特許第6626705号(P6626705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626705
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】カラーセラミックス
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/488 20060101AFI20191216BHJP
【FI】
   C04B35/488
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-242303(P2015-242303)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2017-105685(P2017-105685A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2018年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷 淑人
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−185855(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/108416(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/024275(WO,A1)
【文献】 特開平01−225655(JP,A)
【文献】 特開2004−315673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア結晶とアルミナ結晶とを含み、安定化剤を含むジルコニアが主成分であり、AlをAl換算した含有量が15質量%以上25質量%以下、NiをNiO換算した含有量が0.5質量%以上5質量%以下であり、前記アルミナ結晶の円相当径の最大径が1.2μm以下であり、色調がCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が57以上79以下、クロマティクネス指数a*が−16以上−5以下、クロマティクネス指数b*が−22以上−2以下であるライトブルーであることを特徴とするカラーセラミックス。
【請求項2】
前記アルミナ結晶の平均結晶粒径が0.3μm以上0.45μm以下であり、平均重心間距離が0.85μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカラーセラミックス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカラーセラミックスを備えることを特徴とする装飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーセラミックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジルコニア質焼結体は、機械的特性が高く、高級感や美的満足感を感じられるものであるため、近年、時計のベゼルや携帯電話のキー、ピロー等の装飾部品として好適に用いられている。そして、嗜好の多様化に応えて様々な色調とすべく、着色成分について種々の検討が為されている。
【0003】
そして、本願出願人らは、淡い青色(以下、ライトブルーと記載する。)のカラーセラミックスとして、安定化剤を含むジルコニアを主成分として、アルミナ(Al)とニッケルスピネル(NiAl)とを含んでなる、淡い青色(以下、ライトブルーと記載する。)のカラーセラミックスを提案していた。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2007/108416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今般においては、需要者に高い美的満足感を与えるべく、色ばらつきの低減が求められている。
【0006】
本発明は、上記要求を解決すべく案出されたものであり、色ばらつきが少ないことによって、需要者に高い美的満足感を与えることができるカラーセラミックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカラーセラミックスは、ジルコニア結晶とアルミナ結晶とを含み、安定化剤を含むジルコニアが主成分であり、AlをAl換算した含有量が15質量%以上25質量%以下、NiをNiO換算した含有量が0.5質量%以上5質量%以下であり、前記アルミナ結晶の円相当径の最大径が1.2μm以下であり、色調がCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が57以上79以下、クロマティクネス指数a*が−16以上−5以下、クロマティクネス指数b*が−22以上−2以下であるライトブルーであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカラーセラミックスによれば、色ばらつきが少ないことによって、需要者に高い美的満足感を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態のカラーセラミックスの一例について説明する。
【0010】
本実施形態のカラーセラミックスは、ジルコニア結晶と、アルミナ結晶とを含む。また、本実施形態のカラーセラミックスは、安定化剤を含むジルコニアが主成分であり、AlをAl換算した含有量で15質量%以上25質量%以下、NiをNiO換算した含有量で0.5質量%以上5質量%以下含むものである。
【0011】
そして、本実施形態のカラーセラミックスは、アルミナ結晶の最大径が1.2μm以下である。このような構成を満たしていることにより、本実施形態のカラーセラミックスは
、ライトブルーの色調を呈し、色ばらつきが少ないことによって、需要者に高い美的満足感を与えることができる。特に、アルミナ結晶の最大径は1μm以下であることが好適である。
【0012】
なお、本実施形態のカラーセラミックスが呈するライトブルーの色調とは、CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が57以上79以下、クロマティクネス指数a*が−16以上−5以下、クロマティクネス指数b*が−22以上−2以下である。
【0013】
次に、各種測定方法や確認方法について説明する。
【0014】
まず、主成分とは、カラーセラミックスを構成する全成分100質量%のうち、70質量%を超える成分のことである。
【0015】
また、各成分の含有量については、蛍光X線分析装置(XRF)やICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、Zr、Al、Niの含有量を求め、それぞれZrO(ジルコニア)、Al、NiOに換算することによって求めることができる。
【0016】
また、ジルコニア結晶とアルミナ結晶の存在の確認方法としては、X線回折装置(XRD)による測定を行ない、JCPDSデータとの照合により確認すればよい。
【0017】
また、アルミナ結晶の最大径については、以下のようにして求めることができる。ジルコニア結晶およびアルミナ結晶は、鏡面加工し、焼成温度よりも50〜100℃低い温度でファイアーエッチングした面を測定面として走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した際、ジルコニア結晶は白色系に見え、アルミナ結晶は黒色系に見えるため、判別は容易であり、粒子がジルコニア結晶であること、アルミナ結晶であることの確認は、SEMに付設のエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いて含有成分を確認することによっても確認することができる。そして、アルミナ結晶の最大径を求めるにあたっては、例えば、10000倍の倍率(観察領域約90μm:縦8.1μm×横11.2μm)でSEMにより撮影した写真を用いて、黒色系の結晶を黒く塗りつぶし、これを画像データとして読み取り、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して画像解析し、各結晶における最大径を確認すればよい。なお、解析条件としては、例えば粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「手動」、小図形除去を「0.01μm」、閾値を「40」とすればよい。なお、本実施形態においてアルミナ結晶には、Niが固溶した結晶も含むものとする。
【0018】
そして、安定化剤とは、ジルコニア結晶を安定した相状態(正方晶または立方晶)に保つためのものであり、例えば、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化ディスプロシウム(Dy)、酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)等から選ばれる少なくとも1種のことである。ここで、安定化剤がイットリアであれば、イオン半径がジルコニアに近く安定化度合が高く、粗大結晶が発生しにくいため、カラーセラミックスの機械的特性を優れたものとすることができる。
【0019】
ジルコニア結晶中の単斜晶の割合は、0.5%以下であることが好適である。ジルコニア結晶中の単斜晶の割合は、XRDを用いて測定し、単斜晶の(111)および(11−1)の反射ピーク強度,正方晶および立方晶の(111)の反射ピーク強度を用いて、次の式より算出することができる。(Im(111)+Im(11-1)/(Im(111)+Im(11-1)
+It(111)+Ic(111))×100、なお、単結晶の(111)をIm(111),単結晶の(11−1)をIm(11-1),正方晶の(111)をIt(111),立方晶の(111)をIc(111)として表している。
【0020】
なお、安定化剤については、XRFやICPによる定性分析や、EDSによって含有していることを確認することができる。また、含有量については、例えばY(イットリウム)であれば、Zr、AlやNiのように、XRFやICPによって、Yの含有量を求め、Yに換算することにより求めることができる。
【0021】
次に、色調については、色彩色差計(旧ミノルタ社(製)CR−221またはその後継機種)を用い、JIS Z 8722−2000に準拠して、CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値、クロマティクネス指数a*およびb*の値を求めればよい。なお、測定条件としては、光源をCIE標準光源D65とし、照明受光方式を条件a((45−n)〔45−0〕)に、測定径を3mmに設定して行なう。
【0022】
また、色ばらつきについては、カラーセラミックスの複数個所について測定を行ない、得られたL*、a*、b*の値を用いて、ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2により色ばらつきを求めることができる。
【0023】
本実施形態におけるジルコニア結晶およびアルミナ結晶は、例えば、平均結晶粒径が0.25μm〜0.5μmである。このような場合、カラーセラミックスに存在するすべての結晶の平均結晶粒径も0.25μm〜0.5μmである。このような範囲の平均結晶粒径を満たすものであるときには、優れた機械的特性を有する。
【0024】
本実施形態のカラーセラミックスは、アルミナ結晶の平均結晶粒径が0.3μm以上0.45μm以下であり、平均重心間距離が0.85μm以上1.0μm以下であることが好適である。このような構成を満たしているときには、さらに色ばらつきが抑えられたものとなり、需要者により高い美的満足感を与えることができる。
【0025】
なお、平均結晶粒径は、アルミナ結晶の最大径を求めたときと同様に、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して画像解析することにより求めることができる。また、平均重心間距離については、画像解析において重心間距離法という手法を用いて算出すればよい。重心間距離法における解析条件としては、粒子解析と同様とすればよい。
【0026】
また、本実施形態のカラーセラミックスは、JIS R 1601−2008に準拠して求められる3点曲げ強度が900MPa以上である。また、ビッカース硬度Hvが13GPa以上である。ビッカース硬度Hvが13GPa以上であれば、ガラスまたは金属からなる塵埃のような硬度の高い物質と接触しても、容易に傷が入りにくくなる。この表面のビッカース硬度HvはJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
【0027】
また、本実施形態のカラーセラミックスは、見掛密度が5.3g/cm以上である。見掛密度の値が上記範囲を満たしているときには、表面における開気孔が少なくなり、開気孔の輪郭から発生する結晶粒の脱粒が抑制されるとともに優れた機械的強度を有する。なお、この見掛密度は、JIS R 1634−1998に準拠して求めればよい。
【0028】
そして、本実施形態のカラーセラミックスは、色ばらつきが少ないことによって需要者に美的満足感を与えることができることから、時計用ベゼルや時計用バンド駒等の時計用部品、押下操作する各種キー、ピロー、外装等の携帯電話機用部品、釣糸用ガイドリング等の釣糸案内用部品を始め、ブローチ、ネックレス、イヤリング、リング、ネクタイピン、タイタック、メダル、ボタン等の装身具用部品、床、壁、天井を飾るタイルあるいはドアの取手等の建材用部品、スプーン、フォーク等のキッチン部品用部品、その他の家電用装飾部品、エンブレム等の自動車用部品として好適に用いることができる。
【0029】
そして、本実施形態のカラーセラミックスを装飾品に備える(カラーセラミックスが装飾品である場合含む)場合、需要者が装飾的価値を求める装飾面における算術平均粗さRaは0.03μm以下であることが好適である。この算術平均粗さRaはJIS B 0601−2001に準拠して測定すればよい。例えば、触針式の表面粗さ計を用いて、測定長さを5mm、カットオフ値を0.8mmとし、先端部の半径が2μmの触針を当てて、速度を0.5mm/秒として触針を走査すればよい。
【0030】
次に、本実施形態のカラーセラミックスの製造方法の一例を説明する。
【0031】
まず、主原料粉末として平均粒径が0.25μm以上0.55μm以下の安定化ジルコニア粉末を用意する。ここで安定化ジルコニア粉末とは、具体的には、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ディスプロシウム、酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムから選ばれる少なくとも1種の安定化剤を加えて共沈法により生成されたものであり、ジルコニアが95〜99mol%で、安定化剤が1〜5mol%含むものである。なお、この安定化ジルコニア粉末には、酸化ハフニウムを2質量%程度含むものであってもよい。
【0032】
また、平均粒径が0.6μm以下の酸化アルミニウム粉末(表1においてはアルミナ粉末)および平均粒径が0.8μm以上1.0μmの酸化ニッケル粉末を用意する。そして、安定化ジルコニア粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化ニッケル粉末の合計100質量部のうち、酸化アルミニウム粉末が15質量部以上25質量部以下、酸化ニッケルが0.5質量部以上5質量部以下、残部が安定化ジルコニア粉末となるように秤量する。
【0033】
なお、安定化ジルコニア粉末、酸化アルミニウム粉末および酸化ニッケル粉末については、アルミナ結晶の粒成長を促す成分が含まれる場合があるが、例えば、焼結体における含有量は、SiをSiO、MgをMgO、CaをCaOに換算した値の合計で200〜400ppmの範囲であることが好適である。
【0034】
なお、アルミナ結晶の平均結晶粒径を0.3μm以上0.45μm以下とするには、平均粒径が0.2μm以上0.32μm以下のものを用いるか、以下に記載の混合粉砕によって平均粒径が0.2μm以上0.32μm以下とすればよい。また、平均重心間距離が0.85μm以上1.0μm以下とするには、以下の混合粉砕において、安定化ジルコニア粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化ニッケル粉末の合計100質量部に対し、分散剤を0.2質量部以上0.3質量部以下の範囲で添加すればよい。
【0035】
次に、秤量した各粉末と溶媒である水とを振動ミルやボールミル等に入れて混合粉砕する。ここで、混合粉砕に用いるボールは、同じ組成および同じ製造方法によって事前に作製したカラーセラミックスからなることが好適である。
【0036】
次に、混合粉砕したスラリーに結合剤としてポリビニルアルコールを所定量添加し、噴霧乾燥装置を用いて、噴霧・乾燥させることにより、造粒された顆粒を得る。そして、この顆粒を用いて所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法、冷間静水圧加圧成形法等により円板、平板、円柱体、円環体等の所望形状に成形する。
【0037】
また、製品形状が複雑であれば、混合粉砕したスラリーに溶媒やバインダ等を添加したスラリーを用いて鋳込成形法や射出成形法を用いて成形体を得てもよい。さらに、各種成形法によりブロック形状または製品形状に近い形状に成形した後に切削加工を施すことによって、成形体を得ることも可能である。そして、得られた成形体を必要に応じて脱脂した後、大気雰囲気中にて1350℃以上1550℃以下の温度で焼成することにより、焼結体を得ることができる。
【0038】
そして、得られた焼結体をバレル研磨することにより、算術平均粗さRaは0.03μm以下とすることができる。なお、このバレル研磨は、例えばメディアとグリーンカーボランダム(GC)とを用いた湿式の遠心バレル研磨機で24時間程度行なえばよい。また、平均粒径1μm以下の小さいダイヤモンドペーストを錫製のラップ盤に供給して、ラップ加工を施してもよい。
【0039】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
まず、主原料粉末として平均粒径が0.35μmであり、共沈法により生成された、ジルコニアが97mol%で、安定化剤である酸化イットリウムが3mol%の安定化ジルコニア粉末を用意した。また、平均粒径が表1に示す値である酸化アルミニウム粉末と、平均粒径が0.9μmの酸化ニッケル粉末を用意した。
【0041】
そして、焼結体におけるAl換算での含有量およびNiO換算での含有量が表1に示す値となるように、安定化ジルコニア粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化ニッケル粉末を秤量した。なお、Al換算での含有量およびNiO換算での含有量以外は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、不可避不純物である。
【0042】
次に、秤量した各粉末と溶媒である水と0.1質量部の分散剤とを振動ミルやボールミル等に入れて混合粉砕した。
【0043】
次に、混合粉砕したスラリーに結合剤としてポリビニルアルコールを所定量添加し、噴霧乾燥装置を用いて、噴霧・乾燥させることにより、造粒された顆粒を得た。そして、この顆粒を用いて乾式加圧成形法により円板状の成形を得た。
【0044】
そして、得られた成形体を必要に応じて脱脂した後、大気雰囲気中にて1500℃の温度で焼成することにより、各試料を得た。
【0045】
そして、ICPを用いて、Al、Niの含有量を求め、それぞれAl、NiOに換算した。また、Si、Mg、Caの含有量を求め、それぞれSiO、MgO、CaOに換算した合計を助剤成分合計として表1に示した。
【0046】
次に、各試料につき、鏡面加工し、焼成温度よりも50℃低い温度でファイアーエッチングした面を測定面としてSEMを用いて観察し、EDSにより白色系に見えた結晶がジルコニア結晶であり、黒色系に見えた結晶がアルミナ結晶であることを確認した。そして、10000倍の倍率(観察領域約90μm:縦8.1μm×横11.2μm)でSEMにより撮影した写真を用いて、黒色系の結晶を黒く塗りつぶし、これを画像データとして読み取り、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して画像解析することにより、アルミナ結晶の最大径を求めた。なお、解析条件としては、粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「手動」、小図形除去を「0.01μm」、閾値を「40」とした。
【0047】
次に、色彩色差計(旧ミノルタ社(製)CR−221)を用い、JIS Z 8722−2000に準拠して、CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の値、クロマティクネス指数a*およびb*の値を求めた。なお、測定条件としては、光源をCIE標準光源D65とし、照明受光方式を条件a((45−n)〔45−0〕)に、測定
径を3mmに設定して行なった。
【0048】
また、色ばらつきについて、各試料につき、5個所について測定を行ない、得られたL*、a*、b*の値を用いて、ΔE=((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2により色ばらつきを求め、ΔEの値の小さい順に順位付けを行なった。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から、試料No.2、3は、試料No.1よりも色ばらつきが小さかった。この結果より、アルミナ結晶の最大径が1.2μm以下であることにより、色ばらつきが小さいものとなることがわかり、需要者に、高い美的満足感を与えられることがわかった。
【0051】
また、ジルコニア結晶とアルミナ結晶とを含み、安定化剤を含むジルコニアが主成分であり、AlをAl換算した含有量が15質量%以上25質量%以下、NiをNiO換算した含有量が0.5質量%以上5質量%以下の範囲において、種々構成の異なるカラーセラミックスを作成し、色調について確認したところ、CIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が57以上79以下、クロマティクネス指数a*が−16以上―5以下、クロマティクネス指数b*が−22以上−2以下であった。
【実施例2】
【0052】
次に、分散剤の添加量を異ならせるとともに、試料No.7から試料No.4に向かって混合粉砕時間を長くした試料を作成し、色ばらつきの確認を行なった。なお、分散剤の添加量を表2に示す値としたこと以外は、実施例1の試料No.3の作製方法と同様の方法により試料を作製した。試料No.7は、試料No.3と同じ試料である。
【0053】
そして、得られた各試料につき、鏡面加工し、焼成温度よりも50℃低い温度でファイアーエッチングした面を測定面としてSEMを用いて観察し、EDSにより白色系に見えた結晶がジルコニア結晶であり、黒色系に見えた結晶がアルミナ結晶であることを確認した。そして、10000倍の倍率(観察領域90μm:縦8.1μm×横11.2μm)でSEMにより撮影した写真を用いて、黒色系の結晶を黒く塗りつぶし、これを画像データとして読み取り、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して画像解析することにより、アルミナ結晶の平均結晶粒径を求めた。なお、解析条件としては、粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「手動」、小図形除去を「0.01μm」、閾値を「40」とした。
【0054】
また、同じ画像を用いて、画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の重心間距離法という手法を適用して画像解析することにより、アルミナ結晶の平均重心間距離を求めた。なお、解析条件としては、上述した条件と同じとした。
【0055】
さらに、実施例1と同様の方法により、明度指数L*の値、クロマティクネス指数a*、クロマティクネス指数b*の値およびΔEを求め、ΔEの値の小さい順に順位付けを行
なった。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2から、平均重心間距離が0.85μm以上1.0μm以下であることが好適であり、この範囲であることにより、需要者に、より高い美的満足感を与えられることがわかった。