特許第6628535号(P6628535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628535
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月8日
(54)【発明の名称】プリフォームのコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/02 20060101AFI20191223BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20191223BHJP
【FI】
   B05D7/02
   B05D3/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-193745(P2015-193745)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-64637(P2017-64637A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】泊 一朗
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】西山 優範
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−532167(JP,A)
【文献】 特開平09−276667(JP,A)
【文献】 特許第4139456(JP,B2)
【文献】 特開平09−075820(JP,A)
【文献】 特開昭50−67341(JP,A)
【文献】 特表2005−529220(JP,A)
【文献】 特開昭52−53947(JP,A)
【文献】 米国特許第5039560(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
B05C5/00−21/00
B29C49/00
B65D23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜を有する脱気モジュールを用いてコーティング液を脱気する工程と、
脱気されたコーティング液をプリフォームに塗布する工程と
を含み、
前記脱気モジュールを用いてコーティング液を脱気する前に、コーティング液にせん断力を適用する脱泡処理を行わないことを特徴とする、プリフォームのコーティング方法。
【請求項2】
前記コーティング液が、ガスバリア性を有するバリアコーティング液、又はバリアコーティング液を保護する保護コーティング液である、請求項1に記載のプリフォームのコーティング方法。
【請求項3】
前記コーティング液の粘度が25mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のプリフォームのコーティング方法。
【請求項4】
前記コーティング液の粘度が50mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項に記載のプリフォームのコーティング方法。
【請求項5】
前記コーティング液の粘度が100mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項に記載のプリフォームのコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックボトル用のプリフォームのコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のプラスチック容器(ペットボトル)等のプラスチックボトルが飲料又は食料を収容するのに広く使用されている。プラスチックボトルは、試験管状のプリフォームを延伸ブロー成形で膨らませることによって成形される。
【0003】
特許文献1に開示されるように、酸素及び二酸化炭素のようなガスがプラスチックボトルの内外に透過することを低減すべく、プリフォームの外周面にバリアコーティングを形成することが知られている。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォームの外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−151632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コーティング液が酸素及び窒素のような気体を含んでいるため、プリフォームに塗布されたコーティング液に気泡が発生することがある。この結果、プラスチックボトルの外観不良が発生し、又はコーティング液による所望のガスバリア特性が得られないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、プリフォームに塗布されたコーティング液に気泡が発生することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明では、中空糸膜を有する脱気モジュールを用いてコーティング液を脱気する工程と、脱気されたコーティング液をプリフォームに塗布する工程とを含むことを特徴とする、プリフォームのコーティング方法が提供される。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、脱気されるコーティング液が予め脱泡処理されていない。
【0009】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、コーティング液が、ガスバリア性を有するバリアコーティング液、又はバリアコーティング液を保護する保護コーティング液である。
【0010】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、コーティング液の粘度が25mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0011】
第5の発明では、第4の発明において、コーティング液の粘度が50mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0012】
第6の発明では、第5の発明において、コーティング液の粘度が100mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プリフォームに塗布されたコーティング液に気泡が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、プラスチックボトル用のプリフォームを示す。
図2図2(a)〜(d)は、プリフォームからプラスチックボトルを成形するための延伸ブロー成形法を示す。
図3図3は、プリフォームから成形されたプラスチックボトルを示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係るプリフォームのコーティング方法を示すフローチャートである。
図5図5は、本実施形態における脱気処理の概略的なフロー図である。
図6図6は、ディッピング方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。
図7図7は、ブロー方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。
図8図8は、コーター方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。
図9図9は、ローラ転写方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0016】
<プラスチックボトルの成形方法>
最初に、図1図3を参照して、プリフォームからプラスチックボトルを成形する方法について簡単に説明する。なお、本明細書において、プラスチックボトルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)のようなプラスチックから構成されるボトルを意味し、ペットボトルに限定されない。
【0017】
図1は、プラスチックボトル用のプリフォーム1を示す。プリフォーム1はインジェクション(射出)成形法又はPCM(プリフォームコンプレッションモールディング)成形法によって樹脂から成形される。プリフォーム1は、プラスチックボトルのキャップと嵌合する口部1aと、口部1aと隣接する円筒状胴部1bと、円筒状胴部1bの一方の端部を閉塞する底部1cとから成り、試験管のような形状を有する。口部1aの外周面には、プラスチックボトルのキャップの雌ネジと螺合する雄ネジが形成される。プリフォーム1の口部1a側の端部は開いている。プリフォーム1の成形後、プリフォーム1の外周面にはバリアコーティングが形成される。プリフォーム1のコーティング方法については後述する。
【0018】
プラスチックボトルは延伸ブロー成形によってプリフォーム1から成形される。図2(a)〜(d)は、プリフォーム1からプラスチックボトル3を成形するための延伸ブロー成形法を示す。最初に、図2(a)に示されるように、プリフォーム1がヒータ40で加熱される。次いで、図2(b)に示されるように、プリフォーム1が金型2に挿入され、金型2が閉じられる。次いで、図2(c)に示されるように、プリフォーム1が延伸ロッド(図示せず)で縦方向に延伸され且つ加圧空気で横方向に延伸される。次いで、図2(d)に示されるように、プリフォーム1が所望の形状まで膨らむと、冷却空気でプラスチックボトル3の内面が冷却され、最終的に、プラスチックボトル3が金型2から取り出される。図3は、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトル3を示す。
【0019】
<プリフォームのコーティング方法>
上述したように、プリフォーム1の成形後、プリフォーム1の外周面にはバリアコーティングが形成される。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォーム1の外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。バリアコーティングは、酸素及び二酸化炭素のようなガスが、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトルの内外に透過することを低減し、プラスチックボトルに収容される飲料等の保存寿命を延ばすことができる。また、バリアコーティングは、プラスチックボトルの引掻耐性、防湿性等も向上させることができる。
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るプリフォームのコーティング方法について詳細に説明する。図4は、本発明の実施形態に係るプリフォームのコーティング方法を示すフローチャートである。
【0021】
最初に、ステップS1において、コーティング液を準備する。コーティング液は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)溶液のようなガスバリア性を有するバリアコーティング液である。なお、コーティング液は、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリグリコール酸のようなバリア樹脂の溶液等であってもよい。また、コーティング液は、上記いずれかの溶液に無機材料が添加されたものであってもよい。コーティング液の粘度は例えば25mPa・s以上10000mPa・s以下である。なお、水よりも高い粘度のコーティング液を使用するとき、プリフォームに塗布されたコーティング液に気泡が発生しやすい。このため、水よりも高い粘度のコーティング液を使用するときに本発明を適用することで、より顕著な作用効果を奏することができる。したがって、本実施形態に用いられるコーティング液の粘度は、より高い方が好ましく、好ましくは50mPa・s以上10000mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0022】
次いで、ステップS2では、ステップS1において準備されたコーティング液を脱気する。本実施形態では、中空糸膜を有する脱気モジュールを用いてコーティング液を脱気する。本実施形態では、脱気されるコーティング液は前処理されていない。前処理とは、例えば、コーティング液にせん断力を適用する脱泡処理を含む。
【0023】
図5は、本実施形態における脱気処理の概略的なフロー図である。図5では、脱気モジュール5が断面図で示されている。脱気モジュール5は、細いパイプ状の中空糸膜51を複数有する。中空糸膜は、ポリメチルペンテン(PMP)、フッ素系樹脂(PFA、PTFE)等から構成される。中空糸膜は酸素及び窒素のような気体に対して高い透過性を有する。一方、中空糸膜は液体をほとんど通さない。
【0024】
中空糸膜51の両端の外側には減圧室52が形成されている。減圧室52は中空糸膜51の内部と連通している。減圧室52の圧力は脱気のために大気圧未満(例えば真空)にされる。減圧室52の減圧は、脱気モジュール5の外部に配置された真空ポンプ20によって行われる。
【0025】
脱気前のコーティング液は液収容タンク6に収容されている。液収容タンク6内のコーティング液は液供給ポンプ21によって送液管22を介して脱気モジュール5に供給される。脱気モジュール5の内部に流入したコーティング液は中空糸膜51の外側を通って液流出口53から脱気モジュール5の外部に送り出される。コーティング液が中空糸膜51の外側を通るとき、コーティング液に含まれた気体(酸素及び窒素)が中空糸膜51の内部に透過する。透過した気体は中空糸膜51の外側と減圧室52との間の圧力差によって中空糸膜51の内部を通って減圧室52に到達する。減圧室52に到達した気体は気体流出口54から排気管23を通って脱気モジュール5の外部に排出される。このため、コーティング液を脱気モジュール5の内部を通過させることによってコーティング液を脱気することができる。この結果、本実施形態によれば、プリフォーム1に塗布されたコーティング液に気泡が発生することを抑制することができる。
【0026】
また、中空糸膜を用いた本実施形態における脱気処理では、脱気のために羽根車のような回転体が用いられないため、コーティング液にせん断力が適用されない。このため、コーティング液の白濁化といったコーティング液の特性変化を防止することができる。
【0027】
上述したように、本実施形態の脱気モジュール5では、液体が中空糸膜51の外側を通り、気体が中空糸膜51の内部を通る。したがって、本実施形態の脱気モジュール5はいわゆる外部還流方式の脱気モジュールである。なお、脱気モジュール5は、液体が中空糸膜51の内部を通り、気体が中空糸膜51の外側を通る内部還流方式の脱気モジュールであってもよい。また、コーティング液の脱気は、コーティング液を脱気モジュール5の内部を複数回通過させることによって行われてもよい。
【0028】
次いで、ステップS3では、ステップS2において脱気されたコーティング液をプリフォーム1に塗布する。以下、図6図9を参照して、コーティング液の塗布方法の例について説明する。
【0029】
図6は、ディッピング方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。ディッピング(浸漬)方式では、容器30に収容されたコーティング液にプリフォーム1を浸漬することによってプリフォーム1にコーティング液が塗布される。図7は、ブロー方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。ブロー方式では、スプレー31のような噴射器でコーティング液をプリフォーム1に吹き付けることによってプリフォーム1にコーティング液が塗布される。
【0030】
図8は、コーター方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。コーター方式では、ダイコータ32のスロットからコーティング液をプリフォーム1に向かって吐出することによってプリフォーム1にコーティング液が塗布される。図9は、ローラ転写方式によるコーティング液の塗布方法を概略的に示す。ローラ転写方式では、ローラ33の外面に塗布されたコーティング液をローラ33の回転によってプリフォーム1に転写することによってプリフォーム1にコーティング液が塗布される。
【0031】
次いで、ステップS4では、ステップS3においてプリフォーム1に塗布されたコーティング液を乾燥させる。例えばヒータを用いてコーティング液を乾燥させることができる。ヒータは例えばカーボンヒータ又は遠赤外線ヒータである。なお、カーボンヒータ及び遠赤外線ヒータの両方を用いてコーティング液を乾燥させてもよい。コーティング液を乾燥させることによって、プリフォーム1の外周面にバリアコーティングが形成される。
【0032】
なお、ガスバリア性を有するバリアコーティング液をプリフォーム1に塗布した後、バリアコーティング液を保護する保護コーティング液をバリアコーティング液の上に更に塗布してもよい。保護コーティング液は、例えば、ポリオレフィン分散溶液、各種変性ポリオレフィン分散溶液、ポリビニルブチラール(PVB)のような非水溶性のコーティング剤である。保護コーティング液の粘度は例えば0.5mPa・s以上100mPa・s以下である。保護コーティング液は、上述したステップS1〜ステップS4と同様の方法でプリフォーム1にコーティングされる。
【0033】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 プリフォーム
2 金型
3 プラスチックボトル
5 脱気モジュール
6 液収容タンク
20 真空ポンプ
21 液供給ポンプ
30 容器
31 スプレー
32 ダイコータ
33 ローラ
51 中空糸膜
52 減圧室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9