(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アノードが前記補助電極と接続し、カソードがグランド電位又は前記第2電極と接続された第2ダイオードを備える事を特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の半導体装
置。
前記制御電極は前記溝に挟まれた領域内に設けられた第2の溝内に設けられ、前記第2の溝は前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達している事を特徴とする請求
項1〜6の何れか1項に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
大電流のスイッチング動作を行うスイッチング素子(パワー半導体素子)として、トレンチゲート型のパワーMOSFETが広く用いられている。
【0003】
トレンチゲート型のパワーMOSFETは、一般的に第1導電型のドレイン領域と、第1導電型のドレイン領域の上に形成された第1導電型のドリフト領域と、第1導電型のドリフト領域上に選択的に形成された第2導電型のベース領域と、第2導電型のベース領域上に選択的に形成された第1導電型のソース領域と、ソース領域からベース領域を貫通してドリフト領域に達する溝と、ベース領域と対向する溝の側壁に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、ソース領域と電気的に接続したソース電極と、ドレイン領域と電気的に接続したドレイン電極とを備える。トレンチゲート型のパワーMOSFETのオン抵抗を低減するためにドリフト領域の不純物濃度を高めることが効果的であるが、逆にトレンチゲート型のパワーMOSFETの耐圧が悪化する。そこで、ゲート電極の両側にゲート電極と同様にベース領域とソース領域を貫通する別のトレンチを設け、その別のトレンチの中に絶縁膜を介して設けられ、ソース電極と電気的に接続する補助電極を設けた半導体装置の例が特許文献1の
図16から
図18等により公知である。特許文献1の
図16から
図18の半導体装置によれば、その別のトレンチ内に設けられた補助電極はソース電位であるため、別のトレンチの壁面からも空乏層が広がり、一般的なゲート電極の側面から広がる空乏層と繋がって、全体的な空乏層の湾曲部を緩和する効果がある。更に、ドレイン・ソース間の電位差を大きくすると、その別のトレンチから広がる空乏層が拡大し、その別のトレンチで挟まれたドリフト領域の全部分が空乏化することになり、更に空乏層の湾曲部を緩和される。
【0004】
以上から、ゲート電極の両側にソース電位の電極を備える別のトレンチを設けることで、トレンチゲート型のパワーMOSFETの耐圧を向上することができ、言い換えれば、ドリフト領域の不純物濃度を高めてオン抵抗を低減する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態となる半導体装置について説明する。
半導体装置1の断面図を
図1で示す。この半導体装置1は、ドレイン領域となるn
+領域2の上に、ドリフト領域となるn
−領域(第1の半導体領域)3、ベース領域となるp
−領域(第2の半導体領域)4を備える。また、半導体装置1は、p
−領域4を貫通して底部がn
−領域3に達する第1の溝(ゲートトレンチ)10を備える。第1の溝10は、
図1における紙面と垂直方向に延伸し、紙面と平行方向に繰返し複数形成されている。
【0013】
第1の溝10の両側に、ソース領域となるn
+領域(第3の半導体領域)5が形成されている。第1の溝10の内面(側面及び底面)には絶縁膜が形成され、その絶縁膜を介して第1の溝10内にゲート電極(制御電極)9が形成されている。ゲート電極9は、例えば高濃度にドープされた導電性の多結晶シリコン(ポリシリコン)で構成される。ゲート電極9の底部の絶縁膜の厚みはゲート電極9の側面の絶縁膜の厚みよりも厚くなっている。これにより、半導体装置1はゲート・ドレイン間の容量(Cgd)を低減することができ、スイッチング損失を低減することができる。
【0014】
ゲート電極9を含む第1の溝10の両側の第1の溝10から離間した領域に、p
−領域4を貫通して底部がn
−領域3に達する第2の溝(フィールドトレンチ)12が形成されている。第2の溝12は、第1の溝10と同様に
図1における紙面と垂直方向に延伸し、紙面と平行方向に第1の溝10と第2の溝12が繰返し複数備える。半導体装置1は第2の溝12の底部に絶縁膜を介して補助電極(フィールド電極)11を備える。第2の溝12の底面においても絶縁膜を備えるため、補助電極11はその下のn
−領域3と絶縁されている。
【0015】
第2の溝12の両側に、p
−領域4よりも不純物濃度が高いp
+領域6を備える。p
+領域6はn
+領域5と接する事が望ましいが、p
+領域6はn
+領域5と接しなくても良い。p
+領域6はp
−領域4内にあり、p
+領域6の底部はn
+領域5の底部よりも低い位置にあるが、p
+領域6の底部はn
−領域3に達していない。
【0016】
ソース電極(第1の主電極)7がn
+領域5の上方に形成されており、ソース電極7はn
+領域5と電気的に接続されている。ここで、ソース電極7はp
+領域6と電気的に接続している事が望ましい。従来の一般的なMOSFETにおいてオンからオフになる時、電位変動による変位電流が流れる場合がある。しかし、半導体装置1のソース電極7がp
+領域6と電気的に接続することによって、変位電流はn
+領域5から遠い第2の溝12の壁面側に沿う領域に比較的多く流れる。その結果、半導体装置1においてp
−領域4とn
+領域5とのpn接合界面近傍の電位上昇を抑制し、半導体装置1のアバランシェ耐量の低下を抑制することができる。
半導体装置1のN
+層2の裏面全面には、N
+層2と電気的に接続されるドレイン電極(第2の主電極)8が形成されている。
【0017】
半導体装置1において、半導体装置1のオン状態において補助電極11の電位がゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より高い。半導体装置のオン状態において、ゲート電極9には正の電位が与えられ、ゲート電極9と対向するp
−領域4の領域にはチャネルが形成され、n
+領域5からN
+層2に向かって電流が流れる。この時、補助電極11の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より高くする。これによって、補助電極11の電位をソース電極と同じ電位(ソース電位)とした場合と比較して、補助電極11と対向するn
−領域3の領域に電子がより多く集まり、補助電極11と対向するn
−領域3の領域(特に第2の溝12の側面近傍)の抵抗値が下げることができる。これによって、半導体装置1のオン抵抗を下げることができる。また、特許文献1の
図16の構造のように、第1の溝10とは別に第2の溝12を設けると、n
−領域3内の電流の流れを阻害され、オン抵抗が増加してしまい、低いオン抵抗を確保するためにセルの微細化などが実施される場合がある。半導体装置1のオン状態において、補助電極11の電位を上記のようにソース電極7の電位より高くすることで、上記のようなセルの微細化を実施することもなく、半導体装置1のゲート・ドレイン間容量Cgdやドレイン・ソース間容量Cds、ゲート・ソース間容量Cgsなどの容量の増加も抑制することができる。その結果、半導体装置1によれば、ゲート・ドレイン電荷Qgdを抑制し、スイッチング損失も低減することができる。
図2(A)は
図1の半導体装置1のオン状態において補助電極11の電位をソース電位とした場合に、半導体装置1の溝10と溝12との間で挟まれた半導体領域を中心に注目して電流の流れをシミュレーションした結果であり、
図2(B)は
図1の半導体装置1のオン時に補助電極11の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より高い電位(ここでは、ゲート電極と同じ電位)とした場合に、半導体装置1の溝10と溝12との間で挟まれた半導体領域を中心に注目して電流の流れをシミュレーションした結果である。
図2(A)に比べて
図2(B)では溝12の側壁近傍の半導体領域内に、より多くの電流が流れていることが分かる。
【0018】
図3は、半導体装置1のオン状態において、補助電極11の電位をソース電極7と同じ電位とした場合における半導体装置1のドレイン・ソース間電圧とドレイン電流を示すV−I特性(比較例)を実線で示し、半導体装置1のオン状態において、補助電極11の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より大きい電位(ここでは、ゲート電極と同じ電位)とした場合における半導体装置1のドレイン・ソース間電圧とドレイン電流を示すV−I特性を点線で示している。半導体装置1のオン時に補助電極11の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より大きくすることによって、半導体装置1のオン電圧が低減されることが分かる。
【0019】
また、半導体装置1のオフ状態において、補助電極11の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位又は接地電位以上とする。半導体装置1のオフ時、p
−領域4とn
−領域3との界面からp
−領域4側及びn
−領域3側に空乏層が広がる。また、ゲート電極9と対向する第1の溝10の領域に沿って空乏層が広がる。また、補助電極11の電位がゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位又は接地電位以上であるので、補助電極11と対向する第2の溝12の領域に沿って空乏層が広がる。n
−領域3側に広がる空乏層は、補助電極11と対向する第2の溝12の領域に沿って広がる空乏層と、ゲート電極9と対向する第1の溝10の領域に沿って広がる空乏層とに繋がる。
【0020】
さらに、半導体装置1のドレイン・ソース間電圧を上がると、第1の溝10及び第2の溝12の底部の領域の空乏層はより深くへと広がり、第1の溝10及び第2の溝12の底部の領域の空乏層はより横方向へと広がり、第1の溝10及び第2の溝12とで挟まれた半導体領域は全体的に空乏化する。これにより、半導体装置1の耐圧を確保することができる。
【0021】
半導体装置1において上記動作を行うための構成を
図4で示す。
図4において、スイッチSWは
図1の半導体装置1のMOSFETとして機能する部分を示し、G端子は
図1の半導体装置1のゲート電極9、S端子は
図1の半導体装置1のソース電極7、D端子は
図1の半導体装置1のドレイン電極8とそれぞれ接続した端子を示し、容量Cは
図1の半導体装置1のドレイン領域(又はドリフト領域)と補助電極11との間に生じる容量を示し、V1端子は補助電極11と接続した端子を示している。
図4で示すように、補助電極11とゲート電極9との間に、アノード側が補助電極11と電気的に接続し、カソード側がゲート電極9と電気的に接続したダイオードD1が設けられている。ここで、ダイオードD1のアノードと補助電極11との間に抵抗Rを設けているが、ダイオードD1のカソードと補助電極11との間に抵抗Rを設けても良い。また、
図4の抵抗Rは設けなくても良い。
【0022】
図4の半導体装置の構成において、オフからオン時の動作波形を
図6で示す。
図6においてVDは
図4のD端子における電位、VGは
図4のG端子における電位、V1は
図4のV1端子における電位、I(D)は
図4のD端子に流れる電流、I(G)は
図4のG端子に流れる電流、I(V1)は
図4の補助電極11のV1端子に流れる電流を示す。ゲート電極9に電荷がチャージされ、スイッチSWはオンして、D端子の電圧は低下する。しかし、G端子とV1端子との間にダイオードD1を設けているため、ゲート・ドレイン間電圧がダイオードDのブレークダウン電圧に達するまで、補助電極11とドレイン領域間に電荷は蓄積されない。ゲート・ドレイン間電圧がダイオードD1のブレークダウン電圧まで下がると、ダイオードD1がブレークダウンして、補助電極11に電荷がチャージされる。補助電極11をゲート電極9と電気的に接続した場合、オフからオンに切り替わるとすぐに補助電極11とドレイン領域(又はドリフト領域)間に電荷Qcが蓄積されてしまう。しかし、
図4の構成によれば、ゲート電極9にオン信号以上となり、ドレイン電極8の電位が十分小さくなるまで補助電極11とドレイン領域(又はドリフト領域)間に電荷Qcが蓄積されず、その後に補助電極11に電荷が蓄積される。従って、
図4の構成によれば、補助電極11をゲート電極9と電気的に接続する場合に比べて、ゲート電極9の電圧の立ち上がり時に補助電極11とn
−領域3間に生じる電荷Qcが増加しない。さらに、補助電極11の電位がゲート電極9の電荷チャージに影響しないので、ゲート電極9の電荷チャージ(電圧の立ち上がり)が比較的急峻であり、ゲート電極9がオンするまでの立ち上がり時間が長くならない。従って、
図4の構成によれば、スイッチング速度が速い半導体装置を提供することができる。
図5は一般的なゲートトレンチMOSFETにおけるゲート電圧の立ち上がり特性を実線で示し、
図1の半導体装置1の補助電極11がゲート電極9と接続されている場合のゲート電圧の立ち上がり特性を一点破線で示し、
図4の回路構成におけるゲート電圧の立ち上がり特性を点線で示す。
図5で示すように、ゲート電極9と補助電極11が電気的に接続している場合、ゲート電極9に電荷が所望の値まで蓄積されるまで時間Yかかっているが、
図4の構成によれば、一般的なゲートトレンチMOSFETと同様に、時間X(時間Xは時間Yより小さい)でゲート端子に所望の電荷が蓄積していることが分かる。
【0023】
本発明の実施形態において、回路構成は
図4に限定されない。
図7で示すように、アノード側が
図1の半導体装置1の補助電極11と電気的に接続し、カソード側が接地又は
図1の半導体装置のソース電極7と電気的に接続したダイオードD2を
図4の構成から更に設けても良い。
図1の半導体装置1のオン状態の時までは、
図4の動作と同じである。
図1の半導体装置1のMOSFETがオフし、ドレイン・ソース間の電位が所定の電圧に達すると、ダイオードD2がブレークダウンして、補助電極11に蓄積された電荷が放電することができる。
【0024】
なお、上記において、トレンチゲート型のパワーMOSFETであるものとしたが、IGBTや
図1の半導体装置1以外のトレンチ内の電極構造を備えるトレンチゲート型の半導体装置においても
図4や
図7と同様の構成を用いることができる。また、フィールドトレンチを備えたプレーナ型の半導体素子構造を備える半導体装置においても
図4や
図7と同様の構造を用いることができる。
【0025】
(第2の実施例)
図8に第2の実施例の半導体装置1´を示す。第2の実施例の半導体装置1´は、分断した制御電極9´と、第1の溝内に絶縁膜を介してp
―領域4と対向して配置された制御電極9´に離間して挟まれるように、第1の溝内に絶縁膜を介してn
―領域3と対向して補助電極11´が設けられている点が
図1の半導体装置1と異なる。
ここで、半導体装置1´のオン状態において、補助電極11´の電位をゲート電極9´の電位以下であってソース電極7の電位より高くする。補助電極11´の電位をソース電極と同じ電位(ソース電位)とした場合に比較して、オン時に補助電極11´と対向するn
−領域3の領域に電子がより多く集まり、補助電極11´と対向するn
−領域3の領域の抵抗値を下げることができる。これによって、半導体装置1´のオン抵抗を下げることができる。更に、また、半導体装置1´のオフ状態において、補助電極11´の電位をオン時の補助電極11´の電位より低く、ゲート電極9´の電位未満であってソース電極7の電位又は接地電位以上とする。これにより、半導体装置1´の耐圧を確保することができる。
更に、第2の実施例の半導体装置1´を用いて
図4や
図7で示す回路構成にした場合、補助電極11´をゲート電極9と電気的に接続する場合に比べて、ゲート電極9´の電圧の立ち上がり時に補助電極11´とn
−領域3間の電荷Qcが増加しない。さらに、補助電極11´の電位がゲート電極9´の電荷の蓄積に影響しないので、ゲート電極9´の電荷の蓄積(電圧の立ち上がり)がゆるやかな上昇とはならず、ゲート電極9´がオンするまでの時間が遅くならない。従って、スイッチング速度が速い半導体装置1´を提供することができる。
【0026】
(第3の実施例)
図9に第2の実施例の半導体装置1´´を示す。
図9の半導体装置1´´は、第1の溝内に絶縁膜を介してp
―領域4と対向して配置された制御電極9´´の下であって、第1の溝内に絶縁膜を介してn
―領域3と対向する補助電極11´´が設けられている点が
図1の半導体装置1´´と異なる。
ここで、半導体装置1´´のオン状態において、補助電極11´´の電位をゲート電極9の電位以下であってソース電極7の電位より高くする。補助電極11´の電位をソース電極と同じ電位(ソース電位)とした場合に比較して、オン時に補助電極11´と対向するn
−領域3の領域に電子がより多く集まり、補助電極11´´と対向するn
−領域3の領域の抵抗値を下げることができる。これによって、半導体装置1´´のオン抵抗を下げることができる。更に、半導体装置1´´のオフ状態において、補助電極11´´の電位をオン時の補助電極11´´の電位より低く、ゲート電極9制御電極9´´の電位未満であってソース電極7の電位又は接地電位以上とする。これにより、半導体装置1´´の耐圧を確保することができる。
更に、第3の実施例の半導体装置1´´を用いて
図4や
図7で示す回路構成にした場合、補助電極11´´をゲート電極9と電気的に接続する場合に比べて、ゲート電極9´´の電圧の立ち上がり時に補助電極11´´とn
−領域3間の電荷Qcが増加しない。さらに、補助電極11´´の電位がゲート電極9´´の電荷の蓄積に影響しないので、ゲート電極9´´の電荷チャージ(電圧の立ち上がり)がゆるやかな上昇にならず、ゲート電極9´´がオンするまでの時間が遅くならない。従って、スイッチング速度が速い半導体装置1´´を提供することができる。
【0027】
また、上記の構成は、いずれもnチャネル型の素子であったが、導電型(p型、n型)を逆転させ、pチャネル型の半導体装置を同様に得ることができることは明らかである。また、半導体領域、ゲート電極等を構成する材料によらずに、上記の構造、製造方法を実現することができ、同様の効果を奏することも明らかである。