特許第6627072号(P6627072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6627072
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】塗布容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/24 20060101AFI20191223BHJP
   A45D 40/04 20060101ALI20191223BHJP
   A45D 33/28 20060101ALI20191223BHJP
   A45D 34/06 20060101ALI20191223BHJP
【FI】
   A45D40/24 Z
   A45D40/04 B
   A45D33/28 Z
   A45D34/06
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-196470(P2018-196470)
(22)【出願日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年2月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】谷 仁一
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−012725(JP,A)
【文献】 特開2002−142858(JP,A)
【文献】 特開2013−022202(JP,A)
【文献】 実開平05−038498(JP,U)
【文献】 特開平01−243007(JP,A)
【文献】 米国特許第03103032(US,A)
【文献】 米国特許第02888020(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00−40/24
B43K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の両端のそれぞれに開口が形成された本体筒と、
前記本体筒に対して前記軸線方向の一方側に設けられる第1塗布具と、
前記本体筒の内部において前記本体筒と一体にされており、前記第1塗布具に係合する係合部と、を備えた塗布容器であって、
前記第1塗布具は、前記本体筒の前記一方側の前記開口の内部に設けられ、前記係合部に係合される被係合部を含んでおり、
前記係合部は、
前記被係合部が前記軸線方向に挿入されて前記被係合部に係合する内周面を含む筒状部と、
前記本体筒及び前記筒状部を互いに連結する連結部と、を有し、
前記筒状部の外周面は、前記本体筒の内面から離間しており、
前記第1塗布具は、
前記本体筒に挿入されて前記本体筒と前記軸線方向に係合する中筒と、
前記被係合部に対して拡径する鍔部と、を更に含んでおり、
前記鍔部は、前記中筒と前記連結部との間に前記軸線方向に挟み込まれている、
塗布容器。
【請求項2】
前記第1塗布具は、前記本体筒の前記一方側に設けられる第1塗布材と、前記第1塗布材を前記軸線方向の前記一方側に繰り出す繰り出し機構と、を更に備える、
請求項1に記載の塗布容器。
【請求項3】
前記本体筒に対して前記軸線方向の他方側に設けられる第2塗布具を更に備える、
請求項1又は2に記載の塗布容器。
【請求項4】
前記本体筒の前記他方側の前記開口に取り付けられる容器を更に備え、
前記容器は、前記第2塗布具が塗布する第2塗布材を収容し、
前記本体筒は、前記軸線方向の前記一方側から前記他方側に向かうにつれて拡径しており、
前記容器の外径は、前記本体筒の外径よりも大きい、
請求項3に記載の塗布容器。
【請求項5】
前記連結部は、前記本体筒の径方向に沿って延びている、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗布容器。
【請求項6】
前記連結部の肉厚は、前記本体筒の肉厚の60%以下である、
請求項5に記載の塗布容器。
【請求項7】
前記筒状部の内周面には、前記筒状部の周方向に沿って並ぶと共に前記軸線方向に沿って延びる複数の凹凸が設けられており、
前記複数の凹凸は、前記被係合部に対して回転方向に係合する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗布容器。
【請求項8】
前記被係合部は、径方向に弾性を有する突出部を含み、
前記複数の凹凸は、前記突出部に対して回転方向に係合し、
前記突出部と前記複数の凹凸との係合は、前記本体筒に対する前記第1塗布具の回転力が一定以上となったときに解除される、
請求項7に記載の塗布容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布具を備える塗布容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から塗布具を備えた塗布容器については種々のものが知られている。例えば、特開2002−142858号公報には、液状化粧料を収容する化粧料容器が記載されている。この化粧料容器は、棒状化粧材を保持する押棒が内挿された先筒と、液状化粧料又は粉状化粧料が充填された容器本体と、先筒及び容器本体を中継する中継具と、を備えている。
【0003】
中継具は、全体として円筒状を成しており、中継具の内部は、先筒内の押棒が内挿される前部と、容器本体が取り付けられる後部とに仕切られている。中継具の前部には、押棒の外周に設けられた雄螺子が螺合する螺旋溝が設けられており、押棒と中継具の前部との螺合機構によって、押棒が前方に繰り出される。中継具の後部には、容器本体の前端部の外周に設けられた雄螺子と脱着可能に螺合する雌螺子が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−142858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した化粧料容器において、中継具の後部に取り付けられる容器本体の外径が、中継具の前部に内挿される押棒の外径に比べて大きくなっており、これに応じて、中継具の後部の肉厚が、中継具の前部の肉厚よりも薄くなっている。このように中継具等の筒状部材に肉厚差が生じる場合、筒状部材の射出成形時において、筒状部材の肉厚の薄い部分に比べて、筒状部材の肉厚の厚い部分の方が大きく収縮する。筒状部材の肉厚差が大きい場合、当該収縮の差も大きくなり、筒状部材の表面にヒケと呼ばれる凹みが発生し易くなる。筒状部材の表面にヒケが発生すると、外観不良及び寸法安定性の低下といった問題が生じうる。
【0006】
本発明は、ヒケの発生を抑制することができる塗布容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塗布容器は、軸線方向の両端のそれぞれに開口が形成された本体筒と、本体筒に対して軸線方向の一方側に設けられる第1塗布具と、本体筒の内部において本体筒と一体にされており、第1塗布具に係合する係合部と、を備えた塗布容器であって、第1塗布具は、本体筒の一方側の開口の内部に設けられ、係合部に係合される被係合部を含んでおり、係合部は、被係合部が軸線方向に挿入されて被係合部に係合する内周面を含む筒状部と、本体筒及び筒状部を互いに連結する連結部と、を有し、筒状部の外周面は、本体筒の内面から離間しており、第1塗布具は本体筒に挿入されて本体筒と軸線方向に係合する中筒と、被係合部に対して拡径する鍔部と、を更に含んでおり、鍔部は、中筒と連結部との間に軸線方向に挟み込まれている。
【0008】
この塗布容器では、第1塗布具は、本体筒の一方側の開口の内部に設けられる被係合部を含んでおり、被係合部に本体筒内の係合部が係合することによって第1塗布具が本体筒に装着される。この係合部は、被係合部が挿入されて被係合部に係合する内周面を含む筒状部と、本体筒及び筒状部を互いに連結する連結部とを備えており、筒状部の外周面は、本体筒の内面から離間している。被係合部に係合する筒状部の外周面が本体筒の内面から離間していることによって、筒状部と対向する部分における本体筒の肉厚を、本体筒の他の部分の肉厚と同等にすることができる。すなわち、本体筒の肉厚の均一化を図ることができる。これにより、本体筒の表面におけるヒケの発生を抑制でき、本体筒の寸法安定性を向上させると共に外観の品質を向上させることができる。更に、筒状部の外周面が本体筒の内面から離間していることによって、筒状部の肉厚を薄くできると共に当該肉厚の均一化を図ることが可能となる。これにより、筒状部におけるヒケの発生を抑制でき、筒状部の寸法安定性の向上を図ることもできる。被係合部に係合する筒状部の寸法が安定することによって、筒状部と被係合部との係合を安定させることが可能となる。
【0009】
また、前述の塗布容器では、第1塗布具は、本体筒の一方側に設けられる第1塗布材と、第1塗布材を軸線方向の一方側に繰り出す繰り出し機構と、を更に備えてもよい。この場合、第1塗布材を軸線方向の一方側に繰り出す塗布容器において、ヒケの発生を抑制することができる。これにより、繰り出し機構による第1塗布材の繰り出しを確実に且つ安定して行うことができる。
【0010】
また、前述の塗布容器は、本体筒に対して軸線方向の他方側に設けられる第2塗布具を更に備えてもよい。この場合、複数種類の塗布具を具備する塗布容器において、ヒケの発生を抑制することができる。
【0011】
また、前述の塗布容器は、本体筒の他方側の開口に取り付けられる容器を更に備え、容器は、第2塗布具が塗布する第2塗布材を収容し、本体筒は、軸線方向の一方側から他方側に向かうにつれて拡径しており、容器の外径は、本体筒の外径よりも大きくてもよい。この場合、外径が大きい容器に多くの第2塗布材を収容できる。更に、上記のように本体筒が軸線方向の他方側、すなわち容器側に拡径することによって、本体筒よりも外径が大きい容器が本体筒に取り付けられた場合でも、本体筒の肉厚の均一化を図ることができる。
【0012】
また、前述の塗布容器では、連結部は、本体筒の径方向に沿って延びていてもよい。この場合、肉厚が一定とされた本体筒と筒状部とを一体成形によって容易に製造することができる。
【0013】
また、前述の塗布容器では、連結部の肉厚は、本体筒の肉厚の60%以下であってもよい。この場合、連結部を細くすることができ、本体筒の肉厚が厚くなる部分を低減できるので、ヒケの発生をより確実に抑制できる。
【0014】
また、前述の塗布容器では、筒状部の内周面には、筒状部の周方向に沿って並ぶと共に軸線方向に沿って延びる複数の凹凸が設けられており、複数の凹凸は、被係合部に対して回転方向に係合していてもよい。この場合、被係合部と筒状部との係合を簡易な構成で実現できる。
【0015】
また、前述の塗布容器では、被係合部は、径方向に弾性を有する突出部を含み、複数の凹凸は、突出部に対して回転方向に係合し、突出部と複数の凹凸との係合は、本体筒に対する第1塗布具の回転力が一定以上となったときに解除されてもよい。この場合、第1塗布具と本体筒とを相対回転させる回転力が一定以上となったときに、突出部と複数の凹凸との係合が解除されるので、第1塗布具又は本体筒が損傷することをより確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒケの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る塗布容器を示す側面図である。
図2図1の塗布容器のA−A線断面図である。
図3図1の塗布容器からキャップを外した状態を示す側面図である。
図4図3の塗布容器から棒状塗布材を繰り出した状態を示す側面図である。
図5図4の塗布容器のB−B線断面図である。
図6図5の塗布容器における先筒の段付き筒部を拡大した断面図である。
図7】(a)は、図5の塗布容器の先筒を示す部分断面図である。(b)は、図5の塗布容器の先筒を示す側面図である。
図8】(a)は、図4の塗布容器の中筒を示す側面図である。(b)は、図4の塗布容器の中筒を図8(a)とは異なる方向から見た側面図である。
図9】(a)は、図5の塗布容器の移動体を軸線方向前側から見た正面図である。(b)は、図5の塗布容器の移動体を示す側面図である。
図10】(a)は、図5の塗布容器の保持部材を示す斜視図である。(b)は、図10(a)の保持部材を、軸線方向を含む平面で切断したときの縦断面図である。
図11】(a)は、図2の塗布容器の塗布材保持部を示す側面図である。(b)は、図11(a)の塗布材保持部を軸線方向前側から見た正面図である。
図12】(a)は、図4の塗布容器の取付部材を示す側面図である。(b)は、図4の塗布容器の取付部材を図12(a)とは異なる方向から見た側面図である。
図13図5の塗布容器の継手筒を示す縦断面図である。
図14図13の継手筒の係合部を拡大した断面図である。
図15図2の塗布容器の充填部を示す側面図である。
図16】(a)は、図2の塗布容器のワイパーを示す側面図である。(b)は、図2の塗布容器のワイパーを軸線方向後側から見た図である。
図17図16(a)のワイパーのC−C線断面図である。
図18】(a)は、図2の塗布容器のカバーを示す部分断面図である。(b)は、図2の塗布容器のカバーを、軸線方向を含む平面で切断したときの縦断面図である。
図19図18のカバーの壁部を拡大した図である。
図20】(a)は、充填部、カバー及びワイパーを示す縦断面図である。(b)は、図20(a)の充填部、及びカバーの壁部に挟み込まれたワイパーを拡大した断面図である。
図21】(a)は、第1変形例に係る塗布容器のカバーを示す部分断面図である。(b)は、図21(a)のカバーの壁部を拡大した断面図である。
図22】(a)は、図21のカバー、充填部及びワイパーを示す縦断面図である。(b)は、図22(a)の充填部、及びカバーの壁部に挟み込まれたワイパーを拡大した断面図である。
図23】(a)は、第2変形例に係る塗布容器のカバーを示す部分断面図である。(b)は、図23(a)のカバーの壁部を拡大した断面図である。
図24】(a)は、図23のカバー、充填部及びワイパーを示す縦断面図である。(b)は、図24(a)の充填部、及びカバーの壁部に挟み込まれたワイパーを拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る塗布容器の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る塗布容器1を示す側面図である。図2は、図1の塗布容器1のA−A線断面図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る塗布容器1は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を成し良好な外観を呈するものであり、キャップCが装着される。塗布容器1は、固形状の棒状塗布材M(第1塗布材)を備える。棒状塗布材Mは、例えば、棒状化粧料であるが、描画材等であってもよい。本実施形態において、棒状塗布材Mはアイブロウであってもよく、この場合、塗布容器1はアイブロウ繰出容器である。
【0020】
例えば、塗布容器1は、キャップCが取り付けられる本体2と、本体2のキャップCとの反対側に取り付けられると共に塗布材A(第2塗布材)が収容された容器10とを備える。塗布材Aは、例えば、粉体状又は液状の塗布材であり、具体的には、アイライナー、アイカラー、アイブロウ、マスカラ、コンシーラー、リップ若しくはヘアーカラー等に使用される液体若しくは粉体、又は、筆記具、修正液若しくは接着剤を含む文房具等の液体若しくは粉体である。
【0021】
塗布容器1において、キャップC、本体2及び容器10は、塗布容器1の軸線Lが延びる軸線方向に沿って並んで配置される。本明細書において、「軸線」とは、塗布容器1の前後に延びる中心線を示しており、「軸線方向」とは、前後方向であって且つ軸線Lに沿った方向を示している。棒状塗布材Mの繰り出し方向を前方(前進する方向)とし、その反対方向を後方とする。
【0022】
図3は、キャップCが外された塗布容器1を示す側面図である。図4は、図3の塗布容器1から容器10を外して棒状塗布材Mを繰り出した状態を示す側面図である。図5は、図4のB−B線断面図である。図3図5に示されるように、本体2は、その前側に設けられる塗布具T1(第1塗布具)と、本体2の後側に設けられる塗布具T2(第2塗布具)と、塗布具T1及び塗布具T2を互いに連結すると共に塗布容器1の外部に露出する継手筒5(本体筒)と、継手筒5の内部を仕切ると共に塗布具T1に係合する係合部14と、を備える。
【0023】
塗布具T1は、継手筒5に対して前方に設けられており、軸線方向に沿って延在している。塗布具T1は、その前側に設けられる前述の棒状塗布材Mと、棒状塗布材Mを収容する先筒3と、先筒3の後方に設けられる中筒4と、先筒3の内部に収容された移動体7と、塗布具T1の後側に設けられると共に継手筒5の内部において移動体7を保持する保持部材8と、移動体7の前側において棒状塗布材Mを保持する塗布材保持部9と、を備える。先筒3、中筒4、移動体7及び保持部材8は、棒状塗布材Mを軸線方向に繰り出す繰り出し機構15を構成する。
【0024】
棒状塗布材Mは、軸線方向に延びる側面M3を有すると共に、先端に、軸線方向に対して傾斜する傾斜部M1を有する。前側から見た棒状塗布材Mの形状は、傾斜部M1が一定方向に長く延びる形状とされている。また、棒状塗布材Mの先端に位置する傾斜部M1と棒状塗布材Mの側面M3との間には、軸線方向に対して傾斜する方向に延びる平坦面M2が形成されている。平坦面M2は、例えば、傾斜部M1に対して左右両側に一対に設けられている。例えば、各平坦面M2は傾斜部M1の長手方向の両端から後方に延びている。前側から傾斜部M1と一対の平坦面M2を見たときの形状は、一定方向に長く延びると共に丸みを帯びた六角形状とされている。
【0025】
先筒3は、例えば、ABS樹脂で成形されており、軸線方向に延びる細長い筒状を呈する。先筒3の内部は、棒状塗布材Mが収容される収容空間3nとされている。先筒3は、前端3cに、軸線方向に対して傾斜する傾斜面3aを有する。先筒3の前端3cには、棒状塗布材Mが露出する開口3bが形成されている。開口3bは、先筒3の前端3cから斜め後方に延在している。
【0026】
先筒3は、棒状塗布材Mが収容される前側筒部3dと、前側筒部3dの後方に位置する段付き筒部3eと、段付き筒部3eの後方に位置する後側筒部3fとを有する。前側筒部3d、段付き筒部3e及び後側筒部3fのうち、前側筒部3dのみが外方に露出する。前側筒部3dは、段差3gから前端3cに向かうに従って徐々に縮径している。段差3gは前側筒部3dと段付き筒部3eの間に形成されており、前側筒部3dは段付き筒部3eに対して段差3gから拡径している。先筒3の段差3gよりも後側は中筒4に前側から挿入される挿入部とされている。先筒3は、その段差3gよりも後側が中筒4に挿入されることにより、中筒4に軸線方向に係合され且つ相対回転可能に係合される。なお、先筒3と中筒4とは、互いに軸線方向に0.1mm程度移動可能な状態で係合されていてもよい。この場合、先筒3と中筒4とを相対回転し易くすることができる。
【0027】
図6は、先筒3の段付き筒部3eを、軸線方向を含む平面で切断した断面図である。図7(a)は、先筒3の部分断面図である。図7(b)は、先筒3の側面図である。図6図7(a)及び図7(b)に示されるように、先筒3の前側筒部3dの内部には、棒状塗布材Mを収容する収容空間3nが軸線方向に沿って延びている。軸線方向に沿って見た収容空間3nの形状は、非円形状とされており、例えば、一定方向に長く延びる形状とされている。先筒3の前側筒部3dの内側には、軸線方向に延びる凸部3rが設けられており、凸部3rは、例えば、先筒3の径方向に沿って一対に設けられる。
【0028】
凸部3rの前端は、先筒3の開口3bの付近にまで達しており、凸部3rの前端には、後方に向かうに従って先筒3の内側に湾曲して突出する傾斜面3pが形成されている。先筒3の段付き筒部3eは、外面に、先筒3の周方向に延びる環状凹部3hと、環状凹部3hの後方に位置する凹部3jとを有する。先筒3を型成形によって製造するときには、成形型の内部に樹脂等の材料を注入する注入口が凹部3jの中心に配置される。凹部3jは、例えば、先筒3の径方向に沿って一対に設けられており、各凹部3jは四角形状とされている。
【0029】
先筒3の段付き筒部3eの内側には、軸線方向に延びる突条3kが設けられている。突条3kは、例えば複数設けられる。各突条3kは、段付き筒部3eの後側から後側筒部3fの内面まで延びている。突条3kは、例えば、先筒3の径方向に沿って一対に設けられる。また、棒状塗布材Mを収容する収容空間3nの後側には、径方向内側に向かうに従って後方に傾斜するテーパ面3mが設けられる。
【0030】
突条3kの後側は後側筒部3fの内部空間3qとされており、内部空間3qは突条3kが設けられた部位よりも拡径されている。後側筒部3fは、その内周面3sにおいて互いに対向する一対の位置に弾性突部3tを備える。弾性突部3tは、中筒4の内面に弾性力によって当接する部位であり、径方向外側に突出するように設けられる。弾性突部3tの周囲には、先筒3の内外を連通する切り欠き3uが形成されており、切り欠き3uによって弾性突部3tは径方向に弾性を有している。
【0031】
切り欠き3uは、先筒3の周方向に沿って複数並設されて軸線方向に延びる一対のスリット3v,3wと、弾性突部3tの前側に穿設されてスリット3v,3wの間で先筒3の周方向に延びるスリット3xを含んでいる。後側筒部3fで切り欠き3uに囲まれた部分は、径方向に可撓性を有するアーム3yを成している。よって、アーム3yの先端部の外面に配置された弾性突部3tは径方向に弾性力(付勢力)を有する。
【0032】
以上のように構成される先筒3では、その段付き筒部3eに中筒4の内面の環状突起4qが相対回転可能に軸線方向に係合すると共に、弾性突部3tが中筒4の内面に当接する。図8(a)は中筒4を示す側面図であり、図8(b)は中筒4を図8(a)とは異なる方向から見た側面図である。中筒4は、例えば、POM(ポリアセタール)で成形されると共に、略円筒状に形成されている。
【0033】
図8(a)及び図8(b)に示されるように、中筒4は、その前端から後端に向かって、前側筒部4a、後側筒部4b及びバネ部4cをこの順に具備している。中筒4は、落下時等の外力作用時に、内部に伝わる衝撃を緩和して塗布容器1や棒状塗布材Mを保護する。また、中筒4のバネ部4cは、棒状塗布材Mの後退限においてクラッチ回転を行うときに、移動体7を保持部材8に取り付けるための螺合部20を螺合復帰させる機能を有する。前側筒部4aの外周面の前端部には、後方に向かうに従って徐々に拡径する傾斜面4fが形成されている。前側筒部4aの外周面には、軸線方向に延びる突出部4dと、突出部4dの後方において略円形状に突出する突起4eとが設けられる。突出部4d及び突起4eにはキャップCが係合する。
【0034】
前側筒部4aと後側筒部4bとの間には、径方向外側に突出すると共に継手筒5の前端に入り込む鍔部4gが設けられる。後側筒部4bの外面には、後方に向かうに従って縮径する傾斜面4hを有する環状突起4jと、環状突起4jの後方において軸線方向に延びると共に中筒4の周方向に沿って並設された複数の突出部4kと、複数の突出部4kの間において窪む凹部4mとが設けられる。中筒4を型成形によって製造するときには、成形型の内部に樹脂等の材料を注入する注入口が凹部4mの中心に配置される。突出部4k及び凹部4mの後方にはバネ部4cが設けられる。バネ部4cは、軸線方向に伸縮可能とされている樹脂バネである。バネ部4cは、本体部4nと、本体部4nの周面に沿って螺旋状に延び且つ本体部4nの内外を連通するスリット4pとによって形成されている。バネ部4cは、外力が付与されたときに収縮することによって衝撃を緩和する。中筒4の前側筒部4aより後側の部分は、継手筒5の前側に挿入される。
【0035】
図9(a)は移動体7を前側から見た正面図であり、図9(b)は移動体7の側面図である。移動体7は、例えば、POMで成形されると共に、丸棒状に形成されている。移動体7は、前側に設けられると共に塗布材保持部9に連結される連結部7aと、連結部7aから後方に延びる軸体部7bとを備える。連結部7aの外面、及び軸体部7bの外面には、軸線方向に延びる溝部7cが設けられる。溝部7cは、先筒3の内面に設けられた突条3kと共に、先筒3に対する移動体7の回り止めとして機能する。溝部7cは、例えば、移動体7の径方向に一対に設けられる。
【0036】
移動体7の連結部7aの前端には、後方に向かうに従って拡径するテーパ面7dが設けられている。また、連結部7aは、テーパ面7dよりも後方に、後方に向かうに従って徐々に拡径するテーパ面7eを有する環状突起7fと、環状突起7fの後方において環状突起7fよりも更に拡径する拡径部7gとを有する。環状突起7fと拡径部7gの間は、環状突起7f及び拡径部7gに対して縮径する縮径部7hとされている。
【0037】
軸体部7bは、連結部7aの後端から軸線方向に延在する軸体である。軸体部7bの外面には、螺合部20の一方を構成する雄螺子7jが形成されている。雄螺子7jは、軸体部7bの軸線方向の全体にわたって形成されている。以上のように構成される移動体7は、その環状突起7fが塗布材保持部9に挿入されると共に、拡径部7gの前端が塗布材保持部9の後端に当接して塗布材保持部9に軸線方向に係合する。移動体7は、その溝部7cが先筒3の内面に形成された突条3kに回転方向に係合する。
【0038】
図10(a)は、保持部材8を示す斜視図である。図10(b)は、図10(a)の保持部材8を、軸線方向を含む平面で切断したときの縦断面図である。保持部材8は、例えば、POMで成形されると共に略円筒状に形成されている。図10(a)及び図10(b)に示されるように、保持部材8は、その前端から軸線方向に延びる前側筒部8aと、前側筒部8aの後端で拡径する鍔部8bと、鍔部8bの後側の部分であって係合部14に係合される後側筒部8c(被係合部)とを有する。前側筒部8aの前端部の内面には、螺合部20の他方を構成する螺旋状の突起8dが形成されている。後側筒部8cは、軸線Lを中心軸とする円筒状とされている。
【0039】
保持部材8の後側筒部8cは弾性突部8e(突出部)を備える。弾性突部8eは、係合部14に回転方向に係合される部位であり、後側筒部8cの後端部の外面から径方向外側に突出している。弾性突部8eの周囲には、保持部材8の内外を連通する切り欠き8fが形成されており、切り欠き8fによって弾性突部8eは径方向に弾性を有している。切り欠き8fの形状は、例えばL字状とされている。切り欠き8fは、後側筒部8cの後端から軸線方向に沿って延びるスリット8gと、スリット8gの前端から周方向に延びるスリット8hとを含んでいる。後側筒部8cで切り欠き8fに囲まれた部分は、径方向に可撓性を有するアーム8iを成している。アーム8iにおいて後方を向く端面8jは、後側筒部8cの後端面8kよりも前側に位置する。アーム8iの端面8jと後側筒部8cの後端面8kとの間には、後端面8kから前方に傾斜して端面8jに繋がる傾斜面8mが形成されている。
【0040】
弾性突部8eは、アーム8iの先端部において外面8nから突出しており、アーム8iの可撓性によって径方向に弾性力(付勢力)を有している。弾性突部8eは、外面8nにおいて軸線方向に沿って延在している。軸線方向に直交する平面で弾性突部8eを切断したときの弾性突部8eの断面形状は、径方向外側に向かうに従って周方向における幅が狭くなる脚を有する台形形状とされている。以上のように構成される保持部材8には、図2及び図5に示されるように、前方から移動体7が挿入され、前側筒部8aの突起8dが移動体7の雄螺子7jに螺合する。また、保持部材8は、継手筒5の内部に収容され、後側筒部8cの弾性突部8eは、係合部14に係合される。
【0041】
図11(a)は塗布材保持部9を示す側面図である。図11(b)は塗布材保持部9を前側から見た正面図である。塗布材保持部9は、先筒3に内挿されて棒状塗布材Mを保持する部品である。塗布材保持部9の材料は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)である。図11(a)及び図11(b)に示されるように、塗布材保持部9は、前側に位置して棒状塗布材Mを把持する把持部9aと、把持部9aから後方に延びると共に移動体7を支持する支持部9bとを備える。軸線方向に沿って見た塗布材保持部9の形状は、非円形状とされており、例えば、角部が丸められると共に一方向に長く延びる長方形状とされている。
【0042】
把持部9aは、把持部9aと支持部9bとの連結部を成す基部9cと、基部9cから前方に延びると共に棒状塗布材Mを把持する複数のアーム9dを備える。棒状塗布材Mは複数のアーム9dの内側に把持される。各アーム9dの内側面にはアーム9dに沿って軸線方向に延びる突出部9eが設けられており、各突出部9eが棒状塗布材Mに嵌り込むことによって棒状塗布材Mが塗布材保持部9に適度に保持される。
【0043】
軸線方向に沿って見た各突出部9eの形状は、先端が丸められた三角形状とされている。各アーム9dは、前方に向かうに従って薄くなっている。具体的には、各アーム9dは、基部9cから前方に向かって順に、第1傾斜面9g及び第2傾斜面9jを有する。アーム9dの基部9cと第1傾斜面9gの間の部分、アーム9dの第1傾斜面9gと第2傾斜面9jの間の部分、及びアーム9dの第2傾斜面9jと前端9kの間の部分は、共に軸線方向に延在している。
【0044】
基部9cと第1傾斜面9gの間におけるアーム9dの厚さは、第1傾斜面9gと第2傾斜面9jの間におけるアーム9dの厚さよりも厚い。また、第1傾斜面9gと第2傾斜面9jの間におけるアーム9dの厚さは、第2傾斜面9jと前端9kの間におけるアーム9dの厚さよりも厚い。アーム9dの突出部9eの高さは軸線方向に沿って一定とされている。よって、第1傾斜面9gの天面に対する突出部9eの突出高さは、第2傾斜面9jの天面に対する突出部9eの突出高さよりも低い。
【0045】
塗布材保持部9の支持部9bは、基部9cから把持部9aの反対側(後方)に延びており、例えば有底筒状を成している。支持部9bは、その外面に設けられる凹部9qと、支持部9bの内外を連通する窓部9rと、塗布材保持部9の後端に設けられており塗布材保持部9を軸線方向に貫通する貫通孔9sとを有する。凹部9qの中心には、塗布材保持部9を型成形によって製造するときに、成形型の内部に樹脂等の材料を注入する注入口が配置される。貫通孔9sの後端部には、後方に向かうに従って拡径するテーパ面9tが設けられている。例えば、凹部9qは円形状とされており、窓部9rは軸線方向に長く延びる長方形状とされている。窓部9rと貫通孔9sとは互いに連通する。後方から見た貫通孔9sの形状は円形状とされている。
【0046】
塗布材保持部9は、その貫通孔9sに後方から移動体7が挿入される。塗布材保持部9は、窓部9rに移動体7の環状突起7fが貫通孔9sの内面を乗り越えて環状突起7fが窓部9rに嵌って窓部9rから外方に露出することにより、移動体7に軸線方向移動不能に係合する。また、非円形状である塗布材保持部9は、先筒3の非円形状とされた収容空間3nに入り込むことによって、先筒3に回転方向に係合し先筒3と共に同期回転する。
【0047】
次に、塗布具T2の構成について説明する。図2図4及び図5に示されるように、塗布具T2は、継手筒5に対して後方に設けられており、軸線方向に沿って延在している。塗布具T2は、継手筒5の後側に挿入される取付部材6と、取付部材6の後端に取り付けられる塗布部Pとを備える。図12(a)は取付部材6を示す側面図であり、図12(b)は取付部材6を図12(a)とは異なる方向から見た側面図である。取付部材6は、例えば、PP(ポリプロピレン)によって構成されている。図12(a)及び図12(b)に示されるように、取付部材6は、前側から後側に向かうに従って徐々に縮径する筒状とされている。取付部材6は、前側に位置して継手筒5に挿入される挿入部6aと、挿入部6aから後方に延びると共に先端に塗布部Pが取り付けられる取付部6bとを備える。
【0048】
挿入部6aは、段付き円筒状とされている。挿入部6aの外面には、周方向に沿って並設されると共に軸線方向に延びるローレット形状を呈する複数の凹凸6cと、複数の凹凸6cの後側に設けられた凹部6dと、凹部6dから突出すると共に前側にテーパ面6eを有する環状凸部6fと、環状凸部6fの後方において拡径する鍔部6gが設けられる。取付部6bは、本体2に容器10を装着するための螺合部30の一方を構成する雄螺子6hを有する大径部6jと、大径部6jから後方に延びると共に塗布部Pが取り付けられる小径部6kとを備える。
【0049】
大径部6j及び小径部6kは共に軸線方向に延びる筒状を成している。大径部6jの雄螺子6hの前方には、雄螺子6hが設けられる取付部材6の外面から拡径する拡径部6rが設けられる。拡径部6rは鍔部6gの後側に設けられており、拡径部6rの径方向外側への突出高さは、鍔部6gの径方向外側への突出高さよりも低い。大径部6jと小径部6kの間には、大径部6jから小径部6kに向かって徐々に縮径する傾斜面6mが設けられる。
【0050】
傾斜面6mは、取付部材6の径方向内側に回転中心を有する円弧状の第1湾曲部6nと、第1湾曲部6nの大径部6jとの反対側に位置すると共に軸線方向に対して傾斜する傾斜部6pと、取付部材6の径方向外側に回転中心を有する円弧状の第2湾曲部6qとを含んでいる。大径部6jから小径部6kに向かって第1湾曲部6n、傾斜部6p及び第2湾曲部6qは、この順に設けられる。軸線方向に対する傾斜部6pの傾斜角度は、例えば、36°である。
【0051】
図2及び図5に示されるように、取付部材6の内部には空間6vが設けられ、空間6vには塗布材Aの撹拌を促す撹拌部材Sが収容されている。撹拌部材Sの材料は、例えば、SUSであるが、樹脂であってもよく適宜変更可能である。撹拌部材Sは、取付部材6の内面における傾斜面6mから前側の部分に収容されている。撹拌部材Sは、例えば、ボールであり、球状に形成されている。撹拌部材Sは、塗布容器1に付与される振動に伴って空間6v内で移動することによって音を発する。取付部6bの小径部6kは、傾斜面6mから後方に延び出している。小径部6kの後端には、塗布部Pが挿入される開口6sが設けられている。
【0052】
塗布部Pは、丸棒状を成しており、長手方向の一端に傾斜面P1を有する。傾斜面P1は、本体2の後端に設けられ、軸線方向に対して鋭角を成すように傾斜している。傾斜面P1は、例えば、平坦状とされている。塗布部Pは、傾斜面P1を有する大径部P2と、大径部P2から前方に延びる小径部P3とを有する。小径部P3は、取付部材6の開口6sに挿入される部位である。小径部P3の外面には、塗布部Pを取付部材6に係合すると共に前側にテーパ面を有する環状凸部P5が設けられる。塗布部Pは、その小径部P3が後側から取付部材6の開口6sに挿入されて環状凸部P5が開口6s内の環状凸部を前側に乗り越えることにより、取付部材6に軸線方向に係合する。取付部材6には、塗布材Aが収容された容器10が取り付けられる。容器10の具体的な構成については後述する。
【0053】
次に、継手筒5の構成について説明する。図13は、継手筒5を示す縦断面図である。図14は、図13の継手筒5の係合部14を拡大した断面図である。継手筒5は、塗布具T1及び塗布具T2を互いに接続する筒状部材である。継手筒5は、例えば、ABS樹脂で成形されており、軸線Lを中心軸として軸線方向に延びる円筒状に形成されている。
【0054】
継手筒5の軸線方向の両端のそれぞれには、開口5a,5bが形成されている。軸線方向から見た開口5a,5bのそれぞれの形状は、軸線Lを中心とする円形状とされており、開口5bの内径は、開口5aの内径よりも大きくなっている。開口5aは継手筒5の前端に形成されており、開口5bは継手筒5の後端に形成されている。開口5aの内部には塗布具T1が設けられ、開口5bの内部には塗布具T2が設けられる。
【0055】
継手筒5の内部における軸線方向の中央付近には、係合部14が配置されている。継手筒5は、係合部14よりも前側に位置する前側部分5cと、係合部14よりも後側に位置する後側部分5dとを有する。継手筒5の前側部分5cは、塗布具T1の保持部材8及び中筒4を収容し、後側部分5dは、塗布具T2の取付部材6を収容する。前側部分5cの内面5eには、内面5eの前端部において前側部分5cの前端に向かって拡径する段差5fと、段差5fの後方において内面5eの周方向に延びる環状凹部5gと、環状凹部5gの後方に形成される複数の凹凸5hとが設けられている。複数の凹凸5hは、周方向に沿って並設されると共に軸線方向に延びるローレット形状とされている。
【0056】
継手筒5の後側部分5dの内面5iは、前側部分5cの内面5eよりも拡径されている。後側部分5dの内面5iには、その前端部から軸線方向に沿って延在すると共に周方向に沿って並設される複数の突条5jと、複数の突条5jの後方において周方向に延びる環状凹部5kと、環状凹部5kの後方において後側部分5dの後端に向かって拡径する段差5mとが設けられている。後側部分5dの内面5iの前端部には、前方に向かうに従って徐々に縮径する傾斜面5pが形成されている。
【0057】
継手筒5の外面は、凹凸等を有しない平滑面とされており、具体的には、前方から後方に向かって徐々に拡径する傾斜面5nとされている。よって、後側部分5dの傾斜面5nの外径は、前側部分5cの傾斜面5nの外径よりも大きくなっている。継手筒5の肉厚は、軸線方向に沿った各位置において略一定とされている。継手筒5の平均肉厚は、例えば、0.8mm以上且つ2.2mm以下(一例では1.45mm)とされている。継手筒5の肉厚は、継手筒5の任意の位置における径方向の厚さ(板厚)を示しており、継手筒5の平均肉厚は、継手筒5の各位置における肉厚の平均値を示している。図14において、継手筒5の肉厚t1は、継手筒5において係合部14に対向する部分の肉厚を示している。
【0058】
以上のように構成される継手筒5では、図2及び図5に示されるように、前側部分5cに、中筒4の前側筒部4aより後側の部分が前方から挿入される。中筒4の環状突起4jは、前側部分5cの環状凹部5gに軸線方向に係合し、中筒4の鍔部4gは、継手筒5の段差5fに嵌り込む。また、中筒4の突出部4kは、継手筒5の複数の凹凸5hと回転方向に係合する。突出部4kが複数の凹凸5hと回転方向に係合することにより、中筒4は継手筒5と同期回転可能に係合する。また、保持部材8の鍔部8bは、前側部分5cの内部において係合部14(具体的には、後述する連結部14b)と中筒4の後端との間に挟み込まれる。これにより、保持部材8が継手筒5に軸線方向に係合される。なお、保持部材8の鍔部8bは、中筒4に押さえられている。保持部材8は、中筒4のバネ部4cが縮む分、前側に移動可能とされてもよい。
【0059】
一方、後側部分5dには、取付部材6の挿入部6aが後方から挿入される。挿入部6aの外面に設けられる複数の凹凸6cは、継手筒5の突条5jに回転方向に係合され、当該外面に設けられる環状凸部6fは、継手筒5の環状凹部5kに軸線方向に係合される。また、取付部材6の鍔部6gは、継手筒5の段差5mに嵌り込む。複数の凹凸6cが突条5jに回転方向に係合されると共に環状凸部6fが環状凹部5kに軸線方向に係合されることによって、取付部材6は、継手筒5に軸線方向移動不能且つ回転不能に係合される。
【0060】
係合部14は、図13及び図14に示されるように、継手筒5の内部を仕切る仕切壁とされており、継手筒5と一体に成形されている。係合部14は、軸線方向の前方に開口を有する有底円筒状の筒状部14aと、筒状部14a及び継手筒5を互いに連結する連結部14bとを有する。筒状部14aは、後側部分5dの前端部から後方に延びている。また、筒状部14aの中心軸は、軸線L上に位置している。すなわち、筒状部14aの中心軸は、継手筒5の中心軸に一致している。
【0061】
筒状部14aは、その後端に位置する底壁14cと、底壁14cの周縁から前方に延びる側壁14dとを有する。底壁14cは、筒状部14aの内側を向く内壁面14eと、内壁面14eの反対側を向く外壁面14fと、内壁面14e及び外壁面14fを軸線方向に貫通する貫通孔14gとを含んでいる。内壁面14e及び外壁面14fのそれぞれは、軸線方向に交差(一例では直交)する平面に沿って延在する平坦状とされている。軸線方向から見た内壁面14e及び外壁面14fのそれぞれの形状は、軸線Lを中心とする円環形状とされている。貫通孔14gは、底壁14cの中央部に設けられている。軸線方向から見た貫通孔14gの形状は、軸線Lを中心とする円形状とされている。
【0062】
側壁14dは、筒状部14aの内側を向く内周面14hと、内周面14hとは反対側を向く外周面14iとを含んでいる。内周面14hは、軸線Lを中心軸として円筒穴状に形成されている。内周面14hは、底壁14cの内壁面14eの周縁から前方に延びており、内壁面14eに対して略直角とされている。外周面14iは、内周面14hに沿って延びており、具体的には、後方に向かうに従って徐々に縮径する傾斜面とされている。すなわち、外周面14iは、後方に向かうに従って筒状部14aの径方向内側に傾斜している。外周面14iは、その後端に位置する湾曲面14jを介して、底壁14cの外壁面14fに接続されている。湾曲面14jは、外周面14iから径方向内側に湾曲して外壁面14fに繋がっており、丸みを帯びている。
【0063】
外周面14iは、後側部分5dの内面5iから径方向に離間しており、内面5iと径方向に対向している。外周面14iが内面5iから径方向に離間することによって、外周面14iと内面5iとの間に空間Vが形成されている。空間Vは、後側部分5dの内部において筒状部14aを周方向に取り囲む円環状の内部空間である。空間Vの前端部は、前方に向かうに従って縮径している。
【0064】
内周面14hには、周方向に沿って並設されると共に軸線方向に延びるローレット形状を呈する複数の凹凸14kが形成されている。本実施形態では、複数の凹凸14kは、内周面14hにおいて周方向に沿って等間隔に並設されている。
【0065】
筒状部14aの肉厚は、筒状部14aの各位置において略一定とされている。筒状部14aの肉厚は、側壁14dの径方向の厚さと、底壁14cの軸線方向の厚さとを含む。側壁14dの径方向の厚さは、内周面14hと外周面14iとの径方向における距離を示している。底壁14cの軸線方向の厚さは、内壁面14eと外壁面14fとの軸線方向における距離を示している。図14において、筒状部14aの肉厚t2は、継手筒5の後側部分5dに対向する側壁14dの肉厚を示している。底壁14cの肉厚は、径方向における各位置において一定である。
【0066】
連結部14bは、継手筒5における内面5e及び内面5iの境界部分と筒状部14aの前端部とを互いに連結しており、径方向に沿って延びている。連結部14bは、その前端に位置する前端面14mと、前端面14mとは反対側に位置する後端面14nとを有する。前端面14mは、前側部分5cの内面5eに対して略直角となるように形成されており、軸線方向に交差(一例では直交)する平面に沿って延びている。前端面14mは、筒状部14aの前端に位置する湾曲面14pを介して、筒状部14aの内周面14hに接続されている。湾曲面14pは、軸線方向及び径方向のそれぞれに対して湾曲した面であり、前端面14mと内周面14hとを繋いでいる。
【0067】
連結部14bの後端面14nは、前端面14mに沿って延びている。また、前述した空間Vは、後側部分5dの内面5iと、内面5iの前方に位置する傾斜面5pと、傾斜面5pから前方に湾曲する湾曲面14qと、後端面14nと、後端面14nから後方に湾曲する湾曲面14rと、筒状部14aの外周面14iとによって画成されている。湾曲面14qは、軸線方向及び径方向のそれぞれに対して湾曲した面であり、後端面14nと傾斜面5pとを滑らかに繋いでいる。湾曲面14rは、湾曲面14pに沿って湾曲した面であり、後端面14nと外周面14iとを滑らかに繋いでいる。
【0068】
連結部14bの肉厚は、径方向に沿った各位置において略一定とされており、連結部14bの平均肉厚は、継手筒5の平均肉厚よりも小さくなるように設定されている。連結部14bの肉厚は、連結部14bの任意の位置における軸線方向の厚さ、すなわち前端面14mと後端面14nとの軸線方向における距離を示している。連結部14bの平均肉厚は、連結部14bの各位置における肉厚の平均値を示している。図14において、連結部14bの肉厚t3は、連結部14bの径方向における中央付近の肉厚を示している。
【0069】
継手筒5の平均肉厚に対する連結部14bの平均肉厚の割合は、例えば、30%以上且つ60%以下とされており、例えば、45%以上且つ50%以下(一例として48.3%)とされていてもよい。また、連結部14bの平均肉厚は、例えば、0.5mm以上且つ0.8mm以下(一例として0.7mm)とされている。
【0070】
以上のように構成される係合部14では、図2及び図5に示されるように、筒状部14aに保持部材8の後側筒部8cが前方から挿入され、後側筒部8cは、筒状部14aの底壁14cに軸線方向に対向する。そして、後側筒部8cに設けられた弾性突部8eは、内周面14hに設けられた複数の凹凸14kに回転方向に係合される。弾性突部8eが複数の凹凸14kと回転方向に係合することにより、保持部材8は継手筒5に対して軸線L周りに回転可能に係合する。弾性突部8eと複数の凹凸14kとの係合は、継手筒5に対する塗布具T1の回転力(トルク)が一定以上となったときに解除される。
【0071】
次に、前述した容器10の構成について具体的に説明する。図2に示されるように、容器10は、軸線方向に延びる円筒状とされている。容器10は、取付部材6を介して継手筒5の後側の開口5b(図13参照)に取り付けられる。容器10は、塗布材Aが充填された有底筒状の充填部11と、充填部11を包囲すると共に取付部材6に取り付けられるカバー12と、塗布部P、及び取付部材6の小径部6kを扱いて塗布部P及び小径部6kに余剰に付着した塗布材Aを掻き取る軟質材のワイパー13とを備える。
【0072】
図15は、充填部11を示す側面図である。充填部11は、例えば、PPによって構成されている。図15に示されるように、充填部11は、有底円筒状に形成される。充填部11の内面は、凹凸等がなく、滑らかな平滑面とされている。充填部11の内面は、滑らかに円筒穴状に湾曲する内側面11aと、内側面11aの後端に位置する平坦状の底面11bとによって構成される。
【0073】
充填部11の外面の前側は、凹凸等がなく、滑らかな平滑面とされている。充填部11は、その前側の一端11gにワイパー13が挿入される開口11hを有する。充填部11の外面の後側は、充填部11の後端において径方向外側に突出する拡径部11cと、拡径部11cの前方に位置すると共に前側にテーパ面11dを有する環状凸部11eと、テーパ面11dから前方に軸線方向に延びる複数の凸部11fとを備える。拡径部11cの後端は僅かに丸みを帯びている。凸部11fは、例えば、4つ設けられており、4つの凸部11fは周方向に等間隔に設けられる。凸部11fの突出形状は、例えば、円弧状である。
【0074】
図16(a)はワイパー13を示す側面図であり、図16(b)はワイパー13を後側から見た図であり、図17図16(a)のC−C線断面図である。ワイパー13は、ゴム材料によって構成されている。ワイパー13の硬さについては、例えば、JIS6253(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム 硬さの求め方)において規定されているタイプAデュロメータによる硬さが40以上且つ80以下(一例として60)とされている。
【0075】
図16(a)、図16(b)及び図17に示されるように、ワイパー13は、段付き円筒状とされている。ワイパー13は、後方に延びる筒状の延在部13aと、延在部13aの前端において径方向外側に突出する第1突出部13bと、第1突出部13bの前端から更に前方に突出する第2突出部13cと、延在部13a及び第1突出部13bから径方向内側に突出する扱き部13dとを備える。
【0076】
延在部13aは、第1突出部13bの後端から軸線方向に延びる第1側面13eと、第1側面13eの後端からワイパー13の径方向内側に傾斜する第1テーパ面13fと、第1テーパ面13fの後端から軸線方向に延びる第2側面13gと、第2側面13gの後端からワイパー13の径方向内側に傾斜する第2テーパ面13hとを有する。第2テーパ面13hの後端はワイパー13の後端に相当する。
【0077】
ワイパー13は塗布部P及び取付部材6が挿入される貫通孔13rを有し、貫通孔13rは軸線方向にワイパー13を貫通している。ワイパー13の延在部13aの内面は、滑らかに円筒穴状に湾曲する内周面13jと、内周面13jの前端から径方向内側に突出する扱き部13dとによって構成される。扱き部13dは、内周面13jの前端に位置する平面部13kと、平面部13kの径方向内側の端部から延びる第1延在部13mと、第1延在部13mの後端に位置する環状部13nと、環状部13nから前側に延びる内周面13pと、内周面13pの前端から第1突出部13bに向かって延びる湾曲部13qとを備える。
【0078】
平面部13kは、内周面13jの前端から径方向内側に延びている。第1延在部13mは、平面部13kの径方向内側の端部から後方且つ径方向内側に斜めに延びている。環状部13nは、第1延在部13mの後端において平坦状に形成される。内周面13pは、環状部13nの径方向内側の端部から前側に延びている。湾曲部13qは、内周面13pの前端から第1突出部13bに向かうと共に、扱き部13dが膨らむように前方且つ径方向外側に湾曲している。貫通孔13rに挿入される塗布部P及び取付部材6は湾曲部13q及び内周面13pに接触して後方に進入し、貫通孔13rから前方に抜かれる取付部材6と塗布部Pは主に内周面13pに当接しながら抜かれることによってワイパー13に扱かれる。
【0079】
第1突出部13bは、延在部13aの前端から径方向外側に延びる突出面13sと、突出面13sの径方向外側の端部から前側に延びる外周面13tと、外周面13tの前端から縮径するテーパ面13zとを有する。第2突出部13cは、前側に延びる突出面13uと、突出面13uの前端から径方向内側に延びる環状面13vと、環状面13vの径方向内側の端部から後方且つ径方向内側に斜めに延びる傾斜面13wとを有する。
【0080】
図18(a)はカバー12を示す部分断面図であり、図18(b)はカバー12を、軸線Lを含む平面で切断したときの縦断面図である。カバー12は、筒状とされており、例えば、ABS樹脂によって構成されている。カバー12は、例えば円筒状とされている。カバー12の外面は、凹凸等を有しない平滑面とされており、軸線方向に対して傾斜する傾斜面12aとされている。カバー12の傾斜面12aの外径は、継手筒5の傾斜面5nの外径よりも大きくなっている。具体的には、傾斜面12aの前端の外径が傾斜面5nの後端の外径と同程度とされており、傾斜面12aは、前端から後方に向かうに従って徐々に拡径している。すなわち、傾斜面12aは、前端から後方に向かうに従ってカバー12の径方向外側に傾斜している。傾斜面12aの後端(カバー12の後端)には、傾斜面12aから径方向内側に湾曲して延びると共に丸みを帯びた湾曲部12bが形成されている。
【0081】
カバー12の内面12qの後側には、カバー12の後端12mから前方に延びる環状凹部12nと、環状凹部12nの前側に位置する環状凸凹部12pとが設けられる。カバー12の内面12qの軸線方向中央付近は、凹凸等を有しない平滑面12cとされている。軸線方向に対する内面12qの傾斜角度は、軸線方向に対する傾斜面12aの傾斜角度よりも小さい。よって、カバー12の傾斜面12a及び内面12qが形成された部分は、後方に向かうに従って徐々に厚くなっている。
【0082】
カバー12の内面12qの前側には、平滑面12cから径方向内側に突出する壁部12dと、壁部12dよりも前方に設けられて螺合部30の他方を構成する雌螺子12eとが設けられる。雌螺子12eは、カバー12の内面12qから径方向内側に突出する螺旋状の突起12fによって構成されている。カバー12は、突起12fが螺合部30の一方を構成する雄螺子6hに螺合することによって取付部材6に装着される。
【0083】
図19は、カバー12の壁部12dを拡大した図である。図18(a)、図18(b)及び図19に示されるように、壁部12dは、例えば、複数設けられており、複数の壁部12dは、カバー12の周方向に沿って並設される。換言すれば、壁部12dは、カバー12の周方向に沿って間欠的に形成されている。壁部12dは、雌螺子12eが設けられる部分から後方に向かうに従って径方向内側に突出する頂面12gと、頂面12gの後端から径方向外側且つ前側に折り返される湾曲部12hと、湾曲部12hから径方向外側且つ前側に斜めに延びる傾斜面12jと、傾斜面12jの径方向外側の端部から更に径方向外側に延びる平坦部12kとを有する。
【0084】
例えば、複数の壁部12dは周方向に等間隔に配置されており、壁部12dの個数は12である。また、壁部12dの頂面12gは、軸線Lに沿って延びており、例えば、軸線Lに対して平行に延びている。但し、頂面12gは、軸線Lに対して平行に延びていなくてもよく、例えば、後方に向かうに従って軸線から離れる方向に傾斜していてもよい。
【0085】
図20(a)は、充填部11、カバー12及びワイパー13を備える容器10を、軸線Lを含む平面で切断したときの縦断面図である。図20(b)は、図20(a)の壁部12d、第1突出部13b、及び充填部11の一端11gを拡大した断面図である。ワイパー13は、その延在部13aが前側から充填部11の開口11hに挿入されて第1側面13eの全体が充填部11の内側面11aに密着すると共に第1突出部13bの突出面13sが一端11gに当接する。
【0086】
上記のようにワイパー13が装着された充填部11は、後側からカバー12に挿入される。カバー12に挿入されたワイパー13及び充填部11は、ワイパー13の第2突出部13cがカバー12の壁部12dに軸線方向に当接した状態でカバー12に軸線方向に係合する。具体的には、充填部11及びワイパー13は、環状凸部11eがカバー12の環状凸凹部12pの凹の部分に嵌り込むことによってカバー12に軸線方向に係合する。なお、カバー12に軸線方向に係合した充填部11の後端11jの前後方向位置は、カバー12の後端12mの前後方向位置と略一致する(又は、後端12mよりも若干前側である)。
【0087】
そして、充填部11に装着されたワイパー13は、第2突出部13cの環状面13v及び傾斜面13wが壁部12dの湾曲部12h及び傾斜面12jに入り込むことにより、カバー12に軸線方向に押圧されると共に壁部12dに密着する。ワイパー13の第1突出部13bを除く部分である延在部13aの外面は充填部11の内側面11aに気密状態となるように密着する。このように充填部11に装着されたワイパー13がカバー12に軸線方向に押圧されることにより、ワイパー13の第1突出部13bは複数の壁部12dのそれぞれと充填部11の開口11h側の一端11gとの間に軸線方向に挟み込まれる。第1突出部13bは、カバー12の内面12qに気密状態となるように密着する。
【0088】
次に、図2及び図5を参照しながら塗布容器1の棒状塗布材Mを繰り出す手順について説明する。塗布容器1は、図2に示される初期状態において、キャップCが取り外されて先筒3が露出した後、先筒3と継手筒5が棒状塗布材Mの繰り出し方向である一方向(例えば時計回り)に相対回転される。先筒3と継手筒5が一方向に相対回転されると、先筒3に対して同期回転する移動体7と、継手筒5に対して同期回転する保持部材8とが一方向に相対回転される。
【0089】
この相対回転により、先筒3と中筒4とが相対回転することから、先筒3と中筒4の間において付与される回転抵抗に応じた回転トルクで相対回転が行われる。また、移動体7の雄螺子7jと保持部材8の螺旋状の突起8dとによって構成された螺合部20の螺合作用が働く。また、移動体7の溝部7cと先筒3の内面の突条3kとが先筒3に対する移動体7の回り止めとして機能すると共に、保持部材8は継手筒5に対して後退が規制されていることから、上記の相対回転によって移動体7は先筒3に対して前側に摺動する。このように、先筒3に対して移動体7と共に塗布材保持部9が前進すると、棒状塗布材Mが先筒3の先端の開口3bから出現して棒状塗布材Mを使用可能な状態とされる。
【0090】
続いて、本実施形態に係る塗布容器1から得られる作用効果について詳細に説明する。塗布具T1は、継手筒5の内部に設けられる保持部材8を含んでおり、保持部材8の後側筒部8cに継手筒5内の係合部14が係合することによって塗布具T1が継手筒5に装着される。係合部14は、後側筒部8cが挿入されて後側筒部8cに係合する内周面14hを含む筒状部14aと、継手筒5及び筒状部14aを互いに連結する連結部14bとを備えており、筒状部14aの外周面14iは、継手筒5の内面5iから離間している。後側筒部8cに係合する筒状部14aの外周面14iが内面5iから離間していることによって、筒状部14aと対向する部分における継手筒5の肉厚t1(図14参照)を、継手筒5の他の部分の肉厚と同等にすることができる。
【0091】
すなわち、継手筒5の肉厚の均一化を図ることができる。これにより、継手筒5の表面におけるヒケの発生を抑制でき、継手筒5の寸法安定性を向上させると共に外観の品質を向上させることができる。更に、外周面14iが内面5iから離間していることによって、筒状部14aの肉厚を薄くできると共に当該肉厚の均一化を図ることが可能となる。これにより、筒状部14aにおけるヒケの発生を抑制でき、筒状部14aの寸法安定性の向上を図ることもできる。具体的には、筒状部14aの肉厚を薄くすることによって筒状部14aの硬化を早めることができるので、筒状部14aにおけるヒケの発生を抑制できる。後側筒部8cに係合する筒状部14aの寸法が安定することによって、筒状部14aと後側筒部8cとの係合を安定させることが可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る塗布容器1では、塗布具T1は、継手筒5の前側に設けられる棒状塗布材Mと、棒状塗布材Mを前方に繰り出す繰り出し機構15とを備えている。棒状塗布材Mを前方に繰り出す塗布容器1において、ヒケの発生を抑制することができる。これにより、繰り出し機構15による棒状塗布材Mの繰り出しを確実に且つ安定して行うことができる。
【0093】
また、本実施形態に係る塗布容器1は、継手筒5に対して後方に設けられる塗布具T2を備えている。複数種類の塗布具T1,T2を具備する塗布容器1において、ヒケの発生を抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る塗布容器1は、継手筒5の後側の開口5bに取り付けられる容器10を備え、容器10は、塗布具T2が塗布する塗布材Aを収容し、継手筒5の傾斜面5nは、前方から後方に向かうにつれて拡径しており、カバー12の傾斜面12aの外径は、継手筒5の傾斜面5nの外径よりも大きい。これにより、外径が大きいカバー12を有する容器10に多くの塗布材Aを収容できる。更に、上記のように継手筒5の傾斜面5nが後側、すなわち容器10側に拡径することによって、継手筒5よりも外径が大きいカバー12を有する容器10が継手筒5に取り付けられた場合でも、継手筒5の肉厚の均一化を図ることができる。
【0095】
また、本実施形態に係る塗布容器1では、連結部14bは、継手筒5の径方向に沿って延びている。これにより、肉厚が一定とされた継手筒5と筒状部14aとを一体成形によって容易に製造することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る塗布容器1では、連結部14bの平均肉厚は、継手筒5の平均肉厚の60%以下である。これにより、連結部14bの肉厚(すなわち連結部14bの軸線方向の厚さ)を細くすることができ、継手筒5の肉厚が厚くなる部分を低減できるので、ヒケの発生をより確実に抑制できる。
【0097】
また、本実施形態に係る塗布容器1では、筒状部14aの内周面14hには、筒状部14aの周方向に沿って並ぶと共に軸線方向に沿って延びる複数の凹凸14kが設けられており、複数の凹凸14kは、後側筒部8cに対して回転可能に係合している。これにより、後側筒部8cと筒状部14aとの係合を簡易な構成で実現できる。
【0098】
また、本実施形態に係る塗布容器1では、後側筒部8cは、径方向に弾性を有する弾性突部8eを含み、複数の凹凸14kは、弾性突部8eに対して回転方向に係合し、弾性突部8eと複数の凹凸14kとの係合は、継手筒5に対する塗布具T1の回転力が一定以上となったときに解除される。この構成によれば、棒状塗布材Mの繰り出しを行い棒状塗布材Mを前進限まで前進させ、塗布具T1と継手筒5とを相対回転させる回転力が一定以上となったときに、弾性突部8eと複数の凹凸14kとの係合が解除されるので、塗布具T1又は継手筒5(具体的には係合部14)が損傷することをより確実に抑制できる。
【0099】
(第1変形例)
次に、第1変形例に係る塗布容器について、図21(a)、図21(b)、図22(a)及び図22(b)を参照しながら説明する。第1変形例では、カバー22の構成が上記実施形態のカバー12とは異なっている。以下では、説明の重複を回避するため、上記実施形態と重複する内容の説明を適宜省略する。
【0100】
カバー22の内面12qの前側には、径方向内側に突出する壁部22dが設けられる。壁部22dは、例えば、1つ設けられており、カバー22の周方向に沿って全周に形成されている。なお、本明細書において、「周方向に沿って全周に形成されている壁部」は、周方向の全体に延びている壁部、及び周方向の全体に延びているものの周方向の一部に間欠部を有する壁部の両方を含む。すなわち、「周方向に沿って全周に形成されている壁部」は、カバーの内面における周方向の一部に突出しない部位を有する壁部を含んでいる。
【0101】
壁部22dは、後方に向かうに従ってカバー22の外面22aから離間する方向(外面22aに対して径方向内側、及びカバー22が厚くなる方向)に延びる内側面22gと、内側面22gの後端から径方向外側且つ前側に折り返される湾曲部22hと、湾曲部22hから径方向外側且つ前側に斜めに延びる傾斜面22jと、傾斜面22jの径方向外側の端部から更に径方向外側に延びる平坦部22kとを有する。内側面22gは、軸線Lに沿って延びており、例えば、軸線Lに対して平行に延びている。但し、内側面22gは、軸線Lに対して平行に延びていなくてもよく、例えば、後方に向かうに従って軸線Lから離れる方向に傾斜していてもよい。充填部11に装着されたワイパー13は、前述した実施形態と同様に、カバー22に軸線方向(前側)に押圧され、ワイパー13の第1突出部13bは壁部22dと充填部11の一端11gとの間に軸線方向に挟み込まれる。
【0102】
以上、第1変形例に係る塗布容器では、第1突出部13bは、カバー22の内面12qの壁部22dと、充填部11の開口11h側の一端11gとの間に軸線方向に挟まれた状態で固定される。従って、ワイパー13の第1突出部13bに軸線方向への力をかかりにくくすることができるので、カバー22の内面12q及び充填部11に対するワイパー13の位置ずれを抑制することができる。その結果、ワイパー13の脱落を抑制することができる。
【0103】
更に、第1変形例では、カバー22の内面12qにおいて壁部22dがカバー22の周方向の全体に延びているので、ワイパー13(第2突出部13c)に対する壁部22dの接触面積を多く確保することができる。従って、ワイパー13の脱落を更に確実に抑制することができると共に、ワイパー13による気密性を一層高めることができる。
【0104】
(第2変形例)
続いて、第2変形例に係る塗布容器について、図23(a)、図23(b)、図24(a)及び図24(b)を参照しながら説明する。第2変形例では、カバー32及びワイパー33の構成が第1変形例と異なっている。以下では、上記実施形態及び第1変形例と重複する内容の説明を適宜省略する。
【0105】
カバー32は、カバー22と同様、壁部32dを備えており、壁部32dは、カバー32の周方向に沿って全周に形成されている。壁部32dは、後方に向かうに従ってカバー32の外面32aから離間する方向に延びる内側面32gと、内側面32gの後端から径方向外側に曲がる湾曲部32hと、湾曲部32hから径方向外側に延びる平坦面32kとを有する。軸線方向に対する平坦面32kの角度は、例えば、90°である。内側面32gは、内側面22gと同様、軸線Lに沿って延びており、例えば、軸線Lに対して平行に延びていてもよいし、後方に向かうに従って軸線Lから離れる方向に傾斜していてもよい。
【0106】
ワイパー33は、第2突出部13cに相当する部位を有しない点がワイパー13と異なっている。ワイパー33は、延在部13aの前端において径方向外側に突出する第1突出部33bを有する。第1突出部33bは、延在部13aの前端から径方向外側に延びる突出面33sと、突出面33sの径方向外側の端部から前側に延びる外周面33eと、外周面33eの前端から径方向内側に延びる環状面33vとを有する。外周面33eに対する環状面33vの角度は、例えば、軸線方向に対する平坦面32kの角度と同一であり、90°である。
【0107】
ワイパー33は、前述した実施形態と同様、充填部11に装着され、充填部11に装着されたワイパー33は、カバー32に軸線方向に押圧される。ワイパー33の第1突出部33bは壁部32dと充填部11の一端11gとの間に軸線方向に挟み込まれる。具体的には、第1突出部33bの外周面33eがカバー32の内面12qに密着すると共に、突出面33sに一端11gが当接し、且つ環状面33vに壁部32dの平坦面32kが当接する。
【0108】
以上、第2変形例に係る塗布容器では、第1突出部33bは、カバー32の壁部32dと、充填部11の一端11gとの間に軸線方向に挟まれた状態で固定されるので、第1突出部33bに軸線方向への力をかかりにくくすることができる。従って、カバー32及び充填部11に対するワイパー33の位置ずれを抑制することができる。
【0109】
以上、本発明に係る塗布容器の実施形態及び各変形例について説明したが、本発明は、前述した実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形してもよい。すなわち、塗布容器の各部品の構成は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、上記の要旨の範囲内であれば、継手筒及び係合部の形状を変更することも可能である。また、継手筒及び係合部の大きさ、材料及び配置態様を適宜変更することも可能である。例えば、継手筒、及び係合部の筒状部のそれぞれは、円筒状に限らず、多角筒状とされてもよい。筒状部の中心軸は、継手筒の中心軸である軸線Lからずれて配置されていてもよい。係合部の連結部は、径方向に沿って延びていなくてもよく、径方向から傾斜した方向に沿って延びていてもよい。
【0110】
また、前述の実施形態では、係合部に係合される被係合部が保持部材8の後側筒部8cである例について説明した。しかしながら、被係合部は後側筒部8cでなくてもよい。つまり、被係合部の形状、大きさ、材料及び配置態様は、後側筒部8cとは異なっていてもよい。例えば、被係合部の形状は、筒状とされなくてもよく、他の形状とされてもよい。また、前述の実施形態では、被係合部の突出部が弾性突部8eである例について説明した。しかしながら、突出部は弾性突部8eでなくてもよい。つまり、突出部の形状、大きさ、材料及び配置態様は、弾性突部8eとは異なっていてもよい。また、前述の実施形態では、後側筒部8cが係合部14の筒状部14aに回転方向に係合される例について説明した。しかしながら、被係合部と係合部とが係合する態様は、上記の例に限られない。例えば、被係合部は、係合部に軸線方向に係合されてもよい。この場合、被係合部及び係合部には、例えば、被係合部を係合部に軸線方向に取り付けるためのラッチ機構又は螺合機構が設けられてもよい。
【0111】
また、前述の実施形態では、図5に示されるように、傾斜部M1、一対の平坦面M2、及び軸線方向に延びる側面M3を備えた棒状塗布材Mについて説明した。しかしながら、塗布材の形状、大きさ、材料及び配置態様は適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、塗布具T1,T2と、継手筒5と、係合部14と、容器10とを備える塗布容器1について説明した。しかしながら、塗布具T1,T2の形状、大きさ、材料及び配置態様は、適宜変更可能である。また、塗布容器を構成する部品の構成は、適宜変更可能である。例えば、塗布容器は、塗布具T2及び容器10を備えていなくてもよい。この場合、塗布容器は、例えば、継手筒5の後側の開口5bを塞ぐ尾栓を備えてもよい。
【0112】
また、前述の実施形態では、先筒3と継手筒5との相対回転によって棒状塗布材Mを前進させる回転式の繰り出し機構15を備える塗布容器1について説明した。しかしながら、塗布容器の繰り出し機構は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。例えば、繰り出し機構は、ノック式等の機械的な押出機構、又は、スクイーズ式の押出機構であってもよい。更に、塗布容器は、繰り出し機構を備えていなくてもよく、例えば、ブラシ、筆又はスポンジ等の塗布具と、キャップとを備えていてもよい。また、塗布具T1,T2の種類は、前述の実施形態の例に限られない。塗布具は、例えば、アイライナー、アイブロウ、コンシーラー又はリップライナー等、種々の化粧料を備えるものであってもよい。また、塗布具は、筆記具、デザイン用ペンシル、又は描画材等を備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…塗布容器、2…本体、5…継手筒、5a,5b…開口、5e,5i…内面、8…保持部材、8c…後側筒部、8e…弾性突部、10…容器、14…係合部、14a…筒状部、14b…連結部、14h…内周面、14i…外周面、14k…凹凸、15…繰り出し機構、A…塗布材、L…軸線、M…棒状塗布材、T1,T2…塗布具、t1,t2,t3…肉厚。
【要約】
【課題】ヒケの発生を抑制することができる塗布容器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る塗布容器は、軸線方向の両端のそれぞれに開口5a,5bが形成された継手筒5と、継手筒5に対して軸線方向の前側に設けられる塗布具と、継手筒5の内部において継手筒5と一体にされており、当該塗布具に係合する係合部14と、を備えた塗布容器であって、当該塗布具は、継手筒5の開口5aに設けられ、係合部14に係合される後側筒部を含んでおり、係合部14は、後側筒部が軸線方向に挿入されて後側筒部に係合する内周面14hを含む筒状部14aと、継手筒5及び筒状部14aを互いに連結する連結部14bと、を有し、筒状部14aの外周面14iは、継手筒5の内面5iから離間している。
【選択図】図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24