(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6627754
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法および製造システム
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20191223BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20191223BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20191223BHJP
B29K 105/24 20060101ALN20191223BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20191223BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29K21:00
B29K105:24
B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-517946(P2016-517946)
(86)(22)【出願日】2015年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2015063336
(87)【国際公開番号】WO2015170751
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年5月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-97991(P2014-97991)
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 孝充
(72)【発明者】
【氏名】松村 謙介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠之
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−058323(JP,A)
【文献】
特開平09−131805(JP,A)
【文献】
特開平05−162140(JP,A)
【文献】
特開2004−082590(JP,A)
【文献】
特開2002−178333(JP,A)
【文献】
特開2006−027174(JP,A)
【文献】
特開2005−349790(JP,A)
【文献】
特開2012−143908(JP,A)
【文献】
特開2011−110912(JP,A)
【文献】
特開平04−298331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリーンタイヤに筒状の加硫ブラダを挿入した状態にして、加硫装置に取付けられたモールド内で前記加硫ブラダを所定の加硫内圧で膨張させることにより、前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ所定温度で加熱して加硫する空気入りタイヤの製造方法において、
前記加硫ブラダの筒軸方向を上下方向にして前記加硫ブラダを備えたブラダ装置を前記モールドの外側の待機位置に配置し、位置決め装置に3つ以上の上下距離センサを設け、横倒し状態の前記グリーンタイヤの上側ビード部を前記位置決め装置のアーム部により保持してグリーンタイヤを吊持しながら、前記グリーンタイヤのタイヤ軸心位置と前記加硫ブラダの筒軸心位置とを一致させてグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入した状態にするとともに、3つ以上の前記上下距離センサにより検知された吊持されている前記グリーンタイヤまでの上下距離に基づいてこのグリーンタイヤの水平度を算出し、この算出結果に基づいて、吊持されているグリーンタイヤを予め設定された許容水平度の範囲内に維持して、かつ、吊持されている前記グリーンタイヤの側面方向から逐次検知された位置センサによるこのグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と、予め把握している待機位置に配置されているブラダ装置の加硫ブラダの筒軸方向中心位置とに基づいて、前記位置決め装置の上下移動を制御することにより、このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と加硫ブラダの筒軸方向中心位置とを一致させて位置合わせし、この位置合わせした状態で所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させた前記加硫ブラダをグリーンタイヤの内面に当接させてこの加硫ブラダによりグリーンタイヤを保持し、次いで、前記待機位置に配置しているブラダ装置とともにこのグリーンタイヤを前記加硫装置に移送して前記モールド内にセットし、次いで、前記加硫ブラダを前記所定のグリーンタイヤ保持内圧よりも大きな前記所定の加硫内圧で膨張させることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記グリーンタイヤを加硫した後、前記ブラダ装置とともに加硫したタイヤを前記モールドの外側の保管位置に移動させ、前記加硫ブラダを前記所定の加硫内圧よりも小さな所定の加硫タイヤ保持内圧で膨張させてこの加硫ブラダにより加硫したタイヤを保持した状態で冷却する請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
グリーンタイヤに挿入される筒状の加硫ブラダを備えたブラダ装置と、所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させた前記加硫ブラダに保持されるグリーンタイヤを前記ブラダ装置とともに加硫装置に移送する移送装置とを有し、この加硫装置に取り付けられたモールドの中で前記加硫ブラダを所定の加硫内圧で膨張させて前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ所定温度で加熱して加硫する空気入タイヤの製造システムであって、
前記グリーンタイヤを前記ブラダ装置の所定位置に位置決めする位置決め装置と、前記位置決め装置の動きを制御する制御装置とを有し、前記位置決め装置に3つ以上の上下距離センサが設けられ、前記制御装置に前記モールドの外側の待機位置に配置された前記ブラダ装置の加硫ブラダの筒軸心位置データおよび筒軸方向中心位置データが予め入力され、前記加硫ブラダの筒軸方向を上下方向にして前記ブラダ装置が前記待機位置に配置され、横倒し状態の前記グリーンタイヤの上側ビード部を保持するアーム部を前記位置決め装置に設け、この位置決め装置によってグリーンタイヤを吊持しながら、前記加硫ブラダの筒軸心位置データおよび筒軸方向中心位置データに基づいて、グリーンタイヤを保持している前記位置決め装置を移動させて、保持しているグリーンタイヤのタイヤ軸心位置と前記加硫ブラダの筒軸心位置とを一致させてグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入した状態にするとともに、3つ以上の前記上下距離センサにより検知された吊持されている前記グリーンタイヤまでの上下距離に基づいてこのグリーンタイヤの水平度を算出し、この算出結果に基づいて、吊持されているグリーンタイヤを予め設定された許容水平度の範囲内に維持して、かつ、この前記加硫ブラダを挿入した状態で吊持されている前記グリーンタイヤの側面方向から逐次このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置を検知する位置センサを設け、この位置センサにより検知されるグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置データと、前記制御装置に入力されている前記加硫ブラダの筒軸方向中心位置データとに基づいて、前記位置決め装置の上下移動を制御することにより、このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と加硫ブラダの筒軸方向中心位置とを一致させて位置合わせし、この位置合わせした状態で前記加硫ブラダを所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させてグリーンタイヤの内面に当接させてこのグリーンタイヤを保持し、このグリーンタイヤをブラダ装置とともに前記移送装置により前記加硫装置に移送して前記モールド内にセットし、前記加硫ブラダを前記所定のグリーンタイヤ保持内圧よりも大きな前記所定の加硫内圧で膨張させる構成にしたことを特徴とする空気入タイヤの製造システム。
【請求項4】
前記グリーンタイヤを加硫した後、前記ブラダ装置とともに加硫したタイヤを前記移送装置により前記モールドの外側の保管位置に移動させ、前記加硫ブラダを前記所定の加硫内圧よりも小さな所定の加硫タイヤ保持内圧で膨張させてこの加硫ブラダにより加硫したタイヤを保持した状態で冷却する構成にした請求項3に記載の空気入りタイヤの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法および製造システムに関し、さらに詳しくは、グリーンタイヤを加硫装置に取り付けられたモールドに対して精度よく設置することができる空気入りタイヤの製造方法および製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤの製造工程では、成形したグリーンタイヤを加硫装置に移送して、加硫装置に取り付けられたモールド内に設置する。モールド内ではグリーンタイヤに筒状の加硫ブラダを挿入した状態にして、モールド内で加硫ブラダを所定の加硫内圧で膨張させることにより、グリーンタイヤをモールドに押圧しつつ所定温度で加熱して加硫する。グリーンタイヤをモールド内に設置する際に、モールドに対してグリーンタイヤが予め設定されている位置に精度よく位置決めされていないと、加硫して製造された空気入りタイヤのユニフォミティに悪影響が生じ易くなる。
【0003】
しかしながら、加硫装置に取り付けられているモールド内では、スペース的な制約等があってグリーンタイヤを精度よく位置決めし、また、位置決めが適正か否かを確認することは容易ではない。一方、グリーンタイヤを成形した成形ドラムとともにグリーンタイヤを加硫装置に移送して加硫モールド内に設置し、成形ドラムに備わるブラダを用いてグリーンタイヤを加硫する方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の加硫方法では、例えば、グリーンタイヤを保持する成形ドラムの中心軸と、加硫装置に形成されるこの中心軸が挿入される保持穴との嵌め合いは、機械加工の問題なので高精度にすることは比較的容易である。
【0004】
したがって、グリーンタイヤを加硫装置に取り付けたモールド内に設置する前に、加硫装置の外側で、成形ドラムに備わるブラダに保持されるグリーンタイヤの成形ドラム(加硫ブラダ)に対する位置決め精度を向上させることで、モールドに対してグリーンタイヤを予め設定されている位置に精度よく位置決めすることが可能になる。そこで、本願発明者はこの点を種々検討することにより、モールドに対してグリーンタイヤを精度よく位置決めすることができる本願発明を創作するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2012−86487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、グリーンタイヤを加硫装置に取り付けられたモールドに対して精度よく設置することができる空気入りタイヤの製造方法および製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
グリーンタイヤに筒状の加硫ブラダを挿入した状態にして、加硫装置に取付けられたモールド内で前記加硫ブラダを所定の加硫内圧で膨張させることにより、前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ所定温度で加熱して加硫する空気入りタイヤの製造方法において、
前記加硫ブラダの筒軸方向を上下方向にして前記加硫ブラダを備えたブラダ装置を前記モールドの外側の待機位置に配置し、
位置決め装置に3つ以上の上下距離センサを設け、横倒し状態の前記グリーンタイヤの上側ビード部を前記位置決め装置のアーム部により保持してグリーンタイヤを吊持しながら、前記グリーンタイヤのタイヤ軸心位置と前記加硫ブラダの筒軸心位置とを一致させてグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入した状態にするとともに、
3つ以上の前記上下距離センサにより検知された吊持されている前記グリーンタイヤまでの上下距離に基づいてこのグリーンタイヤの水平度を算出し、この算出結果に基づいて、吊持されているグリーンタイヤを予め設定された許容水平度の範囲内に維持して、かつ、吊持されている前記グリーンタイヤの側面方向から逐次検知された位置センサによるこのグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と、予め把握している待機位置に配置されているブラダ装置の加硫ブラダの筒軸方向中心位置とに基づいて、前記位置決め装置の上下移動を制御することにより、このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と加硫ブラダの筒軸方向中心位置とを一致させて位置合わせし、この位置合わせした状態で所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させた前記加硫ブラダをグリーンタイヤの内面に当接させてこの加硫ブラダによりグリーンタイヤを保持し、次いで、前記待機位置に配置しているブラダ装置とともにこのグリーンタイヤを前記加硫装置に移送して前記モールド内にセットし、次いで、前記加硫ブラダを前記所定のグリーンタイヤ保持内圧よりも大きな前記所定の加硫内圧で膨張させることを特徴とする。
【0008】
本発明の空気入りタイヤの製造システムは、グリーンタイヤに挿入される筒状の加硫ブラダを備えたブラダ装置と、所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させた前記加硫ブラダに保持されるグリーンタイヤを前記ブラダ装置とともに加硫装置に移送する移送装置とを有し、この加硫装置に取り付けられたモールドの中で前記加硫ブラダを所定の加硫内圧で膨張させて前記グリーンタイヤを前記モールドに押圧しつつ所定温度で加熱して加硫する空気入タイヤの製造システムであって、前記グリーンタイヤを前記ブラダ装置の所定位置に位置決めする位置決め装置と、前記位置決め装置の動きを制御する制御装置とを有し、
前記位置決め装置に3つ以上の上下距離センサが設けられ、前記制御装置に前記モールドの外側の待機
位置に配置された前記ブラダ装置の加硫ブラダの筒軸心位置データおよび筒軸方向中心位置データが予め入力され、
前記加硫ブラダの筒軸方向を上下方向にして前記ブラダ装置が前記待機位置に配置され、横倒し状態の前記グリーンタイヤの上側ビード部を保持するアーム部を前記位置決め装置に設け、この位置決め装置によってグリーンタイヤを吊持しながら、前記加硫ブラダの筒軸心位置データおよび筒軸方向中心位置データに基づいて、グリーンタイヤを保持している前記位置決め装置を移動させて、保持しているグリーンタイヤのタイヤ軸心位置と前記加硫ブラダの筒軸心位置とを一致させてグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入した状態にするとともに、
3つ以上の前記上下距離センサにより検知された吊持されている前記グリーンタイヤまでの上下距離に基づいてこのグリーンタイヤの水平度を算出し、この算出結果に基づいて、吊持されているグリーンタイヤを予め設定された許容水平度の範囲内に維持して、かつ、この前記加硫ブラダを挿入した状態で吊持されている前記グリーンタイヤの側面方向から逐次このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置を検知する位置センサを設け、この位置センサにより検知されるグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置データと、前記制御装置に入力されている前記加硫ブラダの筒軸方向中心位置データとに基づいて、前記位置決め装置の上下移動を制御することにより、このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と加硫ブラダの筒軸方向中心位置とを一致させて位置合わせし、この位置合わせした状態で前記加硫ブラダを所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させてグリーンタイヤの内面に当接させてこのグリーンタイヤを保持し、このグリーンタイヤをブラダ装置とともに前記移送装置により前記加硫装置に移送して前記モールド内にセットし、前記加硫ブラダを前記所定のグリーンタイヤ保持内圧よりも大きな前記所定の加硫内圧で膨張させる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加硫装置に取付けられたモールドの外側の待機位置で、グリーンタイヤのタイヤ軸心位置とブラダ装置に備わる加硫ブラダの筒軸心位置とを一致させてグリーンタイヤに加硫ブラダを挿入した状態にするとともに、このグリーンタイヤのタイヤ幅方向中心位置と加硫ブラダの筒軸方向中心位置とを一致させて位置合わせし、この位置合わせした状態で所定のグリーンタイヤ保持内圧で膨張させた加硫ブラダをグリーンタイヤの内面に当接させてこの加硫ブラダによりグリーンタイヤを保持することにより、加硫ブラダに対してグリーンタイヤを精度よく位置決めする。グリーンタイヤを保持するブラダ装置と加硫装置との位置決めは、両者の部品の嵌め合い等によって予め高精度に設定されるので、待機位置に配置しているブラダ装置とともにこのグリーンタイヤを加硫装置に移送して前記モールド内にセットすることにより、モールドに対してグリーンタイヤを予め設定されている位置に精度よく位置決めすることが可能になる。次いで、加硫ブラダを所定のグリーンタイヤ保持内圧よりも大きな所定の加硫内圧で膨張させて加硫することで、ユニフォミティに優れた空気入りタイヤを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1はグリーンタイヤをブラダ装置の加硫ブラダに挿入する工程を例示する説明図である。
【
図2】
図2はグリーンタイヤと加硫ブラダとを位置決めする工程を例示する説明図である。
【
図3】
図3は位置合わせ後に加硫ブラダを膨張させてグリーンタイヤを保持する工程を例示する説明図である。
【
図4】
図4はモールド内にセットしたグリーンタイヤを加硫する工程を例示する説明図である。
【
図5】
図5は製造した空気入りタイヤを冷却する工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法および製造システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示する本発明の空気入りタイヤの製造システムは、グリーンタイヤGに挿入される筒状の加硫ブラダ2を備えたブラダ装置1と、所定のグリーンタイヤ保持内圧P1で膨張させた加硫ブラダ2に保持されるグリーンタイヤGをブラダ装置1とともに後述する加硫装置11(
図4参照)に移送する移送装置10(
図3参照)と、グリーンタイヤGをブラダ装置1の所定位置に位置決めする位置決め装置5と、位置決め装置5の動きを制御する制御装置9とを備えている。
【0013】
ブラダ装置1は、加硫ブラダ2の筒軸方向両端部が取り付けられている円盤状のサイド部3を備えている。さらに、一対のサイド部3を筒軸方向に貫通する中心軸4を備えている。
【0014】
この実施形態の位置決め装置5には、横倒し状態のグリーンタイヤGの上側ビード部Buを保持するアーム部6と3つの上下距離センサ7とが設けられている。上下距離センサ7は3つ以上であればよい。それぞれの上下距離センサ7は、横倒し状態のグリーンタイヤGの上側側面の周方向に間隔をあけた位置を検知対象位置とする。それぞれの検知対象位置は、周方向に等間隔で配置されていることが好ましい。さらに、横倒し状態のグリーンタイヤGの側面方向(トレッド面の外周側)から逐次、グリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCを検知する位置センサ8が設けられている。
【0015】
制御装置9にはモールド13の外側の待機
位置に配置されたブラダ装置1の加硫ブラダ2の筒軸心位置BZデータおよび筒軸方向中心位置BCデータが予め入力されている。加硫装置11に形成された保持穴12の位置データも入力されている。
【0016】
この制御装置9には、位置決め装置5の位置データが逐次入力されるので、この位置データに基づいて位置決め装置5に保持されたグリーンタイヤGの位置データ(タイヤ幅方向中心位置TCおよびタイヤ軸心位置TZのデータ)も逐次把握することが可能になっている。また、制御装置9には、上下距離センサ7による検知データ、位置センサ8による検知データが入力される。さらには、移送装置10に保持されたブラダ装置1(中心軸4)の位置データも入力され、移送装置10の動きも制御装置9によって制御される構成になっている。
【0017】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法の手順の一例を説明する。
【0018】
まず、
図1に例示するようにブラダ装置1を、後工程で使用する
図4に示すモールド13の外側の待機位置に配置する。この実施形態では、加硫ブラダ2の筒軸方向を上下方向にしてブラダ装置1を待機位置に配置している。具体的には、中心軸4の下端部をベース等に形成された穴に嵌合させて中心軸4を立設させた状態にしている。そして、横倒し状態のグリーンタイヤGの上側ビード部Buをアーム部6により保持してグリーンタイヤGを吊持する。
【0019】
次いで、
図2に例示するように位置決め装置5を作動させてグリーンタイヤGを移動させる。このとき、加硫ブラダ2の筒軸心位置BZデータおよび筒軸方向中心位置BCデータに基づいて、グリーンタイヤGを保持している位置決め装置5を移動させる。位置決め装置5の移動は、クレーン、ロボットアームまたはこれらに類似する機構によって行われる。ここで、保持しているグリーンタイヤGのタイヤ軸心位置TZと加硫ブラダ2の筒軸心位置BZとを一致させてグリーンタイヤGに加硫ブラダ2を挿入した状態にする。
【0020】
吊持したグリーンタイヤGに加硫ブラダ2を挿入した状態にする際には、グリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCと加硫ブラダ2の筒軸方向中心位置BCとを一致させて位置合わせする。この実施形態では、吊持されているグリーンタイヤGの側面方向(トレッド面の外周側)から位置センサ8によってグリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCを逐次検知する。この逐次検知したグリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCデータと、予め把握している待機位置に配置されているブラダ装置1の加硫ブラダ2の筒軸方向中心位置BCデータとに基づいて、位置決め装置5の上下移動を制御する。これにより、グリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCと加硫ブラダ2の筒軸方向中心位置BCとを一致させる。
【0021】
この実施形態では、さらに、位置決め装置5に設けられた3つの上下距離センサ7によって、吊持されているグリーンタイヤGまでの上下距離を検知する。検知した上下距離データに基づいてこのグリーンタイヤGの水平度を算出し、この算出結果に基づいて、吊持されているグリーンタイヤGを予め設定された許容水平度の範囲内(例えば、水平に対して±2°)に維持して、このグリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCと加硫ブラダの筒軸方向中心位置BCとを一致させる。
【0022】
次いで、この位置合わせした状態で、
図3に例示するように所定のグリーンタイヤ保持内圧P1で加硫ブラダ2を膨張させてグリーンタイヤGの内面に当接させてこの加硫ブラダ2によりグリーンタイヤGを保持する。この保持状態では、グリーンタイヤGのタイヤ幅方向中心位置TCと加硫ブラダ2の筒軸方向中心位置BCとが一致し、グリーンタイヤGのタイヤ軸心位置TZと加硫ブラダ2の筒軸心位置BZとが一致している。
【0023】
次いで、待機位置に配置しているブラダ装置1とともにこのグリーンタイヤGを移送装置10により加硫装置11に移送して、
図4に例示するようにグリーンタイヤGをモールド13内にセットする。この実施形態では移送装置10が中心軸4の上端部を保持してブラダ装置1を移送させている。移送装置10の移動動作は、クレーン、ロボットアームまたはこれらに類似する機構によって行われる。このセット作業は、制御装置9によって移送装置10の動きを制御して、ブラダ装置1の中心軸4の下端部を加硫装置11に形成されている保持穴12に挿入することで完了する。ブラダ装置1の中心軸4の下端部と保持穴12とは、両者の嵌め合いが予め高精度に設定されているので、中心軸4の下端部を保持穴12に挿入するだけでブラダ装置1はモールド13に対して精度よく位置決めされる。
【0024】
この加硫装置11ではモールド13を閉型して、加硫ブラダ2に加熱流体Hや加圧流体Pを供給して、グリーンタイヤ保持内圧P1よりも大きな所定の加硫内圧P2に上げて加硫ブラダ2をさらに膨張させる。膨張させた加硫ブラダ2でグリーンタイヤGをモールド13に押圧しつつ、所定温度で所定時間加熱して加硫することにより空気入りタイヤTが完成する。
【0025】
グリーンタイヤGを加硫した後はモールド13を開型して、移送装置10によってブラダ装置1とともに製造した空気入りタイヤTを加硫装置11から取り出してモールド13の外側の保管位置に移動させる。この保管位置では
図5に例示するように、加硫ブラダ2を所定の加硫内圧P2よりも小さな所定の加硫タイヤ保持内圧P3で膨張させて、加硫ブラダ2により空気入りタイヤTを保持した状態で冷却する。即ち、グリーンタイヤGの加硫後にブラダ装置1をポストキュアインフレータとして機能させる。
【0026】
上述したように本発明では、加硫装置11の外側の待機位置で、加硫ブラダ2(ブラダ装置1)に対してグリーンタイヤGを精度よく位置決めする。そして、グリーンタイヤGを保持するブラダ装置1と加硫装置11(モールド13)との位置決めは、予め高精度に設定されているで、ブラダ装置1とともにグリーンタイヤGを加硫装置11に移送してモールド13内にセットすれば、モールド13に対してグリーンタイヤGを予め設定されている位置に精度よく位置決めすることが可能になる。そして、加硫ブラダ2をグリーンタイヤ保持内圧P1よりも大きな加硫内圧P2で膨張させて加硫することで、ユニフォミティに優れた空気入りタイヤTを製造することができる。
【0027】
また、グリーンタイヤGをブラダ装置1によって保持するので、加硫待ちのグリーンタイヤGの経時的な形状変形を防止するにも有益である。さらには、加硫装置11の外側で実質的にモールド13に対するグリーンタイヤGの位置決め作業を行なうことができるので、加硫工程に要する時間を短縮することができ、タイヤの生産性向上に大きく寄与する。
【0028】
本発明は乗用車用空気入りタイヤをはじめとして様々な種類の空気入りタイヤの製造に適用することができる。例えば、通常の空気入りタイヤに比してサイド部分が厚くなるランフラットタイヤは加硫時間等が長くなるので、生産性を向上させる必要がある。それ故、本発明を適用すると生産性の向上に大きな効果が期待できる。
【符号の説明】
【0029】
1 ブラダ装置
2 加硫ブラダ
3 サイド部
4 中心軸
5 位置決め装置
6 アーム部
7 上下距離センサ
8 位置センサ
9 制御装置
10 移送装置
11 加硫装置
12 保持穴
13 モールド
G グリーンタイヤ
T 空気入りタイヤ
Bu 上側ビード部