特許第6626957号(P6626957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626957
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】小型LIDARシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/32 20060101AFI20191216BHJP
   G01S 17/93 20060101ALI20191216BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20191216BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20191216BHJP
   G02F 1/11 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   G01S17/32
   G01S17/93
   G02F1/01 F
   G02F1/03 505
   G02F1/11 505
【請求項の数】33
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-503732(P2018-503732)
(86)(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公表番号】特表2018-512600(P2018-512600A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】US2016026178
(87)【国際公開番号】WO2016164435
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2018年11月27日
(31)【優先権主張番号】62/143,912
(32)【優先日】2015年4月7日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517351961
【氏名又は名称】ストローブ,インク.
【氏名又は名称原語表記】STROBE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】マレキ,ルトフォーラ
(72)【発明者】
【氏名】マツコ,アンドレイ ビー.
【審査官】 田中 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−041706(JP,A)
【文献】 特表2010−530142(JP,A)
【文献】 特開2007−214564(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0039346(US,A1)
【文献】 特開2018−151379(JP,A)
【文献】 特表2017−514111(JP,A)
【文献】 特表2014−523002(JP,A)
【文献】 特表2003−517625(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0097516(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0118375(US,A1)
【文献】 ルート・マレキ,“ウィスパリングギャラリ−モ−ド共振器による超狭線幅半導体レーザ”,Laser Focus World JAPAN,2015年 1月10日,1月号,第16-18頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 − G01S 7/51
G01S 17/00 − G01S 17/95
G01B 9/00 − G01B 11/30
G01C 3/00 − G01C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDARシステムであって、
第1の光路に沿って第1の線幅を有する光を発射するように構成されたレーザ光源と、
光結合器と、
前記レーザ光源から発射された前記光を受信する為に前記光結合器を介して前記レーザ光源と光結合されたウィスパリングギャラリモード光共振器であって、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器は、ウィスパリングギャラリモードを提供し、且つ第2の線幅を有するフィードバック光を戻すように構成されており、前記第2の線幅は前記第1の線幅より狭く、伝搬波が前記ウィスパリングギャラリモード光共振器内で循環し、前記伝搬波の少なくとも一部が、第2の光路に沿って反射機能に向けられた前記ウィスパリングギャラリモード光共振器から光結合によって取り出され、前記第2の光路に沿って戻り、そして光結合によって前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に入って逆伝搬波を形成し、前記逆伝搬波の少なくとも一部が、光結合によって前記フィードバック光として前記光結合器を介して前記ウィスパリングギャラリモード光共振器から取り出され、前記レーザ光源を注入同期することにより、同期されたレーザ光源が提供される、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器と、
前記ウィスパリングギャラリモード光共振器と結合され、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性を変化させるように構成されたトランスデューサと、
前記トランスデューサと作用的に結合された制御装置であって、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源が前記光結合器を介して光チャープを出力するように、前記トランスデューサを変調するように構成された制御装置と、
前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源によって前記光結合器を介して出力された前記光チャープを、送信用の光チャープと基準チャープに分割するように構成されたビームスプリッタと、
前記LIDARシステムから前記送信用の光チャープを送信するように構成された送信アセンブリと、
反射された光チャープを受信するように構成された受信器アセンブリと、
前記反射されたチャープと前記レーザ光源によって生成された前記基準チャープとの比較に基づいて、前記LIDARシステムに対する外部物体の相対位置を特定するように構成された処理装置と、
を含むLIDARシステム。
【請求項2】
前記レーザ光源は、光注入によって前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項3】
前記同期されたレーザ光源の線幅は1000Hz以下である、請求項2に記載のLIDARシステム。
【請求項4】
前記送信される光チャープは、帯域幅内の周波数の線形勾配によって特性化される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項5】
前記帯域幅は少なくとも15GHzである、請求項4に記載のLIDARシステム。
【請求項6】
空間分解能が1cm以下である、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性の、時間に対する線形勾配を生成するように構成されている、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項8】
前記光特性は屈折率である、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項9】
前記トランスデューサは、電位、温度変化、及び圧力からなる群のうちの少なくとも1つから選択される変換力を前記ウィスパリングギャラリモード生成器に与えるように選択される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項10】
前記受信器アセンブリと光連通している2つ以上の光電トランスデューサを更に含み、前記2つ以上の光電トランスデューサは共通基板上で組み立てられる、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項11】
前記処理装置は、前記光電トランスデューサと通信可能に結合された高速フーリエ変換エンジンを含む、請求項10に記載のLIDARシステム。
【請求項12】
前記処理装置は、前記高速フーリエ変換エンジンと通信可能に結合されたデータ処理装置を含む、請求項11に記載のLIDARシステム。
【請求項13】
前記送信アセンブリ及び前記受信器アセンブリは、モノスタティックに配列される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項14】
前記LIDARシステムは更に、前記レーザ光源と前記送信アセンブリとの間に介在するビームスプリッタを含み、前記LIDARシステムは、前記レーザ光源の出力を前記基準チャープとして利用する、請求項11に記載のLIDARシステム。
【請求項15】
前記レーザ光源、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器、前記トランスデューサ、前記制御装置、前記送信アセンブリ、前記受信器アセンブリ、及び前記処理装置は、共通基板上に組み立てられる、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項16】
LIDARシステムを利用する方法であって、
第1の光路に沿って第1の線幅を有する光を発射するように構成されたレーザ光源を設けるステップと、
第1の光結合器によって前記レーザ光源と光結合されたウィスパリングギャラリモード光共振器を設けるステップであって、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器は、ウィスパリングギャラリモードを提供し、且つ第2の線幅を有するフィードバック光を戻すように構成されており、前記第2の線幅は前記第1の線幅より狭く、伝搬波が前記ウィスパリングギャラリモード光共振器内で循環する、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器を設けるステップと、
前記伝搬波の少なくとも一部を第2の光路に沿って反射機能に向かわせるように構成された第2の光結合器を設けるステップと、
前記第2の光路に沿って反射された光を、逆伝搬波として前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に戻すステップと、
前記第1の光結合器により、前記フィードバック光として前記逆伝搬波の少なくとも一部を前記第1の光路に沿って前記レーザ光源に戻るように方向づけることにより、前記レーザ光源が光注入によって前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期されるようにするステップと、
前記ウィスパリングギャラリモード光共振器と作用的に結合された制御装置を用いて、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源に、前記第1の光結合器を介して光チャープを出力させるステップと、
前記ビームスプリッタを用いて、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源によって前記第1の光結合器を介して出力された前記光チャープを、送信用の光チャープと基準チャープに分割するステップと、
送信アセンブリにより、前記送信用の光チャープを前記LIDARシステムから送出するステップと、
受信器アセンブリにより、反射された光チャープを受信するステップと、
処理装置を用いて、前記レーザ光源によって生成された前記基準チャープと、前記反射されたチャープとの比較に基づいて、前記LIDARシステムに対する外部物体の相対位置を特定するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記レーザ光源は、光注入によって前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記同期されたレーザ光源の前記第2の線幅は1000Hz以下である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光チャープは、帯域幅にわたる周波数の線形変化によって特性化される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記帯域幅は少なくとも15GHzである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記LIDARシステムの空間分解能が1cm以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザ光源、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器、前記送信アセンブリ、前記受信器アセンブリ、及び前記処理装置は、共通シリコン基板上にある、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
乗り物と一緒に配置されたLIDARサブアセンブリであって、(1)第1の光路に沿って第1の線幅を有する光を発射するように構成されたレーザ光源と、(2)第1の光結合器によって前記レーザ光源と光結合されたウィスパリングギャラリモード光共振器であって、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器は、ウィスパリングギャラリモードを提供し、且つ第2の線幅を有するフィードバック光を戻すように構成されており、前記第2の線幅は前記第1の線幅より狭く、伝搬波が前記ウィスパリングギャラリモード光共振器内で循環する、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器と、(3)前記伝搬波の少なくとも一部を第2の光路に沿って反射機能に向かわせることと、前記第2の光路に沿って反射された光を、逆伝搬波として前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に戻すことと、を行うように構成された第2の光結合器であって、前記第1の光結合器は更に、前記フィードバック光として前記逆伝搬波の少なくとも一部を前記第1の光路に沿って前記レーザ光源に戻るように方向づけるように構成されている、前記第2の光結合器と、(4)前記ウィスパリングギャラリモード光共振器と作用的に結合され、前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源が光チャープを出力するように構成された制御装置と、(5)前記ウィスパリングギャラリモード光共振器に同期された前記レーザ光源によって前記第1の光結合器を介して前記光結合器を介して出力された前記光チャープを、送信用の光チャープと基準チャープに分割するように構成されたビームスプリッタと、
(6)前記送信用の光チャープを前記LIDARサブアセンブリから送出するように構成された送信アセンブリと、(7)反射された光チャープを受信するように構成された受信器アセンブリと、(8)前記基準チャープと、前記反射されたチャープとの比較に基づいて、前記LIDARサブアセンブリに対する外部物体の位置に関連付けられたLIDARデータを生成するように構成された処理装置と、を含む前記LIDARサブアセンブリと、
前記LIDARデータを受信し、乗り物エフェクタと通信している支援エンジンと、
を含む乗り物支援システム。
【請求項24】
前記乗り物エフェクタは通知システムを含み、前記通知システムからの出力は、乗り物操縦者によって知覚されるように配置される、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【請求項25】
前記通知システムはディスプレイを含む、請求項24に記載の乗り物支援システム。
【請求項26】
前記通知システムは可聴トランスデューサを含む、請求項24に記載の乗り物支援システム。
【請求項27】
前記乗り物エフェクタはアクチュエータと結合されており、前記アクチュエータは更に、前記乗り物の駆動構成要素と結合されている、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【請求項28】
前記駆動構成要素は、ステアリング機構、ブレーキ機構、加速機構、エレベータ、補助翼、方向舵、ブレードピッチ調節機構、モータ又はエンジンの速度調節機構、及びトランスミッション機構からなる群から選択される、請求項27に記載の乗り物支援システム。
【請求項29】
前記乗り物エフェクタは、巡航制御装置又は自動操縦装置を含む、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【請求項30】
前記乗り物は、少なくとも部分的には、操縦者によって制御される、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【請求項31】
前記操縦者は、前記乗り物から離れて位置する、請求項30に記載の乗り物支援システム。
【請求項32】
前記乗り物は自律型である、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【請求項33】
前記乗り物は、自動車、航空機、船舶、及びドローンからなる群から選択される、請求項23に記載の乗り物支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月7日に出願された米国特許仮出願第62/143912号の優先権を主張するものである。この出願、及び他の全ての参照されている特許及び出願は、参照により、その全内容が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野はLIDARシステムであり、特に周波数変調連続波LIDARシステムである。
【背景技術】
【0003】
本背景説明は、本発明の理解に役立ちうる情報を含む。これは、ここで与えられる情報の全てが、特許請求される本発明に対して先行技術又は関連技術であること、或いは、具体的又は暗黙的に参照される全ての公開物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
LIDARは、地図作成から顕微鏡検査に至る様々な用途での測距に使用されることが増えている。そのような機能性を、自律型又は半自律型の乗り物をはじめとする、広がり続ける範囲の装置に組み込むことが、ますます小型且つ低消費電力の装置が開発されることにつながっている。同時に、有効距離が伸び分解能が向上したLIDAR装置への需要が増え続けている。
【0005】
LIDARは、様々な方式で実現可能である。「飛行時間」(TOF)型LIDARでは、短い光パルスが発射され、反射パルスが受信され、発射と受信の時間差が発射器と反射物体との間の距離の尺度を与える。しかしながら、そのようなTOFシステムには幾つかの不利点がある。例えば、単純なTOF測定は、他の信号源からの干渉を非常に受けやすい。この問題は、発射器と反射物体との間の距離が増えるほど顕著になる。これは、そのように距離が増えると、必然的に反射信号の強度が低下する為である。一方、極端に短い時間間隔を正確に測定する場合の本来的な制限により、そのようなTOF LIDARシステムの、近距離での空間分解能が制限される。更に、そのようなTOF LIDARの有効距離は、比較的弱い反射信号を検出する能力に応じて決まる。結果として生じる有効距離の制限は、高感度光検出器の使用により対処されることが多い。場合によっては、そのような検出器は単一光子を検出することが可能である。残念なことに、この高感度は、干渉信号を反射TOF LIDARパルスと誤認することの増加にもつながる。これらの不利点にもかかわらず、現在ではTOF LIDARシステムの用途は広く、その主な理由として、そのようなシステムを非常にコンパクトなフォーマットで提供できることと、比較的廉価な非コヒーレントレーザ光源を利用できることが挙げられる。
【0006】
TOF LIDARの代替が幾つか開発されてきた。それらの1つである周波数変調(FM)LIDARは、コヒーレントレーザ源を頼りにして、時間を区切られ周波数変調された光エネルギの短い「チャープ」の繰り返しを生成する。各チャープ内の周波数は線形変化し、基準信号に対して相対的な、エコーチャープの位相及び周波数の測定値が、発射器に対して相対的な、反射物体の距離及び速度の尺度を与える。反射チャープの他の特性(例えば、強度)は、反射面の色、表面テクスチャ、又は組成に関連付けられることが可能である。更に、そのようなFM LIDARは、(非変調信号を発生させがちな)干渉光源の影響を比較的受けず、高感度光検出器の使用を必要としない。
【0007】
この測定の精度は幾つかの因子に依存し、そのような因子として、発射レーザの線幅制限、チャープ内の周波数の範囲(即ち、帯域幅)、各チャープ内での周波数変化の線形性、及び個々のチャープの再現性などがある。残念なことに、一般的には、これらの因子のいずれかを向上させると、残りの因子が損なわれる。例えば、チャープの帯域幅を広げると、分解能が向上するが、チャープ内での周波数変化の線形性を維持することが困難になる。同様に、線幅が狭いレーザは、チャープの生成に必要な帯域周波数を発生させることにあまり適さない場合がある。更に、これまで開発されてきたFM LIDARシステムは小型と言うには程遠く、これは、それらが比較的大型のFMCWレーザ源を頼りにしている為である。更に、そのようなシステムは、典型的には、慎重に変調される低ノイズ局部発振器(例えば、線幅が狭いソリッドステートレーザ、ガスレーザ、又はファイバレーザ)を頼りにしており、その周波数変調は、比較的大型の干渉計によって与えられる発射チャープの周波数変調に対応する。この局部発振器は、発射チャープを厳密に複製し、受信される反射チャープに対する基準として動作する。結果として、FM LIDARは、比較的大型であり、複雑であり、高価である為、性能面で有利であるにもかかわらず、TOF LIDARに比べて実施が限られてきた。
【0008】
クアック等(Quack et al)(2015年3月23〜26日、米国ミズーリ州セントルイスで開催されたGOMACTechでの発表)は、FMCW LIDAR源装置の開発を提案した。これは、電気機械式変調レーザ源、光学干渉計、及び変調回路を単一シリコンチップ上に構築及び集積することが必要になる。しかしながら、結果として得られる機器は、非線形光チャープを本質的に生成する電子フィードバックシステムを頼りにする。この非線形光チャープは、レーザ源に供給されるフィードバック信号に「プリディストーション」を適用することと、追加変動源として動作可能な外部基準周波数発生器を利用することとにより、部分的ではあるが補正される(サティアン等(Satyan et al)、オプティック・エクスプレス(Optics Express)、第17巻、2009年)。結果として得られるLIDAR源は非常に複雑であり、そのような多種多様な機能を、信頼できる様式で、単一シリコンチップ上にうまく集積できるかどうかはまだ分からない。更に、そのような源を組み込んだLIDARも又、有用なデータを提供する為に、複雑な局部発振器の使用を頼りにしている。
【0009】
そこで、チャープ線形性が高く、チャープ帯域幅が広く、且つチャープ再現性が高い、小型でロバストで効率的なLIDARシステムが必要とされている。
【0010】
以下の説明は、本発明の理解に役立ちうる情報を含む。これは、ここで与えられる情報の全てが、特許請求される本発明に対して先行技術又は関連技術であること、或いは、具体的又は暗黙的に参照される全ての公開物が先行技術であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、背景技術の課題を解決するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明概念の実施形態は、ウィスパリングギャラリモード光共振器と光結合されたレーザ源を組み込んだ周波数変調LIDARシステムを含む。結合によってレーザからウィスパリングギャラリモード光共振器に入った光は、光共振器のウィスパリングギャラリモードの特性周波数を有する戻り逆伝搬波として、結合によって取り出されて戻される。この戻り波は、光注入によってレーザ源の線幅を低減する為に使用される。ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性を変調することにより、共振器のウィスパリングギャラリモードでサポートされる周波数の周波数変調が行われ、LIDARシステムでの使用に好適な、線形性及び再現性の高い光チャープを生成する方法が得られる。
【0013】
本発明概念の一実施形態はLIDARシステムであり、このシステムは、レーザ光源と、レーザ光源と光結合されて、光注入により線幅を低減する、変調可能なウィスパリングギャラリモード共振器と、ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性(例えば、屈折率)を変化させることが可能なトランスデューサと、トランスデューサを制御する制御装置と、制御装置によって生成された光チャープを送信する送信アセンブリと、反射された光チャープを受信する受信器と、反射されたチャープから抽出されたデータを利用して、チャープを反射している物体の位置を特定する処理装置と、を含む。実施形態によっては、これらの構成要素の全てが単一基板上に設けられる。光注入同期されたレーザ源の線幅は、1kHz未満であることが可能である。好ましい一実施形態では、レーザ源は、反射物体の位置を特定する際に反射チャープと組み合わされる基準チャープの源として動作することも可能である。
【0014】
本発明概念の別の実施形態は、LIDARシステムを利用する方法である。そのような方法ではLIDARシステムが設けられ、このシステムは、レーザ光源と、レーザ光源と光結合されて、光注入により線幅を低減する、変調可能なウィスパリングギャラリモード共振器と、ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性(例えば、屈折率)を変化させることが可能なトランスデューサと、トランスデューサを制御する制御装置と、制御装置によって生成された光チャープを送信する送信アセンブリと、反射された光チャープを受信する受信器と、反射されたチャープから抽出されたデータを利用して、チャープを反射している物体の位置を特定する処理装置と、を含む。レーザ源によって基準チャープも生成され、基準チャープと、LIDARシステムの有効距離内にある反射物体によって反射されたチャープとを比較することにより、反射物体の位置が特定される。
【0015】
本発明概念の別の実施形態は、LIDARシステム及び支援エンジンを組み込んだ乗り物支援システムであり、LIDARシステムは、レーザ光源と、レーザ光源と光結合されて、光注入により線幅を低減する、変調可能なウィスパリングギャラリモード共振器と、ウィスパリングギャラリモード光共振器の光特性(例えば、屈折率)を変化させることが可能なトランスデューサと、トランスデューサを制御する制御装置と、制御装置によって生成された光チャープを送信する送信アセンブリと、反射された光チャープを受信する受信器と、反射されたチャープから抽出されたデータを利用して、チャープを反射している物体の位置を特定する処理装置と、を含み、支援エンジンは、LIDARで生成されたデータを受信し、乗り物エフェクタと通信している。そのようなエフェクタは、乗り物操縦者が使用する通知システムであってよい。実施形態によっては、エフェクタは、乗り物の操縦(例えば、ステアリング、エンジン速度など)に作用するトランスデューサと結合される。実施形態によっては、乗り物は操縦者によって制御され、操縦者は乗り物の中にいてもよく、乗り物を遠隔操縦していてもよい。又、実施形態によっては、乗り物は自律型である。以下の、好ましい実施形態の詳細説明と添付図面から、本発明対象の様々な目的、特徴、態様、及び利点がより明らかになるであろう。各図面において、類似の参照符号は類似の構成要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】光共振器を用いてレーザの注入同期をサポートする装置の一実施形態の概略図である。
図2】光共振器を用いてレーザの注入同期をサポートする装置の別の実施形態の概略図である。
図3】光共振器を用いてレーザの注入同期をサポートする装置の更に別の実施形態の概略図である。
図4A】例示的光共振器の構成を示す図である。図4Aは、球状の光共振器を示す。
図4B】例示的光共振器の構成を示す図である。図4Bは、凸状外面を有する環状の光共振器を示す。
図4C】例示的光共振器の構成を示す図である。図4Cは、円盤状の光共振器を示す。
図4D】例示的光共振器の構成を示す図である。図4Dは、平坦な外面を有する環状の光共振器を示す。
図5A】光共振器上の電極の配置を示す図である。図5Aは、電極が外周に貼り付けられた円盤状の光共振器を概略的に示す。
図5B】光共振器上の電極の配置を示す図である。図5Bは、電極570、580が共振器の対向する平坦面に貼り付けられた円盤状の光共振器565を含む、変調されるウィスパリングギャラリモード光共振器560を概略的に示す。
図6A】シリコンチップに組み込まれる光共振器の様々な実施態様を示す図である。図6Aは、シリコンチップ上に生成された導波路と光結合された球状の光共振器を示す。
図6B】シリコンチップに組み込まれる光共振器の様々な実施態様を示す図である。図6Bは、シリコンチップ上に生成され、同じシリコンチップ上に生成された導波路と光結合された円盤状の光共振器を示す。これらの導波路は、同じシリコンチップ上に生成された導波路と光結合されている。
図6C】シリコンチップに組み込まれる光共振器の様々な実施態様を示す図である。図6Cは、シリコンチップ上に生成され、同じシリコンチップ上に生成された導波路と光結合された環状の光共振器を示す。これらの導波路は、隣接するシリコンチップと光結合されている。
図6D】シリコンチップに組み込まれる光共振器の様々な実施態様を示す図である。図6Dは、GRINレンズのペアと光結合された球状の光共振器を示し、GRINレンズのペアは、シリコンチップ上に生成された導波路と光結合されている。
図7A】発射された線形単調光周波数チャープ、及び反射された線形単調光周波数チャープを示す図である。図7Aは、発射された光周波数チャープと戻りの反射された光周波数チャープの、時間に対する光周波数の変化を示す。
図7B】発射された線形単調光周波数チャープ、及び反射された線形単調光周波数チャープを示す図である。図7Bは、典型的なデータの高速フーリエ変換処理の結果を示す。
図8A】発射された二相線形光周波数チャープ、及び反射された二相線形光周波数チャープを示す図である。図7Aは、発射された光周波数チャープと戻りの反射された光周波数チャープの、時間に対する光周波数の変化を示す。
図8B】発射された二相線形光周波数チャープ、及び反射された二相線形光周波数チャープを示す図である。図7Bは、典型的なデータの高速フーリエ変換処理の結果を示す。
図9】周波数が時間とともにシグモイド状に変化する、複雑な二相光周波数チャープを示す図である。
図10】本発明概念のLIDARシステムを概略的に示す図である。
図11】本発明概念のLIDARを組み込んだ自動運転支援システム(ADAS)を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、本発明の理解に役立ちうる情報を含む。これは、ここで与えられる情報の全てが、特許請求される本発明に対して先行技術又は関連技術であること、或いは、具体的又は暗黙的に参照される全ての公開物が先行技術であることを認めるものではない。
【0018】
本発明対象によって提供される装置、システム、及び方法では、LIDARシステムが、光注入によってウィスパリングギャラリモード共振器に同期されたFMCWレーザ光源に基づいている。これは、線幅が非常に狭いレーザ源を提供し、このレーザ源は、(光学特性を制御できるウィスパリングギャラリモード光共振器との組み合わせで使用された場合に)単純で直接的な光学機構により、帯域幅が広く、線形性が高く、且つ再現性が高いチャープを生成することを可能にする。そのような周波数変調(FM)LIDARは、別個の局部発振器の使用を必要とせずに、ビームスプリッタ(又は機能的同等物)を利用して、注入同期FMCWレーザから基準FM信号を提供することが可能である。そのようなLIDARシステムは、小型であることが可能であり、フォトリソグラフィ法を用いて、シリコンウエハ上に無駄なく製造することが可能である。そのようなシステムにおいて生成されるチャープの線形性は、10%未満から0.2%未満であることが可能である。生成されるチャープの帯域幅は10GHz以上であることが可能であり、信号対ノイズ比は、3mWという低いレーザ出力において10dBという低さが可能であり、これによって、最大200メートル以上の有効距離が実現可能である。
【0019】
以下の、好ましい実施形態の詳細説明、並びに添付図面から、本発明対象の様々な目的、特徴、態様、及び利点がより明らかになるであろう。添付図面においては、類似の参照符号は類似の構成要素を表す。
【0020】
実施形態によっては、本発明の特定の実施形態を説明及び特許請求する為に使用される、成分量、濃度などの特性、反応条件などを表す数値は、場合によっては、「約(about)」という語で修飾されるものとして理解されたい。従って、実施形態によっては、本明細書及び添付の特許請求の範囲において記載される数値パラメータは、特定の実施形態が取得しようとする所望の特性に応じて異なりうる近似値である。実施形態によっては、数値パラメータは、報告される有効桁数を考慮して、且つ、通常の丸め技法を適用して解釈されるべきである。本発明の幾つかの実施形態の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、実現可能な限り正確に報告される。本発明の幾つかの実施形態において示される数値は、それぞれのテスト測定値の標準偏差の結果として必然的にある程度の誤差を含みうる。
【0021】
本明細書、並びに後述の特許請求の範囲の全体において使用される「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数の参照も包含するものとする。又、本明細書において使用される「in」の意味は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、「in」及び「on」を包含するものとする。
【0022】
本明細書中の数値範囲の具陳は、単にその範囲内に該当する各値を個々に参照する為の略記法としての役割を果たすことのみを意図している。本明細書中で特に指摘しない限り、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書中で説明される全ての方法は、本明細書中で特に指摘されたり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、任意の好適な順序で実施されてよい。本明細書中で特定の実施形態に関して与えられるあらゆる例、又は例示的言い回し(例えば、「など(such as)」)は、特に主張されない限り、単に本発明をより明らかにすることだけを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の如何なる言い回しも、特許請求されていない任意の要素を、本発明の実施に不可欠であるように示すものとして解釈されてはならない。
【0023】
本明細書に開示の、本発明の代替要素又は代替実施形態のグループ分けは、限定と解釈されるべきではない。各グループメンバは、個別に、又は、そのグループの他のメンバ、又は本明細書に記載の他の要素との任意の組み合わせで参照及び特許請求されてよい。利便性及び/又は特許性を理由として、グループの1つ以上のメンバがグループに包含されてよく、或いはグループから除外されてよい。何らかのそのような包含又は除外が発生した場合には、本明細書は、そのグループを、添付の特許請求の範囲で使用されるあらゆるマーカッシュグループの書面記載をそのように満たすように修正されたものとして包含するものと見なされる。
【0024】
当然のことながら、本開示の技術は、精密且つ効率的なLIDARシステムの提供をはじめとする多くの有利な技術的効果を提供し、そのようなLIDARシステムは、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて、単一のウエハ又はチップ上に無駄なく製造することが可能である。
【0025】
以下の説明では、本発明対象の多くの例示的実施形態を示す。各実施形態は発明要素の1つの組み合わせを表すが、本発明対象は、開示される要素の全ての可能な組み合わせを包含するものとする。従って、一実施形態が要素A、B、及びCを含み、別の実施形態が要素B及びDを含む場合、本発明対象は、A、B、C、又はDの、他の残りの組み合わせも、たとえ明示的に開示されていなくても、包含するものとする。
【0026】
本明細書で使用されるように、且つ文脈上矛盾する場合を除き、「に結合される(coupled to)」という語句は、直接結合(互いに結合される2つの要素が互いに接触する結合)と間接結合(2つの要素の間に少なくとも1つの追加要素が配置される結合)の両方を包含するものとする。従って、語句「に結合される(coupled to)」及び「と結合される(coupled with)」は同義で使用される。
【0027】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARでは、狭い線幅のFMレーザ光を変調して、周波数ランプ、例えば、指数ランプ、線形ランプ、及び/又はシグモイドランプを生成する。そのようなランプは、単調(即ち、一方向のみの傾向を示す)、バイモーダル、又はマルチモーダルであってよい。実施形態によっては、周波数ランプを線形ランプ変化させて、線形光チャープを生成する。そのような線形チャープをビームスプリッタに通し、そのチャープの一部を発射することが可能である。発射されたチャープは、物体に遭遇すると、反射され、FMCW LIDARシステムによって反射チャープとして受信されることが可能である。この反射チャープを、FMレーザから(例えば、ビームスプリッタにより)取得される基準チャープと混合することが可能であり、これは、例えば、受信した反射チャープと基準チャープとを光検出器でFM電流に変換し、これらを増幅器内で混合することにより行われる。この混合信号を(例えば、高速フーリエ変換を用いて)処理して、信号間の位相差及び/又は周波数差を特性化することにより、反射物体の距離及び/又は速度の測定を行うことが可能である。そのようなFMCW LIDARシステムの性能(即ち、距離分解能及び距離精度)は、式1に示されるように、周波数ランプの帯域幅に直接関係する。但し、ΔRは距離分解能であり、cは光速であり、Bは発射された周波数チャープの帯域幅である。

ΔR=c/2B
式1

本質的には、チャープの帯域幅が広いほど、距離分解能は高くなる。性能は、チャープ全体にわたる周波数ランプ又は周波数変化の線形性に影響され、線形性からの逸脱はチャープ間の再現性の低下につながる。そのような線形性は、レーザ源の線幅が増えると悪影響を受ける。印加されるランプの線形性が高くない場合、結果として得られる干渉データは質が悪い。非線形周波数ランプ(例えば、時間に対する周波数のシグモイド変化)が利用される場合は、非線形関数の一貫性も同様に重要である。同様に、レーザによって与えられる光の振幅変化(相対強度ノイズ(RIN))は、FM LIDARの性能を低下させる可能性がある。残念なことに、FM LIDARに一般的に使用されるレーザ源は、RINが比較的大きい。効果的なシステムである為には、チャープの変調周波数の帯域幅が広いことと、チャープ内の線形性が高いことと、の両方が必要である。残念なことに、周波数チャープの帯域幅が広いほど、周波数チャープを線形化すること、及び/又は同じ周波数チャープを生成し続けることが困難になる。
【0028】
本発明概念のシステム及び装置は、レーザによって発射される1つ以上の波長に対応するウィスパリングギャラリモードをサポートする光共振器と光結合されたFMCWレーザ光源を利用する。光のうち、ウィスパリングギャラリモード周波数として光共振器にトラップされる部分がレーザに戻されることにより、光注入同期が行われる。これにより、(そのような光注入同期がないレーザ源に比べて)レーザ出力の線幅が小さくなるだけでなく、RINが少なくとも10分の1になる。結果として得られるレーザ出力は、非常に狭い線幅が可能である(例えば、1000Hz、500Hz、250Hz、100Hz、又は100Hz未満が可能である)。そのようなレーザ源は、広い帯域幅(例えば、1GHz、5GHz、10GHz、15GHz、又はそれ以上)の線形チャープを生成することが可能であり、10cm、7.5cm、5cm、2.5cm、1cm、又は1cm未満の距離分解能を実現することが可能である。そのような距離分解能は、ポータブル装置、自律型及び半自律型の輸送手段、拡張現実及び仮想現実システム、画像化システムなどをはじめとする広範な用途に有用である。当然のことながら、線形チャープ内の15GHz帯域幅は、100Hzのレーザ線幅の1億5000万倍に相当する。そのような信号は容易に識別可能であり、広い帯域幅にわたる高度の線形化が達成可能である。比較として、線幅が1nmの一般的なFMレーザを利用する従来技術のシステムを考えると、その場合は、十分な識別を行う為に、数十ナノメートル(例えば、50nm)に相当する周波数ランプを有するチャープを利用することが必要になり、それでも、同等の分解能及び信号対ノイズ比は実現されないであろう。又、当然のことながら、そのような50nm帯域幅のチャープを線形化することは、技術的に非常に困難であろう。同様の問題が、100kHz以上の線幅を有する一般的な先行技術のレーザ光源を使用する場合にも発生する。本発明者らが見いだしたところによれば、非常に狭い線幅のレーザ光源を使用することにより、LIDARの性能を向上させることが可能であり、同時に、高度に制御可能且つ複製可能な周波数変調を実現しながら線幅を狭める適切な方法を選択することにより、LIDARシステムのアーキテクチャ、動作、そして最終的には製造コストを簡素化することが可能である。好ましい一実施形態では、上述の性能特性を有するレーザ光源の構成要素の全て又は少なくとも大部分と、LIDARシステムの残りの構成要素とを、フォトリソグラフィ技術を用いてシリコンチップ上に製造することが可能である。
【0029】
線形性、例えば、周波数が増加する単調チャープの線形性は、生成されたチャープの一連の時点における測定された周波数と理想的な周波数との間の相関のr値として表すことが可能である。例えば、光チャープの所望のプロファイルが、図7Aに示されるように、時間に対する、周波数の単調且つ線形の増加である場合、線形性は、対応する時点における、測定された周波数と、所望又は最適の周波数との間の相関として表すことが可能である。そのような例では、生成されたチャープが完全に線形であれば、そのような相関のr値として1が生成されることが予想されるであろう。理想の挙動からの逸脱(例えば、チャープの先頭及び/又は末尾における曲線逸脱)があれば、結果として、r値は1未満になるであろう。バイモーダルチャープや非線形(例えば、シグモイド)チャープについても、同様の相関考察が行われてよい。本発明概念の実施形態では、生成されるチャープの線形性によって生成されうるr値は、生成されるチャープの周波数範囲にわたって、0.8超、0.85超、0.88超、0.9超、0.92超、0.95超、0.97超、0.98超、0.99超、且つ/又は0.995超であることが可能である。。
【0030】
同様に、生成されるチャープ同士の間のばらつきを最小化すべきである。チャープの特性化は、幾つかの定量化可能な因子によって行われてよく、例えば、継続時間、周波数分布、振幅、及び(上述の)線形性からの逸脱などの因子によって行われてよい。チャープの母集団内での変動は、そのような定量化可能な因子の中央値を囲む標準偏差及び/又は変動係数(CV)として表すことが可能である。本発明概念の実施形態では、統計的に有意なチャープの群(例えば、32個超)の継続時間、周波数分布、振幅、及び/又は線形性からの逸脱のCVは、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、7.5%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.25%未満、0.2%未満、且つ/又は0.1%未満であることが可能である。
【0031】
本発明概念の実施形態によっては、LIDARシステムに適するレーザ光源が、レーザ光源を光共振器と光結合することによって与えられてよい。そのような光共振器は、レーザ源から発射される波長でウィスパリングギャラリモードをサポートする材料から寸法決定及び構築されてよく、光共振器の光特性(例えば、屈折率)の制御された変調を可能にする材料(例えば、電気光学材料)から構築されてよい。ウィスパリングギャラリモード共振器の光特性を(例えば、電位、温度変化、及び/又は機械的圧力を印加して)変調することにより、ウィスパリングギャラリモードの周波数を変化させることが可能である。FMCWレーザ源からの光を、(例えば、プリズム、ファセット面を有する光ファイバ、又は同様の装置を用いた)エバネッセント波結合により、ウィスパリングギャラリモードに結合することが可能である。同様に、光共振器内の逆伝搬ウィスパリングギャラリモード波から光を結合によって取り出してレーザ源に戻すことにより、光注入同期を行うことが可能であり、これによってレーザ出力の線幅が狭くなる。光共振器の光特性を(例えば、電極、抵抗加熱器、及び/又は圧電素子を介して)変調することにより、ウィスパリングギャラリモードでサポートされる周波数が変化する。これによって、光注入同期に利用される周波数が変化し、結果としてレーザの周波数出力が変調され、これによって非常に狭い線幅が継続される。
【0032】
結果として、そのような構成では、FMCWレーザと光連通しているウィスパリングギャラリモード共振器の光特性に対し、(例えば、1つ以上のチャープパターン及び間隔を生成するようにプログラムされたチャープ生成器により)制御された変調を施すことにより、線形性が高い(又は一貫して非線形性が高い)周波数チャープを光学的手段により直接生成することが可能になる。結果として得られるレーザ発射の高度の再現性と狭い線幅とにより、シンプルなビームスプリッタ(又は同様の装置)を使用してLIDARシステムを実現することが可能になり、反射物体の特性化に使用される発射チャープの源として動作する変調されたFMCWレーザは、戻り反射チャープの特性化に使用される基準チャープの源として動作することも可能である。当然のことながら、これにより、結果として得られるLIDARシステムの複雑さ及びサイズが大幅に低減される。本発明概念の実施形態によっては、光共振器の光特性を制御された様式で変化させることにより、再現性の高い周波数チャープを生成することが可能であり、例えば、光共振器に電流を印加すること、光共振器に圧力を印加すること、及び/又は光共振器の温度を変化させることにより、可能である。当然のことながら、そのような構成により、様々な用途に適することが可能な、幅広い種類の周波数チャープ構成を生成することが可能になる。
【0033】
レーザ源とウィスパリングギャラリモード共振器とをこの様式で光結合することに適する構成は様々にある。一例を図1に示す。これは、一連のフィードバック光学系8を有する構成を示している。図1に示された構成では、レーザ源1がレーザビーム1aを出力し、レーザビーム1aは、光結合器4a、例えば、プリズムによる結合によってウィスパリングギャラリモード共振器4(WGM共振器)に入る。実施形態によっては、レーザビームは、相回転器2を通り抜けて、レンズ3により光結合器内へ向かう。レーザビーム内で表される周波数のうちのあるサブセットが、自己強化型ウィスパリングギャラリモード波5aとして共振器内を伝搬して、ウィスパリングギャラリモードで「キャプチャ」される。この伝搬光の一部が、第2の光結合器4bによる結合によってWGM共振器から取り出され、この出力光ビーム6bが(マウント8c上に設けられてよい)鏡8aに反射して、反射光ビーム6bが与えられる。実施形態によっては、出力光ビーム及び/又は反射光ビームは、レンズ8bにより方向づけられる。反射光ビームは、結合によってWGM共振器内に戻されて、逆伝搬波5bを形成する。これは、第1の光結合器による結合によって共振器から取り出され、フィードバック光1bとしてレーザ源に戻されてよく、ここで、光注入の結果として、線幅が狭くなったレーザ出力7が得られる。この線幅が狭くなった、レーザ源の出力が、第1のプリズムの露出ファセットから出力されて、LIDARシステムで利用されることが可能である。
【0034】
本発明概念の別の実施形態では、レーザ源と光共振器との間、並びに光共振器と反射器との間の光結合は、導波路により逆伝搬波を与える。適切な導波路として、光ファイバや、シリコンウエハ上に与えられる導光性材料などがある。そのような実施形態の一例を、図2に概略的に示す。図示されるように、レーザ源200が、1つ以上の導波路210、230により、ウィスパリングギャラリモード共振器240に結合されてよい。実施形態によっては、コリメータ又は光学モードセレクタ220が、レーザとウィスパリングギャラリモード共振器との間に介在してよい。レーザからの光は、結合によってウィスパリングギャラリモード共振器に入り、そこで、ウィスパリングギャラリモードに対応する光がトラップされる。トラップされた光の少なくとも一部が、結合によってウィスパリングギャラリモード共振器から取り出されて導波路250に入り、そこで反射器に向かう。実施形態によっては、ウィスパリングギャラリモード共振器と反射器との間にコリメータ又は光学モードセレクタ260が介在し、追加の導波路270によって光連通が与えられる。反射器から戻された光は、結合によってウィスパリングギャラリモード共振器に戻り、レーザに向かう光路に戻る。この戻った光が、レーザを、共振器のウィスパリングギャラリモードに対応する周波数に光注入同期することにより、レーザ出力290の線幅が、そのような光注入同期が行われないレーザ源の線幅に比べて狭くなる。実施形態によっては、これらの構成要素は、単一集積チップ295上に設けられてよい。
【0035】
実施形態によっては、光フィルタが装置に組み込まれてよい。図3は、図1に示された構成と同様の光学構成を有する一例を示しているが、ここでは、ビームの空間分布を改善する為に第2のプリズムと反射器との間に光学的空間フィルタを組み込んでいる。反射器305を含んでよいレーザ源300から供給される光は、光結合器315によってウィスパリングギャラリモード共振器320に送られる。実施形態によっては、レーザと光結合器との間にコリメータ又は光学モードセレクタ310が介在する。共振器のウィスパリングギャラリモードに対応する光が共振器内でトラップされ、少なくとも一部が、第2の光結合器325による結合によって共振器から取り出され、一連のフィードバック光学系327に向かう。これらのフィードバック光学系は、反射器340と、フィードバック光学系の第2の光結合器と反射器との間に配置された光学的空間フィルタ335(例えば、ピンホール)とを含んでよい。実施形態によっては、コリメータ又は光学モードセレクタは、第2の光結合器と光学的空間フィルタとの間に配置されてよい。フィードバック光学系の反射器で反射した光は、結合によってウィスパリングギャラリモード光共振器に戻されて、逆伝搬波が与えられる。この逆伝搬波の少なくとも一部が、ウィスパリングギャラリモード共振器から取り出され、レーザに戻るように方向づけられることにより、光注入が行われ、結果として、レーザの線幅が狭まる。この狭い線幅の出力が、出力レーザビーム345として与えられる。実施形態によっては、レーザの変調を可能にする制御回路350が与えられる。
【0036】
図示された例は光共振器内で逆伝搬波を与える為に反射器を利用しているが、本発明概念の他の実施形態には鏡又は反射器が不要なものもある。例えば、本発明概念の実施形態によっては、WGM共振器の材料内での光散乱によって、レーザ源の光注入同期に有用となるのに十分な強度の逆伝搬波を与えることが可能である。又、実施形態によっては、逆伝搬波を与える為の形体をWGM共振器の中、及び/又は表面に導入してよい。好適な形体として、WGM共振器をボディ内に含むこと、ピット、チャネル、又は他の、WGM共振器の表面に生成される形体、及び/又はWGM共振器の表面に生成される光回折格子がある。
【0037】
様々な構成の好適な光共振器が利用可能である。図4A図4B図4C、及び図4Dに示されるように、様々な様式で好適な共振器を構成することが可能である。図4Aに示されるように、ウィスパリングギャラリモード光共振器400が、円形断面410を有し、Z軸405方向に延びる球として構成されてよい。或いは、図4Bに示されるように、ウィスパリングギャラリモード共振器が、トーラス又はトロイダルの固体として構成されてよい。図4Bでは、ウィスパリングギャラリモード光共振器415は、円形断面420を有し、Z軸425方向に延び、その一方で中央開口部を有する。この例では、ウィスパリングギャラリモード光共振器の外壁は、中央から外向きに延びる凸形状を有する。ウィスパリングギャラリモード光共振器の好適な構成の別の例を図4Cに示す。図4Cでは、ウィスパリングギャラリモード光共振器430は、円盤構成を有し、円形断面及び高さ455によって、上面435、外面445、エッジ450、及び下面440が画定される。そのようなエッジは、約90°(例えば、約70°から約90°)の角度を示してよく、実施形態によっては、シャープエッジとして存在してよい。図4Dは、ウィスパリングギャラリモード光共振器の別のトロイダル構成を示しており、これは、中央開口部を有する円盤に似ている。図示されるように、ウィスパリングギャラリモード光共振器460は、本質的に円形であってよく、中央開口部465を含み、開口部の半径によって幅495が画定される。そのようなウィスパリングギャラリモード光共振器は、上面470と、下面475と、高さ490を有する外壁480とを含む。外壁のエッジ497は、約90°(例えば、約70°から約90°)の角度を有してよく、実施形態によっては、シャープエッジであってよい。
【0038】
本発明概念の実施形態によっては、ウィスパリングギャラリモード共振器は変調されてよい。例えば、本発明概念のLIDARシステムのウィスパリングギャラリモード共振器は、熱、圧力、及び/又は電位の印加で屈折率が変化する材料から構築されてよい。そのような実施形態では、ウィスパリングギャラリモード共振器が、トランスデューサ(例えば、抵抗加熱器)、圧電素子、及び/又は電極に結合されてよい。電極の形式でトランスデューサと結合されるウィスパリングギャラリモード光共振器の例を、図5A及び図5Bに示す。図5Aは、電子的に変調される共振器アセンブリ500を示しており、これは、電気光学材料から構築されるウィスパリングギャラリモード光共振器510を含み、光共振器510は電極対520、530と接触している。電極対は、制御装置540と電子連通しており、制御装置540は、電極対に電流及び/又は電位を印加することによって、ウィスパリングギャラリモード光共振器の屈折率を修正することが可能である(そして、それによって、ウィスパリングギャラリモードでサポートされる周波数を変化させることが可能である)。そのようなアセンブリは、光インタフェース545(例えば、適切に角度を付けられたインタフェース面を有するプリズム又は導波路)を含んでもよく、これは、入射光550を伝搬させ、結合によってウィスパリングギャラリモード光共振器に入れることが可能である。当然のことながら、本発明概念のLIDARシステムのそのようなウィスパリングギャラリモード共振器を変調することにより、光注入同期によってウィスパリングギャラリモード共振器に同期されたレーザ源を変調することが可能である。結果として、ウィスパリングギャラリモードでサポートされる周波数の変化をもたらす、光共振器の屈折率の変化が、狭い線幅を維持したままでの、新しい波長でのレーザ源の注入同期をもたらすことが可能である。
【0039】
本発明者らが見いだしたところによれば、光結合されたウィスパリングギャラリモード共振器から抽出される光を用いてレーザ源を注入同期することにより、広範な周波数を組み込んだ、線形性が高い光チャープを、共振器の光特性の変調により生成する手段が得られる。上述のように、そのような共振器の光特性は、電位を印加すること、温度を変化させること、圧力を印加すること、又はこれらの組み合わせにより直接変調することが可能である。そのような変調により、共振器のウィスパリングギャラリモードでサポートされる周波数を変化させることが可能であり、これによって、レーザ源の注入同期に利用される周波数を変化させることが可能であり、その変化した周波数にレーザを同期させることが可能である。例えば、そのようなウィスパリングギャラリモード光共振器に、電圧勾配(例えば、線形、バイモーダル、及び/又はシグモイドの勾配)を、規定された時間にわたって印加することにより、印加された勾配に対応する光チャープが、純粋に光学的な効果によって生成される。
【0040】
本発明概念の実施形態では、レーザ源、光共振器、光学構成要素を光結合する導波路、レーザに給電し、光共振器を制御する関連電子回路、光走査及び受信サブシステム、及びデータ分析を行う電子回路を、1つ以上の別個の支持物(例えば、回路基板、シリコンチップ、又はこれらの組み合わせ)の上に組み立ててよい。例えば、システム構成要素(例えば、レーザ、ウィスパリングギャラリモード共振器、及び関連する光結合)のサブセットを第1の支持物の上に組み立ててよく、光走査サブシステムを第2の支持物の上に組み立ててよく、光共振器及び走査サブシステムの活動を指示する制御回路を第3の支持物の上に組み立ててよく、入射する基準チャープ及び/又は反射チャープを電子データに変換し、そのような電子データを分析する集積回路を第4の支持物の上に組み立ててよく、組み立てられたシステムにおいては、適切な光学的接続や電子的接続によって、これらの様々な支持物の間の連通が実現される。当然のことながら、2つ以上の支持物の上での、他の、システム構成要素の組み合わせも考えられる。
【0041】
又、実施形態によっては、LIDARシステムの全ての機能要素(例えば、レーザ及び光結合されたウィスパリングギャラリモード共振器、光走査及び受信サブアセンブリ、制御回路、入射する基準チャープ及び/又は反射チャープの電子データへの変換、及びデータ分析)を、単一支持物(例えば、回路基板又はシリコンチップ)の上に組み立てることが可能である。実施形態によっては、ウィスパリングギャラリモード共振器を組み込む為に、例えば、フリップチップ組立法を利用してよい。例えば、光共振器の光特性の変調に使用される電子信号を生成する為に利用される集積回路を、適切な電気的接続とともに、レーザ及び共振器と同じシリコンチップの上に組み立ててよい。ビーム走査器(例えば、モノスタティック光学系を組み込んだビーム走査器)の構成要素を、周波数変調されたレーザとの光接続を与える導波路とともに、同じシリコンチップの上に組み立ててよい。同様に、走査タイミングを制御する為に利用される集積回路(例えば、走査クロック)を、ビーム走査器及びチャープ生成回路との適切な電気的接続とともに、そのシリコンチップ上に組み立ててよい。反射する光チャープを対応する電子戻り信号に転写する為に、ビーム走査器と光電池との間の光連通を与える光導波路も組み立ててよい。送信される光チャープを対応する電子送信信号に転写する為に、周波数変調されたレーザと第2の光電池との間の光接続を与える同様の光導波路を組み立ててよい。そのような光電池を、同様に組み立てられる増幅器との電気的接続とともに、シリコンチップ上に組み立ててよい。増幅された電子反射チャープ信号及び電子送信チャープ信号は、増幅器から、受信信号の高速フーリエ変換を行う集積回路に送られてよく、変換されたデータは、そのようなデータを処理してLIDARポイントクラウドを生成する集積回路に転送され、そのような集積回路も一般的なシリコンチップの上に組み立てられる。そのような装置は、単一シリコンチップ上に組み立てられる、完結した低電力LIDAR装置を実現する。
【0042】
本発明概念のLIDARシステムは、発射チャープの送信を方向づける走査機能を与えるサブアセンブリと、入射する反射チャープを受ける受信システムとを含んでよい。走査機能を与えるのに好適な機構は様々にあり、例えば、回転式又はジンバルマウントの鏡、MEMデバイス、相互に直交するように配置された複数のアクチュエータ(例えば、電動モータ、ソレノイド、及び/又は圧電素子)にマウントされた2つ以上の鏡のセット、回転式プリズム、及び/又は回転式レンズなどがある。好適なMEMデバイスの一例として、MiniFaros(登録商標)が開発したソリッドステートトライポッド鏡マウントがある。実施形態によっては、走査機能を与える為に、フェーズドアレイステアリング装置が使用されてよい。そのような走査機能は、X−Y平面を掃引するか、且つ/又は3次元空間を詳しく調べるパターンで一連の送信チャープを方向づけるように利用されてよい。そのようなサブアセンブリは、反射チャープを途中で取り込んで、これを、電子データへの変換の為に、(直接、或いは、導波路又は同様の装置を介して間接的に)光電池に向かう受信システムを含んでもよい。そのような受信システムは、反射チャープを途中で取り込んで方向づけるように適切に配置されたレンズ及び/又は鏡を含んでよい。実施形態によっては、発射チャープがLIDARシステムを出る位置と、反射チャープが受け取られる位置は共軸である。又、実施形態によっては、発射チャープがLIDARシステムを出る位置と、反射チャープが受け取られる位置は、別々の光軸上に位置する。好ましい一実施形態では、発射チャープがLIDARシステムを出る位置と、反射チャープが受け取られる位置は共軸であって近接しており、これにより装置が小型になる。
【0043】
そのような小型軽量なFMCW LIDARシステムは、ポータブル装置などの、スペース、重量、及び/又は消費電力が重要であるシステムにおいて広い用途がある。例えば、そのような小型FMCW LIDARシステムは、有人、自律型、且つ/又は半自律型のドローン、ロボティックシステム、及び強化現実VRシステムにおいて利用可能である。当然のことながら、そのようなFMCW LIDARは、反射物体の位置及び速度に関連する情報を提供できるだけでなく、色、組成、表面粗度などの物理特性に関連する情報も提供できる。この文脈では、「位置」という語句は、通常は相対空間座標を意味するが、代替として、単に距離の長短の尺度に限定されてもよい。
【0044】
上述のように、本発明概念の好ましい実施形態では、LIDARシステムの構成要素の全て又は幾つかが、シリコン又は他の適切な材料からなるウエハ又はチップの上に設けられてよい。そのような構成要素は、フォトリソグラフィ法を用いて、或いは、フォトリソグラフィ技術と、フリップチップ技術をはじめとする従来の光学的製造技術との組み合わせを用いて製造可能である。プロセッサ及び光検出器の構成要素をシリコン面上に製造することは、エレクトロニクス業界ではよく知られている。同様に、レーザ光源(例えば、レーザダイオード)をシリコン基板上に製造することも可能である。他の光学装置(例えば、導波路)をシリコン基板上に設けることも可能であり、これは、例えば、フォトリソグラフィ法を用いて導光性材料を堆積させることにより可能である。同様に、WGM光共振器をシリコン基板上に製造するか、シリコン基板上の用意された場所に導入し、そのような構成要素と組み合わせて使用することにより、統合LIDARシステムを実現することが可能である。そのような実施形態の一例を、図6Aに示す。図6Aでは、球状のWGM共振器に出入りする光結合が、フォトリソグラフィ技術を用いてシリコンウエハ又はチップ上に生成された光導波路によって与えられる。この例では、WGM共振器は別途製造されて、LIDARチップに組み込まれる。
【0045】
別の例を、図6Bに示す。図6Bでは、円盤状のWGM共振器に出入りする光結合が、フォトリソグラフィ技術を用いてシリコンウエハ又はチップ上に生成された光導波路によって与えられる。そのような実施形態では、円盤状のWGM共振器は、別個に製造されてLIDARチップに組み込まれてよく、これは、例えば、フォトリソグラフィを用いて生成されたキャビティに配置することによって行われてよい。或いは、そのような円盤状のWGM共振器は、フォトリソグラフィと、適切なドーパント及び/又は堆積される光学材料とを用いて、シリコンウエハ又はチップの表面に製造されてよい。
【0046】
別の例を、図6Cに示す。図6Cでは、トロイダル又は環状のWGM共振器に出入りする光結合が、フォトリソグラフィ技術を用いてシリコンウエハ又はチップ上に生成された光導波路によって与えられる。そのような実施形態では、環状(即ち、平坦化したトーラス)のWGM共振器は、別個に製造されてLIDARチップに組み込まれてよく、これは、例えば、フォトリソグラフィを用いて生成されたチャネルに配置することによって行われてよい。或いは、そのような環状のWGM共振器は、フォトリソグラフィと、適切なドーパント及び/又は光学材料の堆積とを用いて、シリコンウエハ又はチップの表面に製造されてよい。
【0047】
更に別の実施形態では、ウィスパリングギャラリモード共振器が、レンズ系を用いて、シリコンウエハ又はチップ上のLIDARシステムに組み込まれてよい。そのようなレンズは、フォトリソグラフィ技術により、シリコンウエハ又はチップの表面に製造されてよく、或いは、別途製造されて、シリコンウエハ又はチップ上に用意された適切なキャビティに入れられてよい。そのような実施形態の一例を、図6Dに示す。図6Dでは、シリコン基板上に製造されたシリコン導波路が、GRINレンズとの光連通を与える。GRINレンズは、別途製造されて、シリコンウエハ又はチップに貼り付けられてよく、或いは、フォトリソグラフィ法により、シリコンウエハ又はチップ上に製造されてよい。GRINレンズは、角度が付いたファセットを含む。同様のファセットを有する同様のGRINレンズが設けられ、これにより、GRINレンズのペアの角度の付いたファセット同士が互いに向かい合う。適切な光共振器が、それらの角度の付いたファセットと接触することにより、GRINレンズと光連通する。実施形態によっては、シリコンウエハ又はチップ上に製造された導波路とGRINレンズとの間に光連通を与える為に、回折格子結合器が設けられる。
【0048】
LIDARでの使用に好適な線形光周波数チャープの一例を、図7Aに示す。図示されるように、光周波数が時間に対して単一の増加傾向にある発射チャープ710と、遠隔物体からの反射によって生成された、同一形状の戻り光周波数チャープ720とが比較されている。特定の時点で測定される周波数差730は、LIDAR発射器と検出された反射物体との間の距離に特有である。図7Bに示されるように、そのような線形単調光チャープから抽出されたデータの、ビート信号周波数に対する信号パワーのフーリエ変換解析により、LIDAR発射器と検出された物体との間の距離を表すパワー信号ピーク740が得られる。
【0049】
バイモーダル又はΔ形状を有する光周波数チャープ、即ち、周波数が増加する区間と周波数が減少する区間とが屈曲点でつながっている光周波数チャープからは、別の情報を抽出することが可能である。そのような光周波数チャープの立ち上がりの一例を、図8Aに示す。図8Aでは、発射チャープ810が、戻り反射チャープ820に重ね合わせられて示されている。別々の一連の周波数差830、840は、チャープの周波数が上昇する部分と周波数が下降する部分とに関連付けられる。そのような実施形態では、上昇部分の差830は、LIDAR発射器と反射物体との間の距離に関連付けられてよく、下降部分の差840は、LIDAR発射器と反射物体との間の相対速度に関連付けられてよい。図8Bに示されるように、そのような光チャープから抽出されたデータの、ビート信号周波数に対する信号パワーのフーリエ変換解析により、LIDAR発射器と検出された物体との間の距離を表すパワー信号ピーク860と、LIDAR発射器と反射物体との間の相対速度を表す、ビート信号周波数に対する信号パワーの別のピーク850とが得られる。
【0050】
図7A及び図7Bは、時間に対して光周波数が線形変化する光周波数チャープを示しているが、図9に示されるように、本発明概念の装置は、非線形形状の光周波数チャープを生成することが可能である。図示されるように、そのような光周波数チャープは、光周波数が時間に対してシグモイド傾向の変化を示す第1の区間と、光周波数が時間に対して対称的な(逆向きの)シグモイド傾向の変化を示す第2の区間と、を有してよい。図示されるように、そのような光周波数チャープ910は、振幅920もチャープの継続時間の間に変化してよい(例えば、光周波数チャープの初期部分の間に振幅が急速に増加してよく、光周波数チャープの最終部分にわたって振幅が急速に減少してよい)。本発明者らが見いだしたところによれば、そのような光周波数チャープを使用することにより、ローブ形成が抑制される一方で分解能及び信号対ノイズ比が向上する。
【0051】
図10は、本発明概念のFMGW LIDARシステムの概略図である。本発明概念の実施形態によっては、そのようなシステムを2つ以上のサブシステムに分割することが可能である。図示された例では、FMPW LIDAR1000は、4つのサブシステムに分割されている。1つのサブシステム1010は、レーザアセンブリ1015を含んでよく、レーザアセンブリ1015は、レーザ出力の線幅を狭くする為に、変調可能なWGM共振器に光結合されたレーザ源を含み、サブシステム1010は更に、検出器アセンブリ1120とを含み、検出器アセンブリ1120は、少なくとも2つの光電池と、それらの光電池からの出力を電子データの形式で統合するように動作することが可能な増幅器と、を含む。光転送装置1025(例えば、導波路)が、レーザアセンブリと検出器アセンブリとの間の光連通を与える。実施形態によっては、レーザアセンブリ及び検出器アセンブリは、別個の、明確に異なるサブシステムとして存在してよい。
【0052】
レーザアセンブリ1115は又、発射器/受信器サブアセンブリ1030とも光連通1035しており、発射器/受信器サブアセンブリ1030は、レーザアセンブリによって生成された光チャープを環境内へ送り出す発射器と、反射されたチャープを受け取る受信器とを含む。受信器は、検出器アセンブリ1020とも同様に光連通1040している。制御装置サブアセンブリ1045が、レーザアセンブリ1015及び/又は発射器/受信器サブアセンブリ1030に対して制御機能を提供することが可能である。例えば、制御装置サブシステム1045とレーザアセンブリ1015との間の電子連通により、光チャープを生成する為にWGM光共振器を(例えば、抵抗加熱器、1つ以上の圧電アクチュエータ、及び/又は1つ以上の電気接点を介して)変調することが可能である。そのような制御装置サブシステムは、発射チャープの方向づけ及び/又は走査に関連する動作を制御する為に、発射器/受信器サブシステム1030とも電子連通1055していてよい。そのような制御装置サブアセンブリ1045は又、他の構成要素の機能を制御することも可能であり、例えば、光連通の線路に組み込まれた1つ以上の光スイッチを制御することも可能である。実施形態によっては、FMCW LIDARシステムの様々な側面を制御する為に、別個の、明確に異なる制御装置サブアセンブリが使用されてよい。例えば、レーザアセンブリ1015と発射器/受信器サブアセンブリ1030とを制御する為に、別々の制御装置サブアセンブリが利用されてよい。
【0053】
検出器システム1020によって与えられる電子データは、データ分析サブシステム1065とも電子連通1060している。そのようなデータ分析サブシステムは、1つ以上の処理モジュールを含んでよく、処理モジュールには1つ以上のマイクロプロセッサが組み込まれてよい。好適なマイクロプロセッサの例として、クアルコム(QualComm(登録商標))製のSnapDragon(登録商標)シリーズのチップが挙げられる。例えば、データ分析サブシステム1065は、環境から受け取られた反射チャープと、基準となる非反射チャープとの混合データを初期処理する高速フーリエ変換モジュールを含んでよい。そのような高速フーリエ変換モジュールからの変換済みデータを、反射チャープを与えた反射面の空間座標及び/又は速度の誘導体化の為に処理モジュールに与えてよい。そのような処理モジュールは又、反射面の特性(例えば、色、組成、テクスチャなど)に関する二次情報を抽出することも可能である。データ分析サブシステム1065は、1つ以上の反射チャープから抽出されたそのようなデータを、ポイントクラウド(即ち、反射面の空間座標を表すデータ点の集合体)の形式で保管及び/又は送信することが可能である。そのようなポイントクラウドは、速度関連情報及び/又は二次情報をエンコードすることも可能である。
【0054】
本発明概念の実施形態によっては、図10に示された全てのサブアセンブリが、単一動作面(例えば、回路基板、シリコンチップなど)に設けられる。又、実施形態によっては、それらのサブアセンブリは、2つ以上の動作面に分散してよい。更に又、実施形態によっては、各サブアセンブリは、固有の動作面に設けられる。サブアセンブリが異なる複数の動作面に分散している実施形態では、通信は、物理媒体(例えば、ワイヤ又はリード)を用いて行われてよく、或いは、無線通信(例えば、WiFi、Bluetooth(登録商標)、IR、RFなど)により行われてよい。そのような無線通信は、サブアセンブリ同士が一緒に配置されていない分散型FMCW LIDARシステムにおいて利用されてよい。
【0055】
実施形態によっては、本発明概念のLIDARが乗り物支援システムに組み込まれる。そのような実施形態では、LIDARは、移動する乗り物(例えば、自動車、航空機、ドローン、及び/又は船舶)に組み込まれるか、搭載される。そのような実施形態では、FMCW LIDARは、LIDARシステムの走査範囲内にある反射物体の位置及び/又は速度に関連する空間データを与えることが可能である。そのような走査範囲は、LIDARシステムの構成に応じた平面及び/又は空間を表すことが可能である。そのようなデータはポイントクラウドとして表されてよく、各点は、反射物体に関連付けられた少なくとも2D又は3Dの空間座標を表す。実施形態によっては、反射チャープの特性(例えば、振幅及び/又は強度)は、反射物体の追加特性(例えば、組成、色、表面テクスチャなど)に関連する情報を与えることが可能である。そのような追加特性の各値は、ポイントクラウドの各点にエンコードされてよい。
【0056】
そのようなポイントクラウドデータは、乗り物に搭載されているプロセッサ、又は乗り物の外部のプロセッサによって利用されることにより、そのように装備されている乗り物の操縦を支援することが可能である。実施形態によっては、そのような支援は、乗り物の操縦者に与えられる警告及び/又はプロンプトの形式であってよい。そのような乗り物の操縦者は、乗り物の中にいてよく、或いは、乗り物を遠隔操縦していてよい。実施形態によっては、乗り物の操縦者に対する支援は、乗り物の自動応答の形式で提供されてよい。乗り物の自動応答の例として、速度変化(例えば、加速、減速、ブレーキなど)、高度変化、及び/又は方向変化などがある。そのような、乗り物の自動応答は、乗り物の操縦者へのプロンプトに続いて行われてよく、或いは自律的に行われてよい。実施形態によっては、そのような、乗り物の自動応答は、乗り物の操縦者によって行われる乗り物の制御より優先される場合があり、例えば、検出された状態が特定の条件を満たす場合には優先される場合がある。そのような条件の例として、検出された状態が、操縦者及び/又は検出された個人のけが、乗り物の損傷又は損害につながる可能性があるか、操縦者が行いうるアクションより素早いアクションを必要とする可能性があると判断される場合などがある。
【0057】
又、本発明概念の実施形態によっては、そのようなポイントクラウドデータは、乗り物に搭載されているプロセッサ、又は乗り物の外部のプロセッサによって利用されることにより、そのように装備されている乗り物に自律操縦機能を与えることが可能である。実施形態によっては、そのような自律機能性は、搭乗しているか遠隔場所にいる、乗り物の操縦者の自由裁量の下にあってよい。そのような実施形態では、乗り物は、その運行の一部分(例えば、離陸時、着陸時、歩行者の通行が多い場合など)においては乗り物の操縦者によって操縦されてよく、他の状況下では自律操縦であってよい。又、実施形態によっては、そのように装備された乗り物は完全に自律操縦である。そのような自律式の乗り物は、乗客(即ち、乗り物の操縦に関与しない人)を運ぶように構成されてよく、或いは、無人で運行するように設計されてよい。
【0058】
図11に示されるように、本発明概念のLIDARは、先進運転支援システム(ADAS)に組み込まれてよい。そのようなシステムは、運転中の安全性を高める自動/適応型且つ/又は強化された車両システムを提供する。そのようなシステムは、潜在的問題を運転者に知らせる技術を利用して衝突や事故を回避するように設計されるか、或いは、車両の想定制御により衝突を回避するように設計される。ADASは、自動照明、適応巡航制御、自動ブレーキなどの適応機能を提供することが可能であり、GPS/交通量警告を組み込むことが可能であり、スマートフォン及び/又はデータクラウドと接続することが可能である。そのようなシステムは、他の車両又は障害物の存在及び/又は接近を運転者に知らせることが可能であり、車両を所望の通行レーン内に保持することが可能であり、且つ/又は、車両のミラーでは見えないものの表示を運転者に提供することが可能である。
【0059】
本発明概念のLIDAR装置は、他車両及び路上障害物の存在、位置、及び/又は速度に関連する高精度情報を提供する小型の装置を実現することにより、改善されるADASの主要部分を提供することが可能である。図11は、ADASに組み込まれるように構成された、本発明概念のLIDARの一実施形態を示す。図示されるように、ADASが装備された車両は、光共振器と光結合されたFMレーザを含んでよく、このFMレーザは、光注入によって光共振器に同期される。光共振器と連通しているチャープ生成器により、FMレーザの出力が変調されて、光周波数チャープが与えられる。光共振器の光特性を変調することにより、光注入同期による光周波数チャープの周波数変調が行われる。光周波数チャープはビーム走査器に渡され、ビーム走査器は、光周波数チャープを外に向かわせ、戻り反射を収集する。
【0060】
ADASに組み込むことが可能な本発明概念のFMCW LIDARの一例を、図11に示す。図11に示されるように、FMレーザ1110が光共振器1120と光結合されている。この光共振器は、共振器内で光をトラップ及び/又は蓄積するように動作する1つ以上のウィスパリングギャラリモードをサポートすることが可能である。ウィスパリングギャラリモードは、FMレーザによって生成される光の1つ以上の波長に対応することが可能である。レーザからの光は、任意の好適な手段(例えば、プリズム又は光ファイバ)による結合によって光共振器に入ることが可能である。光共振器1120から光を結合によって取り出して、FMレーザ1110の光注入同期を行うことにより、その線幅が大幅に低減される。光共振器の光特性を変更することにより(例えば、抵抗加熱器で加熱したり、圧電素子で加圧したり、且つ/又は電極で電位を印加したりして変更することにより)、ウィスパリングギャラリモードに関連付けられた波長を変化させることが可能である。そのような変化が、注入同期によってFMレーザにフィードバックされることにより、FMレーザ1110の出力周波数が変化する。
【0061】
図示されるように、チャープ生成器1130が光共振器1120と連通している。そのようなチャープ生成器は、LIDAR用途で有用な、時間対周波数の1つ以上のチャープパターンを生成するように構成されてよい。好適なチャープパターンの例を、既に説明し、図7A図8A、及び図9に示した。時間に対する光共振器1120の光特性がチャープ生成器1120によって変動すると、FMレーザが光共振器に注入同期していることにより、FMレーザから光周波数チャープが発射される。そのような光チャープは、(例えば、1つ以上の光ファイバにより)他のシステム構成要素に送信されてよい。図10に示された例では、FMレーザ1110によって生成された光周波数チャープは、(例えば、ビームスプリッタにより)保持される光周波数チャープと送信される光周波数チャープとに分割される。送信される光周波数チャープは、光スイッチ1165を介して光走査器1150に向かう。そのような光走査器は、光送信機能と光受信機能の両方を有してよく、モノスタティック送受信(Tx/Rx)光学系を利用してよい。これらの活動の連係は、少なくとも部分的には、光走査器1050及びチャープ生成器1130の両方と連通している走査クロック1140によって行われる。そのような走査クロックは、不変の走査レート及び/又はチャープ生成レートを提供してよく、或いは、環境及び/又は交通の条件に応じて走査レート及び/又はチャープ生成レートを調節してよい。送信される光周波数チャープは、走査器1150から発射され、LIDARの有効範囲を規定する走査空間1155の中にある反射物体1160からの反射チャープとして戻ることが可能である。
【0062】
反射物体1060から反射された反射チャープは、走査器1150によって、光電池/増幅器アセンブリ1170に向かう。光電池/増幅器アセンブリの光電池が、反射された光周波数チャープを、対応する電気信号に変換し、この電気信号は、このアセンブリの増幅器部分において増幅される。同じ光電池/増幅器アセンブリが、対応する、保持されるチャープを別の光電池で受信し、このチャープは、対応する電気信号に変換され、同様に増幅される。
【0063】
反射されたチャープ及び保持されたチャープに対応する増幅された電気信号は、高速フーリエ変換エンジン1175において処理され、処理結果であるデータはデータ処理エンジン1180に渡され、データ処理エンジン1180は、LIDAR発射器と反射物体との間の距離、LIDAR発射器と物体との間の相対速度、及び他の任意の関連情報及び派生情報を評価する。これらのパラメータに関連するデータは、車両及び/又はポイントクラウド1190に関連付けられたADASエンジン1185に渡されてよい。そのようなポイントクラウド1090は、LIDARシステムから抽出されたデカルト座標及びポイント属性のリポジトリとして動作可能である。そのようなポイント属性は、走査角度、戻り信号の強度、及び他の、戻り信号の特性を含んでよい。そのようなデータを使用して周囲環境のモデルを生成することが可能であり、このモデルはADASに渡されてよい。或いは、ポイントクラウド1190に保管されたデータに、サードパーティが画像化目的でアクセスして、交通パターンなどに関連する情報を抽出することが可能である。
【0064】
ADASエンジン1185は、車両の外にある反射物体の距離及び相対速度に関連するデータを利用して、車両の乗員(例えば、運転者)に通知したり、且つ/又は車両システムに直接作用したりすることが可能である。実施形態によっては、ADASエンジンが車両の乗員に通知を与える。そのような通知は、可聴のアラーム又は警告であってよく、これは、例えば、車両のオーディオシステムのスピーカ、独立したオーディオシステム、及び/又は車両操縦者が装着するイヤホンを通して送られてよい。又、実施形態によっては、この通知は、車両の乗員から見える視覚ディスプレイによって与えられてよい。そのような視覚ディスプレイとしては、この目的の為の専用ディスプレイ、車両のナビゲーションシステムのディスプレイ、車両のミラーに組み込まれたディスプレイ、及び/又は車両の窓の内側に反射する「ヘッドアップ」ディスプレイがあってよい。
【0065】
又、実施形態によっては、ADASエンジン1185は、車両の動きに直接影響を及ぼす指示をシステムに与えてよい。例えば、ADASエンジンは、車両のブレーキシステム、ステアリングシステム、及び/又はエンジン加速装置の各構成要素を操作するアクチュエータをトリガする指示を与えてよい。そのような実施形態では、システムは、車両の操縦者のアクションを補助することが可能であり、或いは、車両の自律操縦又は半自律操縦を可能にすることができる。又、実施形態によっては、ADASエンジンは、車両を少なくとも部分的に操縦している車両システムに指示を与えてよい。例えば、そのようなADASエンジンは、巡航制御システムに指示を与えてよく、その自動速度制御システムは、様々な車両操縦構成要素と結合されたアクチュエータに指示を与える。或いは、そのようなADASシステムは、車両操縦者の助けを借りずに車両を操縦する自律運転システムに指示を与えてよい。
【0066】
図11では本発明概念のLIDARの、ADASへの応用を示したが、当然のことながら、本発明概念のLIDARは他の様々な用途でも有用である。例として、遠隔操縦ドローン及び自律型ドローン、農業、林業、地形マッピング、倉庫管理、拡張現実及び仮想現実(VR)システム、建設、構造センサなどがある。
【0067】
当業者であれば明らかなように、本明細書に記載の本発明概念から逸脱しない限り、既に説明したものに加えて更に多くの修正が可能である。従って、本発明対象は、添付の特許請求の範囲の趣旨にあるものを除いて、限定されるべきではない。更に、本明細書及び特許請求の範囲の両方を解釈するにあたっては、全ての語句が、文脈と調和する範囲で可能な限り広義に解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語句は、要素、構成要素、又はステップを非排他的に参照していて、参照されている要素、構成要素、又はステップが、明示的に参照されていない他の要素、構成要素、又はステップとともに存在してよく、又はそれらとともに利用されてよく、又はそれらと組み合わされてよいことを示しているものとして解釈されるべきである。本明細書の請求項がA、B、C、…、及びNからなる群から選択される何かのうちの少なくとも1つを参照する場合、その文は、AとN、或いはBとNなどではなく、その群のうちの1つの要素だけを必要としているものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11