(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズルのパスを決定するステップでは、前記レーザの照射位置が、前記切削パスにおける前記工具の刃先位置と一致するように、前記ノズルのパスを決定する、請求項2または3のいずれか1項に記載の制御データの生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、付加製造技術における付加製造方式の一例として、指向性エネルギー堆積法(directed energy deposition)を利用するものとする。なお、後述する制御データは、付加製造の際に利用される。詳しくは、制御データは、指定された形状の製品を付加製技術で製造するためのデータである。
【0015】
<A.イントロダクション>
指向性エネルギー堆積法では、材料パウダー(粉体)の吐出方向を、可能な限り重力方向としたほうがよい。当該パウダーを吐出するノズルについてのパス(以下、「ツールパスPn」とも称する)は、重力方向に対して垂直とし得る形状を選び出すことで得られる。ツールパスPn(移動経路,加工経路)は、後述するように、製造したい最終製品の形状から求めることが可能である。従来では、試行錯誤(トライ&エラー)で最適値を決めている。
【0016】
本願では、このような試行錯誤的な工程を省いて、ツールパスPn等の制御データを決定論的に決める方法の一つとしての独創的な方法を提供する。
【0017】
<B.プロセス原理>
レーザにより金属パウダーおよび基材が溶融される。このように金属パウダーを基材に吹き付けて、融合させながら体積を拡大していく。パウダーは、重力方向に対して積み上げたほうがよい(制約条件)。
【0018】
材料の融点以上の温度にしないと、材料パウダーは溶融しない。基材が加熱され過ぎないよう、なるべく早く冷却・固化する。つまり、熱を加え、その直後、冷却の効果を施す必要がある。ノズルから吐出されたパウダー(液状)は基材に付着・融合して、溶融点から輻射熱として放熱されるのと同時に、材料中に生じる温度差による熱伝導で溶融点の温度が低下し材料表面から放熱される2つの作用により冷却され、その結果、固化する(ソリッド化)。
【0019】
具体的には、パウダーを吐出するノズルを予め定められた方向に移動しつつ、ノズルの先端から、レーザ光、金属のパウダーとキャリア用のガス、およびシールド用のガスを吐出する。これにより、ワークの表面に溶融点が形成され、その結果、金属のパウダーが溶着する。
【0020】
<C.プロセスにおけるパラメータ>
付加製造技術によって物体を造形するプロセスに関連しているパラメータは約19種類あると言われている。代表的なパラメータとして、パウダーを吐出するためのノズルの送り速度、パウダーを溶かすためのレーザの走査(溶融する面積を大きくするためのスキャン)、パウダーの単位時間当たりの供給量、レーザの単位時間当たりの出力等が挙げられる。
【0021】
このようなパラメータに具体的な数値を入れて付加製造装置の制御プログラムを動作させると、付加製造技術における1つのプロセスが得られる。ただし、所望とする結果物が得られるとは限らない。しかしながら、パラメータの組み合わせは、無制限にあるものではない。試行錯誤を繰り返すことにより、プロセスを所望とする結果に近付けることが可能である。なお、プロセスが成功か失敗かの判断基準としては、製品(結果物)の強度、製品の金属組織の緻密さ等の様々な要素が挙げられる。
【0022】
上記のプロセスによって、最終製品に近い形状が出来上がる(「準最終製品(near net shape)」とも称される)。準最終製品の表面粗さ及び寸法精度の改善のため、従来方法による切削、研削が必要となる場合もある。
【0023】
また、付加製造技術によって製造されるものは、形状が一定のものだけではい。形状に合わせて、レーザ出力(エネルギー)を調整する等、パラメータを動的に変化させる場合がある(「ダイナミカリー・アディティブ・コントロール」とも称する)。
【0024】
<D.要件>
パウダー供給装置を、従来から知られている工作機械(例として、5軸の工作機械)に搭載し、ノズルの移動とパウダーの供給とを同期させて動かす。本実施の形態に係る工作機械では、ノズルをどの位の速度で空間内を動かすのか、どのくらいの量のパウダーをノズルから吐出させるのか、どの位の出力のレーザを照射してパウダーを溶融するかを、時間軸に沿って、全てコンピュータ制御できるようになっている。
【0025】
レーザの出力(強度)、およびパウダーの供給量等を決定する前に、ツールパスPn(ノズルのパス)を決める必要がある(第1の要件)。ノズルが3次元形状の輪郭を形成可能な動きをするツールパスPnを作ることが最初の段階で非常に重要となる。ツールパスPnを決定した後、パウダー供給量と、レーザの出力とを決める。パウダーの供給量が多ければ、パウダーの溶融・固化が不十分にならないようレーザ強度を高める必要がある。パウダーの供給量が少ない場合、レーザが強ければ、パウダーは蒸発してしまうためレーザ強度を低くする必要がある。
【0026】
このように、生成したツールパスPnに基づき、パウダー供給量とレーザ出力とが同期するように決定していく(パラメータの最適化方法(第2の要件))。
【0027】
温度が非常に高くないと基材に付着しないパウダーもある。また、温度が高すぎると、溶融したパウダーが固まった場合に形成される金属の結晶粒子が大きくなり、製品の強度的に問題になる場合がある。したがって、パウダーを基材に適切に付着させるとともに、製品の強度を高めるためには、パウダーを付着させる際の温度(詳しくは、レーザ出力)を最適化する必要がある。さらに、パウダーを付着された基材の冷却速度も製品の強度に影響するため、当該冷却速度についても最適化する必要がある。(第3の要件)。詳しくは、第2の要件で決めた条件の下、最終製品として所定の品質を満たしたものにするためには、熱の移動現象を考慮した制御が必要になる(進化工程)。
【0028】
<E.アプローチ>
(1)第1のアプローチ
幾何学的な処理に基づきツールパスPn(ノズルのパス)を生成する。
【0029】
(2)第2のアプローチ
ノズルの動きに伴う材料(金属)の堆積を制御する。機械の動きと、形状(配置)と、材料の堆積とを関連づけて処理する。なお、複雑な熱および物質移動の動力学は無視してもよい。
【0030】
(3)第3のアプローチ
プロセス制御を改良するための、システムの改良モデルを追加する。システムのより完全な制御モデルを構築するため、熱および物質の移動現象モデルを導入する。
【0031】
第1のアプローチおよび第2のアプローチに対して、第3のアプローチを追加することにより、より優れた(より完全な)技術となり得る。
【0032】
<F.手法>
(1)どのようにノズルを動かすか、また、ノズルの動きに同期して、どの位の量のパウダーを供給すべきかを、まず決める。
【0033】
通常の工作機械における加工は、付加製造とは逆の除去加工(Subtractive)である。除去加工は、典型的には、金属切削である。除去加工では、素材(金属または合金の塊からなる粗材)から始まり、たとえば円筒形の形状を作るとなると、工具で不要な箇所を削り取って、切りくずにしていく。
【0034】
一方、付加製造技術の場合、ノズルを円筒形に相当する動きをさせながら、パウダーを基材に吹き付けて造形する。
【0035】
付加製造の場合、空間のどこからパウダーを供給し始めるか、どのようにノズルを動かすか、どの位の量のパウダーを供給するかを、実際に作りたいもの(ユーザが所望とする品物)に基づいて決める必要がある。
【0036】
(2)
図1は、ツールパスPn(ノズルのパス)の作り方を説明するためのフローチャートである。
図1を参照して、ステップS1において、工作機械(典型的には、数値制御装置)は、除去加工ツールパスの生成のため、幾何学プロセスを実行する。ステップS2において、工作機械は、除去加工のシミュレーションを実行する。
【0037】
ステップS3において、工作機械は、ツールパスの配列を逆にする(逆の経路を算出する)。ステップS4において、工作機械は、付加製造処理(付加成形)のパラメータを最適化する。ステップS5において、工作機械は、付加製造処理プログラムおよび実行可能なNC(Numerical Control)プログラムを生成する。
【0038】
また、ステップS2からステップS4の間においては、工作機械は、ステップS6に示すように、ツールパスと、材料除去についての時間と位置との相関データとを抽出する。このように、付加製造処理の制御パラメータにおいて実際に使用されるデータを、除去加工シミュレーションから得る。
【0039】
(3)
図2は、本実施の形態に係る工作機械において実行される処理の流れを説明するための図である。また、
図2は、
図1のステップS2に示した除去加工のシミュレーションについて説明するためのものでもある。また、以下では、付加製造技術で円柱形の準最終製品を生成する場合について説明する。
【0040】
まず、ユーザが、円柱の形状データをCAD(computer-aided design)で生成する。その後、当該形状データをCAM(computer aided manufacturing)への入力データとする。これにより、円柱を切削したときのシミュレーションを実行することができる。なお、CAMは、工作機械の数値制御装置にインストールされていてもよいし、あるいは、工作機械と通信可能な情報処理装置にインストールされていてもよい。
【0041】
図2を参照して、状態(A)〜(C)に示すとおり、仮想の素材(ストック)を設定し、決定された切削パスに沿って、これを工具(エンドミル)で削り取って、最終的には切屑のみとなる。なお、これらの処理は、一般に流通しているCAM(金属切削の三次元的なシミュレーションが可能なソフトウェエア)で行なうため、実際の加工が行われるものではない。
【0042】
上記シミュレーションでは円柱形の準最終製品が全て切粉になるため、切削によって最終製品を作るという点では、上記シミュレーションは必要とされない工程である。しかしながら、このシミュレーションは、付加製造技術において、意味がある。以下、説明する。
【0043】
上記のシミュレーションの過程を、逐一コンピュータ(数値制御装置)のメモリに記憶させる。工具の移動および姿勢の変化に伴う切粉の生成量(即ち金属の除去量)を、工具の移動経路とともにメモリに記憶する。
【0044】
コンピュータは、素材が全部なくなるまでの情報を格納しているため、これらの情報を時間的に逆向きに再生する。このように、時間的に逆向き並べ替えて、逐一とったデータを並べていくと、ノズルパスと除去量の関係が分かる。最終的には、最初の形状に戻る。
【0045】
素材を削り取って空になる過程を逆向きに再生すれば(状態(D))、元に戻る。これが、アディティブの場合には、「空間にその量のパウダーを吐出すると、最終的に欲しかった形状が得られる」ことに対応する。
【0046】
切粉の除去量は、シミュレーションで取得する。工具と素材とがオーバラップした範囲が、どの位の量(体積)かで判断できる。
【0047】
ツールパスPnは、CAMで生成される。通常、形状に応じて最適なパスが、自動的に設定される。
【0048】
工具については、送り速度、径(太さ)が重要な要素となる。これらの情報から算出される工具と素材のオーバラップ範囲によって、除去量が決定される。時間的に除去量が変化する。除去量は、「切削条件」によって変化する。また、CAMでは、切削量(単位時間)を設定すると、送り速度等が自動的に決まる。本実施の形態では、切粉の除去量に基づいてパウダーの供給量が決定される。
【0049】
<G.材料の堆積制御>
(1)本実施の形態では、上述した19種類のパラメータのうち3つの重要なパラメータとして、ノズルの移動速度と、レーザの出力(パワー)と、パウダーの供給量とを決める必要がある。
【0050】
工具の移動に伴う切粉の量(すなわち、除去量)が決まる。この量が、ノズルの移動に伴うパウダーの供給量と相関性を有する。パウダーを溶融するのに必要なレーザ出力は、切粉の量に基づいて算出可能である。
【0051】
切削加工の際、移動経路の形状が複雑であったり移動経路が直線状でない場合には、工具の移動に伴い著しく切粉の生成量が変わる。一方、付加製造の場合、パウダー供給量を瞬間的に変えることは困難である。
【0052】
そのため、付加製造ではパウダーの供給量が一定になるように、ノズルの移動速度を変化させる方が高品質な製品を製造し易い。即ち、単位面積当たりのパウダーの堆積量を増やす場合にはノズルの移動速度を落とし、当該堆積量を減らす場合にはノズルの移動速度を上げる。別の解決手段として、CAMで切削加工情報を生成する際には、切粉の生成量が一定になるように工具の移動速度および経路を生成してもよい。
【0053】
(2)パウダーフローレートを制御しながら、常に一定のフローが得られるようにして、どの位置にどのくらいの量のパウダーを供給するかを制御する。これらが決まると、レーザの出力を決める。なお、ノズルの移動速度とレーザパワーとは、短時間で自在に切り替えることができる。その一方で、パウダーのフローレートを変化させるのは容易ではない。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、付加する固形の材料と、シミュレーションにおいて除去した固形の材料の体積が一致する点に着目している。すなわち、切粉(チップ)の除去量をアディティブのパウダー供給量とする。本実施の形態では、所望の堆積量を得るためにツールパスPnに沿って付加する必要のあるパウダー供給量を予測する。さらに、堆積するパウダーを溶融するために必要なレーザ出力を予測する。
【0055】
<H.実装等>
上述した処理は、CAMに対して機能(プログラムモジュール)を追加することにより実現できる。すなわち、CAMのオペレーティングシステム上で、プログラムモジュールが実行される。
【0056】
このようなプログラムモジュールがインストールされるのは、上述したように、CAMがインストールされた数値制御装置を内蔵した工作機械、あるいは、工作機械と通信または外部記憶媒体を介してデータ転送可能なコンピュータであってもよい。
【0057】
メリットとして、従来の切削用のCAMのプログラムを利用できる点が挙げられる。つまり、機能(プログラムモジュール)を追加するだけで、切削用のCAMを付加製造用のCAMに変更することが可能となる。
【0058】
<I.特徴的構成>
(1)本実施の形態に係る制御データの生成方法(あるいは、情報処理装置、工作機械、プログラム)は、もともと形状があって、そこから切削(除去)するようなパスをCAMで生成して、それを逆方向に再生して、付加製造のツールパスPnを生成する。製品の形状をデータで取得して、そのデータを基に、CAMで仮想的に切削するパス(切削パス)を、自動または手動で生成する。制御データの生成方法は、その逆再生で付加製造のパスを生成する。
【0059】
なお、上述したように、ユーザがCADで形状を作成し、CADのデータ(形状データ)をCAMソフトで処理することにより、ツールパスPn(アディティブのツールパス)が生成される。
【0060】
本実施の形態に係る制御データの生成方法では、ツールパスPnが決定すると、プログラムモジュールによって、パウダーの供給量と、ノズルの移動速度と、レーザの出力(強度,パワー)とが決定される。詳しくは、ツールパスPnの生成方法では、プログラムモジュールが、切粉の除去量のシミュレーション結果に基づき上記の制御データ(詳しくは、変数の値)を決定する。なお、ノズルの向き(パウダーの吐出方向)は、重力の向き(鉛直下向き)とする。
【0061】
(2)ツールパスPnの決定について
ツールパスPn(付加製造のパス)が、CAMにおけるシミュレーションの際の切削のパスに対して、単なる逆向き(反対の経路)ではないような構成も採用しうる。たとえば付加製造方式が指向性エネルギー堆積法である場合には、粉体を空間に噴出する方式であるため、重力方向に噴出させたほうが安定にワーク表面に着地させられるからである。
【0062】
詳しくは、本実施の形態に係るツールパスPnの生成方法では、工具の先端点(刃先位置)が、レーザの照射位置と一致するようにツールパスPn(アディティブのパス)を生成する。
【0063】
<J.工作機械の外観および内部構造>
図3は、複合材を製造するための工作機械1の外観および内部構造を説明するための概要図である。
図3を参照して、工作機械1は、オペレーティングシステム11と、スプラッシュガード12と、主軸頭13と、主軸14と、回転装置18と、扉19と、テーブル装置20とを備える。
【0064】
テーブル装置20は、回転テーブル16と、回転テーブル16を回転可能に支持する台座17とを有する。テーブル装置20は、回転装置18に取り付けられている。詳しくは、台座17が回転装置18の中央部に固定されている。
【0065】
オペレーティングシステム11は、従来の操作盤の役割を果たす数値制御装置である。オペレーティングシステム11は、ユーザが設計したプログラム等を実行することにより、工作機械1の全体の動作を制御する。たとえば、オペレーティングシステム11は、主軸頭13、主軸14、回転装置18、扉19、テーブル装置20、後述する付加製造装置30の動作を制御する。なお、オペレーティングシステム11は、周知のシステムであるので、ここでは詳しくは説明しない。
【0066】
主軸頭13は、図示しないクロスレールに取り付けられている。主軸頭13は、矢印901に示す軸方向(X軸方向)および矢印902に示す軸方向(Y軸方向)にスライド移動可能に設けられている。主軸頭13には、主軸14が取り付けられている。
【0067】
主軸14は、矢印903に示す軸方向(Z軸方向)にスライド移動可能に設けられている。主軸14は、先端に、工具が取り付けられた工具ホルダを装着するための機構を有する。
【0068】
工具ホルダの例としては、付加製造技術を実行するための付加製造装置30(
図4)、工具マガジン(図示せず)に格納されている工具ホルダ(たとえば、エンドミルを備えた工具ホルダ40(
図5))が挙げられる。なお、付加製造装置30以外の工具ホルダは、自動工具交換装置21(
図5)によって、主軸14に取り付けられる。
【0069】
工具マガジンは、扉19に対して加工領域とは反対側(すなわち
図3における扉19の奥側)に配置されている。なお、「加工領域」とは、スプラッシュガード12および扉19によって仕切られる空間(工作機械1の内部側の空間)であって、主軸頭13、主軸14、回転装置18、テーブル装置20、付加製造装置30、ワーク等が移動可能に配置される空間を指す。
【0070】
主軸頭13および主軸14の各々には、スライド移動を可能とするための送り機構や案内機構、サーボモータなどが適宜、設けられている。工作機械1においては、主軸頭13および主軸14の各々のスライド移動が組み合わさることにより、工具ホルダに取り付けられた工具の位置をXYZ空間において自在に変化させることができる。
【0071】
回転装置18は、X軸方向に延びる中心軸を中心に、モータ駆動により回転可能に設けられている。回転装置18の回転とともに、テーブル装置20が当該中心軸を中心にして、時計および半時計方向(矢印904の方向)に回転する。
【0072】
テーブル装置20の回転テーブル16は、デフォルト状態である
図3の状態においては、鉛直(Z軸)方向に延びる中心軸を中心に、モータ駆動により回転可能に設けられている。なお、回転テーブル16は、回転装置18によって矢印904の方向に回転するため、回転テーブル16の回転の中心軸はYZ平面に平行な状態を保ちながら変化する。
【0073】
回転テーブル16上には、チャックや各種の治具を用いて、ワークが保持される。固定工具を用いた切削加工時、回転テーブル16の回転とともにワークが当該中心軸を中心にして時計および半時計方向(矢印905の方向)に回転する。
【0074】
以上のような構成により、工作機械1は、加工領域内に設置されたワーク等の部材の姿勢を変更することが可能となる。
【0075】
図4は、主軸14に付加製造装置30が取り付けられた状態を表した図である。
図4を参照して、付加製造装置30は、吐出部310と、取付部320と、ホース部330とを備える。
【0076】
詳細については後述するが、吐出部310の先端部311から金属のパウダー等が吐出される。取付部320は、付加製造装置30を主軸14に固定させるための部材である。ホース部330は、パウダー等の供給路である。ホース部330は、パウダー等が格納された装置(図示せず)から、取付部320を介してパウダー等を吐出部310に供給するために設けられている。
【0077】
工作機械1は、付加製造装置30を使用しない場合には、付加製造装置30を付加製造装置用のホルダ39に収容する(
図5参照)。なお、ホルダ39は、付加製造装置30を収容するために、XY平面に平行な状態を保ちながら回転軸を中心に回転可能に構成されている。つまり、ホルダ39は、Z軸に平行な軸を中心に回転する。
【0078】
図5は、主軸14に工具ホルダ40が取り付けられた状態を表した図である。
図5を参照して、オペレーティングシステム11は、扉19を開く制御を行ない、その後、自動工具交換装置によって工具ホルダ40を主軸14に取り付けさせる。なお、工具ホルダ40の交換は、付加製造装置30をホルダ39に格納した状態で行なわれる。
【0079】
<K.ハードウェア構成>
図6は、工作機械1のハードウェア構成の概要を表した図である。
図6を参照して、工作機械1は、オペレーティングシステム11と、主軸頭13と、主軸14と、回転装置18と、テーブル装置20と、自動工具交換装置21と、工具マガジン22と、付加製造装置30とを備える。
【0080】
オペレーティングシステム11は、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリ92と、通信IF(InterFace)93と、ディスプレイ94と、操作キー95とを有する。
【0081】
CPU91は、メモリ92に格納された各種プログラムを実行することにより、通信IF93を介して、工作機械1の各部の動作を制御する。ディスプレイ94は、工作機械1における各種の情報を工作機械1のユーザに視認可能に表示する。操作キー95は、ユーザによる様々な入力(たとえば、加工開始の入力)を受け付ける。
【0082】
詳しくは、オペレーティングシステム11のメモリ92には、CAMと、上述した逆再生を利用した付加製造技術を実行するためのプログラムモジュールとが格納されている。なお、オペレーティングシステム11がユーザからの指示に応じた処理を実行することにより、準最終製品または最終製品が製造される。
【0083】
<L.詳細例>
以下では、付加製造技術で円筒形の準最終製品を生成する場合について説明する。なお、
図7は、
図2の状態(A)〜(C)に対応し、
図8は、
図2の状態(D)に対応する。ただし、
図7,8は、円筒形の準最終製品を製造する点において、円柱の準最終製品を製造する
図2とは異なる。
【0084】
(1)除去加工のシミュレーション
図7は、除去加工のシミュレーションについて説明するためのものでもある。つまり、
図7は、CAMにおけるシミュレーションを説明するための図である。
【0085】
図7を参照して、状態(A)は、CAMにて決定された切削条件(切削パスを含む)に従って、円筒形の素材500(仮想的な素材)を上端から約三分の一だけ切削したときの状態を表している。パスPsは、切削を開始するまでの仮想的な工具600(たとえば、エンドミル)の先端のパスを表している。つまり、パスPsは、工具600の先端が素材500の上端に接するまでのパスを表している。パスPtaは、切削パスPt(
図7の状態(C)参照)の一部を表している。すなわち、パスPtaは、CAMで決定された切削パスPtのうち、工具600が既に移動した部分のパスを示している。
【0086】
状態(B)は、状態(A)から切削がさらに進行したときの状態を表している。具体的には、状態(B)は、素材500を上端から約三分の二だけ切削したときの状態を表している。パスPtbは、切削パスPtの一部を表している。すなわち、パスPtbは、切削パスPtのうち、工具600が既に移動した部分のパスを示している。
【0087】
状態(C)は、状態(B)から切削がさらに進行したときの状態を表している。具体的には、状態(C)は、素材500の全てを切削したときの状態を表している。以上により、円筒形の素材500が工具600によって完全に削り取られ、その結果、素材500が消滅する。
【0088】
工作機械1のオペレーティングシステム11は、上記の切削パスPtに沿って工具600を移動させたときに除去される切粉の量(単位時間当たりの除去量)を、工具600の位置(切削パスPt上における位置)および工具600の送り速度等に関連付けて記憶する。なお、工具600の送り速度もCAMによって決定することができる。また、除去量は、上述したように、CAMでのシミュレーションにて算出された値である。
【0089】
(2)付加製造による準最終製品の製造工程
オペレーティングシステム11は、上述した逆再生を利用した付加製造技術を実行するためのプログラムモジュールを実行して、ツールパスPnを含む制御データを生成する。具体的には、上述したように、オペレーティングシステム11は、切削パスPt(
図7の状態(C)を参照)を時間的に遡る向きに再生することにより、指定された形状としての円筒(素材500と同一形状)を生成する際に利用するツールパスPnを決定する。あわせて、オペレーティングシステム11は、パウダー供給量、レーザの出力等の制御データの値も決定する。
【0090】
図8は、ツールパスPnに沿ってノズル(詳しくは、付加製造装置30)を移動させることにより、円筒形状の準最終製品700を付加製造によって製造する過程を表した図である。
【0091】
状態(A)は、ツールパスPnに沿って付加製造装置30を移動させることにより、指定された形状としての円筒の約三分の一の高さの中間体700Aが生成されたときの状態を表している。状態(B)は、ツールパスPnに沿って付加製造装置30を状態(A)よりもさらに移動させることにより、指定された形状としての円筒の約三分の二の高さの中間体700Bが生成されたときの状態を表している。
【0092】
状態(C)は、ツールパスPnに沿って付加製造装置30を状態(B)よりもさらに移動させることにより、円筒形状の準最終製品700の製造が終了した直後の状態を表している。
【0093】
以上のように、オペレーティングシステム11は、切削パスPtを時間的に遡る向きに再生することにより、ノズルのパスであるツールパスPnを決定する。その後、オペレーティングシステム11は、決定されたツールパスPnに沿ってノズルを移動させることにより、指定された形状の準最終製品を工作機械1によって生成する。
【0094】
<M.機能的構成>
図9は、オペレーティングシステム11の機能的構成を説明するための機能ブロック図である。
図9を参照して、工作機械1の制御装置(コントローラ)としてのオペレーティングシステム11は、シミュレーション実行部110と、制御データ生成部120と、付加製造制御部130と、切削パス決定部140とを備える。
【0095】
制御データ生成部120は、ツールパス決定部121と、パウダー供給量決定部122と、レーザパワー決定部123とを有する。
【0096】
切削パス決定部140は、CADデータに基づいて切削パスを決定する。切削パス決定部140は、CADデータに基づいて切削パスを自動的に決定してもよいし、あるいはユーザ入力(マニュアル操作)に基づき切削パスを決定してもよい。切削パス決定部140は、切削パスを一意に決定できる構成であればよい。
【0097】
シミュレーション実行部110は、CADデータに基づき、切削のシミュレーションを行なう。具体的には、シミュレーション実行部110は、設定された切削パスに沿った切削のシミュレーションを実行する。
【0098】
シミュレーションの実行により、切削パス、切粉の除去量、工具の送り速度等の情報が得られる。シミュレーション実行部110は、これらのシミュレーション結果を、制御データ生成部120に送る。
【0099】
制御データ生成部120は、CADデータに基づく形状(指定された形状)の製品を付加製造で製造するための制御データを生成する。ツールパス決定部121は、切削パスを時間的に遡る向きに再生することにより、付加製造時におけるノズル(詳しくは、付加製造装置30)のパスであるツールパスPnを決定する。
【0100】
パウダー供給量決定部122は、パウダーの供給量を決定する。詳しくは、パウダー供給量決定部122は、ツールパスPn上の各位置におけるパウダーの供給量を決定する。なお、典型的には、パウダー供給量決定部122は、ツールパスPn上の各位置における供給量を一定に定める。
【0101】
レーザパワー決定部123は、レーザの出力を決定する。詳しくは、レーザパワー決定部123は、ツールパスPn上の各位置におけるレーザの出力を決定する。
【0102】
制御データ生成部120は、生成された制御データを付加製造制御部130に送る。付加製造制御部130は、制御データに基づき、付加製造装置30の動作、回転テーブル16の回転角度、および回転装置18の回転角度等を制御する。これにより、CADデータで示される形状と概略同一の準最終製品が生成される。また、工作機械1の加工領域内で工具を用いた研磨等の表面加工を準最終製品に施すことによって、最終製品(CADデータの形状と同一の製品)が得られる。
【0103】
なお、制御データ生成部120の一連の処理は、オペレーティングシステム11(詳しくは、プロセッサ)が、CAMに組み込まれたプログラムを実行することにより実現される。詳しくは、制御データ生成部120の一連の処理は、プロセッサが、CAMのシステム上で実行(動作)可能に構成されたアプリケーションプログラムを実行することにより実現される。一方で、切削パス決定部140およびシミュレーション実行部110は、上記プロセッサが、CAM本体(上記組み込まれたアプリケーション以外のプログラム)を実行することにより実現される。
【0104】
<N.まとめ>
上述した制御データの生成方法における特徴的な構成を抽出すると、以下のとおりである。
【0105】
(1)制御データの生成方法は、指定された形状の製品を付加製造技術で製造するための制御データを生成するための方法である。制御データは、材料(パウダー)を吐出するノズルのパス(ツールパスPn)を含む。制御データの生成方法は、指定された形状を工具で切削するための切削パスを決定するステップと、切削パスを時間的に遡る向きに再生することにより、ノズルのパスを決定するステップとを備える。
【0106】
上記の方法によれば、付加製造技術においてユーザが指定した形状(所望する形状)を生成可能とするノズルのパスを決定することができる。
【0107】
(2)制御データの生成方法は、ノズルのパスに沿って付加製造技術を実行する際における、ノズルの移動速度と、材料の吐出量と、材料に照射するレーザの出力とを決定するステップをさらに含んでいる。これにより、ノズルのパスだけではなく、ノズルの移動速度と、材料の吐出量と、材料に照射するレーザの出力とが決定される。
【0108】
(3)切削パスを決定するステップは、切削パスに沿った切削によって指定された形状から除去された素材の量を算出するステップを含んでいる。ノズルの移動速度と、材料の吐出量と、レーザの出力とは、除去された素材の量に基づいて決定される。
【0109】
(4)ノズルのパスを決定するステップでは、レーザの照射位置が、切削パスにおける工具の刃先位置と一致するように、ノズルのパスを決定する。
【0110】
(5)切削パスは、CAMによって生成される。ノズルのパスは、CAMに組み込まれたプログラムによって決定される。
【0111】
<O.変形例>
上記においては、上記工作機械の一例として、付加製造技術(すなわち3Dプリンター)の機能を備えた5軸加工機を例に挙げて説明したが、工作機械は、5軸加工機に限定されるものではない。工作機械は、付加製造技術の機能を備えた除去加工機(たとえば、4軸加工機)であればよい。
【0112】
また、上記においては、粉体を吐出する付加製造処理(付加成形)を例に挙げて説明したが、上述した各種の処理は、線材を繰り出す形式の付加製造処理にも適用可能である。
【0113】
<P.付記>
(1)CAMにおいて、工具の向きは、レーザの向きにしてもよいし、しなくてもよい。削り取る場合には、切粉は下に落ちるため、どんな角度であってもよいが、パウダーを吹き付けるときには、重力方向にしたほうが好適である。
【0114】
(2)どの位の除去量にするかを決めれば、ツールパスPnが決まる。除去量を決定するのは、切込み(半径方向、軸方向)、送り速度である。除去量については、ユーザが決めていくことになる。除去量が決まれば、ツールパスPn、回転速度等が決まる。
【0115】
(3)パウダーフローレートが決まれば、そのパウダーを溶融し得るエネルギーの関数としてレーザパワーが決まる。
【0116】
(4)除去量一定の切削を実行するのは非常に困難である。通常、工具の移動速度を一定にして除去量は変動する。しかし、このような変動と同じようにパウダーの供給量を変化させることは難しい。そこで、一定の値になるように(パウダー供給量については一定とし)、ノズルのスピードと、レーザ強度とを変える。除去量の変化に対応させるためである。
【0117】
(5)ノズルのスピードと、レーザ出力との関連性は、シチュエーション次第で異なる。このため、事前にどのような制御をするかを事前にプログラムしておく。詳しくは、事前に相関を取ったデータを保持しておき、シチュエーションに応じて最適な条件で制御するようなプログラムを準備しておく。なお、スピードの方が、レーザ出力よりも制御しやすい。
【0118】
(6)上記実施例は、付加製造方式として指向性エネルギー堆積を利用しているが、熱溶解堆積法(fused deposition modeling)など、他の付加製造方式にも適用可能である。
【0119】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。