(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モリブデンおよびバナジウムを必須成分として含有するアクロレインを分子状酸素または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸を製造するための触媒の製造方法であって、過熱水蒸気存在下で焼成する工程と、さらに前記過熱水蒸気存在下で焼成する工程とは別に、過熱水蒸気非存在の雰囲気下で焼成する工程を含むことを特徴とするアクリル酸製造用触媒の製造方法。
前記過熱水蒸気存在下で焼成する工程が、焼成温度が320〜400℃である第1工程と、焼成温度が350〜420℃である第2工程とを含み、第1工程の焼成温度に対して第2工程の焼成温度の方が高いことを特徴とする請求項3に記載の触媒の製造方法。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、各種合成樹脂、塗料、可塑剤の原料として工業的に重要であり、近年では特に、吸水性樹脂の原料としてその重要性が高まっている。一般的にアクリル酸は、プロピレンを分子状酸素、または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクロレインを製造し、さらに得られたアクロレインを分子状酸素、または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸とする二段酸化方法で製造される。
このような、アクロレインを分子状酸素、または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸を製造するための触媒として、モリブデン−バナジウム系を中心とした複合酸化物触媒およびその製造方法の検討がなされているが、目的とするアクリル酸の選択率と収率等の触媒性能は必ずしも充分なものではなく、触媒性能の改善を目的として各社から様々な提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、アクロレインを分子状酸素で酸化してアクリル酸を製造する際に用いる少なくともモリブデンとバナジウムとを含有する複合酸化物触媒を製造する方法において、触媒原料を混合、反応させ、蒸発濃縮して得られる触媒前駆体を蒸焼した後、空気雰囲気下で焼成する製造方法が開示されている。
特許文献2では、触媒前駆体の供給流をほぼ一定の速度で1以上の焼成区域を通過するようにし、かつ進行方向に対して垂直にガスを流通させ、その際、焼成区域内での温度の時間的最大変動及び局所的最大温度差(温度勾配)をそれぞれ5℃以下に制御した製造方法が開示されている。
特許文献3では、有機物を含む原料を焼成してMoV系触媒を得る焼成工程を含むMoV系触媒の製造法であって、焼成温度が200〜400℃かつ保持時間が0.5〜10時間で焼成する第1工程と、第1工程より後に行われ、焼成温度が300〜450℃かつ保持時間が0.5〜10時間で焼成する第2工程を含み、第2工程の焼成温度が第1工程の焼成温度より50℃以上高温である製造法が開示されている。
特許文献4では、触媒前駆体を焼成器に供給し、触媒構成元素の金属酸化物の融点以上の温度で焼成する工程を含む酸化物触媒の製造方法であって、前記焼成工程中に触媒前駆体及び/又は前記酸化物触媒の温度を一時的に焼成温度よりも低い温度にする製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクリル酸は全世界で現在数百万トン/年の規模で生産されており、たとえ0.1%でも工業的規模で収率が向上すれば経済的に非常に大きなメリットがもたらされる。故に、工業的実用触媒として、更なるアクリル酸収率の向上や高生産性が望まれている。
かくして、本発明の目的は、アクロレインからアクリル酸を製造するに際し、触媒活性、選択性等の触媒性能に優れたアクリル酸を製造するのに好適な触媒の製造方法とその触媒、ならびに該触媒を用いたアクリル酸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、モリブデンおよびバナジウムを必須成分として含有するアクロレインを分子状酸素または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸を製造するための触媒の製造方法であって、製造過程において過熱水蒸気存在下で焼成する工程を含むことで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明を以下に示す。
[1]モリブデンおよびバナジウムを必須成分として含有するアクロレインを分子状酸素または分子状酸素含有ガスの存在下で接触気相酸化してアクリル酸を製造するための触媒の製造方法であって、過熱水蒸気存在下で焼成する工程を含むことを特徴とするアクリル酸製造用触媒の製造方法。
[2]前記過熱水蒸気存在下で焼成する焼成温度が320〜420℃であることを特徴とする[1]に記載の触媒の製造方法。
[3]前記過熱水蒸気存在下で焼成する工程が、焼成温度の異なる2段階以上の工程からなることを特徴とする[1]または[2]に記載の触媒の製造方法。
[4]前記過熱水蒸気存在下で焼成する工程が、焼成温度が320〜400℃である第1工程と、焼成温度が350〜420℃である第2工程とを含み、第1工程の焼成温度に対して第2工程の焼成温度の方が高いことを特徴とする[3]に記載の触媒の製造方法。
[5]さらに前記過熱水蒸気存在下で焼成する工程とは別に、過熱水蒸気非存在の雰囲気下で焼成する工程を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の触媒の製造方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により得られるアクリル酸製造用触媒。
[7][6]に記載のアクリル酸製造用触媒を用いることを特徴とするアクリル酸の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記課題の解決により、アクロレインを分子状酸素により接触気相酸化してアクリル酸を製造する際に、長期間にわたり安定して高収率で製造できる触媒を提供することができ、該触媒を用いてアクリル酸を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明にかかる触媒の製造方法および該触媒を用いたアクリル酸の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し、実施することができる。
本発明で製造されるアクリル酸を製造するための触媒は、その触媒活性成分の組成としては、下記一般式(1)で表わされるものが好ましい。
MoaVbWcAdBeCfDgOh(1)
(式中、Moはモリブデン、Vはバナジウム、Wはタングステン、Aはアンチモン、スズから選ばれる少なくとも1種の元素、Bはクロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ビスマス、テルルおよびニオブから選ばれる少なくとも1種の元素、Cはアルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種の元素、Dはシリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、そしてOは酸素であり、a、b、c、d、e、f、gおよびhは、Mo、V、W、A、B、C、DおよびOの原子数を表し、a=12のとき、2≦b≦14、0≦c≦10、0≦d≦5、0≦e≦12、0≦f≦5、0≦g≦50であり、hは各々の元素の酸化状態によって定まる数値である)
上記触媒活性成分は、この種の調製に一般に用いられている原料を用いることができ、例えば、各元素の酸化物、水酸化物、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩などの塩類や、それらの水溶液、ゾルなど、あるいは、複数の元素を含む化合物などを用いることもできる。
【0010】
これら出発原料を、水等の溶媒に溶解あるいは懸濁させることにより、出発原料混合液を調製する(以後、「原料混合液調製工程」と称する場合がある)。その際の調製方法は、上記出発原料を順次水に混合する方法や、出発原料の種類に応じて複数の水溶液または水性スラリーを調製し、これらを順次混合する方法など、この種の触媒製造に一般的に用いられる方法により調製すればよい。出発原料の混合順序、温度、圧力、pH等については特に制限はなく、出発原料に応じて適宜選択できる。また、適宜、硝酸、アンモニア、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの含窒素化合物を加えて、pHは4〜10の範囲内で制御するのが好ましい。
【0011】
次に、得られた出発原料混合液を乾燥させて乾燥物を得る(以後、「原料混合液乾燥工程」と称する場合がある)。具体的には、スプレードライヤー、ドラムドライヤー等を用いて粉末状の乾燥物を得る方法、箱型乾燥機、トンネル型乾燥機等を用いて気流中で加熱してブロック状またはフレーク状の乾燥物を得る方法、一旦、出発原料混合液を濃縮、蒸発乾固してケーキ状の固形物を得て、この固形物をさらに上記加熱処理する方法等が挙げられる。乾燥機等を用いて乾燥する場合、その雰囲気としては、空気、過熱水蒸気、不活性ガス、それらの混合ガス等を用いることができる。また、減圧による乾燥方法として、例えば、真空乾燥機を用いて、ブロック状または粉末状の乾燥物を得ることもできる。上記した乾燥する温度は特に限定はなく、例えば、80〜300℃の範囲で適宜選択すればよい。
【0012】
得られた乾燥物は、必要に応じて適当な粒度の粉体を得るための粉砕工程や分級工程を経て、続く成形工程に送られる。その際の前記乾燥物の粉体粒度は、特に限定されないが、成形性に優れる点で500μm以下、好ましくは200μm以下、更には100μm以下が好ましい。
乾燥物を成形する成形工程(以後、単に「成形工程」と称する場合がある)では、その成形方法として、打錠成形機や押出し成形機により一定の形状とする成形法や、一定の形状を有する任意の不活性担体上に担持する造粒法が挙げられる。他にも、出発原料混合液を乾燥させずに液状で用い、長時間かけて加熱しながら所望の担体に吸収あるいは塗布して乾燥担持させる蒸発乾固法により製造することもできる。また、原料混合液乾燥工程で得られた乾燥物を後述する過熱水蒸気存在下で焼成を行った後、一般的な成形法や造粒法などにより、成形体あるいは担持体として製造することもできる。これらの中でも特に、特開昭63−200839号公報に記載の遠心流動コーティング法や、さらには特開2004−136267号公報に記載のロッキングミキサー法を用いて不活性担体に担持する造粒法が好ましい。
【0013】
打錠成形機や押出し成形機による成形法の場合、その形状に特に制限はなく、球状、円柱状、リング状、不定形などのいずれの形状でもよい。もちろん球状の場合、真球である必要はなく実質的に球状であればよく、円柱状およびリング状についても同様である。
造粒法や蒸発乾固法の場合に使用できる不活性担体としては、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、マグネシア、ステアタイト、コージェライト、シリカ−マグネシア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ゼオライト等が挙げられる。その形状においても特に制限はなく、球状、円柱状、リング状など公知の形状のものが使用できる。
【0014】
これら上記の成形工程においては、乾燥物の成形性を向上させるための成形補助剤やバインダー、触媒に適度な細孔を形成させるための気孔形成剤など、一般に触媒の製造においてこれらの効果を目的として使用される物質(以後、「補助物質」という場合もある)を用いることができ、中でも、造粒法においてはバインダーを使用するのが好ましい。
また、補助物質とは別に触媒の機械的強度を向上させる目的で、補強剤を用いることもできる。具体例としては、補強剤として一般的に知られているシリカ、アルミナ、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、鉱物繊維、金属繊維、炭化ケイ素や窒化ケイ素などの各種ウィスカ、などが挙げられ、その結晶構造も多結晶質でも単結晶質でも非晶質でもよいが、多結晶質または単結晶質が望ましい。また、触媒の形状や機械的強度に応じて、繊維径、繊維長、材質等の異なる複数の補強剤を用いてもよい。補強剤は、出発原料混合液に添加しておいてもよいし、成形工程時に配合してもよい。
また、成型工程後の成形体あるいは担持体は、後述する焼成工程の前に、乾燥機や熱風等を用いて乾燥してもよい。
【0015】
本発明においては、過熱水蒸気の存在下に焼成することが重要である。原因ははっきりとはしないものの、過熱水蒸気存在下で焼成することにより、一酸化炭素、二酸化炭素、酢酸などの不所望な副生物が減少しており、触媒表面上の不所望な副生物を生成する反応点が減少したものと考えられる。
【0016】
当該過熱水蒸気の存在下での焼成(以後、「過熱水蒸気焼成」と称することがある)は、その方法に特に限定はなく様々な方法で実施することができる。例えば、原料混合液乾燥工程で得られた乾燥物、成形工程で得られた成形体あるいは担持体(以下、「触媒前駆体」ともいう)を、直接、過熱水蒸気に接触させて焼成してもよく、また、触媒前駆体を容器などに入れてから過熱水蒸気の存在下に焼成してもよい。容器に充填する場合は、充填する容器の形状に制約はなく、蓋などを用いても良い。
【0017】
過熱水蒸気の濃度は10%以上が好ましく、さらに好ましくは50%以上であり、より好ましくは90%以上である。過熱水蒸気濃度が100%ではない場合、過熱水蒸気以外のガス種に制限は無いが、窒素、アルゴン、クリプトン、ヘリウムなど一般的な不活性ガスを用いることが好ましい。
【0018】
焼成炉については、特に制限はなく、一般的に使用される箱型焼成炉あるいはトンネル型焼成炉等を用いればよく、流通式、密閉式、循環式など、過熱水蒸気存在下で処理できるものであれば、限定されない。
過熱水蒸気焼成の焼成温度は320〜420℃、好ましくは350〜410℃である。焼成時間としては1〜24時間が好適であり、更に好ましくは1〜10時間である。
【0019】
過熱水蒸気焼成の焼成工程は、焼成温度の異なる2段階以上の工程にて実施しても良い。2段階以上の工程で焼成を実施する際は、焼成温度が320〜400℃、好ましくは320〜380℃である第1工程、350〜420℃、好ましくは380〜410℃である第2工程を含み、第1工程の焼成温度に対して第2工程の焼成温度の方が高い態様が好ましい。過熱水蒸気焼成の焼成時間としては、各工程において1〜24時間が好適であり、更に好ましくは1〜10時間である。昇温速度は工程において、0.1℃/分以上、20℃/分以下が好ましく、更に好ましくは1℃/分以上、15℃/分以下である。昇温速度が15℃/分以上の場合、アンモニア等が急激に発熱分解するため、その発熱による触媒の熱劣化により、性能が低下する傾向にある。
【0020】
また、過熱水蒸気焼成の焼成工程において焼成温度の異なる次工程に移る際、投入した触媒前駆体の取り出しをせず、連続で焼成することが好ましいが、例えば、前記した第1工程と第2工程との間に一旦降温過程があっても良い。
【0021】
また、前記過熱水蒸気焼成とは別に、過熱水蒸気を導入しない条件すなわち過熱水蒸気非存在の雰囲気下で焼成する工程(以後、「別焼成工程」と称することがある)を含んでもよい。当該別焼成工程は、過熱水蒸気焼成の前および/または後に実施しても、過熱水蒸気焼成の各工程の間に実施しても良いが、過熱水蒸気焼成の前および/または後に実施することが好ましく、過熱水蒸気焼成の前に実施することがより好ましい。当該別焼成工程の焼成温度は、320〜420℃、好ましくは350〜410℃であり、焼成時間は、1〜24時間が好適であり、更に好ましくは1〜10時間である。過熱水蒸気非存在の雰囲気下は、過熱水蒸気を導入しなければ特に限定はなく、空気雰囲気、窒素、アルゴン、クリプトン、ヘリウムなど一般的な不活性ガス雰囲気、これらの混合ガス雰囲気下などが挙げられる。また、別焼成工程における昇温速度は、0.1℃/分以上、20℃/分以下が好ましく、更に好ましくは1℃/分以上、15℃/分以下である。
【0022】
本発明のアクリル酸製造用触媒を用いてアクロレインを分子状酸素により接触気相酸化してアクリル酸を製造するのに用いられる反応器については特段の制限はなく、固定床反応器、流動床反応器、移動床反応器のいずれも用いることができるが、通常、固定床反応器が用いられる。
【0023】
触媒を反応器に充填する場合には、単一な触媒である必要はなく、例えば、活性の異なる複数種の触媒を用い、これらを活性の異なる順に充填したり、触媒の一部を不活性担体などで希釈したりしてもよい。
【0024】
また、本発明における反応条件には特に制限は無く、この種の反応に一般に用いられている条件であればいずれも実施することが可能である。例えば、原料ガスとして1〜15容量%、好ましくは4〜12容量%のアクロレイン、0.5〜25容量%、好ましくは2〜20容量%の分子状酸素、0〜30容量%、好ましくは0〜25容量%の水蒸気、残部が窒素などの不活性ガスからなる混合ガスを200〜400℃の温度範囲で0.1〜1.0MPaの圧力下、300〜8,000h
−1(STP)の空間速度で酸化触媒に接触させればよい。
【0025】
反応ガスとしては、アクロレイン、分子状酸素および不活性ガスからなる混合ガスはもちろんのこと、グリセリンの脱水反応や、プロピレンの酸化反応によって得られるアクロレイン含有の混合ガスも使用可能である。また、この混合ガスに必要に応じ、空気または酸素などを添加することもできる。
【実施例】
【0026】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、以下では便宜上、「質量部」を「部」と記すことがある。実施例および比較例におけるアクロレイン転化率、アクリル酸選択率およびアクリル酸収率は次式によって求めた。
アクロレイン転化率(モル%)
=(反応したアクロレインのモル数)/(供給したアクロレインのモル数)×100
アクリル酸選択率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数)/(反応したアクロレインのモル数)×100
アクリル酸収率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数)/(供給したアクロレインのモル数)×100
【0027】
<実施例1>
[触媒調製]
純水1000部を加熱攪拌しながら、そのなかにパラモリブデン酸アンモニウム100部、メタバナジン酸アンモニウム23.2部、パラタングステン酸アンモニウム16.6部を溶解した。別に純水100部を加熱撹拌しながら、硝酸銅19.4部を溶解した。得られた2つの溶液を混合し、さらに三酸化アンチモン6.2部および酸化アルミニウム9.7部を添加して、出発原料混合液を得た。この出発原料混合液を噴霧乾燥させた後、得られた乾燥物を250μm以下に篩分けし、触媒前駆体の粉体を得た。遠心流動コーティング装置に平均粒径4mmのα−アルミナ球形担体を投入し、次いで純水を担体に含浸させてから、触媒前駆体の粉末を担体に担持させた後、約90℃の熱風で乾燥して担持体を得た。得られた担持体の一部をルツボに入れ、箱型焼成炉で室温から過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し、2℃/分で昇温し、380℃で7時間焼成して触媒1を得た。
この触媒1の担持率は30質量%であり、酸素を除く金属元素組成は以下の通りであった。
触媒組成:Mo
12V
4.3Sb
0.8W
1.2Cu
1.6Al
3.6
なお、担持率は下記式により求めた。
担持率(質量%)=(担持された触媒粉体の質量(g))/(用いた担体の質量(g))×100
【0028】
[酸化反応]
全長300mm、内径18mmのSUS製U字反応管に、層長が100mmとなるように触媒1を充填し、アクロレイン2容量%、酸素3容量%、水蒸気10容量%、窒素85容量%の混合ガスを空間速度5000hr
−1(STP)で導入し、アクロレイン酸化反応を行った。反応温度はアクロレインの転化率が93.5%前後となるように調節した。その反応結果を表1に示す。
【0029】
<実施例2>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、箱型焼成炉で室温から過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し、2℃/分で昇温し、430℃で3時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒2を得た。この触媒2の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒2を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
<実施例3>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、箱型焼成炉で室温から過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し、15℃/分で昇温し、第1工程として370℃で3時間焼成後、過熱水蒸気にて19℃/分で昇温し、第2工程として400℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒3を得た。この触媒3の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒3を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0031】
<実施例4>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、箱型焼成炉で室温から過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し、2℃/分で昇温し、350℃で5時間焼成した後、別焼成工程としてN
2雰囲気にて390℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒4を得た。この触媒4の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒4を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
<実施例5>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、箱型焼成炉で室温から過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し、2℃/分で昇温し、340℃で6時間焼成した後、別焼成工程としてO
2濃度10%、N
2濃度90%雰囲気にて380℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒5を得た。この触媒5の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒5を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
<実施例6>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、別焼成工程として箱型焼成炉で室温からN
2雰囲気にて2℃/分で昇温し、330℃で3時間焼成した後、過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し380℃で7時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒6を得た。この触媒6の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒6を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
<実施例7>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、別焼成工程として箱型焼成炉で室温からO
2濃度10%、N
2濃度90%雰囲気にて2℃/分で昇温し、350℃で3時間焼成した後、過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し390℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒7を得た。この触媒7の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒7を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
<実施例8>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、別焼成工程として箱型焼成炉で室温からO
2濃度10%、N
2濃度90%雰囲気にて2℃/分で昇温し、380℃で3時間焼成した後、過熱水蒸気を噴霧ノズルにより炉内へ導入し410℃で1時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒8を得た。この触媒8の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒8を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
<比較例1>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、過熱水蒸気焼成に代えて箱型焼成炉で室温からO
2濃度10%、N
2濃度90%にて2℃/分で昇温し、380℃で5時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒9を得た。この触媒9の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒9を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0037】
<比較例2>
実施例1において、得られた担持体の一部をルツボに入れ、過熱水蒸気焼成に代えて箱型焼成炉で室温からO
2濃度10%、N
2濃度90%雰囲気にて2℃/分で昇温し、330℃で5時間焼成し、さらに温度を変更して390℃で4時間焼成したこと以外は実施例1と同様に調製し、触媒10を得た。この触媒10の担持率、および酸素を除く触媒活性成分の金属元素組成は触媒1と同じであった。触媒10を用いて、実施例1と同様にしてアクロレイン酸化反応を行った。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】