(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628618
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】チュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20200106BHJP
【FI】
E02D7/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-11362(P2016-11362)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-133157(P2017-133157A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−117250(JP,A)
【文献】
特開2016−128636(JP,A)
【文献】
特開平09−158653(JP,A)
【文献】
特開2013−119768(JP,A)
【文献】
特開平11−269879(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00362424(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00−7/30
E02D 13/00−13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に第1固定ピンを介してチャックフレームに着脱可能に連結される第1ピン挿通孔を備えた取付部と、下部に第2固定ピンを介して前記チャックフレームの下方に配置されるドライブフレームに着脱可能に連結される第2ピン挿通孔とを備えたロッドを有するとともに、前記チャックフレームの下面板よりも下方に突出して配置されるチュービング装置のチャックシリンダを、前記チャックフレームに着脱させる際に用いられるチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具であって、
該チャックシリンダ着脱用治具は、前記チャックシリンダを内側に保持するチャックシリンダ受けと、該チャックシリンダ受けの内部に設けられ、前記第2ピン挿通孔に対応するピン挿通孔を備えたチャックシリンダ連結部とを備えていることを特徴とするチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具。
【請求項2】
前記チャックシリンダ受け内に挿入された前記チャックシリンダの高さ位置及び姿勢を調整する複数の調整ボルトを備えていることを特徴とする請求項1記載のチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具。
【請求項3】
前記チャックフレームの前記下面板から下方に突設された昇降シリンダの保護筒を載置させる載置台を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具。
【請求項4】
前記チャックシリンダ着脱用治具を、前記チャックフレームのチャックシリンダの位置に対応して配置し、隣り合う各チャックシリンダ着脱用治具を連結部材で連結したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具に関し、詳しくは、チャックフレームに装着されたチャックシリンダを簡便に着脱させることができるチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
チュービング装置は、通常、地上に据え付けられるベースフレームと、該ベースフレームの上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレームと、該ドライブフレームの上方にチャックシリンダを介して昇降可能に設けられたチャックフレームと、前記ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームの中央部を鉛直方向に貫通して同軸上にそれぞれ設けられ、ケーシングチューブを挿通させるケーシングチューブ挿通孔とを備えている。
【0003】
このチュービング装置を輸送する際には、ベースフレーム、ドライブフレーム及びチャックフレームを分解してそれぞれ輸送されているが、大型のこれらのフレームは、輸送制限内に抑えるために、トレーラの荷台に、傾斜支持台を介して斜めに傾斜させた状態にして輸送することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−117250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、
図13に示されるように、直径が3mを超えるケーシングを施工する大径のチュービング装置のチャックフレーム41では、傾斜支持台42を介して斜めに傾斜させた状態にしてトレーラの荷台に載置した際に、チャックフレーム41の下面板41aよりも下方に突出して配置される複数のチャックシリンダ43が輸送制限L1よりも外方に突出してしまう虞があった。このため、チャックフレーム41からチャックシリンダ43を取り外して輸送されるが、チャックシリンダ43の取り外し作業に手間が掛かり、また、作業現場でチュービング装置を組み付ける際にも、チャックフレーム41に高精度に取り付ける必要があることから、作業に手間が掛かっていた。
【0006】
そこで本発明は、チャックフレームにチャックシリンダを容易に着脱させることができるチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具は、上部に第1固定ピンを介してチャックフレームに着脱可能に連結される第1ピン挿通孔を備えた取付部と、下部に第2固定ピンを介して前記チャックフレームの下方に配置されるドライブフレームに着脱可能に連結される第2ピン挿通孔とを備えたロッドを有するとともに、前記チャックフレームの下面板よりも下方に突出して配置されるチュービング装置のチャックシリンダを、前記チャックフレームに着脱させる際に用いられるチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具であって、該チャックシリンダ着脱用治具は、前記チャックシリンダを内側に保持するチャックシリンダ受けと、該チャックシリンダ受けの内部に設けられ、前記第2ピン挿通孔に対応するピン挿通孔を備えたチャックシリンダ連結部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記チャックシリンダ受け内に挿入された前記チャックシリンダの高さ位置及び姿勢を調整する複数の調整ボルトを備えていると好ましい。さらに、前記
チャックフレームの前記下面板から下方に突設された昇降シリンダの保護筒を載置させる載置台を備えていると好適である。また、前記チャックシリンダ着脱用治具を、前記チャックフレームのチャックシリンダの位置に対応して配置し、隣り合う各チャックシリンダ着脱用治具を連結部材で連結すると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチュービング装置のチャックシリンダ着脱用治具によれば、チャックフレームにチャックシリンダを容易に着脱することができ、輸送時に手間が掛からなくなるとともに、作業現場では、チャックフレームにチャックシリンダを確実に装着させることができる。
【0010】
また、チャックシリンダ受け内に挿入された前記チャックシリンダの高さ位置及び姿勢を調整する複数の調整ボルトを備えたことにより、第2ピン挿通孔とピン挿通孔の位置合わせを容易に行うことができる。さらに、チャックシリンダ着脱用治具は、チャックシリンダの下面板から下方に突設された昇降シリンダの保護筒を載置させる載置台を備えていることにより、クレーンでチャックフレームを降下させて、各チャックシリンダ着脱用治具のチャックシリンダ受け内にチャックシリンダを確実に収容させることができる。また、各チャックシリンダ着脱用治具は、連結部材で連結することにより、複数のチャックシリンダの位置決めを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例を示すチャックフレームとチャックシリンダ着脱用治具の正面図である。
【
図2】同じくチャックシリンダ着脱用治具の平面図である。
【
図3】同じくチャックシリンダ着脱用治具の要部拡大平面図である。
【
図4】同じくチャックシリンダをチャックシリンダ着脱用治具に収容した状態のチャックフレームとチャックシリンダ着脱用治具の要部正面図である。
【
図5】同じくチャックシリンダをチャックシリンダ着脱用治具に収容した後、チャックフレームを上昇させた状態のチャックフレームとチャックシリンダ着脱用治具の要部正面図である。
【
図6】同じくチャックシリンダをチャックシリンダ着脱用治具に収容した後、チャックシリンダ着脱用治具を吊り上げた状態の正面図である。
【
図10】同じくチャックフレームをトレーラに載置した状態の正面図である。
【
図11】同じくドライブフレームをトレーラに載置した状態の正面図である。
【
図12】同じくベースフレームをトレーラに載置した状態の正面図である。
【
図13】チャックシリンダを装着したままでチャックフレームをトレーラに載置した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図12は、本発明の一形態例を示すもので、チュービング装置の輸送に際し、チュービング装置を各フレームに分解するとともに、チャックシリンダ着脱用治具を用いてチャックフレームからチャックシリンダを取り外し、輸送制限内に収めてトレーラに載置できるようにしたものである。
【0013】
本形態例のチュービング装置11は、直径が3mを超えるケーシングを施工する大型のチュービング装置で、地上に据え付けられるベースフレーム12と、該ベースフレーム12の上方に昇降シリンダを介して昇降可能に設けられたドライブフレーム13と、該ドライブフレーム13の上方にチャックシリンダ14を介して昇降可能に設けられたチャックフレーム15とを備え、各フレーム12,13,15は、平面視長方形状にそれぞれ形成されており、中央部には鉛直方向に貫通してそれぞれ設けられるケーシングチューブ挿通孔16が形成されている。
【0014】
チャックフレーム15は、前記ケーシングチューブ挿通孔16の外周側に、平面視長方形状の上面板15a及び下面板15bと、上面板15aと下面板15bの外端部を接続する外板15cと、前記ケーシングチューブ挿通孔16の外周に配置されたリング状の周壁15dとによって箱状の本体部が形成されている。チャックフレーム15の角部には、4個の昇降シリンダの保護筒15eがそれぞれ下方に向けて突設され、さらに、長辺側の角部近傍には、4個のチャックシリンダ14が下方に向けてそれぞれ突設されている。
【0015】
チャックシリンダ14は、シリンダ本体14aの上部に第1ピン挿通孔14bを備えた取付部14cを突設し、シリンダ本体14aの下部から、第2ピン挿通孔14dを備えたロッド14eを突出させ、第1ピン挿通孔14bに挿通される第1固定ピン17を介してチャックフレーム15に着脱可能に連結されるとともに、第2ピン挿通孔14dに挿通される第2固定ピン18を介してドライブフレーム13に着脱可能に連結される。チャックシリンダ14は、シリンダを作用させてドライブフレーム13とチャックフレーム15とを近接させることにより、ケーシングチューブを把持するチャックが閉じ、ドライブフレーム13とチャックフレーム15とを離間させることにより前記チャックが開く。
【0016】
チュービング装置11は、基礎工事開始前に現地に搬入され、基礎工事終了後に現地から搬出されるもので、輸送に際しては、ベースフレーム12、ドライブフレーム13及びチャックフレーム15を別々にして輸送することが行われている。幅寸法が大きなこれらのフレーム12,13,15は、輸送制限内に抑えて輸送するため、トレーラの荷台に傾斜支持台19を介して、車両左右方向一側を上昇させた傾斜状態にして輸送される。上述のような、直径3mを超えるケーシングチューブを施工する大径のチュービング装置11のチャックフレーム15は、チャックフレーム15を傾斜支持台19を介して斜めに傾斜させた状態にしてトレーラの荷台に載置した際に、チャックシリンダ14が輸送制限L1よりも外方に突出してしまう虞があることから、チャックシリンダ着脱用治具21を用いてチャックフレーム15からチャックシリンダ14を取り外してからトレーラの荷台に載置する。
【0017】
チャックシリンダ着脱用治具21は、チャックシリンダ14を収容する4個の治具本体22と、該治具本体22に連結腕23によってそれぞれ連結され、保護筒15eを載置する載置台24とを備えている。
【0018】
治具本体22は、チャックシリンダ14を保持可能な内径を有した円筒状のチャックシリンダ受け22aの内部に、チャックシリンダ14を連結させるチャックシリンダ連結部22bを備えている。チャックシリンダ連結部22bは、チャックシリンダ受け22a内部の所定高さ位置に取り付けられる水平方向の底板22cと、該底板22cの、挿入されたチャックシリンダ14のロッド14eに対応する位置に垂直に立設される連結板22dとを備え、連結板22dにはピン挿通孔22eが形成されている。また、該ピン挿通孔22eとチャックシリンダ14の第1ピン挿通孔14b及び第2ピン挿通孔14dとは、同一径に形成されている。底板22cには、チャックシリンダ14のロッド14eに当接してチャックシリンダ14の高さ位置を調整する第1調整ボルト25が上方に向けて突出量調整可能に取り付けられ、チャックシリンダ受け22aの周壁には、チャックシリンダ14の外周面に当接してチャックシリンダ14の姿勢を調整する4つの第2調整ボルト26がチャックシリンダ受け22aの中心軸方向に突出量調整可能に取り付けられている。また、チャックシリンダ受け22aの前面側には開口部22fが形成され、該開口部22fを介してピン挿通孔22eが外部に露出している。載置台24は、保護筒15eを載置可能な直方体状に形成され、開口した上面には、一対の板材24a,24aが対角線上に取り付けられている。
【0019】
このように形成された4個のチャックシリンダ着脱用治具21は、チャックフレーム15にチャックシリンダ14及び保護筒15eが配置されている位置に応じた4箇所にそれぞれ配置され、隣り合うチャックシリンダ着脱用治具21同士を連結部材27でそれぞれ連結して位置決めしている。また、治具本体22と載置台24と連結部材27の所定の位置には、複数の吊り金具28が設けられている。
【0020】
次に、
図1乃至
図6に基づいて、チャックフレーム15からチャックシリンダ14を取り外す手順について説明する。まず、
図1乃至
図3に示されるように、チャックフレーム15の吊り金具15f,15fにワイヤ29を連結してクレーンで吊り上げ、連結部材27で略矩形状に連結された4個のチャックシリンダ着脱用治具21の上部に配置する。
【0021】
次いで、
図4に示されるように、チャックフレーム15を下降させ、各治具本体22のチャックシリンダ受け22a内に各チャックシリンダ14をそれぞれ収容させ、各載置台24に各保護筒15eをそれぞれ載置させる。このとき、チャックシリンダ14の第2ピン挿通孔14dと、シリンダ本体14aから突出した油圧ホース接続部14fとは、開口部22fの位置に配置される。さらに、第1調整ボルト25を操作してチャックシリンダ14を持ち上げ、固定ピン17に加わっていたチャックシリンダ14の自重を第1調整ボルト25で受けた後、各第1固定ピン17を取り外して各チャックシリンダ14とチャックフレーム15との連結を解除し、次いで各第1調整ボルト25を操作して、チャックシリンダ受け22a内のチャックシリンダ14の高さ位置を調整する。さらに、4本の第2調整ボルト26を操作して、チャックシリンダ受け22a内のチャックシリンダ14の姿勢を調整して、各チャックシリンダ14の第2ピン挿通孔14dと、連結板22dに形成されたピン挿通孔22eとの位置を合わせて、取り外した第1固定ピン17を第2ピン挿通孔14dとピン挿通孔22eとに亘って装着し、各チャックシリンダ14と各チャックシリンダ着脱用治具21を連結させる。
【0022】
次に、
図5に示されるように、チャックフレーム15をクレーンで吊り上げることにより、各チャックシリンダ14をチャックフレーム15から取り外すことができ、チャックシリンダ14を取り外したチャックフレーム15を
図10に示されるように、トレーラの荷台に傾斜支持台19を介して斜めに傾斜させた状態にして輸送する。また、
図6に示されるように、連結部材27を取り外し、吊り金具28にワイヤ29を連結して吊り上げることにより、チャックシリンダ14は、チャックシリンダ着脱用治具21と一体となって輸送され、作業現場で上述の手順と逆の手順によって、チャックフレーム15に取り付けられる。また、
図11及び
図12に示されるように、ベースフレーム12及びドライブフレーム13もチャックフレーム15と同様に、トレーラの荷台に傾斜支持台19を介して斜めに傾斜させた状態にして輸送される。
【0023】
これにより、チャックフレーム15にチャックシリンダ14を容易に着脱することができ、輸送作業に手間が掛からなくなるとともに、作業現場では、チャックフレーム15にチャックシリンダ14を確実に装着させることができる。
【0024】
なお、本発明のチャックシリンダ着脱用治具は、上述の形態例に限らず、保護筒を載置する載置台を備えていないものでも良く、また、チャックシリンダ着脱用治具を連結する連結部材を備えていないものでも差し支えない。さらに、チャックシリンダ受けは、チャックシリンダを収容可能であれば、円筒状でなくても差し支えない。
【符号の説明】
【0025】
11…チュービング装置、12…ベースフレーム、13…ドライブフレーム、14…チャックシリンダ、14a…シリンダ本体、14b…第1ピン挿通孔、14c…取付部、14d…第2ピン挿通孔、14e…ロッド、14f…油圧ホース接続部、15…チャックフレーム、15a…上面板、15b…下面板、15c…外板、15d…周壁、15e…保護筒、15f…吊り金具、16…ケーシングチューブ挿通孔、17…第1固定ピン、18…第2固定ピン、19…傾斜支持台、21…チャックシリンダ装着用治具、22…治具本体、22a…チャックシリンダ受け、22b…チャックシリンダ連結部、22c…底板、22d…連結板、22e…ピン挿通孔、22f…開口部、23…連結腕、24…載置台、24a…板材、25…第1調整ボルト、26…第2調整ボルト、27…連結部材、28…吊り金具、29…ワイヤ