(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628318
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】グラブバケット付き天井クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20191223BHJP
B66C 6/00 20060101ALI20191223BHJP
B66C 17/00 20060101ALI20191223BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20191223BHJP
【FI】
B66C15/00 K
B66C6/00
B66C17/00
F23G5/44 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-191584(P2016-191584)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-52695(P2018-52695A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−035284(JP,U)
【文献】
特開昭61−124492(JP,A)
【文献】
実開昭60−064987(JP,U)
【文献】
実開昭56−092671(JP,U)
【文献】
特公昭44−005155(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 5/00−17/26
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダの両端部にシーブを配置し、歩道足場の面上に配置した支持ドラム及び開閉ドラムから繰り出したワイヤロープを、シーブを介して歩道足場の面上から面下に繰り出し、歩道足場の下方に配置したトロリに配置したシーブを介して、グラブバケットに接続するようにしたグラブバケット付き天井クレーンであって、前記ガーダの両端部に配置したシーブ及び該シーブに掛けたワイヤロープが干渉しない隙間を残して、開口部を含むガーダの上面の全面に歩道足場板を敷設するようにしたことを特徴とするグラブバケット付き天井クレーン。
【請求項2】
前記ドラムを、ガーダの中央に配置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のグラブバケット付き天井クレーン。
【請求項3】
前記トロリは、動力源を装備せず、トロリに配置したシーブに掛けた支持ドラム及び開閉ドラムから繰り出されるワイヤロープにより横行操作を行うようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のグラブバケット付き天井クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラブバケット付き天井クレーンに関し、例えば、ごみ焼却場で稼働するごみクレーン等のグラブバケット付き天井クレーンにおいて人身事故につながる構造上の問題を解消する安全化対策を施したグラブバケット付き天井クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみクレーン等のグラブバケット付き天井クレーンは、2本のガーダの上面にレールを配置し、トロリをその上に配置し、トロリ上の巻上装置からワイヤロープを下方に垂らし、グラブバケットに接続し、グラブバケットの昇降を行い、トロリの横行車輪をモータ駆動し、横行移動を行うようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、このクレーンにおいては、クレーンの真ん中の2本のガーダの間にワイヤロープを垂らすための大きな開口部を設けるようにしているが、その開口部は、トロリが横行移動するため、ガーダの全長に亘って、常時開口するようにしている。
また、歩道足場であるガーダの上面には、トロリやクラブトロリへ給電を行うケーブルが横行移動している。
【0004】
従来のごみクレーン等のグラブバケット付き天井クレーンは、その構造上の理由から、歩道足場を歩行している作業者が、開口部から転落したり、横行移動するトロリに接触したり、機器に巻き込まれる等の人身事故につながる構造上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−126246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のごみクレーン等のグラブバケット付き天井クレーンの有する問題点に鑑み、人身事故につながる構造上の問題を解消する安全化対策を施したグラブバケット付き天井クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のグラブバケット付き天井クレーンは、ガーダの両端部にシーブを配置し、歩道足場の面上に配置した
支持ドラム及び開閉ドラムから繰り出したワイヤロープを、シーブを介して歩道足場の面上から面下に繰り出し、歩道足場の下方に配置したトロリに配置したシーブを介して、グラブバケットに接続するように
したグラブバケット付き天井クレーンであって、
前記ガーダの両端部に配置したシーブ及び該シーブに掛けたワイヤロープが干渉しない隙間を残して、開口部を含むガーダの上面
の全面に歩道足場板を敷設するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記ドラムを、ガーダの中央に配置するようにすることができる。
【0010】
また、前記トロリは、動力源を装備せず、トロリに配置したシーブに掛けた
支持ドラム及び開閉ドラムから繰り出されるワイヤロープにより横行操作を行うようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラブバケット付き天井クレーンによれば、トロリを歩道足場の下方に配置するとともに、ガーダの上面に歩道足場板を敷設するようにすることにより、歩道足場を歩行している作業者が、開口部から転落したり、横行移動するトロリに接触したり、機器に巻き込まれる等の人身事故につながる構造上の問題を解消し、安全性の高いグラブバケット付き天井クレーンを提供することができる。
【0012】
また、前記ドラムを、ガーダの中央に配置するようにすることにより、ドラムから引き出されたワイヤロープのフリートアングルを小さくすることができる。
【0013】
また、前記歩道足場板を、ガーダの上面の全面に敷設するようにすることにより、ガーダの開口部を実質的になくし、より安全性の高いグラブバケット付き天井クレーンを提供することができる。
【0014】
また、前記トロリは、動力源を装備せず、トロリに配置したシーブに掛けたワイヤロープにより横行操作を行うようにすることにより、トロリを簡素な構造として、故障や点検が必要な要素が少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のグラブバケット付き天井クレーンの第1実施例を示す側面図である。
【
図2】同グラブバケット付き天井クレーンの平面図である。
【
図3】同グラブバケット付き天井クレーンの断面図である。
【
図4】同グラブバケット付き天井クレーンのドラムから引き出されたワイヤロープのフリートアングルの説明図である。
【
図5】本発明のグラブバケット付き天井クレーンの第2実施例を示す側面図である。
【
図6】同グラブバケット付き天井クレーンの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のグラブバケット付き天井クレーンの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜
図4に、本発明のグラブバケット付き天井クレーンの第1実施例としてのごみクレーンを示す。
【0018】
このごみクレーン1は、建造物上に敷設された走行レール7上を、走行車輪6を介して走行するガーダ2の上に、走行モータ、ブレーキ及び減速機5、巻上装置である支持と開閉装置、具体的には、支持モータ、ブレーキ10、20、支持減速機11、21、支持ドラム12、22、開閉モータ、ブレーキ30、40、開閉減速機31、41、開閉ドラム32、42を配置するようにしている。
そして、各支持ドラム12、22及び各開閉ドラム32、42から、ワイヤロープ13、23、33、43を、ガーダ2の上面によって構成される歩道足場の面上を水平方向側方側(トロリ3の横行方向)に引き出し、ガーダ2の両端部に配置したシーブ14、24、34、44にワイヤロープ13、23、33、43を掛けて、当該シーブ14、24、34、44を介して、歩道足場の面下に繰り出し、トロリ3に向けてワイヤロープ13、23、33、43を引き出すようにしている。
トロリ3には、トロリシーブ15、25、35、45が配置されており、各トロリシーブ15、25、35、45を介して、ワイヤロープ13、23、33、43は下方に引き下ろされ、グラブバケット50に接続される。
【0019】
このように、各設備機器の配置をすることで、歩道足場には、ガーダ2の両端部に配置したシーブ14、24、34、44にワイヤロープ13、23、33、43を通過させるための僅かな隙間を残して、全面に歩道足場板100を敷設することができる。
また、歩道足場を構成するガーダ2の上面の外周縁には、手摺101を設けるようにする。
これにより、ガーダ2の開口部を実質的になくし、安全性を高めることができる。
【0020】
このごみクレーン1において、トロリ3は、ガーダ2の下方に配置している。
これを実現するために、ガーダ2の下方に下廊ボックス9を構成し、その下廊ボックス9の上に横行レール8を敷設するようにしている。
このトロリ3の配置により、ガーダ2の上面は、段差のないフラットな面を実現できている。
【0021】
トロリ3には、駆動源や検出器を装備せず、トロリシーブ15、25、35、45と駆動源を有しない横行車輪4が配置されているだけで、ガーダ2上に配置された支持ドラム12、22及び開閉ドラム32、42から繰り出される4本のワイヤロープ13、23、33、43により横行操作を行うようにしている。
トロリ3が、このような簡素な構造であることから、故障や点検が必要な要素が少なく、歩道足場板100の下に収納することを可能としている。
【0022】
ガーダ2の両端部に配置したシーブ14、24、34、44のうち、支持端部シーブ14、24は、夫々、反対側のガーダ2の端部に配置されている。
同じく、開閉端部シーブ34、44は、夫々、反対側のガーダ端部に配置されている。
このように配置することで、例えば、一方の端部シーブ14、34を介したワイヤロープ13、33と、反対側のもう一方の端部シーブ24、44を介したワイヤロープ23、43との引張り具合で、歩道足場板100の下方に配置したトロリ3を横行させることができる。
【0023】
このごみクレーン1の動作のシステムは、4本のワイヤロープ13、23、33、43を同じ速度で各ドラムに巻き取ると、グラブバケット50は、上方へと巻き上がる。そして、各ドラムを逆に回して、4本のワイヤロープ13、23、33、43を同じ速度で繰り出すと、グラブバケット50は、下方へと巻下がる。
【0024】
2本の支持ワイヤロープ13、23を停止させて、2本の開閉ワイヤロープ33、43を同じ速度で各ドラム32、42に巻き取ると、グラブバケット50は閉方向に動く。
そして、2本の支持ワイヤロープ13、23を停止させて、2本の開閉ワイヤロープ33、43を同じ速度で各ドラム32、42から繰り出すと、グラブバケット50は開方向に動く。
そして、グラブバケット50を掴み対象物の上に置き、2本の支持ワイヤロープ13、23が弛まない程度に、グラブバケット50を持ち上げない程度に制御し、グラブバケットの重量が掴み対象物に掛かるようにしながら2本の開閉ワイヤロープ33、43を同じ速度で各ドラム32、42に巻き取ると、掴みを行うことができる。
【0025】
例えば、焼却炉側Aの2本のワイヤロープ、すなわち、支持ワイヤロープ13と開閉ワイヤロープ33を各ドラム12、32に巻き取り、それと同じ速度で、搬入ゲート側Bの2本のワイヤロープ、すなわち、支持ワイヤロープ23と開閉ワイヤロープ43を各ドラム22、42から繰り出すと、トロリ3とグラブバケット50が焼却炉側Aに横行する。
逆に、焼却炉側Aの2本のワイヤロープ、すなわち、支持ワイヤロープ13と開閉ワイヤロープ33を各ドラム12、32から繰り出し、それと同じ速度で、搬入ゲート側Bの2本のワイヤロープ、すなわち、支持ワイヤロープ23と開閉ワイヤロープ43を各ドラム22、42に巻き取ると、トロリ3とグラブバケット50が搬入ゲート側Bに横行する。
【0026】
当該ドラム12、22、32、42から端部シーブ14、24、34、44との間のワイヤロープ13、23、33、43には、ワイヤロープ13、23、33、43と鉛直面Lとがなす角度、すなわち、フリートアングルθ(シーブとドラムの中心を結ぶ線と、シーブとドラムのフランジの内側とを結ぶ線とがなす角度)が存在する。
ドラム12、22、32、42へのワイヤロープ13、23、33、43の巻取量に応じてワイヤロープ13、23、33、43の繰り出し位置は変化するので、フリートアングルθもドラム12、22、32、42へのワイヤロープ13、23、33、43の巻取量に応じて変化する。
このフリートアングルθは小さくする方が望ましく、ドラム12、22、32、42をガーダ2の中央付近に配置することで、このフリートアングルを小さくしている。
【0027】
このごみクレーン1によれば、トロリ3を歩道足場の下方に配置するとともに、ガーダ2の上面に歩道足場板100を敷設するようにすることにより、歩道足場を歩行している作業者が、開口部から転落したり、横行移動するトロリに接触したり、機器に巻き込まれる等の人身事故につながる構造上の問題を解消し、安全性の高いごみクレーンとすることができる。
【0028】
ところで、上記実施例においては、グラブバケット50の開閉装置として、開閉モータ、ブレーキ30、40、開閉減速機31、41及び開閉ドラム32、42等を配置したロープ式グラブバケット付き天井クレーンについて説明したが、本発明のグラブバケット付き天井クレーンの構成は、例えば、グラブバケット50の開閉装置の駆動源として電源を用いる電動油圧式グラブバケット付き天井クレーンにも適用することができる。
【0029】
図5〜
図6に、本発明のグラブバケット付き天井クレーンの第2実施例としてのごみクレーンを示す。
【0030】
このごみクレーン1は、建造物上に敷設された走行レール7上を、走行車輪6を介して走行するガーダ2の上に、走行モータ、ブレーキ及び減速機5、巻上装置である支持と開閉装置、具体的には、支持モータ、ブレーキ10、20、支持減速機11、21、支持ドラム12、22、ケーブルリール61を配置するようにしている。
そして、各支持ドラム12、22から、2本ずつのワイヤロープ13、23を、ガーダ2の上面によって構成される歩道足場の面上を水平方向側方側(トロリ3の横行方向)に引き出し、ガーダ2の両端部に配置したシーブ14、24にワイヤロープ13、23を掛けて、当該シーブ14、24を介して、歩道足場の面下に繰り出し、トロリ3に向けてワイヤロープ13、23を引き出すようにしている。
トロリ3には、トロリシーブ15、25が配置されており、各トロリシーブ15、25を介して、ワイヤロープ13、23は下方に引き下ろされ、グラブバケット50に接続される。
また、ケーブルリール61から、給電ケーブル62を引き出し、ガーダ2に配置したケーブルガイド63を介して、下方に引き下ろされ、グラブバケット50に接続される。
【0031】
トロリ3には、駆動源や検出器を装備せず、トロリシーブ15、25と駆動源を有しない横行車輪4が配置されているだけで、ガーダ2上に配置された支持ドラム12、22から繰り出される4本のワイヤロープ13、23により横行操作を行うようにしている。
トロリ3が、このような簡素な構造であることから、故障や点検が必要な要素が少なく、歩道足場板100の下に収納することを可能としている。
【0032】
グラブバケット50の開閉動作は、公知の電動油圧式グラブバケット付き天井クレーンと同様、給電ケーブル62から供給される開閉電力によって行われるようにしている。
【0033】
なお、本第2実施例のごみクレーンのその他の構成及び作用は、上記第1実施例のごみクレーンと同様である。
【0034】
以上、本発明のグラブバケット付き天井クレーンについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のグラブバケット付き天井クレーンは、労働災害の危険性が高いグラブバケット付き天井クレーンにおいて、人身事故につながる構造上の問題を解消する安全化対策を施すようにしていることから、ごみクレーン等のグラブバケット付き天井クレーンの用途に広く、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ごみクレーン(グラブバケット付き天井クレーン)
2 ガーダ
3 トロリ
4 横行車輪
5 走行モータ、ブレーキ及び減速機
6 走行車輪
7 走行レール
8 横行レール
9 ガーダ下廊ボックス
10 支持モータ、ブレーキ
11 支持減速機
12 支持ドラム
13 支持ワイヤロープ
14 支持端部シーブ
15 支持トロリシーブ
20 支持モータ、ブレーキ
21 支持減速機
22 支持ドラム
23 支持ワイヤロープ
24 支持端部シーブ
25 支持トロリシーブ
30 開閉モータ、ブレーキ
31 開閉減速機
32 開閉ドラム
33 開閉ワイヤロープ
34 開閉端部シーブ
35 開閉トロリシーブ
40 開閉モータ、ブレーキ
41 開閉減速機
42 開閉ドラム
43 開閉ワイヤロープ
44 開閉端部シーブ
45 開閉トロリシーブ
50 グラブバケット
61 ケーブルリール
62 給電ケーブル
63 ケーブルガイド
100 歩道足場板
101 手摺
A 焼却炉側
B 搬入ゲート側
L 鉛直面
θ フリートアングル