(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発射装置から発射される固定素子を用いて被取付面に取付具を取り付ける場合における取付具の耐破損性を、簡易な構成で向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る取付具は、
被取付面に対して固定素子を用いて取り付けられる取付具であって、
前記被取付面に沿って配置されるとともに前記固定素子の軸部が挿通される挿通孔を有する樹脂製の取付部を備え、
前記取付部は、前記固定素子を発射する発射装置の発射口部を当接支持する支持部を含み、
前記支持部が、前記挿通孔の周囲に、前記発射口部との当接面が前記挿通孔よりも前記被取付面とは反対側に位置する状態に形成されている。
【0008】
この構成によれば、支持部が発射装置の発射口部を当接支持した状態で、取付部における固定素子の受け部と発射口部とが離間する。そして、固定素子の受け部と発射口部とのオフセット長さに応じて、被取付面に嵌入する固定素子の惰性距離を長くすることができる。これにより、発射装置から発射される固定素子が受け部に当接するまでに、固定素子の速度を低下させてそのエネルギーを減衰させることができる。よって、過大なエネルギーが樹脂製の取付部に作用して当該取付部が破損することを抑制できる。しかも、取付部に支持部を設けるとともにその形成態様を好適化するだけで、取付具の耐破損性を簡易な構成で向上させることができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
1つの態様として、長尺体を保持する保持部をさらに備え、前記取付部は前記保持部よりも肉厚に形成されているとともに前記固定素子の頭部よりも大径の凹部を有し、前記凹部に前記挿通孔が形成され、前記取付部における前記凹部以外の部分の外表面を含んで前記支持部が構成されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、取付具を用いて、長尺体を被取付面に適切に配設することができる。長尺体を保持する保持部自体はその機能を十分に発揮し得る程度の厚みを有するように形成されれば良いので、取付具全体としてのコンパクト性が損なわれることがない。
また、上記の構成によれば、保持部よりも肉厚の取付部に形成される凹部の深さに応じて、固定素子の受け部となる凹部の底面と発射口部とのオフセット長さを適切に確保できる。また、肉厚の取付部における凹部以外の部分の外表面を含んで構成される支持部により、発射装置の発射口部を安定的に支持することができる。よって、取付具の耐破損性を高めつつ、発射装置を用いた取付具の取付作業の確実性を高めることができる。
【0012】
1つの態様として、前記取付部は肉厚に形成されているとともに前記固定素子の頭部よりも大径の凹部を有し、前記凹部に前記挿通孔が形成され、前記取付部における前記凹部以外の部分の外表面を含んで前記支持部が構成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、肉厚の取付部に形成される凹部の深さに応じて、固定素子の受け部となる凹部の底面と発射口部とのオフセット長さを適切に確保できる。また、肉厚の取付部における凹部以外の部分の外表面を含んで構成される支持部により、発射装置の発射口部を安定的に支持することができる。よって、取付具の耐破損性を高めつつ、発射装置を用いた取付具の取付作業の確実性を高めることができる。
【0014】
1つの態様として、前記凹部の深さが、前記支持部を含む前記取付部の厚さの1/3以上3/4以下に設定されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、支持部を含む取付部の厚さとの関係で、凹部の深さを一定以上確保できる。また、凹部の深さを一定以上確保しながら、凹部の底面の位置における取付部の厚さをも一定以上(支持部を含む取付部の厚さの1/4以上2/3以下)確保できる。よって、凹部の深さに応じて発射装置からの固定素子の発射時における当該固定素子の惰性距離を確保するとともに、凹部の位置における取付部の厚みに応じて一定以上の強度を確保することで、取付具の耐破損性を効果的に高めることができる。
【0016】
1つの態様として、前記取付部に、前記発射口部の外郭形状に少なくとも部分的に沿う突出壁部が前記被取付面とは反対側に向かって突出形成され、前記支持部が、前記突出壁部の突出先端側の外表面を含んで構成されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、突出壁部の形状に沿わせて発射装置の発射口部を取付部(支持部)に当接させることで、発射口部から発射される固定素子と挿通孔との位置合わせを容易化することができる。つまり、突出壁部を一種のガイドとして利用可能とすることで、発射装置を用いた取付具の取付作業の作業性を向上させることができる。
【0018】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
取付具の第1の実施形態について説明する。本実施形態の取付具1は、被取付面9に対して固定素子5を用いて取り付けられる器具であり、以下の点によって特徴付けられる。すなわち、取付具1は、被取付面9に沿って配置されるとともに固定素子5の軸部5Aが挿通される挿通孔12を有する樹脂製の取付部10を備える。この取付部10は、固定素子5を発射する発射装置6の発射口部62を当接支持する支持部16を含む。そして、支持部16が、挿通孔12の周囲に、発射口部62との当接面16aが挿通孔12よりも被取付面9とは反対側に位置する状態に形成されている。これにより、発射装置6から発射される固定素子5を用いて被取付面9に取付具1を取り付ける場合における取付具1の耐破損性を、簡易な構成で向上させることができる。以下、本実施形態に係る取付具1について、詳細に説明する。
【0021】
なお、以下の説明で用いる方向や寸法等に関する用語(例えば「平行」や「直交」等)は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念である。また、以下の説明で参照する図面においては、図示の容易化や理解の容易化等の観点から、縮尺や上下左右の寸法比率等が実際の製品とは異なる場合がある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の取付具1は、被取付面9に対して長尺体8を保持する長尺体保持具1Aとして構成されている。長尺体8は、例えば線状体、管状体、及び帯状体等の、一方向に延びる長尺状の構造を有するものである。このような長尺体8としては、例えば配管類(例えば空調装置用の配管部材やドレイン管、給排水用の配管部材等)や電線類(例えば電気ケーブルやその保護管等)等を例示することができる。
【0023】
長尺体保持具1Aは、固定素子5を用いて建築物の壁面や天井面等の被取付面9に取り付けられる。固定素子5は、被取付面9に対して打設されて取付対象物(本例では長尺体保持具1A)を被取付面9に固定するための素子であり、例えば釘や鋲等の金属製固定手段を用いることができる。固定素子5は、被取付面9に嵌入可能な細長形状の軸部5Aと、軸部5Aよりも大径の扁平形状の頭部5Bとを含む。
【0024】
長尺体保持具1Aが被取付面9に対して固定素子5を用いて取り付けられた状態で、長尺体8が被取付面9に配設される。なお、長尺体保持具1Aは、長尺体8の配設経路に沿った複数箇所で被取付面9に取り付けられて、複数個の協働によって長尺体8を被取付面9に保持する。
【0025】
長尺体保持具1Aは、樹脂材料を用いて形成されている。長尺体保持具1Aは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、及びポリ塩化ビニル等の汎用樹脂を用いて形成されている。もちろん、長尺体保持具1Aは、エンジニアリングプラスチック等の機能性樹脂を用いて形成されても良い。
【0026】
図1及び
図2に示すように、長尺体保持具1Aは、被取付面9に沿って配置されて被取付面9に取り付けられる取付部10と、長尺体8を保持する保持部20とを備えている。本実施形態では、保持部20の両端部(長手方向Lの両端部)に、取付部10がそれぞれ設けられている。すなわち、本実施形態の長尺体保持具1Aは、長尺体8を保持する保持部20と、その両端部にそれぞれ設けられた取付部10とを備えている。このような形態の長尺体保持具1Aは、“両サドル”とも称される。
【0027】
図2に示すように、保持部20は、湾曲板状の保持本体部21を主体として構成されている。保持本体部21は、長尺体8の外周面に部分的に沿う断面U字状に形成されている(
図4も参照)。保持本体部21の外表面には、長手方向Lに沿って延びる凹条部22が形成されている。本実施形態では、一対の凹条部22が、幅方向Wの異なる2ヵ所を互いに平行に延びるように形成されている。一対の凹条部22どうしの幅方向Wの間には、長手方向Lに沿って延びる中央突条部23が形成されている。また、一対の凹条部22のそれぞれよりも幅方向Wの外側には、長手方向Lに沿って延びる両端突条部24がそれぞれ形成されている。保持本体部21の内周面には、幅方向Wの中央部を長手方向Lに沿って延びる内周リブ26が突出形成されている。
【0028】
図2に示すように、取付部10は、平板状の取付本体部11を主体として構成されている。取付本体部11は、肉厚に形成されている。取付本体部11は、一定の厚みを有する直方体状に形成されている。一般的に用いられる両サドル型の長尺体保持具においては、その全体が同程度の厚みを有するように形成されるのに対して、本実施形態の長尺体保持具1Aでは、取付本体部11は、保持部20を構成する保持本体部21よりも肉厚に形成されている(
図4も参照)。
【0029】
取付部10は、取付本体部11に形成された挿通孔12を有する。挿通孔12は、取付本体部11の中央部に形成されている。挿通孔12は、取付本体部11を厚み方向Tに貫通するように形成されている。挿通孔12は、固定素子5の軸部5Aよりも大径の丸穴状に形成されている。この挿通孔12には、固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通される。また、挿通孔12は、固定素子5の頭部5Bよりも小径に形成されている。固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通孔12に挿通されたとき、頭部5Bが取付本体部11に当接する。
【0030】
取付部10は、取付本体部11に形成された凹部13を有する。凹部13は、挿通孔12の周囲に形成されている。言い換えれば、凹部13に挿通孔12が形成されている。凹部13は、挿通孔12と同心状に形成されている。凹部13は、取付本体部11の中央部において、当該取付本体部11の上面11aから被取付面9側に向かって窪むように形成されている。凹部13は、固定素子5の頭部5Bよりも大径の円筒状に形成されている。固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通孔12に挿通されたとき、頭部5Bは、凹部13に進入してその底面13aに当接する。固定素子5は、軸部5Aの先端部5C側の一部が被取付面9に打ち込まれた状態で、被取付面9と頭部5Bとの間に取付本体部11(凹部13の底面13a部分)を挟持して長尺体保持具1Aを固定する(
図4を参照)。なお、凹部13は、固定素子5を発射する発射装置6(
図3を参照)の案内筒部61の発射口部62よりも小径に形成されており、凹部13の内部に発射口部62の全体が進入することはない。
【0031】
図2に示すように、本実施形態では、取付本体部11の上面11aには、保持部20の保持本体部21に形成された一対の凹条部22からそれぞれ連続して延びる延設凹部14が設けられている。凹部13と一対の延設凹部14とは非連続となるように形成されている。そして、取付本体部11における凹部13とそれぞれの延設凹部14との間には、延設凹部14の底面から見て被取付面9とは反対側に向かって延びる突出壁部15が突出形成されている。この突出壁部15は、挿通孔12及び凹部13と同心状の円弧状をなすように形成されている。そして、突出壁部15は、発射装置6の発射口部62の外郭形状に少なくとも部分的に沿うように形成されている(
図3を参照)。
【0032】
ところで、ガス式や火薬式等の発射装置6は、安全性確保等の目的で、施工対象物に対して発射口部62を押圧した状態でなければ固定素子5を発射できない仕様となっている場合がある。この点を考慮して、本実施形態の取付部10は、発射装置6の発射口部62を当接支持する支持部16を含んでいる。本実施形態では、支持部16は、突出壁部15の突出先端側の外表面を含む凹部13の周辺部分の外表面(上面11a)を含んで構成されている。より具体的には、支持部16は、突出壁部15の突出先端側の外表面と、取付本体部11における一対の延設凹部14どうしの間の領域の外表面と、取付本体部11における延設凹部14よりも長手方向Lの端部側の領域の外表面とを含んで構成されている。これらの外表面は、固定素子5の打設時に、発射装置6の発射口部62に当接する当接面16aとなる。
【0033】
このようにして挿通孔12の周囲に形成される支持部16は、
図4に示すように、発射装置6の発射口部62との当接面16aが挿通孔12よりも被取付面9とは反対側に位置する状態となっている。本実施形態において取付本体部11の上面11aの一部でもある支持部16の当接面16aは、挿通孔12の上部開口が設けられた凹部13の底面13aよりも被取付面9とは反対側に位置する状態となっている。このような構成では、支持部16が発射装置6の発射口部62を当接支持した状態で、取付部10における固定素子5の受け部となる凹部13の底面13aと発射口部62とが厚み方向Tに離間する。そして、凹部13の底面13aと発射口部62とのオフセット長さに応じて、被取付面9に嵌入する固定素子5の惰性距離を長くすることができる。これにより、発射装置6から発射される固定素子5の頭部5Bが凹部13の底面13aに当接するまでに、固定素子5の速度を低下させてそのエネルギーを減衰させることができる。よって、過大なエネルギーが樹脂製の取付部10に作用して当該取付部10が破損するのを抑制することができる。
【0034】
取付本体部11の厚さ(支持部16を含む取付部10の厚さ)及び凹部13の深さは、耐破損性の向上のために確保すべき上記オフセット長さと取付部10自体の強度とのバランスを考慮して設定されている。凹部13の深さは、例えば取付本体部11の厚さの1/3以上となるように設定されることが好ましい。このようにすれば、発射装置6からの固定素子5の発射時における当該固定素子5の惰性距離として、取付本体部11の厚さの1/3以上の距離を追加的に確保することができ、取付部10が破損するのを有効に抑制することができる。また、このような深さ設定では、固定素子5の打設後、頭部5Bの全部又は大部分が凹部13内に収納される。よって、固定素子5の頭部5Bが取付部10の外表面側に露出する構成と比較して、施工後にすっきりとした印象の外観を付与することができるという利点もある。
【0035】
また、凹部13の深さは、例えば取付本体部11の厚さの3/4以下となるように設定されることが好ましい。このようにすれば、凹部13の底面13aの位置における取付部10の厚さは、取付本体部11の厚さの1/4以上となる。よって、固定素子5によって固定される部位である凹部13の底面13aの位置における取付部10の厚さを、取付本体部11の厚さの1/4以上分確保することができ、当該部位に一定以上の強度を確保することができる。これら両方の観点から、凹部13の深さを取付本体部11の厚さ(支持部16を含む取付部10の厚さ)の1/3以上3/4以下とすることで、長尺体保持具1Aの耐破損性を効果的に高めることができる。
【0036】
なお、別の言い方をすれば、凹部13の深さは、凹部13の底面13aの位置における取付部10の厚さを基準として当該厚さの0.5倍以上3倍以下に設定されることが好ましい。このような観点に基づき、凹部13の底面13aの位置における取付部10の厚さを一定以上の強度を確保可能な厚さとし、当該部位の厚さに基づいて、凹部13の深さ及びこれに応じた取付本体部11の厚さ(支持部16を含む取付部10の厚さ)を設定しても良い。この場合、取付部10は一定以上の強度を確保可能な最小厚さ(以下、「標準厚さ」と言う場合がある)を有するものに比べて肉厚に形成されるとともに、当該肉厚の取付部10に所定深さの凹部13が形成されることになる。一例として、凹部13の底面13aの位置における取付部10の厚さを2mm〜4mm程度確保するとともに、凹部13の深さを4mm〜6mm程度に設定して、取付部10全体の厚さを6mm〜10mm程度に設定すると良い。
【0037】
また、本実施形態では、支持部16が、肉厚の取付部10における凹部13の周辺部分(本例では特に、延設凹部14よりも長手方向Lの端部側の領域)の外表面を含んで構成されている。よって、肉厚の取付部10における比較的広範囲の領域を占める支持部16により、固定素子5の打設時に、発射装置6の発射口部62を安定的に支持することができる。さらに本実施形態では、支持部16が、凹部13の周囲を取り囲むように形成された突出壁部15の突出先端側の外表面を含んで構成されている。この突出壁部15は一種のガイドとしても機能し、突出壁部15の形状に沿わせて発射装置6の発射口部62を支持部16に当接させることで、発射口部62から発射される固定素子5と挿通孔12との位置合わせを容易化することができる。よって、発射装置6を用いた長尺体保持具1Aの取付作業の作業性を向上させることができる。
【0038】
〔第2の実施形態〕
取付具の第2の実施形態について説明する。本実施形態の取付具1は、被取付面9に対して長尺体8を保持する長尺体保持具1Aと、当該長尺体保持具1Aに対して着脱自在な延長取付具1Bとの両方を含んで構成されている。長尺体保持具1Aの構成は第1の実施形態と同様であるので、以下では、主に延長取付具1Bの構成について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
図5に示すように、延長取付具1Bは、長尺体保持具1Aの取付部10に対して着脱自在に構成されている。延長取付具1Bは、被取付面9に沿って配置されて被取付面9に取り付けられる取付部30と、長尺体保持具1Aの取付部10に対して連結される連結部40とを備えている。本実施形態では、取付部30と連結部40とは、長手方向Lに沿って一直線状に設けられている。延長取付具1Bは、樹脂材料を用いて形成されている。延長取付具1Bは、長尺体保持具1Aと同様の汎用樹脂又は機能性樹脂等を用いて形成することができる。
【0040】
取付部10への連結端側の部位である連結部40は、全体として直方体状に形成されている。連結部40は、長尺体保持具1Aに対する装着状態で取付部10(取付本体部11)の上面11aを覆う天井壁部41と、取付部10の幅方向W両側を当該取付部10に沿って延びる側壁部42とを含む。天井壁部41とこれに交差(本例では直交)する一対の側壁部42とで囲まれる空間は、長尺体保持具1Aの取付部10が収容される収容空間となる。
図6に示すように、天井壁部41の下面には、収容空間側(被取付面9側)に向かって突出する嵌合突部46が形成されている。嵌合突部46は、取付部10に形成された凹部13と実質的に同径(同径又はそれよりも僅かに小径)に形成されている。嵌合突部46は、長尺体保持具1Aに対する延長取付具1Bの装着状態で、凹部13に内嵌する。なお、「内嵌」とは、その外周面が相手方部材の内周面に対して嵌合すること又は微小隙間を隔てて配置されて実質的に嵌合することを意味する。
【0041】
図5に示すように、長尺体保持具1Aの取付部10への連結端とは反対側の部位である取付部30は、平板状の取付本体部31を主体として構成されている。取付本体部31は、肉厚に形成されている。取付本体部31は、少なくとも標準厚さを有するものに比べて肉厚に形成されている。取付本体部31は、一定の厚みを有する直方体状に形成されている。取付本体部31は、長尺体保持具1Aの取付本体部11と同程度の厚みを有するように形成されている。
【0042】
取付部30は、取付本体部31に形成された挿通孔32を有する。挿通孔32は、取付本体部31の中央部に形成されている。挿通孔32は、取付本体部31を厚み方向Tに貫通するように形成されている。挿通孔32は、固定素子5の軸部5Aよりも大径の丸穴状に形成されている。この挿通孔32には、固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通される。また、挿通孔32は、固定素子5の頭部5Bよりも小径に形成されている。固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通孔32に挿通されたとき、頭部5Bが取付本体部31に当接する。
【0043】
取付部30は、取付本体部31に形成された凹部33を有する。凹部33は、挿通孔32の周囲に形成されている。言い換えれば、凹部33に挿通孔32が形成されている。凹部33は、挿通孔32と同心状に形成されている。凹部33は、取付本体部31の中央部において、当該取付本体部31の上面31aから被取付面9側に向かって窪むように形成されている。凹部33は、固定素子5の頭部5Bよりも大径の円筒状に形成されている。固定素子5の軸部5Aがその先端部5C側から挿通孔32に挿通されたとき、頭部5Bは、凹部33に進入してその底面33aに当接する。固定素子5は、軸部5Aの先端部5C側の一部が被取付面9に打ち込まれた状態で、被取付面9と頭部5Bとの間に取付本体部31(凹部33の底面33a部分)を挟持して長尺体保持具1Aを固定する(
図6を参照)。なお、凹部33は、発射装置6の案内筒部61の発射口部62よりも小径に形成されており、凹部33の内部に発射口部62の全体が進入することはない。
【0044】
本実施形態では、取付本体部31における凹部33の周辺部分は、平坦面に形成されている。発射装置6の発射口部62を当接支持する支持部36は、凹部33の周辺部分の外表面(上面31a)のみで構成されている。そして、当該部分の外表面が、発射装置6の発射口部62に当接する当接面36aとなる。
【0045】
このようにして挿通孔32及び凹部33の周囲に形成される支持部36は、
図6に示すように、発射装置6の発射口部62との当接面36aが挿通孔32よりも被取付面9とは反対側に位置する状態となっている。本実施形態において取付本体部31の上面31aの一部でもある支持部36の当接面36aは、挿通孔32の上部開口が設けられた凹部33の底面33aよりも被取付面9とは反対側に位置する状態となっている。このような構成では、支持部36が発射装置6の発射口部62を当接支持した状態で、取付部30における固定素子5の受け部となる凹部33の底面33aと発射口部62とが厚み方向Tに離間する。そして、凹部33の底面33aと発射口部62とのオフセット長さに応じて、被取付面9に嵌入する固定素子5の惰性距離を長くすることができる。これにより、発射装置6から発射される固定素子5の頭部5Bが凹部33の底面33aに当接するまでに、固定素子5の速度を低下させてそのエネルギーを減衰させることができる。よって、過大なエネルギーが樹脂製の取付部30に作用して当該取付部30が破損するのを抑制することができる。
【0046】
取付本体部31の厚さ(支持部36を含む取付部30の厚さ)及び凹部33の深さは、長尺体保持具1Aにおける取付本体部11の厚さ(支持部16を含む取付部10の厚さ)及び凹部13の深さと同様に設定されると良い。凹部33の深さは、例えば取付本体部31の厚さの1/3以上3/4以下となるように設定されることが好ましい。このようにすれば、発射装置6からの固定素子5の発射時における当該固定素子5の惰性距離の確保と、一定以上の強度の確保との両方の観点から、延長取付具1Bの耐破損性を効果的に高めることができる。具体的なサイズに関しては、一例として、凹部33の底面33aの位置における取付部30の厚さを2mm〜4mm程度確保するとともに、凹部33の深さを4mm〜6mm程度に設定して、取付部30全体の厚さを6mm〜10mm程度に設定すると良い。
【0047】
また、本実施形態では、長尺体保持具1Aに対して延長取付具1Bを装着することで、長尺体保持具1Aの未装着側の挿通孔12と延長取付具1Bの挿通孔32との間隔を、長尺体保持具1Aの2つの挿通孔12どうしの間隔よりも拡大することができる。よって、発射装置6を使用するに際して打設する固定素子5間に一定の間隔(以下、「最小打設間隔」と言う)を確保する必要がある場合であっても、そのような制約を容易に回避することができる。従って、小型の長尺体保持具1Aを用いる場合等、長尺体保持具1Aの単独では2つの挿通孔12どうしの間に最小打設間隔を確保できない場合であっても、延長取付具1Bを併用することで、発射装置6を用いて効率的に取付作業を行うことができる。
【0048】
なお、長尺体保持具1Aに対して1つの延長取付具1Bを装着しただけでは、長尺体保持具1Aの1つの挿通孔12と延長取付具1Bの挿通孔32との間に最小打設間隔を確保できない場合もあり得る。そのような場合には、例えば未装着側の取付部10に対して2つ目の延長取付具1Bを装着すると良い。
【0049】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、取付部10(取付本体部11)が肉厚に形成されるとともにその肉厚の取付部10に凹部13が形成され、凹部13の周辺部分の外表面を含んで支持部16が構成される例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図7に示すように、取付部10が一定以上の強度を確保可能な最小厚さに形成されるとともに、その薄板状の取付部10から被取付面9とは反対側に向かって延びる円筒状の突出壁部15が突出形成されても良い。そして、当該円筒状の突出壁部15の突出先端側の外表面のみによって支持部16が構成されても良い。第2の実施形態における延長取付具1Bの取付部30(取付本体部31)及び支持部16に関しても、同様に考えることができる。
【0050】
(2)上記の各実施形態では、凹部13の深さが取付本体部11の厚さ(支持部16を含む取付部10の厚さ)の1/3以上3/4以下に設定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、固定素子5の惰性距離のより確実な確保の観点からは、凹部13の深さが例えば取付本体部11の1/2以上3/4以下に設定されても良い。また、より確実な強度確保の観点からは、凹部13の深さが例えば取付本体部11の1/3以上2/3以下に設定されても良い。さらに、惰性距離及び強度の両方のより確実な確保の観点からは、凹部13の深さが例えば取付本体部11の1/2以上2/3以下に設定されても良い。或いは、凹部13の深さが例えば取付本体部11の厚さの1/3未満に設定されても良いし、取付本体部11の厚さの3/4超に設定されても良い。第2の実施形態における延長取付具1Bの凹部33に関しても、同様に考えることができる。
【0051】
(3)上記の各実施形態では、凹部13が円筒状(平面視で真円状)に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、凹部13が例えば平面視で長円状、楕円状、及び正多角形状(例えば正方形状、正六角形状、及び正八角形状等)等に形成されても良い。また、固定素子5の頭部5Bがテーパー状に形成される場合には、凹部13も、頭部5Bの形状に対応するテーパー状に形成されても良い。第2の実施形態における延長取付具1Bの凹部33に関しても、同様に考えることができる。
【0052】
(4)上記第2の実施形態では、延長取付具1Bに設けられる嵌合突部46が、長尺体保持具1Aの凹部13に内嵌する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、嵌合突部46が、例えば長尺体保持具1Aの挿通孔12に内嵌するように構成されても良い。
【0053】
(5)上記第1の実施形態では、本開示に係る技術を両サドル型の長尺体保持具1Aに適用した例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図8に示すように、本開示に係る技術を片サドル型の長尺体保持具1Aに適用しても良い。或いは、例えば
図9に示すように、本開示に係る技術をベルト式の長尺体保持具1Aに適用しても良い。ベルト式の長尺体保持具1Aは、挿通孔12を有する取付部10と、当該取付部10から連続して延びる可撓性の保持ベルト28とを備えている。保持ベルト28には、その延在方向に沿って互いに間隔を隔てた状態で複数の貫通穴29が貫通形成されている。取付部10の裏面には、貫通穴29に内嵌する嵌合突部18が突出形成されている。嵌合突部18がいずれかの貫通穴29に内嵌した状態で、保持ベルト28はループ状となってその内部に長尺体8を保持可能となる。固定素子5は、一部が被取付面9に打ち込まれた状態で、被取付面9と頭部5Bとの間に取付部10及び保持ベルト28を挟持して長尺体保持具1Aを固定する。
【0054】
(6)上記の各実施形態では、本開示に係る技術を、長尺体8を保持する長尺体保持具1A及びそれに対して着脱自在な延長取付具1Bに適用した例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、被取付面9に対して固定素子5を用いて取り付けられるあらゆる取付具1に、本開示に係る技術を適用することができる。
【0055】
(7)上記の各実施形態では、取付具1が取り付けられる被取付面9が建築物の壁面や天井面である場合を想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、被取付面9が、例えば建築物の壁面や天井面等に直接的又は間接的に固定された他物の表面等であっても良い。
【0056】
なお、上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0057】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。