特許第6626711号(P6626711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626711
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】手術器具およびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20191216BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   A61B17/32 510
   A61B18/12
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-254881(P2015-254881)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-113460(P2017-113460A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 智之
【審査官】 吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−545534(JP,A)
【文献】 特開2013−046866(JP,A)
【文献】 特開2013−085954(JP,A)
【文献】 特開2013−220109(JP,A)
【文献】 特表2014−515652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00−17/94
A61B 18/00−18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドピースと、
前記ハンドピースに対して相対的に移動することにより、被検体を処置する処置部に駆動伝達するバイポーラ処置具用の導電材料からなる2本の駆動部材と、
前記ハンドピース内に配置され、前記駆動部材に押圧力を与える切片を有するコネクタと、
を備え、
前記駆動部材が第1の導電部をなし、前記コネクタの前記切片上には、前記第1の導電部と当接して、前記駆動部材と前記ハンドピースとを電気的に接続する第2の導電部が形成され、
前記コネクタの前記第2の導電部は、三次元回路をなす成形回路部品であり、
前記コネクタは、並列される前記2本の駆動部材を、前記2本の駆動部材の内側から外側に押圧するよう前記切片が配置されることを特徴とする手術器具。
【請求項2】
前記第2の導電部と電気的に接続する第3の導電部を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術器具。
【請求項3】
前記コネクタは、曲げ弾性率が1000MPa以上5000MPa以下の樹脂から形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記コネクタは、降伏ひずみが3%以上の樹脂から形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項5】
バイポーラ処置具用のコネクタであって、
2本の導電材料からなる駆動部材を、前記2本の駆動部材の内側から外側に押圧する切片と、
前記切片に設けられ、前記2本の駆動部材に当接して電気的に接続する第2の導電部と、
を備え、
前記第2の導電部が三次元回路をなす成形回路部品であることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具およびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドピースの先端に配置した処置具に、超音波や高周波をプローブにより伝達して、生体組織の切開、切除または焼灼を行う手術器具が使用されている。
【0003】
このような手術器具を使用する際、処置具を回転させて生体組織の切開等を行う必要がある。ハンドピースに着脱可能に配置される超音波トランスデューサは、超音波トランスデューサと超音波出力装置とを結ぶケーブルを有している。処置具回転の際にケーブルの絡まりを防止するために、超音波トランスデューサはハンドピースに対して回転可能に取り付けられている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−121618公報
【特許文献2】国際公開第2012/128362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハンドピースには、術者が超音波トランスデューサをオン/オフ制御するためのスイッチボタンが設けられる。このハンドピースのスイッチボタンと超音波トランスデューサとを電気的に接続するためのコネクタは、コネクタ本体、電気接点、電子基板、スイッチ部と構成部品が多く、製造工程での取付けが煩雑であるとともに、部品点数が多いため製造原価も高くなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転可能に取り付けられた超音波トランスデューサと確実に電気的に接続でき、製造工程を簡素化するとともに、製造コストも低減可能な手術器具およびコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる手術器具は、ハンドピースと、前記ハンドピースに対して相対的に移動することにより、被検体を処置する処置部に駆動伝達する可動部材と、前記ハンドピース内に配置され、前記可動部材に押圧力を与える切片を有するコネクタと、を備え、前記可動部材には第1の導電部が形成されるとともに、前記コネクタの前記切片上には、前記第1の導電部と当接して、前記可動部材と前記ハンドピースとを電気的に接続する第2の導電部が形成され、前記コネクタの前記第2の導電部は、三次元回路をなす成形回路部品であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記切片は、先端部と基端部を備え、前記先端部は、前記第2の導電部が設けられ前記基端部に対して可動に形成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記切片の面のうち前記第2の導電部が形成される面と対向する面の先端側から基端側に延伸するように形成され、前記第2の導電部と電気的に接続する第3の導電部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記可動部材は、超音波振動により駆動する超音波振動子を有するトランスデューサであって、前記第1の導電部は、前記トランスデューサの挿入部に設けられ、前記コネクタは、前記トランスデューサの挿入部を内部に挿入するリング部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記切片は、円弧状をなすバネ部材であって、円弧状の基端側で前記リング部により支持されるとともに、先端部で前記トランスデューサの挿入部を押圧することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記切片の面のうち前記第2の導電部が形成される面と対向する面の円弧状の先端側から基端側に延伸するように形成され、前記第2の導電部と電気的に接続する第3の導電部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記ハンドピースは、前記超音波振動子の駆動を制御するための操作を入力するスイッチボタン部を有し、前記コネクタには、前記スイッチボタン部と当接する位置に設けられ、前記スイッチボタン部に入力された操作に対応する信号を、前記第3の導電部、前記第2の導電部および前記第1の導電部を介し、前記トランスデューサに電気的に伝達するスイッチ部が形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記コネクタは、曲げ弾性率が1000MPa以上5000MPa以下の樹脂から形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記コネクタは、降伏ひずみが3%以上の樹脂から形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記トランスデューサは、前記ハンドピースに対して相対的に回転可能な状態で取り付けられることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる手術器具は、上記発明において、前記可動部材は、バイポーラ処置具の2本の導電材料からなる駆動部材であって、前記駆動部材が、第1の導電部をなし、前記コネクタは、並列される前記2本の駆動部材を、前記2本の駆動部材の内側から外側に押圧するよう前記切片が配置されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかるコネクタは、超音波振動により可動する超音波振動子を内蔵するトランスデューサを備える手術器具で使用されるコネクタであって、前記トランスデューサの挿入部が内部に挿入されるリング部と、前記リング部に挿入された前記挿入部に押圧力を与える切片と、前記切片に設けられ、前記トランスデューサの挿入部が内部に挿入される際、前記トランスデューサの挿入部に設けられる第1の導電部と当接して電気的に接続する第2の導電部と、を備え、前記第2の導電部が三次元回路をなす成形回路部品であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかるコネクタは、バイポーラ処置具を備える手術器具で使用されるコネクタであって、2本の導電材料からなる駆動部材を、前記2本の駆動部材の内側から外側に押圧する切片と、前記切片に設けられ、前記第1の導電部をなす前記2本の駆動部材に当接して電気的に接続する第2の導電部と、を備え、前記第2の導電部が三次元回路をなす成形回路部品であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、ハンドピースに対して相対的に駆動する駆動部材と、ハンドピースとを、1つの部品で電気的に接続可能であるため、製造工程を簡素化できるとともに、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる超音波手術装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1の超音波手術器具の断面図である。
図3A図3Aは、図1の超音波手術器具で使用するコネクタの斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aのコネクタの他の方向(リング部側)からの斜視図である。
図3C図3Cは、図3Aのコネクタの他の方向(金属配線側)からの斜視図である。
図3D図3Dは、図3Aのコネクタの他の方向(リング部のトランスデューサ挿入側)からの斜視図である。
図3E図3Eは、図3Aのコネクタの他の方向(スイッチ部側)からの斜視図である。
図4図4は、超音波トランスデューサの挿入部の断面図である。
図5A図5Aは、実施の形態1の変形例1にかかるコネクタの斜視図である。
図5B図5Bは、図5Aのコネクタのハンドピース内での配置を示す図である。
図6A図6Aは、実施の形態1の変形例2にかかるコネクタの斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aのコネクタのハンドピース内での配置を示す図である。
図7A図7Aは、本発明の実施の形態2にかかるバイポーラ処置具の構成を示す図である。
図7B図7Bは、図7Aに示すバイポーラ処置具のハンドピース内の概略構成を示す断面図である。
図7C図7Cは、図7Aのバイポーラ処置具の先端処置具の拡大図である。
図7D図7Dは、図7Aのバイポーラ処置具の駆動部材とコネクタ近傍の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)として、超音波手術装置およびバイポーラ処置具について説明する。また、この実施の形態により、この発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらにまた、図面は、模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、各部材の比率等は、現実と異なることに留意する必要がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法や比率が異なる部分が含まれている。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる超音波手術装置の構成を示す図である。図2は、図1の超音波手術器具の断面図である。実施の形態1にかかる超音波手術装置1は、術者が保持するハンドピース2と、ハンドピース2に取り付けられる超音波トランスデューサ(可動部材)3と、ケーブル14を介して超音波トランスデューサ3が接続される出力制御装置5と、を備える。
【0024】
超音波トランスデューサ3は、略円筒状をなす振動子カバー10に内蔵された超音波振動子11を有する。本実施の形態1において、超音波振動子11は、例えば、円環状をなす複数の圧電素子11aが振動子カバー10の長軸方向に配列されることによって構成されている。また、超音波振動子11の挿入部には、超音波振動の振幅拡大を行うホーン12の基端部が連結されている。また、ホーン12は、絶縁部材10c(図4参照)を介して振動子カバー10の内部に固定され、ホーン12の先端部は、挿入部10aから外部に突出されている。
【0025】
ケーブル14は、超音波トランスデューサ3の振動子カバー10の基端側から延出し、超音波トランスデューサ3は、ケーブル14を介して出力制御装置5に接続されている。出力制御装置5には、出力モードに応じた駆動信号の出力をオンまたはオフするためのフットスイッチ17が、ケーブル17aを介して接続されている。
【0026】
ハンドピース2は、超音波振動を超音波トランスデューサ3が取り付けられる基端側から先端側へと伝達する導波体23を内蔵したハンドピース本体20と、ハンドピース本体20に軸部22を介して揺動自在(回動自在)に軸支されたクランプアーム21と、を有する鉗子型(鋏型)の処置具によって構成されている。
【0027】
ハンドピース本体20は、略円錐形状をなすハウジング25と、このハウジング25に保持されたシース26と、を有している。
【0028】
ハウジング25は、例えば、左右に分割された一対の樹脂成型品からなるハウジング部材が化学的手段または機械的手段により互いに接合されたものである。また、ハウジング25の基端側であって、ハウジング25の中心軸Oからオフセットした位置には、第1の指かけ部28が一体形成されている。第1の指かけ部28の中心軸O側には、超音波トランスデューサ3の挿入部10aを着脱自在に連結するためのコネクタ6が配置されている。
【0029】
さらに、ハウジング25の第1の指かけ部28の前縁部には、2つのスイッチボタン30a、30bが設けられている。これらスイッチボタン30a、30bは、例えば、術者等が第1の指かけ部28に中指と薬指、あるいは薬指と小指を挿入した状態において、当該術者等の人差し指(及び、中指)が臨む位置に配設され、スイッチボタン30a、30bの押圧により、術者の操作が入力される。スイッチボタン30a、30bが設けられるハウジング25の内周方向側には、コネクタ6のスイッチ部6f−1、6f−2が設けられ(図3Cおよび図3E参照)、スイッチ部6f−1は、スイッチボタン30aでの入力操作により開閉状態が切り替えられる。同様に、スイッチ部6f−2は、スイッチボタン30bでの入力操作により開閉状態が切り替えられる。
【0030】
シース26は、主としてハウジング25内に挿通され、一部がハウジング25の外部に延出している。このシース26の内部には、導電性の金属からなる導波体23が、ゴムリング等の弾性部材(図示せず)あるいはプラスチック部材、または導波体23の一部の径を大きくしたフランジを介して保持されている。
【0031】
シース26の基端側はコネクタ6内に配置され、シース26の基端側の内部には、超音波トランスデューサ3の挿入部10aがコネクタ6に連結された際に、挿入部10aから突出するホーン12の先端部が挿入される。ここで、ホーン12の先端部は導波体23の基端部に対して螺合等によって連結可能となっており、この連結により、ホーン12と導波体23と音響的及び電気的に接続される。これにより、導波体23には、超音波トランスデューサ3の超音波振動子11で発生した超音波振動が伝達されるとともに、出力制御装置5から出力された高周波電流(駆動信号)が伝達される。超音波トランスデューサ3は、ケーブル14の絡まり防止の観点から、ハウジング25に対して相対的に回転する状態で取り付けられる。
【0032】
一方、シース26の先端部側は外径が縮径し、収縮したシース26の先端からは、導波体23の先端部に設けられた超音波プローブ27が突出されている。なお、本実施形態1において、超音波プローブ27は、導電性の金属によって導波体23と一体形成されるものであり、これら導波体23及び超音波プローブ27によって、プローブユニット24が構成されている。
【0033】
超音波プローブ27は、先端部が略「J」字状に湾曲されている。本実施形態1において、この超音波プローブ27は、生体組織に対して超音波振動を伝達する機能の他に、生体組織に対して高周波電流を伝達する第1の電極部としての機能を有する。
【0034】
クランプアーム21は、左右に分割された一対のアーム部材が、化学的手段または機械的手段により互いに接合されたロッド状の部材によって構成されている。アーム部材の中途に凹部が設けられ、この凹部がクランプアーム21の長手方向に延在する開口部30をなす。この開口部30には、シース26の先端側が挿通され、これら開口部30の内面側とシース26の外面側とが軸部22を介して連結されることにより、クランプアーム21は、ハンドピース本体20に対して揺動自在(回動自在)に軸支されている。
【0035】
クランプアーム21の基端部には、ハンドピース本体20に設けられた第1の指かけ部28と対をなす第2の指かけ部29が連設されている。この第2の指かけ部29には、例えば、術者等の親指を挿入するのに好適な環状をなして構成されている。そして、例えば、術者等が第1の指かけ部28に挿入した指(例えば、薬指及び小指)と第2の指かけ部29に挿入した指(例えば、親指)とを相対的に動作させることにより、クランプアーム21は、軸部22を支点として揺動動作される。
【0036】
一方、軸部22を介してハンドピース本体20と交差するクランプアーム21の先端側には、クランプアーム21が揺動動作される際に、シース26との干渉を回避するための湾曲部31が設けられている。さらに、この湾曲部31の先端側には、超音波プローブ27に対向する台座32が設けられている。この台座32には、導電性の金属からなるジョー33が設けられている。
【0037】
次に、図を参照して、本実施の形態1にかかるコネクタ6、およびコネクタ6と超音波トランスデューサ3との接続に関して説明する。図3Aは、図1の超音波手術器具1で使用するコネクタ6の斜視図である。図3Bは、コネクタ6のリング部側からの斜視図である。図3Cは、コネクタ6の金属配線側からの斜視図である。図3Dは、コネクタ6のリング部のトランスデューサ挿入側からの斜視図である。図3Eは、スイッチ部側からの斜視図である。図4は、超音波トランスデューサ3の挿入部10aの断面図である。
【0038】
コネクタ6は、コネクタ本体部6aと、超音波トランスデューサ3の振動子カバー10の挿入部10aを挿入するリング部6bと、リング部6bに挿入された挿入部10aに押圧力を与える切片6c−1、6c−2、6c−3と、第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3と、第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3と、スイッチ部6f−1、6f−2と、を備える。
【0039】
切片6c−1、6c−2、6c−3は、円弧状をなしている。切片6c−1、6c−2、6c−3は、円弧状の基端側でリング部6bに支持されるとともに、円弧状の先端部で超音波トランスデューサ3の挿入部10aを押圧する。超音波トランスデューサ3の挿入部10aと当接する切片6c−1、6c−2、6c−3の内周側には、第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3がそれぞれ形成されている。切片6c−1、6c−2、6c−3は、第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3がリング部6bの中心に対して対称となるように、リング部6bの両側に対に形成されている。
【0040】
コネクタ本体部6aのハウジング25の内周方向と接する側には、スイッチ部6f−1、6f−2が設けられている。スイッチ部6f−1、6f−2は、スイッチボタン30a、30bでの入力操作により開閉状態が切り替えられる。
【0041】
第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3は、切片6c−1、6c−2、6c−3の面のうち第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3が形成される面と対向する面であって、円弧状の先端側から基端側に延伸するように形成されている。第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3を第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3が形成される面と対向する面、すなわち切片6c−1、6c−2、6c−3の外周側に形成することにより、リング部6b内への超音波トランスデューサ3の挿入により切片6c−1、6c−2、6c−3が押し広げられた場合でも断線を防止することができる。第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3は、スイッチ部6f−1、6f−2と第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3とを接続する配線部である。第3の導電部6d−1は、スイッチ部6f−1と第2の導電部6e−1とを電気的に接続し、第3の導電部6d−2は、スイッチ部6f−2と第2の導電部6e−2とを電気的に接続する。第3の導電部6d−3は、スイッチ部6f−1、6f−2と第2の導電部6e−3とを電気的に接続する。第3の導電部6d−3は、スイッチ部6f−1、6f−2のグランド線である。
【0042】
また、図4に示すように、コネクタ6のリング部6bに挿入される超音波トランスデューサ3の挿入部10aの外周部には、第1の導電部10b−1、10b−2、10b−3が形成されている。超音波トランスデューサ3がコネクタ6に挿入された状態では、第2の導電部6e−1に第1の導電部10b−1が接触し、第2の導電部6e−2に第1の導電部10b−2が接触し、第2の導電部6e−3に第1の導電部10b−3が接触する。
【0043】
上記のように、スイッチボタン30a、スイッチ部6f−1、第3の導電部6d−1、第2の導電部6e−1および第1の導電部10b−1は、ケーブル14内の図示しない電気信号線を介して出力制御装置5まで、独立した第1の電気信号回路を構成する。また、スイッチボタン30b、スイッチ部6f−2、第3の導電部6d−2、第2の導電部6e−2および第1の導電部10b−2は、ケーブル14内の図示しない電気信号線を介して出力制御装置5まで、独立した第2の電気信号回路を構成する。さらに、スイッチ部6f−1および6f−2、第3の導電部6d−3、第2の導電部6e−3および第1の導電部10b−3は、ケーブル14内の図示しない電気信号線を介して出力制御装置5まで、独立したグランド経路を形成している。
【0044】
スイッチボタン30aを押圧することにより、スイッチ部6f−1が閉状態になり、スイッチ部6f−1で第1の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続される。これにより、スイッチ部6f−1から出力制御装置5に電気信号が伝達される。そして、例えば出力制御装置5内の超音波制御部から電気信号線を介して超音波振動子11に電流が供給され、超音波振動子11で超音波振動が発生すると同時に、出力制御装置5内の高周波電流制御部から高周波電流が出力する状態に切替えられる。また、スイッチボタン30bを押圧することにより、スイッチ部6f−2が閉状態になり、スイッチ部6f−2で第2の電気信号経路とグランド経路との間が電気的に接続される。これにより、スイッチ部6f−2から出力制御装置5に電気信号が伝達される。そして、例えば高周波電流制御部のみから高周波電流が出力され、超音波振動を発生しない状態に切替えられる。
【0045】
コネクタ6は、第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3、第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3、およびスイッチ部6f−1、6f−2が三次元回路をなす成形回路部品(Molded Interconnect Device、MID)である。第2の導電部6e−1、6e−2、6e−3、第3の導電部6d−1、6d−2、6d−3、およびスイッチ部6f−1、6f−2をレーザ照射およびその後のメッキにより一体的に形成するため、コネクタ6内での電気的な接続部がなく、確実な導通を達成できる。一方、コネクタ本体部6a、リング部6b、および切片6c−1、6c−2、6c−3は、射出成形可能な樹脂材料からなる。切片6c−1、6c−2、6c−3に押圧力を付与するとともに、超音波トランスデューサ3の回転の妨げとならないために、曲げ弾性率が1000MPa以上5000MPa以下の樹脂から形成することが好ましい。また、繰り返しの着脱等の負荷による割れを防止するため、降伏ひずみが3%以上の樹脂から形成されることが好ましい。
【0046】
従来、スイッチボタン30a、30bと超音波トランスデューサ3との間の電気信号の伝達は、独立した導電リング(第2の導電部と第3の導電部に相当)をコネクタに嵌合し、スイッチ部が形成された制御基板と該コネクタとをフレキシブル基板で接続することにより伝送されていた。本実施の形態1では、スイッチボタン30a、30bと超音波トランスデューサ3との間の電気信号の伝達を、MIDであるコネクタ6により行うことができるため、ハンドピース2の製造工程を簡素化できるとともに、製造コストも低減可能となる。
【0047】
実施の形態1では、ハンドピース2としてインライングリップのものを例として説明したが、これに限定されるものではなく、フロントドライブグリップのものにも適用可能である。以下、フロントドライブグリップのハンドピースで使用するコネクタについて説明する。図5Aは、実施の形態1の変形例1にかかるコネクタの斜視図である。図5Bは、図5Aのコネクタのハンドピース内での配置を示す図である。
【0048】
図5Bに示すように、変形例1にかかるフロントドライブグリップのハンドピース2Aでは、ハンドピース20Aの第1の指かけ部28Aの上方にスイッチボタン30a、30bが設けられるとともに、グリップ35の基端部近傍にスイッチボタン30c、30dが設けられている。
【0049】
コネクタ6Aは、コネクタ本体部6aに、4つのスイッチ部6f−1、6f−2、6f−3、6f−4を備える。スイッチ部6f−1、6f−2は、スイッチボタン30a、30bが押圧される際に当接する位置、スイッチ部6f−3、6f−4はスイッチボタン30c、30dが押圧される際に当接する位置にそれぞれ形成されている。スイッチ部6f−1、6f−2、6f−3およびf−4は、術者が中指、人差し指または親指でスイッチボタン30a、30b、30c、30dを押圧することにより開閉状態が切り替えられる。
【0050】
また、フロントドライブグリップのハンドピースで使用するコネクタは下記のようなものであってもよい。図6Aは、実施の形態1の変形例2にかかるコネクタの斜視図である。図6Bは、図6Aのコネクタのハンドピース内での配置を示す図である。
【0051】
図6Bに示すように、変形例2にかかるフロントドライブグリップのハンドピース2Bでは、ハウジング25Bの第1の指かけ部28Bの上方にスイッチボタン30a、30bが設けられるとともに、グリップ35の基端部近傍の方面(右利きの術者がハンドピース2Bを保持した際に親指が臨む位置)にスイッチボタン30eが設けられている。
【0052】
コネクタ6Bは、コネクタ本体部6aに、4つのスイッチ部6f−1、6f−2、6f−3、6f−4を備える。スイッチ部6f−1、6f−2は、スイッチボタン30a、30bが押圧される際に当接する位置、スイッチ部6f−3、6f−4はスイッチボタン30eの押圧(左右の端部の一方)に伴い当接する位置にそれぞれ形成されている。スイッチ部6f−1、6f−2、6f−3およびf−4は、術者が中指、人差し指または親指でスイッチボタン30a、30b、30eを押圧することにより開閉状態が切り替えられる。
【0053】
コネクタ6Aおよび6Bのような形状とすることにより、超音波トランスデューサとハンドピース20Aおよび20Bとの確実な導通を達成できる。また、フロントドライブグリップのハンドピースにおいても製造工程を簡素化できるとともに、製造コストを低減可能である。
【0054】
また、特開2013−192952号公報に開示されるペンシル型の手術器具においても、スイッチ部とコネクタとをMIDで一体形成することにより、確実な導通を達成でき、簡易な製造工程により、製造コストを低減可能である。
【0055】
(実施の形態2)
図7Aは、本発明の実施の形態2にかかるバイポーラ処置具の構成を示す図である。図7Bは、図7Aに示すバイポーラ処置具のハンドピース内の概略構成を示す断面図である。図7Cは、図7Aのバイポーラ処置具の先端処置具の拡大図である。図7Dは、図7Aのバイポーラ処置具の駆動部材とコネクタ近傍の拡大斜視図である。バイポーラ処置具は、絶縁された2本の電流供給ラインを有し、この電流供給ラインを介して生体組織の切開、凝固または止血等の処置を行う。
【0056】
バイポーラ処置具のハンドピース2Cは、ハンドピース本体20Cと、ハンドピース本体20Cの下方に揺動可能に取り付けられる第2の指かけ部28Cと、ハンドピース本体20Cの下方に一体形成されるグリップ35Cと、ハンドピース本体20Cの先端側から延出するシース26Cと、シース26Cの先端側の屈曲部36と、把持部37a、37bと、を備える。
【0057】
ハンドピース2Cは、ダイヤル38を回すことにより、ダイヤル38の軸38a周りの回転は、ギア39を介してチェーン41の軸41a周りの回転とされる。チェーン41の回転により、シース26C内の導電材料からなる2本の駆動部材(可動部材)40a、40bの進退運動に変換される。なお、チェーン41に替えてワイヤを使用することもできる。2本の駆動部材40a、40bおよび把持部37a、37bが、電流供給ラインを構成する。
【0058】
駆動部材40a、40bの先端は、屈曲部36を構成する駒36aの基端側に挿入され、先端側の駒36aに固定されている。ダイヤル38の回転による駆動部材40a、40bの進退によって、屈曲部36を屈折する。
【0059】
コネクタ6Cは、2本の駆動部材40a、40bの内側から外側に押圧する切片6c−1、6c−2と、切片6c−1、6c−2に設けられ、駆動部材40a、40bに当接して、駆動部材40a、40bとハンドピース2Cとを電気的に接続する第2の導電部と、第3の導電部6d−1、6d−2と、スイッチ部6f−1、6f−2と、を備える。第2の導電部は、図7A図7Dで図示されていないが、切片6c−4、6c−5の駆動部材40a、40bと接する側に形成され、スイッチ部6f−1、6f−2と第3の導電部6d−1、6d−2を介して電気的に接続されている。
【0060】
コネクタ6Cは、屈曲部36を屈曲させる駆動部材40a、40bの進退運動の際も、切片6c−4、6c−5の押圧により確実な導通を達成できる。また、コネクタ6CをMIDとすることにより、バイポーラ処置具のハンドピース2Cにおいても製造工程を簡素化できるとともに、製造コストを低減可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 超音波手術装置
2 ハンドピース
3 超音波トランスデューサ
5 出力制御装置
6 コネクタ
6a コネクタ本体部
6b リング部
6c−1、6c−2、6c−3 切片
6d−1、6d−2、6d−3 第3の導電部
6e−1、6e−2、6e−3 第2の導電部
6f−1、6f−2、6f−3、6f−4 スイッチ部
10 振動子カバー
10a 挿入部
10b−1、10b−2、10b−3 第1の導電部
10c 絶縁部材
11 超音波振動子
11a 圧電素子
12 ホーン
14、17a ケーブル
17 フットスイッチ
20 ハンドピース本体
21 クランプアーム
22 軸部
23 導波体
24 プローブユニット
25、25A、25B ハウジング
26、26C シース
27 超音波プローブ
28、28A、28B 第1の指かけ部
29 第2の指かけ部
30a、30b、30c、30d、30e スイッチボタン
31 湾曲部
32 台座
33 ジョー
35、35C グリップ
36 屈曲部
37a、37b 把持部
38 ダイヤル
38a、41a 軸
39 ギア
40a、40b 駆動部材
41 チェーン
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D