【実施例】
【0035】
以下では本発明の実施例を詳述する。
【0036】
<添加剤粉末の粉砕及び粒度分布>
添加物の事前粉砕時間に応じた粒度分布を評価した。原料粉末は下記表1の配合比に応じて配合した。原料粉末としてはZnO(Noahtech、−200 mesh)、Bi
2O
3(DANSUK Industrial、Max.4μm)、Sb
2O
3(Noahtech、−325 mesh)、Co
3O
4(Kosundo)、Mn
3O
4(Erachem)、NiO(Kosundo)、Al
2O
3(Kosundo、平均粒径1μm)を用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
先ず、ZnOを除いた残りの添加物の量を測り、直径3mmジルコニアボールを用いて0時間、1時間、10時間、30時間、60時間粉砕した。
【0039】
図2及び
図3に粉砕時間に応じた粒度分布を示す。
【0040】
ボールミリングを経ていないサンプル(
図2(a))、10時間ミリングしたサンプル(
図2(b))、30時間ミリングしたサンプル(
図3(a))から確認できるように、添加物は粉砕時間が長くなるにつれてその平均粒径は減少した。しかし、60時間以上に粉砕時間が長くなる場合、かえって粒子間の凝集が発生することが分かる(
図3(b)参照)。一方、10時間ミリングしたサンプルの場合は低い粒度ピークの頻度が高い粒度ピークの頻度とほぼ同一であり、30時間ミリングしたサンプルの場合は低い粒度のピーク頻度が高い粒度のピーク頻度より高い値を示すことが分かる。
【0041】
以上、1次粉砕を経た添加剤粉末はZnO粉末と混合した後に2次粉砕を経る。粉砕された粉末は適切な形状に成形された後に焼結される。本発明において、焼結条件はZnO粉末のバリスタ特性に大きい影響を及ぼす。
【0042】
図4は、本発明の一実施例による焼結雰囲気を模式的に示す図である。
【0043】
図4(a)を参照すれば、円形プレート形態に成形された成形体10が互いに異なる材質のるつぼ20で焼結される。本発明の実施例において、前記るつぼはアルミナまたはマグネシア材質のるつぼが使われる。
【0044】
他の実施例として、
図4(b)に示すように、成形体10はサガー(sagger)20のようなるつぼの下部に雰囲気粉末30を用いる。ここで、雰囲気粉末としてはバリスタ組成と実質的に同じ組成のZnO粉末が用いられる。
【0045】
また他の実施例として、
図4(c)に示すように、雰囲気粉末の代わりにZnOプレート40が成形体10の下部に用いられる。
【0046】
以下では、以上の焼結条件に応じて製造されたZnOバリスタのサージエネルギー耐量の測定結果を説明する。
【0047】
<焼結雰囲気に応じたサージ耐量の評価>
添加剤のみを10時間ミリングした後、ZnO粉末と混合した後に2次ミリングをした。1次ミリングと同様に2次ミリングは同一条件を実施した。次に、混合された原料粉末を成形した後、500℃に昇温してバインダーを除去した後、1200℃で3時間焼結した。
【0048】
焼結体の両面に電極を形成した後、サージエネルギー耐量を評価するために、標準直撃雷電流波形である10/350μs波形を発生させる雷インパルス電流発生装置(lightning impulse current generator、ICG)を用いてパルス電流を印加した。この装置は、キャパシターに電荷を充電し、スイッチ動作に応じて瞬間的に抵抗とインダクターを通じて電流がバリスタに印加される。
【0049】
現在低圧線路に誘導雷(8/20μs)保護用として用いられる2等級サージ保護器用バリスタの場合、エネルギー耐量の指標である電流密度は数十A/cm
2レベルである。しかし、直撃雷(10/350μs)保護用として用いられる1等級サージ保護器用バリスタの電流密度は数百A/cm
2に達し、2等級サージ保護器用バリスタに比べて約10倍以上のエネルギー耐量が要求される。
【0050】
バリスタに印加される電流がサージエネルギー耐量以上である場合、バリスタは主にFlash Over、Cracking及びPunctureの形態を示す。また、外観上の破壊がなくても、バリスタ電圧(V
1mA)を測定して印加前のバリスタ電圧(V
1mA)の10%以内に入らなければ失敗とみなされる。この基準は「IEC 61643−1 and IEC 60060−1」を参考にした。
【0051】
表2に雰囲気別サージエネルギー耐量の測定結果を示す。表2において、ZnO粉末とZnOプレートは原料粉末と同じ組成の焼結した状態で用いられた。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、アルミナ容器を用いた場合よりマグネシア容器を用いた場合に、さらに高いサージエネルギー耐量を有するバリスタの製造が可能であることが分かる。
【0054】
また、雰囲気粉末としてZnOを用いた場合には、ZnOを用いない場合に比べて、高いサージエネルギー耐量値を示す。特に、雰囲気粉末の代わりにZnOプレートを用いることがサージエネルギー耐量値を高めるのに有用であることが分かる。
【0055】
<添加剤の粒度分布とサージエネルギー耐量>
添加剤粉末の粒度分布とサージエネルギー耐量との関係を調べた。添加剤の粉砕時間を0〜100時間に異にしてZnOバリスタを製造し、サージエネルギー耐量を測定した。焼結は
図4(c)と同様にMgO容器とZnOプレート上で行った。
【0056】
下記表3は粉砕時間に応じたZnOバリスタのサージエネルギー耐量の測定結果を整理した表である。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に添加物の粉砕時間に応じたサージエネルギー耐量を示す。表3から明らかになるように、10〜30時間添加剤を粉砕した場合、高いサージエネルギー耐量値を示すことが分かる。特に粉砕時間が10時間である場合、サージエネルギー耐量が最も高い(Ip:42kA、J:0.776kA/cm
2)ことが分かる。
【0059】
<焼結時の容器の開閉可否とサージエネルギー耐量との関係>
容器の開閉可否とサージエネルギー耐量が及ぼす関係を調べた。
図5は、本実施例における容器の開閉状態を模式的に示す図である。
【0060】
本実施例のサンプルの製造は2段階の工程を経て行われる。先ず、
図5(a)に示すように、成形体を容器内のZnOプレート上に置き、脱脂工程を経る。この時、容器は開放された状態で炉内に維持される。次に、
図5(b)に示すように、前記容器の蓋をして密閉状態に維持した後、脱脂された成形体を焼結する。この時、密閉状態は完全な密封には達せず、蓋と容器を機械的な嵌合によって結合する方式で容器を密閉した。容器の密閉のために、容器及び蓋としては理論密度の99%以上であるアルミナを用いた。
【0061】
成形体としては10時間ミリングを経たサンプルを用い、1段階の脱脂工程は500℃で30分間行い、2段階の焼結工程は前述の実施例より多少高い1275℃で6時間行った。
【0062】
下記表4に本実施例で製造されたサンプルのサージエネルギー耐量の測定結果を示す。
【0063】
【表4】
【0064】
上記の表から明らかになるように、製造されたサンプルは約55kAの非常に高いサージエネルギー耐量を示しており、サージテスト後、バリスタ電圧(V
1mA)印加前のバリスタ電圧の10%範囲に属する良好な値を示す。
【0065】
通常、バリスタに印加される電流がサージエネルギー耐量以上である場合、バリスタは主にFlash Over、Cracking及びPunctureの形態を示す。また、外観上の破壊がなくても、バリスタ電圧(V
1mA)を測定して印加前のバリスタ電圧(V
1mA)の10%以内に入らなければ失敗とみなされる。
【0066】
図6及び
図7は、各々、実施例のサンプル#5及び#6のサージテスト結果を示すグラフである。
【0067】
図示されたように、
図6に示すように、サンプル#5の場合は、約43kAにおいてPunctureが発生した。しかし、
図7に示すように、サンプル#6の場合は、55kAにおいても良好な状態を維持していることが分かる。
【0068】
図8は、本実施例のサンプル#6のサージテスト前後のバリスタ電圧の測定結果を示すグラフである。
【0069】
図8に示すように、サンプル#6の場合は、サージテスト前後10%以内のバリスタ電圧を示すことが分かる。
【0070】
一方、
図8には、開放状態であることを除いては同じ条件の成形体を焼結したサンプル(1275℃)のサージテスト前後のバリスタ電圧の測定結果を共に示す。しかし、開放状態の焼結サンプルは約−31.4%の電圧減少を示すことが分かる。
【0071】
これは、焼結時に蓋により容器が閉じられた状態に維持されることにより、高温での焼結においても添加された添加剤の揮発を抑制したことに起因するとみられる。