(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記公報記載の鋼材冷却ミスト用ノズルチップにあっては、2条の噴射スリットのみから冷却ミストを噴射するものであるので、噴射領域の広範囲化が十分に図られるとは言えない。
【0006】
また、上記公報所載の鋼材冷却ミスト用ノズルチップは、噴射領域における噴射量の均一化を図っているが、同形状の2条の噴射スリットから冷却ミストを噴射するものであるので、噴射スリットの長手方向と直交する方向の噴射量の均一化も十分に図られていない。つまり、噴射領域において一方の噴射スリットの一方側(例えば右側の噴射スリットよりも右側の噴射領域)においては、他方の噴射スリットから冷却ミストが噴射されない部分が生じるため、噴射領域の噴射量の均一化が十分図られているとは言えない。
【0007】
上記不都合に鑑みて、本発明は、広範囲の噴射領域に対してミストを噴射でき、この噴射領域において噴射スリットの長手方向と直交する方向における噴射量の均一化を図ることができる鋼材冷却ミスト用ノズルチップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る鋼材冷却ミスト用ノズルチップは、供給口から供給されるミストを先端面から噴射する鋼材冷却ミスト用ノズルチップであって、先端面に平面視同一方向に沿って形成される少なくとも3条の噴射スリット、上記噴射スリットと連通するミスト充填室、上記供給口から上記ミスト充填室にミストを供給する流路、及び上記供給口と上記ミスト充填室との間に配され、上記流路の一部を閉塞する遮蔽部を備え、上記スリット長手方向と直交方向の縦断面において上記少なくとも3条の噴射スリットが放射状に配され、上記少なくとも3条の噴射スリットのうち、中央の噴射スリットより外側の噴射スリットの方が平面視の長さが小さく、上記先端面の上記外側の噴射スリットの形成される箇所が、中央側から外縁側に従って後端側に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
当該鋼材冷却ミスト用ノズルチップにあっては、供給口から供給されたミストが、遮蔽部によって一部が閉塞された流路を介して、ミスト充填室に供給され、このミスト充填室に供給されたミストが、上記少なくとも3条の噴射スリットから噴射される。上記少なくとも3条の噴射スリットは、スリット長手方向の直交方向(以下、スリット直交方向ということがある)の縦断面において放射状に配されているので、当該鋼材冷却ミスト用ノズルチップはスリット直交方向に広範囲にミストを噴射することができる。上記少なくとも3条の噴射スリットを同一形状に形成することも考えられるが、噴射領域におけるスリット直交方向の中央部分の噴射幅(スリット長手方向の噴射領域の長さ)が、スリット直交方向の外側部分の噴射幅に比べて小さくなるおそれがある。当該鋼材冷却ミスト用ノズルチップは、中央の噴射スリットより外側の噴射スリットの方が平面視の長さが小さく、外側の噴射スリットの形成される先端面の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜しているので、スリット直交方向の中央部分と外側部分との噴射幅の均一化を図ることができる。
【0010】
上記噴射スリットのスリット長手方向の端部はそれぞれ内部から先端側に従って外側に傾斜し、上記先端面における上記中央の噴射スリットの上記端部の表出する箇所が、中央側から外縁側に従って後端側に傾斜していることが好ましい。このように噴射スリットのスリット長手方向の端部がそれぞれ内部から先端側に従って外側に傾斜していることで、スリットの長手方向の内径が内部から先端にかけて広がるので、スリット長手方向の噴射領域を広くすることができる。また、上記中央の噴射スリットの上記端部の表出する先端面の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜する傾斜面であるので、噴射スリットの長手方向中央部分と端部付近とのスリット深さ(ミストがスリットを通過する距離)の差が大きくなり過ぎず、このため噴射スリットの長手方向の噴射量の好適化を図ることができる。
【0011】
上記先端面の少なくとも縁部は三次元曲面であることが好ましい。これにより、上述した外側の噴射スリットの形成される先端面の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜する構成、及び中央の噴射スリットの上記端部の表出する先端面の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜する構成を容易かつ確実に得ることができる。なお、三次元曲面とは、平面に展開できる曲面(例えば円柱の側面)を含まず、平面に展開できない、つまりは平面を変形させることで完成できない曲面を意味する。
【0012】
上記ミスト充填室が平面視において長軸を有する形状であり、上記ミスト充填室の長軸が上記スリットと平面視交差することが好ましい。これにより、ミスト充填室に充填されたミストが、上記少なくとも3条の噴射スリットに略均一に供給される。
【0013】
上記遮蔽部が、上記ミスト充填室と平面視略同形状で、平面視ミスト充填室と重なっている。上記ミスト充填室と平面視略重なる形状であることが好ましい。これにより、供給口から直線的にミスト充填室にミストが供給されることを上記遮蔽部によって的確に抑制でき、ミスト充填室内の圧力の均一化を図ることができる。
【0014】
上記少なくとも3条の噴射スリットが平面視線対称であることが好ましい。これにより、噴射領域の噴射量の適正化を向上することができる。なお、上記少なくとも3条の噴射スリットの対称な軸は、スリット長手方向及びスリット直交方向と平行であるとよい。スリット長手方向と平行であることで、スリット直交方向の噴射量の均一化を向上することができる。また、上記少なくとも3条の噴射スリットの対称な軸が、スリット直交方向と平行であることで、スリット長手方向の噴射量の適正化を向上することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の鋼材冷却ミスト用ノズルチップは、広範囲の噴射領域に対してミストを噴射でき、このスリット直交方向の噴射量の均一化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1〜
図6の鋼材冷却ミスト用ノズルチップ(以下、単にノズルチップということがある)は、供給口10から供給されるミストを先端面11から噴射する部材であって、公知の冷却散水装置(図示省略)に装着され、鋼材に向けてミストを噴射する。上記冷却散水装置は、液体(水)と気体(加圧空気)とを混合してミスト(二流体)を形成し、このミストを当該ノズルチップに上記供給口10から供給する。ここで、気体としては工場内のエア設備からの加圧空気を好適に用いることができる。当該ノズルチップは、鋼材に対してミストを噴射することで、鋼材を冷却すると共に衝突圧によって鋼材表面のスケールや水膜等を除去する。つまり、当該ノズルチップは、スケール等の除去のために十分な衝突圧を有するミストを噴射することが好ましく、この衝突圧としては例えば1.0×10
−4Mpa以上である。
【0018】
また、当該ノズルチップは、広範囲の領域を冷却できるものであるので、鋼材の広範囲の領域に対してミストを噴射する必要がある箇所に好適に用いられる。具体的には、連続鋳造設備(図示省略)において、鋳造された鋼材(鋳片)が上下複数対のロールに挟まれた状態で搬送されつつ冷却され、この搬送ルートの上流側に比べて下流側はロール間ピッチが広いため、この下流側のロール間ピッチが広い若しくはロールが存在しない箇所に当該ノズルチップが好適に用いられる。
【0019】
当該ノズルチップは、
図4〜
図6に示すように、先端面11に平面視同一方向に沿って形成される6条の噴射スリット13と、上記噴射スリット13と連通するミスト充填室14と、上記供給口10から上記ミスト充填室14にミストを供給する流路15と、上記供給口10と上記ミスト充填室14との間に配され、上記流路15の一部を閉塞する遮蔽部16とを備えている。このため、上記供給口10から供給されたミストが、遮蔽部16によって一部が閉塞された流路15を介して、ミスト充填室14に供給され、このミスト充填室14に供給されたミストが、上記噴射スリット13から鋼材に向けて噴射される。
【0020】
当該ノズルチップは、後端に配され上記供給口10を有する円筒状の筒部材20と、上記噴射スリット13が先端の蓋部21aに形成された有蓋筒状の先端部材21とを有している。先端部材21は平面視多角形状に形成されている。この筒部材20と先端部材21とが一体的に固着されている。具体的には、上記筒部材20の先端に上記先端部材21が外嵌されている。上記筒部材20において上記冷却散水装置に装着される。上記筒部材20及び先端部材21の内部に断面円形の上記流路15が形成される。筒部材20の流路15の径に比べて先端部材21の流路15の径が大きい。
【0021】
(ミスト充填室)
上記先端部材21には、上記流路15に連続して上記ミスト充填室14が形成されている。このミスト充填室14は、平面視において長軸を有する形状であり、上記ミスト充填室14の長軸が上記噴射スリット13と平面視交差(直交)するよう配されている。具体的には、ミスト充填室14は、平面視略方形状であって、一対の短辺が中央にかけて外側に膨出した円弧から構成された形状をなしている。このミスト充填室14の長軸の長さ(一対の短辺の最も離間している部分の間隔)は、流路15(先端部材21における流路15)の幅と略等しく、短軸の長さ(一対の長辺間の間隔)は、流路15の幅よりも小さい。また、ミスト充填室14は、
図4〜
図6に示すように、上記平面視形状と同一断面形状の後端側部分14aと、この後端側部分から連続すると共に内径が先端につれて狭まる先端側部分14bを有し、この先端側部分14bにおいて
図3及び
図4に示すように上記噴射スリット13に連通している。この先端側部分14bの天面14cは、長軸方向(スリット直交方向Y)及び短軸方向(スリット長手方向X)に湾曲する三次元曲面となっている。
【0022】
(遮蔽部)
当該ノズルチップは、
図4〜
図6に示すように、上記流路15(先端部材21の流路15)に内嵌されるリング部23と、このリング部23の後端に架け渡されるよう固着された板状の上記遮蔽部16とを備える遮蔽部材24を有する。なお、この遮蔽部材24、上記筒部材20及び上記先端部材21は、素材を特に限定するものではないが、金属から形成されている。
【0023】
上記遮蔽部16は、上記ミスト充填室14と平面視略同形状で、上記ミスト充填室14と平面視重なっている。このため、供給口10から直線的にミスト充填室14にミストが供給されることを上記遮蔽部16によって的確に抑制でき、ミスト充填室14内の圧力の均一化を図ることができる。なお、平面視でミスト充填室14の面積に対して遮蔽部16がミスト充填室14に重なる面積の比は、90%以上であることが好ましく、この比の下限は95%はより好ましく、100%がさらに好ましい。この比が上記下限に満たない場合、ミスト充填室14内の圧力の均一化を阻害するおそれがある。また、平面視で遮蔽部16の面積に対して遮蔽部16がミスト充填室14に重なる面積の比は、90%以上であることが好ましく、この比の下限は95%がより好ましく、100%がさらに好ましい。この比が上記下限に満たない場合、遮蔽部16による流路15が閉塞される部分が大きく圧損が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0024】
(噴射スリット)
上記6条の噴射スリット13は、上記筒部材20の蓋部21aに上記ミスト充填室14まで貫通する溝から構成されている。
図2に示すように、6条の噴射スリット13のうち、中央の噴射スリット13より外側の噴射スリット13の方が平面視の長さが小さい。具体的には、平面視において、中央の一対の噴射スリット13が最も長く、外側の噴射スリット13に従って順次平面視の長さが小さくなる。
【0025】
6条の噴射スリット13が平面視線対称であり、6条の噴射スリット13の対称な軸はスリット長手方向X及びスリット直交方向Yと平行である。具体的には、6条の噴射スリット13は、中央の一対の噴射スリット13の間のスリット長手方向Xに平行な仮想直線に対して線対称である。また、6条の噴射スリット13は各重心を結ぶ仮想直線を有し、この仮想直線に対しても6条の噴射スリット13は線対象である。また、6条の噴射スリット13は、平面視点対称である。
【0026】
6条の噴射スリット13は、スリット直交方向Yの縦断面において放射状に配されている。つまり、噴射スリット13は、流路15の中心軸に対して外側にそれぞれ傾斜しており、この傾斜角は中央側の噴射スリット13よりも外側の噴射スリット13の方が大きい。換言すると、中央側の噴射スリット13から外側の噴射スリット13に従って上記傾斜角が大きくなる。
【0027】
上記噴射スリット13のスリット長手方向Xの端部がそれぞれ内部から先端側に従って外側に傾斜している。つまり、各噴射スリット13は、スリットの長手方向の内径が内部から先端にかけて広がっている。換言すると、各噴射スリット13は、上記ミスト充填室14の天面14cから先端側に従って先端面11における長さとなるよう順次拡径している。
【0028】
(先端面)
当該ノズルチッブの先端面11は、中央部11bを除いて、三次元曲面であり、具体的には球面の一部の曲面である。なお、先端面11の三次元曲面の曲率半径は、上記流路15の内径より大きい。上記中央部11bは平坦面である。
【0029】
つまり、当該ノズルチップの先端面11の縁部11aは三次元曲面である。このため、最も外側の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所が、
図4に示すように中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。さらに、この外側の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所は、
図6に示すようにスリット直交方向Yに傾斜すると共にスリット長手方向Xにおいても中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。
【0030】
また、最も中央の噴射スリット13の長手方向の端部がそれぞれ表出する先端面11の箇所が、中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。さらに、この中央側の噴射スリット13の長手方向の端部がそれぞれ表出する先端面11の箇所は、スリット長手方向Xに傾斜すると共にスリット直交方向Yにおいても中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。
【0031】
中間の噴射スリット13(最も外側の噴射スリット13と中央の噴射スリット13との間に配される噴射スリット13)の形成される先端面11の箇所は、中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。また、この中間の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所は、スリット直交方向Yに傾斜すると共にスリット長手方向Xにおいても中央側から外縁側に従って後端側に傾斜している。つまり、本実施形態のノズルチップは、最も中央の噴射スリット13のスリット長手方向X中央部以外の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所が、三次元曲面である。
【0032】
[利点]
当該ノズルチップは、6条の噴射スリット13を有するので、スリット直交方向Yにおいてミストを幅広い範囲で噴射することができ、この6条の噴射スリット13は、スリット直交方向Yの縦断面において放射状に配されているので、スリット直交方向Yにミストをより広範囲に噴射することができる。また、噴射スリット13のスリット長手方向Xの端部がそれぞれ内部から先端側に従って外側に傾斜しているので、スリット長手方向Xにもミストを広範囲に噴射することができる。
【0033】
また、中央の噴射スリット13より外側の噴射スリット13の方が平面視の長さが小さく、外側の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜しているので、スリット直交方向Yの中央部分と外側部分との噴射幅の均一化を図ることができると共に噴射領域の各部分において十分なミストの衝突圧を得ることができる。特に中央の一対の噴射スリット13が最も長く、外側の噴射スリット13に従って順次平面視の長さが小さくなるので、スリット直交方向Yの各部分の噴射幅の均一化及び十分なミストの衝突圧の確保がより図られる。
【0034】
さらに、外側の噴射スリット13の形成される先端面11の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜しているので、外側の噴射スリット13の傾斜角を十分に確保しやすく、また外側の噴射スリット13の深さ(ミストが噴出スリットを通過する距離)が大きくなり圧損が大きくなり過ぎることを抑制できる。
【0035】
また、中央の噴射スリット13及び中間の噴射スリット13の長手方向の端部の表出する先端面11の箇所が中央側から外縁側に従って後端側に傾斜しているので、噴射スリット13の長手方向中央部分と端部付近とのスリット深さの適正化を図ることができ、このため噴射スリット13の長手方向の噴射量及びミストの衝突圧の適正化を図ることができる。
【0036】
さらに、6条の噴出スリットは、ミスト充填室14の長軸と平面視交差(直交)するので、ミスト充填室14に充填されたミストが、6条の噴射スリット13に均一に供給されやすく、噴射領域のスリット直交方向Yの噴射量及びミストの衝突圧の均一化をより確実に図ることができる。
【0037】
また、6条の噴射スリット13が平面視で線対称であり、6条の噴射スリット13の対称な軸は、スリット長手方向X及びスリット直交方向Yと平行であるので、スリット直交方向Y及びスリット長手方向Xにおける噴射量及びミストの衝突圧の適正化を向上することができる。さらに、6条の噴射スリット13が平面視点対称であるので、噴射領域全域に亘って噴射量及びミストの衝突圧の適正化を図ることができる。
【0038】
[その他の実施形態]
本発明のノズルチップは、上記実施形態に限定されるものではない。つまり、上記実施形態において、筒部材、先端部材及び遮蔽部材からノズルチップを構成するものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、またこれらの部材を用いた場合であっても形状や材料等は適宜設計変更可能である。具体的には、上記実施形態においては六角筒状の先端部材を用いるものについて説明したが、円筒状の先端部材を用いることも可能である。
【0039】
また、6条の噴射スリットを有するものについて説明したが、本発明はこれに限定されず3条以上の噴射スリットを有するものであれば良い。この噴射スリットの数の下限は4条が好ましく、6条がさらに好ましい。また、噴射スリットの数の上限は10条が好ましく、8条がより好ましい。なお、噴射スリットの数は、奇数であっても良いが、偶数であることが好ましく、これによりスリット直交方向の噴射量の均一化が図られやすい。なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述のような同一方向に沿って形成される複数の噴出スリット以外に、例えば紡錘状の噴射口を先端面に形成することも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0041】
(試験方法)
実施例1及び比較例1〜3のノズルチップそれぞれの供給口に、表1に示す噴射条件でミストを供給し、噴射スリットからミストを所定時間噴出した。この噴射したミストを、ノズルチップから200mm下方に併設された複数の容器で採取した。採取する領域をスリット直交方向に5つの区画に分けて、各区画にスリット長手方向に所定数の容器を併設した。複数の容器は、いずれもスリット直交方向の長さが120mmで、スリット長手方向の長さが25mmのものを用いた。これによりスリット直交方向600mmかつスリット長手方向600mmの領域においてミストの噴射量を計測した。この計測によって、スリット直交方向120mmごとの各区画におけるスリット長手方向所定ピッチごとのミストの噴射量を計測した。
【0042】
(実施例1)
図1〜
図6に示すように三次元曲面を有する先端面に6条の噴出スリットが形成され、流路に遮蔽部を有するノズルチップであって、供給口の内径が19mmであり、平面視における中央、中間及び外側の噴出スリットの長手方向長さがそれぞれ19mm、12mm及び8mmであり、各噴出スリットの幅(スリット直交方向の長さ)2mmであるものを実施例1のノズルチップとして用意した。
【0043】
(比較例1)
図7に示すように6条の噴出スリット11の平面視形状が同一である点を除き、実施例1と同一の構成を有するものを比較例1のノズルチップとして用意した。なお、各噴出スリットの長手方向の長さは12mmである。なお、比較例1のノズルチップも遮蔽部16を備える。
【0044】
(比較例2)
先端面が三次元曲面を有さない平坦面である点を除き、比較例1と同一の構成を有するものを比較例2のノズルチップとして用意した。
【0045】
(比較例3)
内部に遮蔽部を有さない点を除き、比較例2と同一の構成を有するものを比較例3のノズルチップとして用意した。
【0046】
(各区画水量分布)
各区画のミストの噴射総量(各区画の複数の容器の採取量の合計)を算出し、噴射総量が最大の区画の噴射総量を100%して、噴射総量が最小の区画の噴射総量が80%以上であればOKとし、80%未満であればNGとした。
【0047】
(水量分布の連続性)
各区画でスリット長手方向の噴射量の分布が均一であるかを判断した。ここで、各区画におけるスリット長手方向の噴射量の分布は、台形となることが好ましい。つまり、板状の鋼材を冷却する際に鋼材の側部付近は二面冷却であることから冷却流量を減らす必要があるため、噴射量は、スリット長手方向の中央側において比較的均一で、外側が徐々に漸減することが好ましい。そして、このスリット長手方向の噴射量の分布は、各区画で均等であることが好ましい。このため、噴射総量が最大の区画における各容器の噴射量(各容器の採取量)に対して、それに対応する他の区画の容器の噴射量が80%以上120%以下であればOKとし、80%未満又は120%超であればNGとした。
【0048】
(外観検査)
ミストの噴射状況を状部から観察し、噴射領域が欠損なく略方形状となっているかを視認で観察した。
【0049】
(結果)
上記各試験結果を表1に示す。遮蔽部を有さず単に複数の噴出スリットを設けたに過ぎない比較例3のノズルチップは、中央の区画の噴射総量が高くなり、各区画の水量分布が悪かった。これに対して、実施例1並びに比較例1及び2のように遮蔽部を有するノズルチップは、各区画の噴射総量が均一化され、各区画の水量分布が良好であった。
【0050】
比較例1及び2のノズルチップのように遮蔽板を設けたのみでは中央の区画の噴射幅(スリット形成方向の噴射領域の長さ)が小さく、水量分布の連続性が悪い。つまり、比較例1及び2のノズルチップは、外側の区画に比べて中央の区画の噴射幅が小さかった。これに対して、実施例1のノズルチップは、各区画の噴射幅が均一であると共に各区画の対応位置の噴射量が均一であり、水量分布の連続性が良好であった。このことは外観検査からも判断できた。
【0051】
この実施例1のように遮蔽部を設け、先端面を三次元曲面とし、複数条の噴射スリットの長さを異ならしめることで、均一なミストの噴射が行えることが判明した。
【0052】
【表1】