(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステータの周方向に並ぶ複数の前記ティースのいずれにも、1つの磁極を形成する前記ティースに対し、同じ数の前記コイルが巻かれている請求項1に記載の回転電機。
前記ステータの周方向に並ぶ複数の前記ティースのいずれにも、1つの磁極を形成する前記ティースに対し、1つの前記コイルが巻かれている請求項1または2に記載の回転電機。
前記支持電源回路から電流が供給されるとき、前記支持電源側コイルまたは前記中性点側コイルのうちの一方のコイルが巻かれた前記ティースが前記ロータと反発し、他方のコイルが巻かれた前記ティースが前記ロータに吸引される請求項1ないし4のいずれか1つに記載の回転電機。
前記駆動電源回路から所定の相に電流を供給するとき、その2分の1の電流をその所定の相に接続する前記支持電源回路に引き込むように制御される請求項1ないし5のいずれか1つに記載の回転電機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の回転電機1は、例えば車両の空調装置が備えるファン2を回転させるための電動機として用いられる。このファン2は、例えば遠心ファンであり、図示していない空調装置が備える空調ケース内に設けられ、その空調ケース内の通風路に気流を発生させるものである。なお、回転電機1の用途は、これに限るものではない。
【0014】
本実施形態の回転電機1は、アウターロータ型のブラシレスモータであり、センターピース3、シャフト4、ロータ5、ステータ6およびコイル7などを備えている。
【0015】
センターピース3は、シャフト4を収容する筒部31、および、その筒部31の一端から径方向外側に延びるベース32を有している。ベース32は、例えば、空調ケースが有するプレート33などに取り付けられる。
【0016】
筒部31の内側には軸受34が設けられている。軸受34は、シャフト4の軸方向の一端を回転可能に支持している。これにより、シャフト4は、センターピース3に対し回転可能に設けられる。なお、シャフト4の軸方向の他端には軸受が設けられていない。そのため、シャフト4は、軸受34を支点として径方向に傾くことが可能である。シャフト4のうち軸受34が設けられた箇所を除く部位は、ステータ6に巻かれたコイル7への通電により発生する磁界により支持される。すなわち、コイル7への通電制御により、支持力の調整を行うことが可能である。
【0017】
筒部31の内側のうち軸受34から離れた位置には、シャフト4が傾くことを抑えるための抑え部35が設けられている。抑え部35とシャフト4との間には隙間が形成されている。抑え部35は、シャフト4が径方向に大きく傾いたときに、シャフト4を支えるものである。なお、抑え部35は、潤滑性を有する樹脂材料により構成することが好ましい。
【0018】
シャフト4のうち軸受34とは反対側の端部には、上述したファン2が固定されている。これにより、ファン2はシャフト4と共に回転する。
【0019】
シャフト4のうち筒部31とファン2との間の部位には、ロータケース51が固定されている。ロータケース51は、シャフト4に固定された部位から径方向外側に延びる蓋部52と、その蓋部52の外縁から筒状に延びる外筒部53とを有している。
図1および
図2に示すように、外筒部53の内壁に、ロータ5を構成する磁石が固定されている。本実施形態のロータ5は、周方向に10の磁極を有する永久磁石により構成されている。なお、
図2では、ロータ5を構成する磁石のうち、N極またはS極の一方の磁極がステータ6側に向いている磁石に対し断面ではないが説明のためにハッチを付しており、N極またはS極の他方の磁極がステータ6側に向いている磁石を白抜きにしている。また、
図2では、センターピース3およびシャフト4などを省略している。ロータ5を構成する磁石は、ロータケース51、シャフト4およびファン2と共に、周方向に回転可能である。
【0020】
ロータ5およびシャフト4の回転角は、シャフト4に設けられた回転角検出用磁石41と、筒部31の内壁に設けられた磁束密度検出素子42により検出される。磁束密度検出素子42は、シャフト4に設けられた回転角検出用磁石41の磁界を検出し、その信号を駆動電源回路8と支持電源回路9に伝送する。駆動電源回路8は、磁束密度検出素子42から伝送される信号に基づいてロータ5およびシャフト4の回転角を検出し、ロータ5を回転駆動するための三相交流をコイル7に供給する。
【0021】
また、ロータ5およびシャフト4の傾きは、ロータケース51の径方向外側に設けられたギャップセンサ43により検出される。ギャップセンサ43は、ロータケース51とギャップセンサ43との隙間に応じた信号を支持電源回路9に伝送する。支持電源回路9は、ギャップセンサ43から伝送される信号に基づいてロータ5およびシャフト4の傾きを検出し、さらに磁束密度検出素子42から伝送される信号に基づいてロータ5およびシャフト4の回転角を検出し、シャフト4を支持するための三相交流をコイル7に供給する。
【0022】
ロータ5の径方向内側にステータ6が固定されている。ステータ6は、磁性材料から形成され、リング部61、およびそのリング部61から径方向外側に延びる複数のティース62を有している。リング部61は、センターピース3が有する筒部31の外壁に固定されている。複数のティース62は、リング部61から径方向外側に延び、リング部61の周方向に等間隔で配置されている。本実施形態のステータ6は、周方向に12の磁極を形成するティース62を有している。複数のティース62とティース62との間には、スロット63が形成されている。各スロット63には、コイル7が配置されている。複数のコイル7は、それぞれが対応するティース62に巻かれている。
図2では、各ティース62に巻かれたコイル7に対し、所定の位置から周方向に順にC1〜C12の符号を付している。以下の説明において、適宜、各コイル7をコイルC1〜C12と呼ぶことがある。
【0023】
本実施形態では、ステータ6の周方向に並ぶ複数のティース62のいずれにも、1つの磁極を形成するティース62に対し、1つのコイル7が巻かれている。すなわち、複数のティース62のいずれにも、1つの磁極を形成するティース62に対し、同じ数のコイル7が巻かれているといえる。なお、
図2では、コイル7の1巻のみを模式的に記載しているが、いずれのコイル7も複数回巻かれているものである。
【0024】
図3は、第1実施形態にかかる回転電機1のコイル配線の等価回路を示したものである。
図3に示すコイルに付したC1〜C12の符号は、
図2に示した12極のティース62に巻かれているコイルC1〜C12に対応したものであることを示している。例えば、
図3の紙面上方に記載されているコイルC6とコイルC12は、
図2に示すようにロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、コイルC1とコイルC7も、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。
【0025】
図3に示すように、コイルC1、C6、C7、C12はU相コイルを構成している。コイルC2、C3、C8、C9はV相コイルを構成している。コイルC4、C5、C10、C11はW相コイルを構成している。U相コイルC1、C6、C7、C12、V相コイルC2、C3、C8、C9、およびW相コイルC4、C5、C10、C11は、Y結線を構成している。U相、V相、W相を構成するコイルC1〜C12には、駆動電源回路8と支持電源回路9から電流が供給される。
【0026】
ここで、各相を構成するコイルのうち、駆動電源回路8側の端子UD、VD、WDから他のコイルを介することなく電気的に接続されるコイルを駆動電源側コイル71、72と称する。また、支持電源回路9側の端子US、VS、WSから他のコイルを介することなく電気的に接続されるコイルを支持電源側コイル73と称する。そして、中性点に電気的に接続されるコイルを中性点側コイル74と称する。
【0027】
なお、駆動電源側コイル71、72、支持電源側コイル73、中性点側コイル74は、回路上の配置に応じた呼称であり、コイルの巻数などはいずれも実質的に同一である。
【0028】
U相を構成するコイルC1、C6、C7、C12の配線方法について、具体的に説明する。複数の駆動電源側コイルC12、C6は、駆動電源回路8側の端子UDから枝分かれした配線により電気的に並列接続されている。複数の駆動電源側コイルC12、C6のうち駆動電源回路8とは反対側の部位から延びる配線同士は、接続部75によって統合されている。支持電源側コイルC1は、その接続部75と支持電源回路9側の端子USとの間に電気的に接続されている。中性点側コイルC7は、その接続部75と中性点Nとの間に電気的に接続されている。
【0029】
V相を構成するコイルC2、C3、C8、C9と、W相を構成するコイルC4、C5、C10、C11も同様の配線方法で接続され、複数の駆動電源側コイル71、72、接続部、支持電源側コイル73および中性点側コイル74として構成されている。
【0030】
駆動電源回路8は、端子UD、端子VD、端子WDに電流を供給する。一方、支持電源回路9は、端子US、端子VS、端子WSに電流を供給する。ここで、駆動電源回路8から所定の相に電流を供給するとき、その2分の1の電流をその所定の相に接続する支持電源回路9に引き込むように制御する。すなわち、駆動電源回路8から端子UDに供給するロータ5の回転駆動に必要な電流が2・I
UDであり、支持電源回路9から端子USに供給する軸支持に必要な電流がI
USであった場合、駆動電源回路8から端子UDに供給する電流は2・I
UDであり、支持電源回路9から端子USに供給する電流はI
US−I
UDとなる。
【0031】
なお、駆動電源回路8は三相交流を供給するものであるので、所定時刻において駆動電源回路8から端子UD、端子VD、端子WDのそれぞれに供給する電流の和は0である。また、支持電源回路9も三相交流を供給するものであるので、所定時刻において支持電源回路9から端子US、端子VS、端子WSのそれぞれに供給する電流の和は0である。
【0032】
これにより、駆動電源回路8から端子UDに供給される回転駆動用の電流は、駆動電源側コイルC6と駆動電源側コイルC12に流れた後に接続部75で統合され、その接続部75から電流の一部が分岐して支持電源側コイルC1→端子US→支持電源回路9に流れる。また、接続部75から分岐した電流の他の一部が中性点側コイルC7→中性点N→他の相のコイルに流れる。
【0033】
また、支持電源回路9から端子USに供給される軸支持用の電流は、支持電源側コイルC1→中性点側コイルC7→中性点N→他の相のコイルに流れる。このとき、駆動電源回路8は、端子UDに供給する電流値が2・I
UDとなるように制御している。そのため、接続部75に流れる電流も2・I
UDである。したがって、支持電源回路9から供給される軸支持用の電流は、接続部75から駆動電源側コイルC6、C12に流れることなく、その全てが支持電源側コイルC1と中性点側コイルC7に流れた後、中性点Nを経由して他の相のコイルに流れる。したがって、駆動電源側コイルC6、C12等には、駆動電源回路8から供給される回転駆動用の電流が流れるが、支持電源回路9から供給される軸支持用の電流は流れない。
【0034】
図2に示すように、U相を構成する支持電源側コイルC1と中性点側コイルC7とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、V相を構成する支持電源側コイルC9と中性点側コイルC3とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、W相を構成する支持電源側コイルC5と中性点側コイルC11とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。そのため、各相を構成するそれぞれのコイル7において、支持電源側コイル73で発生する誘起電圧と中性点側コイル74で発生する誘起電圧とが打ち消しあうので、支持電源回路9に対し、誘起電圧が発生しない構成となる。さらに、ロータ5が10極の場合、回転軸55を挟んで対向するロータ5の磁極は異なる磁極となる。そのため、支持電源回路9から電流が供給されるとき、支持電源側コイルC1が巻かれたティース62の径外側に発生する磁極と、中性点側コイルC7が巻かれたティース62の径外側に発生する磁極とは同じ磁極とすることが好ましい。これにより、支持電源側コイルC1と中性点側コイルC7うちの一方のコイルが巻かれたティース62がロータ5と反発し、他方のコイルが巻かれたティース62がロータ5に吸引される。
【0035】
図4は、回転電機1に外部からトルクを印加したときに駆動電源回路8側の端子UD、VD、WDそれぞれに発生する誘起電圧の波形である。駆動電源回路8側の端子UD、VD、WDそれぞれに発生する誘起電圧の波形は三相交流波形になっている。したがって、駆動電源回路8側の端子UD、VD、WDそれぞれに回転駆動用の三相交流を供給すれば、その電流によってコイルに発生する回転磁界によりロータ5が回転駆動する。
【0036】
また、
図5は、回転電機1に外部からトルクを印加したときに支持電源回路9側の端子US、VS、WSそれぞれに発生する誘起電圧の波形である。支持電源回路9側の端子US、VS、WSそれぞれに発生する誘起電圧はいずれも0になっている。したがって、支持電源回路9側の端子US、VS、WSそれぞれに軸支持用の三相交流を供給しても、その電流によってコイルに発生する磁界は回転電機1のトルクに影響を与えない。
【0037】
続いて、支持電源回路9による電流制御について、
図6を参照して説明する。
【0038】
支持電源回路9は、軸支持制御部91と電流制御部92とを備えている。
【0039】
上述したように、ロータ5およびシャフト4の傾きは、ギャップセンサ43により検出される。
図6では、ロータ5の目標回転軸をZ軸とした三次元直交座標系においてX軸側への傾きがギャップセンサ43Xにより検出され、Y軸側への傾きがギャップセンサ43Yにより検出されるものとしている。2つのギャップセンサ43X、43Yから出力された信号x、yは、減算部93、94伝送される。減算部93、94では、目標とされるギャップ量X
*、Y
*と、ギャップセンサ43X、43Yから出力された信号x、yとの差である軸ずれ量が検出され、その軸ずれ量が軸支持制御部91が有するPID(Proportional-Integral-Differential)制御部95に入力される。PID制御部95は、その軸ずれ量に対し、PID制御を行い、振動抑制力指令値Ix
*、Iy
*を生成し、それを変調部96に出力する。また、変調部96には、上述した磁束密度検出素子42からロータ5の回転角に相当する信号θが入力される。変調部96は、振動抑制力指令値Ix
*、Iy
*と、ロータ5の回転角に相当する信号θとに基づいて変調を行い、二相電流指令値ia
*、ib
*を演算する。この二相電流指令値ia
*、ib
*は、電流制御部92が有する減算部97、98に出力される。その減算部97、98では、電流制御部92のインバータ回路101から回転電機1のコイルに供給されている電流実測値ia、ibと、二相電流指令値ia
*、ib
*との電流値のずれ量が検出され、その電流値のずれ量がPI(Proportional-Integral)制御部99に入力される。PI制御部99は、二相電流指令値を生成して二相三相変換部100に出力する。二相三相変換部100は、二相電流指令値に相当する三相交流電流を生成するための三相交流指令値Vu
*、Vv
*、Vw
*を演算し、それをインバータ回路101に出力する。インバータ回路101は、車両のバッテリなどから供給される直流電流を三相交流指令値Vu
*、Vv
*、Vw
*に基づく三相交流電流iu、iv、iwに変換し、回転電機1のコイルに供給する。これにより、支持電源回路9は、ロータ5の回転角に応じた軸支持を行い、その軸支持力を可変することが可能である。したがって、回転電機1は、支持電源回路9からコイル7への通電制御により、回転電機1およびその回転電機1が設置される部材の固有振動数と、ロータ5およびシャフト4の振動とが一致したときに生じる共振を抑え、静粛性を高めることが可能である。
【0040】
以上説明したように、第1実施形態の回転電気は、次の作用効果を奏する。
【0041】
(1)第1実施形態では、U相コイル、V相コイルおよびW相コイルはいずれも、複数の駆動電源側コイル71、72と、接続部75と、支持電源側コイル73と、中性点側コイル74とを有している。複数の駆動電源側コイル71、72は、電気的に並列接続され、駆動電源回路8から電流が供給される。接続部75は、複数の駆動電源側コイル71、72のうち駆動電源回路8とは反対側の部位から延びる配線同士を接続する。支持電源側コイル73は、支持電源回路9と接続部75との間に電気的に接続され、支持電源回路9から電流が供給される。中性点側コイル74は、Y結線の中性点Nと接続部75との間に電気的に接続される。
【0042】
これによれば、駆動電源回路8と支持電源回路9から電流を供給することで、複数の駆動電源側コイル71、72、支持電源側コイル73および中性点側コイル74に発生する磁界によりロータ5を回転させることが可能であると共に、支持電源側コイル73および中性点側コイル74に発生する磁界により回転軸55の支持力を可変することが可能である。したがって、ロータ5を回転させるためのコイル7と、ロータ5の回転軸55を支持するためのコイル7とを共用することで、コイル7の数を少なくし、回転電機1の体格を小型化することができる。また、コイル7の数を少なくすることにより、ステータ6のティース62にコイル7を巻く工程を簡素化すると共に、製造コストを低減することができる。
【0043】
(2)第1実施形態では、ステータ6の周方向に並ぶ複数のティース62のいずれにも、1つの磁極を形成するティース62に対し、同じ数のコイル7が巻かれている。
【0044】
これによれば、ティース62の径方向の長さを小さくして、回転電機1の体格を小型化することができる。
【0045】
(3)第1実施形態では、ステータ6の周方向に並ぶ複数のティース62のいずれにも、1つの磁極を形成するティース62に対し、1つのコイル7が巻かれている。
【0046】
これによれば、ティース62の径方向の長さを小さくして、回転電機1の体格を小型化することができる。
【0047】
(4)第1実施形態では、支持電源側コイル73と中性点側コイル74とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。
【0048】
これによれば、支持電源側コイル73で発生する誘起電圧と中性点側コイル74で発生する誘起電圧とが打ち消しあうので、支持電源回路9に対し、誘起電圧が発生しない構成となる。そのため、支持電源回路9から供給する電流によって発生する磁界は、トルクに影響を与えることがない。したがって、この回転電機1は、トルク変動を抑制し、静粛性を高めることができる。
【0049】
(5)第1実施形態では、支持電源回路9から電流が供給されるとき、支持電源側コイル73または中性点側コイル74のうちの一方のコイルが巻かれたティース62がロータ5と反発し、他方のコイルが巻かれたティース62がロータ5に吸引される。
【0050】
これにより、支持電源回路9から供給する電流値に対し、ロータ5の軸を支持する力を大きくすることが可能である。
【0051】
(6)第1実施形態では、駆動電源回路8から所定の相に電流を供給するとき、その2分の1の電流をその所定の相に接続する支持電源回路9に引き込むように制御される。
【0052】
これによれば、駆動電源回路8から所定の相に供給された電流は、複数の駆動電源側コイル71、72から接続部75に流れた後、その約半分の電流が接続部75から支持電源側コイル73を経由してその所定の相の支持電源回路9に流れる。一方、残りの約半分の電流が接続部75から中性点側コイル74を経由して中性点Nに流れる。そのため、すべてのコイル7をロータ5の駆動力発生に使用することが可能となる。したがって、この回転電機1は、トルク変動を抑制し、静粛性を高めることができる。
【0053】
また、駆動電源回路8と支持電源回路9の両方から電流を流した場合、支持電源側コイル73では駆動電源回路8からの電流に対し、支持電源回路9からの電流を減算した差分電流に応じた磁界が発生し、中性点側コイル74では両電流が加算された電流に応じた磁界が発生する。支持電源回路9から中性点Nまでを見た時、支持電流側コイル73と中性点側コイル74それぞれの誘起電圧を打消し合う構成のため、ここでの両コイルの磁界変化は回転駆動には影響せず、支持力発生にのみ寄与するため、ロータ5の軸支持力を発生させることが可能である。したがって、この回転電機1は、ロータ5の回転機能と軸支持機能とを両立することができる。
【0054】
(7)第1実施形態では、ロータ5は、周方向に10の磁極を有し、ステータ6は、周方向に12の磁極を有するものである。
【0055】
これにより、ロータ5は、回転軸55を挟んで対向配置された磁石が異なる極性となる。そのため、支持電源回路9から電流が供給されるとき、支持電源側コイル73または中性点側コイル74のうちの一方のコイルが巻かれたティース62がロータ5と反発し、他方のコイルが巻かれたティース62がロータ5に吸引される構成とすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、ステータ6のティース62にコイルを巻く向きを変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0057】
図7に示すように、各ティース62に巻かれたコイル7のうち、コイルC1、2、5、6、9、10は、第1実施形態において
図2に示したコイルC1、2、5、6、9、10に対し、反対向きに電流が流れるように巻かれている。なお、第2実施形態のコイル配線の等価回路は、第1実施形態において
図3に示したものと同一である。
【0058】
第2実施形態も、第1実施形態と同一の作用効果を奏するものである。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1、第2実施形態に対して、ロータ5の磁極を8極にしたものである。
【0060】
図8および
図9に示すように、第3実施形態では、U相、V相、W相を構成するコイル7の配置が異なっている。なお、
図8においても、第1実施形態と同様に、各ティース62に巻かれたコイル7に対し、所定の位置から周方向に順にC1〜C12の符号を付している。また、
図9に示すコイルに付したC1〜C12の符号は、
図8に示した12極のティース62に巻かれているコイルC1〜C12に対応したものであることを示している。例えば、
図8に示すように、コイルC1とコイルC7は、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、コイルC4とコイルC10も、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。なお、コイルC4とコイルC10はいずれも、コイルC1とコイルC7に対し回転方向に90°ずれた位置に配置されている。
【0061】
図9に示すように、コイルC1、C4、C7、C10はU相コイルを構成している。コイルC2、C5、C8、C11はV相コイルを構成している。コイルC3、C6、C9、C12はW相コイルを構成している。U相コイルC1、C4、C7、C10、V相コイルC2、C5、C8、C11、およびW相コイルC3、C6、C9、C12は、Y結線を構成している。U相、V相、W相を構成するコイルC1〜C12には、駆動電源回路8と支持電源回路9から電流が供給される。
【0062】
U相を構成するコイルC1、C4、C7、C10の配線方法について、具体的に説明する。複数の駆動電源側コイルC4、C10は、駆動電源回路8側の端子UDから枝分かれした配線により電気的に並列接続されている。複数の駆動電源側コイルC4、C10のうち駆動電源回路8とは反対側の部位から延びる配線同士は、接続部75によって統合されている。支持電源側コイルC1は、その接続部75と支持電源回路9側の端子USとの間に電気的に接続されている。中性点側コイルC7は、その接続部75と中性点Nとの間に電気的に接続されている。
【0063】
V相を構成するコイルC2、C5、C8、C11と、W相を構成するコイルC3、C6、C9、C12についても、複数の駆動電源側コイル71、72、接続部75、支持電源側コイル73および中性点側コイル74が同様の配線方法で接続されている。
【0064】
第3実施形態においても、駆動電源回路8から所定の相に電流を供給するとき、その2分の1の電流をその所定の相に接続する支持電源回路9に引き込むように制御される。すなわち、駆動電源回路8から供給するロータ5の回転駆動に必要な電流が2・I
UDであり、支持電源回路9から供給する軸支持に必要な電流がI
USであった場合、駆動電源回路8から供給する電流は2・I
UDであり、支持電源回路9から供給する電流はI
US−I
UDとなる。
【0065】
なお、駆動電源回路8は三相交流を供給するものであるので、所定時刻において駆動電源回路8から端子UD、端子VD、端子WDのそれぞれに供給する電流の和は0である。また、支持電源回路9も三相交流を供給するものであるので、所定時刻において支持電源回路9から端子US、端子VS、端子WSのそれぞれに供給する電流の和は0である。
【0066】
これにより、駆動電源回路8から端子UDに供給される回転駆動用の電流は、駆動電源側コイルC4と駆動電源側コイルC10に流れた後に接続部75で統合され、その接続部75から電流の一部が分岐して支持電源側コイルC1→端子US→支持電源回路9に流れる。また、接続部75から分岐した電流の他の一部が中性点側コイルC7→中性点N→他の相のコイルに流れる。
【0067】
また、支持電源回路9から端子USに供給される軸支持用の電流は、支持電源側コイルC1→中性点側コイルC7→中性点N→他の相のコイルに流れる。このとき、駆動電源回路8は、端子UDに供給する電流値が2・I
UDとなるように制御している。そのため、接続部75に流れる電流も2・I
UDである。したがって、支持電源回路9から供給される軸支持用の電流は、接続部75から駆動電源側コイルC4、C10に流れることなく、その全てが支持電源側コイルC1と中性点側コイルC7に流れた後、中性点Nを経由して他の相のコイルに流れる。したがって、駆動電源側コイルC4、C10等には、駆動電源回路8から供給される回転駆動用の電流が流れるが、支持電源回路9から供給される軸支持用の電流は流れない。
【0068】
図8にしたように、U相を構成する支持電源側コイルC1と中性点側コイルC7とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、V相を構成する支持電源側コイルC5と中性点側コイルC11とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。また、W相を構成する支持電源側コイルC3と中性点側コイルC9とは、ロータ5の回転軸55を挟んで対向配置されている。そのため、支持電源側コイル73で発生する誘起電圧と中性点側コイル74で発生する誘起電圧とが打ち消しあうので、支持電源回路9に対し、誘起電圧が発生しない構成となる。
【0069】
ロータ5が8極の場合、回転軸55を挟んで対向するロータ5の磁極は同一の磁極となる。しかし、
図9の矢印で示したように、駆動電源回路8および支持電源回路9から電流が供給されるとき、支持電源側コイルC1では駆動電源回路8から供給される電流が流れる方向と、支持電源回路9から供給される電流が流れる方向とが逆向きになる。一方、中性点側コイルC7では駆動電源回路8から供給される電流が流れる方向と、支持電源回路9から供給される電流が流れる方向とが同じ向きになる。すなわち、駆動電源回路8と支持電源回路9の両方から電流を流した場合、支持電源側コイル73では駆動電源回路8からの電流に対し、支持電源回路9からの電流を減算した差分電流に応じた磁界が発生し、中性点側コイル74では両電流が加算された電流に応じた磁界が発生する。支持電源回路9から中性点Nまでを見た時、支持電流側コイル73と中性点側コイル74それぞれの誘起電圧を打消し合う構成のため、ここでの両コイルの磁界変化は回転駆動には影響せず、支持力発生にのみ寄与するため、ロータ5の軸支持力を発生させることが可能である。したがって、この回転電機1は、ロータ5の回転機能と軸支持機能とを両立することができる。
【0070】
以上説明したように、第3実施形態の回転電機1は、ロータ5が周方向に8の磁極を有し、ステータ6が周方向に12の磁極を有するものである。この構成においても、第3実施形態の回転電機1は、第1、第2実施形態と同一の作用効果を奏することが可能である。
【0071】
(比較例)
比較例の回転電機110について説明する。
図10〜
図12に示すように、比較例の回転電機110は、8極12スロットのインナーロータ型の電動機である。比較例の回転電機110は、12本のティース62に対し、18個のコイル7が巻かれている。そのため、ステータ6には、1個のコイル7が巻かれているティース62と、2個のコイル7が巻かれているティース62とが存在している。したがって、比較例の回転電機110は、1本のティース62に2個のコイル7を巻くものが存在するために、スロット63の容積が増大するとともに、すべてのティース62が径方向に長くなり、回転電機110の体格が大型化することとなる。また、コイル7の部品点数が多くなるので、ステータ6にコイル7を巻く工程が複雑化すると共に、製造コストが増大する。
【0072】
図11は、比較例のコイル配線の等価回路を示したものである。
【0073】
U相、V相、W相はそれぞれ6個のコイル7によって構成されている。1つの相を構成する6個のコイル7は、所定の3個のコイル7a,7b,7cが直列接続され、他の3個のコイル7d,7e,7fが直列接続されている。その所定の3個のコイル7a,7b,7cと、他の3個のコイル7d,7e,7fとは、駆動電源回路8側の端子UDから枝分かれした配線により電気的に並列接続されている。直列接続された一方の3個のコイル7a,7b,7cのうち駆動電源回路8とは反対側の部位から延びる配線は、支持電源回路9側の端子USに電気的に接続されている。直列接続された他方の3個のコイル7d,7e,7fのうち駆動電源回路8とは反対側の部位から延びる配線は、中性点Nに電気的に接続されている。
【0074】
なお、V相を構成する6個のコイル7と、W相を構成する6個のコイル7についても、U相を構成する6個のコイル7と同様の配線方法で接続されている。
【0075】
比較例のコイル配線は、第1〜第3実施形態で説明したコイル配線における接続部75に相当する構成を備えていない。そのため、比較例のコイル7に対し、駆動電源回路8と支持電源回路9の双方から電流を供給した場合、支持電源回路9側で直列接続された一方の3個のコイル7a,7b,7cに生じる磁界が小さいものとなり、中性点N側で直列接続された他方の3個のコイル7d,7e,7fに生じる磁界が大きいものとなる。したがって、比較例の回転電機110は、全体の半分のコイル7に生じる磁界が小さくなり、その他の半分のコイル7に生じる磁界が大きくため、トルク変動が大きくなり、静粛性が悪化することが懸念される。
【0076】
図12は、比較例のコイル7に対し、支持電源回路9からU相の端子USに電流を流したときの磁界を模式的に示したものである。なお、
図12では、所定のティース62に対し、U1、U2、U6〜8、U12の符号を付している。支持電源回路9からU相の端子USに電流を流すと、
図12の紙面右側の3つのティースU1、U2、U12にS磁極が発生し、紙面右側の3つのティースU6〜8にN磁極が発生する。
【0077】
しかしながら、
図12の紙面右側の3つのティースU1、U2、U12のうち、中央のティースU1に向き合うロータ5はN極であるため吸引力が発生するが、その両隣の2つのティースU2およびU12に向き合うロータ5はS極が支配的であるため反発力が発生する。そのため、中央のティースU1で発生する吸引力を弱めてしまう。
【0078】
一方、
図12の紙面左側の3つのティースU6〜8のうち、中央のティースU7に向き合うロータ5はN極であるため反発力が発生するが、その両隣の2つのティースU6およびU8に向き合うロータ5はS極が支配的であるため吸引力が発生する。そのため、中央のティースU7で発生する反発力を弱めてしまう。
【0079】
その結果、比較例の回転電機110は、各相を構成するコイル7が巻かれたステータ6の中で支持力の打ち消し合いが発生するので、支持電源回路9から供給した電流に対し、発生する支持力が小さいものとなる。
【0080】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0081】
(1)上記各実施形態では、回転電機1を電動機として使用するものについて説明した。これに対し、他の実施形態では、回転電機1は発電機として使用することも可能である。
【0082】
(2)上記各実施形態では、回転電機1は、空調装置が備えるファン2を回転させるものについて説明した。これに対し、他の実施形態では、回転電機1が回転駆動する対象機器はどのようなものであってもよい。
【0083】
(3)上記各実施形態では、回転電機1は、ロータ5の径方向内側にステータ6が設けられるアウターロータ型の回転電機1について説明した。これに対し、他の実施形態では、回転電機1は、ロータ5の径方向外側にステータ6が設けられるインナーロータ型としてもよい。
【0084】
(4)上記各実施形態では、回転電機1は、シャフト4の一方の端部を軸受34により回転可能に支持し、シャフト4のそれ以外の部位を磁気軸受により非接触支持するものとした。これに対し、他の実施形態では、回転電機1は、軸受34を廃止し、シャフト4の全体を磁気軸受により非接触支持するものとしてもよい。
【0085】
(5)上記各実施形態では、コイルC1〜12はそれぞれ1個として説明した。これに対し、他の実施形態では、コイルC1〜12はいずれも複数個として、1つの極を形成するティースに対しそれぞれ同じ数のコイルを巻いてもよい。