【実施例】
【0049】
<べにふうきのマウスに対する投与試験>
11週齢のBALB/c雌マウスを1週間の予備飼育し、その後、平均体重が等しくなるように、実施例1に係る「ベにふうき群」、比較例1に係る「やぶきた群」、対照例1に係る「Cont.PBS群」、対照例2に係る「Cont.vaccine群」の4群(それぞれ、n=10)に分けた。
【0050】
実施例1に係る「ベにふうき群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、1質量%べにふうき含有食を摂食させるマウスの群である。
【0051】
比較例1に係る「やぶきた群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、1質量%やぶきた含有食を摂食させるマウスの群である。
【0052】
対照例1に係る「Cont.PBS群」は、インフルエンザワクチンの代わりにPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を接種させ、かつ、普通食(AIN−93G食)を摂食させるマウスの群である。
【0053】
対照例2に係る「Cont.vaccine群」は、インフルエンザワクチンを接種させ、かつ、普通食(AIN−93G食)を摂食させるマウスの群である。
【0054】
上記4群に分けると同時に、それぞれの群に対して、普通食、やぶきた食、又はべにふうき食の摂食を開始した。なお、摂食は、それぞれの群のマウスの屠殺が行われる12時間前まで行い、4g/日の量で行った。摂食開始から2週間後に、インフルエンザワクチンヘマグルチニン(HA)相当1mg/200mL PBS、又はPBSをそれぞれ200mL皮下注射し、初回免疫を行った。
【0055】
初回免疫の2週間後に、追加免疫を行った。追加免疫の9日後にマウスの屠殺を行い、血清、気管支肺胞洗浄液(BALF;bronchoalveolar lavage fluid)を回収した。また、屠殺後のマウスから、脾臓、肺、パイエル板を摘出した。
【0056】
<IgA及びIgGについての評価>
ELISA法により、上記回収後の血清、気管支肺胞洗浄液のIgA抗体量及びIgG抗体量並びにIgA抗体価及びIgG抗体価を測定し、体液性免疫及び細胞性免疫に関与する細胞の数及び割合をフローサイトメーターにて測定した。その結果を
図1〜
図4に示す。
図1中、(a)は、血清中のIgG抗体量を示し、(b)は、血清中のIgA抗体量を示す。また、
図2中、(a)は、血清中のIgG抗体価を示し、(b)は、血清中のIgA抗体価を示す。
図3中、(a)は、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量を示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体量を示す。また、
図4中、(a)は気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価を示し、(b)は、気管支肺胞洗浄液中のIgA抗体価を示す。
【0057】
また、摘出後のそれぞれの群の肺、パイエル板中のIgA産生細胞の数を、抗IgA抗体による染色を行いフローサイトメーターにより測定した。その結果を
図5に示す。
図5中、(a)は、肺中のIgA産生細胞の数を示し、(b)は、パイエル板中のIgA産生細胞の数を示す。
【0058】
図1、2に示すように、血清中のIgG抗体量及びIgA抗体量は、対照例2、比較例1、実施例1のいずれにおいても、差は見られなかった。
【0059】
図3(a)に示すように、気管支肺胞洗浄液中の実施例1のIgGの抗体量は対照例2の抗体量と比較して、有意に減少していた。また、
図4(a)に示すように、実施例1のIgG抗体価は、実施例1、比較例1、対照例2の間で差は見られなかった。他方、
図3(b)に示すように、実施例1のIgA抗体量は、増加傾向にあり、
図4(b)に示すように、実施例1においてはIgAの割合が有意に増加しており、実施例1においては、対照例2、比較例1と比較して、抗原(HA)に特異的なIgAが全体的に著しく増加していることがわかった。
【0060】
図5(a)に示すように、肺中のIgA産生細胞の数は、実施例1の方が比較例1より有意に多かった。また、
図5(b)に示すように、パイエル板中のIgA産生細胞の数は、実施例1と対照例2の間で有意な差が見られた。
【0061】
以上に示したとおり、実施例1に係る「べにふうき群」は、比較例1に係る「やぶきた群」より、特に、気管支肺胞洗浄液中において、インフルエンザワクチンヘマグルチニン(HA)に対するIgAの抗体価が増加した。ウイルスに感染する際は、気道から感染するため、気管支において、HAに対するIgAの抗体価が増えたことは、ウイルスワクチンの効果が増強したことを意味する。すなわち、これらのことから、べにふうきは、やぶきたと比較して、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生を促進し、優れたウイルスワクチンの増強効果を有することわかった。
【0062】
なお、
図3(a)に示すように、実施例1の気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体量は、対照例2と比較して有意に減少したにもかかわらず、
図4(a)に示すように、気管支肺胞洗浄液中のIgG抗体価は対照例2と差がなかった。このことは、実施例1の気管支肺胞洗浄液中ではIgGの力価が増えていることを示し、べにふうきは、感染後の免疫向上にも有効であることがわかった。
【0063】
<TLR−7の発現量の評価>
摘出後のそれぞれの群の脾臓中及び肺中のTLR−7の発現量の評価を行った。TLR−7の発現量は、フローサイトメーターにより測定した。その結果を、
図6に示す。
図6中、(a)は、脾臓のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。
図6中、(b)は、脾臓のリンパ球のうち、CD11c
+細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。
図6中、(c)は、肺のリンパ球についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。
図6中、(d)は、肺のリンパ球のうち、CD11c
+細胞についてのTLR−7の発現量を示したグラフである。
【0064】
図6(a)より、脾臓のリンパ球において、実施例1は、対照例2より有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。他方、比較例1は、脾臓のリンパ球において、TLR−7の発現量が、対照例2に対して有意差がなかった。また、
図6の(c)より、肺中のリンパ球において、実施例1は、比較例1及び対照例2より、有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。
【0065】
図6(b)より、脾臓のリンパ球のうち、CD11c
+細胞において、実施例1は、対照例2及び比較例1より有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。また、比較例1は、TLR−7の発現量が、対照例2との有意差がなかった。また、
図6の(d)より、肺中のリンパ球のうち、CD11c
+細胞において、実施例1は、対照例1より、有意にTLR−7の発現が促進したことが確認された。他方、比較例1は、肺中のリンパ球のうち、CD11c
+細胞において、TLR−7の発現量が対照例1に対して有意差がなかった。
【0066】
この結果より、「べにふうき」は、「やぶきた」より、CD11c
+細胞である樹状細胞において、TLR−7の発現量を促進させることがわかった。TLR−7は、ウイルスに対するセンサーの役割を担う受容体である。
【0067】
以上で述べたことから、CD11c
+細胞である樹状細胞中のTLR−7の発現量が増加することで、ウイルス抗原に特異的なIgAを産生するB細胞が活性化し、ウイルスワクチンの増強が促進されるものと推測される。
【0068】
「べにふうき」と「やぶきた」は、いずれもカテキン類を含むが、「べにふうき」は、「やぶきた」より、メチル化カテキンの量が多い。そのため、上記の「べにふうき」のウイルスワクチンの増強効果、ウイルス抗原に特異的なIgAの産生の促進効果、及び、TLR−7の発現促進効果は、メチル化カテキンによるものであると推測される。
【0069】
<CD3
+CD8
+細胞割合の評価>
【0070】
摘出後のそれぞれの群の脾臓中のCD3
+CD8
+細胞割合の評価を行った。その結果を、
図7に示す。CD3
+CD8
+細胞割合は、フローサイトメーターにより測定した。
【0071】
図7に示すように、実施例1は、対照例1と比較して、有意に脾臓中のCD3
+CD8
+細胞割合が増加した。CD8
+T細胞は、細胞傷害性T細胞であり、CD8
+T細胞の増加は、ウイルス感染症に対する免疫が向上したことを示す。これらのことから、「べにふうき」は、CD8
+T細胞を増加させることで、ウイルス感染症に対する免疫を向上させることがわかった。