(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電気光学装置10の構成を示す斜視図である。
電気光学装置10は、例えばヘッドマウント・ディスプレイにおいて画像を表示するマイクロ・ディスプレイである。電気光学装置10の詳細については後述するが、複数の画素回路や当該画素回路を駆動する駆動回路などが例えばシリコン基板に形成された有機EL装置であり、画素回路には、発光素子の一例であるOLEDが用いられている。
電気光学装置10は、表示部で開口する枠状のケース72に収納されるとともに、FPC(Flexible Printed Circuits)基板74の一端が接続されている。FPC基板74には、半導体チップの制御回路5が、COF(Chip On Film)技術によって実装されるとともに、複数の端子76が設けられて、図示省略された上位回路に接続される。当該上位回路から複数の端子76を介して画像データが同期信号に同期して供給される。同期信号には、垂直同期信号や、水平同期信号、ドットクロック信号が含まれる。また、画像データは、表示すべき画像の画素の階調レベルを例えば8ビットで規定する。
制御回路5は、電気光学装置10の電源回路とデータ信号出力回路との機能を兼用するものである。すなわち、制御回路5は、同期信号にしたがって生成した各種の制御信号や各種電位を電気光学装置10に供給するほか、デジタルの画像データをアナログのデータ信号に変換して、電気光学装置10に供給する。
【0011】
図2は、第1実施形態に係る電気光学装置10の構成を示す図である。この図に示されるように、電気光学装置10は、走査線駆動回路20と、デマルチプレクサ30と、レベルシフト回路40と、表示部100とに大別される。
このうち、表示部100には、表示すべき画像の画素に対応した画素回路110がマトリクス状に配列されている。詳細には、表示部100において、m行の走査線12が図において横方向に延在して設けられ、また、3列毎にグループ化された(3n)列のデータ線14が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられている。そして、m行の走査線12と(3n)列のデータ線14との交差部に対応して画素回路110が設けられている。このため、本実施形態において画素回路110は、縦m行×横(3n)列でマトリクス状に配列されている。
【0012】
ここで、m、nは、いずれも自然数である。走査線12および画素回路110のマトリクスのうち、行(ロウ)を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m−1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110のマトリクスの列(カラム)を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(3n−1)、(3n)列と呼ぶ場合がある。また、データ線14のグループを一般化して説明するために、1以上n以下の整数jを用いると、左から数えてj番目のグループには、(3j−2)列目、(3j−1)列目および(3j)列目のデータ線14が属している、ということになる。
なお、同一行の走査線12と同一グループに属する3列のデータ線14との交差に対応した3つの画素回路110は、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の画素に対応して、これらの3画素が表示すべきカラー画像の1ドットを表現する。すなわち、本実施形態では、RGBに対応したOLEDの発光によって1ドットのカラーを加法混色で表現する構成となっている。
【0013】
本実施形態では、列毎に給電線16(第3給電線)がデータ線14に沿ってそれぞれ設けられている。各給電線16にはリセット電位としての電位Vorstが共通に給電されている。また、列毎に保持容量50が設けられている。詳細には、保持容量の一端はデータ線14に接続され、他端が給電線16に接続されている。このため、保持容量50は、データ線14の電位を保持する第2保持容量として機能する。
なお、保持容量50については、データ線14を構成する配線と、給電線16を構成する配線とで、絶縁体(誘電体)を挟持することによって形成される構成が好ましい。
また、保持容量50については、
図2では表示部100の外側に設けられているが、これはあくまでも等価回路であり、表示部100の内側に、または、内側から外側にわたって設けられも良いのはもちろんである。また、
図2では省略しているが、保持容量50の容量をCdtとする。
【0014】
さて、電気光学装置10には、次のような制御信号が制御回路5によって供給される。詳細には、電気光学装置10には、走査線駆動回路20を制御するための制御信号Ctrと、デマルチプレクサ30での選択を制御するための制御信号Sel(1)、Sel(2)、Sel(3)と、これらの信号に対して論理反転の関係にある制御信号/Sel(1)、/Sel(2)、/Sel(3)と、レベルシフト回路40を制御するための負論理の制御信号/Giniと、正論理の制御信号Grefとが供給される。なお、制御信号Ctrには、実際にはパルス信号や、クロック信号、イネーブル信号など、複数の信号が含まれる。
また、電気光学装置10には、デマルチプレクサ30での選択タイミングに合わせてデータ信号Vd(1)、Vd(2)、…、Vd(n)が、1、2、…、n番目のグループに対応して制御回路5によって供給される。なお、データ信号Vd(1)〜Vd(n)が取り得る電位の最高値をVmaxとし、最低値をVminとする。
【0015】
走査線駆動回路20は、フレームの期間にわたって走査線12を1行毎に順番に走査するための走査信号を、制御信号Ctrにしたがって生成するものである。ここで、1、2、3、…、(m−1)、m行目の走査線12に供給される走査信号を、それぞれGwr(1)、Gwr(2)、Gwr(3)、…、Gwr(m-1)、Gwr(m)と表記している。
なお、走査線駆動回路20は、走査信号Gwr(1)〜Gwr(m)のほかにも、当該走査信号に同期した各種の制御信号を行毎に生成して表示部100に供給するが、
図2においては図示を省略している。また、フレームの期間とは、電気光学装置10が1カット(コマ)分の画像を表示するのに要する期間をいい、例えば同期信号に含まれる垂直同期信号の周波数が120Hzであれば、その1周期分の8.3ミリ秒の期間である。
【0016】
デマルチプレクサ30は、列毎に設けられたトランスミッションゲート34の集合体であり、各グループを構成する3列に、データ信号を順番に供給するものである。
ここで、j番目のグループに属する(3j−2)、(3j−1)、(3j)列に対応したトランスミッションゲート34の入力端は互いに共通接続されて、その共通端子にそれぞれデータ信号Vd(j)が供給される。
j番目のグループにおいて左端列である(3j−2)列に設けられたトランスミッションゲート34は、制御信号Sel(1)がHレベルであるとき(制御信号/Sel(1)がLレベルであるとき)にオン(導通)する。同様に、j番目のグループにおいて中央列である(3j−1)列に設けられたトランスミッションゲート34は、制御信号Sel(2)がHレベルであるとき(制御信号/Sel(2)がLレベルであるとき)にオンし、j番目のグループにおいて右端列である(3j)列に設けられたトランスミッションゲート34は、制御信号Sel(3)がHレベルであるとき(制御信号/Sel(3)がLレベルであるとき)にオンする。
【0017】
レベルシフト回路40は、保持容量44とPチャネルMOS型のトランジスター45とNチャネルMOS型のトランジスター43との組を列毎に有し、各列のトランスミッションゲート34の出力端から出力されるデータ信号の電位をシフトするものである。ここで、保持容量44の一端は、対応する列のデータ線14とトランジスター45のドレインノードとに接続される一方、保持容量44の他端は、トランスミッションゲート34の出力端とトランジスター43のドレインノードとに接続される。このため、保持容量44は、一端がデータ線14に接続された第1保持容量として機能する。
図2では省略しているが、保持容量44の容量をCrf1とする。
【0018】
各列のトランジスター45のソースノードは、初期電位として電位Viniを給電する給電線61に各列にわたって共通に接続され、ゲートノードには、制御信号/Giniが各列にわたって共通に供給される。このため、トランジスター45は、データ線14と給電線61とを、制御信号/GiniがLレベルのときに電気的に接続し、制御信号/GiniがHレベルのときに電気的に非接続とする構成となっている。
また、各列のトランジスター43のソースノードは、所定電位として電位Vrefを給電する給電線62に各列にわたって共通に接続され、ゲートノードには、制御信号Grefが各列にわたって共通に供給される。このため、トランジスター43は、保持容量44の他端であるノードhと給電線62とを、制御信号GrefがHレベルのときに電気的に接続し、制御信号GrefがLレベルのときに電気的に非接続とする構成となっている。
【0019】
本実施形態では、便宜的に走査線駆動回路20、デマルチプレクサ30およびレベルシフト回路40に分けているが、これらについては、画素回路110を駆動する駆動回路としてまとめて概念することが可能である。
【0020】
図3を参照して画素回路110について説明する。各画素回路110については電気的にみれば互いに同一構成なので、ここでは、i行目であって、j番目のグループのうち左端列の(3j−2)列目に位置するi行(3j−2)列の画素回路110を例にとって説明する。
なお、iは、画素回路110が配列する行を一般的に示す場合の記号であって、1以上m以下の整数である。
【0021】
図3に示されるように、画素回路110は、PチャネルMOS型のトランジスター121〜125と、OLED130と、保持容量132とを含む。この画素回路110には、走査信号Gwr(i)、制御信号Gel(i)、Gcmp(i)、Gorst(i)が供給される。ここで、走査信号Gwr(i)、制御信号Gel(i)、Gcmp(i)、Gorst(i)は、それぞれi行目に対応して走査線駆動回路20によって供給されるものである。このため、走査信号Gwr(i)、制御信号Gel(i)、Gcmp(i)、Gorst(i)は、i行目であれば、着目している(3j−2)列以外の他の列の画素回路にも共通に供給される。
【0022】
i行(3j−2)列の画素回路110におけるトランジスター122にあっては、ゲートノードがi行目の走査線12に接続され、ドレインまたはソースノードの一方が(3j−2)列目のデータ線14に接続され、他方がトランジスター121におけるゲートノードgと、保持容量132の一端と、トランジスター123のドレインノードとにそれぞれ接続されている。ここで、トランジスター121のゲートノードについては、他のノードと区別するためにgと表記する。
トランジスター121にあっては、ソースノードが給電線116に接続され、ドレインノードがトランジスター123のソースノードと、トランジスター124のソースノードとにそれぞれ接続されている。ここで、給電線116には、画素回路110において電源の高位側となる電位Velが給電される。
トランジスター123にあって、ゲートノードには制御信号Gcmp(i)が供給される。
トランジスター124にあって、ゲートノードには制御信号Gel(i)が供給され、ドレインノードがトランジスター125のソースノードとOLED130のアノードとにそれぞれ接続されている。
トランジスター125にあって、ゲートノードにはi行目に対応した制御信号Gorst(i)が供給され、ドレインノードは(3j−2)列目に対応した給電線16に接続されて電位Vorstに保たれている。
【0023】
ここで、トランジスター121が第1トランジスターに相当し、トランジスター122が第2トランジスターに相当し、トランジスター123が第3トランジスターに相当する。また、トランジスター125が第4トランジスターに相当し、トランジスター124が第5トランジスターに相当する。
【0024】
保持容量132の他端は、給電線116に接続される。このため、保持容量132は、トランジスター121のソース・ドレイン間の電圧を保持することになる。ここで、保持容量132の容量をCpixと表記したとき、保持容量50の容量Cdtと、保持容量44の容量Crf1と、保持容量132の容量Cpixとは、
Cdt>Crf1>>Cpix
となるように設定される。
すなわち、CdtはCrf1よりも大きく、CpixはCdtおよびCrf1よりも十分に小さくなるように設定される。
なお、保持容量132としては、トランジスター121のゲートノードgに寄生する容量を用いても良いし、シリコン基板において互いに異なる導電層で絶縁層を挟持することによって形成される容量を用いても良い。
【0025】
本実施形態において電気光学装置10はシリコン基板に形成されるので、トランジスター121〜125の基板電位については電位Velとしている。
【0026】
OLED130のアノードは、画素回路110毎に個別に設けられる画素電極である。これに対して、OLED130のカソードは、画素回路110のすべてにわたって共通の共通電極118であり、画素回路110において電源の低位側となる電位Vctに保たれている。
OLED130は、上記シリコン基板において、アノードと光透過性を有するカソードとで白色有機EL層を挟持した素子である。そして、OLED130の出射側(カソード側)にはRGBのいずれかに対応したカラーフィルターが重ねられる。
このようなOLED130において、アノードからカソードに電流が流れると、アノードから注入された正孔とカソードから注入された電子とが有機EL層で再結合して励起子が生成され、白色光が発生する。このときに発生した白色光は、シリコン基板(アノード)とは反対側のカソードを透過し、カラーフィルターによる着色を経て、観察者側に視認される構成となっている。
【0027】
<第1実施形態の動作>
図4を参照して電気光学装置10の動作について説明する。
図4は、電気光学装置10における各部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
この図に示されるように、走査信号Gwr(1)〜Gwr(m)が順次Lレベルに切り替えられて、1フレームの期間において1〜m行目の走査線12が1水平走査期間(H)毎に順番に走査される。
1水平走査期間(H)での動作は、各行の画素回路110にわたって共通である。そこで以下については、i行目が水平走査される走査期間において、特にi行(3j−2)列の画素回路110について着目して動作を説明する。
【0028】
本実施形態ではi行目の走査期間は、大別すると、
図4において(b)で示される初期化期間と(c)で示される補償期間と(d)で示される書込期間とに分けられる。そして、(d)の書込期間の後、間をおいて(a)で示される発光期間となり、1フレームの期間経過後に再びi行目の走査期間に至る。このため、時間の順でいえば、(発光期間)→初期化期間→補償期間→書込期間→(発光期間)というサイクルの繰り返しとなる。
なお、
図4において、i行目に対し1行前の(i−1)行目に対応する走査信号Gwr(i-1)、制御信号Gel(i-1)、Gcmp(i-1)、Gorst(i-1)の各々については、i行目に対応する走査信号Gwr(i)、制御信号Gel(i)、Gcmp(i)、Gorst(i)よりも、それぞれ時間的に1水平走査期間(H)だけ時間的に先行した波形となる。
【0029】
<発光期間>
説明の便宜上、初期化期間の前提となる発光期間から説明する。
図4に示されるように、i行目の発光期間では、走査信号Gwr(i)がHレベルであり、制御信号Gel(i)はLレベルである。また、論理信号である制御信号Gel(i)、Gcmp(i)、Gorst(i)のうち、制御信号Gel(i)がLレベルであり、制御信号Gcmp(i)、Gorst(i)がHレベルである。
このため、
図5に示されるようにi行(3j−2)列の画素回路110においては、トランジスター124がオンする一方、トランジスター122、123、125がオフする。したがって、トランジスター121は、ゲート・ソース間の電圧Vgsに応じた電流IdsをOLED130に供給する。後述するように、本実施形態において発光期間での電圧Vgsは、トランジスター121の閾値電圧から、データ信号の電位に応じてレベルシフトした値である。このため、OLED130には、階調レベルに応じた電流がトランジスター121の閾値電圧を補償した状態で供給されることになる。
【0030】
なお、i行目の発光期間は、i行目以外が水平走査される期間であるから、データ線14の電位は適宜変動する。ただし、i行目の画素回路110においては、トランジスター122がオフしているので、ここでは、データ線14の電位変動を考慮していない。
また、
図5においては、動作説明で重要となる経路を太線で示している(以下の
図6〜
図8、
図13〜
図16においても同様である)。
【0031】
<初期化期間>
次にi行目の走査期間に至ると、まず、第1期間として(b)の初期化期間が開始する。初期化期間では、発光期間と比較して、制御信号Gel(i)がHレベルに、制御信号Gorst(i)がLレベルに、それぞれ変化する。
このため、
図6に示されるように、i行(3j−2)列の画素回路110においてはトランジスター124がオフし、トランジスター125がオンする。これによってOLED130に供給される電流の経路が遮断されるとともに、OLED130のアノードが電位Vorstにリセットされる。
OLED130は、上述したようにアノードとカソードとで有機EL層を挟持した構成であるので、アノード・カソードの間には、図において破線で示されるように容量Coledが並列に寄生する。発光期間においてOLED130に電流が流れていたときに、当該OLED130のアノード・カソード間の両端電圧が当該容量Coledによって保持されるが、この保持電圧は、トランジスター125のオンによってリセットされる。このため、本実施形態では、後の発光期間においてOLED130に再び電流が流れるときに、当該容量Coledで保持されている電圧の影響を受けにくくなる。
【0032】
詳細には、例えば高輝度の表示状態から低輝度の表示状態に転じるときに、リセットしない構成であると、輝度が高い(大電流が流れた)ときの高電圧が保持されてしまうので、次に、小電流を流そうとしても、過剰な電流が流れてしまって、低輝度の表示状態にさせることができなくなる。これに対して、本実施形態では、トランジスター125のオンによってOLED130のアノードの電位がリセットされるので、低輝度側の再現性が高められることになる。
なお、本実施形態において、電位Vorstについては、当該電位Vorstと共通電極118の電位Vctとの差がOLED130の発光閾値電圧を下回るように設定される。このため、初期化期間(次に説明する補償期間および書込期間)において、OLED130はオフ(非発光)状態である。
【0033】
一方、初期化期間では、制御信号/GiniがLレベルになり、制御信号GrefがHレベルになるので、レベルシフト回路40においては、
図6に示されるようにトランジスター45、43がそれぞれオンする。このため、保持容量44の一端であるデータ線14は電位Viniに、保持容量44の他端であるノードhは電位Vrefに、それぞれ初期化される。
【0034】
本実施形態において電位Viniについては、(Vel−Vini)がトランジスター121の閾値電圧|Vth|よりも大きくなるように設定される。なお、トランジスター121はPチャネル型であるので、ソースノードの電位を基準とした閾値電圧Vthは負である。そこで、高低関係の説明で混乱が生じるのを防ぐために、閾値電圧については、絶対値の|Vth|で表し、大小関係で規定することにする。
また、本実施形態において電位Vrefについては、データ信号Vd(1)〜Vd(n)が取り得る電位に対して、後の書込期間においてノードhの電位が上昇変化するような値に、例えば最低値Vminよりも低くなるように設定される。
【0035】
<補償期間>
i行目の走査期間では、次に第2期間として(c)の補償期間となる。補償期間では初期化期間と比較して、走査信号Gwr(i)および制御信号Gcmp(i)がLレベルとなる。一方、補償期間では、制御信号GrefがHレベルに維持された状態で制御信号/GiniがHレベルになる。
このため、
図7に示されるように、レベルシフト回路40においては、トランジスター43がオンした状態でトランジスター45がオフすることによって、ノードhが電位Vrefに固定される。一方、i行(3j−2)列の画素回路110ではトランジスター122がオンすることによって、ゲートノードgがデータ線14に電気的に接続されるので、補償期間の開始当初においてゲートノードgは電位Viniとなる。
【0036】
補償期間においてトランジスター123がオンするので、トランジスター121はダイオード接続となる。このため、トランジスター121にはドレイン電流が流れて、ゲートノードgおよびデータ線14を充電する。詳細には、電流が、給電線116→トランジスター121→トランジスター123→トランジスター122→(3j−2)列目のデータ線14という経路で流れる。このため、トランジスター121のオンによって互いに接続状態にあるデータ線14およびゲートノードgは、電位Viniから上昇する。
ただし、上記経路に流れる電流は、ゲートノードgが電位(Vel−|Vth|)に近づくにつれて流れにくくなるので、補償期間の終了に至るまでに、データ線14およびゲートノードgは電位(Vel−|Vth|)で飽和する。したがって、保持容量132は、補償期間の終了に至るまでにトランジスター121の閾値電圧|Vth|を保持することになる。
【0037】
<書込期間>
初期化期間の後、第3期間として(d)の書込期間に至る。書込期間では、制御信号Gcmp(i)がHレベルになるので、トランジスター121のダイオード接続が解除される一方、制御信号GrefがLレベルになるので、トランジスター43がオフになる。このため、(3j−2)列目のデータ線14からi行(3j−2)列の画素回路110におけるゲートノードgに至るまでの経路はフローティング状態になるものの、当該経路における電位は、保持容量50、132によって(Vel−|Vth|)に維持される。
【0038】
i行目の書込期間において制御回路5は、j番目のグループでいえば、データ信号Vd(j)を順番に、i行(3j−2)列、i行(3j−1)列、i行(3j)列の画素の階調レベルに応じた電位に切り替える。一方、制御回路5は、データ信号の電位の切り替えに合わせて制御信号Sel(1)、Sel(2)、Sel(3)を順番に排他的にHレベルとする。制御回路5は、
図4では省略しているが、制御信号Sel(1)、Sel(2)、Sel(3)とは論理反転の関係にある制御信号/Sel(1)、/Sel(2)、/Sel(3)についても出力している。これによって、デマルチプレクサ30では、各グループにおいてトランスミッションゲート34がそれぞれ左端列、中央列、右端列の順番でオンする。
【0039】
ここで、左端列のトランスミッションゲート34が制御信号Sel(1)、/Sel(1)によってオンしたとき、
図8に示されるように、保持容量44の他端であるノードhは、初期化期間および補償期間において固定された電位Vrefから、データ信号Vd(j)の電位に、すなわちi行(3j−2)列の画素の階調レベルに応じた電位に変化する。このときのノードhの電位変化分をΔVとして、変化後の電位を(Vref+ΔV)として表すことにする。
一方、ゲートノードgは、保持容量44の一端にデータ線14を介して接続されているので、補償期間における電位(Vel−|Vth|)から、ノードhの電位変化分ΔVに容量比k1を乗じた値だけ、上昇方向にシフトした値(Vel−|Vth|+k1・ΔV)となる。このとき、トランジスター121の電圧Vgsで絶対値で表現すると、閾値電圧|Vth|からゲートノードgの電位上昇したシフト分だけ減じた値(|Vth|−k1・ΔV)となる。
なお、容量比k1は、Crf1/(Cdt+Crf1)である。厳密にいえば、保持容量132の容量Cpixも考慮しなければならないが、容量Cpixは、容量Crf1、Cdtに比較して十分に小さくなるように設定しているので、無視している。
【0040】
図9は、書込期間におけるデータ信号の電位とゲートノードgの電位との関係を示す図である。制御回路5から供給されるデータ信号は、上述したように画素の階調レベルに応じて最小値Vminから最大値Vmaxまでの電位範囲を取り得る。本実施形態では、当該データ信号が直接ゲートノードgに書き込まれるのではなく、図に示されるようにレベルシフトされて、ゲートノードgに書き込まれる。
このとき、ゲートノードgの電位範囲ΔVgateは、データ信号の電位範囲ΔVdata(=Vmax−Vmin)に容量比k1を乗じた値に圧縮される。例えば、Crf1:Cdt=1:9となるように保持容量44、50の容量を設定したとき、ゲートノードgの電位範囲ΔVgateをデータ信号の電位範囲ΔVdataの1/10に圧縮することができる。
また、ゲートノードgの電位範囲ΔVgateを、データ信号の電位範囲ΔVdataに対してどの方向にどれだけシフトさせるかについては、電位Vp(=Vel−|Vth|)、Vrefで定めることができる。これは、データ信号の電位範囲ΔVdataが、電位Vrefを基準にして容量比k1で圧縮されるとともに、その圧縮範囲が電位Vpを基準にシフトされたものが、ゲートノードgの電位範囲ΔVgateとなるためである。
【0041】
このようにi行目の書込期間において、i行目の画素回路110のゲートノードgには、補償期間における電位(Vel−|Vth|)から、ノードhの電位変化分ΔVに容量比k1を応じた分だけシフトした電位(Vel−|Vth|+k1・ΔV)が書き込まれる。
やがて走査信号Gwr(i)がHレベルになり、トランジスター122がオフする。これによって書込期間が終了して、ゲートノードgの電位は、シフトされた値に確定する。
【0042】
<発光期間>
i行目の書込期間の終了した後、1水平走査期間の間をおいて発光期間に至る。この発光期間では、上述したように制御信号Gel(i)がLレベルになるので、i行(3j−2)列の画素回路110においては、トランジスター124がオンする。ゲート・ソース間の電圧Vgsは、(|Vth|−k1・ΔV)であるから、OLED130には、先の
図5に示したように、階調レベルに応じた電流がトランジスター121の閾値電圧を補償した状態で供給されることになる。
このような動作は、i行目の走査期間において、(3j−2)列目の画素回路110以外のi行目の他の画素回路110においても時間的に並列して実行される。さらに、このようなi行目の動作は、実際には、1フレームの期間において1、2、3、…、(m−1)、m行目の順番で実行されるとともに、フレーム毎に繰り返される。
【0043】
本実施形態によれば、ゲートノードgにおける電位範囲ΔVgateは、データ信号の電位範囲ΔVdataに対し狭められるので、データ信号を細かい精度で刻まなくても、階調レベルを反映した電圧を、トランジスター121のゲート・ソース間に印加することができる。このため、微細な画素回路110においてトランジスター121のゲート・ソース間の電圧Vgsの変化に対しOLED130に流れる微小電流が相対的に大きく変化する場合であっても、OLED130に供給する電流を精度良く制御することが可能になる。
【0044】
また、
図3において破線で示されるようにデータ線14と画素回路110におけるゲートノードgとの間には容量Cprsが実際には寄生する。このため、データ線14の電位変化幅が大きいと、当該容量Cprsを介してゲートノードgに伝播し、いわゆるクロストークやムラなどが発生して表示品位を低下させてしまう。当該容量Cprsの影響は、画素回路110が微細化されたときに顕著に現れる。
これに対して、本実施形態においては、データ線14の電位変化範囲についても、データ信号の電位範囲ΔVdataに対し狭められるので、容量Cprsを介した影響を抑えることができる。
【0045】
本実施形態によれば、トランジスター125をオンさせる期間、すなわちOLED130のリセット期間として、走査期間よりも長い期間、例えば2水平走査期間を確保することができるので、発光期間においてOLED130の寄生容量に保持された電圧を十分に初期化することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、トランジスター121によってOLED130に供給される電流Idsは、閾値電圧の影響が相殺される。このため、本実施形態によれば、トランジスター121の閾値電圧が画素回路110毎にばらついても、そのばらつきが補償されて、階調レベルに応じた電流がOLED130に供給されるので、表示画面の一様性を損なうような表示ムラの発生を抑えられる結果、高品位の表示が可能になる。
【0047】
この相殺について
図10を参照して説明する。この図に示されるように、トランジスター121は、OLED130に供給する微小電流を制御するために、弱反転領域(サブスレッショルド領域)で動作する。
図において、Aは閾値電圧|Vth|が大きいトランジスターを、Bは閾値電圧|Vth|が小さいトランジスターを、それぞれ示している。なお、
図10において、ゲート・ソース間の電圧Vgsは、実線で示される特性と電位Velとの差である。また、
図10において、縦スケールの電流は、ソースからドレインに向かう方向を正(上)とした対数で示されている。
補償期間においてゲートノードgは、電位Viniから電位(Vel−|Vth|)となる。このため、閾値電圧|Vth|が大きいトランジスターAは、動作点がSからAaに移動する一方、閾値電圧|Vth|が小さいトランジスターBは、動作点がSからBaに移動する。
次に、2つのトランジスターが属する画素回路110へのデータ信号の電位が同じ場合、つまり同じ階調レベルが指定された場合に、書込期間においては、動作点Aa、Baからの電位シフト量は、ともに同じk1・ΔVである。このため、トランジスターAについては動作点がAaからAbに移動し、トランジスターBについては動作点がBaからBbに移動するが、電位シフト後の動作点における電流は、トランジスターA、Bともに、ほぼ同じIdsで揃うことになる。
【0048】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、各列の保持容量44の他端、すなわちノードhに、デマルチプレクサ30によってデータ信号を直接供給する構成とした。このため、各行の走査期間においては、制御回路5からデータ信号が供給される期間イコール書込期間となるので、時間的な制約が大きい。
そこで次に、このような時間的な制約を緩和することができる第2実施形態について説明する。なお、以下においては説明の重複を避けるために、第1実施形態との相違する部分を中心に説明することにする。
【0049】
図11は、第2実施形態に係る電気光学装置10の構成を示す図である。
この図に示した第2実施形態が
図2に示した第1実施形態と相違する点は、主としてレベルシフト回路40の各列において保持容量41およびトランスミッションゲート42が設けられている点にある。
【0050】
詳細には、各列においてトランスミッションゲート42は、トランスミッションゲート34の出力端と保持容量44の他端との間に、電気的に介挿されている。すなわち、トランスミッションゲート42の入力端がトランスミッションゲート34の出力端に接続され、トランスミッションゲート42の出力端が保持容量44の他端に接続されている
。
なお、各列のトランスミッションゲート42は、制御回路5から供給される制御信号GcplがHレベルであるとき(制御信号/GcplがLレベルであるとき)に一斉にオンする
。
【0051】
また、各列において保持容量41の一端は、トランスミッションゲート34の出力端(トランスミッションゲート42の入力端)に接続され、保持容量41の他端は、固定電位、例えば電位Vssに共通に接地されている。
図11では省略しているが、保持容量41の容量をCrf2とする。なお、電位Vssは、論理信号である走査信号や制御信号のLレベルに相当する。
【0052】
<第2実施形態の動作>
図12を参照して第2実施形態に係る電気光学装置10の動作について説明する。
図12は、第2実施形態における動作を説明するためのタイミングチャートである。
この図に示されるように、走査信号Gwr(1)〜Gwr(m)が順次Lレベルに切り替えられて、1フレームの期間において1〜m行目の走査線12が1水平走査期間(H)毎に順番に走査される点については、第1実施形態と同様である。また、第2実施形態ではi行目の走査期間が、(b)で示される初期化期間と(c)で示される補償期間と(d)で示される書込期間との順となっている点についても、第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態において(d)の書込期間は、制御信号GcplがLからHレベルになるとき(制御信号/GcplがLレベルになったとき)から走査信号がLからHレベルになるときまでの期間である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、時間の順でいえば(発光期間)→初期化期間→補償期間→書込期間→(発光期間)というサイクルの繰り返しとなる。ただし、第2実施形態では、第1実施形態と比較して、データ信号の供給期間イコール書込期間ではなく、データ信号の供給が書込期間よりも先行している点において相違している。詳細には、第2実施形態では、(a)の初期化期間と(b)の補償期間とにわたって、データ信号が供給され得る点において第1実施形態と相違している。
【0053】
<発光期間>
第2実施形態では、
図12に示されるように、i行目の発光期間では走査信号Gwr(i)がHレベルであり、また、制御信号Gel(i)がLレベルであり、制御信号Gcmp(i)、Gorst(i)がHレベルである。
このため、
図13に示されるようにi行(3j−2)列の画素回路110においては、トランジスター124がオンする一方、トランジスター122、123、125がオフするので、当該画素回路110における動作は基本的に第1実施形態と同様となる。すなわち、トランジスター121は、ゲート・ソース間の電圧Vgsに応じた電流IdsをOLED130に供給することになる。
【0054】
<初期化期間>
i行目の走査期間に至って、まず(b)の初期化期間が開始する。
第2実施形態において初期化期間では、発光期間と比較して、制御信号Gel(i)がHレベルに、制御信号Gorst(i)がLレベルに、それぞれ変化する。
このため、
図14に示されるように、i行(3j−2)列の画素回路110においてはトランジスター124がオフし、トランジスター125がオンする。これによってOLED130に供給される電流の経路が遮断されるとともに、トランジスター124のオンによってOLED130のアノードが電位Vorstにリセットされるので、当該画素回路110における動作は基本的に第1実施形態と同様となる。
【0055】
一方、第2実施形態において初期化期間では、制御信号/GiniがLレベルになり、制御信号GrefがHレベルになるとともに、制御信号GcplがLレベルになる。このため、レベルシフト回路40においては、
図14に示されるようにトランジスター45、43がそれぞれオンするとともに、トランスミッションゲート42がオフする。したがって、保持容量44の一端であるデータ線14は電位Viniに、保持容量44の他端であるノードhは電位Vrefに、それぞれ初期化される。
第2実施形態では電位Vrefについては、データ信号Vd(1)〜Vd(n)が取り得る電位に対して、第1実施形態と同様に、後の書込期間においてノードhの電位が上昇変化するような値に設定される。
【0056】
上述したように、第2実施形態において制御回路5は、初期化期間および補償期間にわたってデータ信号を供給する。すなわち、制御回路5は、j番目のグループでいえば、データ信号Vd(j)を順番に、i行(3j−2)列、i行(3j−1)列、i行(3j)列の画素の階調レベルに応じた電位に切り替える一方、データ信号の電位の切り替えに合わせて制御信号Sel(1)、Sel(2)、Sel(3)を順番に排他的にHレベルとする。これによって、デマルチプレクサ30では、各グループにおいてトランスミッションゲート34がそれぞれ左端列、中央列、右端列の順番でオンする。
ここで、初期化期間において、j番目のグループに属する左端列のトランスミッションゲート34が制御信号Sel(1)によってオンする場合、
図14に示されるように、データ信号Vd(j)が保持容量41の一端に供給されるので、当該データ信号は、保持容量41によって保持される。
【0057】
<補償期間>
i行目の走査期間においては、次に(c)の補償期間となる。第2実施形態において補償期間では、初期化期間と比較して、走査信号Gwr(i)がLレベルに、制御信号Gcmp(i)がLレベルに、それぞれ変化する。
このため、
図15に示されるように、i行(3j−2)列の画素回路110ではトランジスター122がオンして、ゲートノードgがデータ線14に電気的に接続される一方、トランジスター123のオンによって、トランジスター121がダイオード接続となる。
したがって、電流が、給電線116→トランジスター121→トランジスター123→トランジスター122→(3j−2)列目のデータ線14という経路で流れるので、ゲートノードgは、電位Viniから上昇し、やがて(Vel−|Vth|)に飽和する。したがって、第2実施形態においても、保持容量132は、補償期間の終了に至るまでにトランジスター121の閾値電圧|Vth|を保持することになる。
【0058】
第2実施形態において、補償期間では、制御信号GrefがHレベルを維持した状態で制御信号/GiniがHレベルになるので、レベルシフト回路40においてノードhは電位Vrefに固定される。
また、補償期間において、j番目のグループに属する左端列のトランスミッションゲート34が制御信号Sel(1)によってオンする場合、
図15に示されるように、データ信号Vd(j)が保持容量41によって保持される。
【0059】
なお、すでに初期化期間において、j番目のグループに属する左端列のトランスミッションゲート34が制御信号Sel(1)によってオンした場合には、補償期間において、当該トランスミッションゲート34はオンすることはないが、保持容量41にデータ信号Vd(j)が保持されている点において変わりはない。
また、補償期間が終了すると、制御信号Gcmp(i)がHレベルになるので、トランジスター121のダイオード接続が解除される。
【0060】
第2実施形態においては、補償期間が終了してから次の書込期間が開始するまでの間において制御信号GrefがLレベルになるので、トランジスター43がオフになる。このため、(3j−2)列目のデータ線14からi行(3j−2)列の画素回路110におけるゲートノードgに至るまでの経路は、フローティング状態になるものの、当該経路の電位は、保持容量50、132によって(Vel−|Vth|)に維持される。
【0061】
<書込期間>
第2実施形態において書込期間では、制御信号GcplがHレベルとなる(制御信号/GcplがLレベルとなる)。このため、
図16に示されるように、レベルシフト回路40においてトランスミッションゲート42がオンするので、保持容量41に保持されたデータ信号が保持容量44の他端であるノードhに供給される。このため、ノードhは、補償期間における電位Vrefからシフトする。すなわち、ノードhは電位(Vref+ΔV)に変化する。
【0062】
一方、ゲートノードgは、保持容量44の一端にデータ線14を介して接続されているので、補償期間における電位(Vel−|Vth|)から、ノードhの電位変化分ΔVに容量比k2を乗じた値だけ上昇する方向にシフトした値となる。すなわち、ゲートノードgの電位は、補償期間における電位(Vel−|Vth|)から、ノードhの電位変化分ΔVに容量比k2を乗じた値だけ、上昇方向にシフトした値(Vel−|Vth|+k2・ΔV)となる。
なお、第2実施形態において、容量比k2は、Cdt、Crf1、Crf2の容量比である。上述したように、保持容量132の容量Cpixについては無視している。
また、このとき、トランジスター121の電圧Vgsで絶対値で表現すると、閾値電圧|Vth|からゲートノードgの電位上昇したシフト分だけ減じた値(|Vth|−k2・ΔV)となる。
【0063】
<発光期間>
第2実施形態では、i行目の書込期間の終了した後、1水平走査期間の間をおいて発光期間に至る。この発光期間では、上述したように制御信号Gel(i)がLレベルになるので、i行(3j−2)列の画素回路110においては、トランジスター124がオンする。
ゲート・ソース間の電圧Vgsは(|Vth|−k2・ΔV)であり、トランジスター121の閾値電圧からデータ信号の電位によってレベルシフトした値である。このため、OLED130には、先の
図13に示したように、階調レベルに応じた電流がトランジスター121の閾値電圧を補償した状態で供給されることになる。
このような動作は、i行目の走査期間において、(3j−2)列目の画素回路110以外のi行目の他の画素回路110においても時間的に並列して実行される。さらに、このようなi行目の動作は、実際には、1フレームの期間において1、2、3、…、(m−1)、m行目の順番で実行されるとともに、フレーム毎に繰り返される。
【0064】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、微細な画素回路110においてトランジスター121のゲート・ソース間の電圧Vgsに対しOLED130に流れる微小電流が相対的に大きく変化する場合であっても、OLED130に供給する電流を精度良く制御することが可能になる。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、発光期間においてOLED130の寄生容量に保持された電圧を十分に初期化することができるほか、トランジスター121の閾値電圧が画素回路110毎にばらついても、表示画面の一様性を損なうような表示ムラの発生を抑えられる結果、高品位の表示が可能になる。
【0065】
第2実施形態によれば、制御回路5からデマルチプレクサ30を介して供給されるデータ信号を、保持容量41に保持させる動作が、初期化期間から補償期間までにわたって実行される。このため、1水平走査期間に実行すべき動作について時間的な制約を緩和することができる。
例えば、補償期間においてゲート・ソース間電圧Vgsが閾値電圧に近づくにつれ、トランジスター121に流れる電流が低下するので、ゲートノードgを電位(Vel−|Vth|)に収束するまで時間を要するが、第2実施形態では、第1実施形態と比較して
図12に示されるように補償期間を長く確保することができる。このため、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、トランジスター121の閾値電圧のばらつきを、精度良く補償することができる。
また、データ信号の供給動作についても低速化することができる。
【0066】
<応用・変形例>
本発明は、上述した実施形態や応用例などの実施形態等に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を適宜に組み合わせることもできる。
【0067】
<制御回路>
実施形態において、データ信号を供給する制御回路5については電気光学装置10とは別体としたが、制御回路5についても、走査線駆動回路20やデマルチプレクサ30、レベルシフト回路40とともに、シリコン基板に集積化しても良い。
【0068】
<基板>
実施形態においては、電気光学装置10をシリコン基板に集積した構成としたが、他の半導体基板に集積した構成しても良い。また、ポリシリコンプロセスを適用してガラス基板等に形成しても良い。いずれにしても、画素回路110が微細化して、トランジスター121において、ゲート電圧Vgsの変化に対しドレイン電流が指数関数的に大きく変化する構成に有効である。
【0069】
<制御信号Gcmp(i)>
実施形態等において、i行目でいえば、書込期間において制御信号Gcmp(i)をHレベルとしたが、Lレベルとしても良い。すなわち、トランジスター123をオンさせることによる閾値補償とノードゲートgへの書き込みとを並行して実行する構成としても良い。
【0070】
<デマルチプレクサ>
実施形態等では、データ線14を3列毎にグループ化するとともに、各グループにおいてデータ線14を順番に選択して、データ信号を供給する構成としたが、グループを構成するデータ線数については「2」であっても良いし、「4」以上であっても良い。
また、グループ化せずに、すなわちデマルチプレクサ30を用いないで各列のデータ線14にデータ信号を一斉に線順次で供給する構成でも良い。
【0071】
<トランジスターのチャネル型>
上述した実施形態等では、画素回路110におけるトランジスター121〜125をPチャネル型で統一したが、Nチャネル型で統一しても良い。また、Pチャネル型およびNチャネル型を適宜組み合わせても良い。
【0072】
<その他>
実施形態等では、電気光学素子として発光素子であるOLEDを例示したが、例えば無機発光ダイオードやLED(Light Emitting Diode)など、電流に応じた輝度で発光するものであれば良い。
【0073】
<電子機器>
次に、実施形態等や応用例に係る電気光学装置10を適用した電子機器について説明する。電気光学装置10は、画素が小サイズで高精細な表示な用途に向いている。そこで、電子機器として、ヘッドマウント・ディスプレイを例に挙げて説明する。
【0074】
図17は、ヘッドマウント・ディスプレイの外観を示す図であり、
図18は、その光学的な構成を示す図である。
まず、
図17に示されるように、ヘッドマウント・ディスプレイ300は、外観的には、一般的な眼鏡と同様にテンプル310や、ブリッジ320、レンズ301L、301Rを有する。また、ヘッドマウント・ディスプレイ300は、
図18に示されるように、ブリッジ320近傍であってレンズ301L、301Rの奥側(図において下側)には、左眼用の電気光学装置10Lと右眼用の電気光学装置10Rとが設けられる。
電気光学装置10Lの画像表示面は、
図18において左側となるように配置している。これによって電気光学装置10Lによる表示画像は、光学レンズ302Lを介して図において9時の方向に出射する。ハーフミラー303Lは、電気光学装置10Lによる表示画像を6時の方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
電気光学装置10Rの画像表示面は、電気光学装置10Lとは反対の右側となるように配置している。これによって電気光学装置10Rによる表示画像は、光学レンズ302Rを介して図において3時の方向に出射する。ハーフミラー303Rは、電気光学装置10Rによる表示画像を6時方向に反射させる一方で、12時の方向から入射した光を透過させる。
【0075】
この構成において、ヘッドマウント・ディスプレイ300の装着者は、電気光学装置10L、10Rによる表示画像を、外の様子と重ね合わせたシースルー状態で観察することができる。
また、このヘッドマウント・ディスプレイ300において、視差を伴う両眼画像のうち、左眼用画像を電気光学装置10Lに表示させ、右眼用画像を電気光学装置10Rに表示させると、装着者に対し、表示された画像があたかも奥行きや立体感を持つかのように知覚させることができる(3D表示)。
【0076】
なお、電気光学装置10については、ヘッドマウント・ディスプレイ300のほかにも、ビデオカメラやレンズ交換式のデジタルカメラなどにおける電子式ビューファインダーにも適用可能である。