(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の構成を示す冷媒回路図である。本実施の形態では、冷凍サイクル装置として、冷房運転を実行可能な空気調和装置を例示している。
図1に示すように、冷凍サイクル装置は、冷媒を循環させる冷凍サイクル回路10を有している。冷凍サイクル回路10は、圧縮機21、熱源側熱交換器22、膨張弁23及び負荷側熱交換器24が冷媒配管を介して順次環状に接続された構成を有している。
【0010】
冷凍サイクル装置は、室外に設置される室外機30と、室内に設置される室内機40と、を有している。室外機30には、少なくとも熱源側熱交換器22が収容されている。本実施の形態の室外機30には、熱源側熱交換器22の他に、圧縮機21、圧力センサ61、62及び温度センサ71、72、74と、熱源側熱交換器22に室外空気を送風する室外ファン25と、が収容されている。室内機40には、少なくとも負荷側熱交換器24が収容されている。本実施の形態の室内機40には、負荷側熱交換器24の他に、膨張弁23及び温度センサ73と、負荷側熱交換器24に室内空気を送風する室内ファン26と、が収容されている。
【0011】
室外機30と室内機40との間は、冷媒配管の一部である延長配管51及び延長配管52を介して接続されている。延長配管51の一端は、継手部31を介して室外機30に接続されている。延長配管51の他端は、継手部41を介して室内機40に接続されている。延長配管51は、主にガス冷媒を流通させるガス管となる。延長配管52の一端は、継手部32を介して室外機30に接続されている。延長配管52の他端は、継手部42を介して室内機40に接続されている。延長配管52は、主に液冷媒を流通させる液管となる。
【0012】
圧縮機21は、低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する流体機械である。圧縮機21としては、例えば、回転速度を調整可能なインバータ駆動の圧縮機が用いられる。熱源側熱交換器22は、凝縮器として機能する熱交換器である。熱源側熱交換器22では、内部を流通する冷媒と、室外ファン25により送風される室外空気との熱交換が行われる。
【0013】
膨張弁23は、絞り膨張により冷媒を減圧させる弁である。膨張弁23としては、開度を調整可能な電子膨張弁が用いられる。膨張弁23の開度は、冷媒の過熱度又は過冷却度が目標値に近づくように制御される。負荷側熱交換器24は、蒸発器として機能する熱交換器である。負荷側熱交換器24では、内部を流通する冷媒と、室内ファン26により送風される室内空気との熱交換が行われる。
【0014】
圧力センサ61は、冷凍サイクル回路10のうち圧縮機21の吸入側に設けられている。圧力センサ61は、冷凍サイクル回路10内の低圧側圧力として圧縮機21の吸入圧力Psを検出し、検出信号を出力するように構成されている。圧力センサ62は、冷凍サイクル回路10のうち圧縮機21の吐出側に設けられている。圧力センサ62は、冷凍サイクル回路10内の高圧側圧力として圧縮機21の吐出圧力Pdを検出し、検出信号を出力するように構成されている。圧力センサ61、62は、冷媒配管内の冷媒の圧力を直接的に検出している。
【0015】
温度センサ71は、熱源側熱交換器22の二相部に設けられている。温度センサ71は、熱源側熱交換器22内の二相冷媒の温度を凝縮温度Tcとして検出し、検出信号を出力するように構成されている。温度センサ72は、冷凍サイクル回路10において熱源側熱交換器22の出口部に設けられている。温度センサ72は、熱源側熱交換器22から流出する冷媒の温度を凝縮器出口温度Tcoとして検出し、検出信号を出力するように構成されている。温度センサ73は、冷凍サイクル回路10において負荷側熱交換器24の入口部に設けられている。温度センサ73は、負荷側熱交換器24に流入する冷媒の温度を検出し、検出信号を出力するように構成されている。温度センサ74は、冷凍サイクル回路10のうち圧縮機21の吸入側に設けられている。温度センサ74は、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を蒸発温度Teとして検出し、検出信号を出力するように構成されている。温度センサ71、72、73、74は、冷媒配管の外側に設けられている。すなわち、温度センサ71、72、73、74は、冷媒配管の温度を検出することにより、当該冷媒配管内の冷媒の温度を間接的に検出している。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の制御部200の構成を示すブロック図である。制御部200は、CPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えたマイクロコンピュータを有している。制御部200は、冷凍サイクル回路10に設けられた各種センサからの検出信号、及び操作部211からの操作信号等に基づき、圧縮機21、膨張弁23、室外ファン25及び室内ファン26を含む冷凍サイクル装置全体の動作を制御する。また、制御部200は、冷凍サイクル回路10から冷媒が漏洩したと判定した場合には、報知部212で冷媒の漏洩を報知する。
【0017】
制御部200は、機能ブロックとして、計測部201、演算部202、記憶部203及び比較判定部204を有している。計測部201は、圧力センサ61、62のそれぞれから出力される検出信号に基づき、各部の圧力の検出値を取得するとともに、温度センサ71、72、73、74のそれぞれから出力される検出信号に基づき、各部の温度の検出値を取得する。演算部202は、計測部201で取得された温度及び圧力の検出値に基づき、各種の演算値及び制御パラメータを演算する。演算部202は、例えば、吐出圧力Pdの検出値及び凝縮器出口温度Tcoの検出値に基づき、過冷却度の演算値を演算する。また、制御パラメータとしては、圧縮機21の駆動周波数、膨張弁23の開度、室外ファン25の回転数及び室内ファン26の回転数などの、冷凍サイクル回路10の要素機器の指示値が含まれる。記憶部203は、計測部201で取得された検出値、及び演算部202で演算された演算値及び制御パラメータ等の情報を記憶する。比較判定部204は、検出値、演算値、指示値などの値を必要に応じて比較し、冷媒漏洩の有無を判定する。
【0018】
制御部200は、室外機30に設けられていてもよいし、室内機40に設けられていてもよい。また、制御部200は、室外機30に設けられた室外機制御部と、室内機40に設けられ室外機制御部と通信可能な室内機制御部と、を有していてもよい。
【0019】
操作部211は、冷凍サイクル装置の運転開始操作及び運転停止操作等のユーザによる各種操作を受け付けるように構成されている。操作部211でユーザによる各種操作が行われると、行われた操作に応じた操作信号が操作部211から制御部200に出力される。操作部211は、例えば室内機40に設けられている。
【0020】
報知部212は、制御部200の指令により、冷媒の漏洩などの各種情報を外部に報知するように構成されている。報知部212は、情報を視覚的に報知する表示部、及び情報を聴覚的に報知する音声出力部の少なくとも一方を有している。報知部212は、例えば室内機40に設けられている。
【0021】
図3は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の制御部200で実行される冷媒漏洩検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示す冷媒漏洩検知処理は、冷凍サイクル装置の運転期間中に所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0022】
図3のステップS1では、制御部200は、冷凍サイクル回路10に設けられた各要素機器の現時点の指示値を今回の指示値として記憶部203に記憶する。要素機器としては、圧縮機21、膨張弁23、室外ファン25及び室内ファン26などが含まれる。指示値としては、圧縮機21の駆動周波数、膨張弁23の開度、室外ファン25の回転数及び室内ファン26の回転数などが含まれる。
【0023】
次に、ステップS2では、制御部200は、各センサにより検出された現時点の検出値を今回の検出値として記憶部203に記憶するとともに、これらの検出値に基づき演算された現時点の演算値を今回の演算値として記憶部203に記憶する。検出値としては、圧力センサ61により検出される吸入圧力Psの検出値、圧力センサ62により検出される吐出圧力Pdの検出値、温度センサ71により検出される凝縮温度Tcの検出値、温度センサ72により検出される凝縮器出口温度Tcoの検出値、温度センサ73により検出される温度の検出値、温度センサ74により検出される吸入温度Tsの検出値などがある。演算値としては、吸入圧力Psの検出値及び吸入温度Tsの検出値に基づき演算される過熱度の演算値、吐出圧力Pdの検出値及び凝縮器出口温度Tcoの検出値に基づき演算される過冷却度の演算値などがある。
【0024】
次に、ステップS3では、制御部200は、ステップS1で記憶した各要素機器の今回の指示値と、前回の冷媒漏洩検知処理で記憶した各要素機器の前回の指示値と、を記憶部203から読み出し、今回の指示値と前回の指示値とを比較する。次に、ステップS4において、各要素機器の今回の指示値のうち少なくとも1つの指示値が前回の指示値から変化したと判定した場合には、今回の冷媒漏洩検知処理を終了する。また、ステップS4において、各要素機器の今回の指示値の全てが前回の指示値から変化していないと判定した場合には、ステップS5に進む。なお、前回の指示値に代えて、前回の冷媒漏洩検知処理よりも前に記憶した過去の指示値を用いることもできる。
【0025】
ステップS5では、制御部200は、現在が過渡期間内であるか否かを判定する。過渡期間とは、各要素機器の指示値が変化してから冷凍サイクル回路10内の冷媒の状態が安定するまでの期間のことである。例えば、各要素機器の指示値が変化してからの経過時間が、あらかじめ設定された所定時間以下である場合には、現在が過渡期間内であると判定される。また、冷凍サイクル装置が起動してからの経過時間が、あらかじめ設定された所定時間以下である場合にも、現在が過渡期間内であると判定される。制御部200は、現在が過渡期間内であると判定した場合には今回の冷媒漏洩検知処理を終了する。一方、制御部200は、現在が過渡期間内ではないと判定した場合にはステップS6に進む。すなわち、冷媒漏洩の有無の判定(ステップS6及びステップS7)は、冷凍サイクル回路10内の冷媒の状態が安定していない過渡期間には実行されず、冷凍サイクル回路10内の冷媒の状態が安定している過渡期間外の期間に実行される。
【0026】
ステップS6では、制御部200は、検出値及び演算値のうちの少なくとも1つについて、ステップS2で記憶した今回の値と、前回の冷媒漏洩検知処理で記憶した前回の値と、を記憶部203から読み出す。そして、制御部200は、今回の値と前回の値とに基づき、変化量を算出する。変化量は、今回の値から前回の値を減じた値の絶対値である。なお、前回の値に代えて、前回の冷媒漏洩検知処理よりも前に記憶された過去の値を用いることもできる。
【0027】
次に、ステップS7では、制御部200は、ステップS6で算出した変化量が、あらかじめ設定された閾値以下であるか否かを判定する。変化量が閾値以下であると判定した場合には、今回の冷媒漏洩検知処理を終了する。これは、後述するように、変化量が閾値以下である場合には、冷媒が漏洩していないと判定されるためである。一方、変化量が閾値よりも大きいと判定した場合には、ステップS8に進み、冷媒の漏洩を報知部212に報知させる処理を行う。これは、後述するように、変化量が閾値よりも大きい場合には、冷媒が漏洩したと判定されるためである。ステップS8の処理により、報知部212では、冷媒の漏洩が外部に報知される。
【0028】
図4は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じていない場合の過冷却度の演算値の時間変化を示すグラフである。
図5は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じている場合の過冷却度の演算値の時間変化を示すグラフである。
図4及び
図5の横軸は冷凍サイクル装置が起動してからの経過時間[分]を表しており、縦軸は過冷却度の演算値[K]を表している。過冷却度の演算値は、吐出圧力Pdの検出値及び凝縮器出口温度Tcoの検出値に基づき演算されている。
【0029】
図4に示すように、冷媒の漏洩が生じていない場合、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後には、過冷却度の演算値は+1K程度に維持されている。このため、過冷却度の演算値の変動は小さくなっている。例えば、ある時刻t1での過冷却度の演算値をSC1とし、時刻t1から数分後の時刻t2での過冷却度の演算値をSC2とすると、時刻t1から時刻t2までの期間における過冷却度の演算値の変化量(|SC2−SC1|)は、0K〜1K程度である。
【0030】
一方、
図5に示すように、冷媒の漏洩が生じている場合には、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後であっても、過冷却度の演算値は、0Kを挟んで周期的に大きく変動している。過冷却度の演算値の変動周期は数分程度であり、変動幅は0Kを挟んで±数K程度である。例えば、ある時刻t3での過冷却度の演算値をSC3とし、時刻t3から数分後の時刻t4での過冷却度の演算値をSC4とすると、時刻t3から時刻t4までの期間における過冷却度の演算値の変化量(|SC4−SC3|)は、6K程度である。したがって、過冷却度の演算値を用いて冷媒漏洩の有無を判定する場合、閾値が5K程度に設定されていれば、変化量が閾値以下であるか否かによって冷媒漏洩の有無を判定できる。
【0031】
図6は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じていない場合の凝縮温度の検出値の時間変化を示すグラフである。
図7は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じている場合の凝縮温度の検出値の時間変化を示すグラフである。
図6及び
図7の横軸は冷凍サイクル装置が起動してからの経過時間[分]を表しており、縦軸は凝縮温度の検出値[℃]を表している。凝縮温度の検出値は、温度センサ71の検出信号に基づき取得されている。
【0032】
図6に示すように、冷媒の漏洩が生じていない場合、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後には、凝縮温度の検出値の変動が小さくなっている。例えば、ある時刻t1での凝縮温度の検出値をTc1とし、時刻t1から数分後の時刻t2での凝縮温度の検出値をTc2とすると、時刻t1から時刻t2までの期間における凝縮温度の検出値の変化量(|Tc2−Tc1|)は、0K〜1K程度である。
【0033】
一方、
図7に示すように、冷媒の漏洩が生じている場合には、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後であっても、凝縮温度の検出値は周期的に大きく変動している。凝縮温度の検出値の変動周期は数分程度であり、変動幅は数K〜10K程度である。例えば、ある時刻t3での凝縮温度の検出値をTc3とし、時刻t3から数分後の時刻t4での凝縮温度の検出値をTc4とすると、時刻t3から時刻t4までの期間における凝縮温度の検出値の変化量(|Tc4−Tc3|)は、7K程度である。したがって、凝縮温度の検出値を用いて冷媒漏洩の有無を判定する場合、閾値が5K程度に設定されていれば、変化量が閾値以下であるか否かによって冷媒漏洩の有無を判定できる。
【0034】
次に、冷媒の漏洩が生じた冷凍サイクル装置で検出値及び演算値が周期的に大きく変動する理由について説明する。
図8は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置における冷媒の状態を示すp−h線図である。
図8の横軸は比エンタルピーを表しており、縦軸は圧力を表している。
図8に示す冷凍サイクルAでは、冷媒の状態がA1、A2、A3、A4の順に変化する。冷媒充填量が削減された冷凍サイクル装置において冷媒の漏洩が生じていると、凝縮器として機能する熱源側熱交換器22から流出する冷媒の過冷却度は、ほぼ0Kになる(
図8の点A2)。このため、膨張弁23の入口部の冷媒の状態は液単相から気液二相に変化し得る。膨張弁23の入口部の冷媒の状態が液単相から気液二相に変化すると、実行されるサイクルが冷凍サイクルAから冷凍サイクルBに変化する。
【0035】
冷凍サイクルBでは、冷媒の状態がB1、B2、B3、B4の順に変化する。冷凍サイクルBでは、膨張弁23の入口部の冷媒の状態が気液二相になるため、膨張弁23の圧力損失が増大する。これにより、膨張弁23を介して冷凍サイクル回路10の高圧側から低圧側に冷媒が流れにくくなる。このため、冷凍サイクル回路10の低圧側の冷媒量が減少し、冷凍サイクル回路10の低圧側圧力が低下する。また、低圧側圧力の低下に伴い、冷凍サイクル回路10の高圧側圧力も低下する。
【0036】
一方で、冷凍サイクルBでは、低圧側に流入すべき冷媒が高圧側に溜まるため、膨張弁23の入口部の冷媒が液化しやすくなる。膨張弁23の入口部の冷媒の状態が気液二相から液単相に変化すると、実行されるサイクルが冷凍サイクルBから冷凍サイクルAに変化する。
【0037】
冷凍サイクルAでは、膨張弁23の入口部の冷媒の状態が液単相になるため、膨張弁23の圧力損失が減少する。これにより、膨張弁23を介して高圧側から低圧側に冷媒が流入しやすくなるため、膨張弁23の入口部の状態が液単相から気液二相に変化しやすくなる。
【0038】
以上のように、冷媒の漏洩が生じた冷凍サイクル回路10では、膨張弁23の入口部の冷媒の過冷却度がほぼ0Kとなるため、冷凍サイクルAと冷凍サイクルBとが交互に繰り返し実行される。このため、冷媒の漏洩が生じた冷凍サイクル回路10では、圧力センサ61、62及び温度センサ71、72、73、74等により検出される検出値と、これらの検出値に基づき演算される演算値と、のそれぞれが周期的に大きく変動するハンチング現象が生じる。冷媒の漏洩が生じた場合に周期的に大きく変動する検出値としては、圧力センサ61により検出される吸入圧力Psの検出値、圧力センサ62により検出される吐出圧力Pdの検出値、温度センサ71により検出される凝縮温度Tcの検出値、温度センサ72により検出される凝縮器出口温度Tcoの検出値、温度センサ73により検出される温度の検出値、及び温度センサ74により検出される吸入温度Tsの検出値などがある。また、冷媒の漏洩が生じた場合に周期的に大きく変動する演算値としては、吸入圧力Psの検出値及び吸入温度Tsの検出値に基づき演算される過熱度の演算値などがある。
【0039】
ここで、
図8に示す点A2及び点B2のいずれにおいても過冷却度は0Kであるため、
図8によれば、冷凍サイクルAと冷凍サイクルBとが交互に実行されたとしても、過冷却度は大きく変動しないように見える。しかしながら、圧力センサの検出値と温度センサの検出値とに基づき過冷却度が演算される場合には、以下に説明するように、過冷却度の演算値も周期的に大きく変動する。
【0040】
図9は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じている場合の吐出圧力Pd及び凝縮器出口温度Tcoの検出値の時間変化、並びに過冷却度の演算値の時間変化を示すグラフである。
図9の横軸は、時間経過を表している。
図9の上段の縦軸は、吐出圧力Pdの検出値、及び凝縮器出口温度Tcoの検出値を表している。
図9の下段の縦軸は、過冷却度の演算値[K]を表している。過冷却度の演算値は、吐出圧力Pdの検出値及び凝縮器出口温度Tcoの検出値に基づき演算されるものとする。既に
図8に示したように、冷凍サイクルAと冷凍サイクルBとが交互に実行されると、吐出圧力Pdの実際の値、及び凝縮器出口温度Tcoの実際の値は、それぞれ周期的に変動する。ここで、吐出圧力Pdは、点A1及び点B1の圧力であり、凝縮器出口温度Tcoは、点A2及び点B2の温度である。
【0041】
図9の上段に示すように、圧力センサ62で検出される吐出圧力Pdの検出値は、冷凍サイクルAと冷凍サイクルBとが交互に実行されると、吐出圧力Pdの実際の値の変動に追従して応答性良く変動する。これは、圧力センサ62が冷媒配管内の冷媒の圧力を直接的に検出しているためである。一方、温度センサ71は、冷媒配管の温度を検出することにより、冷媒の温度を間接的に検出している。このため、温度センサ71で検出される凝縮器出口温度Tcoの検出値には、冷媒配管などの熱容量の影響により、凝縮器出口温度Tcoの実際の値の変動に対して応答の遅れが生じる。したがって、凝縮器出口温度Tcoの検出値のピークは、吐出圧力Pdの検出値のピークから時間tだけ遅延する。また、応答の遅れに伴い、凝縮器出口温度Tcoの検出値の波形には、吐出圧力Pdの検出値の波形に対して鈍りが生じる。過冷却度の演算値は、吐出圧力Pdの検出値及び凝縮器出口温度Tcoの検出値に基づき演算される。この結果、冷凍サイクルAと冷凍サイクルBとが交互に実行されると、過冷却度の演算値は、
図9の下段に示すように0Kを挟んで周期的に大きく変動する。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、冷媒を循環させる冷凍サイクル回路10と、冷凍サイクル回路10の温度又は圧力を検出するセンサと、冷媒の漏洩を報知するように構成された報知部212と、を備えている。上記センサは、例えば、圧力センサ61、62及び温度センサ71、72、73、74である。冷凍サイクル装置では、センサの検出値、又は当該検出値に基づき演算される演算値、のいずれかの所定期間内での変化量が閾値を超えた場合、冷媒の漏洩が報知部212で報知される。上記検出値は、例えば、吸入圧力Psの検出値、吐出圧力Pdの検出値、凝縮温度Tcの検出値、凝縮器出口温度Tcoの検出値、吸入温度Tsの検出値などである。上記演算値は、例えば、過熱度の演算値、過冷却度の演算値などである。上記変化量は、例えば、
図3のステップS2で記憶された今回の値と過去に記憶された過去の値とに基づき演算された変化量である。
【0043】
この構成によれば、温度若しくは圧力を検出するセンサの検出値、又は検出値に基づき演算される演算値、のいずれかが所定期間内で大きく変動したことに基づいて、冷媒の漏洩をより確実に検知することができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知を抑制することができる。
【0044】
過冷却度と判定閾値との偏差量に基づき冷媒漏洩の有無が判定される従来の冷凍サイクル装置では、判定閾値がどのような値に設定されていても、過冷却度が0Kに近づいた場合には冷媒が漏洩したと判定される。しかしながら、冷媒充填量の少ない冷凍サイクル装置では、冷媒の漏洩が生じていない正常な状態であっても過冷却度が小さくなっている。したがって、冷媒充填量の少ない冷凍サイクル装置では、冷媒が漏洩していないのにも関わらず冷媒が漏洩したと判定されてしまう誤検知が生じやすかった。これに対し、本実施の形態では、過冷却度の大小ではなく、検出値又は演算値の所定期間内での変化量の大小に基づいて、冷媒漏洩の有無が判定される。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知を抑制することができる。
【0045】
また、吐出温度の高低又は過熱度の大小に基づいて冷媒漏洩の有無が判定される冷凍サイクル装置では、漏洩が進行して回路内に冷媒がほとんど存在しない状態にならない限り、冷媒の漏洩が検知されない。この場合、冷媒の漏洩が検知されたときには、圧縮機などの要素機器が損傷してしまっているおそれがある。これに対し、本実施の形態では、吐出温度の高低又は過熱度の大小ではなく、検出値又は演算値の所定期間内での変化量の大小に基づいて、冷媒の漏洩がより早期に検知される。したがって、本実施の形態によれば、圧縮機などの要素機器が損傷する前に冷媒の漏洩を報知することができる。また、本実施の形態では、冷媒の漏洩が早期に検知されることにより冷媒の漏洩量を削減できるため、安全性の向上及び地球温暖化の抑制の効果も得られる。
【0046】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル回路10に設けられた圧縮機21をさらに備えている。上記所定期間は、圧縮機21の駆動周波数が一定に維持されている期間である。この構成によれば、圧縮機21の駆動周波数の変動に起因して検出値又は演算値が変動した場合に、冷媒の漏洩を誤検知してしまうのを防ぐことができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知をより確実に抑制することができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル回路10に設けられた膨張弁23をさらに備えている。上記所定期間は、膨張弁23の開度が一定に維持されている期間である。この構成によれば、膨張弁23の開度の変動に起因して検出値又は演算値が変動した場合に、冷媒の漏洩を誤検知してしまうのを防ぐことができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知をより確実に抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、冷凍サイクル回路10に設けられた熱交換器と、熱交換器に空気を供給するファンと、をさらに備えている。上記熱交換器は、例えば、熱源側熱交換器22又は負荷側熱交換器24。上記ファンは、例えば、室外ファン25又は室内ファン26である。上記所定期間は、ファンの回転数が一定に維持されている期間である。この構成によれば、ファンの回転数の変動に起因して検出値又は演算値が変動した場合に、冷媒の漏洩を誤検知してしまうのを防ぐことができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知をより確実に抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、上記所定期間は、冷凍サイクル回路10に設けられた要素機器の状態が変化した後の過渡期間外の期間である。上記要素機器は、例えば、圧縮機21、膨張弁23、室外ファン25又は室内ファン26等である。この構成によれば、要素機器の状態変化に起因して検出値又は演算値が変動した場合に、冷媒の漏洩を誤検知してしまうのを防ぐことができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知をより確実に抑制することができる。
【0050】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2に係る冷凍サイクル装置について説明する。上記実施の形態1では、検出値又は演算値の所定期間内での変化量が閾値を超えた場合に、冷媒が漏洩したと判定され、冷媒の漏洩が報知部212で報知される。これに対し、本実施の形態では、検出値又は演算値の所定期間内での標準偏差σが閾値を超えた場合に、冷媒が漏洩したと判定され、冷媒の漏洩が報知部212で報知される。すなわち、本実施の形態では、検出値又は演算値の変化量の大小ではなく、検出値又は演算値のばらつきの大小に基づいて冷媒漏洩の有無が判定される。ここで、検出値又は演算値は所定の時間間隔で離散値として取得されており、上記所定期間内には2点以上の検出値又は演算値が取得されているものとする。
【0051】
図10は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置の制御部200で実行される冷媒漏洩検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10のステップS11〜S15については、
図3のステップS1〜S5と同様であるので説明を省略する。
【0052】
図10のステップS16では、制御部200は、検出値及び演算値のうちの少なくとも1つについて、所定期間内での2点以上の値を記憶部203から読み出し、これらの標準偏差σを算出する。
【0053】
次に、ステップS17では、制御部200は、ステップS16で算出した標準偏差σが、あらかじめ設定された閾値以下であるか否かを判定する。標準偏差σが閾値以下であると判定した場合には、今回の冷媒漏洩検知処理を終了する。一方、標準偏差σが閾値よりも大きいと判定した場合には、ステップS18に進み、冷媒の漏洩を報知部212に報知させる処理を行う。ステップS18の処理により、報知部212では、冷媒の漏洩が外部に報知される。
【0054】
図11は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じていない場合の過冷却度の演算値の時間変化を示すグラフである。
図12は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じている場合の過冷却度の演算値の時間変化を示すグラフである。
図11及び
図12の横軸は冷凍サイクル装置が起動してからの経過時間[分]を表しており、縦軸は過冷却度の演算値[K]を表している。
【0055】
図11に示すように、冷媒の漏洩が生じていない場合、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後には、過冷却度の演算値のばらつきが小さくなっている。一方、
図12に示すように、冷媒の漏洩が生じている場合には、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後であっても、過冷却度の演算値のばらつきが大きくなっている。したがって、所定期間内での過冷却度の演算値の標準偏差σが閾値を超えたか否かに基づいて、冷媒漏洩の有無を判定することができる。例えば、
図11に示すグラフにおいて、時刻t11から時刻t12までの期間での過冷却度の演算値の標準偏差σが閾値以下であれば、冷媒の漏洩が生じていないと判定することができる。また例えば、
図12に示すグラフにおいて、時刻t13から時刻t14までの期間での過冷却度の演算値の標準偏差σが閾値を超えていれば、冷媒の漏洩が生じていると判定することができる。
【0056】
図13は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じていない場合の凝縮温度の検出値の時間変化を示すグラフである。
図14は、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置において、冷媒の漏洩が生じている場合の凝縮温度の検出値の時間変化を示すグラフである。
図13及び
図14の横軸は冷凍サイクル装置が起動してからの経過時間[分]を表しており、縦軸は凝縮温度の検出値[℃]を表している。
【0057】
図13に示すように、冷媒の漏洩が生じていない場合、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後には、凝縮温度の検出値のばらつきが小さくなっている。一方、
図14に示すように、冷媒の漏洩が生じている場合には、冷凍サイクル装置が起動してから20分程度の過渡期間を経過した後であっても、凝縮温度の検出値のばらつきが大きくなっている。したがって、所定期間内での凝縮温度の検出値の標準偏差σが閾値を超えたか否かに基づいて、冷媒漏洩の有無を判定することができる。例えば、
図13に示すグラフにおいて、時刻t11から時刻t12までの期間での凝縮温度の検出値の標準偏差σが閾値以下であれば、冷媒の漏洩が生じていないと判定することができる。また例えば、
図14に示すグラフにおいて、時刻t13から時刻t14までの期間での凝縮温度の検出値の標準偏差σが閾値を超えていれば、冷媒の漏洩が生じていると判定することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、冷媒を循環させる冷凍サイクル回路10と、冷凍サイクル回路10の温度又は圧力を検出するセンサと、冷媒の漏洩を報知するように構成された報知部212と、を備えている。上記センサは、例えば、圧力センサ61、62及び温度センサ71、72、73、74である。冷凍サイクル装置では、センサの検出値、又は検出値に基づき演算される演算値、のいずれかの所定期間内での標準偏差σが閾値を超えた場合、冷媒の漏洩が報知部212で報知される。上記検出値は、例えば、吸入圧力Psの検出値、吐出圧力Pdの検出値、凝縮温度Tcの検出値、凝縮器出口温度Tcoの検出値、吸入温度Tsの検出値などである。上記演算値は、例えば、過熱度の演算値、過冷却度の演算値などである。
【0059】
この構成によれば、温度若しくは圧力を検出するセンサの検出値、又は検出値に基づき演算される演算値、のいずれかのばらつきが大きくなったことに基づいて、冷媒の漏洩をより確実に検知することができる。したがって、本実施の形態によれば、冷媒漏洩の誤検知又は誤報知を抑制することができる。
【0060】
上記実施の形態1及び2では空気調和装置を例に挙げたが、本発明は、空気調和装置以外の冷凍サイクル装置にも適用可能である。また、上記実施の形態1及び2では、冷房運転を実行可能な冷凍サイクル装置を例に挙げたが、本発明は、暖房運転のみを実行可能な冷凍サイクル装置、又は、冷房運転及び暖房運転の双方を実行可能な冷凍サイクル装置にも適用可能である。
【0061】
上記の各実施の形態は、互いに組み合わせて実施することが可能である。