(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来公報記載の発光ダイオードでは凹部又は凸部によっては外部量子効率が向上できないことがあった。即ち、凹部又は凸部の形状や大きさを制御せずに粗面化を行った場合、生じた凹部または凸部がある程度大きくなると、成長したGaNの結晶性が低下してしまう。このため、GaN半導体層における発光効率(=内部量子効率)が下がり、外部量子効率がかえって低下する。また、無秩序に粗面化を行うだけでは、導波路内における光吸収の影響が大きいため、外部量子効率が十分なレベルに達しない。
【0010】
そこで、本発明の目的は改善された外部量子効率を安定に確保できるようにした半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体発光素子は、基板表面上に基板とは材質の異なる少なくとも2層の半導体層と発光領域とを積層構造に成膜し、発光領域で発生した光を上記上側半導体層又は基板から取り出すようにした半導体発光素子において、上記基板の表面部分には上記発光領域で発生した光を散乱又は回折させる少なくとも1つの凹部及び/又は凸部が形成され、該凹部及び/又は凸部が上記半導体層の欠陥を発生させない形状となっていることを特徴とする。尚、本件発明において「半導体層の結晶欠陥を発生させない」とは、基板に凹凸を形成することによる半導体層へのピット等のモホロジ異常の発生がなく、また、基板に凹凸を形成することによる半導体層中の転位の増加が殆どないことをいう。
【0012】
本発明の特徴の1つは半導体層に欠陥が成長しないような形状の凹部及び/又は凸部を基板表面部分に設け、その上に半導体層を成長させるようにした点にある。光を散乱又は回折させる凹部又は凸部を、半導体層と電極の界面ではなく、半導体層と基板の界面に設けることは、発光領域(=活性層)の結晶性を良好にし、出力を増大させる効果がある。特に窒化ガリウム系化合物半導体系発光素子の場合、基板、n側窒化物半導体層、発光領域(=活性層)、p側窒化物半導体層の順に積層されるが、p側窒化物半導体層の膜厚はn側窒化物半導体層に比べて薄い。このため、凹部又は凸部を、半導体層と電極の界面ではなく、半導体層と基板の界面に設けることにより、凹凸による影響を厚いn側窒化物半導体層によって緩和して、発光領域(=活性層)の結晶性を良好に保つことができる。
【0013】
従来の平坦な基板を有する半導体発光素子の場合、半導体層中を横方向に伝搬している光は伝搬している間に半導体層や電極に一部が吸収され、半導体層から出るまでに減衰する。
【発明の効果】
【0014】
これに対し、本発明では従来の平坦な基板の場合には横方向に伝搬していた光が凹部及び/又は凸部において散乱又は回折され、上方の半導体層又は下方の基板から効率的に取り出される結果、外部量子効率を大幅に向上できる。即ち、第1に、凹凸による光の散乱・回折効果により、基板上方又は下方への光束が多くなり、発光素子の発光面を正面から観察したときの輝度(=正面輝度)を高めることができる。また、第2に、凹凸による光の散乱・回折効果により、半導体層中を横方向に伝播する光を減らし、伝播中の吸収ロスを低減して発光の総量を高めることができる。
【0015】
しかも、基板表面部分に凹部及び/又は凸部を形成しても、半導体層には凹凸による結晶欠陥が殆ど成長しないので、上述の高い外部量子効率を安定に確保できる。尚、本件発明において、凹部の内側や凸部の周囲は完全に半導体層によって埋められていることが好ましい。凹部の内側や凸部の周囲に空洞が存在すると、散乱又は回折の機能が阻害され、発光効率を低下させるからである。
【0016】
凹部と凸部とは何れか一方を基板表面部分に形成してもよく、両者を組合せて形成しても同様の作用効果を奏する。但し、凹部よりも凸部を形成する方が、半導体層によって周囲を空洞なく埋め易いため、好ましい。凹部又は凸部の周囲に空洞があると、凹凸による散乱又は回折機能が阻害され、出力が低下してしまう。
【0017】
半導体層に欠陥が成長しないような凹部及び/又は凸部の形状とは、具体的には半導体層の成長安定面に対してほぼ平行な面と交叉する直線を構成辺とする形状である。成長安定面に対してほぼ平行な面と交叉する直線とは、より具体的に言えば、基板上面から見て成長安定面と平行でない直線のことである。なお、成長安定面とは、成長させる材料において、他の面より成長速度の最も遅い面のことをさす。成長安定面は、一般に、成長の途中にファセット面として現れる。例えば、窒化ガリウム系化合物半導体の場合、A軸に平行な平面(特にM面)が成長安定面となる。従って、基板上面から見て、A軸に平行な平面に平行でない直線(=A軸に平行でない直線)を構成辺とする多角形に凹部又は凸部を形成する。凹部及び/又は凸部が半導体層の成長安定面に対してほぼ平行な直線を構成辺としていると、半導体層の成膜時にその部位で結晶の欠陥が発生し、これが内部量子効率を低下させ、結果的に外部量子効率を低下させる原因となるからである。
【0018】
より具体的には、凹部及び/又は凸部は、半導体層の成長安定面に対してほぼ平行な面に頂点を有しかつ半導体層の成長安定面に対してほぼ平行な面と交叉する直線を構成辺とする多角形、例えば三角形、平行四辺形又は六角形、好ましくは正三角形、菱形又は正六角形とすることができる。
尚、本件明細書において、凹部又は凸部を多角形にするとは、基板上面から観察した場合の平面形状を多角形にすることを指す。また、凹凸の平面形状は、幾何学的に完全な多角形である必要はなく、加工上の理由等から角が丸みを帯びていても良い。
【0019】
例えば、サファイア基板のC面上にGaN系半導体を成長させる場合、GaN系半導体のA軸を含む平面で囲まれた六角形状で島状に成長が始まり、その島同士が結合して均一な半導体層となる。そこで、GaN系半導体のA軸を構成辺とする正六角形を想定し、その正六角形の中心と頂点を結ぶ線分に直交する直線を構成辺とする多角形(例えば、三角形、六角形など)に凹部又は凸部を形成する。このように凹凸を形成したサファイア基板の上には、平坦で結晶性に優れたGaN系半導体を成長させることができる。
【0020】
また、凹部及び/又は凸部は1つでもよいが、その形状を繰り返したパターンに形成すると、光の散乱又は回折の効率がアップし、外部量子効率をさらに向上できる。尚、本件発明では、凹部及び/又は凸部を基板上に繰り返し設けた場合であっても、凹部又は凸部による局所的な結晶欠陥を抑制するように半導体層を成長させることにより、基板の全面を発光面とすることができる。
【0021】
本発明は基板表面部分に凹部及び/又は凸部を形成して光を散乱又は回折させるようにした点に特徴があり、発光素子の基板及び半導体の材料自体はどのような材料であってもよく、例えば半導体層がIII −V 族系半導体、具体的にはGaN系半導体である半導体発光素子に適用することができる。GaN系の半導体層の成長安定面は、六方晶結晶のM面{1−100}である。ここで{1−100}は(1−100)、(01−10)、(−1010)のすべてを表している。M面は、A軸に平行な平面の一つである。尚、成長条件によっては、GaN系半導体のA軸を含む他の平面(=M面以外の平面)が成長安定面になる場合もある。
【0022】
また、基板にはサファイア基板、SiC基板又はスピネル基板を用いることができる。例えば、上記基板には、C面(0001)を主面とするサファイア基板を用いることができる。この場合、GaN系の半導体層の成長安定面であるM面は、サファイア基板のA面{11−20}に平行な面である。ここでA面{11−20}は(11−20)、(1−210)、(−2110)のすべてを表している。
【0023】
凹部の深さ又は凸部の段差は50Å以上で,基板上に成長される半導体層の厚さ以下の寸法であるのが重要である。少なくとも発光波長(例えば、AlGaInN系の発光層の場合、206nm〜632nm)をλとしたとき、λ/4以上の深さ又は段差がないと、十分に光を散乱又は回折することができない一方、凹部の深さ又は凸部の段差が基板上に成長される半導体層の厚さを越える寸法の場合には、電流が積層構造内の横方向に流れにくくなり、発光効率が低下するからである。従って、半導体層の表面が凹状及び/又は凸状をなしてもよい。尚、十分に光を散乱又は回折させるためにはλ/4以上の深さ又は段差であることが好ましいが、λ/4n(nは半導体層の屈折率)以上の深さ又は段差であれば散乱又は回折の効果を得ることができる。
【0024】
また、凹部及び/又は凸部の大きさ(すなわち、凹部及び/又は凸部の構成辺となる一辺の長さ)、及び相互の間隔は、半導体中における発光波長をλ(380nm〜460nm)としたとき、少なくともλ/4以上の大きさであることが重要である。少なくともλ/4以上の大きさがないと、十分に光を散乱又は回折することができないからである。尚、十分に光を散乱又は回折させるためには、凹部又は凸部の大きさ及び相互の間隔がλ/4以上であることが好ましいが、λ/4n(nは半導体層の屈折率)以上の大きさ及び相互の間隔があれば散乱又は回折の効果を得ることができる。製造上は凹部又は凸部の大きさ及び相互の間隔は100μm以下とするのがよい。さらに20μm以下とすることで、散乱面が増え、好ましい。
【0025】
また、一般に半導体層の総膜厚は30μm以下であるため、散乱又は回折により全反射の回数を有効に減少させる観点からは凹凸のピッチが50μm以下であることが好ましい。さらに、GaN層の結晶性(=ピット発生防止)の観点からは、凹凸のピッチが20μm以下であることが好ましい。より望ましくは、凹凸のピッチを10μm以下とすることにより、散乱又は回折の確率が高まり、出力を一層向上することができる。尚、凹凸のピッチとは、隣接する凹部同士又凸部同士の中心間距離のうち、最小の距離をいう。
【0026】
次に、凹凸の断面形状については、
図9に示すように、凸部であれば台形、凹部であれば逆台形であることが好ましい。このような断面形状とすることにより、光の散乱及び回折効率を高めることができる。尚、凹凸の断面形状は、幾何学的に完全な台形又は逆台形である必要はなく、加工上等の理由から角が丸みを帯びていても良い。凹凸側面のテーパ角θは、
図9に示すように、凸部であれば上面と側面のなす角をいい、凹部であれば底面と側面のなす角をいう。例えば、テーパ角θが90°の時に、凹凸の断面が方形となり、180°の時に、凹凸が全くない平らな状態となる。半導体層によって凹凸を埋めるためには、凹凸のテーパ角θが少なくとも90°以上であることが必要である。また、散乱又は回折による出力向上の観点からは、凹凸のテーパ角θが90°より大きいことが好ましく、望ましくは105°以上、より望ましくは115°以上とする。一方、凹凸のテーパ角θがあまり大き過ぎると、却って散乱又は回折の効率が低下し、また、半導体層のピットが発生し易くなる。そこで、テーパ角θは、好ましくは160°以下、より好ましくは150°以下、さらに好ましくは140°以下とする。
尚、凹凸側面が傾斜している場合、凹凸の大きさと相互の間隔は、基板最表面(=凸部であれば凸部の底面、凹部であれば基板の平坦面)における長さで定義されるものとする。
【0027】
また、本件発明に係る発光素子では、開口部を有する金属膜を形成してオーミック電極とすることが好ましい。即ち、本発明のように、凹凸を設けた基板上に、半導体層を形成し、その上に開口部を設けた全面電極を形成すると、両者の相乗的な効果によって光の取り出し効率は格段に向上する。特に、電極の開口部に、基板表面の凹凸の段差部が少なくとも1つ含まれるようにすることが好ましい。
【0028】
これは、次のような理由によると推定される。
まず第1に、凹凸基板を用いた発光素子の輝度を正面から観測すると、基板凹凸の段差部付近の輝度が、基板平坦部の輝度よりも高くなる。このため、基板凹凸の段差部上方に電極の開口部を設けることにより、出力が各段に向上する。
また、第2に、基板上に凹凸を設けた発光素子では、発光領域で発生した光のうち、本来は側方や下方に向かう光を凹部及び凸部において散乱又は回折することによって上方に取出すことができる。しかし、通常の透光性電極を全面に設けた構成では、散乱や回折を経て上方に達した光が透光性電極によって一部吸収されてしまい、光の強度が小さくなってしまう。そこで、凹凸を設けた基板上に、半導体層を形成する場合には、透光性電極に開口部を設ける、又は高反射率の開口部を有する非透光性電極を設けて一部半導体層が露出する部分を設けることで、散乱や回折を経て上方に達した光が外部に取り出されやすくなり、光の取出し効率が格段に向上する。
【0029】
また、窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体発光素子の場合、p型窒化物半導体層上に設けるp電極の周縁近傍が他の部分よりも強く光るという性質がある。このため、電極に開口部を設けることによって光の吸収を軽減すると共に、強く光る周縁部分が増すため、光取り出し効率が向上する。例えば、電極の開口の周長の合計をL、開口の内側を含むオーミック電極の占有面積をSとして、L/S≧0.024μm/μm
2であることが好ましい。これによって、強く光る電極周縁部の割合を増加させ、より一層発光出力を高めることができる。
【0030】
開口を形成するオーミック電極には、Ni、Pd、Co、Fe、Ti、Cu、Rh、Au、Ru、W、Zr、Mo、Ta、Pt、Ag及びこれらの酸化物、窒化物から選択した少なくとも1種を含む合金または多層膜を用いることができる。特に、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)の一種を含む合金または多層膜であることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2は本発明に係る半導体発光素子の好ましい実施形態を示す。図において、基板10にはA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)サファイア基板が用いられ、該サファイア基板10の表面部分には凹部20が繰り返しパターンで形成されている。
図2において、斜線で示される部分を残してエッチングされる。
【0033】
この凹部20はサファイア基板10に成長するGaN系半導体11の成長安定面(1−100)、(01−10)、(−1010)、すなわちM面に対して、ほぼ平行な面に頂点を有しかつ上記成長安定面に対してほぼ平行な面と交叉する直線を構成辺とする正三角形をなしている。即ち、
図3に示すように、凹部20を構成する正三角形は、基板上面から見てM面が交差する位置に頂点を有しており、正三角形の各構成辺はM面に対して30度又は90度で交叉している。さらに具体的には、
図3に示すように、凹部20を基板上部から見ると、凹部20の各構成辺は、GaN半導体11のM面を構成辺とする正六角形の中心と頂点を結ぶ線に直交している。尚、サファイア基板10の上面から観察すると、GaN半導体のM面はGaN系半導体のA軸と平行になる。
【0034】
また、凹部20の深さは約1μm、1辺の大きさaが10μmであり、凹部20と凹部20の間隔bはその対応する1辺の間隔が10μmとなっている。
【0035】
このサファイア基板10上にはn型GaN系半導体層11、その上にMQW発光領域12、さらにその上にp型AlGaN/p型GaN系半導体13が形成されている。
【0036】
本例の半導体発光素子を製造する場合、サファイア基板10上には
図4(a)に示されるようにエッチングマスクとなるSiO
2膜30を成膜する。
【0037】
次に、 1辺10μmの正三角形のフォトマスクを使用し、正三角形の一辺がオリフラと垂直になるようにフォトマスクをあわせ、正三角形の各辺をサファイアの(1−100)、(01−10)、(−1010)、すなわちM面にほぼ平行になるようし、
図4(b)、(c)に示されるようにSiO
2膜30とサファイア基板10をRIEで約1μmエッチングした後、
図4(d)に示されるようにSiO
2膜30を除去すると、サファイア基板10の表面部分には
図2に示される凹部20の繰り返しパターンが形成される。
【0038】
凹部20の繰り返しパターンのついたサファイア基板10上にn型GaN半導体層11、その上にMQW発光領域12、その上にp型AlGaN/p型GaN半導体層13を成長させる。
【0039】
サファイア基板10の格子に対し、GaNの格子は30度ずれて成長するので、サファイア基板10につけた凹部20の繰り返しパターンはGaNのA面(11−20)、(1−210)、(−2110)面にほぼ平行の辺を持ち、GaNの成長安定面(1−100)、(01−10)、(−1010)に頂点が在り、GaNの成長安定面(1−100)、(01−10)、(−1010)、すなわちM面に平行な直線のない多角形になる。
【0040】
このような形状に凹凸を形成することにより、平坦で結晶性に優れたGaNを成長させることができる。以下にその原理を説明する。尚、凹部でも凸部でも原理は同様であるため、凸部を例にして詳説する。
図5(a)及び(b)は、正三角形の凸部20を形成したサファイア基板10の上にGaNを成長させる途中過程におけるSEM写真であり、
図5(a)は、基板上面から観察した様子、
図5(b)は、基板斜め上方から観察した様子を示している。
図5(a)及び(b)に示すように、サファイア基板10の上にGaNを成長させると、凸部20の上面と、凸部20が形成されていない平坦面とからGaNの成長が進み、最後に凸部20の側面付近が埋まる。従って、基板上方から見てGaNの成長安定面と凸部20の側面が平行になっていると、凸部20の側面付近が埋まり難く、GaNの結晶性が低下してしまう。
【0041】
そこで、基板上方から見てGaNの成長安定面であるM面と交叉するように(=平行にならないように)正三角形の凸部20の構成辺を形成することが好ましく、さらに好ましくは、
図5(a)及び(b)に示すように、基板上方から見てGaNの成長安定面であるA軸を含む面を構成辺とする正六角形(=A軸を構成辺とする正六角形)の中心と頂点を結ぶ線に直交するように、正三角形の凸部20の構成辺を形成する。このように凸部20を形成することにより、凸部20の周囲を平坦に埋めて、結晶性の良好なGaNを得ることができる。
【0042】
これは、凸部20の上面から成長したGaNと、凸部20が形成されていない平坦面から成長したGaNとが接合する部分において、GaNの成長速度が高くなるためと推定される。即ち、
図5(b)に示すように、凸部20の上面からは、A軸を構成辺とする六角形の形状にGaNが成長しているが、凸部20の上面から成長したGaNと平坦面から成長したGaNとが接する凸部側面付近において、GaNの成長速度が高くなる。従って、凸部20の側面付近におけるGaNの成長が他の領域に追いつき、平坦なGaNが得られる。
【0043】
このことを
図6(a)〜(f)を用いて模式的に説明する。
図6(a)に示すように、サファイア基板10に凸部を形成して、その上にGaN11を成長させると、
図6(b)及び(c)に示すように、GaN11は、凸部の底面と、凸部が形成されていない平坦面から成長し、凸部の側面付近は成長が遅れる。しかし、
図6(d)及び(e)に示すように、凸部の上面から成長したGaN11と、平坦面から成長したGaN11とが出会うと、そこでGaN11の成長速度が速くなる。このため、成長の遅れていた凸部の側面付近におけるGaN11の成長が顕著に進む。そして、
図6(f)に示すように、平坦で結晶性に優れたGaN11が成長する。これに対し、基板上方から見てGaNの成長安定面と凸部20の側面が平行になっていると、凸部20の側面付近で成長速度が速くなることがないため、凸部20の側面付近が埋まり難く、GaNの結晶性が低下してしまう。
【0044】
その後、デバイスプロセスを行い、電極等を適宜形成し、LEDチップに仕上げる。
【0045】
n型GaN半導体層11及びp型AlGaN/p型GaN半導体層13からMQW発光領域12に正孔及び電子が注入され、再結合が行われると、光が発生する。この光はサファイア基板10又はp型AlGaN/p型GaN半導体層13から取り出される。
【0046】
従来の平坦な基板を有する半導体発光素子の場合、
図7(a)に示されるように、発光領域12からの光がp型半導体層13と電極との界面又は基板10表面に臨界角以上で入射すると、導波路内に捕捉されて横方向に伝搬していた。
【0047】
これに対し、本例の半導体発光素子ではp型半導体層13と電極との界面又は基板10表面に対して臨界角以上の光は、
図7(b)に示されるように、凹部21によって散乱又は回折され、臨界角よりも小さな角度でもってp型半導体層13と電極との界面又は基板10表面に対して入射し、取り出すことができる。
【0048】
p型半導体層13上のコンタクト電極が透光性電極の場合はFU(フェイスアップ)、反射電極の場合はFD(フェイスダウン)のどちらの場合にも効果がある。尚、反射電極であっても、電極に開口又は切込みが形成されている場合には、FU(フェイスアップ)に使用される。その場合、特に顕著な効果がある。
【0049】
図8は本発明に係る半導体発光素子の他の実施形態を示す。
図8(a)に示される実施形態では凹部20の段面を傾斜して形成している。また、
図8(b)に示される実施形態では基板10の表面部分に凹部20ではなく、凸部21を形成しており、この例では断面半円形状の凸部21を形成している。さらに、
図8(c)に示される実施形態ではn型半導体層11、発光領域12及びp型半導体層13が凹部20の影響を受けて凹状をなしている。
【0050】
図7(c)、(d)は、
図8(a) 及び(c) に示される実施形態における光の伝搬の例を示す。いずれにしても光が効率よく取り出せることが分かる。特に
図8(a)のように、半導体層の成長安定面に対してほぼ平行な面と交叉する直線(本件では、多角形の構成辺とも称している)を境界として凸部の表面及び凹部の表面とに連続している面(=凹部又は凸部の側面)を半導体の積層方向に対して傾斜して形成することで、光の散乱又は回折の効果は顕著に増し、光の取り出し効率は格段に向上する。この1つの要因としては、傾斜して設けることで、凹部の表面及び凸部の表面とに連続している面(=凹部又は凸部の側面)の表面積が増えることで、光の散乱又は回折の起こる回数が増えるからと考えられる。
【0051】
換言すれば、凹凸の断面形状については、
図9に示すように、凸部であれば台形、凹部であれば逆台形であることが好ましい。このような断面形状とすることにより、伝播する光が散乱及び回折を起こす確率が高まり、光の伝播時の吸収ロスを低減することができる。凹凸側面のテーパ角θは、
図9に示すように、凸部であれば上面と側面のなす角をいい、凹部であれば底面と側面のなす角をいう。例えば、テーパ角θが90°の時に、凹凸の断面が方形となり、180°の時に、凹凸が全くない平らな状態となる。
【0052】
半導体層によって凹凸を埋めるためには、凹凸のテーパ角θが少なくとも90°以上であることが必要である。また、散乱又は回折による出力向上の観点からは、凹凸のテーパ角θが90°より大きいことが好ましく、望ましくは105°以上、より望ましくは115°以上とする。一方、凹凸のテーパ角θがあまり大き過ぎると、却って散乱又は回折の効率が低下し、また、半導体層にピットが発生し易くなる。そこで、テーパ角θは、好ましくは160°以下、より好ましくは150°以下、さらに好ましくは140°以下とする。
【0053】
図10は、凹部側面のテーパ角とLED出力の関係をシミュレーションしたグラフである。尚、これは凸部側面のテーパ角と見ても同様の傾向がある。
図10のグラフの縦軸は、平坦な基板(=テーパ角θが180°)を用いた場合のLED出力を1とした場合の出力比を表しており、グラフの横軸は、凹部側面のテーパ角を表している。図示されるように、凹部側面のテーパ角(=凹部の底面と側面のなす角)を90度から180度の間で変化させることによって、LED出力が大きく変化する。
【0054】
図11は凹部20又は凸部21の他の形状の例を示す。図において、斜線で示す部分がエッチングせずに残す部分である。
【0055】
また、凹部20、又は凸部21を正六角形とする場合、
図12(a) に示されるサファイア基板10のオリフラA面に対し、
図12(c) に示される方向ではなく、
図12(b) に示される方向に正六角形を配置する。前述の通り、サファイア基板のC面上にGaNを成長させた場合、サファイア基板のA面とGaNのM面が平行になる。従って、
図12(b)のように凹凸の正六角形を配置することにより、基板上方から見て、凹凸の正六角形の各構成辺が、GaNの成長安定面であるM面のいずれかと直交するようになる。これは、別の表現をすれば、基板上方から見て、GaNのM面を構成辺とする正六角形(=A軸を構成辺とする正六角形)の中心と頂点を結ぶ線分に対して、凹凸の正六角形の各構成辺が直交することを意味している。
【0056】
また本発明は、半導体に欠陥が発生しない凹凸を設けた基板上に、窒化物半導体層などの通常の半導体層を形成し、さらに電極等を形成した素子であれば、その他の構成は特に限定されないが、さらにその他の構成を次のようにすることで顕著な効果を示す。
【0057】
(1)電極形状と材料
[1] 開口電極
半導体発光素子の表面には、半導体層上に電極を設ける必要があるが、p型窒化物半導体層のような、比較的比抵抗が高く、その層で電流拡散が行われにくい半導体層上には、例えば半導体層表面の全面に、透光性電極を形成することが一般的である。しかしながら、透光性電極−半導体層−基板によって構成される導波路内を光が伝播する際、反射光の「しみ出し」の影響により、半導体層だけでなく、透光性電極や基板によっても発光が吸収・減衰してしまう。特に、透光性電極は、その一般的な構成材料(例えば、Au/Ni等)の短波長域における光吸収率が高いため、発光の減衰への影響が大きい。
【0058】
そこで、本件発明に係る発光素子では、開口部を有する金属膜を形成して電極とすることが好ましい。特に、電極の開口部に、基板表面の凹凸の段差部が少なくとも1つ含まれるようにすることが好ましい。このように半導体層表面に形成する電極を、開口部を有する電極とすることで、開口部から光が外部に取り出され、また電極で吸収する光の割合が減少するため好ましい。開口部は、金属膜中に複数設けることが望ましく、また開口部の面積はできるだけ大きく設けることが光取り出し効率を向上するという点で好ましい。(このような電極には、好ましくは外部と発光素子を電気的に接続させるパッド電極を設ける。)
【0059】
また窒化物半導体発光素子であって、とくに窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体発光素子の場合、p型窒化物半導体層上には好ましくは全面に透光性を有する電極をp電極として設ける場合が多いが、透光性電極における光の吸収が大きく、p型窒化物半導体層上に設けるp電極の周縁近傍が他の部分よりも強く光るという性質がある。そこで、透光性電極に開口部を設けても良く、これによって光の吸収を軽減し、強く光る周縁部分が増すため、光取り出し効率が向上する。この場合、開口部の面積はできるだけ大きく設けることが光取り出し効率を向上するという点で好ましく、またp電極の周縁の部位の長さをできるだけ長く設けることで、光取り出し効率がさらに向上する。
【0060】
本発明のように、凹凸を設けた基板上に、半導体層を形成し、上述の開口部を設けた電極を形成すると、両者の相乗的な効果によって光の取り出し効率は格段に向上する。これは、次のような理由によると推定される。
まず第1に、凹凸基板を用いた発光素子の輝度を正面から観測すると、基板凹凸の段差部付近の輝度が、基板平坦部の輝度よりも高くなる。このため、基板凹凸の段差部上方に電極の開口部を設けることにより、出力が各段に向上する。
また、第2に、基板上に凹凸を設けた発光素子では、発光領域で発生した光のうち、本来は側方や下方に向かう光を凹部及び凸部において散乱又は回折することによって上方に取出すことができる。しかし、通常の透光性電極を全面に設けた構成では、散乱や回折を経て上方に達した光が透光性電極によって一部吸収されてしまい、光の強度が小さくなってしまう。そこで、凹凸を設けた基板上に、半導体層を形成する場合には、透光性電極に開口部を設ける、又は高反射率の開口部を有する非透光性電極を設けて一部半導体層が露出する部分を設けることで、散乱や回折を経て上方に達した光が外部に取り出されやすくなり、光の取出し効率が格段に向上する。
【0061】
[2] 開口電極の材料
上述のように、窒化物半導体発光素子であって、とくに窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体発光素子の場合、p型窒化物半導体層のほぼ全面に透光性を有する電極をp電極として設けるが、より好ましい形態として、p型窒化物半導体層のほぼ全面に、開口部を設けた電極を形成することで、光取り出し効率が向上する。このとき、電極として用いる材料は金属または2つ以上の金属からなる合金を用い、単層又は複数の層で形成することができる。この電極の材料には、少なくとも発光する波長に対して高反射率の金属材料を用いることで、電極で吸収する光の成分を減らし、外部への光の取り出し効率を向上させることができる。
【0062】
開口電極の好ましい材料としては、Ni、Pd、Co、Fe、Ti、Cu、Rh、Au、Ru、W、Zr、Mo、Ta、Pt、Ag及びこれらの酸化物、窒化物からなる群から選択される少なくとも一種を含む合金または多層膜があげられる。これらは、400℃以上の温度でアニールすることにより、p型半導体層と良好なオーミック接触を得ることができる。特に、Niの上にAuの多層膜が好ましい。開口電極の総膜厚としては50Å〜10000Åが好ましい。特に、透光性の電極として用いる場合は、50Å〜400Åが好ましい。また、非透光性電極とする場合は、1000Å〜5000Åが好ましい。
【0063】
とくに窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体発光素子では、高反射率の金属材料として、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、反射電極として用いる。
【0064】
特に、開口電極の材料を、特にRhとすることも好ましい。Rhを用いることで熱的に安定で、しかも吸収の少ない電極とすることができる。しかも、接触抵抗を低くすることができる。
【0065】
[3] 開口電極のサイズと形状
電極の開口部と基板表面の凹凸の大小関係は、特に限定されないが、1つの開口部内に少なくとも1以上の凹凸段差部が形成されていることが好ましい。これにより、凹凸により散乱・回折された光を有効に取り出すことができると同時に、発光の均一性が向上する。
【0066】
また、開口電極は、p型半導体層の表面まで貫通し、かつ周囲を電極によって囲まれた複数の開口部を有する電極であるが、最外周部で囲まれた部分の面積(=開口部内を含む電極の全面積)をSとし、開口部の内周長の総和をLとすると、L/S≧0.024μm/μm
2であることが好ましい。これにより、p型半導体層の表面から効率良く光を外部に放出させ、さらにVfの低い半導体発光素子とすることができる。
【0067】
複数の開口部は、各開口部がほぼ同じ形状であることが好ましく、これにより、開口部の形成が容易であるとともに、発光の面内分布が均一となる。また、複数の開口部は、ほぼ同じ面積であることが好ましく、これによっても発光の面内分布が均一となる。
【0068】
膜厚を厚くして開口部を設ける場合、その開口部の形状や大きさ等を規定することによって、光の取りだし効率を高くし、発光効率を向上させることができる。特に、開口部の内周長Lを規定することで、より効率的に光を放出することが可能となる。L/Sが小さくなる、即ち、開口電極の最外周部によって囲まれた面積Sに対して、開口部の内周長さの総和Lが小さくなると、p型半導体層側への出力が低下する。
【0069】
図13は、開口率が同じ、すなわち、開口部の総面積が同じで、内周長を変化させたときの電力変換効率を示すものである。開口部の面積が同じであることで、p型半導体層と開口電極との接触面積も同じであるので、Vf及び量子効率は同じであると考えられる。この図より、開口率は同じでも、開口部の内周長を変化させることで、さらに高出力とできることがわかる。そして、本件発明では、L/S≧0.024μm/μm
2を満たすような範囲とすることで、高出力の半導体発光素子とすることができる。上限は、特に定めていないが、実質的には1μm/μm
2よりも大きくなると、開口部一つの大きさが非常に小さくなりすぎて、実用的でなくなる。
【0070】
上述のように、p型半導体層側からの出力効率が、開口部の内周長によって大きく左右されるのは、電極とp型半導体層との境界において特に強く発光が観測されるためであり、その境界を多くする、すなわち内周長を長くすることで効率よく光を放出させることができる。境界をさらに多くするためには、開口部だけでなく、さらに、p側オーミック電極の最外周部を、直線ではなく屈折させた連続線によって半導体層の端部に沿うように設けることで、p側オーミック電極とp型半導体との境界を多くすることができるので、さらに出力を向上させることができる。
【0071】
上記のような複数の開口部は、ほぼ同じ形状となるように形成することで、複数の開口部を効率よく形成しやすくなる。さらに、面内分布も均一になりやすく、ムラのない発光を得ることができる。形状としては、方形、円形、三角形など、種々の形状を用いることができる。好ましくは、隣接する開口部と一定の距離間隔をあけて均一に分散させるように複数形成させることで、均一な発光が得られ易くなる。また、複数の開口部の面積をほぼ同じになるように形成することで、開口部が形成される位置によって、好ましい形状を選択することができる。
【0072】
図14(a)乃至(d)は、開口電極の考えられる形状を示す。
図14において、n側半導体層30の上に、p側半導体層32が形成され、その上にp側オーミック電極である開口電極34が形成され、その一部にp側パッド電極36が形成されている。また、p側半導体層32をエッチングして露出させたn側半導体層30の上に、n側パッド電極38が形成されている。開口電極34には、複数の円形開口部が配列されている。
図14(b)は、開口電極34の円形開口部の寸法が大きな場合の例である。
図14(c)及び(d)は、開口電極34とp側パッド電極36のみを抜き出したものである。
図14(c)に示すように、p側オーミック電極内に設ける開口部は、周囲が閉じていない切込み形状であっても良い。この場合、p側オーミック電極は、複数の線状電極を接合したような形状となる。開口部は、電流の通路の強いところに多くの電流が流れないよう形成することが好ましい。また、
図14(d)に示すように、n側パッド電極(図示せず)を中心として、同心円状に配列された複数の円弧状に開口部を設けても良い。このような開口形状とすることにより、発光の均一性を高めることができる。
【0073】
また、p側オーミック電極の端部断面形状は、
図15(a)のように垂直であっても良いが、
図15(b)に示すように、メサ形状(台形状)であることが好ましい。特に窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の場合、p側オーミック電極の周縁部の発光強度が高いという性質があるため、端部断面がメサ形状(台形状)であることにより、効率良く光を取り出すことができる。その場合、端部断面のもつテーパ角θは、30°≦θ<90°であることが好ましい。テーパ角が30°未満の場合、テーパ部分におけるp側オーミック電極の抵抗値が大きくなるため、電極周部が強く光るという性質を有効に利用しにくくなる。
【0074】
(2)半導体発光素子の形状
本発明は、基板表面上に基板とは材質の異なる少なくとも2層の半導体層と発光領域とを積層構造に成膜している。つまり、基板と半導体層の材質は異なる。ここで、基板として絶縁性の基板を用いる場合、例えばサファイア基板上に窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体層を形成する場合などにおいて、電極は基板に形成することはできず、同一面側にn電極とp電極の2つの電極を形成する必要がある。このとき、例えばn型半導体層、発光領域、p型半導体層の順で形成する窒化物半導体素子は、p型半導体層の表面の一部をn型半導体層の表面が露出するまでエッチングし、p型半導体層表面にp電極、露出したn型半導体層の表面にn電極を形成し、半導体層表面から見た図は
図16のように四角形状の半導体素子の2つの対向する頂点にそれぞれの電極を配置して形成する。
【0075】
この場合、半導体発光素子の側面から外部に出る光は、n型半導体層を露出するときに形成された側面において、n電極またはn電極と接続するワイヤーなどの外部接続端子によって、遮られてしまう。
【0076】
そこで、
図17に示すように、n型半導体層を露出する部位をp型半導体層の内部とし、p型半導体層の表面の内部においてn型半導体層を露出して設けることで、n型半導体層とp型半導体層の間に挟まれて発光する発光領域が半導体発光素子の外側の側面全面において設けられるので、外部への光取り出し効率は向上する。基板上にp型半導体層、発光領域、n型半導体層の順で積層する素子の場合は、n型半導体層の内部にp型半導体層の露出面を設けることで、同様の効果が得られる。
【0077】
また、
図17に示すように、一方の導電型の半導体層表面の内部をエッチングして他方の導電型の半導体層表面を露出して形成する場合、前者の半導体層の表面に、もしくは開口部を有する電極を形成する場合は、前者の半導体層及び開口部を有する電極の表面に、パッド電極から延伸した拡散電極を設けることで、前者半導体層の全面に均一に電流が流れるようになり、発光領域での発光がムラなく均一になり好ましい。さらにこの拡散電極は、半導体発光素子の外形の形状に沿って前者半導体層の内部に設けることで、さらに均一な発光となり好ましい。
【0078】
また、半導体発光素子の外形の形状としては、半導体層表面から見て、四角形状でも三角形状でもよく、その他多角形とすることができるが、エッチングによって露出する面及び露出した面に形成する電極を、半導体発光素子の外形を構成する頂点に向かって、一部延伸して形成することにより、電流が均一に流れやすくなり、発光領域での発光がムラなく均一になり好ましい。
【0079】
本発明の発光素子は、例えば窒化ガリウム系(少なくともガリウムと窒素を含む)の半導体発光素子の場合、電極まで形成した発光素子の表面にYAGを含んだ蛍光体を樹脂と混合させて形成することで、光取り出し効率の高い白色の発光素子を得ることができ、また適当な蛍光体を選択することで、種々の発光波長を持った光取り出し効率の高い発光素子を得ることができる。
【0080】
本発明で用いるp電極およびn電極とは、少なくとも半導体層に接して形成される電極であり、接する半導体層と良好なオーミック特性を示す材料が適宜選択されるものである。
【実施例1】
【0081】
基板としてA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。
【0082】
まずサファイア基板10上に
図4(a)に示されるようにエッチングマスクとなるSiO
2膜30を成膜する。
【0083】
次に1辺5μmの正三角形のフォトマスクを使用し、正三角形の1辺がオリフラと垂直となるようにフォトマスクをあわせ、正三角形の各辺をサファイアの(1−100)、(01−10)、(−1010)、すなわちM面にほぼ平行となるようにし、
図4(b)、(c)に示されるようにSiO
2膜30とサファイア基板10をRIEで3〜4μmエッチングした後、
図4(d)に示されるようにSiO
2膜30を除去すると、サファイア基板10の表面部分には
図11(b)に示される凸部20(斜線部がエッチングされていない領域)の繰り返しパターンが形成される。凸部の一辺の長さa=5μm、凸部と凸部の間隔b=2μmとした。凸部のピッチ(隣接する凸部同士の中心間の距離)は、6.3μmである。また、凸部側面の傾斜角は120°であった。
【0084】
次に凸部20の繰り返しパターンのついたサファイア基板10の上に、n型半導体層としてAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)の低温成長バッファ層を100Å、アンドープのGaNを3μm、SiドープのGaNを4μm、アンドープのGaNを3000Å積層し、続いて発光領域となる多重量子井戸の活性層として、(井戸層、障壁層)=(アンドープのInGaN、SiドープのGaN)をそれぞれの膜厚を(60Å、250Å)として井戸層が6層、障壁層が7層となるように交互に積層する。この場合、最後に積層する障壁層はアンドープのGaNとしてもよい。尚、低温成長バッファ層の上に形成する第1層をアンドープのGaNとすることにより、より均一に凸部20を埋めて、その上に形成する半導体層の結晶性を良好にすることができる。
【0085】
多重量子井戸の活性層を積層後、p型半導体層として、MgドープのAlGaNを200Å、アンドープのGaNを1000Å、MgドープのGaNを200Å積層する。p型半導体層として形成するアンドープのGaN層は、隣接する層からのMgの拡散によりp型を示す。
【0086】
次にn電極を形成するために、MgドープのGaNからp型半導体層と活性層及びn型半導体層の一部までをエッチングし、SiドープのGaN層を露出させる。
【0087】
次にp型半導体層の表面全面にNi/Auからなる透光性のp電極を、さらに透光性のp電極上において、n型半導体層の露出面と対向する位置にAuからなるpパッド電極を形成し、n型半導体層の露出面にW/Al/Wからなるn電極およびPt/Auからなるnパッド電極を形成する。
【0088】
最後にウエハを四角形状にチップ化し、350μm□の半導体チップを得る。これを反射鏡を備えたリードフレームに実装して、砲弾型のLEDを作製した。
【0089】
これによって得られるLEDは、順方向電流20mAにおいて、発光波長400nm、外部への発光出力が9.8mWであった。
【0090】
[比較例1]
比較例として、サファイア基板の表面に凹凸を設けないで、他の構成は実施例1と同様にして砲弾型LEDを形成したところ、順方向電流20mAにおいて、外部への発光出力が8.4mWであった。
【実施例2】
【0091】
基板としてA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。
基板の加工及びn型半導体層からp型半導体層までの積層は、実施例1と同様にする。
次にn電極を形成するために、MgドープのGaNからなるp型半導体層と活性層及びn型半導体層の一部までをエッチングし、SiドープのGaNからなるn型半導体層を露出させる。
【0092】
次に1辺5μmの正三角形からなる開口であって、
図16に示すような正三角形の開口が単位面積当たりで最も密に充填されるようなパターニングのフォトマスクを使用し、Ni/Auからなる透光性のp電極を、p型半導体層表面のほぼ全面に形成する。
【0093】
さらに透光性のp電極上において、n型半導体層の露出面と対向する位置にAuからなるpパッド電極を形成し、n型半導体層の露出面にTi/Alからなるn電極およびPt/Auからなるnパッド電極を形成する。
【0094】
最後に四角形状にウエハをチップ化し、半導体発光素子を得る。これを反射鏡を備えたリードフレームに実装して、砲弾型のLEDを作製する。
【0095】
これによって得られるLEDは、p電極の周縁近傍が他の部分よりも強く光るという性質から、実施例1よりも発光出力が向上する。
【実施例3】
【0096】
基板としてA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。
基板の加工及びn型半導体層からp型半導体層までの積層は、実施例1と同様にする。
【0097】
次にn電極を形成するために、MgドープのGaNからp型半導体層と活性層及びn型半導体層の一部までをエッチングし、SiドープのGaN層を露出させる。
【0098】
次に1辺7.7μmの正方形とし、6.3μmの間隔で配列し、開口率30%からなる開口であって、Rhからなるp電極を、p型半導体層表面のほぼ全面に形成する。
【0099】
さらにp電極上において、n型半導体層の露出面と対向する位置にPt/Auからなるpパッド電極を形成し、n型半導体層の露出面にW/Al/Wからなるn電極及びPt/Auからなるnパッド電極を形成する。
最後にウエハをチップ化し、半導体発光素子を得る。これを反射鏡を備えたリードフレームに実装して、砲弾型LEDを作製した。
【0100】
これによって得られる半導体発光素子は、p電極の周縁近傍が他の部分よりも強く光るいう性質を利用し、さらに電極に発光波長に対して高反射する材料を用いて電極での光の吸収成分を減少させたことから、実施例1や実施例2よりも発光出力が向上した。砲弾型LEDの発光出力は、13.2mWであった。
【実施例4】
【0101】
実施例3の発光素子において、p電極を、
図14(c)のようなストライプ状に形成する。こうしたストライプ電極構造を採用することによって、p側パッド電極から半導体層に供給される電流が面内に均一化され、発光効率が向上する。
p電極のストライプ隙間は、半導体層が露出する開口部として形成されるため、開口部を増加させることができ、その結果、光取り出し効率が向上する。このとき、半導体層が露出した複数のストライプ隙間に対応する開口部5の総面積Saと、半導体層102が露出していない電極部分の面積Sbとを合計した値をSとし、開口部の内周長の総和をLとして、L/S≧0.024μm/μm
2 が成立することが好ましい。
【実施例5】
【0102】
基板としてA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。
基板の加工及びn型半導体層からp型半導体層までの積層は、実施例1と同様にする。
【0103】
次にp型半導体層の表面の内部で、とくに中心部においてSiドープのGaN層が露出するまでエッチングする。このときのエッチングにより露出する面は、
図17に示すように、半導体発光素子の外形を構成する3つの頂点に向かって、一部延伸して形成する。
【0104】
次に1辺5μmの正三角形であって、正三角形が単位面積当たりで最も密に充填されるようなパターニングのフォトマスクを使用し、Rhからなるp電極104を、p型半導体層表面のほぼ全面に正三角形の形状で形成する。
【0105】
さらにp電極104上に、Pt/Auからなるpパッド電極兼p拡散電極106を形成する。このpパッド電極兼p拡散電極106は、
図17に示されるように、正三角形となる半導体発光素子の外形の形状に沿って前者半導体層の内部にパッド電極を延伸して設ける。この電極を設けることで、半導体層全面に電流が均一に流れやすくなるので、拡散電極として機能する。
【0106】
またn型半導体層の露出面にW/Al/Wからなるn電極及びPt/Auからなるnパッド電極103を形成する。
【0107】
最後に正三角形状にウエハをチップ化し、半導体発光素子を得る。この発光素子を上面から見ると
図17のようになる。
【0108】
これによって得られる発光素子は、p電極の周縁近傍が他の部分よりも強く光るいう性質を利用し、さらに電極に発光波長に対して高反射する材料を用いて電極での光の吸収成分を減少させた、さらには多重量子井戸構造の発光領域が半導体発光素子の外側の側面全面において設けていることから、発光出力が向上した。
【実施例6】
【0109】
実施例5で得られた半導体発光素子の上面及び側面に蛍光体としてイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光物質をベースとしたY
3Al
5O
12Y:Ce(YAG:Ce)が含有された透光性の樹脂を形成する。
これによって得られる半導体発光素子は、発光出力の高い白色光が発光された。
【実施例7】
【0110】
本実施例では、種々の凹凸平面形状について、凹凸形成の効果をチップとランプの両方で確認した。まず、基板としてA面(11−20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。
【0111】
次に、サファイア基板について、(i)〜(iv)の4種類の加工を行う。サファイア基板の表面への凹凸形成は実施例1と同様にして行う。
(i) サファイア基板の表面に、
図11(b)に示すような、正三角形の凸部を形成する。正三角形の凸部は、その一辺がサファイア基板のオリフラと直交するように配置し、頂点の向きが左右交互になるように配列する。正三角形の凸部の一辺を5μm、凸部同士の間隔を2μmとする。
(ii) サファイア基板の表面に、
図11(l)に示すような、菱形の凸部を形成する。菱形の凸部の一辺を4μm、凸部同士の間隔を2μmとする。
(iii) サファイア基板の表面に、
図11(m)に示すような、六角形の凸部を形成する。六角形の凸部の一辺を3μm、凸部同士の間隔を2μmとする。
(iv) サファイア基板の表面に凹凸を形成しない。
【0112】
次に4種類のサファイア基板10の上に、n型半導体層としてAl
xGa
1−xN(0≦x≦1)の低温成長バッファ層を100Å、アンドープのGaNを3μm、SiドープのGaNを4μm、アンドープのGaNを3000Å積層し、続いて発光領域となる多重量子井戸の活性層として、(井戸層、障壁層)=(アンドープのInGaN、SiドープのGaN)をそれぞれの膜厚を(60Å、250Å)として井戸層が6層、障壁層が7層となるように交互に積層する。この場合、最後に積層する障壁層はアンドープのGaNとしてもよい。尚、低温成長バッファ層の上に形成する第1層をアンドープのGaNとすることにより、より均一に凹部20を埋めて、その上に形成する半導体層の結晶性を良好にすることができる。
【0113】
多重量子井戸の活性層を積層後、p型半導体層として、MgドープのAlGaNを200Å、MgドープのGaNを200Å積層する。
【0114】
次にn電極を形成するために、MgドープのGaNからp型半導体層と活性層及びn型半導体層の一部までをエッチングし、SiドープのGaN層を露出させる。
【0115】
次にp型半導体層の表面全面にNi/Auからなる透光性のp電極を、60Å/70Åの膜厚で形成する。さらに透光性のp電極上において、n型半導体層の露出面と対向する位置にAuからなるpパッド電極を形成し、n型半導体層の露出面にW/Al/Wからなるn電極およびPt/Auからなるnパッド電極を形成する。
【0116】
ウエハの状態でプローバを用いてpパッド電極とnパッド電極の間に電流を流し、発光出力を調べると、表1の通りとなる。表1では、凹凸がない場合の発光出力を1として、発光出力の強度比を表示している。
【0117】
【表1】
表1に示すように、凸部の形状がいずれの場合であっても、平坦なサファイア基板を用いた場合に比べて、43%以上高い発光出力が得られる。このように、反射鏡を用いないチップ状態で正面輝度の評価を行うと、凹凸形成による発光出力の増大効果が顕著に現れる。
【0118】
次にウエハを四角形状にチップ化し、350μm□の半導体チップを得る。これを反射鏡を備えたリードフレームに実装して、砲弾型のLEDを作製した。
【0119】
作製したLEDのVfと20mAにおける発光出力を評価すると、表2のようになる。尚、LEDの発光波長460nmである。
【0120】
【表2】
表2に示すように、凸部の形状がいずれの場合であっても、平坦なサファイア基板を用いた場合に比べて、13%以上高い発光出力が得られる。特に、本実施例において、凸部の形状が六角形である場合に最も高い発光出力が得られる。
【実施例8】
【0121】
p電極をNi/Au電極から、Rh開口電極に変えた点を除いて、実施例7と同様にする。Rh電極の開口形状は、一辺7.7μmの正方形とし、6.3μmの間隔で配列し、開口率を30%とする。
【0122】
ウエハの状態でプローバを用いてpパッド電極とnパッド電極の間に電流を流し、発光出力を調べると、表3の通りとなる。表3では、凹凸がない場合の発光出力を1として、発光出力の強度比を表示している。
【0123】
【表3】
表3に示すように、凸部の形状がいずれの場合であっても、平坦なサファイア基板を用いた場合に比べて、54%以上高い発光出力が得られる。
【0124】
砲弾型LEDを作製し、Vfと20mAにおける発光出力を評価すると、表4のようになる。尚、LEDの発光波長460nmである。
【0125】
【表4】
表4に示すように、凸部の形状がいずれの場合であっても、平坦なサファイア基板を用いた場合に比べて、17%以上高い発光出力が得られる。特に、本実施例において、凸部の形状が六角形である場合に最も高い発光出力が得られる。
実施例7と実施例8の対比からわかるように、p電極を開口電極とすることにより、開口電極と凹凸基板が相乗的に作用して、凹凸形成の効果が一層顕著に現れる。