特許第6628642号(P6628642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628642
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20200106BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   F24H4/02 S
   F24H1/00 602C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-42038(P2016-42038)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-156062(P2017-156062A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−224762(JP,A)
【文献】 特開2013−224751(JP,A)
【文献】 特開2006−084120(JP,A)
【文献】 特開2009−047334(JP,A)
【文献】 特開2011−163659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 4/02
F24H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に給水管が接続されると共に上部に出湯管が接続され、前記給水管から供給される水が貯められる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、
前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、
前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、
前記貯湯タンク内の貯湯量を認識する貯湯量認識部と、
前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通を検出する水量センサと、
前記出湯管から供給される湯水の温度を検出する出湯温度センサと、
前記出湯管を流通する湯水を加熱する瞬間加熱式の補助熱源機と、
前記補助熱源機による加熱箇所よりも下流側で前記出湯管から分岐して浴槽に連通した湯張り管と、
前記湯張り管を開閉する湯張り弁と、
使用者による湯張り開始操作に応じて、前記湯張り弁を開弁して前記貯湯タンク内の湯水を前記湯張り管を介して前記浴槽に供給する湯張り運転を実行する湯張り制御部と、
前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出され、且つ、前記出湯温度センサの検出温度が所定の目標給湯温度よりも低いときに、前記補助熱源機を作動させる補助熱源機制御部と、
当日の前記湯張り運転が開始される想定時刻である湯張り開始想定時刻を設定する湯張り開始想定時刻設定部と、
前記湯張り開始想定時刻よりも第1所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に前記ヒートポンプを第1能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第1沸き上げ運転を開始し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンクの貯湯量が第1貯湯量以下になったときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第1能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多く且つエネルギー効率が低い第2能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第2沸き上げ運転を実行する沸き上げ制御部と
を備え
前記沸き上げ制御部は、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が前記第1貯湯量以下になったときに、前記第2沸き上げ運転を第2所定時間実行し、その後は前記第1沸き上げ運転に切り替えることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
下部に給水管が接続されると共に上部に出湯管が接続され、前記給水管から供給される水が貯められる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、
前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、
前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、
前記貯湯タンク内の貯湯量を認識する貯湯量認識部と、
前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通を検出する水量センサと、
前記出湯管から供給される湯水の温度を検出する出湯温度センサと、
前記出湯管を流通する湯水を加熱する瞬間加熱式の補助熱源機と、
前記補助熱源機による加熱箇所よりも下流側で前記出湯管から分岐して浴槽に連通した湯張り管と、
前記湯張り管を開閉する湯張り弁と、
使用者による湯張り開始操作に応じて、前記湯張り弁を開弁して前記貯湯タンク内の湯水を前記湯張り管を介して前記浴槽に供給する湯張り運転を実行する湯張り制御部と、
前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出され、且つ、前記出湯温度センサの検出温度が所定の目標給湯温度よりも低いときに、前記補助熱源機を作動させる補助熱源機制御部と、
当日の前記湯張り運転が開始される想定時刻である湯張り開始想定時刻を設定する湯張り開始想定時刻設定部と、
前記湯張り開始想定時刻よりも第1所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に前記ヒートポンプを第1能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第1沸き上げ運転を開始し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンクの貯湯量が第1貯湯量以下になったときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第1能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多く且つエネルギー効率が低い第2能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第2沸き上げ運転を実行する沸き上げ制御部と、
当日の湯の使用が終了する想定時刻である給湯終了想定時刻を設定する給湯終了想定時刻設定部と
を備え、
前記沸き上げ制御部は、前記給湯終了想定時刻よりも第3所定時間前の沸き上げ運転終了時刻以降は、翌日まで前記ヒートポンプを停止し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転が前記沸き上げ運転終了時刻よりも第4所定時間前の時刻以前に開始されたときに限定して、前記第2沸き上げ運転を実行し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転が前記沸き上げ運転終了時刻よりも前記第4所定時間前の時刻後に開始されたときには、前記第1沸き上げ運転のみを実行することを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給湯システムにおいて、
当日の湯の使用が開始される想定時刻である給湯開始想定時刻を設定する給湯開始想定時刻設定部を備え、
前記沸き上げ制御部は、前記給湯開始想定時刻よりも第5所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを第3能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第3沸き上げ運転を開始し、該第3沸き上げ運転の実行中に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第3能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多い第4能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第4沸き上げ運転に切り替えることを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項3に記載の給湯システムにおいて、
前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中に前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されて、前記第4沸き上げ運転に切り替えた後、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が第2貯湯量以上になった時点で、前記第3沸き上げ運転に戻すことを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項3に記載の給湯システムにおいて、
前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中に前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されて、前記第4沸き上げ運転に切り替えた後、第6所定時間が経過した時点で、前記第3沸き上げ運転に戻すことを特徴とする給湯システム。
【請求項6】
請求項から請求項のうちいずれか1項に記載の給湯システムにおいて、
前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中であって、前記第3沸き上げ運転の開始から第7所定時間以内に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときに限定して、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行い、前記第3沸き上げ運転の開始から前記第7所定時間が経過した後に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに、前記第3沸き上げ運転を継続することを特徴とする給湯システム。
【請求項7】
請求項から請求項のうちいずれか1項に記載の給湯システムにおいて、
前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中であって、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が第3貯湯量以下である状態で、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときに限定して、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行い、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が前記第3貯湯量よりも多い状態で、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに、前記第3沸き上げ運転を継続することを特徴とする給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱源として、貯湯タンク内の水を沸き上げるヒートポンプと瞬間加熱式の補助熱源機とを備えたハイブリッド方式の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプと、貯湯タンクに接続された出湯管を流通する湯水を加熱する瞬間加熱式の補助熱源機とを備えたいわゆるハイブリッド方式の給湯システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された給湯システムにおいては、1日(0時〜24時)単位の過去の湯の使用状況に基づいて、貯湯タンク内の水の沸き上げをこれから行う当日における、最初の湯の供給が開始される時刻(給湯開始時刻)、浴槽への湯張りが開始される時刻(湯張り開始時刻)、及び最後の湯の供給が終了する時刻(給湯終了時刻)を想定している。
【0004】
そして、このようにして想定した給湯開始時刻及び湯張り開始時刻に貯湯タンク内の水の沸き上げが終了するように、ヒートポンプによる貯湯タンク内の水の加熱を開始すると共に、給湯終了時刻よりも所定時間前の時刻以降はヒートポンプを停止させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−224762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された給湯システムによれば、過去の湯の使用状況に基づく比較的簡単な制御方法によって、貯湯タンク内の水を適切なタイミングで沸き上げて給湯を行うことが期待できるが、ハイブリッド方式の給湯システムにおいては、ヒートポンプ及び補助熱源機の組合せによって、よりランニングコストが低い給湯を行うことが望まれている。
【0007】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、ヒートポンプ及び補助熱源機の組合せによって、よりランニングコストが低い給湯を行うことができる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の給湯システムは、
下部に給水管が接続されると共に上部に出湯管が接続され、前記給水管から供給される水が貯められる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、
前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、
前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、
前記貯湯タンク内の貯湯量を認識する貯湯量認識部と、
前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通を検出する水量センサと、
前記出湯管から供給される湯水の温度を検出する出湯温度センサと、
前記出湯管を流通する湯水を加熱する瞬間加熱式の補助熱源機と、
前記補助熱源機による加熱箇所よりも下流側で前記出湯管から分岐して浴槽に連通した湯張り管と、
前記湯張り管を開閉する湯張り弁と、
使用者による湯張り開始操作に応じて、前記湯張り弁を開弁して前記貯湯タンク内の湯水を前記湯張り管を介して前記浴槽に供給する湯張り運転を実行する湯張り制御部と、
前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出され、且つ、前記出湯温度センサの検出温度が所定の目標給湯温度よりも低いときに、前記補助熱源機を作動させる補助熱源機制御部と、
当日の前記湯張り運転が開始される想定時刻である湯張り開始想定時刻を設定する湯張り開始想定時刻設定部と、
前記湯張り開始想定時刻よりも第1所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に前記ヒートポンプを第1能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第1沸き上げ運転を開始し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンクの貯湯量が第1貯湯量以下になったときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第1能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多く且つエネルギー効率が低い第2能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第2沸き上げ運転を実行する沸き上げ制御部と
を備え
前記沸き上げ制御部は、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が前記第1貯湯量以下になったときに、前記第2沸き上げ運転を第2所定時間実行し、その後は前記第1沸き上げ運転に切り替えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の給湯システムにおいては、貯湯タンク内の湯水がヒートポンプにより加熱されて沸き上げられ、貯湯タンクの湯切れが生じても補助熱源機の作動によって出湯管からの給湯を継続することができる。
【0010】
また、湯張り開始想定時刻設定部により湯張り開始想定時刻が設定され、沸き上げ制御部は、湯張り開始想定時刻よりも第1所定時間前に、ヒートポンプを第2能力よりもエネルギー効率が良い第1能力で作動させる第1沸き上げ運転を開始する。これにより、湯張り開始想定時刻までに貯湯タンク内の湯水を効率良く沸き上げて、湯張り運転の開始に備えることができる。また、湯張り運転が開始されて貯湯タンク内の貯湯量が第1貯湯量以下になった時点で、沸き上げ制御部は、ヒートポンプを第1能力よりもタンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多い第2能力で作動させる第2沸き上げ運転を実行する。これにより、貯湯タンク内の湯水を速やかに加熱すると共に、ヒートポンプよりもエネルギー効率が低くランニングコストが高価な瞬間加熱式の補助熱源機の作動時間を短縮して、湯張り運転のランニングコストの低減を図ることができる。
【0011】
なお、本発明における当日は、湯張り開始想定時刻及び給湯開始想定時刻に基づく貯湯タンク内の湯水の計画的な沸き上げがこれから行われる日を意味する。
【0013】
さらに、第2沸き上げ運転の実行により、貯湯タンク内の貯湯量がある程度確保された状況になった時点で、第2沸き上げ運転から第1沸き上げ運転に切り替えることによって、ヒートポンプのエネルギー効率が第1沸き上げ運転よりも低い第2沸き上げ運転の実行時間を短縮して、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明の給湯システムは、
下部に給水管が接続されると共に上部に出湯管が接続され、前記給水管から供給される水が貯められる貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部と上部を接続したタンク循環路と、
前記貯湯タンクの下部に貯まった湯水を、前記タンク循環路を介して前記貯湯タンクの上部に循環させるタンク循環ポンプと、
前記タンク循環路を流通する湯水を加熱するヒートポンプと、
前記貯湯タンク内の貯湯量を認識する貯湯量認識部と、
前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通を検出する水量センサと、
前記出湯管から供給される湯水の温度を検出する出湯温度センサと、
前記出湯管を流通する湯水を加熱する瞬間加熱式の補助熱源機と、
前記補助熱源機による加熱箇所よりも下流側で前記出湯管から分岐して浴槽に連通した湯張り管と、
前記湯張り管を開閉する湯張り弁と、
使用者による湯張り開始操作に応じて、前記湯張り弁を開弁して前記貯湯タンク内の湯水を前記湯張り管を介して前記浴槽に供給する湯張り運転を実行する湯張り制御部と、
前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出され、且つ、前記出湯温度センサの検出温度が所定の目標給湯温度よりも低いときに、前記補助熱源機を作動させる補助熱源機制御部と、
当日の前記湯張り運転が開始される想定時刻である湯張り開始想定時刻を設定する湯張り開始想定時刻設定部と、
前記湯張り開始想定時刻よりも第1所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に前記ヒートポンプを第1能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第1沸き上げ運転を開始し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転の実行中に、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンクの貯湯量が第1貯湯量以下になったときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第1能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多く且つエネルギー効率が低い第2能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第2沸き上げ運転を実行する沸き上げ制御部と、
当日の湯の使用が終了する想定時刻である給湯終了想定時刻を設定する給湯終了想定時刻設定部とを備え、
前記沸き上げ制御部は、前記給湯終了想定時刻よりも第3所定時間前の沸き上げ運転終了時刻以降は、翌日まで前記ヒートポンプを停止し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転が前記沸き上げ運転終了時刻よりも第4所定時間前の時刻以前に開始されたときに限定して、前記第2沸き上げ運転を実行し、前記湯張り制御部による前記湯張り運転が前記沸き上げ運転終了時刻よりも前記第4所定時間前の時刻後に開始されたときには、前記第1沸き上げ運転のみを実行することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、沸き上げ運転終了時刻よりも第4所定時間前の時刻後に、湯張り運転が開始されたときには、第2沸き上げ運転に切り替えても、間もなく沸き上げ運転終了時刻になってヒートポンプが停止するため、貯湯タンクの湯切れが生じて補助熱源機が作動する可能性が高い。
【0016】
そこで、この場合には、第2沸き上げ運転への切り替えを行わずに第1沸き上げ運転を継続することによって、第2沸き上げ運転に切り替えて第2沸き上げ運転を短時間実行することによるヒートポンプのエネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0017】
また、当日の湯の使用が開始される想定時刻である給湯開始想定時刻を設定する給湯開始想定時刻設定部を備え、
前記沸き上げ制御部は、前記給湯開始想定時刻よりも第5所定時間前に、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを第3能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第3沸き上げ運転を開始し、該第3沸き上げ運転の実行中に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記タンク循環ポンプを作動させると共に、前記ヒートポンプを前記第3能力よりも前記タンク循環路を流通する湯水に対する加熱量が多い第4能力で作動させて、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する第4沸き上げ運転に切り替えることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、給湯開始想定時刻より第5所定時間前から第3沸き上げ運転を実行しているときに、水量センサにより貯湯タンクから出湯管への湯水の流通が検出されたときに、第3沸き上げ運転よりも出湯管を流通する湯水に対する加熱量が多くなる第4沸き上げ運転に切り替えることによって、貯湯タンク内の湯水を速やかに加熱して湯の使用に対応することができる。これにより、補助熱源機の作動を抑制して、給湯のランニングコストの低減を図ることができる。
【0019】
また、前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中に前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されて、前記第4沸き上げ運転に切り替えた後、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が第2貯湯量以上になった時点で、前記第3沸き上げ運転に戻すことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第4沸き上げ運転の実行により、貯湯タンク内の貯湯量が第2貯湯量以上になった後は、第3沸き上げ運転に戻される。これにより、貯湯タンク内の湯水の沸き上げが、ヒートポンプのエネルギー効率が第3沸き上げ運転よりも低い第4沸き上げ運転によって実行される時間を短縮して、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0021】
また、前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中に前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されて、前記第4沸き上げ運転に切り替えた後、第6所定時間が経過した時点で、前記第3沸き上げ運転に戻すことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、第4沸き上げ運転の第6所定時間の実行により、貯湯タンク内の貯湯量がある程度増加した後は、第3沸き上げ運転に戻される。これにより、貯湯タンク内の湯水の沸き上げが、ヒートポンプのエネルギー効率が第3沸き上げ運転よりも低い第4沸き上げ運転によって実行される時間を短縮して、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0023】
また、前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中であって、前記第3沸き上げ運転の開始から第7所定時間以内に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときに限定して、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行い、前記第3沸き上げ運転の開始から前記第7所定時間が経過した後に、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに、前記第3沸き上げ運転を継続することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、第3沸き上げ運転の第7所定時間の実行により、貯湯タンク内にある程度の湯が貯められた後は、第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに第3沸き上げ運転を継続することによって、第4沸き上げ運転への切り替えと第4沸き上げ運転の短時間の実行によるヒートポンプのエネルギー効率の低下を防止することができる。
【0025】
また、前記沸き上げ制御部は、前記第3沸き上げ運転の実行中であって、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が第3貯湯量以下である状態で、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときに限定して、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行い、前記貯湯量認識部により認識される前記貯湯タンク内の貯湯量が前記第3貯湯量よりも多い状態で、前記水量センサにより前記貯湯タンクから前記出湯管への湯水の流通が検出されたときには、前記第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに、前記第3沸き上げ運転を継続することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、第3沸き上げ運転の実行により、貯湯タンク内の貯湯量が既に第3貯定量よりも多くなっているときには、第4沸き上げ運転への切り替えを行わずに第3沸き上げ運転を継続することによって、第4沸き上げ運転への切り替えと第4沸き上げ運転の短時間の実行によるヒートポンプのエネルギー効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】給湯システムの構成図。
図2】沸き上げ運転のフローチャート。
図3】湯張り運転中の沸き上げ運転のフローチャート。
図4】給湯開始想定時刻に基づく沸き上げ運転のフローチャート。
図5】沸き上げ運転の実行タイミングと、湯の使用状況を示した第1の説明図。
図6】沸き上げ運転の実行タイミングと、湯の使用状況を示した第2の説明図。
図7】沸き上げ運転の実行タイミングと、湯の使用状況を示した第3の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、図1図7を参照して説明する。
【0029】
[1.給湯システムの構成]
図1を参照して、本実施形態の給湯システム1は、貯湯ユニット10、ヒートポンプユニット50、補助熱源機80、及び、給湯システム1の全体的な作動を制御するコントローラ120を備えて構成されたハイブリッド方式の給湯システムである。
【0030】
なお、図1では、給湯システム1のコントローラとして一つのコントローラ120を示したが、貯湯ユニット10のコントローラと、ヒートポンプユニット50のコントローラと、補助熱源機80のコントローラを個別に備え、各コントローラ間の通信によって、給湯システム1の全体的な作動を制御する構成としてもよい。
【0031】
貯湯ユニット10は、貯湯タンク11、給水管12、出湯管13等を備えている。貯湯タンク11は内部に湯を保温して貯め、高さ方向に略等間隔で配置されて、各高さでの貯湯タンク11内の湯水の温度th2〜th5を検出するタンク表面温度センサ14〜17と、貯湯タンク11の上部に配置されて貯湯タンク11から出湯管13に供給される湯水の温度th1を検出するタンク中温度センサ26が設けられている。
【0032】
また、貯湯タンク11の上部と下部を接続するタンク循環路41の貯湯タンク11の下部との接続箇所の付近には、貯湯タンク11の下部に貯められた湯水の温度th6を検出するタンク下部温度センサ42が設けられている。また、貯湯タンク11の底部には、作業者の手動操作により開弁される排水弁18が設けられている。
【0033】
給水管12は、一端が給水口30を介して図示しない上水道に接続され、他端が貯湯タンク11の下部に接続されて、貯湯タンク11内の下部に水を供給する。給水管12には、貯湯タンク11の内圧が過大になることを防止するための減圧弁19と、給水管12から貯湯タンク11への方向のみの通水を可能にして、貯湯タンク11から給水管12側への湯水の流出を阻止する第1湯側逆止弁20が設けられている。
【0034】
給水管12から分岐した給水バイパス管34は、給湯混合弁21を介して接続箇所Xで出湯管13に連通しており、給湯混合弁21によって貯湯タンク11から出湯管13に供給される湯水と給水バイパス管34から出湯管13に供給される水との混合比が変更される。
【0035】
給水バイパス管34には、給水バイパス管34に供給される水の温度Tw(以下、給水温度Twという)を検出する給水温度センサ22と、給水バイパス管34を流通する水の流量Fwを検出する水側流量センサ23と、給水バイパス管34から出湯管13への方向のみの通水を可能にして、出湯管13から給水バイパス管34側への湯水の流出を阻止する水側逆止弁24とが設けられている。
【0036】
出湯管13は、一端が給湯口31に接続され、他端が貯湯タンク11の上部に接続されている。貯湯タンク11の上部に貯められた湯水は、出湯管13から給湯口31を介して図示しない給湯栓(台所、洗面所、浴室のカランやシャワー等)に供給される。出湯管13には、貯湯タンク11から出湯管13への方向のみの通水を可能にして、出湯管13から貯湯タンク11側への湯水の流入を阻止する第2湯側逆止弁25と、貯湯タンク11から出湯管13に供給される湯水の流量Fhを検出する湯側流量センサ27とが設けられている。
【0037】
補助熱源機80は、出湯管13の給水バイパス管34との接続箇所Xよりも下流側の途中に設けられ、貯湯ユニット10には、補助熱源機80をバイパスして、補助熱源機80の下流側と上流側の出湯管13を連通する出湯バイパス管33と、出湯バイパス管33を開閉する出湯バイパス弁29とが設けられている。
【0038】
出湯管13の出湯バイパス管33との分岐箇所Yと給湯混合弁21との間に、給湯混合弁21を介して出湯管13に供給される湯水の温度Tmを検出する混合温度センサ28が設けられ、出湯管13の出湯バイパス管33との合流箇所Zと給湯口31との間に、給湯口31から出湯される湯水の温度を検出する給湯温度センサ32が設けられている。
【0039】
貯湯ユニット10に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ120に入力される。また、コントローラ120から出力される制御信号によって、給湯混合弁21と出湯バイパス弁29の作動が制御される。
【0040】
次に、ヒートポンプユニット50は、貯湯タンク11内の湯水をタンク循環路41を介して循環させて加熱するものであり、屋外に設置されている。ヒートポンプユニット50は、熱媒体(ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の代替フロン、二酸化炭素等)が封入されたヒートポンプ循環路52により接続された蒸発器53、圧縮機54、ヒートポンプ熱交換器55(凝縮器)、及び膨張弁56により構成されたヒートポンプ51を有している。
【0041】
蒸発器53は、ファン60の回転により供給される空気(外気)とヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体との間で熱交換を行う。圧縮機54は、蒸発器53から吐出された熱媒体を圧縮して高圧・高温とし、ヒートポンプ熱交換器55に送出する。膨張弁56は、圧縮機54で加圧された熱媒体の圧力を開放する。
【0042】
除霜弁61は膨張弁56をバイパスして設けられており、圧縮機54から送出される熱媒体により蒸発器53を除霜する。ヒートポンプ循環路52の膨張弁56の上流側及び下流側、圧縮機54の上流側及び下流側には、ヒートポンプ循環路52内を流通する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度センサ62,63,64,65が、それぞれ設けられている。また、蒸発器53には、蒸発器53に吸入される空気の温度Toutを検出する周囲温度センサ67が設けられている。
【0043】
ヒートポンプ熱交換器55はタンク循環路41と接続され、圧縮機54により高圧・高温とされた熱媒体と、タンク循環路41内を流通する湯水との熱交換により、タンク循環路41内を流通する湯水を加熱する。タンク循環路41には、貯湯タンク11内の湯水をタンク循環路41を介して循環させるためのタンク循環ポンプ66が設けられている。
【0044】
貯湯タンク11内の下部に貯まった湯水は、タンク循環ポンプ66によりタンク循環路41に導かれ、ヒートポンプ熱交換器55で所定温度(沸き上げ温度)まで加熱されて貯湯タンク11の上部に戻される。これにより、所定温度の湯が、貯湯タンク11の上部から順次積層して貯められる。
【0045】
なお、タンク循環路41のヒートポンプ熱交換器55の上流側及び下流側には、タンク循環路41内を流通する湯水の温度を検出する湯温度センサ68,69が設けられている。また、ヒートポンプ熱交換器55には、その内部で凝縮する熱媒体の凝縮温度を検出する凝縮温度センサ57が設けられている。
【0046】
ヒートポンプユニット50に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ120に入力される。また、コントローラ120から出力される制御信号によって、圧縮機54、膨張弁56、タンク循環ポンプ66、及びファン60の作動が制御される。
【0047】
次に、補助熱源機80は、出湯管13を流通する湯水を加熱するものであり、缶体87内に収容された給湯バーナ81及び給湯バーナ81により加熱される給湯熱交換器82等を備えている。
【0048】
出湯管13の給湯熱交換器82の配置箇所よりも下流側の箇所に、浴槽105に連通した湯張り管100が接続されている。湯張り管100には、湯張り管100を開閉する湯張り弁103が設けられており、コントローラ120は、湯張り弁103を開弁することによって、出湯管13から湯張り管100を介して浴槽105に湯を供給する。
【0049】
給湯バーナ81には、図示しないガス供給管から燃料ガスが供給されると共に、図示しない燃焼ファンにより燃焼用空気が供給される。コントローラ120は、給湯バーナ81に供給する燃料ガスと燃焼用空気の流量を調節して、給湯バーナ81の燃焼量を制御する。
【0050】
給湯熱交換器82は、出湯管13の途中に接続されており、給湯バーナ81の燃焼熱によって、内部を流通する湯水を加熱する。出湯管13には、上流側から順に、止水弁93と水量センサ88が設けられている。給湯熱交換器82の上流側と下流側は、熱源バイパス管89により連通されており、熱源バイパス管89には、熱源バイパス管89の開度を調節するための熱源バイパス弁90が設けられている。出湯管13の給湯熱交換器82の出口付近には熱交出湯温度センサ91が設けられ、出湯管13の熱源バイパス管89との接続箇所の下流側には熱源出湯温度センサ92(本発明の出湯温度センサに相当する)が設けられている。
【0051】
この構成により、貯湯タンク11内に湯が無いとき(湯切れ状態であるとき)に、給水管12から貯湯タンク11及び給水バイパス管34を介して出湯管13に供給される水が、給湯熱交換器82により加熱されて湯となり、熱源バイパス管89からの水と混合されて、目標給湯温度の湯が給湯口31から供給されるようになっている。
【0052】
補助熱源機80に備えられた各センサの検出信号は、コントローラ120に入力される。また、コントローラ120から出力される制御信号によって、給湯バーナ81、熱源バイパス弁90、及び湯張り弁103の作動が制御される。
【0053】
コントローラ120は、図示しないCPU,メモリ等により構成された電子回路ユニットであり、メモリに保持された給湯システム1の制御用プログラムを、CPUで実行することによって、給湯制御部121、湯張り制御部122、沸き上げ制御部123、貯湯量認識部124、給湯開始想定時刻設定部125、湯張り開始想定時刻設定部126、及び給湯終了想定時刻設定部127として機能する。
【0054】
コントローラ120は、通信ケーブル130によりリモコン140と接続されている。リモコン140は、給湯システム1の運転状況や運転条件の設定等を表示するための表示器141と、各種スイッチが設けられたスイッチ部142とを備えている。給湯システム1の使用者は、リモコン140のスイッチ部142を操作することによって、給湯口31からの給湯温度(目標給湯温度)の設定や、湯張り運転における浴槽105への給湯温度(目標湯張り温度)及び湯張り量(目標湯張り量)の設定等を行う。
【0055】
給湯制御部121は、貯湯タンク11の湯切れが生じていない状態で、水側流量センサ23により下限流量以上の通水が検出されている場合には、混合温度センサ28又は給湯温度センサ32の検出温度が目標給湯温度となるように、給湯混合弁21の分配比を調節する混合温調制御を行う。このとき、給湯制御部121は、湯張り弁103が開弁して浴槽105への給湯が行われているときは出湯バイパス弁29を閉弁し、湯張り弁103が閉弁しているときには出湯バイパス弁29を開弁する。
【0056】
また、給湯制御部121は、貯湯タンク11の湯切れが生じている状態で、水側流量センサ23により下限流量以上の通水が検出されている場合には、出湯バイパス弁29を閉弁する。そして、水量センサ88により下限流量以上の通水が検出されているときに、熱源出湯温度センサ92の検出温度が目標給湯温度となるように、給湯バーナ81の燃焼量を調節する加熱温調制御を実行する。給湯制御部121が、このように加熱温調制御を実行する構成は、本発明の補助熱源機制御部に相当する。
【0057】
湯張り制御部122は、リモコン140のスイッチ部142により、湯張りを指示する操作(湯張り開始操作)がなされたとき、或は予め設定された予約時刻に浴槽105への湯張りが終了するように、湯張り弁103を開弁して出湯管13から湯張り管100を介して浴槽105に目標湯張り量分の湯を供給する湯張り運転を実行する。湯張り制御部122は、目標湯張り温度を目標給湯温度に設定して、湯張り運転を実行する。
【0058】
貯湯量認識部124は、タンク中温度センサ26及びタンク表面温度センサ14〜17の検出温度を監視することによって、貯湯タンク11に貯められた湯の量(貯湯量)を認識する。なお、貯湯タンク11の沸き上げが終了した状態(満蓄状態)での貯湯タンク11内の総湯量(=貯湯タンク11の容量)から、貯湯タンク11から出湯管13への湯の供給流量(湯側流量センサ27により検出される)の積算値を減算することによって、或は貯湯タンク11から出湯管への給湯時間から想定される給湯量を減算することによって貯湯量を認識する構成としてもよい。
【0059】
沸き上げ制御部123は、貯湯量認識部124により認識される貯湯タンク11内の湯の残量が下限量以下になったときに、タンク循環ポンプ66とヒートポンプ51を作動させて、貯湯タンク11内の湯水を、設定された給湯温度に応じた例えば45℃まで加熱する沸き上げ運転を実行する。
【0060】
また、沸き上げ制御部123は、湯の使用が想定される時間帯に備えて貯湯タンク11内の貯湯量を確保するために、計画的な貯湯タンク11内の湯水の沸き上げを実行する。
【0061】
[2.計画的な貯湯タンク内の湯水の沸き上げ]
次に、図2図4に示したフローチャートに従って、貯湯タンク11内の湯水の計画的な沸き上げの実行について説明する。
【0062】
図2を参照して、コントローラ120は、STEP1で現在時刻(図示しない計時回路により認識される)が日付更新タイミング(2時)になったか否かを判断する。そして、現在時刻が日付更新タイミングになったときにSTEP2に進む。
【0063】
STEP2は、給湯開始想定時刻設定部125、湯張り開始想定時刻設定部126、及び給湯終了想定時刻設定部127による処理である。コントローラ120は、過去の湯の使用状況のデータ(給湯状況データ)を1日(0時〜24時)単位で記憶しており、給湯開始想定時刻設定部125は、給湯状況データに基づいて、当日(これから計画的な沸き上げ運転を実行する日)における湯の使用が開始されると想定される時刻である、給湯開始想定時刻S1を設定する。
【0064】
同様に、湯張り開始想定時刻設定部126は、給湯状況データに基づいて、当日において湯張り運転が開始されると想定される時刻である、湯張り開始想定時刻B1を設定する。また、給湯終了想定時刻設定部127は、給湯状況データに基づいて、当日において湯の使用が終了すると想定される時刻である給湯終了想定時刻G1を設定する。
【0065】
ここで、図5は、横軸を共通の時間軸として、上段に縦軸をヒートポンプ51の能力に設定して、1日(0時〜24時)の時間帯における沸き上げ運転の実行タイミングを示し、下段に縦軸を給湯流量(水量センサ88により検出される)に設定して、1日(0時〜24時)の時間帯における湯の使用量(給湯流量)を例示したものである。図5の例では、2時が日付の更新タイミングに設定され、給湯開始想定時刻S1が6時、湯張り開始想定時刻B1が20時、給湯終了想定時刻G1が24時に設定されている。
【0066】
図2のSTEP3〜STEP8は、沸き上げ制御部123による処理である。沸き上げ制御部123は、STEP3で、現在時刻が給湯開始想定時刻S1よりもα(本発明の第5所定時間に相当する)だけ前の時刻S0(図5参照)になるのを待ってSTEP4に進み、第1沸き上げ運転(本発明の第1沸き上げ運転及び第3沸き上げ運転に相当する)を実行して貯湯タンク11内の湯水を沸き上げる。
【0067】
ここで、第1沸き上げ運転は、タンク循環ポンプ66を作動させると共に、ヒートポンプ51を第1能力A1(本発明の第1能力及び第3能力に相当する)で作動させることによって、貯湯タンク11内の湯水を加熱する。この場合、タンク循環ポンプ66による湯水の循環流量は、湯温度センサ69の検出温度が沸き上げ温度となるように調節される。また、αは給湯開始想定時刻S1に貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了するように設定される。
【0068】
なお、本実施形態では、STEP4で実行される給湯開始想定時刻S1に基づく沸き上げと、後述するSTEP6で実行される湯張り開始想定時刻B1に基づく沸き上げとを、共にヒートポンプ51の能力を第1能力A1とする第1沸き上げ運転により行っているが、ヒートポンプ51の能力を異ならせてもよい。
【0069】
この場合、給湯開始想定時刻S1に基づく沸き上げを行うときのヒートポンプ51の能力は本発明の第3能力に相当して、第3能力での沸き上げ運転は本発明の第3沸き上げ運転に相当する。また、湯張り開始想定時刻B1に基づく沸き上げを行うときのヒートポンプ51の能力は本発明の第1能力に相当して、第1能力による沸き上げ運転は本発明の第1沸き上げ運転に相当する。
【0070】
STEP4で第1沸き上げ運転による貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが終了するとSTEP5に進む。そして、沸き上げ制御部123は、STEP5で現在時刻が湯張り開始想定時刻B1よりもβ(本発明の第1所定時間に相当する)だけ前の時刻B0(図5参照)になるのを待ってSTEP6に進み、第1沸き上げ運転を実行して貯湯タンク11内の湯水を沸き上げる。ここで、βは湯張り開始想定時刻B1に貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了するように設定される。
【0071】
次のSTEP7で、現在時刻が給湯終了想定時刻G1よりもγ(本発明の第3所定時間に想定する)だけ前の時刻G0(沸き上げ運転終了時刻)になるのを待ってSTEP8に進み、沸き上げ制御部123は、翌日までヒートポンプ51を停止状態に維持する。
【0072】
図5に示した例では、6時頃(起床〜朝食の時間帯)、12時前後(昼食の時間帯)、20時頃(湯張り〜入浴の時間帯)、24時頃(就寝前の時間帯)に湯が使用されている。
【0073】
[3.湯張り運転に伴う貯湯タンク内の湯水の沸き上げ]
次に、図3に示したフローチャートに従って、湯張り運転に伴って沸き上げ制御部123により実行される貯湯タンク11内の湯水の沸き上げの処理について説明する。
【0074】
沸き上げ制御部123は、図3のSTEP10で、湯張り運転中であるか否かを判断する。そして、湯張り運転中であるときにSTEP11に進み、沸き上げ制御部123は、貯湯量認識部124により認識される貯湯タンク11内の貯湯量が第1貯湯量以下であるか否かを判断する。貯湯タンク11内の貯湯量が第1貯湯量以下であるときはSTEP12に進み、貯湯タンク11内の貯湯量が第1貯湯量よりも多いときにはSTEP10に戻る。
【0075】
ここで、第1貯湯量は、貯湯タンク11から出湯管13への湯の供給に応じて、貯湯タンク11の下部に給水管12が水が供給されて、ヒートポンプ51による沸き上げのエネルギー効率が所定レベル以上になる状況を想定して設定される。
【0076】
STEP12で、沸き上げ制御部123は、現在時刻が沸き上げ運転終了時刻G0よりもe(本発明の第4所定時間に相当する)以前であるか否かを判断する。そして、現在時刻が沸き上げ運転終了時刻G0よりもe以前であるときはSTEP13に進み、現在時刻が沸き上げ運転終了時刻G0よりもe以前でないときにはSTEP20に分岐する。
【0077】
STEP13で、沸き上げ制御部123は、タンク循環ポンプ66を作動させると共に、ヒートポンプ51を第2能力A2で作動させて、貯湯タンク11内の湯水を沸き上げる第2沸き上げ運転を実行する。ここで、第2能力A2は、第1能力A1よりもタンク循環路41を流通する湯水に付与する加熱量が多く、且つヒートポンプ51のエネルギー効率が低くなる。
【0078】
なお、ヒートポンプ51のエネルギー効率は、例えば成績係数COP(加熱量/消費電力)により表される。
【0079】
このように、湯張り運転中に貯湯タンク11の湯切れが生じたときに、ヒートポンプ51を第1能力A1よりも加熱量が多い第2能力A2で作動させる第2沸き上げ運転を実行することによって、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げ速度を速くして、補助熱源機80が作動する時間の短縮を図ることができる。そして、これにより、ヒートポンプ51よりもランニングコストが高い補助熱源機80の作動時間を短縮して、湯張り運転に要するランニングコストを低減することができる。
【0080】
図5は、第1沸き上げ運転により貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了した後に、湯張り運転が開始され、貯湯タンク11内の貯湯量が第1貯湯量以下になって第2沸き上げ運転が実行された場合を示している。図5の例では、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了するまで、ヒートポンプ51の能力を第2能力A2とした第2沸き上げ運転を継続している。
【0081】
それに対して、図3のフローチャートでは、STEP13で第2沸き上げ運転を開始した後、沸き上げ制御部123は、STEP14でT1(本発明の第2所定時間に相当する)の経過を待ってSTEP15に進み、第2沸き上げ運転から第1沸き上げ運転に切り替えて貯湯タンク11内の湯水を沸き上げ、STEP16に進んで処理を終了する。
【0082】
図6は、このように湯張り運転に伴う沸き上げを、最初のT1の期間(20時の直後〜t3)は第2沸き上げ運転を実行し、T1が経過した後は第1沸き上げ運転に切り替えて行う場合を示している。第2沸き上げ運転を、最初のT1の期間に限定して実行することによって、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げを速やかに行うと共に、湯張りがある程度進み、或は湯張りが終了して貯湯タンク11内の湯水の沸き上げを速やかに行う必要がなくなった後は、ヒートポンプ51のエネルギー効率を上げて貯湯タンク11内の湯水の沸き上げに要するランニングコストの低減を図ることができる。
【0083】
また、STEP12からSTEP20に分岐した場合には、沸き上げ制御部123は、第1沸き上げ運転を実行して貯湯タンク内の湯水を沸き上げ、STEP16に進んで処理をする。この場合は、第2沸き上げ運転は実行されない。
【0084】
図7は、このように湯張り運転に伴う沸き上げを、第1沸き上げ運転のみによって行った場合を示している。図7の例では、湯張り運転が開始された時刻t5が、沸き上げ運転終了時刻G0よりもe以前ではないので、ヒートポンプ51を第1能力A1で作動させる第1沸き上げ運転が短時間だけ実行され、沸き上げ運転終了時刻G0で第1沸き上げ運転が終了している。この場合は、ヒートポンプ51を作動させて沸き上げ運転を行う時間が短いため、湯張り運転により貯湯タンク11の湯切れが生じるタイミングが速くなり、補助熱源機80を作動させて湯張り運転を行う時間が長くなる。
【0085】
このように、補助熱源機80を作動させて湯張り運転を行う時間が長くなる場合に、第2沸き上げ運転を短時間実行しても、ヒートポンプ51の加熱量アップにより得られる効果は低い。そこで、第1沸き上げ運転を行うことで、給湯のトータルのランニングコストの低減を図ることができる。
【0086】
[4.給湯開始想定時刻に基づく貯湯タンク内の湯水の沸き上げ]
次に、図4に示したフローチャートに従って、沸き上げ制御部123により実行される給湯開始想定時刻S1に基づく貯湯タンク11内の湯水の沸き上げの処理について説明する。
【0087】
図4のSTEP30で、沸き上げ制御部123は、給湯開始想定時刻S1に基づく第1沸き上げ運転の実行中であるか否かを判断し、第1沸き上げ運転の実行中であるときはSTEP31に進む。STEP31で、沸き上げ制御部123は、水量センサ88の検出流量Fmが下限流量以上であるか否か(貯湯タンク11から出湯管13への湯水の流通が検出されているか否か)を判断し、検出流量Fmが下限流量以上であるときはSTEP32に進み、検出流量Fmが下限流量未満であるときにはSTEP30に戻る。
【0088】
STEP32で、沸き上げ制御部123は、第1沸き上げ運転を開始した時刻S0から、d(本発明の第7所定時間に相当する)以上経過しているか否かを判断する。そして、第1沸き上げ運転を開始した時刻S0からd以上経過しておらず、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げがあまり進んでいないと判断できるときはSTEP33に進み、第2沸き上げ運転に切り替える。
【0089】
続くSTEP34でT2(本発明の第6所定時間に相当する)が経過するのを待ってSTEP35に進み、沸き上げ制御部123は、第2沸き上げ運転から第1沸き上げ運転に戻して貯湯タンク11内の湯水の沸き上げを完了させ、STEP36に進んで処理を終了する。
【0090】
図6は、このように、S0でヒートポンプ51を第1能力A1で作動させる第1沸き上げ運転が開始された後、S0からdが経過する前のt1で湯の使用が開始された場合を例示している。図6では、t1でヒートポンプ51を第2能力A2で作動させる第2沸き上げ運転に切り替えられ、t1からT2が経過したt2で第1沸き上げ運転に戻されている。
【0091】
このように、S0で第1沸き上げ運転を開始した後、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了する前に湯の使用が開始されたときに、第2沸き上げ運転に切り替えることによって、貯湯タンク11内の湯水を速やかに加熱することによって、補助熱源機80が作動することを抑制して、給湯のランニングコストの低減を図ることができる。
【0092】
また、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げがある程度進んだt2で、第2沸き上げ運転から第1沸き上げ運転に戻すことにより、ヒートポンプ51のエネルギー効率を上げて、貯湯タンク11内の湯水の沸き上げのランニングコストの低減を図ることができる。
【0093】
一方、STEP32で、第1沸き上げ運転を開始した時刻S0からd以上経過しているときにはSTEP40に分岐し、沸き上げ制御部123は、第1沸き上げ運転を継続して貯湯タンク11内の湯水を沸き上げを完了させ、STEP36に進んで処理を終了する。
【0094】
図7は、このように、S0でヒートポンプ51を第1能力A1で作動させる第1沸き上げ運転が開始された後、S0からd以上経過したt4で湯の使用が開始された場合を例示している。図7では、t4で湯の使用が開始されても第2沸き上げ運転に切り替わらず、第1沸き上げ運転が継続して実行されている。
【0095】
このように、S0で第1沸き上げ運転を開始した後、d以上経過して貯湯タンク11内の湯水の沸き上げがある程度進んだ状態で、湯の使用が開始されたときには、既に沸き上げられた貯湯タンク11の湯で給湯に対応することが可能であると想定される。そこで、この場合は、第2沸き上げ運転への切り替えを行わずに、第1沸き上げ運転を継続することによって、第2沸き上げ運転への切り替えに伴うヒートポンプ51のエネルギー効率の低下を回避して、給湯のランニングコストを低減することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、図3のSTEP12〜STEP13における湯張り運転中の沸き上げと、図4のSTEP32〜STEP33における給湯開始想定時刻S1に基づく沸き上げ中に湯の使用が開始された場合の沸き上げとを、共にヒートポンプ51の能力を第2能力A2とする第2沸き上げ運転により行っているが、ヒートポンプ51の能力を異ならせてもよい。
【0097】
この場合、図3のSTEP12〜STEP13により沸き上げを行うときのヒートポンプ51の能力は本発明の第2能力に相当して、第2能力での沸き上げ運転は本発明の第2沸き上げ運転に相当する。また、図4のSTEP32〜STEP33により沸き上げを行うときのヒートポンプ51の能力は本発明の第4能力に相当し、第4能力による沸き上げ運転は本発明の第4沸き上げ運転に相当する。
【0098】
[5.他の実施形態]
上記実施形態では、図4のSTEP32で、第1沸き上げ運転の開始時刻S0からdが経過する前に湯の使用が開始されたときに、第2沸き上げ運転に切り替えるようにしたが、貯湯量認識部124により認識される貯湯タンク11内の貯湯量が第3貯湯量以上になる前に湯の使用が開始されたときに、第2沸き上げ運転に切り替えるようにしてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、図4のSTEP34で、第2沸き上げ運転の実行時間がT2以上になった時点で、第1沸き上げ運転に戻すようにしたが、貯湯量認識部124により認識される貯湯タンク11内の貯湯量が第2貯湯量以上になった時点で、第1沸き上げ運転に戻すようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、本発明の補助熱源機として燃料ガスを燃焼させる給湯バーナ81を加熱源とする補助熱源機80を示したが、石油バーナ、電気ヒータ等を加熱源とする瞬間加熱式の補助熱源機を用いてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、本発明のヒートポンプとしてヒートポンプユニット50を示したが、この構成に限らず、タンク循環路を流通する水を加熱するヒートポンプユニットであって、可変能力式のヒートポンプユニットであれば、本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…給湯システム、10…貯湯ユニット、11…貯湯タンク、12…給水管、13…出湯管、41…タンク循環路、50…ヒートポンプユニット、51…ヒートポンプ、66…タンク循環ポンプ、80…補助熱源機、88…水量センサ、100…湯張り管、103…湯張り弁、105…浴槽、120…コントローラ、121…給湯制御部、122…湯張り制御部、123…沸き上げ制御部、124…貯湯量認識部、125…給湯開始想定時刻設定部、126…湯張り開始想定時刻設定部、127…給湯終了想定時刻設定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7