特許第6626985号(P6626985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6626985イソシアネート組成物、イソシアネート組成物の水分散体、およびその製造方法、塗料組成物、並びに塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6626985
(24)【登録日】2019年12月6日
(45)【発行日】2019年12月25日
(54)【発明の名称】イソシアネート組成物、イソシアネート組成物の水分散体、およびその製造方法、塗料組成物、並びに塗膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20191216BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 18/78 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 18/77 20060101ALI20191216BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20191216BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20191216BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20191216BHJP
   C07C 265/00 20060101ALI20191216BHJP
【FI】
   C08G18/08 004
   C08G18/00 C
   C08G18/78 025
   C08G18/80
   C08G18/77 010
   C08G18/28 015
   C09D175/04
   C09D5/02
   C07C265/00
【請求項の数】21
【全頁数】75
(21)【出願番号】特願2018-545081(P2018-545081)
(86)(22)【出願日】2017年10月13日
(86)【国際出願番号】JP2017037264
(87)【国際公開番号】WO2018070532
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203091(P2016-203091)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203096(P2016-203096)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203142(P2016-203142)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-203143(P2016-203143)
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】福地 崇史
(72)【発明者】
【氏名】三輪 祐一
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−44649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/08
C08G 18/00
C08G 18/28
C08G 18/77
C08G 18/78
C08G 18/80
C09D 5/02
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるイソシアネート化合物を含む、イソシアネート組成物:
【化1】
一般式(I)中、1は、活性水素含有親水性化合物とイソシアネート基との反応構造を含む残基であり、前記反応構造はウレア基であってもよく、Aは、水とトリイソシアネートとイソシアネート基との反応構造であるウレア基を含む残基であり、前記一般式(I)中のイソシアネート基とウレア基の総モル数に対する前記ウレア基のモル分率が0.01モル%以上10モル%以下であり、の平均数とm2の平均数とnの平均数の和(m1+m2+n)は3であり、mは1以上の整数であり、m2は0以上の整数であり、
Rは、下記一般式(II)で表される基であり
【化2】
一般式(II)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、或いは、エステル構造及びエーテル構造の少なくとも一つを含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、波線は結合手である。
【請求項2】
前記複数存在するYのうち少なくとも1つはエステル構造を含む、請求項1に記載のイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記活性水素含有親水性化合物は、アニオン性化合物、カチオン性化合物、及びノニオン性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のイソシアネート組成物。
【請求項4】
さらに、リン酸化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記活性水素含有親水性化合物は、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、及びスルホン酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアニオン性化合物である、請求項3または4に記載のイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記アニオン性化合物は、前記スルホン酸基を含有する化合物を含み、
前記スルホン酸基を含有する化合物は、水酸基を含有するスルホン酸、及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記活性水素含有親水性化合物は、前記カチオン性化合物であり、前記カチオン性化合物は、アミノ基を含有する化合物を含み、かつ、アニオン基を有する化合物で中和されたものである、請求項3または4に記載のイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記活性水素含有親水性化合物は、前記ノニオン性化合物であり、前記ノニオン性化合物は、下記一般式(III)を含むポリアルキレングリコールエーテルである、請求項3または4に記載のイソシアネート組成物:
【化3】
一般式(III)中、Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基を示し、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキレングリコール繰り返し単位yの平均数は3.0以上20以下である。
【請求項9】
前記一般式(I)におけるnが1以上の整数であり、前記一般式(I)で表されるイソシアネート化合物の、イソシアネート基の少なくとも一部がブロック剤で保護されている、請求項1〜のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のイソシアネート組成物を含む塗料組成物。
【請求項11】
更に水を含む、請求項10に記載の塗料組成物。
【請求項12】
水と、水中に分散したイソシアネート組成物と、を含む、イソシアネート組成物の水分散体であって、
前記イソシアネート組成物は、下記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物および下記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のうち、少なくとも1種を含み、
前記イソシアネート組成物の平均分散粒子径が200nm以上8000nm以下である、イソシアネート組成物の水分散体:
【化4】
一般式(IV)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造およびエーテル構造の少なくとも一つを含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、
【化5】
一般式(V)中、Yはエステル構造を含む炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
【請求項13】
前記イソシアネート組成物は、前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物を含み、前記複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含む、請求項12に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【請求項14】
前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物または前記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部に親水性基が付加されており、前記イソシアネート組成物の総量に対して、前記親水性基の比率が0.5質量%以上5質量%以下である、請求項12または13に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【請求項15】
前記イソシアネート組成物が、下記一般式(VI)で示されるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物を更に含む、請求項1214のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体:
【化6】
一般式(VI)中、Raは有機基であり、複数あるRaのうち少なくとも1つは下記一般式(VII)で表される基であり、複数あるRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、Ra’は少なくとも1価のアルコールからヒドロキシル基の一つを除去した残基であり、
【化7】
前記一般式(VII)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及びエーテル構造の少なくとも一つを含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基であり、複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよく、複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含み、Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、波線は結合手を意味する。
【請求項16】
有機溶剤をさらに含む、請求項1215のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【請求項17】
前記有機溶剤の20℃における水への溶解度が5質量%以上である、請求項16に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【請求項18】
前記イソシアネート組成物が、脂肪族、脂環族、又は芳香族のイソシアネート基を有するジイソシアネートを重合したポリイソシアネートをさらに含む、請求項1217のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【請求項19】
請求項1218のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体の製造方法であって、撹拌翼を用いて撹拌混合しながら、前記イソシアネート組成物を水中に滴下する工程を含む、イソシアネート組成物の水分散体の製造方法。
【請求項20】
請求項1218のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体と、ポリオールとを含む、塗料組成物。
【請求項21】
請求項1011、又は20に記載の塗料組成物を硬化した塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート組成物、イソシアネート組成物の水分散体、およびその製造方法、塗料組成物、並びに塗膜に関する。
本願は、2016年10月14日に日本に出願された、特願2016−203142号、特願2016−203096号、特願2016−203143号、及び特願2016−203091号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジイソシアネートや脂環式ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物を硬化剤として含む塗料組成物からなる塗膜は、耐候性や、耐薬品性、耐摩耗性等に優れた性能を示す。
近年、地球環境保護の高まりから、硬化剤として使用されるポリイソシアネートの低粘度化に向けた技術開発が盛んに行われている。ポリイソシアネートを低粘度化することにより、塗料組成物に使用される有機溶剤の使用量を低減できるからである(特許文献1、2)。しかし、これらの技術では、イソシアネート基官能基数が低下することにより、乾燥性が低下する場合があった。
前記課題解決の為、イソシアネート基官能基数を維持し、低粘度化する技術が開示されている(特許文献3)。
さらに、地球環境保護や労働安全衛生などの観点から、塗料組成物の水系化が望まれている。
例えば、ポリイソシアネート中にノニオン親水基を導入する方法(特許文献4、5、6)により、水への分散性を可能にしている。
特許文献7には、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートとモノオールのアルキレンオキサイドの付加物に、アロファネート基含有ポリイソシアネートを混合し、水分散性を付与したポリイソシアネート組成物が開示されている。
特許文献8には、親水性基を付加させることなくイソシアネート基数を維持して、低粘度とすることで水分散することができ、得られた塗膜の耐久性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−222007号公報
【特許文献2】特許第3055197号公報
【特許文献3】特許第5178200号公報
【特許文献4】特開平05−222150号公報
【特許文献5】特開平09−328654号公報
【特許文献6】特開平2000−44649号公報
【特許文献7】特開2003−073447号公報
【特許文献8】特開平11−286649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献4または5に記載のポリイソシアネート組成物は、高粘度であるため、水分散性や塗膜の耐水性が悪くなる懸念があった。
特許文献6に記載のポリイソシアネート組成物は、付加するノニオン親水基のモル比率によって、塗膜の耐水性が悪くなるという課題があった。
特許文献7に記載のポリイソシアネート組成物は、塗膜の乾燥性等が不十分であるという課題があった。
特許文献8で開示された技術では、安定した水への分散性にさらなる課題を有していた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、低粘度であり、水分散性、乾燥性、耐水性、耐水密着性、塗膜外観に優れたイソシアネート組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】

本発明は以下の態様を含む。
(1)一般式(I)で表されるイソシアネート化合物を含む、イソシアネート組成物。
【0006】
【化1】
【0007】
一般式(I)中、1は、活性水素含有親水性化合物とイソシアネート基との反応構造を含む残基であり、前記反応構造はウレア基であってもよく、Aは、水とトリイソシアネートとイソシアネート基との反応構造であるウレア基を含む残基であり、前記一般式(I)中のイソシアネート基とウレア基の総モル数に対する前記ウレア基のモル分率が0.01モル%以上10モル%以下であり、の平均数とm2の平均数とnの平均数の和(m1+m2+n)は3である。ただし、mは1以上の整数であり、m2は0以上の整数である。
Rは、下記一般式(II)で表される基である。
【0008】
【化2】
【0009】

一般式(II)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、或いは、エステル構造及びエーテル構造の少なくとも1つを含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子、又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。波線は結合手である。
(2) 前記複数存在するYのうち少なくとも1つはエステル構造を含む、前記(1)に記載のイソシアネート組成物。
(3) 前記活性水素含有親水性化合物は、アニオン性化合物、カチオン性化合物、及びノニオン性化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上である、前記(1)または(2)に記載のイソシアネート組成物。
(4) さらに、リン酸化合物を含む、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物。
(5) 前記活性水素含有親水性化合物は、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、及びスルホン酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上のアニオン性化合物である、前記(3)または(4)に記載のイソシアネート組成物。
(6) 前記アニオン性化合物は、前記スルホン酸基を含有する化合物を含み、
前記スルホン酸基を含有する化合物は、水酸基を含有するスルホン酸、及びアミノ基を含有するスルホン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、前記(5)に記載のイソシアネート組成物。
(7) 前記活性水素含有親水性化合物は、前記カチオン性化合物であり、前記カチオン性化合物は、アミノ基を含有する化合物を含み、アニオン基を有する化合物で中和されたものである、前記(3)または(4)に記載のイソシアネート組成物。
(8) 前記活性水素含有親水性化合物は、前記ノニオン性化合物であり、前記ノニオン性化合物は、下記一般式(III)を含むポリアルキレングリコールエーテルである、前記(3)または(4)に記載のイソシアネート組成物。
【0010】
【化3】
【0011】
一般式(III)中、Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基を示し、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキレングリコール繰り返し単位yの平均数は3.0以上20以下である。
(9) 前記一般式(I)におけるnが1以上の整数であり、前記一般式(I)で表されるイソシアネート化合物の、イソシアネート基の少なくとも一部がブロック剤で保護されている、前記(1)〜()のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物。
10) 前記(1)〜()のいずれか1項に記載のイソシアネート組成物を含む塗料組成物。
11) 更に水を含む、前記(10)に記載の塗料組成物。
12) 水と、水中に分散したイソシアネート組成物と、を含む、イソシアネート組成物の水分散体であって、
前記イソシアネート組成物は、下記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物および下記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のうち、少なくとも1種を含み、
前記イソシアネート組成物の平均分散粒子径が200nm以上8000nm以下である、イソシアネート組成物の水分散体。
【0012】
【化4】
【0013】

一般式(IV)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造およびエーテル構造の少なくとも1つを含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子または炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。
【0014】
【化5】
【0015】
一般式(V)中、Yはエステル構造を含む炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
13) 前記イソシアネート組成物は、前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物を含み、前記複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含む、前記(12)に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
14) 前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物または前記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部に親水性基が付加されており、前記イソシアネート組成物の総量に対して、前記親水性基の比率が0.5質量%以上5質量%以下である、前記(12)または(13)に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
15) 前記イソシアネート組成物が、下記一般式(VI)で示されるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物を更に含む、前記(12)〜(14)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【0016】
【化6】
【0017】

一般式(VI)中、Raは有機基である。複数あるRaのうち少なくとも1つは下記一般式(VII)で表される基である。複数あるRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Ra’は少なくとも1価のアルコールからヒドロキシル基の一つを除去した残基である。
【0018】
【化7】
【0019】
一般式(VII)中、複数あるYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数あるYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。但し、複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含む。Rは、水素原子又は炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。波線は結合手を意味する。
16) 有機溶剤をさらに含む、前記(12)〜(15)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
17) 前記有機溶剤の20℃における水への溶解度が5質量%以上である、前記(16)に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
18) 前記イソシアネート組成物が、脂肪族、脂環族、又は芳香族のイソシアネート基を有するジイソシアネートを重合したポリイソシアネートをさらに含む、前記(12)〜(17)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体。
【0020】
19) 前記(12)〜(18)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体の製造方法であって、撹拌翼を用いて撹拌混合しながら、イソシアネート組成物を水中に滴下する工程を含む、イソシアネート組成物の水分散体の製造方法。
20) 前記(12)〜(18)のいずれか一項に記載のイソシアネート組成物の水分散体と、ポリオールとを含む、塗料組成物。
21) 前記(10)、(11)、または(20)に記載の塗料組成物を硬化した塗膜。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低粘度と水分散性、乾燥性、耐水性、耐水密着性、塗膜外観に優れたイソシアネート組成物、それを含む塗料組成物、及びその塗料組成物からなる硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】

以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0023】

本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(−NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体をいう。
本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(−OH)を有する化合物をいう。
本明細書において、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリルとアクリルを包含し、「(メタ)アクリレート」はメタクリレートとアクリレートを包含するものとする。
【0024】

<イソシアネート組成物>
本発明の第1の実施形態のイソシアネート組成物は、一般式(I)で表されるイソシアネート化合物を含む。
【0025】
【化8】
【0026】

一般式(I)中、Aは、活性水素含有親水性化合物とイソシアネート基との反応構造を含む残基であり、mの平均数とnの平均数の和(m+n)は3である。ただし、mは1以上の整数である。ここで、「平均数」とは1つの分子中に存在するイソシアネート基の数の平均値を意味する。
Rは、下記一般式(II)で表される基である。
【0027】
【化9】
【0028】

一般式(II)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、或いは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。波線は結合手である。
前記複数存在するYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むことが好ましい。
【0029】

〔A〕
一般式(I)中、Aは、活性水素含有親水性化合物とイソシアネート基との反応構造を含む残基であり、例えば、下記式(A−1),(A−2),または(A−3)で示される。
【0030】
【化10】
【0031】

前記式中、Rxは、各々独立して、前記活性水素含有親水性化合物における活性水素含有官能基を除いた残基、または、下記一般式(iii)で示される基を示し、波線は結合手を示す。
【0032】
【化11】
【0033】
前記式中、Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基を示し、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、yは3以上20以下である。
【0034】

〔m、n〕
一般式(I)中、mの平均数とnの平均数の和(m+n)は3である。ただし、mは1以上の整数である。nは0以上の整数である。
【0035】

〔R〕
一般式(I)中、Rは、一般式(II)で表される基である。
【0036】
【化12】
【0037】

一般式(II)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、或いは、エステル構造及び/又はエーテル構造を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Rは、水素原子又は、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜5)の1価の炭化水素基である。波線は結合手である。
前記複数存在するYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むことが好ましい。
【0038】

・一般式(II)
〔Y
一般式(I)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造[−C(=O)−O−]及び/又はエーテル構造(−O−)を含んでもよい炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
前記複数あるYのうち少なくとも1つは、エステル構造を含むことが好ましい。
エステル構造及び/又はエーテル構造を含む炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、−(CHn1−X−(CHn2−で表される基(n1及びn2はそれぞれ独立して、0〜10(好ましくは1〜4)の整数である。但し、n1及びn2の両方とも0になることはなく、n1、n2のうち、NCOと結合している側は1以上であることが好ましい。Xは、エステル基またはエーテル基である)が挙げられる。
【0039】

〔R
は、水素原子又は、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3)の1価の炭化水素基である。Rにおける炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基である。Rとしては、水素原子が好ましい。
【0040】

前記式(II)に示される基の元となるトリイソシアネートの分子量は139以上1000以下であることが好ましい。
分子量の下限値は、150以上がより好ましく、180以上が特に好ましく、200以上が殊更好ましい。
分子量の上限値は、800以下がより好ましく、600以下が特に好ましく、400以下が殊更好ましい。
分子量が前記下限値以上であることにより、結晶性を抑制することができ、前記上限値以下であることにより、低粘度化を達成しやすくなる。
【0041】

前記トリイソシアネートは、低粘度とするため、複数存在するY中の炭化水素基が脂肪族基及び/又は芳香族基を有することが好ましい。さらに、Rは水素であることがさらに好ましい。
また、塗料組成物の硬化剤として使用した際の耐候性を良好とするため、複数存在するY中の炭化水素基が脂肪族基及び/又は脂環族基を有することが好ましい。
【0042】

別途、耐熱性を向上するため複数存在するYのうち少なくとも1つが、エステル基を有することが好ましい。
別途、耐加水分解性を向上するためには、複数存在するYのうち少なくとも1つが、エーテル構造を有する炭化水素基で構成されていることが好ましい。
【0043】

一般式(I)で表されるイソシアネート化合物は、例えば、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(以下、NTIと言う、分子量251)、特開昭57−198760号公報に開示されている1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、HTIと言う、分子量209)、特公平4−1033号公報に開示されているビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート(以下、GTIと言う、分子量311)、又は、特開昭53−135931号公報に開示されているリジントリイソシアネート(以下、LTIと言う、分子量267)などのトリイソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素含有親水性化合物を反応させることで得ることができる。
前記トリイソシアネート化合物の中では、イソシアネート基の反応性をより向上できる観点から、NTI、GTI又はLTIが好ましく、NTI又はLTIがより好ましく、LTIが特に好ましい。
【0044】

前記トリイソシアネートは、アミノ酸誘導体やエーテルアミン、アルキルトリアミン等のアミンをイソシアネート化して得ることができる。アミノ酸誘導体としては、例えば2,5−ジアミノ吉草酸、2,6−ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等を用いることができる。これらアミノ酸はジアミンモノカルボン酸またはモノアミンジカルボン酸であるので、カルボキシル基を、例えばエタノールアミン等のアルカノールアミンでエステル化することで、エステル基を有するアミンとすることができる。これにより、得られるエステル基を有するトリアミンはホスゲン化等によりエステル構造を含むトリイソシアネートとすることができる。
エーテルアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレントリアミンである三井化学ファイン社の商品名「T403」などが挙げられる。これらはトリアミンであり、アミンのホスゲン化などによりエーテル構造を含むトリイソシアネートとすることができる。
アルキルトリアミンとしては、例えば、トリイソシアナトノナン(4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン)などが挙げられる。これはトリアミンであり、アミンのホスゲン化などにより炭化水素のみを含むトリイソシアネートとすることができる。
【0045】

一般式(I)で表されるイソシアネート化合物は、下記一般式(I)−1〜(I)−3のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0046】
【化13】
【0047】

一般式(I)−1、(I)−2、及び(I)−3中、A、Y、及びRには、前記一般式(I)または前記一般式(II)中のA、Y、Rと同じ意味を表す。
【0048】

本実施形態のイソシアネート組成物の25℃における粘度は、特に制限を受けないが、5mPa・s以上1,000mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上500mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以上250mPa・s以下であることが特に好ましい。
前記下限値以上では、硬化性が優れる傾向があり、前記上限値以下では、作業性が優れる傾向がある。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0049】

本実施形態のイソシアネート組成物における1分子あたりの平均NCO基数(平均官能基数)は、乾燥性および耐水性の点で、2.0以上3.0以下が好ましく、2.1以上3.0以下がより好ましく、2.2以上3.0以下がより更に好ましく、2.5以上3.0以下が特に好ましい。
【0050】

[活性水素含有親水性化合物]
本実施形態における活性水素含有親水性化合物は、特に限定されないが、アニオン性化合物、カチオン性化合物、及びノニオン性化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。また、前記アニオン性化合物、カチオン性化合物、及びノニオン性化合物は、各々独立に、イソシアネート組成物が含むイソシアネート基と反応させるために、活性水素基を含有していることが好ましい。活性水素基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基、メルカプト基、及びカルボン酸基が挙げられる。
【0051】

・アニオン性化合物
アニオン性化合物は、特に限定されないが、カルボン酸基を含有する化合物、リン酸基を含有する化合物、及びスルホン酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、リン酸基を含有する化合物及びスルホン酸基を含有する化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0052】

カルボン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリヒドロキシカルボン酸等の水酸基を含有するカルボン酸が挙げられ、この中でも、ヒドロキシピバル酸、及びジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0053】

リン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、及び特定のポリエーテルホスホネート(例えばRHODAFAC(登録商標)の商品名で市販されているもの(ソルベイ日華株式会社))が挙げられ、この中でも、酸性リン酸エステルが好ましく、下記式(B)で示される酸性リン酸エステルが好ましい。
【0054】
【化14】
【0055】
前記式中、Rbは、炭素数2〜10(好ましくは炭素数3〜8)のアルキル基を示し、fは1または2を示す。
【0056】

水分散性の観点から、イソシアネート組成物は、該イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。リン原子の含有率が前記下限値以上であることで界面張力が下がり、より良好な水分散性を示す傾向にある。
【0057】

また、イソシアネート組成物は、塗膜物性の観点から、イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が6.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが特に好ましい。リン原子の含有率が前記上限値以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなることに起因して、塗膜物性がより良好となる傾向にある。
【0058】

前記含有率を前記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、前記リン酸基を含有する化合物と原料イソシアネート組成物との配合比を調整する方法が挙げられる。また、前記含有率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0059】

アニオン性化合物は、スルホン酸基を含有する化合物であることが好ましい。スルホン酸基を含有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸、4−ヒドロキシブタンスルホン酸、5−ヒドロキシペンタンスルホン酸、6−ヒドロキシヘキサンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸、特定のポリエーテルスルホネート、例えばTegomer(登録商標)の商品名で市販されているもの(The Goldschmidt AG,Essen,ドイツ)等の水酸基を含有するスルホン酸が挙げられる。また、2−アミノエタンスルホン酸、2−メチルアミノエタンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−アミノトルエン−2−スルホン酸、5−アミノトルエン−2−スルホン酸、2−アミノナフタレン−4−スルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸等のアミノ基を含有するスルホン酸が挙げられる。
【0060】

前記の中でも、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、3−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のヒドロキシC1−6アルカンスルホン酸類、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ(メチル)ベンゼンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、及び3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸が好ましく、ヒドロキシC1−6アルカンスルホン酸類がより好ましく、2−ヒドロキシエタンスルホン酸又は3−ヒドロキシプロパンスルホン酸がより更に好ましい。
【0061】

アニオン性化合物のカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性基は、無機塩基や有機アミン化合物で中和することが好ましい。無機塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、カドミウム、鉛、アルミニウム等の金属;アンモニアが挙げられる。
【0062】

有機アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリトリデシルアミン、トリステアリルアミンのような直鎖三級アミン類;トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミンのような分岐三級アミン類;N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジエチルブチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルラウリルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルブチルアミン、N,N−ジイソプロピル−2−エチルヘキシルアミン、のような混合炭化水素基を有する三級アミン類等の他に、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミンのような脂環三級アミン類;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチル−4−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジエチルフェニルアミン、N,N−ジフェニルメチルアミンのような芳香環置換基を持つ三級アミン類;N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−ブチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−プロピルモルホリン、N−ブチルモルホリン、N−sec−ブチルモルホリン、N−tert−ブチルモルホリン、N−イソブチルモルホリン、キヌクリジンのような環状アミン類等、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0063】

上述した中で好ましい例としては、総炭素数5〜30の三級のアミン類から選ばれる少なくとも一種が挙げられ、その具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリデシルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、トリ分岐トリデシルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルイソブチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチル(分岐)トリデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジエチルブチルアミン、N,N−ジエチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチル−2−エチルヘキシルアミン、N,N−ジエチルラウリルアミン、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジエチルフェニルアミン、N,N−ジフェニルメチルアミン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、キヌクリジン、ピリジン、キノリン等、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。より好ましくは、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のトリ(C1−6アルキル)アミン類、N,N−ジイソプロピルメチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等のN,N−ジイソプロピル(C1−6アルキル)アミン類、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン等のN,N−(ジC1−6アルキル)シクロヘキシルアミン類が挙げられる。
【0064】

ポリイソシアネートを水に分散させるために、親水性化合物で変性を行うが、変性する割合を高くしすぎないことにより、塗膜物性(硬度、耐溶剤性、耐水性)の低下を抑制できる傾向にある。すなわち、アニオン性化合物は乳化力が高いため、少量で高い乳化効果を得ることができる。
【0065】

水分散性の観点から、イソシアネート組成物は、該イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、硫黄原子の含有率が0.03質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.08質量%以上であることが特に好ましい。硫黄原子の含有率が前記下限値以上であることで、界面張力が下がることに起因して、より良好な水分散性を示す傾向がある。
【0066】

また、イソシアネート組成物は、塗膜物性の観点から、イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、硫黄原子の含有率が3.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが特に好ましい。前記含有率が前記上限値以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなることに起因して、塗膜物性がより良好となる傾向にある。
【0067】

前記含有率を前記範囲に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、前記スルホン酸基を含有する化合物と原料イソシアネート組成物との配合比を調整する方法が挙げられる。また、前記含有率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0068】

原料イソシアネート組成物と前記アニオン性化合物とを反応させる方法として、以下のものに限定されないが、例えば、原料イソシアネート組成物のイソシアネート化合物が有する末端イソシアネート基と、前記アニオン性化合物が有する活性水素基とを反応させる方法が挙げられる。
【0069】

・カチオン性化合物
カチオン性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N,N‘−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−(ジメチルアミノプロピル)アミノエタノール等の水酸基を含有するアミン化合物が挙げられ、ポリイソシアネートに変性された三級アミノ基(カチオン型親水基)は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。この中でも、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、及びN,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノールが好ましい。
【0070】

カチオン性化合物の三級アミノ基は、アニオン基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン基としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、及び硫酸基が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、及び乳酸が挙げられる。また、前記スルホン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、エタンスルホン酸が挙げられる。さらに、前記隣酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、隣酸、及び酸性隣酸エステルが挙げられる。またさらに、前記ハロゲン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩酸が挙げられる。さらにまた、前記硫酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、硫酸が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基を1つ有する化合物が好ましく、より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸である。
【0071】

・ノニオン性化合物
ノニオン性化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられ、また、このポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、下記一般式(III)で表される構造を有することが好ましい。
【0072】
【化15】
【0073】

一般式(III)中、Yは炭素原子数1〜4のアルキレン基を示し、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を示し、アルキレングリコール繰り返し単位yの平均数は3.0以上20以下である。
【0074】

〔Y
一般式(III)中のYは、炭素原子数1〜4のアルキレン基である。該アルキレン基としては、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。親水性付与の観点から、炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましい。また、より親水性が付与できる観点から、炭素原子数2のエチレン基がより好ましい。
【0075】

〔R
一般式(III)中のRは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
親水性付与の観点から、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましい。より親水性が付与できる観点から、メチル基がより好ましい。
ポリイソシアネートを水系主剤に配合する際、主剤と混ぜたときの増粘が問題となる場合が多い。増粘が多い場合は、ポリイソシアネートが主剤へ均一に分散することができず、塗膜物性の低下につながる傾向にある。
【0076】

アルキレングリコール繰り返し単位yの平均数は、水分散性と主剤への分散性との観点から、3.0以上20以下が好ましく、3.5以上16以下がより好ましく、4.0以上12以下がより更に好ましく、6.0以上12以下が特に好ましい。yの平均数が前記下限値以上であると、乳化力が増すため分散性が向上する傾向にあり、前記上限値以下であると、粘度上昇を防ぐため、容易に分散することができる傾向にある。前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルは、nの平均数が異なるものを1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。原料のポリアルキレングリコールアルキルエーテルのnの平均数は、後述する実施例に記載の方法により測定する。
【0077】

ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、以下のものに限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテル、ポリ(エチレン、プロピレン)グリコール(モノ)メチルエーテル、及びポリエチレングリコール(モノ)エチルエーテルが挙げられる。親水性付与の観点から、ポリエチレングリコール(モノ)メチルエーテルが好ましい。
【0078】

ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが有する水酸基の数は、イソシアネート組成物の粘度を低くする観点から、好ましくは1つである。
本実施形態におけるイソシアネート組成物において、該イソシアネート組成物の総質量(100質量%)のうち、前記親水性化合物に由来する部分(前記一般式(I)における残基A)の含有率は、0.5質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。下限値は、水分散性の点で、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。また、上限値は、乾燥性、耐水性の点で、40質量%がより好ましく、35質量%が特に好ましく、30質量%が殊更好ましい。
【0079】

前記親水性化合物に由来する部分(好ましくは、前記一般式(III)で示されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルに由来する前記一般式(iii)で示される基)の含有率が0.5質量%以上50質量%以下であることで、架橋に使用されるイソシアネート基が多くなり、塗膜物性(外観、硬度、表面乾燥性、及び耐水性)並びに、湿気安定性がより良好となる傾向にある。
【0080】

前記含有率を0.5質量%以上50質量%以下に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、前記含有率は、実施例中に記載する方法により測定する。
本実施形態におけるイソシアネート組成物中において、前記親水性化合物が変性された割合(変性率)は、原料のポリイソイソシアネートのイソシアネート基100当量に対して、イソシアネート基と反応した前記親水性化合物に結合した活性水素基の割合である。
【0081】

前記変性率は、0.1モル%以上50モル%以下が好ましい。下限値は、水分散性の点で、0.2モル%がより好ましく、0.3モル%が特に好ましく、0.4モル%が殊更好ましい。また、上限値は、低粘度、乾燥性、耐水性の点で、40モル%がより好ましく、35モル%が特に好ましく、30モル%が殊更好ましい。
変性率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0082】
[ウレア基のモル比率]
本実施形態のイソシアネート組成物のうち、前記一般式(I)中のAはイソシアネート基に由来するウレア基を有し、前記一般式(I)中のイソシアネート基とウレア基の総モル数に対する、イソシアネート基に由来するウレア基のモル分率(ウレア基/(イソシアネート基+ウレア基)×100)が0.01モル%以上10モル%以下であることが好ましい。下限値は、耐水密着性向上の点で、0.02モル%がさらに好ましく、0.04モル%が特に好ましい。また上限値は、低粘度および水分散性、耐水性の点で、5モル%がさらに好ましく、2モル%が特に好ましい。
【0083】
このモル分率は、以下の方法により測定する。
イソシアネート組成物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解した後、13C−NMR(Bruker社製、FT−NMR DPX−400)により測定する。化学シフト基準は、重水素クロロホルムの炭素原子のシグナル77.0ppmとする。157.8ppm付近のウレア基の炭素原子のシグナルの面積と、121.5ppm付近のイソシアネート基の炭素原子のシグナルの面積とを測定し、得られた面積に基づいて、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とウレア基の総モル数に対する、イソシアネート基に由来するウレア基のモル分率が算出される。イソシアネートがブロックイソシアネート化合物である場合においても、同様の方法で算出される。
【0084】

[リン酸化合物]
本実施形態のイソシアネート組成物はリン酸化合物を含むことが好ましい。
リン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性次亜リン酸エステル、及び特定のポリエーテルホスホネート(例えばRHODAFAC(登録商標)の商品名で市販されているもの(ソルベイ日華株式会社))が挙げられ、この中でも、酸性リン酸エステルが好ましい。
酸性リン酸エステルは、酸性基とエステル基を有する化合物であり、例えば、炭素数2〜8のモノアルキルホスフェート、モノアルキルホスファイト、または、炭素数4〜16のジアルキルホスフェート、ジアルキルホスファイト、または、ジラウリルホスフェート、ジフェニルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノフェニルホスフェート、ジラウリルホスファイト、ジフェニルホスファイト、モノラウリルホスファイト、モノフェニルホスファイト等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜8のモノアルキルホスフェート、または、炭素数6〜16のジアルキルホスフェート、より好ましくは、モノブチルホスフェート等炭素数3〜8のモノアルキルホスフェートである。添加する種類は1種類でも良いし、2種類以上をまとめて、または順に添加してもよい。
【0085】

前記リン酸化合物の含有下限量は、水分散性の点で、前記イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子としての含有率が0.0001質量%以上であることが好ましく、0.0002質量%以上であることがより好ましく、0.0005質量%以上であることがさらに好ましい。
【0086】

また、上限量は、塗膜外観の点から、イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、リン原子の含有率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることが更に好ましい。
前記リン酸化合物を添加するのは、例えば、前記トリイソシアネート化合物と前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとを反応させる前でも反応中でも、反応後でもよいが、水分散性をより向上させる点で、反応させる前に添加することが好ましい。前記含有率は、実施例中に記載する方法により測定することができる。
【0087】

<水分散ポリイソシアネートの製造方法>
トリイソシアネートと前記親水性化合物とを反応させる方法として、特に限定されないが、例えば、トリイソシアネートが有するイソシアネート基と、前記親水性化合物が有する活性水素基とを反応させる以下の方法が挙げられる。
【0088】

反応工程において、反応温度や反応時間は、反応の進行に応じて適宜決められるが、反応温度は0℃以上150℃以下であることが好ましく、反応時間は0.5時間以上48時間以下であることが好ましい。
【0089】

また、反応工程において、場合により公知の触媒を使用してもよい。触媒として、具体的には、オクタン酸スズ、2−エチル−1−ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2−エチル−1−ヘキサン酸亜鉛、2−エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;有機チタン化合物;有機ジルコニウム化合物;トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類;トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類が挙げられる。これらは単独又は混合して使用してもよい。これらの中でも、ジブチルスズジラウレート等の有機スズ化合物が好ましい。
【0090】

さらに、イソシアネート組成物のうち、前記一般式(I)中のイソシアネート基に由来するウレア基のモル分率(ウレア基/(イソシアネート基+ウレア基)×100)が0.01モル%以上10モル%以下とするために、水が含有されている状態で反応を進行させることがさらに好ましい。水は、原料として既に含有している親水性化合物を添加する方法でもよく、前記トリイソシアネートと前記親水性化合物を反応させる前に水を添加する方法でもよく、前記トリイソシアネートと前記親水性化合物を反応させた後に水を添加し、加熱撹拌する方法でもよい。好ましい水の含有率は、トリイソシアネートと前記親水性化合物の合計量に対して、10ppm以上5000ppm以下である。下限値は耐水密着性が優れる点で30ppmがより好ましく、50ppmがさらに好ましい。また、上限値は乾燥性と耐水性の点で3000ppmがより好ましく、1000ppmがさらに好ましい。
【0091】

本実施形態におけるイソシアネート組成物の製造方法において、溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよい。本実施形態のイソシアネート組成物の製造方法に用いられる溶剤は、親水性溶剤でも疎水性溶剤でもよい。
【0092】

疎水性溶剤として、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS(Low Aromatic White Spirit)、HAWS(High Aromatic White Spirit)、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。これらの中でも、アセトン等のケトン類が好ましい。
【0093】

親水性溶剤として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルアルコール類のエステル類が挙げられる。これらは単独又は混合して使用することができる。これらの中でも、2−エチルヘキサノール等のC1〜8アルコール類やジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジC1−4アルキレングリコールジC1−3アルキルエーテル類が好ましい。
【0094】

本実施形態のイソシアネート組成物の製造方法において、前記親水性化合物と、トリイソシアネートとを加えて、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに添加してもよい。
【0095】

<その他のイソシアネート化合物>
本実施形態のイソシアネート組成物は、前記イソシアネート化合物と異なるイソシアネート化合物と混合して用いることができる。
前記その他のイソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族のイソシアネート基を有するジ−、もしくはポリ−イソシアネートが例示される。前記ジイソシアネートとしては例えば、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(1,3−H6−XDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチル−シクロヘキシルイソアネート(IMCI);イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)−ノルボルナン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2)ベンゼンおよび4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などが挙げられる。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、HDI、IPDIが好ましい。これらジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
前記ポリイソシアネートとは、触媒を用いたり、加熱をしたりすることにより、前記ジイソシアネートを重合したものであり、分子中にイソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、イミノジオキサジアジンジオン構造、ウレタン構造、ビュレット構造などが含まれる。中でも、耐候性の観点からイソシアヌレート構造を有するものが好ましい。前記ポリイソシアネートは、活性水素基と親水性基を含有する化合物(親水性基含有化合物)とイソシアネート基を反応させ、親水性基を付加した親水性ポリイソシアネートとすることもできる。
前記イソシアネート化合物と、ポリイソシアネートとの質量比率は、低粘度と水分散性、耐水性の点で、イソシアネート化合物/ポリイソシアネートで、5/95以上100/0以下が好ましい。また、10/90以上100/0以下がより好ましく、20/80以上100/0以下がさらに好ましい。
【0096】

<ブロックイソシアネート組成物>
本実施形態のイソシアネート組成物は、ブロック剤によって一般式(I)で表されるイソシアネート化合物の、イソシアネート基の少なくとも一部を保護し、ブロックイソシアネート組成物とすることができる。ブロック剤としては、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等が挙げられる。より具体的なブロック剤の例を下記に示す。
【0097】

(1)アルコール系;メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどのアルコール類、(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等、(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、(13)重亜硫酸塩;重亜硫酸ソーダ等、(14)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等、(15)トリアゾール系;3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール等、がある。
【0098】

イソシアネート組成物とブロック剤とのブロック化反応は溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いる必要がある。ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩及び3級アミン系化合物、ナトリウムなどのアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。反応は、一般に−20から150℃で行うことが出来るが、30℃以上100℃以下が好ましい。−20℃以上では、反応速度が速くなる傾向にあり、150℃以下では、副反応を起こさない傾向にある。
【0099】

上述したブロック剤の中でも、入手容易性並びに製造したブロックイソシアネート組成物の粘度、反応温度、及び反応時間の観点から、オキシム系化合物、酸アミド系化合物、アミン系化合物、活性メチレン系化合物、ピラゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールがより好ましく、メチルエチルケトオキシム、ジイソプロピルアミン、3,5−ジメチルピラゾールがさらに好ましく、3,5−ジメチルピラゾールが、低温硬化性とポリオールとの相溶性が両立する観点から、特に好ましい。熱解離性ブロック剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】

前記一般式(I)で示されるイソシアネート化合物のイソシアネート基の少なくとも一部が保護されたブロックイソシアネート化合物において、保護された基は下記式で示される構造を有することが好ましい。
【0101】
【化16】
【0102】
前記式(B)中、Rbは炭素数1〜3のアルキル基を示し、mbは1または2を示し、波線は結合手を意味する。
【0103】

本実施形態のブロックイソシアネート組成物の25℃における粘度は、特に制限を受けないが、10mPa・s以上1,000mPa・s以下であることが好ましく、55mPa・s以上1,000mPa・s以下がより好ましく、60mPa・s以上800mPa・s以下であることが特に好ましい。
前記下限値以上では、硬化性が優れる傾向があり、前記上限値以下では、作業性が優れる傾向がある。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0104】

<その他の化合物>
本実施形態のイソシアネート組成物は、長期保存時の着色防止および長期保存安定性向上の観点から、不飽和結合含有化合物、不活性化合物、金属原子、塩基性アミノ化合物、二酸化炭素からなる群から選ばれる1種以上の化合物を、前記一般式(I)で表されるイソシアネート化合物を基準に1.0質量ppm以上1.0×10質量ppm以下含むことができる。当該含有量は、3.0質量ppm以上、5.0質量ppm以上、または10質量ppm以上とすることができ、5.0×10質量ppm以下、3.0×10質量ppm以下、または1.0×10質量ppm以下とすることができる。
【0105】

本実施形態の不飽和結合含有化合物は、好ましくは、その不飽和結合が、炭素−炭素間の不飽和結合、炭素−窒素間の不飽和結合又は炭素−酸素間の不飽和結合である化合物である。化合物の安定性の観点から、不飽和結合は、二重結合である化合物が好ましく、炭素−炭素間の二重結合(C=C)又は炭素−酸素間の二重結合(C=O)がより好ましい。また、該化合物を構成する炭素原子は3つ以上の原子と結合していることが好ましい。
一般的に、炭素−炭素間の二重結合は芳香環を構成する炭素−炭素間の二重結合である場合もあるが、本実施形態の不飽和結合含有化合物に含まれる不飽和結合は、芳香環を構成する炭素−炭素間の二重結合を含まない。
炭素−酸素間の二重結合を有する化合物としては、例えば、炭酸誘導体を挙げることができる。炭酸誘導体としては、例えば、尿素化合物、炭酸エステル、N−無置換カルバミン酸エステル、および、N−置換カルバミン酸エステルが挙げられ、N−置換カルバミン酸エステルが好ましい。
【0106】

本実施形態の不活性化合物は、下記化合物A〜化合物Gに分類される。
炭化水素化合物は化合物A及び化合物Bに、エーテル化合物及びスルフィド化合物は下記化合物C〜Eに、ハロゲン化炭化水素化合物は下記化合物Fに、含ケイ素炭化水素化合物、含ケイ素エーテル化合物及び含ケイ素スルフィド化合物は下記化合物Gにそれぞれ分類される。なお、ここに挙げる化合物A〜化合物Gは芳香族環以外に不飽和結合を含まず、前記した不飽和結合を有する化合物は含まれない。
化合物A:直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する脂肪族炭化水素化合物(好ましくは、2,2,4−トリメチルペンタン、ヘキサデカン等の直鎖状又は分岐鎖状構造を有する炭素数5〜20アルカン等)。
化合物B:脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい芳香族炭化水素化合物。
化合物C:エーテル結合又はスルフィド結合と、脂肪族炭化水素基とを有する化合物であり、同種又は異種の脂肪族炭化水素化合物が、エーテル結合又はスルフィド結合を介して結合した化合物。
化合物D:エーテル結合又はスルフィド結合と、芳香族炭化水素基とを有する化合物であり、同種又は異種の芳香族炭化水素化合物が、エーテル結合又はスルフィド結合を介して結合した化合物。
化合物E:エーテル結合又はスルフィド結合と、脂肪族炭化水素基と、芳香族炭化水素基とを有する化合物。
化合物F:脂肪族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子、又は、芳香族炭化水素化合物を構成する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化物。
化合物G:前記化合物A〜化合物Eの炭素原子の一部又は全部がケイ素原子に置換された化合物。
【0107】

前記金属原子は、金属イオンとして存在していても、金属原子単体として存在していてもよい。1種の金属原子であってもよいし、複数の種類の金属原子を組み合わせても構わない。金属原子としては、2価ないし4価の原子価をとりうる金属原子が好ましく、中でも、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、銅、チタンから選ばれる1種または複数種の金属がより好ましい。
【0108】

前記塩基性アミノ化合物は、アンモニアの誘導体で、アルキル基やアリール基でその水素が一つ置換された化合物(第一級)、二つ置換された化合物(第二級)、および三つとも置換された化合物(第三級)がある。本発明で好ましく使用できる塩基性アミノ化合物は、二級、三級のアミノ化合物であり、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、塩基性アミノ酸が好ましく使用できる。
【0109】

二酸化炭素は、常圧でのイソシアネート溶存分でも構わないし、圧力容器に入れて加圧状態で溶存させても構わない。水分を含んでいる二酸化炭素を使用するとイソシアネートの加水分解を引き起こす場合があるので、二酸化炭素に含有される水分量は必要に応じて管理することが好ましい。
【0110】

本実施形態のイソシアネート組成物のハロゲン原子含有量は、イソシアネート組成物の総質量に対して、1.0×10質量ppm以下であることが着色防止の観点から好ましい。ハロゲン原子は、特に限定されないが、塩素および/または臭素が好ましく、塩素イオン、臭素イオン、加水分解性塩素、加水分解性臭素から選択される、少なくとも1種のイオンおよび/または化合物であることがより好ましい。加水分解塩素としては、イソシアネート基に塩化水素が付加したカルバモイルクロリド化合物、加水分解性臭素としては、イソシアネート基に臭化水素が付加したカルバモイルブロミド化合物が挙げられる。
【0111】

<塗料組成物>
本実施形態の塗料組成物は、上述のイソシアネート組成物を含む。塗料組成物は、特に限定されず、有機溶剤系の塗料組成物としても、水を主とする媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解又は分散している水系塗料組成物としてしてもよく、水系塗料組成物とすることが、有機溶剤の使用量低減の観点から好ましい。塗料組成物は、例えば、建築用塗料、自動車用塗料、自動車補修用塗料、プラスチック用塗料、粘着剤、接着剤、建材、家庭用水系塗料、その他樹脂剤、シーリング剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック原料、及び繊維処理剤に使用することができる。
【0112】

水系塗料組成物における主剤の樹脂類として、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリブタジエン共重合体、及びスチレンブタジエン共重合体が挙げられる。
【0113】

アクリル樹脂類として、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つ(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類;メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、p−スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸等のその他の重合性モノマー類等から選ばれた単独又は混合物を重合させて得られるアクリル樹脂類が挙げられる。その重合方法としては、乳化重合が一般的であるが、懸濁重合、分散重合、及び溶液重合でも製造できる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
【0114】

ポリエステル樹脂類として、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカルボン酸の群から選ばれた単独又は混合物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類;ジグリセリン、ジメチロールプロパン、ペンタエリトリトール等のテトラオール類等の群から選ばれた多価アルコールの単独又は混合物と、の縮合反応によって得られるポリエステル樹脂類等、及び低分子量ポリオールの水酸基にε−カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類が挙げられる。これらの中でも、2,2,4−トリメチルペンタンジオール等のC2〜10アルカンジオール類が好ましい。
【0115】

ポリエーテル樹脂類として、特に限定されないが、例えば、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒等を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類の開環重合によって得られるポリエーテルポリオール類;これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
【0116】

これらの樹脂類の中では、アクリル樹脂類、及びポリエステル樹脂類が好ましい。また、必要に応じて、メラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョン、ウレタンアクリルエマルジョン等の樹脂を併用することができる。
これらの樹脂類は、水に乳化、分散又は溶解することが好ましい。そのために、樹脂類に含まれるカルボキシル基、スルホン基等を中和することができる。
【0117】

カルボキシル基、スルホン基等を中和するための中和剤として、具体的には、アンモニア、水溶性アミノ化合物であるモノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等から選択される1種以上を用いることができる。中和剤としては、第三級アミンであるトリエチルアミン、及びジメチルエタノールアミンが好ましい。
【0118】

さらに、一般的に塗料に加えられる無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機リン酸塩、有機亜リン酸塩、増粘剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、静電防止剤又は帯電調整剤、沈降防止剤等を組み合わせてもよい。塗料への分散性を良くするために、さらに界面活性剤を添加してもよいし、塗料の保存安定性を良くするために、さらに酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤を添加してもよい。
【0119】

硬化促進用の触媒の例としては、以下に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩、等の金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン等の3級アミン類が挙げられる。
【0120】

<水分散体>
本発明の第2の実施形態の水分散体は、水と、水中に分散したイソシアネート組成物とを含む。本実施形態の水分散体が含むイソシアネート組成物について説明する。以下、第1の実施形態と同じ構成について、その説明を省略する場合がある。
【0121】

≪イソシアネート組成物≫
本実施形態に用いるイソシアネート組成物は、下記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物および下記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のうち、少なくとも1種を含む。体積平均分散粒子径が1nm以上100μm以下であり、200nm以上10μm以下であることが好ましい。水分散安定性と塗膜の耐水性の両立の点で、200nm以上8000nm以下がより好ましく、200nm以上6000nm以下が特に好ましい。
【0122】
【化17】
【0123】

前記一般式(IV)中、Y及びRは、第1の実施形態におけるY及びRと同じ意味を表す。
【0124】
【化18】
【0125】

一般式(V)中、Yはエステル構造を含む炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。
【0126】

一般式(V)で表されるジイソシアネートは、塗料組成物の硬化剤として使用した際のイソシアネート基の反応性を高め、耐熱性を保持するため、エステル構造を有する。
また、低粘度とするため、Y中の炭化水素基が構造中に脂肪族基、芳香族基を有することが好ましい。
この分類に該当する例としては、リジンジイソシアネート(LDI)などが挙げられる。
【0127】

(トリイソシアネートまたはジイソシアネートの製造方法)
本実施形態における一般式(IV)で表されるトリイソシアネートまたは一般式(V)で表されるジイソシアネートは、アミノ酸誘導体などのアミンをイソシアネート化して得ることができる。アミノ酸誘導体としては、例えば2,5−ジアミノ吉草酸、2,6−ジアミノヘキサン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などを用いることができる。これらアミノ酸はジアミンモノカルボン酸またはモノアミンジカルボン酸であるので、カルボキシル基を、例えばエタノールアミンなどのアルカノールアミンでエステル化、または、カルボキシル基を、例えばメタノールなどでエステル化することで、アミノ基数を制御することができる。得られるエステル基を有するアミンはホスゲン化などによりエステル構造を含むトリイソシアネートまたはジイソシアネートとすることができる。
アルキルトリアミンとしては、例えば、トリイソシアナトノナン(4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミンなどが挙げられる。これはトリアミンであり、アミンのホスゲン化などにより炭化水素のみを含むトリイソシアネートとすることができる。
【0128】

本実施形態に用いるイソシアネート組成物の総質量に対するトリイソシアネート化合物の含有量は、水への分散性と乾燥性の両立の観点から、1質量%以上100質量%以下であることが好ましく、2質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
【0129】

本実施形態に用いるイソシアネート組成物の25℃における粘度は、特に制限を受けないが2mPa・s以上2000mPa・s以下であることが好ましい。下限値は硬化性の点で5mPa・sがより好ましく、7mPa・sが特に好ましい。上限値は作業性の点で1800mPa・sがより好ましく、1600mPa・sがより好ましく、250mPa・sがより好ましく、100mPa・sがより好ましい。粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いることによって測定することができる。
【0130】

本実施形態に用いるイソシアネート組成物は、水中に添加し、安定に分散させることができる。
本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体は、体積平均分散粒子径が、1nm以上100μm以下であり、200nm以上10m以下であることが好ましい。水分散安定性と塗膜の耐水性の両立の点で、200nm以上8000nm以下がより好ましく、200nm以上6000nm以下が特に好ましい。
【0131】

本実施形態におけるイソシアネート組成物は、前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物および/または下記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部と、活性水素基と親水性基を含有する化合物(親水性基含有化合物)とを反応させ、親水性基を付加した親水性イソシアネート組成物とすることができる。
【0132】

前記親水性基含有化合物としては、特に限定されないが、例えば、第1の実施形態で活性水素含有親水性化合物として例示された、ノニオン性化合物、カチオン性化合物、及びアニオン性化合物が挙げられる。
ノニオン性親水性基を導入する化合物としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。これらはイソシアネート基と反応する活性水素を有する。これらの中で、少ない使用量で親水性イソシアネート組成物の水分散性を向上できるモノアルコールが好ましい。エチレンオキサイドの付加数としては、4〜30が好ましく、4〜20がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が前記下限値以上であることにより、水性化が確保しやすい傾向にある。また、エチレンオキサイドの付加数が前記上限値以下であることにより、低温貯蔵時に親水性イソシアネート組成物の析出物が発生しにくい傾向にある。
【0133】

カチオン性親水性基の導入は、カチオン性基とイソシアネート基と反応する活性水素基を有する官能基とを併せ持つ化合物を利用する方法や、予め、イソシアネート基に、例えば、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、この官能基と、スルフィド、ホスフィン等の特定化合物とを反応させる方法等がある。このなかでも、カチオン性基とイソシアネート基と反応する活性水素基を併せ持つ化合物を利用する方法が容易である。
【0134】

前記イソシアネート基と反応する活性水素基を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、チオール基等が挙げられる。前記カチオン性親水基と活性水素基を有する官能基とを併せ持つ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N,N‘−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−(ジメチルアミノプロピル)アミノエタノール等が挙げられる。また、水性ブロックイソシアネートに導入された三級アミノ基(カチオン性親水性基)は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等で四級化することもできる。
このなかでも、カチオン性親水性基としては三級アミノ基が好ましい。親水性イソシアネート組成物が三級アミノ基を有する場合には、後述する中和に用いるアニオン性化合物などの化合物が加熱で揮散しやすく、その結果、耐水性がより向上する傾向にある。
カチオン性親水性基の導入は溶剤の存在下で行うことができる。この場合の溶剤はイソシアネート基と反応しうる官能基を含まないものが好ましい。これら溶剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0135】

親水性イソシアネート組成物に導入されたカチオン性親水性基はアニオン基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン基とは、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。前記カルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。また、前記スルホン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。さらに、前記隣酸基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、隣酸、酸性隣酸エステル等が挙げられる。またさらに、前記ハロゲン基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩酸等が挙げられる。さらにまた、前記硫酸基を有する化合物としては特に限定されないが、例えば、硫酸等が挙げられる。このなかでもカルボキシル基を1つ有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸、酪酸がより好ましい。
【0136】

アニオン性親水性基としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。アニオン性親水性基を有するブロックイソシアネートは、例えば、イソシアネート基と反応する活性水素とアニオン基をともに有する化合物の活性水素と、前駆体イソシアネート組成物のイソシアネート基とを反応させることにより、得ることができる。
【0137】

活性水素とカルボン酸基をともに有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシプロパン酸、12−ヒドロキシ−9−オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸、乳酸等のモノヒドロキシカルボン酸;ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリヒドロキシカルボン酸が挙げられる。このなかでも、ヒドロキシピバル酸、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0138】

活性水素とスルホン酸基をともに有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
【0139】

親水性イソシアネート組成物に導入されたアニオン性親水性基は、特に限定されないが、例えば、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することができる。このアミン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物が挙げられる。水溶性アミノ化合物としては、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の第1級アミン又は第2級アミン;トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンが挙げられる。
【0140】

本実施形態におけるイソシアネート組成物において、該イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、前記親水性基含有化合物に由来する親水性基の比率は、5質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。上限値は、乾燥性、耐水性の点で、4質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、2質量%がよりさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。
前記含有率を0質量%以上5質量%以下に制御する方法としては、以下のものに限定されないが、例えば、前記親水性基含有化合物とポリイソシアネートとの配合比を調整する方法が挙げられる。また、前記含有率は、実施例中に記載する方法により測定する。
【0141】

本実施形態におけるイソシアネート組成物には、下記一般式(VI)で示されるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物を更に含むことができる。
【0142】
【化19】
【0143】

前記一般式(VI)中、Raは有機基である。複数あるRaのうち少なくとも1つは下記一般式(VII)で表される基である。複数あるRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。Ra’は1価以上のアルコールからヒドロキシル基の一つを除去した残基である。
【0144】
【化20】
【0145】

前記一般式(VII)中、Y、R、及び波線は前記第1の実施形態と同じ意味を表す。
【0146】

〔Ra〕
一般式(VI)において、Raは有機基である。複数あるRaのうち少なくとも1つは、前記一般式(VII)で表される基である。複数あるRaは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
本実施形態においては、2つのRaのうち、少なくとも1つは、前記一般式(VII)で表される基であり、2つのRaが前記一般式(VII)で表される基であることがより好ましい。
【0147】

Raのうち、前記一般式(VII)で表される基以外の基としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート(MPDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(1,3−H6−XDI)、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチル−シクロヘキシルイソアネート(IMCI);イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)−ノルボルナン(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−ベンゼン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2)ベンゼンおよび4,4‘−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)からイソシアネート基が除去された残基が挙げられる。
【0148】

一般式(VII)
〔Y
一般式(VII)中、複数存在するYは、それぞれ独立に、単結合、あるいは、エステル構造[−C(=O)−O−]及び/又はエーテル構造(−O−)を含んでもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基である。複数存在するYは、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
エステル構造及び/又はエーテル構造を含む炭素数1〜20の2価の炭化水素基としては、−(CHn1−X−(CHn2−で表される基(n1及びn2はそれぞれ独立して、0〜10の整数である。但し、n1及びn2の両方とも0になることはなく、n1、n2のうち、NCOと結合している側は1以上であることが好ましい。Xは、エステル基またはエーテル基である)。
反応速度を速めたい場合、Xがエステル基であることが好ましい。
n1及びn2は0〜4が好ましく、0〜2がより好ましい。n1及びn2の組み合わせとしては、例えば、n1=0、n2=2の組み合わせ、n1=2、n2=2の組み合わせが好ましい。
【0149】

〔R
は、水素原子又は、炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。Rにおける炭化水素基としては、特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。Rとしては、水素原子が好ましい。
【0150】

〔Ra’〕
一般式(VI)において、Ra’は1価以上のアルコールからヒドロキシル基の一つが除去された残基である。Ra’における1価以上のアルコールとしては、以下が挙げられる。
1価のアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−ブロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノールなどの飽和脂肪族アルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノールなどの飽和環状脂肪族アルコール、アリルアルコール、ブテノール、ヘキセノール、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1−ヘキサノール等の炭素数1〜10の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
2価のアルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水添ビスフェノールAなどが挙げられる。
3価のアルコールとしては、例えばグリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。
4価のアルコールとしては、例えばエリスロース等のテトリトール、キシリトールなどのペンチトール、ソルビトール等のヘキシトールのような糖アルコールなどが挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、ベンジルフェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、エチルフェノール、オクチルフェノール、キシレノール、ナフトール、ノニルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
更に、前記のアルコールを原料としたポリエステルポリオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラエチレングリコールなども、本発明の1価以上のアルコールとして適している。また、水酸基を有するアクリルポリオールも1価以上のアルコールとして使用することが出来る。
【0151】

アロファネート構造を生成する方法として、加熱する方法や、触媒を用いる方法などがある。アロファネート化触媒としては、特に限定されないが、下記式(VIII)で表されるジルコニル化合物、および下記式(IX)で表されるジルコニウムアルコラートからなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を使用する。アロファネート構造の生成比率がより高いポリイソシアネート化合物を得るためには、ジルコニル化合物を用いることが好ましい。
【0152】

前記ジルコニル化合物は、下記一般式(VIII)の構造を有する化合物である。
【0153】
【化21】
【0154】

一般式(VIII)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、アルキルカルボニウムオキシ基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン基、又は無機酸からの水素が除かれた残基である。
ここで、アルキルカルボニウムオキシ基とは、有機カルボン酸の水素が除かれた残基を意味する。つまり、前記式(VIII)のR11およびR12がともにアルキルカルボニウムオキシ基の場合、ジルコニウム化合物はジルコニルカルボン酸塩である。有機カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和カルボン酸、水酸基含有カルボン酸、ハロゲン化アルキルカルボン酸等の他、ジカルボン酸、トリカルボン酸等の多塩基酸カルボン酸も含む。
ジルコニル化合物として、具体的には、ハロゲン化ジルコニル、ジルコニルカルボン酸塩、ジアルキルジルコニル、ジルコニルジアルコラート、炭酸ジルコニル、ジルコニル硫酸鉛、ジルコニル硝酸塩などが挙げられる。なかでもジルコニルカルボン酸塩が好ましい。
ジルコニルカルボン酸塩としては、例えば、蟻酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、プロピオン酸ジルコニル、ブタン酸ジルコニル、ペンタン酸ジルコニル、ヘキサン酸ジルコニル、カプロン酸ジルコニル、オクタン酸ジルコニル、2−エチルヘキサン酸ジルコニル、デカン酸ジルコニル、ドデカン酸ジルコニル、テトラデカン酸ジルコニル、ペンタデカン酸ジルコニルなどの飽和脂肪族カルボン酸塩、シクロヘキサンカルボン酸ジルコニル、シクロペンタンカルボン酸ジルコニルなどの飽和環状カルボン酸、ナフテン酸ジルコニルなどの前記カルボン酸塩の混合物、オレイン酸ジルコニル、リノール酸ジルコニル、リノレイン酸ジルコニルなどの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸ジルコニル、トルイル酸ジルコニル、ジフェニル酢酸ジルコニルなどの芳香族カルボン酸塩などが挙げられる。中でも、ナフテン酸ジルコニル、2−エチルヘキサン酸ジルコニル、酢酸ジルコニルは、工業的に入手し易いため特に好ましい。
【0155】

前記ジルコニウムアルコラートは、下記一般式(IX)の構造を有する化合物である。
【0156】
【化22】
【0157】

一般式(IX)中、R13、R14、R15およびR16は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケン基、アルキン基である。
【0158】

ジルコニウムアルコラートの原料アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−ブロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノールなどの飽和脂肪族アルコール、シクロヘキサノールなどの飽和環状脂肪族アルコール、エタナール、プロパナール、ブタナール、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。また、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオールや、グリセリンなどのトリオール等、多価アルコールを用いることもできる。ジルコニウムアルコラートの中で、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウムは、工業的に入手し易いために好ましい。
【0159】

アロファネート化反応温度としては、60℃以上160℃以下が好ましく、70℃以上160℃以下がより好ましく、80℃以上160℃以下がさらに好ましい。温度が前記上限値以下であることで、副反応が少なく、また得られるポリイソシアネート化合物の着色を効果的に防止できるなどの傾向にあり、好ましい。
アロファネート化反応は、特に限定されないが、例えば、リン酸酸性化合物、硫酸、硝酸、クロロ酢酸、塩化ベンゾイル、スルホン酸エステル剤などの酸性化合物、あるいはイオン交換樹脂、キレート剤、キレート樹脂などの添加により停止する。
ここで、リン酸酸性化合物としては、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、あるいはこれらのアルキルエステルなどが挙げられ、本発明ではこれらリン酸酸性化合物の少なくとも1種を停止剤に用いることが好ましい。
【0160】

前記一般式(VI)で示されるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物の含有量は、イソシアネート組成物の総質量に対して、1〜80質量%であることが好ましく、10〜75質量%であることがより好ましく、15〜70質量%であることがさらに好ましい。前記下限値以上では、乾燥性が優れる傾向にあり、前記上限値以下では、粘度が低く作業性が優れる傾向にある。
【0161】

(有機溶剤)
本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体は、有機溶剤を含むことができる。
有機溶剤としては、例えば具体的な有機溶剤の例としては、例えば、1−メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso−プロパノール、1−プロパノール、iso−ブタノール、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−n−ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリットなどを挙げることができ、2種以上を併用できる。イソシアネート組成物の水への安定分散化の観点から、20℃における水での溶解度が5質量%以上のものが好ましく、塗膜形成時の塗膜表面外観を良くする観点から、沸点が100℃以上のものが好ましい。好ましい有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチルヘキサノール、2−n−ブトキシエチルアセテートが挙げられる。
【0162】

また、本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体は、脂肪族、脂環族、又は芳香族のイソシアネート基を有するジイソシアネートを重合したポリイソシアネートを更に含むことができる。ここで、ジイソシアネートとして、前記第1の実施形態において<その他のイソシアネート化合物>として記載されたジイソシアネートが好ましく使用される。
前記ポリイソシアネートは、イソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、イミノジオキサジアジンジオン構造、ウレタン構造、ビュレット構造、または、アロファネート構造を分子内に有することが好ましい。イソシアヌレート構造、ウレトジオン構造、イミノジオキサジアジンジオン構造、ウレタン構造、ビュレット構造は、それぞれ下記一般式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)及び(XV)に示される。中でも塗膜硬度の観点からイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート、ウレトジオン構造を有するポリイソシアネート、イミノジオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネートが好ましい。
【0163】
【化23】
【0164】

<イソシアネート組成物の水分散体の製造方法>
本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体の製造方法は、撹拌翼を用いて撹拌混合しながら、イソシアネート組成物を水中に滴下する工程を含む。
本実施形態に用いるイソシアネート組成物は、水中に滴下し、安定に分散させることができる。具体的には、例えば、イソシアネート組成物に対し、過剰量の水を、撹拌翼などで混合させている中に、イソシアネート組成物を滴下し、十分混合する方法などが挙げられる。特に、水分散安定性の観点から、ディスパータイプ、タービンタイプなどの撹拌翼を用い、500から3000回転/分の撹拌速度で混合している水にイソシアネート組成物を滴下し、1分以上混合することが好ましく、3分以上がさらに好ましい。
また、水分散安定性の観点から、撹拌混合時の撹拌翼の周速度が0.5m/sec以上50m/sec以下であり、1m/sec以上50m/sec以下が好ましい。
【0165】

<ブロックイソシアネート組成物>
前記第1の実施形態と同様に、本実施形態に用いるイソシアネート組成物も、ブロック剤によってイソシアネート基を保護することができる。
【0166】

<その他のイソシアネート化合物>
本実施形態のイソシアネート組成物は、前記一般式(IV)で表されるトリイソシアネート化合物、前記一般式(V)で表されるジイソシアネート化合物、及び、前記一般式(VI)で表されるポリイソシアネート化合物のいずれもと、異なるイソシアネート化合物を、更に含むことができる。
前記イソシアネート化合物としては、前記第1の実施形態と同様に、脂肪族、脂環族、または芳香族のイソシアネート基を有するジ−、もしくはポリ−イソシアネートが例示される。
【0167】

<その他の化合物>
本実施形態のイソシアネート組成物は、前記第1の実施形態と同様に、長期保存時の着色防止および長期保存安定性向上の観点から、不飽和結合含有化合物、不活性化合物、金属原子 、塩基性アミノ化合物、および二酸化炭素からなる群から選ばれる1種以上の化合物を、イソシアネート化合物を基準に1.0質量ppm以上1.0×10質量ppm以下含むことができる。
【0168】

本実施形態のイソシアネート組成物のハロゲン原子含有量は、前記第1の実施形態と同様に、1.0×10質量ppm以下であることが着色防止の観点から好ましい。
【0169】

<塗料組成物>
本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体は、塗料組成物の硬化剤等として好適に用いることもできる。すなわち、本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体を含有する塗料組成物とすることができる。その塗料組成物の樹脂成分としては、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有することが好ましい。活性水素を分子内に2個以上有する化合物として、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等が挙げられる。これらの中でも、ポリオールが好ましい。ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール等が挙げられる。
【0170】

本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体を用いた塗料組成物は、水系ベースで使用されることが好ましい。
溶剤ベースの塗料組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂、あるいはその溶剤希釈物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、更に溶剤を添加して、粘度を調整した後、手攪拌、あるいはマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの塗料組成物を得ることができる。
水系ベースの塗料組成物とした場合には、活性水素を分子内に2個以上有する化合物を含有する樹脂の水分散体、または水溶物に、必要に応じて他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、本実施形態のイソシアネート組成物の水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加した後、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの塗料組成物を得ることができる。
【0171】

ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等の二塩基酸等の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独または混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。例えば、前記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。さらに、例えば、ε−カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、およびこれらから得られるポリイソシアネートを用いて変性させることができる。この場合、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、およびこれらから得られるポリイソシアネートが、耐候性および耐黄変性等の観点から好ましい。水系ベース塗料として用いる場合には、一部残した二塩基酸等の一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、水溶性、あるいは水分散性の樹脂とすることができる。
【0172】

ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えば水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等を使用して、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等)の単独または混合物を、多価ヒドロキシ化合物にランダムまたはブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類;ポリアミン化合物(エチレンジアミン類等)にアルキレンオキシドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;およびこれらポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
【0173】

前記多価ヒドロキシ化合物としては、(i)例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、(ii)例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、(iii)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、(iv)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類、(v)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類、(vi)例えば、スタキオース等の四糖類、等が挙げられる。
【0174】

アクリルポリオールは、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得ることができる。
【0175】

アクリルポリオールは、例えば、活性水素を有するアクリル酸エステル類(アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等)、または活性水素を有するメタクリル酸エステル類(メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等)、グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエーテルポリオール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等)と前記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル;グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;前記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にラクトン類(ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等)を開環重合させることにより得られる付加物からなる群より選ばれる1種以上を必須成分として、必用に応じて(メタ)アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、不飽和アミド類(アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等)、または加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等)、その他の重合性モノマー(スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等)からなる群より選ばれる1種以上を、常法により共重合させて得ることができる。
【0176】

例えば、前記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合などの公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性、あるいは水分散性を付与することができる。
【0177】

フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57−34107号公報、特開昭61−215311号公報等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0178】

前記ポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、10〜200mgKOH/gであることが好ましい。その中でも、下限値は20mgKOH/gであることがより好ましく、30mgKOH/gであることが特に好ましい。ポリオールの酸価は、0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価および酸価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0179】

前記の中でも、ポリオールとしては、耐候性、耐薬品性、および硬度の観点から、アクリルポリオールが好ましく、機械強度、および耐油性の観点から、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0180】

前記した活性水素を分子内に2個以上有する化合物の水酸基に対する、本実施形態のイソシアネート組成物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH比)は、0.2〜5.0が好ましく、0.4〜3.0がより好ましく、0.5〜2.0が特に好ましい。当該当量比が前記下限値以上であると、一層強靱な塗膜を得ることが可能となる。当該当量比が前記上限値以下であると、塗膜の平滑性を一層向上させることができる。
【0181】

塗料組成物には、必要に応じて完全アルキル型、メチロール型アルキル、イミノ基型アルキル等のメラミン系硬化剤を添加することができる。
前記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のイソシアネート組成物および塗料組成物は、いずれも、有機溶剤と混合して使用できる。有機溶剤としては、水酸基およびイソシアネート基と反応する官能基を有していない方が好ましい。また、ポリイソシアネート組成物と相溶する方が好ましい。このような有機溶剤としては、一般に塗料溶剤として用いられているエステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。
【0182】

前記活性水素を分子内に2個以上有する化合物、本実施形態のイソシアネート組成物および塗料組成物は、いずれも、その目的や用途に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
【0183】

硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩、等の金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、等の3級アミン類等が挙げられる。
本実施形態のイソシアネート組成物を硬化剤として用いた塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の塗料として用いることができる。例えば、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、プラスチック、木材、フィルム、無機材料等の素材に対するプライマーや上中塗り塗料として有用である。また、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。また、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。
【0184】

<塗膜>
本発明の第3の実施形態は、前記第1または第2の実施形態の塗料組成物を硬化した塗膜である。具体的に、前記塗膜は、金属、木材、ガラス、石、セラミック材料、コンクリート、硬質および可撓性プラスチック、繊維製品、皮革製品、紙等の基材上に、前記塗料組成物を塗布、乾燥させることにより、形成させることができる。
【実施例】
【0185】

以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に明記しない場合は、「部」、「%」及び「ppm」は、「質量部」、「質量%」及び「質量ppm」を各々意味する。
【0186】

<イソシアネート組成物のNCO含有率>
NCO含有率(質量%)は、測定試料中のイソシアネート基を過剰の2Nアミンで中和した後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
【0187】

<イソシアネート組成物中のアルキレングリコール繰り返し単位yの平均数>
イソシアネート組成物を試料として、yの平均数は、以下の装置及び条件を用いてプロトン核磁気共鳴(NMR)により求めた。ここでは、アルキレン基に対応する相対強度の積分値とアルキル基に対応する相対強度の積分値を対応させることにより、イソシアネート組成物中のアルキレングリコール繰り返し単位yの平均数を求めた。
NMR装置:Bruker Biospin Avance600(商品名)
観測核:1H
周波数:600MHz
溶媒:CDCl
積算回数:256回
【0188】

<ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの変性率>
イソシアネート組成物を試料として、親水性化合物の変性率は、原料のポリイソシアネートのイソシアネート基100当量に対して、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが変性された割合であり、液体クロマトグラフィー(LC)の220nmにおける、未変性原料イソシアネート、1変性原料イソシアネート、2変性原料イソシアネート、及び3変性原料イソシアネートのピーク面積比から求めた。用いた装置及び条件は以下のとおりである。
LC装置:Waters社製、UPLC(商品名)
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC HSS T3 1.8μm C18 内径2.1mm×長さ50mm
流速:0.3mL/min
移動相:A=10mM酢酸アンモニウム水溶液、B=アセトニトリル
グラジェント条件:初期の移動相組成はA/B=98/2で、試料注入後Bの比率を直線的に上昇させ、10分後にA/B=0/100とした。
検出方法:フォトダイオードアレイ検出器、測定波長は220nm
【0189】

<ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率>
イソシアネート組成物を試料として、イソシアネート組成物中の、変性ポリイソシアネートのポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率は、前記NCO含有率と、前記アルキレングリコール繰り返し単位yの平均数から算出されるポリアルキレングリコールアルキルエーテルの分子量と、前記ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの変性率とから以下のとおり算出した。
含有率(質量%)=NCO含有率(質量%)/100%/42/(100−変性率(モル%))×変性率(モル%)×ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの数平均分子量×100%
【0190】

<イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対するリン原子含有率>
イソシアネート組成物を試料として、イソシアネート組成物中の、リン酸基に由来するリン原子含有率は、以下の装置及び条件を用いて誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)により求めた。
ICP−AES装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、iCAP6300Duo(商品名)
高周波出力:1150W
クーラントガス:12L/min
プラズマガス:0.5L/min
キャリアガス:0.5L/min
パージガス:0.5L/min
トーチ:横軸
検出器:CID
測定波長:180.731nm
前処理方法:試料を硫酸及び過酸化水素で分解し検液とした。
【0191】

<イソシアネート組成物の総量(100質量%)に対する硫黄原子含有率>
イソシアネート組成物を試料として、イソシアネート組成物中の、スルホン酸基に由来する硫黄原子含有率は、以下の装置及び条件を用いてイオンクロマトグラフィー(IC)により求めた。
IC装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、ICS−1500(商品名)
カラム:AS12A
移動相:2.7mmol/L NaCO,0.3mmol/L NaHCO
流量:1.5mL/min
試料注入量:1mL
サプレッサー:AERS−500
検出器:電気伝導度検出器
前処理方法:試料を炉内で燃焼させ、その燃焼ガスを吸収液に吸収させた。
【0192】

<粘度>
粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100rpm (128mPa・s未満の場合)
50rpm (128mPa・s〜256mPa・sの場合)
20rpm (256mPa・s〜640mPa・sの場合)
10rpm (640mPa・s〜1280mPa・sの場合)
5rpm (1280mPa・s〜2560mPa・sの場合)
【0193】

<NCO基数の測定>
製造例にて製造したトリイソシアネートの官能基数(3)およびポリアルキレングリコールアルキルエーテルの変性率より、下記式にてNCO基数とした。
NCO基数=トリイソシアネートの官能基数(3)×(1−ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの変性率/100)
【0194】

<ブロックイソシアネート組成物の有効NCO含有率>
有効NCO含有率(質量%)は、下記式にて算出した。
ブロックイソシアネート組成物の有効NCO含有率(質量%)={(イソシアネート組成物の仕込み量)×(イソシアネート組成物のNCO含有率(質量%))}/(ブロックイソシアネート組成物の仕込み量)
【0195】
<ウレア基のモル比率(ウレア基/(NCO基+ウレア基))>
イソシアネート組成物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解した。
前記溶液を13C−NMR(Bruker社製、FT−NMR DPX−400)により測定した。化学シフト基準は、重水素クロロホルムの炭素原子のシグナル77.0ppmとした。157.8ppm付近のウレア基の炭素原子のシグナルの面積と、121.5ppm付近のイソシアネート基の炭素原子のシグナルの面積とを測定し、得られた面積に基づいて、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とウレア基の総モル数に対する、イソシアネート基に由来するウレア基のモル分率を求めた。
【0196】

<イソシアネート組成物の低粘度化度>
測定温度を除き、前記の通り、E型粘度計(トキメック社製)を用いて、イソシアネート混合物の粘度を測定し、以下の基準に基づき評価した。
A:粘度250mPa・sを測定した時の温度が25℃以下であった。
B:粘度250mPa・sを測定した時の温度が25℃を超え、粘度1000mPa・sを測定した時の温度が25℃以下であった。
C:1000mPa・sを測定した時の温度が25℃超えであった。
【0197】

<ブロックイソシアネート組成物の低粘度化度>
測定温度を除き、前記の通り、E型粘度計(トキメック社製)を用いて、ブロックイソシアネート組成物の粘度を測定し、以下の基準に基づき評価した。
A:粘度1000mPa・sを測定した時の温度が25℃以下であった。
B:粘度1000mPa・sを測定した時の温度が25℃超えであった。
【0198】

<水分散性>
(1)イソシアネート組成物またはブロックイソシアネート組成物を、固形分換算で3gとなるように50mLをPETスクリュー瓶に採取し、脱イオン水27gを添加した。(2)スパチュラで1分間撹拌し、目視で観察し、以下の基準に基づき評価した。
A:簡単に分散し、スパチュラにあまり残らない。
B:増粘し、スパチュラに多く残る。
C:ひどく増粘し、撹拌が困難。
【0199】
<イソシアネート組成物の水分散体における主剤への分散性評価>
イソシアネート塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるように塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜の光沢値を、光沢計(スガ試験機株式会社製デジタル変角光沢計UDV−6P(商品名))を用い、JIS Z8741の条件で60度光沢値を測定した。
A:85%以上
B:85%未満65%以上
C:65%未満
【0200】

<イソシアネート組成物の乾燥性評価方法>
アクリルディスパージョン(Nuplex Resin社の商品名「SETAQUA6510」樹脂分濃度42%、水酸基濃度4.2%(樹脂基準))と、イソシアネート組成物を、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、水で固形分40質量%になるように調整した。調整した塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるように塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察し、以下の基準に基づき評価した。
A:跡が全く見えなくなった時間が7時間以内であった場合
B:7時間超〜8時間以内であった場合
C:8時間超〜10時間以内であった場合
D:10時間超であった場合
【0201】

<ブロックイソシアネート塗膜の乾燥性評価>
塗装した後、100℃、30分間焼成した以外は、イソシアネート塗膜の乾燥性評価と同様の方法で評価し、以下の基準に基づき評価した。
A:コットン跡が見えなかった場合
B:コットン跡が見えた場合
【0202】

<イソシアネート塗膜の耐水性評価>
イソシアネート塗料組成物を、アロジン処理されたアルミ板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、イソシアネート塗料組成物を用いた場合は60℃で、ブロックイソシアネート塗料組成物を用いた場合は120℃で、30分間焼成した後、23℃/50%RHの雰囲気下で冷却し、翌日、得られた塗膜上に直径30mmのシリコン製Oリングを載せ、その中に水を0.5g注ぎ入れた。23℃で24時間置き、表面に残った水を除いた後の塗膜の様子を観察し、以下の基準に基づき評価した。
A:透明、ブリスターなし
B:わずかに白濁、又はわずかにブリスターあり
C:やや白濁、又はややブリスターあり
D:白濁、又はブリスターあり
【0203】

<ブロックイソシアネート塗膜の耐水性評価>
塗装後に120℃、30分間焼成した以外は、イソシアネート塗膜の耐水性評価方法と同様の方法で評価した。
【0204】
<イソシアネート塗膜およびブロックイソシアネート塗膜の耐水密着性評価>
アクリルディスパージョン(Nuplex Resin社の商品名「SETAQUA6510」樹脂分濃度42%、水酸基濃度4.2%(樹脂基準))と水を最終塗料固形分が40質量%になるよう混合した液に、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.25となるように前記イソシアネート組成物の水分散体を滴下し、撹拌混合した。調製した塗料組成物をアロジン処理したアルミ板上に乾燥膜厚40μmになるように塗装した後、140℃30分加熱し、硬化させた。塗膜に水を滴下し、23℃×24時間放置後にふき取り、JIS K5600−5−6(塗膜の付着性:クロスカット法)に従って評価を行い、100個中の残ったマスの数を数えた。
A:90個以上
B:89個以下70個以上
C:69個以下
【0205】

<塗膜の外観>
アクリルディスパージョン(Nuplex Resin社の商品名「SETAQUA6510」樹脂分濃度42質量%、水酸基濃度4.2質量%(樹脂基準))と、イソシアネート組成物またはブロックイソシアネート組成物とを、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で配合し、水で固形分40質量%になるように調整した。調整した塗料組成物をガラス板上に、厚さ40μmの塗膜を塗装し、イソシアネート組成物を用いた場合は60℃で、ブロックイソシアネート組成物を用いた場合は120℃で、30分間焼成した。得られた塗膜をBYK Garder社製、商品名「haze−gloss version3.40」を用いて、屈折率が1.567の黒色ガラス標準板での測定結果を100グロスユニットとして、20°の光沢値を測定した。なお、塗装に用いたガラス板単体の20°の光沢値は174であった。以下の基準に基づき評価した。
A:160以上
B:150以上160未満
C:100以上150未満
D:100未満
【0206】

<平均分散粒子径>
平均分散粒子径は、前記の水分散性安定性評価した水分散体を、下記の動的光散乱式ナノトラック粒度分析装置を用い、体積平均粒子径を測定した。
装置:Nanotrac UPA−EX150(日機装製)
溶媒:水
温度:23℃
【0207】

<水分散安定性>
水分散安定性は、所定の方法で水とイソシアネート組成物を混合した直後から1時間後の外観を観察した。分離していない場合をA、分離している場合をBとした。
【0208】

<イソシアネート組成物の水分散体の乾燥性評価>
アクリルディスパージョン(Nuplex Resin社の商品名「SETAQUA6510」樹脂分濃度42%、水酸基濃度4.2%(樹脂基準))と水を最終塗料固形分が40質量%になるよう混合した液に、イソシアネート基/水酸基の当量比1.25となるように前記イソシアネート組成物の水分散体を滴下し、撹拌混合した。調製した塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるように塗装した後、23℃/50%RHで硬化させた。特定時間経過後、その塗膜上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、塗膜上に残ったコットン跡を観察した。跡が全く見えなくなった時間が8時間以内であった場合をA、8時間超であった場合をBとした。
【0209】

<塗料の可使用時間評価>
前記イソシアネート組成物の水分散体の乾燥性評価に記載の方法で調製された塗料組成物を23℃6時間静置させた後、塗料組成物に沈殿物が発生しているか確認した。沈殿物が生じていない場合は、再度、上記と同様の乾燥性評価を実施した。跡が全く見えなくなった時間が10時間以内であった場合をA、10時間超であった場合をB、塗液に沈殿物が発生していた場合をCとした。
【0210】

<水分散体塗膜の耐水性評価>
アクリルディスパージョン(Nuplex Resin社の商品名「SETAQUA6510」樹脂分濃度42%、水酸基濃度4.2%(樹脂基準))と水を最終塗料固形分が40質量%になるよう混合した液に、イソシアネート基/水酸基の当量比が1.25となるように前記イソシアネート組成物の水分散体を滴下し、撹拌混合した。調製した塗料組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるように塗装した後、140℃30分加熱し、硬化させた。得られた塗膜に直径2cmのゴム製リングを置き、その中に水を滴下した。その上部に揮発防止の目的で時計皿を被せ、23℃で2日静置した。2日後、水分を除去し、水の滴下前後のヘーズを測定した。塗膜のヘーズ値は、JIS K7361に従い、スガ試験機社製の商品名ヘーズメーターを用いて測定した。ヘーズ値の変化が0.5未満の場合をA、ヘーズ値の変化が0.5以上の場合をBとした。
【0211】

(製造例1)LTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にエタノールアミン122.2g、o−ジクロロベンゼン100ml、トルエン420mlを入れ、氷冷化塩化水素ガスを導入し、エタノールアミンを塩酸塩に転換した。次に、リジン塩酸塩182.5gを添加し、反応液を80℃に加熱し、エタノールアミン塩酸塩を溶解させ、塩化水素ガスを導入してリジン二塩酸塩とした。さらに塩化水素ガスを20から30ml/分で通過させ、反応液を116℃に加熱し、水が留出しなくなるまでこの温度を維持した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩165gを得た。このリジンβ−アミノエチルエステル三塩酸塩100gを微粉末としてo−ジクロロベンゼン1200mlに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、120℃に達した時点でホスゲンを0.4モル/時間の速度にて吹込みはじめ、10時間保持し、その後150℃に昇温した。懸濁液はほとんど溶解した。冷却後ろ過し、減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点155〜157℃/0.022mmHgの無色透明なLTI80.4gが得られた。このもののNCO含有率は47.1質量%であった。
【0212】

(製造例2)GTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内にグルタミン酸塩酸塩275g、エタノールアミン塩酸塩800g、トルエン150mlを入れ、塩化水素ガスを吹き込みながら、水が共沸しなくなるまで110℃にて24時間加熱還流した。生成した反応混合物をメタノールおよびエタノールの混合液中で再結晶してビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩270gを得た。このビス(2−アミノエチル)グルタメート三塩酸塩85gをo−ジクロロベンゼン680gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、135℃に達した時点でホスゲンを0.8モル/時間の速度にて吹込みはじめ、13時間保持し、反応生成物をろ過後、減圧濃縮し、さらに薄膜蒸発缶で精製することにより、GTI54gが得られた。NCO含有率は39.8質量%であった。
【0213】

(製造例3)NTIの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に4−アミノメチル−1,8−オクタメチレンジアミン(以下トリアミンと称す)1060gをメタノール1500gに溶かし、これに35%濃塩酸1800mlを冷却しながら徐々に滴下した。減圧下にてメタノール及び水を除去して濃縮し、60℃/5mmHgにて24時間乾燥したところ、白色固体のトリアミン塩酸塩が得られた。得られたトリアミン塩酸塩650gを微粉末としてo−ジクロルベンゼン5000gに懸濁させ、かきまぜながら反応液を昇温し、100℃に達した時点でホスゲンを200g/Hrの速度にて吹込みはじめ、さらに昇温を続けて180℃に保持し、12時間ホスゲンを吹込み続けた。減圧下にて溶存ホスゲン及び溶媒を留去したのち、真空蒸留することにより、沸点161〜163℃/1.2mmHgの無色透明な4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンメチレンジイソシアネート(以下「NTI」という」420gが得られた。このもののNCO含有率50.0質量%であった。
【0214】

(製造例4)HDIポリイソシアネートの合成
撹拌機、温度計、ガス導入管を取り付けた4ツ口フラスコ内に、モノマーとしてHDI50g、イソブタノール0.05gを仕込み、温度を80℃、2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドを5mg加え、イソシアヌレート化反応を行い、収率が12%になった時点でジブチルリン酸を添加し反応を停止した。反応液を更に120℃、15分保持し、HDIポリイソシアネートを得た。得られたHDIポリイソシアネートの粘度は2,300mPa・s/25℃で、NCO含有率は4質量%であった。
【0215】

(製造例5)スルホン酸アミン塩1の製造
2−ヒドロキシエタンスルホン酸70質量%水溶液20質量部に、1−プロパノールを10質量部添加して撹拌して溶液を得た。更に、当量比1となるようにトリエチルアミンを量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下していった。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.0質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩1)を得た。
【0216】

(製造例6)スルホン酸アミン塩2の製造
2−ヒドロキシエタンスルホン酸70質量%水溶液20質量部に、1−プロパノールを10質量部添加して撹拌して溶液を得た。更に、当量比1となるようにN,N−ジイソプロピルエチルアミンを量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下していった。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.1質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸N,N−ジイソプロピルエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩2)を得た。
【0217】

(製造例7)スルホン酸アミン塩3の製造
2−ヒドロキシエタンスルホン酸70質量%水溶液20質量部に、1−プロパノールを10質量部添加して撹拌して溶液を得た。更に、当量比1となるようにトリブチルアミンを量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下していった。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.1質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(スルホン酸アミン塩3)を得た。
【0218】

(製造例8)スルホン酸アミン塩4の製造
2−ヒドロキシエタンスルホン酸70質量%水溶液20質量部に、1−プロパノールを10質量部添加して撹拌して溶液を得た。更に、当量比1となるようにN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを量り取り、同質量部の1−プロパノールで希釈した液を、撹拌中の前記溶液に滴下していった。滴下開始から1時間後に撹拌を止め、エバポレーターで脱水及び脱溶剤し、固形分99.8質量%の2−ヒドロキシエタンスルホン酸N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン塩(スルホン酸アミン塩4)を得た。
【0219】

(合成例1)P−1の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、モノマーとしてNTIを50g、2−エチルヘキサノール4.6gを仕込み、温度を90℃、1時間保持した。その後、130℃に昇温し、アロファネート化触媒2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスジルコニウム13%」をミネラルスピリットで希釈)を2mg加え、アロファネート化反応を行い、ピロリン酸の固形分50%イソブタノール溶液(片山化学工業株式会社製の試薬をイソブタノールで希釈)を添加し、反応を停止し、ポリイソシアネートP−1を得た。得られたポリイソシアネートP−1の粘度は27mPa・s/25℃であった。
【0220】

(合成例2)P−2の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ヘキサメチレンジイソシアネートを50g、2−エチルヘキサノール4.0gを仕込み、温度を90℃、1時間保持した。その後、130℃に昇温し、アロファネート化触媒2−エチルヘキサン酸ジルコニルの固形分20%ミネラルスピリット溶液(日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスジルコニウム13%」をミネラルスピリットで希釈)を2mg加え、アロファネート化反応を行い、ピロリン酸の固形分50%イソブタノール溶液(片山化学工業株式会社製の試薬をイソブタノールで希釈)を添加し、反応を停止し、ポリイソシアネートP−2を得た。得られたポリイソシアネートP−2の粘度は15mPa・s/25℃であった。
【0221】

(合成例3)P−3の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、NTIを50質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):12.5質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、ポリイソシアネートP−3を得た。得られたポリイソシアネートP−3の粘度は15mPa・s/25℃で、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率は19質量%であった。
【0222】

(合成例4)P−4の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、P−1を50質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):0.5質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、ポリイソシアネートP−4を得た。得られたポリイソシアネートP−4の粘度は30mPa・s/25℃で、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率は1質量%であった。
【0223】

(合成例5)P−5の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、および窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、LTI:99.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」):1.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物P−5を得た。得られたイソシアネート組成物P−5の粘度は28mPa・s/25℃で、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルの含有率は1質量%であった。
【0224】

(実施例1−1)
LTI:60.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」):40.0質量部、水0.03質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。
得られたイソシアネート組成物は、不揮発分100質量%、粘度40mPa・s(25℃)、NCO含有率28.3質量%であった。得られた組成物中の変性率は22.2モル%であり、NMRから検出されたエチレングリコール繰り返し単位の平均数は4.1であった。よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は40%と算出された。評価結果を表1に示す。
【0225】

(実施例1−2)
LTI:64.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」):25.7質量部と、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」、数平均分子量130):10.3質量部、水0.03質量部を添加し、エチレングリコール繰り返し単位の平均数が5.0となるように調整し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表1に示す。
【0226】

(実施例1−3)
LTI:70.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」):13.8質量部と、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):16.2質量部を添加し、エチレングリコール繰り返し単位の平均数が6.0となるように調整し、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表1に示す。
【0227】

(実施例1−4)
LTI:80.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):20.0質量部、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表1に示す。
【0228】

(実施例1−5)
LTI:80.0質量部に、数平均分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油株式会社製、商品名「M550」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:11.8):20.0質量部、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表2に示す。
【0229】

(実施例1−6)
LTI:92.0質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」、数平均分子量81):8.0質量部、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表2に示す。
【0230】

(実施例1−7)
LTI:95.0質量部に、数平均分子量750のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名「750」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:16.3):5.0質量部、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表2に示す。
【0231】
(実施例1−8)
LTI:80.0質量部に、数平均分子量1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油株式会社製、商品名「M1000」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:22.0):20.0質量部、水0.03質量部を添加した後、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表2に示す。
【0232】

(実施例1−9)
LTI:60質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):40質量部、水0.03質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表2に示す。
【0233】

(実施例1−10) LTI:90質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):10質量部、水0.03質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表3に示す。
【0234】

(実施例1−11)
実施例1−4に記載のイソシアネート組成物に、製造例4に記載のHDIポリイソシアネートを、質量比90/10にて混合した。評価結果を表3に示す。
【0235】

(実施例1−12)
モノブチルリン酸20gと、トリエチルアミン13.0gを混合し、モノブチルリン酸の一部を中和した。LTI:1000質量部に、前記より得られたモノブチルリン酸とトリエチルアミンの混合物33.0質量部、水0.3質量部を添加し、窒素下、90℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−1と同様に行った。また、ICP−AESで検出されたP原子の濃度は0.38質量%であった。評価結果を表3に示す。
【0236】

(実施例1−13)
モノブチルリン酸10gと、トリエチルアミン6.5gを混合し、モノブチルリン酸の一部を中和した。LTI:1000質量部に、数平均分子量400のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油株式会社製、商品名「M400」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:8.4):100質量部と、前記より得られたモノブチルリン酸とトリエチルアミンの混合物16.5質量部、水0.3質量部を添加し、窒素下、90℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−12と同様に行った。評価結果を表4に示す。
【0237】

(実施例1−14)
LTI:1000質量部に、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸:6.1質量部と、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン:3.5質量部、水0.3質量部を添加し、窒素下、100℃で5時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−1と同様に行った。また、イオンクロマトグラフィーで検出されたS原子の濃度は0.09質量%であった。評価結果を表4に示す。
【0238】

(実施例1−15)
LTI:1000質量部に、製造例5で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩1):12.5質量部と、アセトン:200質量部と、ジブチルスズジラウレート:0.05質量部とを添加し、窒素下、還流下、70℃で5時間攪拌して反応を行った。その後、還流を外して、水0.3質量部を添加し、100℃で0.5時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−14と同様に行った。評価結果を表4に示す。
【0239】

(実施例1−16)
LTI:1000質量部に、製造例6で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸N,N−ジイソプロピルエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩2):27.7質量部と、アセトン:200質量部と、ジブチルスズジラウレート:0.05質量部とを添加し、窒素下、還流下、70℃で5時間攪拌して反応を行った。その後、還流を外して、水0.3質量部を添加し、100℃で0.5時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−14と同様に行った。評価結果を表5に示す。
【0240】

(実施例1−17)
LTI:1000質量部に、製造例7で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリブチルアミン塩(スルホン酸アミン塩3):85.5質量部、水0.3質量部を添加し、窒素下、100℃で6時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−14と同様に行った。評価結果を表5に示す。
【0241】

(実施例1−18)
LTI:1000質量部に、製造例8で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン塩(スルホン酸アミン塩4):7.0質量部と、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」)を20.0質量部と、水0.3質量部とを添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例1−14と同様に行った。評価結果を表5に示す。
【0242】

(実施例1−19)
LTIをGTIに変えた以外は、実施例1−4と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表5に示す。
【0243】
(実施例1−20)
水の添加量を0.01質量部とした以外は、実施例1−4と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表6に示す。
【0244】
(実施例1−21)
水の添加量を0.1質量部とした以外は、実施例1−4と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表6に示す。
【0245】
(実施例1−22)
1000ppmの水が含まれているMPG−130を原料として用いた以外は、実施例1−4と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表6に示す。
【0246】

(比較例1−1)
LTIを、製造例4で製造したHDIポリイソシアネートに変えた以外は、実施例1−4と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表6に示す。
【0247】

(実施例1−23)
実施例1−4にて製造したイソシアネート組成物に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル:75.5質量部(樹脂固形分:70質量%)を添加し、70℃に加熱した。その後、撹拌しながら3,5−ジメチルピラゾール:84.4質量部(NCOに対し1.03倍モル量)を添加し、70℃、1時間撹拌し、ブロックイソシアネート組成物を得た。得られたブロックイソシアネート組成物の評価結果を表7に示す。
【0248】

(実施例1−24)
イソシアネート組成物を、実施例1−18にて製造したイソシアネート組成物に変えた以外は、実施例1−23と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を得た。評価結果を表7に示す。
【0249】

(比較例1−3)
イソシアネート組成物を、比較例1−1にて製造したイソシアネート組成物に変えた以外は、実施例1−23と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を得た。評価結果を表7に示す。
【0250】

【表1】
【0251】
【表2】
【0252】
【表3】
【0253】
【表4】
【0254】
【表5】
【0255】
【表6】
【0256】
【表7】
【0257】
(実施例1−25)
LTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03gと水1.0gを添加したものを用いて実施例1−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例1−1と同様であった。
【0258】

(実施例1−26)
LTI:300gにヘキサデカンを0.03gと水1.0gを添加したものを用いて実施例1−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例1−1と同様であった。
【0259】

(製造例9)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、LTIを20g仕込み、60℃に加熱し、メタノールを7.2gを添加し、撹拌しながら4時間保持し、N−置換カルバミン酸エステルC−1を得た。
【0260】

(実施例1−27)
LTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03gと水1.0gを添加したものを用いて実施例1−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例1−1と同様であった。
【0261】

前記結果に示した通り、本発明を適用した実施例のイソシアネート組成物は、低粘度と水分散性、乾燥性、耐水性、耐水密着性、及び主剤への分散性を両立していた。
【0262】

(実施例2−1)
NTI:64.0質量部、および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」):25.7質量部と、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):10.3質量部を添加し、エチレングリコール繰り返し単位の平均数が5.0となるように調整し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。得られた組成物中の変性率は15.8モル%であり、NMRから検出されたエチレングリコール繰り返し単位の平均数は5.0であった。よって、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの含有率は36質量%と算出された。低粘度化度、水分散性、塗膜外観、及び耐水性の評価結果を表8に示す。
【0263】

(実施例2−2)
NTI:70.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:4.2のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG」):13.8質量部と、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):16.2質量部を添加し、エチレングリコール繰り返し単位の平均数が6.0となるように調整し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表8に示す。
【0264】

(実施例2−3)
NTI:85.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):20.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表8に示す。
【0265】

(実施例2−4)
NTI:85.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、数平均分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油株式会社製、商品名「M550」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:11.8):15.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表8に示す。
【0266】

(実施例2−5)
NTI:92.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:15.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−081」):8.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表9に示す。
【0267】

(実施例2−6)
NTI:95.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、数平均分子量750のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(ダウ・ケミカル株式会社製、商品名「750」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:16.3):5.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表9に示す。
【0268】

(実施例2−7)
NTI:70.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):30.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表9に示す。
【0269】

(実施例2−8)
NTI:92.0質量部および2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」)):0.01質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):8.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表9に示す。
【0270】

(実施例2−9)
2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−508T」))を添加しなかった以外は、実施例2−3と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表10に示す。
【0271】

(実施例2−10)
原料のイソシアネートをLTIにした以外は、実施例2−3と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表10に示す。
【0272】

(実施例2−11)
モノブチルリン酸20gと、トリエチルアミン13.0gを混合し、モノブチルリン酸の一部を中和した。NTI:1000質量部に、前記より得られたモノブチルリン酸とトリエチルアミンの混合物33.0質量部を添加し、窒素下、90℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−1と同様に行った。また、ICP−AESで検出されたP原子の濃度は0.38質量%であった。評価結果を表10に示す。
【0273】

(実施例2−12)
モノブチルリン酸10gと、トリエチルアミン6.5gを混合し、モノブチルリン酸の一部を中和した。NTI:1000質量部に、エチレングリコール繰り返し単位の平均数:9.0のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「MPG−130」):100質量部と、前記より得られたモノブチルリン酸とトリエチルアミンの混合物16.5質量部を添加し、窒素下、90℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−11と同様に行った。評価結果を表11に示す。
【0274】

(実施例2−13)
NTI:1000質量部に、3−シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸:6.1質量部と、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン:3.5質量部を添加し、窒素下、100℃で5時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−1と同様に行った。また、イオンクロマトグラフィーで検出されたS原子の濃度は0.11質量%であった。評価結果を表11に示す。
【0275】

(実施例2−14)
NTI:1000質量部に、製造例5で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸トリエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩1):12.5質量部と、アセトン:200質量部と、ジブチルスズジラウレート:0.05質量部とを添加し、窒素下、還流下、70℃で5時間攪拌して反応を行った。その後、還流を外して100℃で0.5時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−13と同様に行った。評価結果を表11に示す。
【0276】

(実施例2−15)
NTI:1000質量部に、製造例6で得られた2−ヒドロキシエタンスルホン酸N,N−ジイソプロピルエチルアミン塩(スルホン酸アミン塩2):27.7質量部と、アセトン:200質量部と、ジブチルスズジラウレート:0.05質量部とを添加し、窒素下、還流下、70℃で5時間攪拌して反応を行った。その後、還流を外して100℃で0.5時間撹拌して反応を継続した。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−13と同様に行った。評価結果を表12に示す。
【0277】

(実施例2−16)
実施例2−3に記載のイソシアネート組成物に、製造例4に記載のHDIポリイソシアネートを、質量比90/10にて混合した。評価結果を表12に示す。
【0278】

(比較例2−1)
NTIを、製造例4で製造したHDIポリイソシアネートに変えた以外は、実施例2−3と同様の方法で反応を行い、イソシアネート組成物を得た。その後の測定は実施例2−13と同様に行った。評価結果を表12に示す。
【0279】

(実施例2−22)
NTI:80.0質量部に、数平均分子量1000のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日油株式会社製、商品名「M1000」エチレングリコール繰り返し単位の平均数:22.0):20.0質量部を添加し、窒素下、100℃で4時間攪拌して反応を行った。反応終了後、イソシアネート組成物を得た。評価結果を表12に示す。
【0280】

(実施例2−17)
実施例2−3にて製造したイソシアネート組成物:100質量部に、ジプロピレングリコールジメチルエーテル:91.6質量部(樹脂固形分:70質量%)を添加し、70℃に加熱した。その後、撹拌しながら3,5−ジメチルピラゾール:113.8質量部(NCOに対し1.03倍モル量)を添加し、70℃、1時間撹拌し、ブロックイソシアネート組成物を得た。得られたブロックイソシアネート組成物の評価結果を表13に示す。表13中、「DMP」は3,5−ジメチルピラゾールを意味する。
【0281】

(実施例2−18)
イソシアネート組成物を、実施例2−10にて製造したイソシアネート組成物に変えた以外は、実施例2−17と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を得た。評価結果を表13に示す。
【0282】

(比較例2−3)
イソシアネート組成物を、比較例2−1にて製造したイソシアネート組成物に変えた以外は、実施例2−17と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を得た。評価結果を表13に示す。
【0283】

(実施例2−23)
イソシアネート組成物を、実施例2−22にて製造したイソシアネート組成物に変えた以外は、実施例2−17と同様の方法で、ブロックイソシアネート組成物を得た。評価結果を表13に示す。
【0284】

【表8】
【0285】
【表9】
【0286】
【表10】
【0287】
【表11】
【0288】
【表12】
【0289】
【表13】
【0290】
(実施例2−19)
NTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加したものを用いて実施例2−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例2−1と同様であった。
【0291】

(実施例2−20)
NTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加したものを用いて実施例2−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例2−1と同様であった。
【0292】

(製造例10)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、NTIを20g仕込み、60℃に加熱し、メタノールを7.7g添加し、撹拌しながら4時間保持し、N−置換カルバミン酸エステルC−2を得た。
【0293】

(実施例2−21)
NTI:300gにN−置換カルバミン酸エステルC−2を0.03g添加したものを用いて実施例2−1と同様の操作によりイソシアネート組成物を得た。
このイソシアネート組成物の各評価結果は実施例2−1と同様であった。
【0294】

(実施例3−1)
ビーカーにイオン交換水40gを仕込み、直径4cmのディスパーで1000回転/分の撹拌速度で混合しながら、NTIを10g滴下し、23℃3分間、混合し、イソシアネート組成物の水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性はA、平均分散粒子径は5450nm、乾燥性評価結果はA、塗料の可使用時間評価はA、水分散体の塗膜の耐水性評価はAであった。
【0295】

(実施例3−2〜3−6、比較例3−1〜3−3)
表14のイソシアネートの種類、添加量、有機溶剤の種類、添加量を記載の通りとした以外は実施例3−1と同様に実施した。また、イソシアネート組成物の粘度、得られたイソシアネート組成物の水分散体の水分散安定性、平均分散粒子径、乾燥性評価結果、塗料の可使用時間評価結果、水分散体の塗膜の耐水性評価は表14に記載した。
比較例3−1〜3−3は、水分散後1時間以内に分離したため、水分散安定性はBで、平均分散粒子径は測定できなかった。また、この水分散体の上層液を用いて、乾燥性評価、塗料の可使用時間評価、水分散体の塗膜の耐水性評価を実施した。結果を表14に記載した。
【0296】

(比較例3−4)
試験管にNTIを10g添加し、そこに慎重にイオン交換水40gをNTIが覆われるように添加し、栓をした。その後、乳白色の懸濁液になるよう、数秒間、激しく振とうし、イソシアネート組成物の水分散体を得た。
この水分散体は、数十秒後にイソシアネート組成物と水は分離、沈降したため、水分散安定性はB、平均分散粒子径は測定できなかった。また、この水分散体の上層液を用いて、乾燥性評価、塗料の可使用時間評価、水分散体の塗膜の耐水性評価を実施した。結果を表14に記載した。
【0297】

【表14】
【0298】
(実施例3−7)
NTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを実施例3−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性はA、平均分散粒子径は5450nm、乾燥性評価結果はA、塗料の可使用時間評価はA、水分散体の塗膜の耐水性評価はAであった。
【0299】

(実施例3−8)
NTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを実施例3−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性はA、平均分散粒子径は5450nm、乾燥性評価結果はA、塗料の可使用時間評価はA、水分散体の塗膜の耐水性評価はAであった。
【0300】

(実施例3−9)
NTI:300gに製造例10で調製したN−置換カルバミン酸エステルC−2を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを実施例3−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性はA、平均分散粒子径は5450nm、乾燥性評価結果はA、塗料の可使用時間評価はA、水分散体の塗膜の耐水性評価はAであった。
【0301】

以上より、実施例3−1〜3−9で調製されたのイソシアネート組成物は、水への分散安定性に優れ、塗料組成物とした際の速乾性、可使用時間に優れ、形成される塗膜が耐水性に優れることが確認された。
【0302】

(実施例4−1)
ビーカーにイオン交換水40gを仕込み、直径4cmのディスパーで1000回転/分の撹拌速度で混合しながら、LTIを10g滴下し、23℃3分間、混合し、イソシアネート組成物の水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性、分散粒径、乾燥性、水分散体の塗膜の耐水性は、表15に記載のとおりである。
【0303】

(実施例4−2、4−3)
ビーカーにイオン交換水40gを仕込み、直径4cmのディスパーで1000回転/分の撹拌速度で混合しながら、表15に記載のイソシアネートの固形分90質量%を含有する2−n−ブトキシエチルアセテート(BGA)溶液を11g滴下し、23℃3分間、混合し、イソシアネート組成物の水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性、分散粒径、乾燥性、水分散体の塗膜の耐水性は、表15に記載のとおりである。
【0304】

(実施例4−4)
ビーカーにイオン交換水40gを仕込み、直径4cmのディスパーで1000回転/分の撹拌速度で混合しながら、LTIを10g滴下し、23℃3分間、混合し、イソシアネート組成物の水分散体を得た。
この水分散体の水分散安定性、分散粒径、乾燥性、水分散体の塗膜の耐水性は、表15に記載のとおりである。
【0305】

(比較例4−1、4−2)
LTIをHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)に変えた以外は、実施例4−1および4−2と同様に混合した。いずれも水分散後1時間以内に分離したため、平均分散粒子径は測定できなかった。これらの水分散体の上層液を用いて、乾燥性、水分散体の塗膜の耐水性評価を実施した。評価結果は表15のとおりである。
【0306】

(比較例4−3)
試験管にLTIを10g添加し、そこに慎重にイオン交換水40gをLTIが覆われるように添加し、栓をした。その後、乳白色の懸濁液になるよう、10秒間、激しく振とうした。数十秒後にイソシアネート組成物は、水に分散することなく分離、沈降したため、平均分散粒子径は測定できなかった。この水とイソシアネート組成物との混合物の上層液を用いて、乾燥性、水分散体の塗膜の耐水性評価を実施した。評価結果は表15のとおりである。
【0307】

【表15】
【0308】
(実施例4−5)
LTI:300gに2,2,4−トリメチルペンタンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを用いて実施例4−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の各評価結果は実施例4−1と同様であった。
【0309】

(実施例4−6)
LTI:300gにヘキサデカンを0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを用いて実施例4−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の各評価結果は実施例4−1と同様であった。
【0310】

(実施例4−7)
LTI:300gに、製造例9で調製したN−置換カルバミン酸エステルC−1を0.03g添加し、イソシアネート組成物を得た。これを用いて実施例4−1と同様の操作により水分散体を得た。
この水分散体の各評価結果は実施例4−1と同様であった。
【0311】

以上より、実施例4−1〜4−7で調製されたのイソシアネート組成物は、水への分散安定性に優れ、塗料組成物とした際の速乾性、可使用時間に優れ、形成される塗膜が耐水性に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0312】

本発明のイソシアネート組成物およびブロックイソシアネート組成物は、低粘度であり、水分散性、乾燥性、耐水性に優れた塗料組成物として、好適に用いることができる。
また、本発明のイソシアネート組成物の水分散体は、水への分散安定性に優れ、塗料組成物とした際の乾燥性、および形成される塗膜の耐水性に優れた塗料組成物として、好適に用いることができる。