【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設置されている。このインストルメントパネルの運転席側の部分や車幅方向の中央部などには、車両用計器装置が設けられている。
【0013】
図1は、車両用計器装置1の分解斜視図である。車両用計器装置1は、裏面側から表面側に向って、ロワケース2、回路基板3、照明ケース4、文字板5、目盛リング6、アッパケース7、加飾リング8、透明カバー9などを有している。また、文字板5の表面側には指針10が回動可能に設置される。但し、車両用計器装置1の構成は、上記に限るものではない。
【0014】
そして、
図2に示すように、車両用計器装置1は、少なくとも、文字板5と、この文字板5の裏面側に設置される照明ケース4とを備えたものとされており、
図3、
図4に示すように、少なくとも、上記した文字板5が、指針軸穴11を有すると共に、上記した照明ケース4が、指針軸穴11へ嵌合される筒壁部12を有している。
【0015】
ここで、文字板5は、例えば、透明なフィルムに対し、透光性または半透光性の表示部を残して不透光性の印刷層を形成したものとされる。また、照明ケース4は、文字板5の表示部を照明するための光源が設置される照明室を構成するものである。照明ケース4は、例えば、反射率の高い白色樹脂などによって構成される。光源は、照明室の内部に配置されるように回路基板3に対して取付けられる。
【0016】
図4に示すように、指針軸穴11は、筒壁部12とほぼ同径のものとされる。指針軸穴11は、少なくとも照明ケース4に文字板5を取付けるのに要する動きの分だけ、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15(図の場合には、下側から上側となっている)に長い長穴とされる。筒壁部12には、文字板5の浮きを防止するために、指針軸穴11の縁部を係止する突起部13が形成されている。これに対し、指針軸穴11には、嵌合時に突起部13を逃げるための逃げ部14が設けられる。
【0017】
この場合、突起部13は、筒壁部12先端における、指針軸穴11を通して文字板5の表面側へ突出する部分に対し、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15と直交する方向16(図の場合には、左右方向となっている)へ向けて一対突設されている。
【0018】
また、逃げ部14は、筒壁部12先端とほぼ同径とされた指針軸穴11における、挿入初期に突起部13と干渉する部分の周辺に設けられている。
【0019】
この場合、取付方向15は、車両用計器装置1を車両に搭載した状態を基準にして、下側から上側へ向かう方向とされているため、取付方向15と直交する方向16は、ほぼ車幅方向となる。そして、逃げ部14は、指針軸穴11の上側の半部に設けられた拡径穴などとされている。但し、取付方向15は、上記に限るものではない。例えば、上側から下側へ向かう方向としたり、右側から左側へ向かう方向としたり、左側から右側へ向かう方向としたりすることも構造的には可能である。
【0020】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしている。
【0021】
(1)
図5、
図6に示すように、上記照明ケース4に、上記筒壁部12の文字板5に対する接触長21(
図4参照)よりも長い(または大きい)リブ22が設けられるようにする。そして、上記文字板5に、上記リブ22が挿通されるリブ受穴23が設けられるようにする(筒壁部12の文字板5に対する接触長21<リブ22の長さまたは大きさ)。
【0022】
ここで、文字板5に対する接触長21とは、文字通り、筒壁部12の文字板5と当接(または接触)する部分(弧など)の長さのことである。例えば、筒壁部12が文字板5と全周に亘って当接する場合には、接触長21は筒壁部12の全周の長さ(円弧長)が基準となり、または、筒壁部12が文字板5と半周分だけ当接する場合には、接触長21は筒壁部12の半周の長さ(半円弧長)が基準となる。
【0023】
リブ22は、接触長21よりも長く、しかも、照明ケース4に対して文字板5を取付ける際に、筒壁部12よりも目に付き易い大きさまたは長さとなるように設けられる。リブ受穴23は、
図6に示すように、少なくとも照明ケース4に文字板5を取付けるのに要する動きの分だけ、リブ22よりも幅広のものとされる。リブ22は、筒壁部12とほぼ同程度の高さとするのが好ましい。
【0024】
(2)上記リブ22は、少なくとも、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15と交差する方向31へ延びる部分32を有するものとするのが好ましい。
【0025】
ここで、取付方向15と交差する方向31へ延びる部分32は、部分的なものであっても、全体的なものであっても良い。この場合には、リブ22のほぼ全体を取付方向15と交差する方向31へ延びる部分32としている。リブ22は、直線的なものとしても、曲線的なものとしても良い。
【0026】
そして、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15と交差する方向31へ延びる部分32は、取付方向15と直交する方向16、または、直交に近い方向へ延びるものであることが最も好ましい。
【0027】
また、上記部分32は、取付方向15と交差する方向31に対し、筒壁部12を挟んで両側(
図5の場合には、筒壁部12の左右)に存在するように設けるのが好ましい。筒壁部12の両側に存在する上記部分32は、連続したものであっても、複数に分離されたものであっても良い。この場合には、複数に分離されたものとなっている。
【0028】
(3)上記リブ22は、少なくとも、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15に対し、上記筒壁部12を挟んだ両側に存在するように設けられるのが好ましい。
【0029】
ここで、上記筒壁部12を挟んだ両側は、
図5の場合には、筒壁部12の上下となっている。
【0030】
(4)より具体的には、
図2に示すように、上記文字板5が、上記指針軸穴11の廻りに計器表示領域41を有している。
この照明ケース4が、上記筒壁部12の廻りに上記計器表示領域41の裏面側に位置する計器照明室42を有している。
そして、上記リブ22が、上記照明ケース4の計器照明室42の外側となる位置に設けられる。
また、上記リブ受穴23が、上記文字板5の計器表示領域41よりも外側となる位置に設けられる。
【0031】
ここで、計器表示領域41は、例えば、速度計や回転計などの表示領域とされる。計器照明室42は、速度計や回転計などの表示領域を照明するためのものとされる。計器照明室42は、円形状または円弧形状の凹部とされる。なお、筒壁部12の内側は指針照明室とされる。速度計や回転計などは、指針10が回動する領域の最も外側の位置に、指針10で差すことで数値を読み取れるようにした目盛が設けられているので、計器表示領域41や計器照明室42よりも外側となる位置は、目盛よりも外側の位置となる。
【0032】
この場合、リブ22およびリブ受穴23は、ほぼ円形状をした計器表示領域41や計器照明室42の周囲を取り囲むように4つ設けられている。4つのリブ22およびリブ受穴23は、筒壁部12を中心とする円弧状のものとされて、取付方向15および取付方向15と直交する方向16に対して周方向にほぼ45度ズレた位置に設けられている。この周方向にほぼ45度ズレた位置は、計器表示領域41の外側に、警告灯や案内灯(例えば、
図2のウインカー43参照)などが存在している可能性が高い位置であるので、これらとの間の遮光性を確保する上では、特に便宜が良い。
【0033】
なお、上記した4つのリブ22およびリブ受穴23は、図では、全て同じ長さで、筒壁部12を中心として回転対称となり、筒壁部12を通って取付方向15へ延びる線に対して対称となり、筒壁部12を通って取付方向15と直交する方向16へ延びる線に対して対称となるように設置されているが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、4つのリブ22およびリブ受穴23は、上記した対称関係のいずれか1つを有していれば良いし、または、対称関係を有していなくても良い。また、4つのリブ22およびリブ受穴23は、計器表示領域41や計器照明室42の状況に合わせて個々に長さが異なるようにしても良い。また、リブ22およびリブ受穴23の設置個数は、4つに限るものではなく、例えば、1つ、または、2つ以上とすることができる。リブ22やリブ受穴23が1つの場合には、計器表示領域41や計器照明室42の全周に亘って閉ループ状に延びるものとしても良いし、または、1箇所が開いた開ループ状のものとしても良い。また、リブ22やリブ受穴23が複数の場合には、これらのリブ22およびリブ受穴23は、計器表示領域41や計器照明室42の周方向に対して等間隔に配置しても良いし、不等間隔に配置しても良い。更に、リブ22やリブ受穴23は、筒壁部12を中心とする円弧状としているが、それ以外に、筒壁部12を中心としない円弧状や、直線状や、曲線状や、折線状やこれらの組み合わせ形状などとすることができる。
【0034】
なお、リブ22およびリブ受穴23は、内周側に目盛が形成されるようにした目盛リング6(
図1参照)などによって覆い隠すようにしても良い。
【0035】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0036】
(作用効果1)照明ケース4に対して文字板5を取付ける場合、例えば、文字板5を照明ケース4と平行に保持した状態で面直方向に近接させつつ、文字板5を下側から上側へ僅かに動かして、指針軸穴11を筒壁部12へ嵌合させる。この時、指針軸穴11の逃げ部14(拡径穴)を筒壁部12の突起部13が通るようにする。この文字板5の取付けは手作業で行われる。
【0037】
この際、筒壁部12に文字板5の指針軸穴11の縁部が当たると、文字板5の指針軸穴11の縁部が筒壁部12により傷付けられて、打痕などの見栄え不良が発生することになる。
【0038】
そこで、照明ケース4に筒壁部12の文字板5に対する接触長21よりも長い(または大きい)リブ22を設け、文字板5にリブ22を挿通するリブ受穴23を設けた。一般に、点で当たるよりも線で当たった方が力は分散されるため、上記したような長いリブ22を設けることで、力の分散効果を利用して文字板5に筒壁部12による打痕などの見栄え不良が発生するのを防止することができる。そして、照明ケース4に対して文字板5を取付ける際に、筒壁部12よりもリブ22の方が先に当たり易くなる寸法関係とするには、少なくとも、文字板5(の指針軸穴11)と筒壁部12との隙間a(
図4参照)よりも、文字板5(のリブ受穴23)とリブ22との隙間b(
図6参照)の方が小さくなるようにするのが好ましい(隙間a>隙間b)。
【0039】
また、小さい物よりも大きい物の方が取付け上の目安になり易いので、照明ケース4に対して文字板5を取付ける際に、大きいリブ22を目標にして作業を行うことで、指針軸穴11に筒壁部12を通し易くすることができる。
【0040】
更に、リブ22をリブ受穴23へ通すことで、指針軸穴11に筒壁部12を通す際に、ガイドとなることも期待できる。
【0041】
(作用効果2)リブ22が、少なくとも、照明ケース4に対する文字板5の取付方向15と交差する方向31へ延びる部分32を有するようにした。これにより、文字板5の取付方向15と交差する方向31に、リブ22による保護範囲を拡げることができるようになる。よって、例えば、照明ケース4に対して文字板5を取付ける際に、取付方向15と交差するに方向に文字板5がブレても、上記部分32が先に当たるようになることで、筒壁部12による文字板5の指針軸穴11の縁部に対する傷付きを防止することができる。以って、文字板5の取付方向15と異なる方向への動きに対しても、傷付きが生じ難くなるようにすることができる。
【0042】
(作用効果3)照明ケース4に対する文字板5の取付方向15に対し、筒壁部12を挟んだ両側にリブ22が存在しているようにした。これにより、照明ケース4に対して文字板5を取付ける際に、筒壁部12よりも先にどちらかのリブ22が必ず当たるようになるので、文字板5の指針軸穴11の縁部が筒壁部12により傷付けられて、打痕などの見栄え不良が発生するのをより確実に防止することができる。
【0043】
(作用効果4)リブ22を照明ケース4の計器照明室42の外側に設けると共に、リブ受穴23を文字板5の計器表示領域41よりも外側に設けた。これにより、リブ22で、計器照明室42および計器表示領域41からの光漏れを防止できるようになり、計器表示領域41の外側に設けられている警告灯や案内灯(例えば、
図2のウインカー43)などに対する遮光機能をも得ることができるようになる。
【0044】
また、リブ22およびリブ受穴23を、計器照明室42および計器表示領域41の外側に設けることにより、筒壁部12からは離れ過ぎず、しかも、邪魔にならない位置に対して、リブ22およびリブ受穴23をスペース効率良く配置することができる。
【0045】
以上、実施例を図面により詳述してきたが、実施例は例示にしか過ぎないものである。よって、本発明は、実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。
【0046】
また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。