(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用空調装置では、ケーシングの上側にベント吹出口が形成されているので、吹出モードがベントモードにあるときにはケーシング内の空気が全体として上方へ向けて流れることになる。このベントモードは主に冷房時に使用される吹出モードであるため、上側バイパス通路及び下側バイパス通路の開度が大きく設定されており、このことと、上述したケーシング内において全体的に空気が上方へ流れる傾向とに起因して、上側バイパス通路の方が下側バイパス通路に比べて風量が多くなることが考えられる。従って、冷却用熱交換器における上側を通過する空気量が下側を通過する空気量よりも多くなるので、冷却用熱交換器の上から下までを効率良く利用できず、その結果、冷房能力の低下を招く恐れがある。
【0007】
また、特許文献2の温度調節ダンパでは、複数の板状部材を有するルーバーダンパであることから当該板状部材による風向制御が可能になるという利点がある。そこで、ルーバーダンパを特許文献1の温度調節ダンパとして用いることが考えられる。ところが、特許文献2に開示されているように、ルーバーダンパの板状部材の向きは、通路の延びる方向に向けるのが一般的であるため、ルーバーダンパを特許文献1の温度調節ダンパとして用いた場合、ルーバーダンパによって冷風が上側バイパス通路へ向けて流れ易くなり、その結果、上側バイパス通路の風量がより一層多くなり、冷却用熱交換器における上側を通過する空気量が下側を通過する空気量よりも多くなることを助長する結果になる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加熱用熱交換器の上方及び下方にそれぞれ冷風をバイパスさせて流すバイパス通路を設け、ケーシングの上側にベント吹出口を形成する場合に、冷却用熱交換器を通過する空気の配分を全体的に均一化して冷房能力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、上側及び下側バイパス通路をそれぞれ開閉する複数の板状部材を有する温度調節ダンパを設け、この温度調節ダンパに、上側バイパス通路に流入する冷風の流れを阻害する邪魔板を設けた。
【0010】
第1の発明は、
空調用空気が導入されるとともに、乗員の上半身に向けて空調風を供給するためのベント吹出口が上側に形成されたケーシングと、
上記ケーシングの内部に収容され、該ケーシングに導入された空調用空気を冷却する冷却用熱交換器と、
上記ケーシングの内部において上記冷却用熱交換器の空気流れ方向下流側に収容され、上記冷却用熱交換器を通過した空気を加熱する加熱用熱交換器と、
上記ケーシングの内部において上記冷却用熱交換器と上記加熱用熱交換器との間に配設されて空調風の温度を調節するための温度調節ダンパとを備えた車両用空調装置において、
上記ケーシングの内部における上記加熱用熱交換器の上方及び下方には、それぞれ、上記冷却用熱交換器を通過した空気を、上記加熱用熱交換器をバイパスさせて流す上側及び下側バイパス通路が上記ベント吹出口に連通するように形成され、
上記温度調節ダンパは、上記上側及び下側バイパス通路の上流側に配置されて該上側及び下側バイパス通路の上流側をそれぞれ開閉するための複数の板状部材と、上記上側バイパス通路に流入する冷風の流れを阻害する邪魔板と
、上記板状部材及び上記邪魔板を回動可能に支持する枠体と、上記邪魔板と上記板状部材とを連結して連動させるための連結部材とを有し
、
上記枠体の上下方向中間部には、上下方向に延びる板部が設けられ、
上記連結部材は、上記板状部材が上記上側及び下側バイパス通路の上流側を開く回動位置にあるときに、上記邪魔板の空気流れ方向下流側の縁部が上記枠体の上下方向中間部に設けられた上記板部に接触するように、上記邪魔板を配置するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ケーシングに導入された空調用空気は、まず、冷却用熱交換器を通過して冷却される。ここで、吹出モードがベントモードにあるときには一般的に冷房であるので、温度調節ダンパは上側及び下側バイパス通路の上流側を開き、冷却用熱交換器を通過した空気が主に上側及び下側バイパス通路を通ってベント吹出口へ流れる。このとき、ベント吹出口がケーシングの上側に形成されていることから、ケーシング内において全体的に空気が上方へ流れようとする。本発明では、上側バイパス通路に流入する冷風の流れを阻害する邪魔板が温度調節ダンパに設けられているので、ケーシング内において空気の流れが上方に偏るのが抑制される。これにより、冷却用熱交換器を通過する空気の配分を全体的に均一化することが可能になる。
【0012】
また、温度調節ダンパの開度が邪魔板の必要な開度にあるときにだけ、邪魔板による作用が得られるように、邪魔板を温度調節ダンパの板状部材と連動させることが可能になる
。
【0013】
第
2の発明は、第1の発明において、
上記邪魔板は、上記上側バイパス通路の上流側の下部に配置されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、ベント吹出口がケーシングの上側に形成されていることから、ベントモードにあるときには、冷却用熱交換器を通過した冷風が、上側バイパス通路の上流側に流入する際、全体として下から上に向かう流れとなる。この発明では、上側バイパス通路の上流側の下部に邪魔板を配置しているので、上側バイパス通路の上流側に流入する冷風の流れを効果的に阻害することが可能になる。
【0015】
第
3の発明は、第
1の発明において、
上記邪魔板は、上記上側バイパス通路の上流側を開く回動位置から閉じる回動位置まで回動し、上記上側バイパス通路の上流側を開く回動位置にあるときに上記上側バイパス通路に流入する冷風の流れに対向するように配置されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、上側バイパス通路の上流側を邪魔板によって開閉することが可能になる。そして、邪魔板が、上側バイパス通路の上流側を開く回動位置にあるときに、上側バイパス通路に流入する冷風の流れを阻害するように配置されるので、上側バイパス通路の上流側に流入する冷風の流れを効果的に阻害することが可能になる。
【0017】
第4の発明は、上記枠体の上下方向中間部に設けられた上記板部は、上記上側バイパス通路に流入する冷風の流れに対向するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、加熱用熱交換器の上方及び下方にそれぞれ冷風をバイパスさせて流す上側及び下側バイパス通路を設け、ケーシングの上側にベント吹出口を形成する場合に、上側及び下側バイパス通路をそれぞれ開閉する複数の板状部材を有する温度調節ダンパをケーシングの内部に設け、この温度調節ダンパに、上側バイパス通路に流入する冷風の流れを阻害する邪魔板を設けたので、冷却用熱交換器を通過する空気の配分を全体的に均一化して冷房能力を高めることができる
。
【0019】
第
2の発明によれば、邪魔板を上側バイパス通路の上流側の下部に配置することで、上側バイパス通路の上流側に流入する冷風の流れを効果的に阻害することができる。
【0020】
第
3の発明によれば、邪魔板が上側バイパス通路の上流側を開く回動位置から閉じる回動位置まで回動し、上側バイパス通路の上流側を開く回動位置にあるときに上側バイパス通路に流入する冷風の流れに対向するように配置される。これにより、上側バイパス通路の上流側に流入する冷風の流れを効果的に阻害することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置1の縦断面図を示すものである。この車両用空調装置1は、図示しないが自動車の車室の前端部に配設されているインストルメントパネルの内部に収容されている。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0024】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットを備えている。この送風ユニットは、車室外の空気と車室内の空気とを導入して空調用空気として送風することができるように構成された周知のものである。また、この実施形態の送風ユニットは、車室外の空気を送風する外気導入モードと、車室内の空気を送風する内気循環モードと、車室外の空気及び車室内の空気を区別して同時に送風する内外気2層流モードとに切替可能に構成されている。このような構成の送風ユニットとしては、例えば上記特許文献1に開示されている構造のものを挙げることができる。
【0025】
車両用空調装置1は、送風ユニットから送風される空調用空気が導入されるケーシング2と、ケーシング2の内部に収容される冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4と、温度調節ダンパ5と、デフロスタダンパ6と、ベントダンパ7と、ヒートダンパ8とを備えている。ケーシング2は、例えば左右方向に分割された複数の樹脂製部材を組み合わせて構成されている。ケーシング2の右側壁部の前部には、空調用空気を導入するための空気導入口2aが形成されている。この空気導入口2aは上下方向に長い形状となっており、ケーシング2の上部近傍から下部近傍に亘って開口している。
【0026】
ケーシング2の上壁部には、空気導入口2aよりも前側にデフロスタ吹出口2bが形成されている。デフロスタ吹出口2bは、インストルメントパネルの前端部に形成されたデフロスタ開口部(図示せず)にデフロスタダクト(図示せず)を介して接続されている。デフロスタ開口部は、自動車のフロントガラスの内面に空調風を供給するためのものである。
【0027】
ケーシング2の後壁部の上部には、ベント吹出口2cが形成されている。ベント吹出口2cは、インストルメントパネルの左右両側に形成されたサイドベント開口部と、中央部に形成されたセンタベント開口部(共に図示せず)とに、ベントダクト(図示せず)を介して接続されている。サイドベント開口部及びセンタベント開口部は、乗員の上半身に向けて空調風を供給するためのものである。尚、ベント吹出口2cの形成箇所は、ケーシング2の上側、即ち、上下方向中央部よりも上であればよく、例えばケーシング2の上壁部に形成してもよい。
【0028】
ケーシング2の下側には、ヒート吹出口2dが形成されている。ヒート吹出口2dには、ヒートダクト(図示せず)が接続されている。ヒートダクトは、乗員の足下近傍に空調風を供給するためのものである。
【0029】
デフロスタダンパ6は、デフロスタ吹出口2bを開閉するためのものであり、左右方向に延びる回動軸6aと、回動軸6aの径方向に延びる閉塞板部6bとを有している。回動軸6aは、ケーシング2の左右両側壁部に回動可能に支持されている。閉塞板部6bは、デフロスタ吹出口2bをケーシング2の内側から覆うことができる大きさに形成されており、回動軸6aと一体に回動することによって
図1に実線で示すようにデフロスタ吹出口2bを閉塞する位置と、仮想線で示すようにデフロスタ吹出口2bを開く位置とに切り替えられるとともに、途中で停止させることもできる。
【0030】
ベントダンパ7は、ベント吹出口2cを開閉するためのものであり、デフロスタダンパ6と同様に回動軸7aと閉塞板部7bとを有している。閉塞板部7bは、ベント吹出口2cをケーシング2の内側から覆うことができる大きさに形成されており、回動軸7aと一体に回動することによって
図1に実線で示すようにベント吹出口2cを開く位置と、仮想線で示すようにベント吹出口2cを閉塞位置とに切り替えられるとともに、途中で停止させることもできる。
【0031】
ヒートダンパ8は、ヒート吹出口2dを開閉するためのものであり、デフロスタダンパ6と同様に回動軸8aと閉塞板部8bとを有している。閉塞板部8bは、ヒート吹出口2dをケーシング2の内側から覆うことができる大きさに形成されており、回動軸8aと一体に回動することによって
図1に実線で示すようにヒート吹出口2dを閉塞する位置と、仮想線で示すようにヒート吹出口2dを開く位置とに切り替えられるとともに、途中で停止させることもできる。
【0032】
尚、デフロスタダンパ6、ベントダンパ7及びヒートダンパ8の構造は上述した構造に限られるものではなく、いわゆるバタフライタイプのダンパやロータリーダンパ等を用いることもできる。また、デフロスタ吹出口2b、ベント吹出口2c及びヒート吹出口2dの形成位置は、車両の構造等に応じて変更することも可能である。
【0033】
デフロスタダンパ6、ベントダンパ7及びヒートダンパ8は、図示しないアクチュエータ及びリンク機構によって連動するようになっている。そして、
図1に実線で示すように、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出口2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出口2dを閉じて、ベントダンパ7がベント吹出口2cを開く開閉状態にあるときには、吹出モードがベントモードとなり、空調風の殆どがベント吹出口2cから吹き出す。吹出モードはベントモード以外にもデフロスタモード、ヒートモード、バイレベルモード、デフヒートモード等に切り替えることができるようになっている。デフロスタモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出口2bを開き、ヒートダンパ8がヒート吹出口2dを閉じて、ベントダンパ7がベント吹出口2cを閉じるモードである。ヒートモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出口2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出口2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出口2cを閉じるモードである。バイレベルモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出口2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出口2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出口2cを開くモードである。デフヒートモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出口2bを開き、ヒートダンパ8がヒート吹出口2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出口2cを閉じるモードである。
【0034】
ケーシング2の内部の前側には、前側仕切板20が配設されている。前側仕切板20は、ケーシング2の内部の上下方向略中央部に配設されてケーシング2の前壁内面から後方へ向かって延びている。前側仕切板20の配設位置は、ヒート吹出口2dの形成位置よりも高く、ベント吹出口2c及びデフロスタ吹出口2bの形成位置よりも低く設定されている。
【0035】
前側仕切板20により、ケーシング2の内部の前側が上下に2つに仕切られ、前側仕切板20よりも上側の空間と下側の空間とにそれぞれ空調用空気が送風されるようになっている。送風ユニットが内外気2層流モードにあるときには、外気が前側仕切板20よりも上側の空間に送風され、内気が前側仕切板20よりも下側の空間に送風されるようになっている。前側仕切板20の後端部は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向上流側の面に接近している。
【0036】
冷却用熱交換器3は、ケーシング2の内部において前側仕切板20の後側に配設されている。冷却用熱交換器3は、例えばヒートポンプの冷媒蒸発器等で構成することができるものであり、上部ヘッダタンク3a及び下部ヘッダタンク3bと、これらヘッダタンク3a、3bの間に設けられるコア3cとを有している。上部ヘッダタンク3a及び下部ヘッダタンク3bは、ケーシング2の上壁部及び下壁部にそれぞれ保持されている。コア3cは上下方向に延びる複数のチューブやフィン等からなるものである。空調用空気は、コア3cを通過して前側から後側へ向けて流れるようになっており、このときに空調用空気が熱媒体と熱交換して冷却される。
【0037】
加熱用熱交換器4は、ケーシング2の内部において冷却用熱交換器3から後側に離れて配設されている。加熱用熱交換器4は、例えば車両に搭載されているエンジンの冷却水が循環するヒータコア等で構成することができるものであり、上部ヘッダタンク4a及び下部ヘッダタンク4bと、これらヘッダタンク4a、4bの間に設けられるコア4cとを有している。コア4cは上下方向に延びる複数のチューブやフィン等からなるものである。空調用空気は、コア4cを通過して前側から後側へ向けて流れるようになっており、このときに空調用空気が熱媒体と熱交換して加熱される。
【0038】
この実施形態では、空気導入口2aがケーシング2の前側に形成され、デフロスタ吹出口2b、ベント吹出口2c及びヒート吹出口2dがケーシング2の後側に形成されているので、空気導入口2aから導入された空調用空気はケーシング2の内部で後側へ向けて流れることになる。従って、加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向下流側に収容されることになり、冷却用熱交換器3を通過した空気を加熱するものである。
【0039】
加熱用熱交換器4の上下寸法は、冷却用熱交換器3の上下寸法よりも短く設定されている。そして、加熱用熱交換器4は、ケーシング2の上壁部から下に離れ、かつ、ケーシング2の下壁部から上に離れた部位に位置付けられ、該ケーシング2の内部に形成された上部保持部21によって上部ヘッダタンク4aが保持されるとともに、該ケーシング2の内部に形成された下部保持部22によって下部ヘッダタンク4bが保持される。
【0040】
加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には、後述する温度調節ダンパ5を配設するためのスペースが設けられている。この温度調節ダンパ5は、いわゆるルーバーダンパであることから前後方向の寸法を短くすることができるので、温度調節ダンパ5を配設するためのスペースは小さくて済み、その結果、ケーシング2を小型化することができる。
【0041】
ケーシング2の内部には、冷却用熱交換器3が配設される冷風生成通路R1と、加熱用熱交換器4が配設される温風生成通路R2と、上側及び下側バイパス通路R3、R4と、エアミックス空間R5とが形成されている。冷風生成通路R1は、その上流端が空気導入口2aに接続され、後側へ向かって延びている。冷風生成通路R1は、冷却用熱交換器3によって冷風を生成する通路である。温風生成通路R2は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の上下方向中間部に接続され、後側へ向かって延びている。温風生成通路R2は、加熱用熱交換器4によって温風を生成する通路である。
【0042】
上側及び下側バイパス通路R3、R4は、加熱用熱交換器4の上方及び下方にそれぞれ形成されている。具体的には、上側バイパス通路R3は、ケーシング2の上壁部と上部保持部21との間に形成される一方、下側バイパス通路R4は、ケーシング2の下壁部と下部保持部22との間に形成される。上側及び下側バイパス通路R3、R4は、冷却用熱交換器3を通過した空気を、加熱用熱交換器4をバイパスさせて下流側、即ち後側へ流すための通路である。上側バイパス通路R3は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の上部に接続され、後側へ向かって延びている。下側バイパス通路R4は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の下部に接続され、後側へ向かって延びている。つまり、上側及び下側バイパス通路R3、R4の間に温風生成通路R2が位置している。
【0043】
エアミックス空間R5は、ケーシング2の内部において最後部に形成されている。エアミックス空間R5の下部には、温風生成通路R2の下流端が連通している。また、エアミックス空間R5には、上側及び下側バイパス通路R3、R4の下流端が連通している。温風生成通路R2及び上側及び下側バイパス通路R3、R4からエアミックス空間R5に流入した空気が該エアミックス空間R5内で混合するようになっている。また、エアミックス空間R5は、デフロスタ吹出口2b、ベント吹出口2c及びヒート吹出口2dに連通している。つまり、上側及び下側バイパス通路R3、R4は、エアミックス空間R5を介してベント吹出口2cに連通することになる。
【0044】
次に、温度調節ダンパ5の構造について説明する。温度調節ダンパ5は、
図1及び
図2に示すように、冷却用熱交換器3と加熱用熱交換器4との間に配設されて空調風の温度を調節するためのものである。温度調節ダンパ5は、
図3に示すように、上側板状部材50と、下側板状部材51と、温風通路開閉用板状部材52と、邪魔板53と、取付部材56と、連結部材57、58とを備えている。上側板状部材50、下側板状部材51、温風通路開閉用板状部材52及び邪魔板53は、それぞれ左側及び右側に同じように設けられており、左側に設けられるものは取付部材56の左側に回動可能に支持され、右側に設けられるものは取付部材56の右側に回動可能に支持される。そして、取付部材56は、ケーシング2に取り付けられる。取付部材56の上下方向の中間部には、空気流れ方向上流側へ延出する延出板部56aが形成されている。
図1及び
図2に示すように、延出板部56aの高さと前側仕切板20の高さとは略同じに設定されている。
図3や
図7に示すように、延出板部56aは左右方向に間隔をあけて2枚設けられている。
【0045】
上側板状部材50は、この実施形態では左右にそれぞれ3つずつ設けられているが、これに限られるものではなく、複数設けられていればよい。上側板状部材50は、温度調節ダンパ5の左側と右側とでそれぞれ上下方向に並ぶように設けられており、上側バイパス通路R3の上流側に配置され、該上側バイパス通路R3の上流側を開閉するためのものである。すなわち、左側に配置される上側板状部材50は、左右方向に延びる板状をなしており、その左右方向の両端部には、左右方向に延びる支軸50aが設けられている。この支軸50aは、取付部材56の軸受孔54aに回動可能に挿入されている。取付部材56の軸受孔54aは、上下方向に間隔をあけて多数設けられている。上側板状部材50は、空気流れ方向の下流側へ行くほど下に位置するように傾斜して上側バイパス通路R3を開く回動位置(
図1及び
図10に示すフルコールド状態)と、上下方向に延びて上側バイパス通路R3を閉じる回動位置(
図2及び
図12に示すフルホット状態)との間で回動し、任意の回動位置で停止させることが可能になっている。右側に配置される上側板状部材50も同様に構成されており、取付部材56の軸受孔55aに回動可能に挿入されている。取付部材56の軸受孔55aも上下方向に間隔をあけて多数設けられている。尚、
図12に示すように、フルコールド状態とフルホット状態の中間域となる回動角度にすることもできる。
【0046】
下側板状部材51は、この実施形態では左右にそれぞれ4つずつ設けられているが、これに限られるものではなく、複数設けられていればよい。下側板状部材51は、温度調節ダンパ5の左側と右側とでそれぞれ上下に並ぶように設けられており、下側バイパス通路R4の上流側に配置され、該下側バイパス通路R4の上流側を開閉するためのものである。すなわち、左側に配置される下側板状部材51は、左右方向に延びる板状をなしており、その左右方向の両端部には、左右方向に延びる支軸51aが設けられている。この支軸51aは、取付部材56の軸受孔54aに回動可能に挿入されている。下側板状部材51は、空気流れ方向の下流側へ行くほど下に位置するように傾斜して上側バイパス通路R3を開く回動位置(
図1及び
図10に示すフルコールド状態)と、上下方向に延びて上側バイパス通路R3を閉じる回動位置(
図2及び
図12に示すフルホット状態)との間で回動し、任意の回動位置で停止させることが可能になっている。右側に配置される下側板状部材51も同様に構成されており、取付部材56の軸受孔55aに回動可能に挿入されている。尚、
図12に示すように、フルコールド状態とフルホット状態の中間域となる回動角度にすることもできる。
【0047】
温風通路開閉用板状部材52も温度調節ダンパ5の左側と右側とにそれぞれ複数設けられており、温風生成通路R2の上流側に配置され、該温風生成通路R2の上流側を開閉するためのものである。すなわち、左側に配置される温風通路開閉用板状部材52は、左右方向に延びる板状をなしており、その左右方向の両端部には、左右方向に延びる支軸52aが設けられている。この支軸52aは、取付部材56の軸受孔54aに回動可能に挿入されている。温風通路開閉用板状部材52は、空気流れ方向の下流側へ行くほど上に位置するように傾斜して温風生成通路R2を開く回動位置(
図2及び
図12に示すフルホット状態)と、上下方向に延びて温風生成通路R2を閉じる回動位置(
図1及び
図10に示すフルコールド状態)との間で回動し、任意の回動位置で停止させることが可能になっている。右側に配置される温風通路開閉用板状部材52も同様に構成されており、取付部材56の軸受孔55aに回動可能に挿入されている。尚、
図12に示すように、フルコールド状態とフルホット状態の中間域となる回動角度にすることもできる。
【0048】
邪魔板53は温度調節ダンパ5の左側と右側とに1つずつ設けられており、上側バイパス通路R3に流入する冷風の流れを阻害するためのものである。すなわち、左側に配置される邪魔板53は、左右方向に延びる板状をなしており、上側バイパス通路R3の上流側の下部に配置されている。邪魔板53の左右方向の両端部には、
図4〜
図6に示すように左右方向に延びる支軸53aが設けられている。この支軸53aは、取付部材56の軸受孔54aに回動可能に挿入されている。邪魔板53は、空気流れ方向の下流側へ行くほど下に位置するように傾斜した回動位置(
図1及び
図10に示すフルコールド状態)と、上下方向に延びて温風生成通路R2を閉じる回動位置(
図2及び
図12に示すフルホット状態)との間で回動し、任意の回動位置で停止させることが可能になっている。右側に配置される邪魔板53も同様に構成されており、取付部材56の軸受孔55aに回動可能に挿入されている。尚、
図12に示すように、フルコールド状態とフルホット状態の中間域となる回動角度にすることもできる。
【0049】
図3に示すように、連結部材57は上下方向に延びる棒状に形成され、取付部材56の左右両側にそれぞれ配設される。連結部材57には、多数の連結孔57aが上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。上側板状部材50の左右方向の両端部には、連結軸50bが左右方向に突出するように形成されており、この連結軸50bが連結部材57の連結孔57aに回動可能に挿入される。また、下側板状部材51にも同様な連結軸51bが形成されており、この連結軸51bが連結部材57の連結孔57aに回動可能に挿入される。また、温風通路開閉用板状部材52にも同様な連結軸52bが形成されており、この連結軸52bが連結部材57の連結孔57aに回動可能に挿入される。さらに、邪魔板53にも同様な連結軸53bが形成されており、この連結軸53bが連結部材57の連結孔57aに回動可能に挿入される。したがって、上側板状部材50と、下側板状部材51と、温風通路開閉用板状部材52と、邪魔板53の全てが連結部材57によって連結される。そして、上側板状部材50と、下側板状部材51と、温風通路開閉用板状部材52と、邪魔板53のいずれかが支軸50a、51a、52a、53a周りに回動する方向に駆動されると、その駆動力が連結部材57を介して上側板状部材50、下側板状部材51、温風通路開閉用板状部材52及び邪魔板53に伝達されて上側板状部材50、下側板状部材51、温風通路開閉用板状部材52及び邪魔板53が同様に支軸50a、51a、52a、53a周りに回動する。
【0050】
連結部材57は、上側板状部材50、下側板状部材51及び温風通路開閉用板状部材52が上側及び下側バイパス通路R3、R4の上流側を開く回動位置にあるときに、上側バイパス通路R3に流入する冷風の流れに対向するように邪魔板53を配置する。すなわち、
図1に示すフルコールド状態にあるときには、上側板状部材50及び下側板状部材51が上側及び下側バイパス通路R3、R4の上流側を開いている。このときの邪魔板53の回動位置は、連結部材57に形成されている連結孔57aの位置等によって変更することができ、この実施形態では、上側バイパス通路R3の上流側の下部に配置されている邪魔板53が、矢印Aで示す上側バイパス通路R3への冷風の流入方向に対向するように配置されている。
【0051】
連結部材58は、取付部材56の左右両側にそれぞれ配設されるものであり、取付部材56に配設される連結部材57と同様に構成されて右側に設けられる上側板状部材50、下側板状部材51、温風通路開閉用板状部材52及び邪魔板53を連動させるためのものである。
【0052】
また、
図3等に示すように、左側に設けられる温風通路開閉用板状部材52の左端部には、アクチュエータ(図示せず)が連結される駆動軸52dが左側へ突出するように設けられている。駆動軸52dをアクチュエータによって回動させることで上側板状部材50、下側板状部材51、温風通路開閉用板状部材52及び邪魔板53が回動するようになっている。同様に、右側に設けられる温風通路開閉用板状部材52の右端部には、アクチュエータ(図示せず)が連結される駆動軸52dが右側へ突出するように設けられている。従って、この実施形態では、ケーシング2の内部において左側と右側とで個別に温度調節することが可能になっており、いわゆる左右独立温度コントロールが可能な構造となっている。
【0053】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。
図1に示すように、吹出モードがベントモードである場合には、殆どの場合、上側及び下側バイパス通路R3、R4を全開にしたフルコールド状態もしくは上側及び下側バイパス通路R3、R4を全開に近い開度にする。そして、送風ユニットから送風された空調用空気は、空気導入口2aからケーシング2の内部に導入された後、冷却用熱交換器3を通過してから上側及び下側バイパス通路R3、R4に流入する。このとき、ベントモードではケーシング2の上側に形成されているベント吹出口2cに向けて空気が流れていくので、ケーシング2の内部における空気の流れは、全体的に上側に偏り易くなるが、この実施形態では、
図1に示すように邪魔板53が上側バイパス通路R3への冷風の流入方向Aに対向するように配置されて上側バイパス通路R3に流入する冷風の流れを阻害している。これにより、上側バイパス通路R3に流入する冷風量が多くなり過ぎるのが抑制されるので、ケーシング2の内部において空気の流れが上方に偏るのが抑制される。その結果、冷却用熱交換器3を通過する空気の配分を全体的に均一化することができ、冷房能力を高めることができる。そして、エアミックス空間R5に流入した空気はベント吹出口2cから吹き出して乗員の上半身に向けて供給される。
【0054】
図2に示すフルホット状態では、上側及び下側バイパス通路R3、R4には殆ど冷風が流れることはなく、冷風は加熱用熱交換器4を通過して加熱された後、エアミックス空間R5に流入し、吹出モードに応じて車室に供給される。
【0055】
また、
図11に示すように中間域では、上側及び下側バイパス通路R3、R4及び温風生成通路R2に冷風が流入した後、エアミックス空間R5に流入して混合される。これにより、所望温度の空調風が得られ、吹出モードに応じて車室に供給される。上側板状部材50、下側板状部材51及び温風通路開閉用板状部材52の回動角度を変更することでエアミックス空間R5に流入する冷風量及び温風量を変えて空調風の温度を調節することができる。
【0056】
また、中間域では、温風生成通路R2で生成された温風がエアミックス空間R5の下方から上方に向けて流れることになる。一方、上側バイパス通路R3からエアミックス空間R5に流入する冷風は、上側板状部材50によって下方へ向けて案内される。従って、上側バイパス通路R3からエアミックス空間R5に流入する冷風の流れと、温風生成通路R2からエアミックス空間R5に流入する温風の流れとを衝突させることができ、エアミックス性を良好にすることができる。
【0057】
さらに、中間域では、温風生成通路R2で生成された温風と、上側バイパス通路R3を流れた冷風とがエアミックス空間R5に流入することになる。目標吹出温度によっては、上側バイパス通路R3を僅かに開いてエアミックス空間R5に流入する冷風量を少なくする場合がある。この場合には、温度調節ダンパ5の上側板状部材50が微小開度となるように、当該上側板状部材50を回動させる。このとき、全ての上側板状部材50の間に隙間ができるので、微小開度であっても冷風の流入量が多くなりがちであるが、その冷風は上側板状部材50によってエアミックス空間R5の下方へ向けて案内されることになる。したがって、デフロスタ吹出口2bから空調風が吹き出す吹出モードにある場合にデフロスタ吹出口2bに低温の空気が一気に流れ込んでしまうのを抑制することができ、ウインドガラスの曇りを良好に晴らすことができる。
【0058】
(実施形態2)
図13及び
図14は、本発明の実施形態2に係る車両用空調装置1を示すものである。実施形態2は、実施形態1のものに対し、温度調節ダンパ5の構成及びケーシング2の通路構成が異なるだけであり、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0059】
すなわち、この実施形態2では、
図13及び
図14に示すように、上側板状部材50、邪魔板53及び前側仕切板20よりも上に位置する温風通路開閉用板状部材52の回動方向と、下側板状部材51及び前側仕切板20よりも下に位置する温風通路開閉用板状部材52の回動方向とが反対方向となるように、温度調節ダンパ5が構成されている。具体的には、下側板状部材51及び前側仕切板20よりも下に位置する温風通路開閉用板状部材52の回動方向は、実施形態1と同じである一方、上側板状部材50、邪魔板53及び前側仕切板20よりも上に位置する温風通路開閉用板状部材52の回動方向の回動方向は実施形態1とは異なっている。
【0060】
図15に示すように、温度調節ダンパ5の左側には、連結部材57A、57Bが設けられている。上側板状部材50、邪魔板53及び前側仕切板20よりも上に位置する温風通路開閉用板状部材52は、連結部材57Aにより連結される一方、下側板状部材51及び前側仕切板20よりも下に位置する温風通路開閉用板状部材52は、連結部材57Bにより連結される。そして、前側仕切板20よりも上に位置する温風通路開閉用板状部材52と、前側仕切板20よりも下に位置する温風通路開閉用板状部材52との両方に、アクチュエータ(図示せず)が連結される駆動軸52dが設けられており、独立して駆動することができるようになっている。右側も同様に連結部材58A、58Bが設けられている。
【0061】
また、上側板状部材50及び邪魔板53は、上側バイパス通路R3を開いた状態で、空気流れ方向下流側へ行くほど上に位置するように傾斜している。このため、邪魔板53の空気流れ方向下流側の縁部が、取付部材56の上下方向中間部に設けられている上下方向に延びる板部54cに近接ないし接触し、これにより、矢印Aで示す上側バイパス通路R3への冷風の流入を邪魔板53が阻害する。
【0062】
したがって、この実施形態2に係る車両用空調装置1によれば、実施形態1と同様に、上側バイパス通路R3に流入する冷風の流れを阻害することができるので、冷却用熱交換器3を通過する空気の配分を全体的に均一化することができ、冷房能力を高めることができる。
【0063】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。