(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るアクチュエータを示す斜視図であり、
図2は、同アクチュエータの底面を示す斜視図であり、
図3は、同アクチュエータの底面図である。また、
図4は、同アクチュエータの要部分解斜視図であり、
図5は、
図3に示すアクチュエータを下から見た要部分解斜視図である。
図6は、
図3のA―A線矢視断面図であり、
図7は、
図3のB―B線矢視断面図である。なお、
図11〜
図16に本発明の一実施の形態に係るアクチュエータの六面図を示す。具体的には、
図11は、本発明の一実施の形態に係るアクチュエータの正面図であり、
図12は、同アクチュエータの背面図、
図13は、同アクチュエータの平面図であり、
図14は、同アクチュエータの底面図であり、
図15は、同アクチュエータの右面図であり、
図16は、同アクチュエータの左面図である。
【0012】
図1、
図2及び
図11〜
図16に示すアクチュエータ100は、固定体110と、可動体120と、固定体110に可動体120を可動自在に支持させるバネ材150(
図2参照)と、交流供給入力部(以下、「交流入力部」という)112とを有する。
【0013】
図1及び
図2に示すアクチュエータ100では、可動体120は、交流入力部112から入力されるコイル部114への電力供給によって、固定体110に対して可動する。可動体120の回転軸122は、所定の角度範囲内で正逆方向(
図1の矢印方向)に回動し、回転往復振動として外部に出力する。
【0014】
図3〜
図7に示すように固定体110は、ベースプレート111と、軸受(ベアリング)113と、円環状のコイル部114と、コイル部114の外周に沿って配置される極歯(極歯面)115b、116bを有する櫛歯状の上下ヨーク(コア)115、116と、を有する。
【0015】
固定体110は、磁性体からなるベースプレート111を有し、ベーススレート111には、上面側(可動体110側)に突出した中空の筒状部1111が設けられている。筒状部1111には、軸受113が圧入される。筒状部1111は、ベースプレート111に対する絞り加工により、ベースプレート111の下面側から上面側に垂直に突出して成形されている。筒状部1111は、筒部本体1111aと、筒部本体1111aより外径が大きい台座部1111bとを有する。
【0016】
筒部本体1111aには、上面側から、上下ヨーク115、116で囲まれるコイル部114が外挿される。また、台座部1111bの上面には、上下ヨーク115、116で囲まれるコイル部114が係止されている。
【0017】
筒部本体1111a及び台座部1111bにより外径に段差が形成された形状に対応して、軸受113も形成されている。つまり、軸受113は筒状部1111への圧入方向側の外径(先端側の外径)は、基端側の外径よりも小さくなっており、圧入時に基端側が、台座部1111bの裏面側で掛合する。筒状部1111は、コア(コイル部114を挟む上下ヨーク115、116)の上下寸法(軸方向の長さ)であり、上端面は、固定体(ステータ)110の上面を構成する。
筒状部111に対して、ベースプレート111の下面側から軸受113が圧入される。軸受113は、筒状部1111に内嵌し、ベースプレート111の底面部分から垂直に立設した状態で固定される。このように軸受113は、ベースプレート111に圧入により、高精度かつ安定した状態でベースプレート111に固定させることができる。
【0018】
軸受113には、可動体120の回転軸122が挿入されており、軸受113は、回転軸122を回転自在に軸支する。軸受113は、磁性体であり、磁性を有する焼結含油軸受であることが好ましい。軸受113は、鉄系の焼結材料等により形成され、加えて、高い飽和磁束密度を有する材料であることが好ましい。焼結含油軸受としては、例えば、ポーライトPI001(登録商標)等が挙げられる。本実施の形態では、軸受113は、上下方向(軸方向)の長さを筒状部111の長さとほぼ同じである。また、軸受113を焼結材料で構成する際には少なくとも肉厚を1mm以上にする。
【0019】
この軸受113の外周に、ベースプレート111の筒状部1111を挟み上下ヨーク115、116により囲まれるコイル部114が配置される。
【0020】
コイル部114は、ボビン114aに、コイル114bを周方向に周回することで構成される。ボビン114aは、コイル114bとともにアクチュエータ100の駆動源の発生に用いられる。ボビン114aは、回転軸122及びコイル114bの軸と同一軸心である。コイル114bのコイル巻線は、交流入力部112に接続されており、交流入力部112を介して、交流電源供給部に接続される。コイル114bには、交流入力部112を介して交流供給部から交流電源(交流電圧)が供給される。
【0021】
上下ヨーク(コア)115、116は、磁性体であり、円環状の本体板部115a、116aの外周縁から垂直に設けられた極歯115b、116bを櫛歯状に備える。上下ヨーク115、116は、コイル部114を軸方向から挟み込むように互いに非接触で配置される。上下ヨーク115、116のそれぞれの本体板部115a、116aは、コイル部114において軸方向で離間する上下面に対向して配置される。また、上下ヨーク115、116のそれぞれの極歯115b、116bは、コイル部114の外周面を囲むように互い違いに周方向に配置され、円周を描くように位置される。
【0022】
また、上下ヨーク115、116の円環状の本体板部115a、116aの中央には開口部を囲むように筒状のコア内周部115c、116cが形成されている。
コア内周部115c、116cはそれぞれ板状の本体板部115a、116aの中央を絞り加工により形成される。
上ヨーク115では、コア内周部115cは、極歯115bと同方向に突出して形成されている。下ヨーク116では、コア内周部116cは、極歯116bと同方向に突出して形成されている。
【0023】
上ヨーク115は、コイル部114の上側から嵌め込まれており、その本体板部115aは、コイル部114の上面に対向し、極歯115bはコイル部114の外周面に沿って櫛歯状(所定間隔を空けて)に位置する。加えて、コア内周部115cは、コイル部114の中央開口部(具体的にはボビン114aの開口)に上側から挿入される。
下ヨーク116は、コイル部114の下側から嵌め込まれており、本体板部116aは、コイル部114の下面に対向し、極歯116bは、コイル部114の外周面に沿って位置する極歯115bの間に一様に配置される。加えて、コア内周部116cは、コイル部114の中央開口部(具体的にはボビン114aの開口)に下側から挿入される。
【0024】
コイル部114を上下ヨーク115、116で挟んで構成されるコアは、筒状部1111の筒部本体1111aに外嵌し、台座部1111bに掛止するので、ベースプレート111に対して、台座部1111bの高さ分、離間して対向して取り付けられる。
このとき、上下ヨーク115、116のコア内周部115c、116cは、コイル部114の内部で、当接或いは当接するように配置される。
図6及び
図7では、コア内周部115c、116cの先端部は、コイル部114内で当接している。これによりボビン114bと、回転軸122との間には、軸受113、筒状部1111(筒部本体1111a)に加えてコア内周部115c、116cが介在している。コア内周部115c、116cは、筒状部1111とともに、筒状部1111を外周側で囲む磁路を形成する。
【0025】
上下ヨーク115、116の極歯115b、116bは、可動体120のマグネット123(後述する)の磁極数と等しい極数となっている。
【0026】
この構成により、コイル114bに交流電源が供給されると、上ヨーク115と、下ヨーク116は、それぞれ励磁されて互いに異なる極性となり、上下ヨーク115、116のそれぞれの極歯115b、116bも異なる極性で励磁される。コイル114bは、交流入力部112から可動体120の共振周波数に略等しい周波数の交流が供給されると、極歯115b、116bを交互に異なる極性で励磁する。すなわち、コイル部114の外周面には、外周面に沿って異なる磁極面が交互に並んで配置される状態となる。
【0027】
これら極歯115b、116bの極性は、コイル部114に順方向と逆方向の電流が供給されることで、交互に変更する。
【0028】
コイル部114の外周面に沿って配置された極歯115b、116bに対向して、所定間隔をあけて可動体120のマグネット123が配置されている。
【0029】
なお、極歯115b、116bは、対応するマグネットの極数(後述する)とともに、16極となる構成であるが、2極以上であれば、何極あってもよい。複数極あれば、これに限らない。ここでは、極歯115b、116bは、マグネット123の周面に対向し、且つ、周方向に亘って16極交互に配置されており、マグネット123におけるN極(N磁極面)及びS極(S磁極面)と同数の極数としている。
【0030】
可動体120は、回転軸122と、マグネット123と、回転軸122とマグネット123とを固定するローターカバー部124とを有する。
【0031】
マグネット123は、円筒形状に形成され、多極(ここでは16極)が周方向に交互に着磁されている。マグネット123は、ネオジウムボンドマグネット、フェライトボンドマグネット、ネオジウム焼結マグネット、フェライトボンドマグネット、フェライトゴムマグネット等が適用される。
【0032】
具体的には、マグネット123は、極歯115b、116bに対応する周面(ここでは内周面)に周方向に沿って、N極,S極,N極,S極,N極,…と交互に異なる極性の磁極面を有するように着磁されている。N極,S極,…の各着磁面における周方向(ここでは、回転軸に対し周方向で直交する方向)の長さは、極歯115b、116bの周方向の長さよりも長い。なお、マグネット123は、円筒形状で一体的な構成である。
【0033】
マグネット123は、磁性体からなるローターカバー部124を介して回転軸122に固定されている。
【0034】
マグネット123の着磁面に対して、極歯115b、116bは、それぞれの周方向の中心位置が、マグネット123の着磁面N、S(N磁極面、S磁極面)が切り替わる位置(着磁面S、Nを仕切る位置)と、回転軸心を中心として半径方向で重なる位置に位置される。なお、中心位置、切り替わる位置が、回転軸122を中心として半径方向で(つまり、放射状に)同一直線上に重なる位置を、可動体120の回動動作基準位置(回動基準位置)とする。すなわち、可動体120は、極歯115b、116bの周方向の中心位置と、マグネット123の磁極面の切り替わり位置(仕切り線)とが対向する位置を回動基準位置として固定体110に回動自在に保持される。
【0035】
ここではアクチュエータ100は、16極からなるため、可動体120の回動範囲は、固定体110に対して、回動基準位置を中心に11.25度ずつ、順方向或いは逆方向に回動する範囲となっている。中心位置及び切り替わる位置が、それぞれ回転軸122を中心として半径方向で(つまり、放射状に)同一直線上に重なる位置を決めるために、マグネット123には凹部123aが形成されている。これにより、マグネット123の磁極が切り替わる位置を、極歯115b、116bの中心位置に容易に位置させてアクチュエータ100を組み立てることができる。なお、マグネット123は、アクチュエータ100の出力に合わせて選択することができる。
【0036】
マグネット固定部として機能するローターカバー部124は、絞り加工により形成されたカップ状をなし、円盤状の固定部本体124aの外周から筒状部124bを垂下させてなる。この筒状部124bの内周面に、マグネット123が固着されている。
【0037】
ローターカバー部124の固定部本体124aの中央部には、直交方向に挿通する回転軸122が先端部122aを外部に突出させた状態で固定されている。ここでは、ローターカバー部124と回転軸122とは溶接により固定される。ローターカバー部124は、回転軸122に溶接により固定されるので、回転軸122を組み付けた後で、当該回転軸122に固定できる。なお、ローターカバー部124は、回転軸122にエポキシ系材料による接着により固定されてもよい。
【0038】
回転軸122は、ローターカバー部124の軸心上に、ローターカバー部124を挿通して固定されている。回転軸122は、非磁性体であることが好ましい。回転軸122が磁性体である場合、磁気回路の構成上、磁気吸引力により軸受113に吸引し減衰が大きくなるからである。回転軸122は、本実施の形態では、オースティナイト系のステンレス(SUS)であり、非磁性であり、耐食性に優れ、錆びにくくなっている。
【0039】
この回転軸122は、固定体110(ベースプレート111)に形成された筒状部1111の軸穴を挿通している。回転軸122の他端部は、ベースプレート111の裏面側で、バネ材150に、軸固定部品(接合部)164を介して、ベースプレート111に固定されている。
【0040】
バネ材150は、可動体120を固定体110に対して弾性支持するものである。ここでは、バネ材150として、ねじりコイルばねが適用されている。このねじりコイルばねの内部に、回転軸122は回動自在に挿入されている。なお、回転軸122は、ねじりコイルバネの軸上に位置しており、回転軸122の軸心は、ねじり方向の中心軸と一致することが好ましい。
【0041】
バネ材150であるねじりコイルバネの一端部152は、軸固定部品162を介して回転軸122の基端部122bに固定されるとともに、他端部154は、ベース固定部品(接合部)164を介してベースプレート111に固定されている。ここでは軸固定部品162は、バネ材の一端部152が内嵌する凹状(
図16に示す凹状部1625参照)に形成され、回転軸122に対する一端部152を凹状内に配置して位置決めした後、回転軸122に対する軸固定部品162の位置を決めることができる。すなわち、軸固定部品162は、一端部152の位置に応じて、余計な負荷をかけることなく、バネ材150を回転部122に溶接等で固着できる。
【0042】
ねじりコイルバネであるバネ材150の両端部152、154は、バネ材150においてばね定数(後述するK)の基準点K1、K2を有する。バネ材150は、その両端部がそれぞれ固定される可動体120及び固定体110の少なくとも一方に、バネ定数の基準点K1、K2よりも先端側で固定される。
【0043】
ここでは、バネ材150の他端部154が、ベース固定部品164を介して、ばね乗数の基準点となる基準位置K1よりも他端部154の先端に向かう部位で固定される。
具体的には、ベース固定部部品164は、ベースプレート111下面においてバネ材150の他端部154の先端側で、XY方向の移動を規制する接合部160を介してベースプレート111に接合されている。
【0044】
接合部160は、ここでは、ベースプレート111から立設される突条のリブ161と、ベース固定部品164と、ベース固定部品164をベースプレート111に所定位置で固定するネジ部165とを有する。
ベース固定部品164は、ネジ部165を介してベースプレート111に固定される本体プレート164aと、本体プレート164aから垂直に立設する突条のリブ164bとを有する。ベース固定部品164のリブ164bは、他端部154に対して、基準位置K1よりも先端に向かう部位(自由端側の部位)で固定される固着部160と、基準位置K1よりもバネ材150の一端部152側で、バネ材150の変形時に当接して他端部154の固定部分で発生する応力を緩和する応力緩和部160aとを有する。
【0045】
また、リブ161も同様に、バネ材150の他端部154に対して、基準位置K1よりも自由端側で固定される固着部160bと、基準位置K1よりもバネ材150の一端部側で、バネ材150の変形時に当接して他端部154の固定部分で発生する応力を緩和する応力緩和部160aと、を有する。
【0046】
固着部160bは、ここでは、他端部154に溶接により固定される。なお、固着部160bは、他端部154にエポキシ系材料による接着により固定されてもよい。
応力緩和部160aは、バネ材150、特にねじりコイルバネが変形した際に当接して、他端部154に係る応力を緩和する。
【0047】
このように、バネ材150は、変形時において、この固着部160bよりもバネ材150のコイル部分側で応力緩和部160aに当接するので、バネ材150において他端部154に局部集中する応力を分散することができる。これにより、可動体120が往復回転動、つまり、振動する際に発生する応力が、バネ材150(具体的には、ベースプレート111に接合される他端部154)において局所集中することがない。
【0048】
バネ材(ねじりコイルバネ)150は、可動体120のマグネット123の内周面において、隣り合う磁性の異なる着磁面の切り替わり位置が固定体110の極歯115b、116bにおける周方向の中心に位置するように位置決めしている。
【0049】
また、バネ材(ねじりコイルバネ)150は、マグネット123の回動方向に対して一定のばね定数を得ることができ、可動体120は周方向に可動する。このバネ材150によりアクチュエータ100における共振周波数を調整できる。
【0050】
上記構成のアクチュエータ100では、コイル114bへ入力される交流波により上下ヨーク115、116、つまり極歯115b、116bが磁化され、可動体120のマグネット123に対して、効率的に磁気吸引力及び反発力を発生する。これにより、可動体120のマグネット123は、回動基準位置となる極歯115b、116bの中心を基準にして、周方向に両方向に移動し、これによりマグネット123自体が、回転軸122を中心に往復回動を行う。
【0051】
本実施の形態のアクチュエータ100では、可動体120の慣性モーメントJ、ねじり方向のバネ定数K
spとした場合、可動体120は、固定体110に対して、下記式(1)によって算出される共振周波数f
r[Hz]で振動する。
【0052】
【数1】
本実施の形態のアクチュエータ100は、交流入力部112からコイル114bに可動体120の共振周波数f
rと略等しい周波数の交流を供給してコイル114bを介して極歯115b、116bを励磁する。これにより、可動体120を効率良く駆動させることができる。
【0053】
本アクチュエータ100における可動体120は、バネ材150を介して固定体110により支持されるバネマス系構造で支持された状態となっている。よって、コイル114bに可動体120の共振周波数f
rに等しい周波数の交流が供給されると、可動体120は共振状態で駆動される。このとき発生する回転往復振動が、可動体120の回転軸122に伝達される。
【0054】
アクチュエータ100は、下記式(2)で示す運動方程式及び下記式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0056】
【数3】
すなわち、アクチュエータ100における慣性モーメントJ[Kgm
2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数K
t[Nm/A]、電流i(t)[A]、バネ定数K
sp[Nm/rad]、減衰係数D[Nm/(rad/s)]、負荷トルクT
Load[Nm]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数K
e[V/(rad/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
このように、アクチュエータ100、可動体110の慣性モーメントJとバネ材(弾性体)150のばね定数Kにより決まる共振周波数f
rにおいて駆動した場合、効率的に大きな出力を得ることができる。
【0057】
次に、アクチュエータ100の具体的な動作について説明する。
【0058】
コイル部114のコイル114bに電流が流れる(順方向に流れるとする)と、上ヨーク115の極歯115bは励磁されて極性を有し(例えばN極)、下ヨーク116の極歯116bは励磁されて、極歯115bとは異なる極性(例えばS極)を有する。これら極歯115b、116bに対向して、各極歯115b、116bの周方向(回動方向)の中心位置、つまり、回動基準位置に、可動体120のマグネット123における磁極面(S、N)の仕切り線が配置される。
【0059】
よって、マグネット123では、内周面全面に亘って、N極面は、S極面である極歯115bに吸引され、マグネット123のS極面は、N極歯である極歯116bに吸引されるとともに、同極どうしは反発する。これによりマグネット123の内周全面で、最も大きなトルクが発生して、マグネット123は、周方向の一方(例えば反時計回り)に回動する。すると、マグネット123におけるそれぞれの極面は、相対する磁極で励磁された極歯115b、116bと、対向する位置で停止しようとする。この位置にマグネット123が位置しようとする際に、マグネット123には、マグネット123と近接する同磁極の極歯との反発で先の移動方向とは逆方向へのトルクも作用する。
【0060】
また、マグネット123(可動体120)は、バネ材150の復元力により回動基準位置側への付勢力が作用する。この状態において、コイル部114に順方向電流とは逆方向の電流(逆方向電流)が流れる。すると、極歯115b、116bのそれぞれの極性が変わり、N極だった極歯115bはS極に、S極だった極歯116bはN極に励磁される。これにより、マグネット123は、各磁極面と、極歯115b、116bとの間で発生する磁気吸引力及び磁気反発力によって、先の移動とは逆方向にトルクが発生して移動する。なお、このトルクは、バネ材150の復元力によっても作用する。
【0061】
すなわち、コイル114bに電流が順方向、逆方向に交互に流れることにより、可動体120は、固定体110に対して、周方向の一方に移動、バネ材150の付勢力による回動基準位置側への移動、回動基準位置を超えて周方向の他方向に移動、バネ材150の付勢力による回動基準位置側への移動、回動基準位置を超えて周方向の一方向に移動を順次、繰り返す。このように、アクチュエータ100の可動体120は、回転軸122を中心に、且つ、回動基準位置を中心に、往復回動、つまり、振動して回転軸122を介して外部に往復振動力を出力する。
【0062】
図8は、本実施の形態のアクチュエータにおいて交流入力部112を介して固定体110のコイル114bに供給される交流の周期を示す図である。
【0063】
コイルに流れる交流は、
図8Aに示すように周波数f
0のパルス波でもよいし、
図8Bに示すように周波数f
0の正弦波でもよい。
図8に示す時点t1の順方向の電流が供給され、時点t3の逆方向の電流が供給される。また、
図8の時点t4で示すように電流の向きが切り替えられて、マグネット123が回動して回動基準位置に戻った際には、時点t5順方向の電流が供給される。これが1周期分の動作であり、このような動作が繰り返されることで、可動体120は、変位動作を繰り返すことによって、回転往復振動する。
【0064】
アクチュエータ100を組み立てる際に、ベースプレート111に軸受113を挿入し、バネ材150を、軸固定部品162、ベース固定部品164を介して、ベースプレート111と回転軸122に接合することが出来る。すなわち、アクチュエータ100を組み立てる際に、上下ヨーク115、116に囲まれたコイル部114を筒状部1111に外嵌したり、ローターカバー部124を回転軸122に溶接または接着により固着する前に、製造上、公差が生じるバネ材150を、早い段階で、可動体120の回転軸122と、固定体110のベースプレート111との間に、公差を吸収しつつ介設できる。その後、コイル部114、マグネット123を組み付けることができる。
【0065】
また、アクチュエータ100を組み立てる際に、最後に、ローターカバー124を回転軸122に溶接または接着により固定できる。これにより、可動体120の回転方向にずれが有る場合、ローターカバー124を回転軸122に固定する際に、そのずれを調整しつつアクチュエータ100を組み立てることができる。このようにアクチュエータ100を組み立てる際に、互いに固定する部品同士の接合を溶接、接着等で行うことによって、バネ材150のバラツキの大きさに応じたずれを吸収することができる。これにより、バネ材150のバラツキによる組み立て後のアクチュエータ100の組み立て精度の悪化を防止できる。
【0066】
なお、アクチュエータ100では、可動体120は、回転往復運動つまり回転往復振動を行い、この回転往復振動は回転軸122を介して外部に出力される。回転軸122の先端部122aに、頭部に軸方向と直交して設けられた毛束部を備える歯ブラシ部、洗顔ブラシ部、或いは、電気カミソリ、電動ひげそり、電気式の頭髪刈り込み器具等の刃を連結することにより、ブラシ或いは刃を往復振動させることができる。
【0067】
このようにアクチュエータ100は、式(2)、(3)を満たし、式(1)で示す共振周波数を用いた共振現象により駆動する。これにより、アクチュエータ100では、定常状態において消費される電力は負荷トルクによる損失及び摩擦などによる損失だけとなり、低消費電力で駆動、つまり、可動体120を低消費電力で回転往復振動させることができる。
【0068】
本実施の形態では、可動体120は、円筒形状の多極(ここでは16極)着磁されたマグネット123と、磁性体でありマグネット123が固定されるローターカバー部124と、ローターカバー部124の中央部に圧入固定された回転軸122とを有する。
また、固定体110は、可動体120の回転軸122を支軸する軸受113と軸受113を固定するベースプレート111及び駆動源発生に用いられ軸受113に固定されているコイル部114(円環状のボビン114a及びコイル114b)と、コイル部114を上下から挟み込み配置された串歯形状の2つの上下ヨーク115、116及びコイル114巻線を外部端子へ接続する交流入力部112とを有する。
【0069】
固定体110の上下ヨーク115、116は、可動体120のマグネット123の磁極数と等しい極数の極歯115b、116bを有する。コイル部114へ入力される交流波により磁化され,効率的に磁気吸引力・反発力を発生させる。
【0070】
マグネット123は、固定体110で円周上に交互に極性が異なるように配置された極歯115b、116bに対向して、円環状に配置されている。
これにより、極歯115b、116bと対向するマグネット123の内周の全周にわたって駆動源とすることができ、変換効率の高いアクチュエータを実現できる。また、マグネット123の全周に亘って、磁気吸引力、磁気反発力が発生し、最も大きなトルクを発生させることができる。
【0071】
この構成によりアクチュエータ100では、放射状に複数配置された同一磁極である極歯115b、116bからの磁束がすべて、上下ヨーク115、116を通り中央側に集中して流れる磁気回路となっている。このように磁束が集中すると磁気飽和が発生し、磁気抵抗(リラクタンス)の増大がおこるため、トルク定数が低下し、特性の低下、つまり、出力自体が低下するおそれがある。
【0072】
しかしながら、本実施の形態のアクチュエータ100においては、軸受113が磁性体であるため、コイル部114の内側において、且つ、回転軸122周りにおける断面積(磁束が流れる磁路断面積)を広くできる。
これにより、外周側の極歯115b、116bから内側に向かって中央部分に集中する磁束による磁気飽和を緩和させることができる。これにより、トルク定数K
tが大きくなり、エネルギー変換効率を向上させて、アクチュエータ100の出力を増加できる。
【0073】
また、コイル部114において、上下ヨーク115、116は、コイル部114を軸方向で挟むように配置される円環状の本体板部115a、116aの中央部に、絞り加工により形成されたコア内周部115c、116cを有する。
コア内周部115c、116cは、コイル部114の内側(内周側でありコイル部114の中央の開口部内)に配置され、筒状部1111に外嵌する。また、コア内周部115c、116c同士は、コイル部114の内側で互いの先端部を当接させており、コア内周部115c、116cとで一つの磁性体からなる筒状体を形成している。
【0074】
これらコア内周部115c、116cにより、コイル部114の内側において、且つ、筒状部1111、軸受111の断面積(磁路断面積)に加えて、回転軸122周りにおける断面積(磁束が流れる磁路となる磁路断面積)を更に広くできる。加えて、コア内周部115c、116cは、上下ヨーク115、116の一部であるので、上下ヨーク115、116における極歯の位置精度及び固定される際の強度を増加できる。
【0075】
また、コア内周部115c、116c及び軸受113は、固定体110の上下寸法に略等しい。また、コア内周部115c、116cは、筒状部1111と同軸であるため、製造上、その精度を出しやすい。
【0076】
また、回転軸122は、非磁性体であるので、軸受113との間の接触面での磁気吸引力をなくすことができる。これにより、回転軸122と軸受113の間において余計な摩擦力が発生することがなく、減衰を低下させて、出力向上を図ることができる。すなわち、回転軸122は、磁性体である場合と異なり、磁気吸引力により、軸受113に吸い付いて減衰が増大することがない。
【0077】
なお、回転軸122は、本実施の形態では、オースティナイト系ステンレスである(SUS402)ので、先端部122aが外部に突出し、外気・水などに触れる場合でも、耐食性に優れるので、錆びにくい。
【0078】
図9、
図10は、本実施の形態に係る磁束の流れの説明に供する図であり、
図9Aは、本実施の形態の磁束の流れを示し、
図6に対応する。また、
図9Bは、本実施の形態の構成において、磁気飽和を考慮しない参考の構造、具体的には、軸受113Bが磁性体ではなく、更に、コア内周部115c、116cを磁気経路としない構造を示す。
図10は、
図3のA−A線断面斜視図で有り、便宜上、マグネット123、ローターカバー部124を含むロータ部分の図示を省略している。
【0079】
すなわち、本実施の形態では、
図9Aに示すように、非磁性体である回動軸部122と、コイル114bとの間に、全て磁性を有する軸受113、ベースプレート111の筒状部1111、コア内周部115c、116cを配置し、磁路となる断面積を増加させている。
図9Aと
図9Bとを比較すると、
図9Aでは、集中する磁束が、軸受113、筒状部1111、コア内周部115c、116cのそれぞれを通るようになり、分散される。具体的には、磁束の流れは、極歯115b→コア内周部115c(116c)+筒状部1111(詳細には台座部1111b)+軸受113→極歯116bとなる。これに対して、
図9Bに示すように、軸受113Aが非磁性体である場合、軸受113Aには磁束は流れず、磁気経路として機能する断面積が減少し、磁気飽和が起こり、
図9Bに示すアクチュエータでは磁気抵抗が増大、磁束量は減少する。また、
図9Bでは、コア内周部115c、116c同士は接触していないので、その分、磁束量が減少する。
このように本実施の形態では、回転軸112まわりには、磁気経路として機能する磁性体による断面積が広いので、
図10に示すように、コアの外側に位置するコアを囲むように全周に亘って位置する磁歯116bから内側へ流れる磁束は分散される。
【0080】
このように、アクチュエータの中央部分、すなわち、磁気回路における中心部分の磁路断面積を増加することで、集中する磁気飽和をより効果的に緩和させて、エネルギー変換効率を更に改善(最大振幅が3.5%向上した)させることができる。
また、本実施の形態によれば、軸受113がベースプレート111に対して圧入により固定されるので、軸受113のベースプレート111における位置精度が向上し、可動体120の回動軸122に対しても正確な位置決めを行うことができる。
【0081】
また、可動体120は、バネ材(ねじりコイルバネ)150を介して固定体110に可動自在に支持されており、バネ材150は、固定体110(具体的にはベースプレート111)に接合部160としてのリブ161、ベース固定部品164を介して固定されている。接合部160は、バネ材150の他端部154において自由端側で固着する固着部160bと、固着部160bに近接配置され、バネ材150の変形時に発生する応力を緩和する応力緩和部160aとを有する。これにより、アクチュエータ100が駆動して可動体120が往復回転運動を行う際に、バネ材150の他端部154に応力が発生しても、応力緩和部分で分散され、バネ材150において応力が局所的に集中することがなく、バネ寿命が長くなる。これにより、長期間駆動可能となり、高い信頼性を確保できる。
【0082】
また、バネ材150の他端部154は、ベースプレートに設けたリブ161と、固定体110(ベースプレート111)への取り付け位置を変更可能なベース固定部品164により固定体110(ベースプレート111)に固定している。これにより、バネ材150であるねじりコルバネの製造上発生するばねの寸法誤差が生じても、その組立の際に誤差を吸収し、アクチュエータ100における組立性の悪化を解消できる。
【0083】
なお、上記本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、種々の改変をなすことができ、そして本発明が該改変させたものに及ぶことは当然である。