特許第6626722号(P6626722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626722
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 29/00 20060101AFI20191216BHJP
   B24B 17/10 20060101ALI20191216BHJP
   B23P 23/02 20060101ALN20191216BHJP
【FI】
   B24B29/00 N
   B24B17/10 P
   !B23P23/02 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-13946(P2016-13946)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-131998(P2017-131998A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渥美 展敏
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−283233(JP,A)
【文献】 特開2007−245273(JP,A)
【文献】 特表2015−519658(JP,A)
【文献】 特開2001−328066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 29/00
B24B 9/00 − 19/28
B24B 49/00 − 49/18
B23P 23/02
G05B 19/18 − 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対して相対的に三次元方向に移動するとともに軸周りに回転する主軸に保持された切削加工用の加工工具によって、ツールパスデータを含む切削データに基づいて被加工物を切削加工して、所望の形状の三次元造形物を作製する加工装置において、
刃先に代えて研磨剤をしみ込ませることが可能な研磨部を備え、前記主軸に保持可能な研磨用加工工具と、
前記研磨用加工工具が保持された主軸の移動速度および回転数と前記ツールパスデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された移動速度によって前記ツールパスデータに従って前記研磨用加工工具が保持された主軸を移動するとともに、前記記憶手段に記憶された回転数によって前記研磨用加工工具が保持された主軸を回転する制御手段と
前記研磨用加工工具の前記研磨部にしみ込ませる研磨剤を貯留した研磨剤容器と
を有し、
前記記憶手段は、前記研磨剤容器の位置情報と、前記研磨用加工工具が保持された主軸を連続して移動することを許容する連続研磨距離とを記憶し、
前記制御手段は、前記研磨用加工工具が保持された主軸の移動距離が前記連続研磨距離を超えたときに、前記位置情報に基づいて前記研磨用加工工具が保持された主軸を前記研磨剤容器へ移動して、前記研磨剤容器に貯留された研磨剤中に前記研磨用加工工具の前記研磨部を移動する
ことを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関し、さらに詳細には、マイクロコンピューターなどによる数値制御により、切削データに基づいて加工工具により被加工物を三次元で切削加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロコンピューターなどによる数値制御により、切削データに基づいて、シャンクの先端に刃先を備えたエンドミルなどの加工工具により被加工物を三次元で切削加工して、所望の形状の三次元造形物を作製する加工装置が知られている。
【0003】
こうした加工装置においては、加工工具のシャンクが取り付けられた主軸と、被加工物が載置されるテーブルとが、XYZ直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向またはZ軸方向に移動するなどして、加工工具の刃先とテーブルに載置される被加工物との相対的な位置関係を三次元で変化するようにしている。
【0004】
そして、切削データに基づいて、主軸において加工工具を回転した状態で、当該加工工具の刃先を被加工物に当接させながら、主軸およびテーブルを移動することにより、加工工具の刃先によって被加工物を所望の形状に切削加工して、三次元造形物を作製するようにしている。
【0005】
ところで、こうした加工装置は、被加工物として透明なアクリル板などの樹脂材料を用い、この樹脂材料を切削加工することによりマイクロ流路を作製する際においても使用される。
【0006】
このような透明なアクリル板などの樹脂材料を使用してマイクロ流路を作製する際には、加工工具の刃先により樹脂材料に浅い溝を切削加工してマイクロ流路を形成することになる。
【0007】
しかしながら、加工工具の刃先により樹脂材料に浅い溝を切削加工すると、その切削加工面が白濁化してしまい、そのままの状態ではマイクロ流路を通過する物質を目視により確認する際に支障をきたすこととなっていた。
【0008】
このため、従来は、白濁化した切削加工面を透明化するために、研磨剤をしみ込ませた綿棒を使用して、作業者が手作業で白濁化した切削加工面の研磨を行っていた。
【0009】
上記したように、従来の技術によれば、白濁化した切削加工面を透明化するための処理を作業者による手作業で行っていたため、白濁化したマイクロ流路の合計面積によっては膨大な作業時間を作業者に強いることになって作業者の負担が増大するとともに、作業者の人件費の増加に伴うコスト高を招来するという問題点があった。
【0010】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、本願明細書に記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業者の人手による白濁化した切削加工面の研磨作業を廃して、作業者の負担を軽減するとともに、作業者の人件費の増加に伴うコスト高を抑制するようにした加工装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明による加工装置は、被加工物に対して相対的に三次元方向に移動するとともに軸周りに回転する主軸に保持された切削加工用の加工工具によって、ツールパスデータを含む切削データに基づいて被加工物を切削加工して、所望の形状の三次元造形物を作製する加工装置において、刃先に代えて研磨剤をしみ込ませることが可能な研磨部を備え、上記主軸に保持可能な研磨用加工工具と、上記研磨用加工工具が保持された主軸の移動速度および回転数と上記ツールパスデータを記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された移動速度によって上記ツールパスデータに従って上記研磨用加工工具が保持された主軸を移動するとともに、上記記憶手段に記憶された回転数によって上記研磨用加工工具が保持された主軸を回転する制御手段とを有するようにしたものである。
【0013】
また、本発明による加工装置は、上記した本発明による加工装置において、さらに、上記研磨用加工工具の上記研磨部にしみ込ませる研磨剤を貯留した研磨剤容器を備え、上記記憶手段は、上記研磨剤容器の位置情報と、上記研磨用加工工具が保持された主軸を連続して移動することを許容する連続研磨距離とを記憶し、上記制御手段は、上記研磨用加工工具が保持された主軸の移動距離が上記連続研磨距離を超えたときに、上記位置情報に基づいて上記研磨用加工工具が保持された主軸を上記研磨剤容器へ移動して、上記研磨剤容器に貯留された研磨剤中に上記研磨用加工工具の上記研磨部を移動するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上説明したように構成されているので、作業者が人手により白濁化した切削加工面の研磨作業を行う必要がなくなり、作業者の負担が軽減されるとともに、作業者の人件費の増加に伴うコスト高を抑制することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による加工装置の概略構成斜視説明図である。
図2図2(a)は、刃先に代えてシャンクの先端部に研磨用の繊維材料を配設した研磨部を備えた綿棒様の加工工具である研磨用加工工具の説明図であり、また、図2(b)は、研磨剤容器に貯留された液状の研磨剤に研磨用加工工具を浸けた状態を示す一部破断説明図である。
図3図3は、研磨処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図4図4(a)は、研磨処理における研磨動作を示す一部破断説明図であり、また、図4(b)は、図4(a)のA矢視概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による加工装置の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0017】
図1には、本発明による加工装置の概略構成斜視説明図が示されている。
【0018】
この図1に示す加工装置10は、固定系のベース部材12と、ベース部材12の左右両端でベース部材12に直交して立設された側方部材14L、14Rと、ベース部材12の後端でベース部材12に直交して立設するとともに、左右2つの側方部材14L、14Rを連結する後方部材16とを備えている。
【0019】
ガイドレール18が、その両端をそれぞれ側方部材14L、14Rに支持されて、XYZ直交座標系におけるX軸方向に延長されて配設されている。
【0020】
シャフト20が、その両端をそれぞれ側方部材14L、14Rに支持されて、ガイドレール18と平行となるようにX軸方向に延長されて配設されている。
【0021】
キャリッジ20が、ガイドレール18ならびにシャフト20にそれぞれに摺動自在に装着されて、X軸方向に移動自在に支持されている。
【0022】
キャリッジ22には、Z軸方向に移動自在に配設されるとともに、シャンクの先端部に刃先を備えたエンドミル、ドリル、バイトなどの切削加工用の加工工具や、刃先に代えてシャンク110aの先端部に研磨用の繊維材料などを配設した綿棒様の研磨部110bを備えた加工工具である研磨用加工工具110(図2(a)を参照する。)をZ軸周りに回転自在に保持する主軸24が配設されている。
【0023】
ここで、研磨用加工工具110は、シャンク110aの先端部に刃先に代えて綿棒様の研磨部110bを設けた点においてのみ、従来より公知の切削加工用の加工工具と異なるが、その他の構成については従来より公知の切削加工用の加工工具と同一である。
【0024】
研磨部110bの径dは、従来より公知の切削加工用の加工工具の刃先の径と略同一とされている。
【0025】
なお、図1および図2(a)は、研磨用加工工具110のシャンク110aの基端部110aaを主軸24のチャック24aに保持し、主軸24に研磨用加工工具110を保持した場合を示している。
【0026】
ベース部材12上には、Y軸方向に延長した一対のガイドレール26が平行に配設されている。
【0027】
テーブル28は、ガイドレール26に摺動自在に配設されてY軸方向に移動自在に支持されており、その上面28aに被加工物100が載置される。こうした被加工物100は、例えば、透明なアクリル板などの樹脂材料である。
【0028】
テーブル28の上面28aには、上記した切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110を収容するツールボックス30が配設されている。このツールボックス30には、切削加工用の加工工具と研磨用加工工具110とが少なくとも1本づつ収容されている。
【0029】
なお、この加工装置10は、シャンクの基端部を主軸24のチャック24aに保持している切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110をツールボックス30に戻して、主軸24のチャック24aから保持していた切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110を取り外すとともに、ツールボックス30に収容されている切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110のいずれかを選択して、選択した切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110のシャンクの基端部を主軸24のチャック24aに保持することにより、主軸24に選択した切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110を保持させる処理を自動的に行う機能を備えている。
【0030】
こうした機能は、例えば、特開平9−314435号公報や特開2002−345844号公報などを利用した従来より周知の技術であって、オートツールチェンジャー機能として広く知られている。
【0031】
従って、こうしたオートツールチェンジャー機能については、従来より公知の技術を適用することができるので、その詳細な構成および作用の説明は省略する。
【0032】
また、テーブル28の上面28aには、上面120aが開口するとともに、内部に液状の研磨剤122を貯留した研磨剤容器120が配設されている(図2(b)を参照する。)。
【0033】
研磨剤容器120は、上面102aが開口した箱状の容器であり、少なくとも研磨用加工工具110の研磨部110bを浸けることが可能な深さの研磨剤を貯留できる深さHを有する。
【0034】
なお、研磨剤122としては、従来より公知の種々の研磨剤を適宜に選択することができる。
【0035】
テーブル28の上面28aへの被加工物100、ツールホルダー30ならびに研磨剤容器30の固定は、例えば、両面テープなどを用いておこなえばよい。
【0036】
なお、本実施の形態による加工装置10においては、ツールボックス30は側方部材14L近傍に配設され、主軸24に保持された切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110を上方側からツールボックス30に配置可能なように構成されている。
【0037】
また、本実施の形態による加工装置10においては、研磨剤容器120は側方部材14R近傍に配設され、主軸24に保持された研磨用加工工具110の研磨部120bを、上方側から研磨剤容器120の開口部120aを通って研磨剤122内に浸けることが可能なように構成されている。
【0038】
この加工装置10は、作業者の操作パネル130の操作に基づく情報がマイクロコンピューター32に入力され、操作パネル130から入力される作業者の操作に基づく情報に従って、その全体の動作をマイクロコンピューター32により制御される。
【0039】
この操作パネル130からは、従来より公知の技術による作業者の操作に基づく情報の入力の他に、以下の(1)〜(7)に示す作業者の操作に基づく情報を入力することができる。
【0040】
(1)研磨用加工工具110により被加工物100の切削加工面100a(図4(a)(b)を参照する。)を研磨する処理(なお、本明細書においては、研磨用加工工具110により被加工物100の切削加工面100aを研磨する処理を、単に「研磨処理」と適宜に称する。)の開始の指示
【0041】
(2)研磨処理を行う際における研磨用加工工具110を保持した主軸24の移動速度
【0042】
(3)研磨処理を行う際における研磨用加工工具110を保持した主軸24のZ軸周りの回転数
【0043】
(4)研磨処理を行う際における研磨用加工工具110を保持した主軸24が連続して移動することを許容する距離(なお、本明細書においては、研磨処理を行う際における研磨用加工工具110を保持した主軸24が連続して移動することを許容する距離を、「連続研磨距離」と適宜に称する。)
【0044】
(5)研磨剤容器120のテーブル28上における位置
【0045】
(6)ツールホルダー30に配置されている研磨用加工工具110の位置
【0046】
(7)研磨処理する対象の切削加工面110aを形成した切削データのツールパスデータ
【0047】
なお、操作パネル130から入力される作業者の操作に基づく上記(2)〜(7)の情報は、マイクロコンピューター32の記憶部32bに記憶される。
【0048】
次に、この加工装置10の動作について説明すると、主軸24は、キャリッジ22を介してX軸方向に移動可能であるため、主軸24および主軸24に保持された切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110は、キャリッジ22においてZ軸方向で移動するとともに、キャリッジ22を介してX軸方向に移動する。
【0049】
従って、加工装置10では、Y軸方向で移動するテーブル28と、X軸方向およびZ軸方向で移動する主軸24との位置関係を相対的に三次元で変更することが可能な構成となっている。
【0050】
また、主軸24は、切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110を保持して、モーター38の駆動により、保持した切削加工用の加工工具や研磨用加工工具110をZ軸周りに回転する。
【0051】
即ち、主軸24は、被加工物100に対して相対的に三次元方向に移動するとともに軸周りに回転する。
【0052】
そして、加工装置10においては、マイクロコンピューター32の制御により、作製する所望の三次元造形物の形状に対応した切削データに基づいて、テーブル28の上面28aに載置された被加工物100に対して切削加工用の加工工具により切削加工処理が行われる。
【0053】
なお、こうした加工装置10における切削加工用の加工工具による切削加工処理は、従来より公知の技術を適用することができるので、その詳細な構成および作用の説明は省略する。
【0054】
また、加工装置10においては、図4(a)(b)に示すように、切削加工用の加工工具により切削加工処理が行われた被加工物100の切削加工面100aを、研磨用加工工具110により研磨する研磨処理が行われる。
【0055】
マイクロコンピューター32は、切削加工する際における切削加工用の加工工具の移動の道筋たるツールパスを示すデータ(ツールパスデータ)などを含む切削データに基づいて、主軸24、キャリッジ22およびテーブル28の動作を制御して、主軸24をXYZ直交座標系における任意の位置へ移動するとともに主軸24のZ軸周りの回転を制御する制御部32aと、ツールパスデータなどを含む切削データなどの各種の情報を記憶する記憶部32bと、研磨用工具110により被加工物100を研磨処理するように制御する研磨処理制御部32cとを備えている。
【0056】
研磨処理制御部32cは、キャリッジ22、主軸24およびテーブル28の移動を制御して、主軸24のチャック24aに保持された研磨用加工工具110により、切削加工用の加工工具により切削加工された被加工物100の切削加工面100aを研磨するように制御する。
【0057】
なお、研磨用加工工具110による研磨とは、主軸24によりZ軸周りに回転される研磨用加工工具110の研磨部110bにより、被加工物100の切削加工面100aを擦る動作である。
即ち、研磨処理制御部32cは、記憶部32bに記憶された情報、具体的には、ツールパスデータと操作パネル130から入力された上記(2)〜(7)に示す情報に基づいて、主軸24に研磨用加工工具110を取り付けて、ツールパスデータに従って主軸24を移動させ、被加工物100の切削加工面100aを研磨する制御を行う。
【0058】
以上の構成において、加工装置10により被加工物100の切削加工面110aの研磨処理を行う場合には、作業者は操作パネル130から上記(2)〜(7)の情報をマイクロコンピューター32へ入力して、上記(2)〜(7)の情報を記憶部32bに記憶させる。
【0059】
それから、作業者が操作パネル130から上記(1)の情報をマイクロコンピューター32に入力すると、研磨処理制御部32cの制御により、切削用加工工具110を用いた研磨処理が実行される。
【0060】
以下、図3に示すフローチャートを参照しながら、切削用加工工具110を用いた研磨処理について詳細に説明する。
【0061】
図3のフローチャートには、本発明による加工装置10による切削用加工工具110を用いた研磨処理の処理ルーチンが示されている。
【0062】
この研磨処理は、作業者が操作パネル130から上記(1)の情報をマイクロコンピューター32に入力すると起動し、作業者が操作パネル130から入力した上記(2)〜(7)の情報に基づいて加工装置10が動作するように初期設定を行う(ステップS302)。
【0063】
この初期設定には、公知のオートツールチェンジャー機能を用いて、上記(6)の情報に基づいて研磨用加工工具110を主軸24のチャック24aに取り付ける処理も含まれる。
【0064】
上記した初期設定の処理を終了すると、上記(7)の情報が示すツールパスデータが存在するか否かを判断する(ステップS304)。
【0065】
このステップS304の処理において、上記(7)の情報が示すツールパスデータが存在しないと判断された場合には、この研磨処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS304の処理において、上記(7)の情報が示すツールパスデータが存在すると判断された場合には、ステップS306へ進み、上記(5)の情報に基づいて、主軸24に取り付けられた研磨用加工工具110を研磨剤容器120に移動して、研磨用加工工具110の研磨部110bに研磨剤をしみ込ませる。
【0067】
ステップS306の処理を終了すると、ステップS308の処理へ進み、上記(7)の情報が示すツールパスデータの読み出しを開始し、上記(2)〜(4)の情報に基づいて、主軸24に取り付けられた研磨用加工工具110を読み出したツールパスに従って移動して研磨動作を行う(ステップS310)。
【0068】
ここで、ツールパスは研磨対象の切削加工面110aを切削加工した際のものであり、また、主軸24に取り付けられた研磨用加工工具110の研磨部110bの径は、切削加工面110aを切削加工した切削加工用の加工工具の径と略同一である。
【0069】
従って、研磨対象の切削加工面110aを切削加工した際のツールパスで研磨用加工工具110を移動することにより、研磨用加工工具110が切削加工面110aに当接して、自動的に切削加工面110aの研磨が行われる。
【0070】
また、上記(2)(3)の情報に基づいて研磨用加工工具110の移動速度とZ軸周りの回転数とが設定されるため、通常の切削加工とは異なる切削加工面110aの研磨に適したものに設定することできる。
【0071】
そして、研磨動作による主軸24の移動距離が上記(4)の情報に示す連続研磨距離を超えるか否かが監視されており(ステップS312)、研磨動作による主軸24の移動距離が上記(4)の情報に示す連続研磨距離を超えない場合には、上記(7)の情報が示すツールパスデータの読み出しを継続して研磨動作を行う。
【0072】
一方、ステップS312の処理において、研磨動作による主軸24の移動距離が上記(4)の情報に示す連続研磨距離を超えたと判断されると、ステップS306へ戻り、上記(5)の情報に基づいて、主軸24に取り付けられた研磨用加工工具110を研磨剤容器120に移動して、研磨用加工工具110の研磨部110bに研磨剤をしみ込ませる処理を行った後に、ステップS308以降の処理を繰り返す。
【0073】
そして、ステップS308の処理においてツールパスデータの読み出しを終了したと判断されると、この研磨処理を終了する。
【0074】
以上において説明したように、本発明による加工装置10は、切削加工面110aを研磨するための新たなデータを作成することなく、切削加工面110aを形成した際のツールパスデータをそのまま用いて研磨処理を自動的に行うことができるので、人手による研磨作業の必要がない。
【0075】
また、研磨処理の際には、研磨用加工工具110の移動速度やZ軸周りの回転数を切削加工面110aの研磨に適したものに設定することできるとともに、連続研磨距離を設定することにより適宜のタイミングで研磨用加工工具110の研磨部110bに研磨剤を自動的にしみ込ませることができるので、高品質な研磨作業を行うことができる。
【0076】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)〜(4)に示すように変形するようにしてもよい。
【0077】
(1)上記した実施の形態においては、研磨処理は研磨用加工工具110がツールパスデータの示すツールパスを1回通過すると終了するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0078】
例えば、研磨用加工工具110が、ツールパスデータの示すツールパスを所望の回数繰り返し通過するようにしてもよい。
【0079】
(2)上記した実施の形態においては、上記(2)〜(7)の情報を操作パネルから入力するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0080】
例えば、研磨用加工工具110の研磨部110bの構成などを勘案した情報を予め記憶部32bに記憶しておき、その情報を読み出すようにしてもよい。
【0081】
(3)上記した実施の形態においては、上記(1)の情報を操作パネルから入力すると研磨処理が起動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0082】
例えば、切削加工用の加工工具による切削加工が終了すると、研磨処理が自動的に開始されるようにしてもよい。
【0083】
(4)上記した実施の形態ならびに上記した(1)〜(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、切削加工用の加工工具により被加工物を切削加工する加工装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0085】
10 加工装置、22 キャリッジ、24 主軸、24a チャック、28 テーブル、30 ツールホルダー、32 マイクロコンピューター、32a 制御部、32b 記憶部、32c 研磨処理制御部、38 モーター、100 被加工物、100a 切削加工面、110 研磨用加工工具、110a シャンク、110b 研磨部、120 研磨剤容器、120a 開口部、122 研磨剤
図1
図2
図3
図4