特許第6628612号(P6628612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628612
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】画像処理システム、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20200106BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   G06T1/00 285
   G06T5/00 735
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-4570(P2016-4570)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-126167(P2017-126167A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】草場 力
(72)【発明者】
【氏名】渥美 太一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伴英
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−159886(JP,A)
【文献】 特開平03−243060(JP,A)
【文献】 特開2009−081794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00− 1/40、 3/00− 9/40
H04N 1/40−1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出器を用いて撮影した画像データの画素値を補正する画像処理システムであって、
画像処理に用いられる各種プログラムを格納する記憶装置と、
前記記憶装置から前記各種プログラムを読み込み、実行するプロセッサと、を有し、
前記プロセッサは、
所定のアルゴリズムを用いて、前記画像データから特定の領域を抽出する特定領域抽出処理と、
前記抽出された特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を、自然要因による画素値ばらつきが少ない領域である探索対象領域として抽出する探索対象領域抽出処理と、
前記探索対象領域における所定方向の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、前記所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する境界検出処理と、
前記画像データを前記境界で区切って得られる複数のサブ領域のそれぞれの画素値に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する補正処理と、
を実行し、
前記探索対象領域抽出処理において、
前記特定の領域のそれぞれをm×n(m及びnは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割し、当該区画ごとに画素の明度の平均値を算出する処理と、
前記明度の平均値を複数の区分に分類し、当該区分ごとに算出した明度の平均値の低い値を優先して前記第1の閾値として決定する処理と、
前記第1の閾値以下の明度の画素が前記画像データの端から端まで存在する探索ラインが少なくとも2つ存在する場合に、前記第1の閾値以下の明度の画素を前記探索対象領域として抽出する処理と、
を実行する、画像処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記補正処理において、前記複数のサブ領域内の画素値の平均値を算出し、前記複数のサブ領域間の前記平均値の差分に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する、画像処理システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記境界検出処理において、少なくとも2本の探索ラインで隣接する画素間の明度の差が前記第2の閾値以上となる位置を特定する、画像処理システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記プロセッサは、
前記特定領域抽出処理において、海に属する領域を前記特定の領域とし抽出し、
前記探索対象領域抽出処理において、前記自然要因による画素値ばらつきが少ない領域として深海領域を抽出する、画像処理システム。
【請求項5】
複数の検出器を用いて撮影した画像データの画素値を補正する画像処理システムであって、
画像処理に用いられる各種プログラムを格納する記憶装置と、
前記記憶装置から前記各種プログラムを読み込み、実行するプロセッサと、を有し、
前記プロセッサは、
所定のアルゴリズムを用いて、前記画像データから特定の領域を抽出する特定領域抽出処理と、
前記抽出された特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を、自然要因による画素値ばらつきが少ない領域である探索対象領域として抽出する探索対象領域抽出処理と、
前記探索対象領域における所定方向の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、前記所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する境界検出処理と、
前記画像データを前記境界で区切って得られる複数のサブ領域のそれぞれの画素値に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する補正処理と、
を実行し、
記補正処理において、
前記複数のサブ領域のそれぞれをi×j(i及びjは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割する処理と、
前記複数の区画のそれぞれにおける明度の分散値及び明度の平均値を算出する処理と、
前記複数の区画のうち前記明度の平均値が所定の値以下の区画の中で分散値が最も小さい区画を補正基準区画として抽出する処理と、
前記複数のサブ領域における前記補正基準区画のそれぞれから画素値の平均値を算出し、前記補正基準区画間の前記平均値の差分に基づいて前記複数のサブ領域における画素値の補正を行う処理と、
を実行する、画像処理システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記プロセッサは、前記補正処理において、指定された前記サブ領域の前記補正基準区画の画素値の平均値と、他のサブ領域における前記補正基準区画の画素値の平均値を比較してオフセット値を算出し、当該オフセット値を用いて前記他のサブ領域の画素値を補正する、画像処理システム。
【請求項7】
複数の検出器を用いて撮影した画像データの画素値を補正する画像処理方法であって、 記憶装置から各種プログラムを読み込み、実行するプロセッサが、所定のアルゴリズムを用いて、前記画像データから特定の領域を抽出する特定領域抽出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記抽出された特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を、自然要因による画素値ばらつきが少ない領域である探索対象領域として抽出する探索対象領域抽出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記探索対象領域における所定方向の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、前記所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する境界検出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記画像データを前記境界で区切って得られる複数のサブ領域のそれぞれの画素値に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する補正処理を実行することと、
を含み、
前記プロセッサは、前記探索対象領域抽出処理において、
前記特定の領域のそれぞれをm×n(m及びnは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割し、当該区画ごとに画素の明度の平均値を算出する処理と、
前記明度の平均値を複数の区分に分類し、当該区分ごとに算出した明度の平均値の低い値を優先して前記第1の閾値として決定する処理と、
前記第1の閾値以下の明度の画素が前記画像データの端から端まで存在する探索ラインが少なくとも2つ存在する場合に、前記第1の閾値以下の明度の画素を前記探索対象領域として抽出する処理と、
を実行する、画像処理方法。
【請求項8】
請求項において、
前記プロセッサは、前記補正処理において、前記複数のサブ領域内の画素値の平均値を算出し、前記複数のサブ領域間の前記平均値の差分に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する、画像処理方法。
【請求項9】
請求項において、
前記プロセッサは、前記境界検出処理において、少なくとも2本の探索ラインで隣接する画素間の明度の差が前記第2の閾値以上となる位置を特定する、画像処理方法。
【請求項10】
請求項7において、
前記プロセッサは、
前記特定領域抽出処理において、海に属する領域を前記特定の領域とし抽出し、
前記探索対象領域抽出処理において、前記自然要因による画素値ばらつきが少ない領域として深海領域を抽出する、画像処理方法。
【請求項11】
複数の検出器を用いて撮影した画像データの画素値を補正する画像処理方法であって、 記憶装置から各種プログラムを読み込み、実行するプロセッサが、所定のアルゴリズムを用いて、前記画像データから特定の領域を抽出する特定領域抽出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記抽出された特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を、自然要因による画素値ばらつきが少ない領域である探索対象領域として抽出する探索対象領域抽出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記探索対象領域における所定方向の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、前記所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する境界検出処理を実行することと、
前記プロセッサが、前記画像データを前記境界で区切って得られる複数のサブ領域のそれぞれの画素値に基づいて、前記複数のサブ領域における画素値を補正する補正処理を実行することと、
を含み、
前記プロセッサは、前記補正処理において、
前記複数のサブ領域のそれぞれをi×j(i及びjは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割する処理と、
前記複数の区画のそれぞれにおける明度の分散値及び明度の平均値を算出する処理と、
前記複数の区画のうち前記明度の平均値が所定の値以下の区画の中で分散値が最も小さい区画を補正基準区画として抽出する処理と、
前記複数のサブ領域における前記補正基準区画のそれぞれから画素値の平均値を算出し、前記補正基準区画間の前記平均値の差分に基づいて前記複数のサブ領域における画素値の補正を行う処理と、
を実行する、画像処理方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記プロセッサは、前記補正処理において、指定された前記サブ領域の前記補正基準区画の画素値の平均値と、他のサブ領域における前記補正基準区画の画素値の平均値を比較してオフセット値を算出し、当該オフセット値を用いて前記他のサブ領域の画素値を補正する、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学の地球観測衛星は人の目に見える情報を宇宙空間から観測するが、衛星の光学センサに搭載される検出器の受光感度は均一でないため撮影される衛星画像データの領域ごとに輝度のばらつきが発生する。
【0003】
そのため、一般的に、衛星画像データを実用で利用する際には検出器ごとに輝度を補正している。しかし、完全に輝度のばらつきを補正することは困難であり、特に海の領域や雲で覆われた領域など色彩が均一な領域では特に見た目で判断できるレベルで輝度のばらつきが発生することがある。
【0004】
このような輝度のばらつきは衛星画像の見た目を損ない、また、衛星画像データを用いた情報解析を行う際の妨げにもなる。このため、例えば、特許文献1では、衛星画像データから海の領域を抽出し、抽出された海領域全てに対して輝度値が不連続となる位置を検出し、特定された位置のうち直線成分群を抽出することで受光感度によるばらつきの境界を特定し輝度補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−159886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、上述のように、輝度のばらつきを特定するために衛星画像データから海の領域を抽出し、抽出された海領域全てを対象に輝度のばらつき位置を抽出する。
【0007】
しかしながら、衛星画像データに生じる輝度のばらつきには、光学センサに搭載される検出器の受光感度以外の要素に基づくものも存在する。例えば、海領域の場合、水深によって衛星画像データに写る海の領域の輝度は異なり、また海底の種類(砂泥、岩盤、サンゴ等)によっては同じ水深であっても輝度は異なる。このような自然要因による輝度のばらつきを検出器の受光感度の差によるものであると誤判断し衛星画像データの輝度を補正すると、本来必要な情報を失うおそれがあり、また、不適切な補正値が衛星画像データ全体に影響を与える可能性がある。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、自然要因による輝度ばらつきが少ない均一な性質を有する領域を抽出し、光学センサに搭載される検出器の受光感度の相違による画素値(例えば輝度)のばらつきを精度よく特定し、適切な画素値の補正を行う技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による画像処理は、所定のアルゴリズムを用いて、画像データから特定の領域を抽出する特定領域抽出処理と、抽出された特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を、自然要因による画素値ばらつきが少ない領域である探索対象領域として抽出する探索対象領域抽出処理と、探索対象領域における所定方向の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する境界検出処理と、画像データを境界で区切って得られる複数のサブ領域のそれぞれの画素値に基づいて、複数のサブ領域における画素値を補正する補正処理と、によって構成される。
【0010】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本発明の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本発明の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自然要因による輝度ばらつきが少ない均一な性質を有する領域を抽出し、光学センサに搭載される検出器の受光感度の相違による画素値のばらつきを精度よく特定し、適切な画素値の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の実施形態による画像処理システムの構成例(スタンドアロン構成例)を示す図である。
図1B】本発明の実施形態による画像処理システムの構成例(ネットワーク構成例)を示す図である。
図2】衛星画像データに発生する検出器ごとの輝度のばらつきの例を示す図である。
図3】衛星画像データが持つバンドレイヤの例示する図である。
図4】衛星画像データに写る陸域と海の浅瀬領域をマスクする処理を説明するためのフローチャートである。
図5】衛星画像データの陸域に対してマスク処理を施した例を示す図である。
図6】明度(V)の閾値設定の例について示す図である。
図7】衛星画像データの陸域と海の浅瀬領域に対してマスク処理を実施した画像データ例を示す図である。
図8】衛星画像データの明度値を基に、輝度のばらつき境界を特定する処理を説明するためのフローチャートである。
図9】明度値を基に輝度ばらつき境界を探索し、境界にフラグを設定する処理の例を示す図である。
図10】輝度のばらつきの補正を説明した例と、補正後の衛星画像を示した例の図である。
図11】衛星画像データのテーブルデータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態は、光学センサで撮影した画像データに発生する画素値(例えば輝度)のばらつきのうち、特に、光学センサに搭載される検出器の受光感度の相違により生じる画素値のばらつきを補正する画像処理について開示する。なお、本実施形態では、一例として、画像データから海領域と陸を区別し、さらに海領域を浅瀬領域と深海領域とに分類しているが、本発明は海(深海)にのみ適用されるものではなく、別の領域(例えば、山や森林領域等)を抽出し、その領域の情報を用いて検出器の画素値のばらつきを補正するようにしてもよい。
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0015】
本実施形態では、当業者が本発明を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本発明の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0016】
更に、本発明の実施形態は、後述されるように、汎用コンピュータ上で稼動するソフトウェアで実装しても良いし専用ハードウェア又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせで実装しても良い。
【0017】
なお、以後の説明では「テーブル」形式によって本発明の各情報について説明するが、これら情報は必ずしもテーブルによるデータ構造で表現されていなくても良く、リスト、DB、キュー等のデータ構造やそれ以外で表現されていても良い。そのため、データ構造に依存しないことを示すために「テーブル」、「リスト」、「DB」、「キュー」等について単に「情報」と呼ぶことがある。
【0018】
以下ではプログラムとしての各処理部(例えば、画像データ格納部、海領域抽出処理部、データ変換処理部、探索対象領域抽出処理部、境界検出処理部、補正処理部)」を主語(動作主体)として本発明の実施形態における各処理について説明を行うが、プログラムはプロセッサによって実行されることで定められた処理をメモリ及び通信ポート(通信制御装置)を用いながら行うため、プロセッサを主語とした説明としてもよい。また、プログラムを主語として開示された処理は管理サーバ等の計算機、情報処理装置が行う処理としてもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、また、モジュール化されていても良い。各種プログラムはプログラム配布サーバや記憶メディアによって各計算機にインストールされてもよい。
【0019】
<画像処理システムの構成>
図1は、本発明の実施形態による画像処理システムの構成図の例である。図1Aはスタンドアロン型の構成例を示し、図1Bはネットワーク型の構成例を示している。
【0020】
(i)スタンドアロン型
図1Aにおいて、画像処理システム101は、入力装置108と、表示装置109と、通信装置110と、CPU(プロセッサ)111と、メモリ112と、記憶装置113と、を構成要素として備えている。記憶装置113は、例えば、プログラムとして、画像データ格納部102と、海領域抽出処理部103と、データ変換処理部104と、探索対象領域抽出処理部105と、境界検出処理部106と、補正処理部107と、を格納している。各プログラムはCPU111によって読み込まれ、適宜実行される。
【0021】
画像データ格納部102は、衛星画像データを取得し格納するプログラムを有する。海領域抽出処理部103は、画像データ格納部102に格納した衛星画像データから海領域を特定し、海領域以外の領域のデータをマスクするプログラムを有する。データ変換処理部104は、RGB空間のデータをHSV空間のデータへ変換、または、HSV空間のデータをRGB空間のデータに変換するプログラムを有する。探索対象領域抽出処理部105は、明度(V)の閾値を算出し、その閾値を用いて海領域から探索対象領域を特定し、それ以外の海領域をマスクするプログラムを有する。境界検出処理部106は、衛星画像データ内に存在する、光学センサの検出器の受光感度に起因する輝度ばらつきの境界となる位置を検出するプログラムを有する。補正処理部107は、境界検出処理部106で検出した輝度ばらつきの境界に基づき、衛星画像データの色彩の補正処理を実施するプログラムを有する。
【0022】
入力装置108は、処理対象となる衛星画像データの入力やユーザ操作を受付け、表示装置109は、衛星画像の表示等を行う。通信装置110はインターネット等を介して他の装置と通信を行う。CPU111は、必要に応じて各プログラムをメモリ112に読み込ませ、各種処理を実行する。
【0023】
(ii)ネットワーク型
図1Bは、ネットワーク型の構成例であり、例えば、本実施形態による画像処理をクラウド上で実施する場合などを想定した例である。
【0024】
利用者端末121は、入力装置122と、表示装置123と、通信装置124と、CPU(プロセッサ)125と、メモリ126と、記憶装置127と、を備えている。利用者端末121の通信装置124は、ネットワークで接続された画像処理サーバ120と通信し、利用者端末121からの処理依頼等を画像処理サーバ120に送信し、画像処理サーバ120での処理結果等を受信する。画像処理サーバ120の構成は図1Aに示される構成と同様であるため、説明は省略する。なお、以下では、図1Aの構成例に基づいて動作等について説明する。
【0025】
<処理対象となる衛星画像の例>
図2は、輝度ばらつきが存在する衛星画像を模式的に表した例である。衛星画像201には、陸域202と海領域203があり、海領域203には、陸域202を取り囲むように水深が浅い浅瀬領域204が存在し、その外には水深が深い深海領域205がある。
【0026】
衛星画像201は、衛星に搭載された光学センサの検出器の夫々が取得したデータを合成して生成されるため、隣り合う検出器Aと検出器Bの受光感度の相違により輝度差が生じ、検出器A撮影領域206と検出器B撮影領域207の間にはその輝度差が直線的な縞模様となり現れる。本実施形態では、このような輝度差を輝度ばらつきと表す。
【0027】
浅瀬領域204は、明るく、海底の種類(砂泥、岩盤、サンゴ等)に応じて多様な色彩となり、異なる輝度を有し自然要因による輝度のばらつきが多い。一方、十分に深い深海領域205は海底の影響は受けないため、通常、輝度ばらつきが少なく概ね均一な色彩の暗い領域である。よって、光学センサの検出器の受光感度による輝度ばらつきの境界位置を検出するのには、自然要因による輝度ばらつきが多い浅瀬領域204とその周辺をマスクし、深海領域205を探索対象領域として用いるのが適している。
なお、図2では、各検出器による撮影方向(スキャン方向)は上から下(北から南)となっているが、右から左(東から西)や斜め方向であっても良い。
【0028】
<衛星画像データの構成例>
図3は、衛星画像201が有する衛星画像データの構成例を示す図である。図3は、衛星画像が持つデータの代表的なものとしてはRGB空間のデータを示している。
【0029】
衛星画像データは、衛星画像201を構成するピクセルごとに、B(青)に関するデータを持ったレイヤ301と、G(緑)に関するデータを持ったレイヤ302と、R(赤)に関するデータを持ったレイヤ303と、可視光以外の領域(例えば近赤外領域)に関するデータを持ったレイヤ304と、一時レイヤ305と、を有する。一時レイヤ305は、本実施形態の処理において、衛星画像データの各ピクセルに情報を持たせるために用いられる。なお、衛星に搭載されたセンサの種類に応じてそれ以外のデータも同様にレイヤとして有しているが図示しない。
【0030】
図11は、衛星画像データを処理する際に用いるデータテーブル1100の例を示す図である。ピクセル1110は、衛星画像の左上のピクセルを(X1、Y1)として、XY座標形式で衛星画像上の各ピクセルを一意に特定するための値である。データテーブル1100は、衛星画像上の各ピクセルについてデータを有している。各ピクセルが有するデータの種類や数は衛星画像ごとに異なるが、例えばBand0 Blue1120にはRGBデータのBの値が登録される。
【0031】
一時レイヤ1130は、本実施形態の処理の中で、例えばそのピクセルをマスクするときに1を設定し、マスクしない時に0をするなどして用いる。なお、一時レイヤ1130は、複数のカラムを有して、使い分けても良い。
【0032】
H1140は色相、S1150は彩度、V1160は明度のデータであり、本実施形態による画像処理の中で算出され登録される。フラグ1170は、本実施形態による画像処理の中で輝度ばらつき境界となるピクセルを識別するために用いられる。
【0033】
<探索対象領域抽出処理>
図4は、輝度ばらつき境界の特定に用いる探索対象領域を抽出し、それ以外の領域をマスクする、探索対象領域抽出処理を説明するためのフローチャートの例である。以下、特に説明がない限り、領域とはある特徴を有するピクセル群のことを意味する。
【0034】
(i)ステップ401
まず、画像データ格納部102は、入力装置108を介してユーザが指定した、処理対象の衛星画像データを受け付ける。受け付け後、画像データ格納部102は、衛星画像データからデータテーブル1100を生成する。衛星画像は、画像処理システム101のハードディスクに記憶されている中から選択しても良いし、画像処理システム101に接続されたデータベースやストレージ上や、クラウド上からユーザが選択等して取得しても良い。
【0035】
(ii)ステップ402及び403
海領域抽出処理部103は、画像データ格納部102に格納された衛星画像データから海領域を抽出し(ステップ402)、それ以外の領域(陸領域)の一時レイヤ1130をマスク(処理対象から外すこと)する(ステップ403)。海領域の抽出には、衛星画像データの青(B)ピクセルデータと近赤外ピクセルデータを組み合わせた指標であるNDWI(Normalized Difference Water Index)を用いる。
【0036】
図5は、ステップ402及びステップ403の処理結果を模式的に示した例である。衛星写真201上の陸域202に該当する一時レイヤ305のピクセルがマスクされ(陸域マスク領域501)、陸域202と海領域203の区別が可能になる。この段階で、一時レイヤ305上でマスクされていない海領域203には、浅瀬領域204と深海領域205が含まれる。
【0037】
浅瀬領域204とその周辺は、海底の種類(砂泥、岩盤、サンゴ等)ごとに異なる自然要因による輝度ばらつきが多く、光学センサの検出器の受光感度による輝度ばらつきを検出するのには適さない。自然要因による輝度ばらつきが直線的な成分であった場合、光学センサの検出器の受光感度による輝度ばらつきと誤判断してしまい、不適切な補正となってしまうおそれがあるからである。一方で、十分な深さを持つ深海領域205は、通常、自然要因による輝度ばらつきが少なく概ね均一な色彩の暗い領域であるため、光学センサの検出器の受光感度による輝度ばらつきの検出に使用することに適している。
【0038】
RGBのデータを用いても深海領域205を抽出することはできるが、深海領域205をより効率よく抽出するため、本実施形態ではHSV空間の明度(V)のデータを用いる。浅瀬領域204には海底の種類や海域によって様々な輝度値が存在するため輝度値で閾値を設定するのは煩雑となるが、浅瀬領域204とその周辺の海は明るく、深海領域205は暗いという特性は変わらないため、明度(V)の方が効率よく閾値を設定できるためである。
【0039】
(iii)ステップ404
図4に戻り、探索対象領域抽出処理について説明を続ける。データ変換処理部104は、データテーブル1100のデータを用い、対象衛星画像のRGB空間のデータをHSV空間データへ変換する。変換には、公知の変換式を用いる。新たに生成された、HSV空間のデータは、データテーブル1100(図11参照)のH1140、S1150、V1160に登録される。
【0040】
(iv)ステップ405〜409
探索対象領域抽出処理部105は、海領域203のうち、閾値以上の明度(V)を有するピクセルの一時レイヤ1130をマスクする(ステップ405〜409)。
図6を用いながら明度(V)の閾値設定とマスク処理を説明する。なお、本実施形態では中央値を用いているが衛星画像の特性に応じて平均値を用いても良い。
【0041】
(iv-1)ステップ405
探索対象領域抽出処理部105は、衛星画像データの明度(V)のレイヤを任意のピクセル単位で区画に区切り、区画に属するピクセルの明度(V)の平均値を算出する。探索対象領域抽出処理部105は、この平均値算出処理を全ての区画について実施する。
【0042】
(iv-2)ステップ406
探索対象領域抽出処理部105は、衛星画像データの全区画についての明度(V)の平均値の中央値601を算出し、中央値より低い明度(V)の平均値群を、平均値が大きい順に3区分(H、M、L)に分け、3区分の夫々の中で中央値を取り、Hの中央値602、Mの中央値603、Lの中央値604とする。
【0043】
(iv-3)ステップ407
探索対象領域抽出処理部105は、Lの中央値604を閾値として用い、Lの中央値604より高い明度(V)を有するピクセルをさらにマスクする。
【0044】
(iv-4)ステップ408
探索対象領域抽出処理部105は、ステップ407でのマスク処理後、ピクセル1110と一時レイヤ1130の値から、衛星画像を構成するピクセル行のうち、画像の左端から右端までマスクされたピクセルがないピクセル行が複数行存在するか調べる。画像に現れる輝度ばらつき境界を画像全体に渡り検出するためには、マスクされたピクセルがないピクセル行が必要だからである。複数行存在する場合(ステップ408でYesの場合)は、探索対象領域抽出処理を終了する。複数行存在しない場合(ステップ408でNoの場合)、処理はステップ409に移行する。
【0045】
(iv-5)ステップ409
マスクされたピクセルがないピクセル行が複数行ないまたは1行もない場合は、閾値が低すぎるため、探索対象領域抽出処理部105は、Mの中央値603を閾値として設定する。そして、ステップ408の処理が再度実行される。それでもマスクされたピクセルがないピクセル行がない場合は、Hの中央値602を用いる。
以上の処理により、明度(V)を指標として探索対象領として適切な深海領域205を特定する。
【0046】
探索対象領域として抽出したい領域は、概ね均一な色彩の暗い領域である。よって、衛星画像全体の中でも明度(V)が低い領域が必要量得られれば良く、それ以外の領域はマスクされても良い。そのため、画像全体の各区画の明度(V)の平均値の中でも低い値を優先的に閾値として用い、十分な領域を得られなかった場合には少しずつ明度(V)の閾値を上げると効率的な処理が可能である。
【0047】
十分な領域が得られているかどうかは、衛星画像を構成するピクセル行のうち、少なくとも2行以上、左端から右端までマスクされたピクセルが存在しないピクセル行が存在するか否かで判断する。衛星画像の撮影の性質上、光学センサの検出器の受光感度による輝度のばらつきは直線的に生じるため、撮影方向に最低2か所で輝度ばらつきの位置が特定できれば、輝度ばらつきの境界が特定できるためである。特に、本実施形態の場合、自然要因による輝度ばらつきが生じる浅瀬領域204とその周辺はマスクして、輝度ばらつきが少なく概ね均一な色彩の暗い領域を探索対象領域としているため、不正な輝度ばらつきの影響をうけにくいため、多数の行で輝度ばらつきの境界位置を特定する必要がない。また、左端から右端までマスクされたピクセルが存在しないピクセル行を必要とするのは、衛星画像全体から輝度ばらつき境界を抽出するためである。
【0048】
なお、本実施形態では、中央値より低い明度(V)の平均値群を3つの区分(H、M、及びL)に分割して処理したが、2つに分割しても、4つ以上に分割しても良い。
【0049】
<探索対象領域抽出結果の例>
図7は、図4の探索対象領域抽出処理結果を模式的に示した例である。陸域202に加え、明度(V)閾値以上の領域がマスクされ、輝度ばらつき境界を探索するのに適した深海領域205(探索対象領域)が残る。
【0050】
なお、ステップ405の判断において、明度(V)だけではなく、彩度(S)のデータも用いても良い。その場合、例えばさらに彩度(S)が一定のしきい値以下の領域を抽出し、それ以外の領域はマスクすることが考えられる。
【0051】
<輝度境界特定処理>
図8は、本実施形態による輝度境界特定処理を説明するためのフローチャートの例である。輝度境界特定処理は、探索対象領域抽出処理(図4)により抽出された探索対象領域から、光学センサの検出器の受光感度による輝度のばらつきにより生じる輝度境界を特定するものである。なお、本処理は経度方向に輝度ばらつきが生じている例を対象に説明するが、緯度方向に輝度ばらつきが生じている場合は、図8及び図11の処理を緯度方向に実施すれば良い。
【0052】
(i)ステップ801
境界検出処理部106は、図4の処理の結果作成された深海領域205以外をマスクした一時レイヤ305から輝度ばらつきにより生じている輝度の境界ピクセルを特定する処理に用いる行の選択を行う。具体的には、ピクセル1110と一時レイヤ1130の値から、対象の衛星画像データの中で、マスクされたピクセルを含まないピクセル行(探索行)を抽出する。図9は、探索行の抽出結果と輝度のはらつき境界特定の結果を示す図である。図9の例の場合、衛星画像上の上側の領域と下側の領域にあるピクセル行が探索行901及び902となる。
【0053】
(ii)ステップ802
境界検出処理部106は、ステップ801で選択した探索行ごとに、当該行のピクセル明度(V)の値を左端から順に抽出する。
【0054】
(iii)ステップ803
境界検出処理部106は、現ピクセルの明度(V)が直前のピクセルの明度(V)と閾値以上の変化があるか調べる。輝度ばらつき境界を抽出する閾値としてはRGB空間のデータを用いることも可能であるが、光学センサの検出器の受光感度のばらつきは明るさに影響する性質であるため、明度(V)を用いる方がより精度よく検出できる。閾値以上の変化がある場合(ステップ803でYesの場合)、処理はステップ804に移行する。閾値以上の変化がない場合(ステップ803でNoの場合)、処理はステップ805に移行する。
【0055】
(iv)ステップ804
境界検出処理部106は、明度(V)の値に閾値以上の変化がある場合、光学センサの検出器の受光感度による輝度のばらつきの境界位置であると特定し、当該ピクセルにフラグを立てる。深海領域205は概ね均一な色彩の暗い領域であり明度(V)が一定であるため、所定以上の明度(V)の変化がある場合は、光学センサの検出器の受光感度による輝度のばらつきの境界位置と推定されるためである。
【0056】
(v)ステップ805
境界検出処理部106は、右端のピクセルまで調べ終えたら、次の探索行に処理を移す。つまり、ここでは、境界検出処理部106は、全ての探索行について境界検出処理を実行したか判断する。全ての探索行について処理が終了している場合(ステップ805でYesの場合)、処理はステップ806に移行する。全ての探索行について処理が終了していない場合(ステップ805でNoの場合)、処理はステップ802に移行する。
【0057】
(vi)ステップ806
境界検出処理部106は、ステップ801〜805による処理の結果、各探索行でフラグが立てられたピクセルを列方向に直線的につなぎ、輝度境界となるピクセル列を特定する。
【0058】
<境界検出処理の例>
図9は、境界検出処理の例を示す図である。上述のように、境界検出処理では、探索行上のピクセルの明度(V)のレイヤの値を順に抽出し、明度(V)の値が直前のピクセルでの値と比較して閾値を超える変化があった場合に輝度のばらつき境界点と判定し該当ピクセルのフラグ1170に1を設定するなどしてフラグを立てる。図9の例の場合、探索行901では、フラグ903、フラグ904、フラグ905が設定される。同様に探索行902上にも3か所フラグが設定される。これらのフラグが設定されたピクセルを列方向に直線的につなぐことで、衛星画像201上での輝度ばらつき境界906が特定される。これにより、水深の違いや海底の地形の種類等の自然要因によって生じた輝度ばらつきに影響されずに、光学センサの検出器の受光感度のばらつきにより生じている輝度ばらつきを精度良く抽出できる。
【0059】
なお、本実施形態では、ピクセル行単位での処理を記載したが、数ピクセルを1行とし、数ピクセルの明度(V)の平均を用いて輝度ばらつき境界を探索しても良い。
【0060】
<輝度補正処理>
図10は、輝度補正処理の具体例を示す図である。衛星画像201上での輝度ばらつき境界906が特定できたら、補正処理部107は、輝度ばらつき境界906で区切られた境界領域(サブ領域)ごとに、その領域内で最も明度(V)が均一な区画を抽出し輝度補正に用いる区画を特定する。より一定の明度(V)を有する領域間でオフセット値を求める方が、光学センサの検出器の受光感度による輝度のばらつき以外の、自然要因等による明度(V)変化をさらに除外できるためである。
【0061】
具体的には、図10で示すように、輝度ばらつき境界906で区切られた境界領域ごとに、一定数のピクセルを1区画(チェック区分1001)として、その区画内のピクセルの明度(V)の分散と明度(V)の平均値を算出し、明度(V)の平均値が一定以下であり、かつ、分散が最小となる区分を補正基準区画として特定する。補正基準区画は、境界領域ごとに特定される(補正基準区画1002〜1005)。
【0062】
次に、補正処理部107は、輝度の補正を行う。なお、本実施形態による輝度補正は、RGB空間のデータを使用する場合について記載するが、HSV空間のデータを使って同様に実施してもよい。ただし、HSV空間のデータを用いた場合は、最後にデータ変換処理部104によってHSV空間のデータをRGB空間のデータに変換する必要がある。
【0063】
補正処理部107は、左端の境界領域の補正基準区画1002のRGB平均値(R、G、B夫々について算出)と隣の境界領域の補正基準区画分1003のRGB平均値(R、G、B夫々について算出)を比較し、その差分(R、G、B夫々について算出)をオフセットとして、補正基準区画1003の属する境界領域(左から2番目の領域)に属する各ピクセルのR、G、Bの値をオフセット値で補正する。同様に、左端の境界領域と左から3番目の境界領域、左端の境界領域と左から4番目の境界領域、と順に処理する。これにより、光学センサの検出器の受光感度の相違により生じている輝度ばらつきを抑えることができる。
【0064】
なお、ここでは左端の境界領域を基準としてオフセット値を算出するようにしたが、このような基準となる領域は左端の領域に限定されるものではなく、例えば、ユーザが指定しても良いし、また、システムで予め決められた領域(左端以外の領域)としても良い。
【0065】
また、本実施形態では、補正基準区画のRGB平均値(R、G、B)を用いてオフセットを算出し補正値を行ったが、境界領域に属するピクセル全体(マスク領域は除く)のRGB平均値(R、G、B)を用いてオフセット値を算出し補正を行っても良い。
【0066】
さらに、算出したオフセットを用いた補正を海領域203のピクセルだけに適用しても良い。また、ユーザが輝度補正をする範囲を指定し、その範囲についてのみ輝度を補正しても良い。
【0067】
<まとめ>
(i)本実施形態において、画像処理システムは、所定のアルゴリズム(例えば、NDWIを用いるアルゴリズム)を用いて、画像データから特定の領域(例えば、海領域)を抽出し、当該特定の領域において、第1の閾値以下の画像値を有する領域を探索対象領域(例えば、深海領域)として抽出する。また、画像処理システムは、探索対象領域における所定方向(例えば、上下、左右、斜め方向)の探索ラインにおいて隣り合う画素の画素値の変化が第2の閾値以上となる位置を特定し、当該特定された位置を通過し、所定方向と直交する直線の上に存在する画素群を境界として検出する。さらに、画像処理システムは、画像データを境界で区切って得られる複数のサブ領域(境界領域)のそれぞれの画素値の平均値を算出し、複数のサブ領域間の平均値の差分に基づいて、複数のサブ領域における画素値を補正する。このようにすることにより、自然要因による画素値のばらつきに影響されずに各検出器に固有の感度誤差を正確に補正することができるようになる。
【0068】
境界を抽出する場合、画像処理システムは、少なくとも2本の探索ラインで隣接する画素間の明度の差が第2の閾値以上となる位置を特定する。これにより、感度誤差が所定値以上に大きく異なる検出器で撮影した画像の境界を的確に抽出することができる。
【0069】
探索領域抽出場合、画像処理システムは、より具体的には、特定の領域(海領域)のそれぞれをm×n(m及びnは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割し、当該区画ごとに画素の明度の平均値を算出する。そして、画像処理システムは、明度の平均値を複数の区分に分類し、当該区分ごとに算出した明度の平均値の低い値を優先して第1の閾値として決定する。さらに、画像処理システムは、第1の閾値以下の明度の画素が画像データの端から端まで存在する探索ラインが少なくとも2つ存在する場合に、第1の閾値以下の明度の画素を探索対象領域として抽出する。最初に採用した第1の閾値によって2つ以上の探索ラインが抽出できない場合には、次に明度が低い明度(平均値)を有する区分の明度平均値を第1の閾値とする。このように順次低い明度(平均値)を有する区分の明度平均値から第1の閾値を決定するので、より暗い領域、つまりは自然要因による画素値のばらつきが少ない領域を確実に抽出することができるようになる。
【0070】
画素値の補正をする場合、画像処理システムは、より具体的には、複数のサブ領域のそれぞれをi×j(i及びjは1以上の整数)個の画素で構成される、複数の区画に分割し、複数の区画のそれぞれにおける明度の分散値及び明度の平均値を算出する。また、画像処理システムは、複数の区画のうち明度の平均値が所定の値以下の区画の中で分散値が最も小さい区画を補正基準区画とし、複数のサブ領域における補正基準区画のそれぞれから画素値の平均値を算出して、当該平均値を用いて補正を行う。さらに具体的には、当該補正を行う際に、画像処理システムは、指定された、或いは予め決められたサブ領域(実施形態では左端の領域)の補正基準区画の画素値の平均値と、他のサブ領域における補正基準区画の画素値の平均値を比較してオフセット値を算出し、当該オフセット値を用いて他のサブ領域の画素値を補正する。このようにすることにより、適切に画素値を補正することができるようになる。
【0071】
(ii)本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0072】
また、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータ上のメモリに書きこまれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータのCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現されるようにしてもよい。
【0073】
さらに、実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することにより、それをシステム又は装置のハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD−RW、CD−R等の記憶媒体に格納し、使用時にそのシステム又は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしても良い。
【0074】
最後に、ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できることを理解する必要がある。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスがここで記述した教授に従って使用可能である。ここで述べた方法のステップを実行するのに、専用の装置を構築するのが有益であることが判るかもしれない。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。本発明は、具体例に関連して記述したが、これらは、すべての観点に於いて限定の為ではなく説明の為である。本分野にスキルのある者には、本発明を実施するのに相応しいハードウェア、ソフトウェア、及びファームウエアの多数の組み合わせがあることが解るであろう。例えば、記述したソフトウェアは、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0075】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0076】
101 画像処理システム、102 画像データ格納部、103 海領域抽出処理部、104 データ変換処理部、105 探索対象領域抽出処理部、106 境界検出処理部、107 補正処理部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11