特許第6628706号(P6628706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628706
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】モータのステータ構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20200106BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   H02K3/46 B
   H02K1/14 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-169569(P2016-169569)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-38175(P2018-38175A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
(72)【発明者】
【氏名】松原 真朗
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−274809(JP,A)
【文献】 特開2001−095188(JP,A)
【文献】 特開2000−312451(JP,A)
【文献】 特開2002−078271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストレート形状のティースを有するステータコアと、
前記ティースに装着されたボビンと、
前記ボビンに巻回されたコイルと
を備え、
前記ボビンは、中空の巻枠と、前記巻枠の開口の一方端のフランジ部と他方端の端子台とを備え、前記フランジ部及び前記端子台は、前記巻枠における前記ステータコアの軸方向両端のみに具備されており、
前記端子台の幅は、前記巻枠の幅よりも小さく、
前記ボビンにおける前記巻枠の側面両側に開口が設けられるとともに、該開口の縁の一部に、弾性変形可能で前記ティースに形成された段差部と係合可能な突出部が前記巻枠の前記側面両側にそれぞれ形成された該側面の内側に折れ曲がって突出する切り起こしによって設けられ、
前記突出部の前記ティースから離れる方向への弾性変形が前記開口により許容されるように構成されているモータのステータ構造。
【請求項2】
前記係合は、前記ボビンを前記ティースから抜こうとした際に、前記突出部が前記段差部に引っ掛かる構造を有する請求項に記載のモータのステータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレート形状のティースを有するモータのステータ構造に関し、特にステータコイルを保持するモータのステータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータのティース(極歯)にストレート形状のティースを採用することがある。ストレート形状のティースとは、ティースの基端部から先端部にわたって直線状に形成されたものであり、ティースの先端部において周方向に突出する形状を有していない。ストレート形のティースのそれぞれにコイルを巻回したボビン(又はインシュレータ)を装着した場合、ボビン(又はインシュレータ)の脱落を防止する構造を設ける必要がある。このような構造として、ボビンの側面の内周側に突条を形成し、この突条をティースに形成した溝に嵌め込んで係合させることで、ティースにボビンを強固に保持することができる回転機の電機子構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−14057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、特許文献1における電機子の構造であり、図8は、図7におけるボビンの斜視図である。特許文献1の構造では、ボビン25の基部25aにおける長尺の側面の内周側に突条35が形成され、この突条35をティース22に形成した溝33に嵌め込んで係合させることで、ティース22にボビン25を強固に保持するものである。しかしながらこの構造では、予め、コイル24が巻回されたボビン25をティース22に嵌入させながら突条35がティース22の溝33に嵌り込むまでボビン25を押し込むため、突条35が外側に広がろうとする応力が掛かり、このため、ボビン25に巻回されたコイル24にストレスがかかる。コイル24はボビン25にテンションを掛けて巻回されているため、上記のストレスによりコイルが損傷する場合がある。また、コイルへの損傷を抑制するためには、ティース22とボビン25との隙間を取る必要があるが、その場合、ティース22に装着したボビン25にガタが生じる問題がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み、ストレート形状のティースを有するモータのステータ構造において、簡易な構成でコイルの損傷を抑えつつ、コイルを巻回したボビンの脱落防止の向上を図ったモータのステータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のストレート形状のティースを有するステータコアと、前記ティースに装着されたボビンと、前記ボビンに巻回されたコイルとを備え、前記ボビンは、中空の巻枠と、前記巻枠の開口の一方端のフランジ部と他方端の端子台とを備え、前記フランジ部及び前記端子台は、前記巻枠における前記ステータコアの軸方向両端のみに具備されており、前記端子台の幅は、前記巻枠の幅よりも小さく、前記ボビンにおける前記巻枠の側面両側に開口が設けられるとともに、該開口の縁の一部に、弾性変形可能で前記ティースに形成された段差部と係合可能な突出部が前記巻枠の前記側面両側にそれぞれ形成された該側面の内側に折れ曲がって突出する切り起こしによって設けられ、前記突出部の前記ティースから離れる方向への弾性変形が前記開口により許容されるように構成されているモータのステータ構造である。
【0007】
本発明において、前記係合は、前記ボビンを前記ティースから抜こうとした際に、前記突出部が前記段差部に引っ掛かる構造を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ストレート形状のティースを有するモータのステータ構造において、簡易な構成でコイルの損傷を抑えつつ、コイルを巻回したボビンの脱落防止の向上を図ったモータのステータ構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の斜視図である。
図2図1におけるステータコアの斜視図である。
図3図1におけるコイルを巻回したボビンの斜視図である。
図4図3におけるボビンの斜視図である。
図5】実施形態におけるティースにボビンを嵌め込む状態を示す図(A)とティースにボビンを装着した状態を示す図(B)である。
図6】その他のボビンの変形例の図である。
図7】従来の電機子の状態を示す図である。
図8図7におけるボビンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(構成)
図1は、本願発明を利用した実施形態のステータ構造1の斜視図である。図2図1におけるステータコアの斜視図であり、図3図1におけるコイルを巻回したボビンの斜視図であり、図4図3におけるボビンの斜視図である。図5は、コイル5が巻回された状態のボビン3をティース2bに装着する過程の図(A)と、ボビン3をティース2bに装着した状態の図(B)である。
【0011】
ステータ構造1は、輪状のステータコア2を備えている。ステータコア2は、軸中心の方向に延在する3つのティース2bを備えている。ティース2bはストレート形状を有し、各ティース2bにはコイル5が予め巻回されたボビン3が装着されている。ステータ構造1の内側には、ロータマグネットを備えた図示しないロータが回転自在な状態で配置される。
【0012】
輪状のステータコア2は、薄板状の軟磁性材料(例えば、ケイ素鋼板)からなる輪状のコアを所定枚数、軸方向に積層して構成されている。図2に示すように、ステータコア2は、環状部2aから径内方(軸中心の方向)に延在する複数のティース2b(図では3個のティース2bを備えているが、これに限定されない)を備えている。ティース2bの側面には、ティース2bの先端部を除いてティース2bの幅寸法が小さくなるように凹部2c,2dが形成されている。
【0013】
ボビン3は絶縁性の樹脂による射出成型で成形したもので、図4に示すように、中空の巻枠3aの開口3bの一方端にはフランジ部3c,3dを備え、開口の他方端には端子台3e,3fを備えている。一方の端子台3eには端子ピン4(4a,4b)が植設されている。フランジ部3c,3d,及び端子台3e,3fは、共に軸方向(上下方向)の両端に具備されており、側面には設けられていない。
【0014】
図3に示すように、中空の巻枠3a(図4参照)には所定の巻数でコイル5が巻回されており、コイル5の巻き始めと、巻き終わりは端子ピン4(4a,4b)にそれぞれ絡げられて電気的に接続されている(図示なし)。巻枠3aの側面両側の外側には軸方向に延在する細長の凹部3g,3h(図4,5参照)が形成されており、それぞれの凹部3g,3hの反対側となる内周面には、突出部3i,3jが設けられている。この突出部3i,3jは弾性変形が可能であり、内側から押すと、凹部3g,3hの凹みが無くなるように、つまり突出部3i,3jが外側に押されて潰れ、それに従って凹部3g,3hの窪みが浅くなる弾性変形が生じる。
【0015】
突出部3i,3jはスナップフィットとして機能し、ティース2bの側面で、ティース2bの先端部と凹部2c,2dとの境で形成される段差部31,32(図2,5参照)に係合する。すなわち、図5(B)に示すように、突出部3iが段差部31の径方向外側の段部に弾性的に接触して引っ掛かり、突出部3jが段差部32の径方向外側に段部に弾性的に接触して引っ掛かる。この構造により、ボビン3がティース2bから抜けない状態となる。
【0016】
(ボビンのティースへの装着)
図5を参照して、予めコイル5を巻回したボビン3をティース2bに装着する状態を説明する。まず、ボビン3の端子台3e,3f(図4参照)の側から、開口3bにティース2bの先端部を嵌入する(図5(A))。次に、ボビン3を更に押し込んで開口3bにティース2bを嵌入させる。このとき、ボビン3の巻枠3aの側面の内周面に設けられた突出部3i,3jが外側に広がろうとして変形し、この変形によって凹部3g,3hの箇所が膨らんで変形する。
【0017】
更に、ティース2bに対してボビン3を押し込むと、突出部3iが段差部31に引っ掛かって嵌り、突出部3jが段差部32に引っ掛かって嵌る。この引っ掛かりにより、ティース2bからボビン3が抜けなくなる抜け止めの構造が得られる。この状態が図5(B)に示されている。
【0018】
(優位性)
以上述べたように、モータのステータ構造1は、複数のストレート形状のティース2bを有するステータコア2と、ティース2bに装着されたボビン3と、ボビン3に巻回されたコイル5とを備え、ボビン3のティース2bの側には、弾性変形可能でティース2bと係合する突出部3i,3jが設けられ、ボビン3には、突出部3i,3jのティース2bから離れる方向への弾性変形を許容する凹部3g,3hが設けられている。この構造において、ティース2bには、突出部3i,3jと係合する段差部31,32が設けられ、突出部3i,3jと段差部31,32の係合は、ボビン3をティース2bから抜こうとした際に、突出部3i,3jが段差部31,32に引っ掛かる構造を有する。
【0019】
この構造によれば、図5(A)から図5(B)に推移する過程において、突出部3i,3jがティース2bに押され、外側に広がろうと変形する。この際、突出部3i,3jの外側への変形が凹部3g,3hよって吸収され、ボビン3がコイル5の方向に膨らまない。このため、コイル5に強いストレスが加わらない。また、ボビン3の巻枠3aに対して、フランジ部3c,3d、及び端子台3e,3fが直交して直線状に形成されているため、巻枠3aにコイル5を巻回する際、整列巻きが容易になる。この結果、コイルの占積率を高めることができる。
【0020】
(変形例)
図6は、その他のボビン構造を示した図で、ボビン40の巻枠40aの側面両側に設けた開口41,42それぞれに、内側に突出する切り起こし43,44を設けている。この切り起こし43,44がティース2bの段差部31,32(図5参照)と係合することで、ボビン40をティース2bに装着することができる。この場合、ティース2bへのボビン40の装着時に、ティース2bによって切り起こし43,44が外側に押されて変形しても、切り起こし43,44がボビン40の外側に突出することはないので、ボビン40に巻回されたコイルに強いストレスは加わらない。
【0021】
<その他>
1.ティース2bの凹部2c,2dは、溝であっても同様の効果を奏する。
2.ボビン3の巻枠3aの側面の内周面に設けられた突出部3i,3jは側面全長に渡って形成しているが、一部であっても同様の効果を奏する。
3.巻枠3aの開口3bの一方端にフランジ部3c,3dを備えた構成であるが、端子台が形成された他方端にもフランジ部を形成しても構わない。その場合、コイル5とステータコア2との直接的な接触を防止できる。
4.フランジ部3c,3dは巻枠3aの上下方向のみに形成しているが、隣接するティース2同士の間に形成されるスロットの幅寸法を大きくすることが可能な場合、フランジ部3c,3dは巻枠3aの全周(上下方向、及び側面)に形成してもよい。
5.図1には、インナーロータ型モータの例が示されているが、本発明は、アウターロータ型モータのステータに適用することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1…ステータ構造、2…ステータコア、2a…環状部、2b…ティース、2c,2d…凹部、3…ボビン、3a… 中空の巻枠、3b…開口、3c,3d…フランジ部、3e,3f…端子台、3g,3f…凹部、3i,3j…突出部、31,32…段差部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8