特許第6627231号(P6627231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000002
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000003
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000004
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000005
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000006
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000007
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000008
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000009
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000010
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000011
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000012
  • 特許6627231-粒子状物質捕集装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6627231
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】粒子状物質捕集装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20191223BHJP
【FI】
   G01N1/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-45556(P2015-45556)
(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-166745(P2016-166745A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲真▼壁 勝久
【審査官】 多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/049716(WO,A1)
【文献】 特開昭57−063465(JP,A)
【文献】 特開平08−010506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
B65H19/00−19/30
21/00−21/02
B65B11/00−11/58
49/00−49/16
A41F 1/00−19/00
F16B 5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設する円筒状の外周面を有する支持部と、
前記外周面に巻き付けられる捕集体と、
前記外周面に巻き付けられた前記捕集体に対して近接と離隔とを切り替え可能に設けられて前記捕集体に対する近接時に前記捕集体を保持する保持部と、
前記支持部の上端及び下端の少なくとも一方に設けられて前記保持部の回動軸を回動可能に支持する回動支持部と、
前記回動軸を前記保持部と共有して前記保持部の回動角度に応じて回動角度が決定されるホイールと
を備え、
前記ホイールには、前記回動支持部側に突出する突出部が設けられ、
前記回動支持部には、前記突出部と嵌合可能な2つの窪みが設けられ、
前記2つの窪みの一方と前記突出部とが嵌合する前記保持部の回動角度は、前記保持部が前記捕集体に近接した回動角度であり、
前記2つの窪みの他方と前記突出部とが嵌合する前記保持部の回動角度は、前記保持部が前記捕集体から離隔した回動角度である粒子状物質捕集装置。
【請求項2】
2つの前記保持部を備え、
2つの前記保持部の一方は、前記支持部の上端に設けられた前記回動支持部により回動可能に設けられ、
2つの前記保持部の他方は、前記支持部の下端に設けられた前記回動支持部により回動可能に設けられ、
前記一方と前記他方とは、前記上端と前記下端とを挟んで対向し、
前記一方と前記他方との間には、前記保持部と前記捕集体とが接触しない非接触部が設けられている
請求項1に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記捕集体に近接する側の反対側に取っ手が設けられている
請求項1又は2に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記捕集体に突入する突起を前記捕集体に近接する側に有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項5】
前記突起は、針状の突起であり、
前記保持部は、前記支持部の立設方向に直交する方向であって、かつ、前記外周面に沿う方向である所定方向の幅が前記突起の前記所定方向の幅に対応する
請求項4に記載の粒子状物質捕集装置。
【請求項6】
屋根と、側方に設けられた通気用の開口部とを有する箱体を有し、
前記支持部は、前記箱体内で立設する
請求項1から5のいずれか一項に記載の粒子状物質捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に含まれる海塩粒子等の大気浮遊塩分は、金属や合金等(以下、金属等)を含む構造体に付着すると金属等の腐食を引き起こす。このため、大気環境により生じる腐食性を評価するために、構造体に対する大気浮遊塩分の付着度を測定することが行われている。大気浮遊塩分の付着度の測定方法として、通気性を有する円筒状の支持体(ガーゼホルダー)に巻き付けられたガーゼを所定期間大気中に曝露させて大気浮遊塩分を捕集する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/049716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、所定期間を超える継続調査において、ガーゼを支持体から取り外し、新たなガーゼを支持体に巻き付けるという交換作業を行う必要があった。また、ガーゼを支持体に固定するためには、糸等によりガーゼを支持体に縛り付ける必要があるため、ガーゼの取り外し時に係る糸等を切断する必要があった。このように、特許文献1に記載の方法では、測定の繰り返しに係る作業が煩雑であった。
【0005】
そこで、本発明では、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便な粒子状物質捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の粒子状物質捕集装置は、立設する円筒状の外周面を有する支持部と、前記外周面に巻き付けられる捕集体と、前記外周面に巻き付けられた前記捕集体に対して近接と離隔とを切り替え可能に設けられて前記捕集体に対する近接時に前記捕集体を保持する保持部とを備える。
【0007】
本発明の望ましい態様として、前記保持部は、前記外周面に対して回動可能に設けられている。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記保持部は、前記支持部の上端及び下端の少なくとも一方に設けられた回動支持部により回動可能に設けられている。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記保持部は、前記捕集体に突入する突起を前記捕集体に近接する側に有する。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記突起は、針状の突起であり、前記保持部は、前記支持部の立設方向に直交する方向であって、かつ、前記外周面に沿う方向である所定方向の幅が前記突起の前記所定方向の幅に対応する。
【0011】
本発明の望ましい態様として、屋根と、側方に設けられた通気用の開口部とを有する箱体を有し、前記支持部は、前記箱体内で立設する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置の構造の一例を示す図である。
図3図3は、支持部の構造の一例を示す斜視図である。
図4図4は、捕集体が巻き付けられた支持部の一例を示す斜視図である。
図5図5は、図2に示す保持部が外周面に巻き付けられた捕集体から離隔した回動角度である場合の一例を示す図である。
図6図6は、保持部が図5に示す回動角度であって、かつ、支持部に捕集体が巻き付けられていない場合の一例を示す図である。
図7図7は、保持部、突起及び捕集体の位置関係の一例を示す図である。
図8図8は、保持部、突起及び捕集体の位置関係の一例を示す図である。
図9図9は、保持部40の先端側の拡大図である。
図10図10は、保持部が外周面に巻き付けられた捕集体から離隔した回動角度である場合の保持部及び回動支持部の正面図である。
図11図11は、箱体が取り付けられた柱状の建造物の一例を示す図である。
図12図12は、箱体内部の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態と記載する)を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1の一例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1の構造の一例を示す図である。本実施形態に係る粒子状物質捕集装置1は、支持部10と、捕集体15と、保持部40a,40bと、貯留部30と、箱体50とを備える。
【0015】
図3は、支持部10の構造の一例を示す斜視図である。図4は、捕集体15が巻き付けられた支持部10の一例を示す斜視図である。図3及び図4では、保持部40a,40b及び後述する回動支持部45の図示を省略している。支持部10は、立設する円筒状の外周面を有する。具体的には、支持部10は、円筒状の外周面が格子状になっており、通気性を有する。より具体的には、支持部10は、例えば円筒状の外形を有する合成樹脂製の構造体であり、樹脂製の格子が円筒の外周面を形成するよう設けられている。支持部10の外周面は、例えば円筒の両端等に存する円状のプレートによって支持されている。プレートは外周面を支持するための構造体の一例であって、当該構造体はプレートに限られるものでない。当該構造体は、例えば、輻(所謂スポーク)状であってもよい。
【0016】
捕集体15は、支持部10の外周面に巻き付けられる。具体的には、捕集体15は、例えばガーゼである。捕集体15は、支持部10の円筒状の外周部に巻きつけられて、さらに、図2に示すように、外側から保持部40a,40bによって保持される。支持部10に巻き付けられた捕集体15は、大気中に曝露された状態である場合に、大気に含まれる粒子状物質(例えば、海塩粒子等の大気浮遊塩分)を付着させて捕集する。
【0017】
図5は、図2に示す保持部40a,40bが外周面に巻き付けられた捕集体15から離隔した回動角度である場合の一例を示す図である。保持部40a,40bは、外周面に巻き付けられた捕集体15に対して近接と離隔とを切り替え可能に設けられて捕集体15に対する近接時に捕集体15を保持する。具体的には、保持部40a,40bは、外周面に対して回動可能に設けられている。より具体的には、保持部40aは、例えば、図5に示すように、支持部10の上端に設けられた回動支持部45aにより回動可能に設けられている。また、保持部40bは、例えば、図5に示すように、支持部10の下端に設けられた回動支持部45bにより回動可能に設けられている。回動支持部45a,45bは、支持部10の上端及び下端に設けられて、支持部10の外周面に対して支持部10の径方向に突出した位置で保持部40a,40bを回動可能に支持している。保持部40a,40bは、回動支持部45a,45bにより支持された回動軸44を中心として回動することで、支持部10の外周面又は支持部10の外周面に巻き付けられた捕集体15に対して近接と離隔とを切り替えるように動作する。保持部40a,40bは、支持部10の外周面に巻き付けられた捕集体15に対して近接した場合、図2に示すように、支持部10の外周面との間に捕集体15を挟み込む位置となる。
【0018】
図6は、保持部40a,40bが図5に示す回動角度であって、かつ、支持部10に捕集体15が巻き付けられていない場合の一例を示す図である。保持部40a,40bが図5に示すような回動角度である場合、支持部10の外周面が開放状態であることから、支持部10に対して捕集体15を着脱することができる。すなわち、支持部10に対して捕集体15を巻き付ける場合及び支持部10に巻き付けられた捕集体15を取り外す場合、保持部40a,40bは、図6に示すように、支持部10の外周面を開放状態とするように外周面から離隔した回動角度とされる。図5に示すように支持部10に対して捕集体15を巻き付けた後、保持部40a,40bを捕集体15に近接させるように回動させることで、図2に示すように保持部40a,40bにより捕集体15を保持することができる。以下、支持部10の上端に設けられた回動支持部45aにより回動可能に設けられた保持部40aと支持部10の下端に設けられた回動支持部45bにより回動可能に設けられた保持部40bとを区別する必要が無い場合、保持部40と記載することがある。また、回動支持部45aと回動支持部45bとを区別する必要が無い場合、回動支持部45と記載することがある。
【0019】
図7及び図8は、保持部40、突起42及び捕集体15の位置関係の一例を示す図である。図7では、針の位置を図示することを優先するために取っ手49の図示を省略している。保持部40は、捕集体15に突入する突起42を捕集体15に近接する側に有する。保持部40が有する突起42は、例えば、針状の突起42である。具体的には、例えば図7及び図8に示すように、突起42は、例えば径が2ミリメートル以下の金属又はそれに類する単体若しくは化合物製の針であり、捕集体15として機能するガーゼの網目を縫うように捕集体15を貫通することができる。保持部40における突起42の配置は、保持部40が支持部10の外周面に対して近接する回動角度となった場合に突起42が支持部10の外周面の格子状の隙間を通ることができる位置に設けられている。保持部40が捕集体15に対して近接している場合、突起42は、図7に示すように捕集体15を貫通して支持部10の外周面の格子の隙間を通って支持部10の内側に入り込む位置となる。突起42の径及び数は適宜変更可能である。図5等で図示している突起42の数は五つであるが、これに限られるものでなく、四つ以下であってもよいし、六つ以上であってもよい。また、突起42は、円錐状の針に限らず、例えば多角錐状であってもよい。
【0020】
図9は、保持部40の先端側の拡大図である。保持部40は、例えば、支持部10の立設方向に直交する方向であって、かつ、外周面に沿う方向である所定方向の幅Dが突起42の所定方向の幅に対応する。具体的には、保持部40の幅Dは、所定の径(例えば、2ミリメートル以下)の突起42を支持するのに十分な幅であって、かつ、捕集体15を保持するのに十分な強度を有することができる最低限の幅(例えば、3ミリメートル)となっている。本実施形態の保持部40及び回動支持部45は、例えば合成樹脂製であるが、保持部40及び回動支持部45の素材は適宜変更可能である。保持部40の幅D及び突起42の幅はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、保持部40の素材等を考慮して適宜決定されてもよい。保持部40の幅Dをより細くすることで、保持部40により捕集体15の外周面が覆われる面積をより小さくすることができることから、大気に曝露される捕集体15の外周面の面積を確保しやすくなる。
【0021】
図10は、保持部40が外周面に巻き付けられた捕集体15から離隔した回動角度である場合の保持部40及び回動支持部45の正面図である。保持部40の回動角度の保持は、例えば、回動支持部45に設けられた窪み48a,48b(凹部)と保持部40の回動角度と連動して位置を変ずる突出部47(凸部)との嵌合による。具体的には、例えば、図10に示すように、保持部40と回動軸44を共有して回動するホイール46の内側には、突出部47が設けられている。また、回動支持部45には、突出部47と嵌合可能な2つの窪み48a,48bが設けられている。窪み48aの位置は、保持部40が捕集体15に近接した回動角度である場合の突出部47の位置に対応する。窪み48bの位置は、保持部40が捕集体15から離隔した回動角度である場合の突出部47の位置に対応する。図5図7等で示すように、突出部47と窪み48a,48bとが嵌合することで、保持部40は捕集体15に対する回動角度を維持される。
【0022】
また、本実施形態では、保持部40に取っ手49が設けられている。取っ手49は、突起42の反対側に設けられている。捕集体15を取り外す作業者は、取っ手49を掴んで保持部40を回動させることができることから、より簡便に捕集体15の取り外しを行うことができる。
【0023】
回動支持部45は、支持部10に対してねじVによってねじ留めされて固定されているが、これは回動支持部45の固定方法の一例であってこれに限られるものでない。例えば接着等によって回動支持部45を支持部10に固定するようにしてもよい。
【0024】
貯留部30は、支持部10の下方に設けられて捕集体15から落ちた液体及び固体を貯留する。具体的には、貯留部30は、例えば上方が開放された容器状の部材であり、上方から落下してきた液体及び固体を貯留可能な構造を有している。より具体的には、貯留部30は、例えば、径が支持部10に巻き付けらえた捕集体15により形成される円筒の径よりも大きい円筒状の側壁31と、側壁31が形成する円筒の一端(下端)を閉塞する底部32とを有する。貯留部30は、上方から落下してきた液体、固体又はその両方を底部32で受け止めると共に、側壁31により外部への漏出を防止する。
【0025】
貯留部30は、側壁31が大気中に曝露されている捕集体15の側方を遮蔽しない位置に設けられることが望ましい。また、貯留部30の形状は任意である。例えば、貯留部30は球体状の外周面を形成するカプセルを二つに割ったような形状であってもよい。なお、貯留部30は上方から落下してきた液体及び固体を貯留可能な形状であるものとする。具体的には、貯留部30は、上方が開放状態であり、内側が器状又は下方に向かって窪む形状であるものとする。
【0026】
箱体50は、捕集体15が巻き付けられた支持部10を内側に収納する。具体的には、箱体50は、例えば、屋根部51と、底部52と、四つの側面部53とを有する直方体状の形状を有する。箱体50は、内部が空洞であり、捕集体15が巻き付けられた支持部10を内部に収納可能に設けられている。
【0027】
箱体50は、側方に通気用の開口部が設けられている。具体的には、箱体50は、例えば、側方にルーバーを有する。より具体的には、箱体50の四つの側面部53はそれぞれ、複数の羽板53aが上下方向に間隔をあけて互いに平行になるように設けられている。羽板53a同士の間の隙間が開口部として機能することで、箱体50は、その内部に箱体50外の大気(風)を通過させることができるように設けられている。
【0028】
羽板53aは、箱体50の内側から外側に向かって下方に傾斜するよう設けられている。これにより、雨等の降下物が開口部から箱体50の内側に入り込むことを抑制することができる。また、屋根部51は、箱体50の側面部53よりも外側に張り出すように設けられている。これにより、雨等の降下物が支持部10に巻き付けられた捕集体15に降り注ぐことをより確実に抑制することができる。箱体50は、所謂百葉箱である。
【0029】
図11は、箱体50が取り付けられた柱状の建造物60の一例を示す図である。箱体50は、外側から内側に捕集体15が巻き付けられた支持部10を導入することができるとともに、内側で保持されていた支持部10を巻き付けられた捕集体15ごと取り出すことができるよう設けられていることが望ましい。本実施形態では、箱体50の四つの側面部53のうち一つが鎧戸となっていて開閉可能に設けられている。鎧戸は、太陽の日周運動において地平線より上側で子午線を通る方角(例えば北半球の場合、南側)の逆側(例えば北半球の場合、北側)に設けられることが望ましい。また、図11に示す例において、鎧戸を柱状の建造物60(例えば、電柱等)側にすることで、柱状の建造物60を登って捕集体15が巻き付けられた支持部10の設置及び回収を行う作業者がより作業をしやすくなる。
【0030】
図12は、箱体50内部の構成の一例を示す斜視図である。図12では、貯留部30の図示を省略している。支持部10は、箱体50内で立設する。具体的には、本実施形態の箱体50の内部には、捕集体15が巻き付けられた支持部10を立設した状態で保持し、支持部10に巻き付けられた捕集体15を箱体50の内部で大気中に曝露させる状態とするための保持構造が設けられている。より具体的には、保持構造は、例えば、棒状の部材であるシャフト21と、シャフト21の両端を係止する二つの係止部22,23とを有する。シャフト21は、支持部10の円筒形状の中心軸とほぼ重なる状態で支持部10のプレートを貫通するよう設けられる。本実施形態の支持部10は、シャフト21に固定されているが、シャフト21を支持部10から挿抜可能としてもよい。貯留部30は、例えばシャフト21に固定されることで、支持部10の下方で固定される。二つの係止部22,23は、例えばシャフト21が鉛直に設けられるよう、シャフト21の長さに応じた間隔を有する位置関係で上下方向に設けられる。支持部10が固定されているシャフト21を二つの係止部22,23が箱体50の内部で係止することで、支持部10は、円筒の中心軸が鉛直になるよう設けられる。二つの係止部22,23は、例えば下方の一方がシャフト21を挿入可能な穴を有する係止部22(図2参照)であり、他方が板状部材23aと、回動部材23bとを有し、板状部材23aに形成された切欠部23cに進入したシャフト21を回動部材23bにより保持する機構を有する係止部23である。切欠部23cは、例えば水平に設けられた板状部材23aの側方から内側に向かうよう設けられ、シャフト21の径に応じた幅を有する。切欠部23cが設けられた板状部材23aは、シャフト21を側方から進入又は取り外し可能になっている。回動部材23bは、板状部材23aの一面側で支点23dを中心に回動可能に支持され、切欠部23cの入り口側の開放と閉鎖とを切り替えるように回動する。係る二つの係止部22,23の具体的な形態はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0031】
本実施形態では、二つの係止部22,23のうちシャフト21の上方を係止する一方は、箱体50内の屋根部51側に固定されている。また、二つの係止部22,23のうちシャフト21の下方を係止する他方は、箱体50内の底部52側に固定されている。
【0032】
以上、本実施形態によれば、立設する円筒状の外周面を有する支持部10と、外周面に巻き付けられる捕集体15と、外周面に巻き付けられた捕集体15に対して近接と離隔とを切り替え可能に設けられて捕集体15に対する近接時に捕集体15を保持する保持部40とを備える。このため、支持部10に巻き付けられた捕集体15に保持部40を近接させることで支持部10に巻き付けられた捕集体15を保持するとともに、支持部10に巻き付けられた捕集体15から保持部40を離隔させることで捕集体15を支持部10から容易に取り外すことができる。よって、より簡便に捕集体15の設置及び交換を行うことができる。このように、本実施形態によれば、大気浮遊塩分を捕集する部材の交換に係る作業がより簡便になる。
【0033】
また、保持部40は、外周面に対して回動可能に設けられている。このため、捕集体15に対する保持部40の近接と離隔との切り替えを回動動作によって行うことができる。よって、捕集体15の設置及び交換に際した捕集体15に対する保持部40の近接と離隔との切り替えをより簡便に行うことができる。
【0034】
また、保持部40は、支持部10の上端及び下端に設けられた回動支持部45により回動可能に設けられている。このため、支持部10と保持部40とを一体的に取り扱うことができる。よって、支持部10に巻き付けられた捕集体15と保持部40との位置合わせがより容易であることから、より簡便に捕集体15の設置を行うことができる。
【0035】
また、保持部40は、捕集体15に突入する突起42を捕集体15に近接する側に有する。このため、突起42を捕集体15に穿つことで捕集体15をより確実に保持することができる。
【0036】
また、突起42は、針状の突起42であり、保持部40は、支持部10の立設方向に直交する方向であって、かつ、外周面に沿う方向である所定方向の幅が突起42の所定方向の幅に対応する。このため、大気に曝露される捕集体15の外周面の面積を確保しやすくなる。
【0037】
また、捕集体15が巻き付けられた支持部10は、箱体50内で保持される。このため、雨等の降下物が支持部10に巻き付けられた捕集体15に降り注ぐことを抑制することができる。
【0038】
また、支持部10に巻き付けられた捕集体15が円筒状の形状を有することで、円筒の中心軸に交差するより多くの方向から風等に乗って飛来する大気浮遊塩分をよりむらなく捕集することができる。
【0039】
また、支持部10の下方に設けられて支持部10に巻き付けられた捕集体15から落ちた液体及び固体を貯留する貯留部30を備える。このため、捕集体15に付着後、捕集体15から落下した液体及び固体を貯留することができる。よって、捕集体15の回収時に貯留部30に貯留された液体及び固体を回収することで、捕集体15により捕集された大気浮遊塩分の総量をより高い精度で把握することができるようになる。
【0040】
以上、実施形態について説明したが、これらの実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0041】
例えば、保持部40が設けられるのは、支持部10の上端及び下端の少なくとも一方であってもよい。保持部40が設けられるのが支持部10の上端及び下端の一方である場合、例えば、一方の回動支持部45から延出される保持部40の長さを支持部10の外周面の立設方向に沿った長さに対応させることで、外周面に巻き付けられた捕集体15をより確実に保持することができる。
【0042】
また、上記の実施形態では、シャフト21と二つの係止部22,23により支持部10を立設させているが、これは支持部10を立設させるための具体的な形態の一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、支持部10の円筒の両端から延出するよう設けられた繊維、紐又は布状の延出部を設け、延出部の両端を箱体50内の天井側(例えば、屋根部51の下面側等)及び底部52側(例えば、底部52の上面側等)に留めるようにしてもよい。
【0043】
また、支持部10又は支持部10と一体的に扱われる構成には、大気中に曝露される期間中における方角を示す指標が付されていてもよい。例えば、支持部10が固定されたシャフト21の外周面のうち、箱体50の鎧戸側に向いているべき面に中心線(例えば、筒の延設方向に沿う線)等の指標が付されていてもよい。この場合、作業者は綿が巻き付けられた支持部10の設置において当該指標が正面に来るように設置することで、綿が巻き付けられた支持部10の回収後にどの部分がどの方角を向いていたのかを容易に把握することができる。
【0044】
また、捕集体15は、海塩粒子等の大気浮遊塩分に限らず、大気中に存する他の粒子状物質を捕集することもできる。
【0045】
また、粒子状物質捕集装置1が設けられるのは、柱状の建造物60に限らない。粒子状物質捕集装置1は、例えば鉄塔等、通気性のある空間に面することができるあらゆる構造物に設けることができる。また、粒子状物質捕集装置1は、地上に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 粒子状物質捕集装置
10 支持部
15 捕集体
21 シャフト
22,23 係止部
30 貯留部
40 保持部
42 突起
45 回動支持部
50 箱体
51 屋根部
53 側面部
53a 羽板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12