シェーダプログラム」のデータには、プログラマによってそれぞれ独自にカスタマイズしたものが用いられるが、GDC12がデータの内容を正しく解釈し、それを指定された通りに描画できるように構成されている。
【0050】
図4のステップS11では、マイクロコンピュータ11が、車両情報取得部15から車両情報を取得する。更に、マイクロコンピュータ11が時間の経過を監視したり、操作部16に対するスイッチ操作を表す情報を取得する。これらの情報に基づき、マイクロコンピュータ11は表示部18の画面に表示すべき物体を選択したり、視点位置の変更など表示形態を特定する。
【0051】
ステップS12では、深みのある色を再現するための前述の計算方法が組み込まれた「シェーダプログラム」のデータを、GDC12が読み込める場所、例えば一時記憶用メモリ13上の特定領域にマイクロコンピュータ11が書き込む。
【0052】
ステップS13では、マイクロコンピュータ11が、S11で取得した情報に基づき、3DCGを描画するために必要な仮想光源の位置、および仮想カメラの位置をS12の「シェーダプログラム」にパラメータとして入力する。例えば、
図1に示した例の場合には、同じ位置にある仮想光源23(1)〜23(N)の位置と、視点22の位置とをパラメータとして入力する。
【0053】
ステップS14では、マイクロコンピュータ11が、表示対象の「3Dオブジェクト」の位置、および材質のパラメータを「シェーダプログラム」に入力する。
【0054】
ステップS15では、GDC12が、S12で用意された「シェーダプログラム」と、S13、S14で入力された各種パラメータとに従って、フレームバッファ17内に描画するポリゴン位置を、「3Dオブジェクト」のポリゴン各頂点と仮想カメラの位置に基づき算出する。
【0055】
ステップS16では、GDC12が、S12で用意された「シェーダプログラム」と、S13、S14で入力された各種パラメータとに従って、ポリゴン内のピクセル(画素)毎に、深みのある色、つまり前記第(1)式の物体色Coを算出する。
【0056】
ステップS17では、GDC12が、S15、S16の計算結果に基づき、「3Dオブジェクト」の構成要素である各ポリゴンのビットマップデータをフレームバッファ17上に描画する。
【0057】
GDC12は、描画対象の「3Dオブジェクト」を構成する全てのポリゴンについて、S15〜S18の処理を繰り返す。そして、全てのポリゴンの描画が終了するとステップS18からS19に進む。
【0058】
同時に複数の「3Dオブジェクト」を表示部18の画面上に表示する場合には、全ての「3Dオブジェクト」の処理が終了したか否かをマイクロコンピュータ11がS19で識別し、処理が終了してなければS14以降の処理を繰り返し実行する。処理が終了すると、S19からS20に進む。
【0059】
ステップS20では、マイクロコンピュータ11またはGDC12の制御により、フレームバッファ17上のビットマップデータを表示部18の表示画面に表示する。
【0060】
表示部18の画面表示例を
図5に示す。
図5の表示例では、自動車の外観を右前方から視た状態の外観を3DCGにより表示部18の画面上に表示している。この図面に示した内容だけでは細部および色が見えないので分かりにくいが、物体21である自動車外装表面において、前述の複数の仮想光源23(1)〜23(N)の鏡面反射の影響が強く表れている。つまり、光源の照明光の反射を示すハイライト箇所の白色のコントラストが大きくなっている。また、前述の仮想光源23(2)〜23(N)の影響により白色以外の様々な色成分の鏡面反射が複雑に重なった状態で表示されている。つまり、深みのある色が画面上で再現されている。
【0061】
上述の表示装置10においては、複数の仮想光源23(1)〜23(N)を視線の延長線上の同じ位置に配置しているので、例えば
図7に示した例のように光源毎に光路がずれることがない。つまり、複数の仮想光源23(1)〜23(N)の光が物体21上の表面の同じ位置に当たるので、コントラストの低下を防止できる。
【0062】
また、上述の表示装置10においては、複数の仮想光源23(1)〜23(N)を鏡面反射のみに対応付けて物体色Coの計算を行っているので、仮想光源の数Nが増えた場合でも計算の負荷の増大を抑制できる。
【0063】
また、複数の仮想光源23(1)〜23(N)を同じ位置に配置しているので、2番目以降の仮想光源23(2)〜23(N)について鏡面反射光Sp(2)〜Sp(N)を算出する際には、1番目の仮想光源23(1)に対する鏡面反射光Sp(1)の計算結果の一部分を流用して計算を行うことができる。これにより、計算の負荷を更に削減できる。
【0064】
ここで、上述した本発明に係るレンダリング計算方法および表示装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 所定の視点位置で視認される物体の色を、所定の光源の影響を反映させた表示色(物体色Co)として再現するレンダリング計算方法であって、
複数の仮想光源(23(1)〜23(N))を前記物体(21)を経て前記視点(22)に至る光路(入射光24)上で同じ位置に割り当て、
前記物体の表面から前記視点に到達する光(反射光25)の成分のうち、環境光(Am)の成分と、拡散光(Di)の成分と、鏡面反射光(Sp(1)〜Sp(N))の成分とをそれぞれ算出し、
前記鏡面反射光の成分を計算する際には、前記複数の仮想光源のそれぞれについて互いに異なる光源色を割り当て、前記複数の仮想光源のそれぞれについて鏡面反射光(Sp(1)〜Sp(N))を算出する、
ことを特徴とするレンダリング計算方法。
[2] 前記複数の仮想光源のうち、第1の仮想光源(23(1))には白色の光源色を割り当て、前記第1の仮想光源以外の第2の仮想光源(23(2)〜23(N))には、彩度が高い成分の白色以外の光源色を割り当てて計算を行う、
ことを特徴とする上記[1]に記載のレンダリング計算方法。
【0065】
[3] 前記拡散光の成分を算出する際には、1つに集約した光源色のみに限定して計算を行う、
ことを特徴とする上記[1]に記載のレンダリング計算方法。
【0066】
[4] 前記第1の仮想光源の光について鏡面反射光を算出するための第1の鏡面反射計算処理を実施した後、
前記第1の鏡面反射計算処理の際に得られた計算結果の一部((N・V)、Fo)を、前記第2の仮想光源の光について鏡面反射光を算出するための第2の鏡面反射計算処理で計算に流用する、
ことを特徴とする上記[2]に記載のレンダリング計算方法。
【0067】
[5] 所定の視点位置で視認可能な物体の色を、所定の光源の影響を反映させて表示色として再現し表示する表示装置(10)であって、
複数の仮想光源を前記物体を経て前記視点に至る光路上で同じ位置に割り当て、前記物体の表面から前記視点に到達する光の成分のうち、環境光の成分と、拡散光の成分と、鏡面反射光の成分とをそれぞれ算出し、前記鏡面反射光の成分を計算する際には、前記複数の仮想光源のそれぞれについて互いに異なる光源色を割り当て、前記光源色に基づき、前記複数の仮想光源のそれぞれについて鏡面反射光を算出する計算処理部(マイクロコンピュータ11、GDC12)と、
前記計算処理部が算出した、前記環境光の成分と、前記拡散光の成分と、前記鏡面反射光の成分とを加算した結果を表示する表示制御部(フレームバッファ17)と、
を備える表示装置。