【実施例】
【0052】
以下において、「リポソームA」は前述の第1のリポソームを示す。また、「リポソームB」は前述の第2のリポソームを示す。さらに、以下の実施例などにおいて、各略語の意味は、以下のとおりである。
<略語>
DOPE: ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン
DOPC: ジオレオイルホスファチジルコリン
DOPS: ジオレオイルホスファチジルセリン
PE: ホスファチジルエタノールアミン化合物
PC: ホスファチジルコリン化合物
PS: ホスファチジルセリン化合物
HEPES: 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸〔4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid〕
ISI: 国際感受性指標(International Sensitivity Index)
【0053】
(実施例1および比較例1)
(1)リポソームA1の調製
25mg/mLリン脂質−クロロホルム溶液A〔DOPE 510mg、DOPC 1020mgおよびDOPS 510mg含有〕をナスフラスコに添加した。つぎに、リン脂質−クロロホルム溶液Aが入ったナスフラスコをロータリエバポレーターで回転させながら、クロロホルムを蒸発させた。これにより、ナスフラスコの内壁面にリン脂質の薄膜を形成させた。HEPES緩衝液A〔組成:150mM塩化ナトリウムおよび25mM HEPES(pH7.35)〕850mLを用いてリン脂質の薄膜を膨潤させ、リポソームを含む混合物を得た。つぎに、スターラーを用いて混合物を500rpmで60分間攪拌させた。その後、水浴型超音波装置〔シャープ(株)製、商品名:UT−306H〕を用い、混合物に対し15分間37kHzの超音波を照射してリポソームA1含有液を得た。得られたリポソームA1におけるDOPE、DOPCおよびDOPSそれぞれの濃度は、0.6mg/mL(DOPE濃度)、1.2mg/mL(DOPC濃度)および0.6mg/mL(DOPS濃度)であった。
【0054】
(2)リポソームB1の調製
DOPE 510mg、DOPC 1020mg、DOPS 510mgを用いる代わりに、DOPC 1280mgを用いたことおよびHEPES緩衝液A 800mLを用いてリン脂質の薄膜を膨潤させたことを除き、(1)と同様の操作を行ない、リポソームB含有液を得た。リポソームBにおけるDOPC濃度は、1.6mg/mLであった。
【0055】
(3)プロトロンビン時間測定用試薬の調製
(1)のリポソームA1含有液775mLと、(2)のリポソームB1含有液775mLと、50μg/mL組織因子溶液310mLと、HEPES緩衝液B〔組成:22mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、1質量%スクロース、0.1質量%アジ化ナトリウムおよび25mM HEPES(pH7.5)〕1240mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、950rpmで8日間撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物3LとHEPES緩衝液C〔組成:0.75mMアラニン、0.075mMスクロース、2.5mM塩化マグネシウム、60mM塩化カルシウムおよび25mM HEPES(pH7.5)〕12Lとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例1の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB1の含有量は、40質量%であった。
【0056】
また、(1)のリポソームA1含有液775mLと、HEPES緩衝液A 775mLと、50μg/mL組織因子溶液310mLと、HEPES緩衝液B 1240mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、950rpmで8日間撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物3LとHEPES緩衝液C 12Lとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、比較例1のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。
【0057】
(4)凝固時間の測定およびISIの算出
(3)のプロトロンビン時間測定用試薬の3ロットそれぞれを精製水4mLに再溶解させ、試薬溶液を得た。
【0058】
凝固測定装置〔シスメックス(株)製、商品名:CS−2000i〕内において、検体50μLを37℃で1〜2分間インキュベーションした。つぎに、試薬溶液100μLを凝固測定装置内の検体に添加した後、得られた測定試料について、凝固測定装置を用いて波長660nmでの透過光量の変化を測定した。なお、検体として、コントロール血漿〔プレシジョン・バイオロジック・インク(Precision BioLogic Inc.)製、商品名:CRYOcheck Pooled Normal Plasma〕およびキャリブレーター〔テクノクローン(Technoclone)製、商品名:AK Calibrant〕を用いた。
【0059】
キャリブレーターの凝固時間の測定値を用い、式(I):
ISI=[標準試薬を用いたときのISI]×[(評価対象の試薬を用いたときのキャリブレーターの凝固時間の対数)と(標準試薬を用いたときのキャリブレーターの凝固時間の対数)とをプロットして得られた直線の傾き]
(I)
にしたがってISIを求めた。
【0060】
実施例1および比較例1のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間およびISIを調べた結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示された結果から、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときのコントロール血漿の凝固時間は、適正な凝固時間の範囲(10.0〜13.0)であることがわかった。これに対し、表1に示された結果から、比較例1のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときのコントロール血漿の凝固時間は、適正な凝固時間の範囲(10.0〜13.0)から逸脱した範囲の時間であることがわかった。
【0063】
実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬のリポソームAのリン脂質の組成は、比較例1のプロトロンビン時間測定用試薬にリポソームのリン脂質の組成と同じである。しかし、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬では、リン脂質の組成が異なる2種類のリポソームが含まれている。これに対し、比較例1のプロトロンビン時間測定用試薬では、1種類のリポソームが含まれている。したがって、これらの結果から、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬のリポソームAと同じリン脂質の組成を有するリポソームを単独で用いても、適正な凝固時間を確保することができないことがわかった。
【0064】
また、表1に示された結果から、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときのISIは、適正なISIの範囲(1.0±0.2)であることがわかった。これに対し、表1に示された結果から、比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときのISIは、1.34であり、適正なISIの範囲から大きく逸脱していることがわかった。したがって、比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬は、実用に適した性質を有していないことがわかった。
【0065】
これらの結果から、実施例1のプロトロンビン時間測定用試薬は、適正な範囲の凝固時間および適正なISIを確保することができることがわかった。
【0066】
(実施例2および比較例2)
(1)リポソームA2の調製
DOPE 15mgと、DOPC 30mgと、DOPS 15mgとを含むリン脂質−クロロホルム溶液Aをガラス製容器に入れた。つぎに、リン脂質−クロロホルム溶液Aが入ったガラス製容器をローテーター〔アズワン(株)製、商品名:MIX ROTOR VMR−5R〕で回転させながら、クロロホルムを蒸発させた。これにより、ガラス製容器の内壁面にリン脂質の薄膜を形成させた。HEPES緩衝液A 25mLを用いてリン脂質の薄膜を膨潤させ、リポソームA2を含む混合物を得た。つぎに、スターラーを用いて混合物を500rpmで60分間攪拌させた。その後、水浴型超音波装置〔シャープ(株)製、商品名:UT−306H〕を用い、混合物に対し15分間超音波を照射してリポソームA2含有液を得た。得られたリポソームA2におけるDOPE、DOPCおよびDOPSそれぞれの濃度は、0.6mg/mL(DOPE濃度)、1.2mg/mL(DOPC濃度)および0.6mg/mL(DOPS濃度)であった。
【0067】
(2)リポソームB2の調製
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 40mgを用いたことを除き、(1)と同様の操作を行ない、リポソームB2含有液を得た。リポソームB2におけるDOPC濃度は、1.6mg/mLであった。
【0068】
(3)プロトロンビン時間測定用試薬の調製
(1)のリポソームA2含有液20mLと、(2)のリポソームB2含有液20mLと、50μg/mL組織因子溶液8mLと、HEPES緩衝液B 32mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、650rpmで撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物80mLとHEPES緩衝液C 320mLとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例2の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB2の含有量は、40質量%であった。
【0069】
また、(1)のリポソームA2含有液20mLと、50μg/mL組織因子溶液8mLとをHEPES緩衝液B 32mLに添加した。得られた混合物を37℃に加温しながら、650rpmで撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物60mLと、HEPES緩衝液A 20mLと、HEPES緩衝液C 320mLとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。
【0070】
(4)凝固時間に対するトリグリセリドの影響
実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬および比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用い、トリグリセリドを含む検体またはトリグリセリドを含まない検体を用いたことを除き、実施例1および比較例1の(4)と同様の操作を行ない、凝固時間を測定した。つぎに、トリグリセリドを含まない検体の凝固時間に対するトリグリセリドを含む検体の凝固時間の変化率を求めた。なお、トリグリセリドを含む検体は、以下のように調製した。まず、正常血漿〔シスメックス(株)製、商品名:コアグトロールIX〕とトリグリセリド含有液〔日本製薬(株)製、商品名:イントラファット注20%〕とを、正常血漿/トリグリセリド(体積比)が9.5/0.5となるように混合し、サンプルAを得た。また、正常血漿と生理食塩水とを、正常血漿/生理食塩水(体積比)が9.5/0.5となるように混合し、サンプルBを得た。つぎに、サンプルAとサンプルBとをサンプルA/サンプルB(体積比)が1/9となるように混合し、トリグリセリド濃度100mg/dLの検体を得た。また、サンプルAとサンプルBとをサンプルA/サンプルB(体積比)が1/4となるように混合し、トリグリセリド濃度200mg/dLの検体を得た。なお、サンプルBを、トリグリセリドを含まない検体(トリグリセリド濃度0mg/dLの検体)とした。
【0071】
実施例2および比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とトリグリセリド濃度との関係を調べた結果を
図2に示す。図中、白丸は実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とトリグリセリド濃度との関係、黒丸は比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とトリグリセリド濃度との関係を示す。
【0072】
図2に示された結果から、実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率は、比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率よりも小さいことがわかった。したがって、これらの結果から、リポソームAと、リポソームAに含まれるPCからなるリポソームBとをリポソームとして含むプロトロンビン時間測定用試薬は、血漿に含まれる共存物質のトリグリセリドによる影響を受けにくいことがわかった。
【0073】
(5)凝固時間に対するビリルビンF濃度の影響
実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬および比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用い、ビリルビンFを含む検体を用いたことを除き、実施例1および比較例1の(4)と同様の操作を行ない、凝固時間を測定した。つぎに、ビリルビンFを含まない検体の凝固時間に対するビリルビンFを含む検体の凝固時間の変化率を求めた。なお、ビリルビンFを含む検体は、以下のように調製した。まず、正常血漿〔シスメックス(株)製、商品名:コアグトロールIX〕とビリルビンF含有液〔シスメックス(株)製、商品名:干渉チェックAプラス〕とを、正常血漿/ビリルビンF(体積比)が8/2となるように混合し、サンプルAを得た。また、正常血漿と生理食塩水とを、正常血漿/生理食塩水(体積比)が8/2となるように混合し、サンプルBを得た。つぎに、サンプルAとサンプルBとをサンプルA/サンプルB(体積比)が表2に示される体積比となるように混合し、ビリルビンFを含む検体を得た。サンプルBを、ビリルビンFを含まない検体(ビリルビンF濃度0mg/mLの検体)とした。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例2および比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とビリルビンF濃度との関係を調べた結果を
図3に示す。図中、白丸は実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とビリルビンF濃度との関係、黒丸は比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率とビリルビンF濃度との関係を示す。
【0076】
図3に示された結果から、実施例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率は、比較例2のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間の変化率よりも小さいことがわかった。したがって、これらの結果から、リポソームAと、リポソームAに含まれるPCからなるリポソームBとをリポソームとして含むプロトロンビン時間測定用試薬は、血漿に含まれる共存物質のビリルビンFによる影響を受けにくいことがわかった。
【0077】
(実施例3〜7および比較例3)
(1)リポソームA3およびA4の調製
DOPE 15mgと、DOPC 30mgと、DOPS 15mgとを含むリン脂質−クロロホルム溶液Aをガラス製容器に入れた。つぎに、リン脂質−クロロホルム溶液Aが入ったガラス製容器をローテーター〔アズワン(株)製、商品名:MIX ROTOR VMR−5R〕で回転させながら、クロロホルムを蒸発させた。これにより、ガラス製容器の内壁面にリン脂質の薄膜を形成させた。HEPES緩衝液A 25mLを用いてリン脂質の薄膜を膨潤させ、リポソームA3を含む混合物を得た。つぎに、スターラーを用いて混合物を500rpmで60分間攪拌させた。その後、水浴型超音波装置〔シャープ(株)製、商品名:UT−306H〕を用い、混合物に対し15分間超音波を照射してリポソームA3含有液を得た。得られたリポソームA3におけるDOPE、DOPCおよびDOPSそれぞれの濃度は、0.6mg/mL(DOPE濃度)、1.2mg/mL(DOPC濃度)および0.6mg/mL(DOPS濃度)であった。
【0078】
また、DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPE 15mg、DOPC 70mgおよびDOPS 15mgを用いたことを除き、リポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームA4含有液を得た。リポソームA4におけるにおけるDOPE、DOPCおよびDOPSそれぞれの濃度は、0.6mg/mL(DOPE濃度)、2.8mg/mL(DOPC濃度)および0.6mg/mL(DOPS濃度)であった。
【0079】
(2)リポソームB3〜B7の調製
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 20mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームB3含有液を得た。リポソームB3におけるDOPC濃度は、0.8mg/mLであった。
【0080】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 40mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームB4含有液を得た。リポソームB4におけるDOPC濃度は、1.6mg/mLであった。
【0081】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 60mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームB5含有液を得た。リポソームB5におけるDOPC濃度は、2.4mg/mLであった。
【0082】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 80mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームB6含有液を得た。リポソームB6におけるDOPC濃度は、3.2mg/mLであった。
【0083】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 100mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA3の調製と同様の操作を行ない、リポソームB7含有液を得た。リポソームB7におけるDOPC濃度は、4.0mg/mLであった。
【0084】
(3)プロトロンビン時間測定用試薬の調製
リポソームA1含有液20mLと、50μg/mL組織因子溶液8mLと、HEPES緩衝液B 32mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、650rpmで撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物60mLと、リポソームB3含有液20mLと、HEPES緩衝液C 320mLとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、実施例3のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例3の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB3の含有量は、25質量%であった。
【0085】
リポソームB3含有液を用いる代わりに、リポソームB4含有液(実施例4)、リポソームB5含有液(実施例5)、リポソームB6含有液(実施例6)またはリポソームB7含有液(実施例7)を用いたことを除き、実施例3と同様の操作を行ない、実施例4〜7のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例4の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB4の含有量は、40質量%であった。実施例5の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB5の含有量は、50質量%であった。実施例6の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB6の含有量は、57質量%であった。実施例7の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB7の含有量は、63質量%であった。
【0086】
リポソームA2含有液20mLと、50μg/mL組織因子溶液8mLと、HEPES緩衝液A 20mLと、HEPES緩衝液B 32mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、650rpmで撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物80mLと、HEPES緩衝液C 320mLとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、比較例3のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。
【0087】
(4)凝固時間の測定およびISIの算出
実施例3〜7および比較例3のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたことを除き、実施例1および比較例1の(4)と同様の操作を行ない、凝固時間の測定およびISIの算出を行なった。
【0088】
実施例3〜7および比較例3のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間およびISIを調べた結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に示された結果から、リン脂質としてDOPCを含むリポソームBを含む実施例3〜7のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間およびISIは、リポソームBにおけるDOPCの含有量の如何を問わず、いずれも、適正な凝固時間およびISIであることがわかった。しかし、リン脂質としてDOPCを含むリポソームBを含まず、リポソームAにおけるDOPCの含有量が多い比較例3のプロトロンビン時間測定用試薬のISIは、適正なISIの範囲から逸脱していることがわかった。したがって、これらの結果から、リポソームAと、リポソームAに含まれるPCからなるリポソームBとをリポソームとして含むプロトロンビン時間測定用試薬によれば、適正な凝固時間およびISIを確保することができることがわかった。
【0091】
(実施例8〜10および比較例4)
(1)リポソームA5の調製
DOPE 15mgと、DOPC 30mgと、DOPS 15mgとを含むリン脂質−クロロホルム溶液Aをガラス製容器に入れた。つぎに、リン脂質−クロロホルム溶液Aが入ったガラス製容器をローテーター〔アズワン(株)製、商品名:MIX ROTOR VMR−5R〕で回転させながら、クロロホルムを蒸発させた。これにより、ガラス製容器の内壁面にリン脂質の薄膜を形成させた。HEPES緩衝液A 25mLを用いてリン脂質の薄膜を膨潤させ、リポソームA5を含む混合物を得た。つぎに、スターラーを用いて混合物を500rpmで60分間攪拌させた。その後、水浴型超音波装置〔シャープ(株)製、商品名:UT−306H〕を用い、混合物に対し15分間超音波を照射してリポソームA5含有液を得た。得られたリポソームA5におけるDOPE、DOPCおよびDOPSそれぞれの濃度は、0.6mg/mL(DOPE濃度)、1.2mg/mL(DOPC濃度)および0.6mg/mL(DOPS濃度)であった。
【0092】
(2)リポソームB8〜B11の調製
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPE 40mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA5の調製と同様の操作を行ない、リポソームB8含有液を得た。リポソームB8におけるDOPE濃度は、1.6mg/mLであった。
【0093】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPE 20mgおよびDOPC 20mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA5の調製と同様の操作を行ない、リポソームB9含有液を得た。リポソームB9におけるDOPEおよびDOPCそれぞれの濃度は、0.8mg/mLおよび0.8mg/mLであった。
【0094】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPC 40mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA5の調製と同様の操作を行ない、リポソームB10含有液を得た。リポソームB10におけるDOPC濃度は、1.6mg/mLであった。
【0095】
DOPE 15mg、DOPC 30mgおよびDOPS 15mgを用いる代わりに、DOPS 40mgを用いたことを除き、(1)のリポソームA5の調製と同様の操作を行ない、リポソームB11含有液を得た。リポソームB11におけるDOPS濃度は、1.6mg/mLであった。
【0096】
(3)プロトロンビン時間測定用試薬の調製
(1)のリポソームA5含有液20mLと、(2)のリポソームB8含有液20mLと、50μg/mL組織因子溶液8mLと、HEPES緩衝液B 32mLとを混合した。得られた混合物を37℃に加温しながら、950rpmで8日間撹拌させることにより、リポソームと組織因子とを再構成させ、リポソーム組成物を得た。得られたリポソーム組成物80mLとHEPES緩衝液C320mLとを混合した。得られた混合物をバイアルに2mLずつ分注した。バイアル中の混合物を凍結乾燥させ、実施例8のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例8の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB8の含有量は、40質量%であった。
【0097】
リポソームB8含有液を用いる代わりに、リポソームB9含有液(実施例9)、リポソームB10含有液(実施例10)またはリポソームB11含有液(比較例4)を用いたことを除き、実施例8と同様の操作を行ない、実施例9〜10および比較例4のプロトロンビン時間測定用試薬を得た。実施例9の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB9の含有量は、40質量%であった。実施例10の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB10の含有量は、40質量%であった。比較例4の試薬における全リポソームの含有量に対するリポソームB11の含有量は、40質量%であった。
【0098】
(4)凝固時間の測定およびISIの算出
実施例8〜10および比較例4のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたことを除き、実施例1および比較例1の(4)と同様の操作を行ない、凝固時間の測定およびISIの算出を行なった。
【0099】
実施例8〜10および比較例4のプロトロンビン時間測定用試薬を用いたときの凝固時間およびISIを調べた結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
表4に示された結果から、リポソームBを構成するリン脂質がDOPE単独(実施例8)、DOPCとDOPEとの混合物(実施例9)またはDOPC単独(実施例10)であるプロトロンビン時間測定用試薬の凝固時間およびISIは、いずれも、適正な凝固時間およびISIであることがわかった。したがって、これらの結果から、リポソームAと、リポソームAに含まれるPEおよびPCからなる群より選ばれた少なくとも1種類のリン脂質からなるリポソームBとをリポソームとして含むプロトロンビン時間測定用試薬によれば、適正な凝固時間およびISIを確保することができることがわかった。
【0102】
以上説明したように、本実施形態に係るプロトロンビン時間測定用試薬によれば、第1のリポソームと、第1のリポソームに含まれるホスファチジルコリン化合物およびホスファチジルエタノールアミン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種類のリン脂質からなる第2のリポソームとをリポソームとして含むので、正常血漿の凝固時間の測定の際に適正な凝固時間およびISIを確保することができ、しかも共存物質による影響を受けにくいことが示唆された。