特許第6628981号(P6628981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6628981
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】露光光照射装置及び管状物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/24 20060101AFI20200106BHJP
   A61F 2/91 20130101ALI20200106BHJP
【FI】
   G03F7/24 Z
   A61F2/91
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-105206(P2015-105206)
(22)【出願日】2015年5月25日
(65)【公開番号】特開2016-214711(P2016-214711A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】515141702
【氏名又は名称】株式会社エムダップ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭二
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】大山 靖
(72)【発明者】
【氏名】比恵島 徳寛
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05855802(US,A)
【文献】 再公表特許第2007/083489(JP,A1)
【文献】 特開2013−099547(JP,A)
【文献】 特開2011−251161(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/062854(WO,A1)
【文献】 特表2014−524314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/91
G03F 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光照射装置を用いる第2の管の製造方法において、
前記露光光照射装置は、
第1の管と、
前記第1の管の側面に形成された開孔部と、
前記第1の管内に配置され、露光光を伝送する光導波路と、
前記第1の管内に配置され、前記光導波路によって伝送された前記露光光を集光するレンズ、及び前記レンズによって集光された露光光を反射させる反射ミラー、または、前記第1の管内に配置され、前記光導波路によって伝送された前記露光光を集光させて反射する集光ミラーと、
を具備し、
前記ミラーによって反射され前記開孔部を通って前記第1の管の外側に照射された前記露光光は、前記第1の管の外側に配置された第2の管の内面に塗布されたフォトレジスト膜に照射され、前記フォトレジスト膜が露光されるものであり、
前記第2の管は、前記第2の管の内部に先端に吐出部材を備えた第3の管を挿入し、前記第3の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第3の管を前記第2の管から引き出しつつ前記第2の管を回転させることで、前記第2の管の内面に前記レジスト液を塗布する工程を経て得られることを特徴とする第2の管の製造方法
【請求項2】
請求項1において、
前記吐出部材は、前記第2の管の内部に前記第3の管を挿入した際に前記第2の管の内面側に位置する前記レジスト液を溜める液溜まり部を有することを特徴とする第2の管の製造方法
【請求項3】
請求項1または2において、
前記光導波路を前記第2の管の長手方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする第2の管の製造方法
【請求項4】
内面にフォトレジスト膜を塗布した第1の管の内部に、側面に開孔部を有する第2の管を挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程(a)と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
電解メッキ法により前記第1の管の内部よりメッキ膜を形成する工程、または、前記レジストパターンをマスクとして前記第1の管をエッチングする工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を具備し、
前記工程(a)の前記第1の管は、前記第1の管の内部に先端に吐出部材を備えた第3の管を挿入し、前記第3の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第3の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の内面に前記レジスト液を塗布する工程を経て得られることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項5】
第1の管の内面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上にフォトレジスト膜を形成する工程(a)と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記導電膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンから露出する前記導電膜上に電解メッキ法によりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去し、前記導電膜を除去することで、前記第1の管から前記メッキ膜を離す工程と、
を具備し、
前記工程(a)の前記フォトレジスト膜は、前記第1の管の内部に先端に吐出部材を備えた第3の管を挿入し、前記第3の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第3の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の前記導電膜上に前記レジスト液を塗布する工程を経て得られることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項6】
第1の管の内面にメッキ膜を形成する工程と、
前記メッキ膜上にフォトレジスト膜を形成する工程(a)と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面の前記メッキ膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記メッキ膜をエッチングすることで、前記第1の管の内面に前記メッキ膜からなるメタルマスクを形成する工程と、
前記メタルマスクをマスクとして前記第1の管をエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記メタルマスクから前記管状物を離す工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記工程(a)の前記フォトレジスト膜は、前記第1の管の内部に先端に吐出部材を備えた第3の管を挿入し、前記第3の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第3の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の前記メッキ膜上に前記レジスト液を塗布する工程を経て得られることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項において、
前記露光光を前記フォトレジスト膜に照射する際は、前記第1の管または前記第2の管の回転動作と前記第1の管または前記第2の管の長手方向の移動動作と前記露光光の照射のオンとオフを組み合わせて動作させることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか一項において、
前記露光光を照射する工程は、前記露光光を前記フォトレジスト膜に照射することで、前記フォトレジスト膜に露光パターンを点画で描画する工程であることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項10】
請求項4乃至9のいずれか一項において、
前記第2の管内に光導波路、レンズ及び反射ミラーが配置されており、
前記露光光を照射する工程では、前記光導波路によって伝送され、前記光導波路から出射された前記露光光は、前記レンズによって集光され、前記反射ミラーによって反射され、前記開孔部を通って前記フォトレジスト膜に照射されることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項11】
請求項4乃至9のいずれか一項において、
前記第2の管内に光導波路及び集光ミラーが配置されており、
前記露光光を照射する工程では、前記光導波路によって伝送され、前記光導波路から出射された前記露光光は、前記集光ミラーによって集光されて反射され、前記開孔部を通って前記フォトレジスト膜に照射されることを特徴とする管状物の製造方法。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか一項において、
前記第1の管は、枝状に分岐した管形状または端部の径が異なる管形状を有することを特徴とする管状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光光照射装置及び管状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管状物の一例としては医療器具のステントがある。ステントとは、人体の管状の部分(血管、気管、食道、十二指腸、大腸、胆道など)を管腔内部から広げる医療機器である。ステントの一例としては金属でできた網目の筒状のものがあり、治療する部位に応じたステントが用いられる。狭心症、急性心筋梗塞、急性冠症候群、癌による血管、気管や食道、十二指腸、大腸、胆道などの狭窄、脳梗塞などの治療としてステントグラフト内挿術が行われる。
【0003】
従来のステントの製造方法は次のとおりである。
医療用のステンレス(SUS316L,SUS316LVN)、コバルトクロム、NiTi等の素材となる単一金属または合金のパイプを外周からレーザー光によって加工し、その後、熱処理、酸洗浄、電解研磨の工程を経てステントが製作される。酸洗浄、電解研磨の工程は、レーザー加工時に、切り口にバリが生ずるため、そのバリを除去してステントの表面を滑らかにして仕上げを行う工程である。
【0004】
上記従来のステントの製造方法では、レーザー加工時に、素材のパイプ自体が過熱されてパイプの表面上に不純物等の偏析が生じ、酸洗浄の工程でステントの網目の一部が断線する事がある。
【0005】
また、長手方向が例えば100mm以上の長物のステントを製作しようとすると、レーザー加工後にステントが冷却される時、ステントの自重による垂れのために必要な加工精度が保てないという問題がある。そのため、必要な加工精度が保てるステントの長さは30〜40mm程度が限界であり、それより長いステントでは加工精度が上がらないので、上記従来のステントの製造方法では、長物のステントに対応することができないという問題がある。
【0006】
つまり、レーザー加工を用いたステントの製造方法では、レーザー加工時にステントに加えられる熱が問題となるので、そのような熱が加工時に発生しないステントの製造方法が求められている。
【0007】
また、上述したレーザー加工では、外径が一定である同径のパイプしか加工することができない。そこで、外径が一定でないパイプ(例えば端部の外径が異なるパイプ)や枝状に分岐した管(例えば枝管)を加工することについても産業上のニーズがあると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−36817
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、管の内側から照射位置精度良く露光光を照射できる露光光照射装置を提供することを課題とする。
また、本発明の一態様は、レーザー加工のような熱が加工時に発生しない管状物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の種々の態様について説明する。
[1]第1の管と、
前記第1の管の側面に形成された開孔部と、
前記第1の管内に配置され、露光光を伝送する光導波路と、
前記第1の管内に配置され、前記光導波路によって伝送された前記露光光を集光するレンズと、
前記レンズによって集光された露光光を反射させる反射ミラーと、
を具備し、
前記反射ミラーによって反射された前記露光光は、前記開孔部を通って前記第1の管の外側に照射されることを特徴とする露光光照射装置。
【0011】
[1−1]上記[1]において、
前記レンズは、ボールレンズ、シリンドリカルレンズ、ドラムレンズ、フレネルレンズ、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、屈折率分布レンズ及びそれらを組み合わせたレンズのいずれかであることを特徴とする露光光照射装置。
【0012】
[1−2]第1の管と、
前記第1の管の側面に形成された開孔部と、
前記第1の管内に配置され、露光光を伝送する光導波路と、
前記第1の管内に配置され、前記光導波路によって伝送された前記露光光を集光させて反射する集光ミラーと、
を具備し、
前記集光ミラーによって集光して反射された前記露光光は、前記開孔部を通って前記第1の管の外側に照射されることを特徴とする露光光照射装置。
【0013】
なお、本明細書において「光導波路」とは、光学的な特性をもつ物質を用いて作製された光の伝送路を意味し、例えば光ファイバーまたはフォトニック結晶を用いることができる。
【0014】
[1−3]上記[1]、[1−1]及び[1−2]のいずれか一項において、
前記光導波路を前記第1の管の長手方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする露光光照射装置。
【0015】
[2]上記[1]、[1−1]、[1−2]及び[1−3]のいずれか一項において、
前記ミラーによって反射され前記開孔部を通った前記露光光は、前記第1の管の外側に配置された第2の管の内面に塗布されたフォトレジスト膜に照射され、前記フォトレジスト膜が露光されることを特徴とする露光光照射装置。
【0016】
[31]上記[1]または[2]において、
第1の管の内部に先端に吐出部材を備えた第2の管を挿入し、
前記第2の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第2の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の内面に前記レジスト液を塗布することを特徴とする露光光照射装置。
[32]上記[1]、[2]及び[31]のいずれか一項において、
前記吐出部材は、前記第1の管の内部に前記第2の管を挿入した際に前記第1の管の内面側に位置する前記レジスト液を溜める液溜まり部を有することを特徴とする露光光照射装置。
[33]上記[1]、[2]、[31]及び[32]のいずれか一項において、
前記光導波路を前記第2の管の長手方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする露光光照射装置。
[3]第1の管(例えば金属管または犠牲管)の内部に先端に吐出部材を備えた第2の管を挿入し、
前記第2の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第2の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の内面に前記レジスト液を塗布することを特徴とするレジスト塗布方法。
【0017】
[4]上記[3]において、
前記吐出部材は、前記第1の管の内部に前記第2の管を挿入した際に前記第1の管の内面側に位置する前記レジスト液を溜める液溜まり部を有することを特徴とするレジスト塗布方法。
【0018】
[5]内面にフォトレジスト膜を塗布した第1の管の内部に、側面に開孔部を有する第2の管を挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
電解メッキ法により前記第1の管の内部よりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0019】
なお、本明細書において「管状物」には管状の医療器具全般を含む。
【0020】
[5−1]内面にフォトレジスト膜を塗布した第1の管の内部に、側面に開孔部を有する第2の管を挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記第1の管をエッチングする工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0021】
[5−2]第1の管の内面にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンから露出する前記第1の管の内面上に電解メッキ法によりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去し、前記第1の管を除去する工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0022】
[5−3]第1の管の内面にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記第1の管をエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0023】
[6]第1の管の内面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記導電膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンから露出する前記導電膜上に電解メッキ法によりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去し、前記導電膜を除去することで、前記第1の管から前記メッキ膜を離す工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0024】
[6−1]上記[5]、[5−2]及び[6]のいずれか一項において、
前記レジストパターンを除去する工程で得られた前記メッキ膜からなる管状物は医療器具であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0025】
[7]第1の管の内面にメッキ膜を形成する工程と、
前記メッキ膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面の前記メッキ膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記メッキ膜をエッチングすることで、前記第1の管の内面に前記メッキ膜からなるメタルマスクを形成する工程と、
前記メタルマスクをマスクとして前記第1の管をエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記メタルマスクから前記管状物を離す工程と、
を具備することを特徴とする管状物の製造方法。
【0026】
[8]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]及び[7]のいずれか一項において、
前記露光光を前記フォトレジスト膜に照射する際は、前記第1の管または前記第2の管の回転動作と前記第1の管または前記第2の管の長手方向の移動動作と前記露光光の照射のオンとオフを組み合わせて動作させることを特徴とする管状物の製造方法。
【0027】
[9]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]及[8]のいずれか一項において、
前記露光光を照射する工程は、前記露光光を前記フォトレジスト膜に照射することで、前記フォトレジスト膜に露光パターンを点画で描画する工程であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0028】
[10]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[9]のいずれか一項において、
前記第2の管内に光導波路、レンズ及び反射ミラーが配置されており、
前記露光光を照射する工程では、前記光導波路によって伝送され、前記光導波路から出射された前記露光光は、前記レンズによって集光され、前記反射ミラーによって反射され、前記開孔部を通って前記フォトレジスト膜に照射されることを特徴とする管状物の製造方法。
【0029】
[10−1]上記[10]において、
前記レンズは、ボールレンズ、シリンドリカルレンズ、ドラムレンズ、フレネルレンズ、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、屈折率分布レンズ及びそれらを組み合わせたレンズのいずれかであることを特徴とする管状物の製造方法。
【0030】
[11]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[9]のいずれか一項において、
前記第2の管内に光導波路及び集光ミラーが配置されており、
前記露光光を照射する工程では、前記光導波路によって伝送され、前記光導波路から出射された前記露光光は、前記集光ミラーによって集光されて反射され、前記開孔部を通って前記フォトレジスト膜に照射されることを特徴とする管状物の製造方法。
【0031】
[12]上記[10]、[10−1]及び[11]のいずれか一項において、
前記光導波路を前記第2の管の長手方向に移動させる移動機構を有することを特徴とする管状物の製造方法。
上記の管状物の製造方法によれば、前記第1の管内面で焦点を結ぶ露光光のフォーカスを可変とすることができる。
【0032】
[12−1]上記[12]において、
前記移動機構により前記光導波路を移動させながら前記露光光を前記フォトレジスト膜に照射することを特徴とする管状物の製造方法。
上記の管状物の製造方法によれば、線状パターンを露光する際に露光光の焦点位置を連続的に変化させることで太さが連続的に異なる線状パターンを描画することができる。
【0033】
[12−2]上記[11]、[12]及び[12−1]のいずれか一項において、
前記光導波路は、光ファイバーまたはフォトニック結晶を用いた光導波路であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0034】
[12−3]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[10]、[10−1]、[11]、[12]、[12−1]及び[12−2]のいずれか一項
前記露光光は、レーザー光またはLED光であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0035】
[13]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[10]、[10−1]、[11]、[12]、[12−1]乃至[12−3]のいずれか一項において、
前記第1の管は、枝状に分岐した管形状または端部の径が異なる管形状を有することを特徴とする管状物の製造方法。
【0036】
[14]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[10]、[10−1]、[11]、[12]、[12−1]乃至[12−3]、[13]のいずれか一項において、
前記フォトレジスト膜を形成する工程は、
前記第1の管の内部に先端に吐出部材を備えた第3の管を挿入し、
前記第3の管にレジスト液を供給し、前記吐出部材から前記レジスト液を吐出させながら、前記第3の管を前記第1の管から引き出しつつ前記第1の管を回転させることで、前記第1の管の内面に前記レジスト液からなるレジスト膜を塗布し、
前記レジスト膜をベークすることで前記第1の管の内面上に前記フォトレジスト膜を形成する工程であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0037】
[15]上記[14]において、
前記吐出部材は、前記第1の管の内部に前記第3の管を挿入した際に前記第1の管の内面側に位置する前記レジスト液を溜める液溜まり部を有することを特徴とする管状物の製造方法。
【0038】
[16]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[10]、[10−1]、[11]、[12]、[12−1]乃至[12−3]、[13]乃至[15]のいずれか一項において、
前記管状物はステントであることを特徴とする管状物の製造方法。
【0039】
[17]上記[5]、[5−1]乃至[5−3]、[6]、[6−1]、[7]乃至[10]、[10−1]、[11]、[12]、[12−1]乃至[12−3]、[13]乃至[16]のいずれか一項において、
前記露光光は、レーザー光またはLED光であることを特徴とする管状物の製造方法。
【0040】
[18]人体の管状の部分を管腔内部から広げるためのステントであって、
前記ステントは、電解メッキ法により形成されたメッキ膜からなることを特徴とするステント。
【0041】
[19]上記[18]において、
前記ステントは、
内面にフォトレジスト膜を塗布した第1の管の内部に、側面に開孔部を有する第2の管を挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
電解メッキ法により前記第1の管の内部よりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程を経て得られた当該メッキ膜からなる管状物であることを特徴とするステント。
【0042】
[20]上記[18]において、
前記ステントは、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンから露出する前記第1の管の内面上に電解メッキ法によりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去し、前記第1の管を除去する工程を経て得られた当該メッキ膜からなる管状物であることを特徴とするステント。
【0043】
[21]上記[18]において、
前記ステントは、
第1の管の内面に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記導電膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンから露出する前記導電膜上に電解メッキ法によりメッキ膜を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去し、前記導電膜を除去することで、前記第1の管から前記メッキ膜を離す工程を経て得られた当該メッキ膜からなる管状物であることを特徴とするステント。
【0044】
[22]人体の管状の部分を管腔内部から広げるためのステントであって、
前記ステントは、第1の管を内面側からウェットエッチングにより加工したものであり、
前記ウェットエッチングによる加工面がテーパー形状を有することを特徴とするステント。
【0045】
[23]上記[22]において、
前記ステントは、
内面にフォトレジスト膜を塗布した第1の管の内部に、側面に開孔部を有する第2の管を挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記第1の管をウェットエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程を経て得られた前記管状物であることを特徴とするステント。
【0046】
[24]上記[22]において、
前記ステントは、
第1の管の内面にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記第1の管をウェットエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記レジストパターンを除去する工程を経て得られた前記管状物であることを特徴とするステント。
【0047】
[25]上記[22]において、
前記ステントは、
第1の管の内面にメッキ膜を形成する工程と、
前記メッキ膜上にフォトレジスト膜を形成する工程と、
側面に開孔部を有する第2の管を前記第1の管内に挿入し、前記開孔部を前記フォトレジスト膜の表面と対向するように配置する工程と、
前記開孔部を通った露光光を前記フォトレジスト膜に照射する工程と、
前記フォトレジスト膜を現像することで、前記第1の管の内面の前記メッキ膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記メッキ膜をエッチングすることで、前記第1の管の内面に前記メッキ膜からなるメタルマスクを形成する工程と、
前記メタルマスクをマスクとして前記第1の管をウェットエッチングすることで管状物を形成する工程と、
前記メタルマスクから前記管状物を離す工程を経て得られた前記管状物であることを特徴とするステント。
【発明の効果】
【0048】
本発明の一態様によれば、管の内側から照射位置精度良く露光光を照射できる露光光照射装置を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、レーザー加工のような熱が加工時に発生しない管状物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための工程フローを示す図である。
図2】線状パターンを露光する方法を説明するための模式図である。
図3】本発明の一態様に係る管状物を製造する際に用いる露光光照射装置を模式的に示す断面図である。
図4図3に示す露光光照射装置を用いてフォトレジスト膜を露光する方法を説明するための斜視図である。
図5】(A)〜(H)は本発明の一態様に係る管状物の製造方法を示す断面図である。
図6】本発明の一態様に係る管状物の製造方法を実施する際の線状パターンを露光する方法を説明するための模式図である。
図7図3に示す露光光照射装置の変形例を示す断面図である。
図8】犠牲管41内にフォトレジスト膜を塗布する方法を説明するための模式図である。
図9】本発明の一態様に係る管状物を製造する際に用いる露光光照射装置を模式的に示す断面図である。
図10】(A)〜(G)は本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための図である。
図11】(A)は端部の径が異なる管形状を有する犠牲管、金属管または被加工用管を示す断面図、(B)は枝状に分岐した管形状を有する犠牲管、金属管または被加工用管を示す断面図である。
図12】本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための工程フローを示す図である。
図13】本発明の一態様に係る管状物を製造する際に用いる露光光照射装置を模式的に示す断面図である。
図14図13に示す露光光照射装置を用いてフォトレジスト膜を露光する方法を説明するための斜視図である。
図15】(A)〜(F)は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を示す断面図である。
図16図13に示す露光光照射装置の変形例を示す断面図である。
図17】被加工用管51内にフォトレジスト膜を塗布する方法を説明するための模式図である。
図18】本発明の一態様に係る管状物を製造する際に用いる露光光照射装置を模式的に示す断面図である。
図19】(A)〜(D)は本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための断面図である。
図20】(A)〜(D)は本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための断面図である。
図21】犠牲管41の内面にレジスト液を塗布する方法を詳細に説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0051】
[第1の実施形態]
図1図5は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための図である。本実施形態では、管状物としてステントを例に挙げて説明する。なお、図5に示す犠牲管41は管形状を有するが、図5では犠牲管41の一部の断面を示している。
図3及び図4に示す露光光照射装置はi線等の露光光を照射する装置であり、露光光としては例えばレーザー光またはLED光を用いることができる。
【0052】
図3及び図4に示す露光光照射装置は、ガイドパイプ(管)11と、このガイドパイプ11を矢印θpのように回転させる回転機構及び矢印xpのようにガイドパイプ11を長手方向に移動させる移動機構を備えた駆動部を有している。この駆動部にはサーボモーター等が含まれている。ガイドパイプ11の側面には露光光16aを出射する開孔部11aが形成されている。ガイドパイプ11の材質は、例えばステンレス等簡単に折れ曲がったりねじれたりしない金属であることが望ましい。
【0053】
図3に示すように、ガイドパイプ11内には光導波路として光ファイバー15aが配置されており、この光ファイバー15aは図示せぬ光源から発せられた露光光を伝送する伝送路である。光源は、露光光を発する光源であれば種々の光源を用いることができ、例えばレーザーダイオード、LED等を用いることができる。
【0054】
ガイドパイプ11内には光ファイバー15aの先端側に位置するレンズ17及び平面ミラー18が配置されている。レンズ17は露光光aを集光するものであり、例えばボールレンズ、シリンドリカルレンズ、ドラムレンズ、フレネルレンズ、半球レンズ、凸レンズ、凹レンズ、屈折率分布レンズまたそれらを組み合わせたレンズ等を用いることができる。光ファイバー15aによって伝送された露光光16aはレンズ17によって集光され、この集光された露光光16aは平面ミラー18によってガイドパイプ11の長手方向に対して90°程度進行方向が変えられて反射され、その反射したレーザー光16は開孔部11aを通ってガイドパイプ11の外側に出射される。なお、平面ミラー18は、90°偏向ミラーや集光機能を兼ね備えた非軸放物面ミラーや楕円ミラー等を用いることができる。
【0055】
光ファイバー15aをガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる移動機構(図示せず)を有している。この移動機構によってレンズ17と光ファイバー15aの先端との距離を調整することができる。これにより、ガイドパイプ11の開孔部11aから出射される露光光16aの焦点位置を、犠牲管41の内径に応じて調整することができる。例えば、犠牲管41の内面で焦点を結ぶ露光光のフォーカスを2〜200μm程度まで可変とすることができる。
【0056】
ガイドパイプ11と光ファイバー15aとの間には緩衝部材20を配置することができ、緩衝部材20は集光レンズ17を押えると共に、露光光16aの焦点を調整するために、上記移動機構によって光ファイバー15aをガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる際に移動しやすくするものである。
【0057】
なお、本実施形態では、図3に示すように緩衝部材20を平面ミラー18とガイドパイプ11との間にも配置しているが、図7に示すように平面ミラー18とガイドパイプ11との間に緩衝部材20を配置しないで実施してもよい。
【0058】
次に、ステントの製造方法について図1及び図5を参照しつつ説明する。
まず、小径のパイプ状犠牲材料である犠牲管(基材管ともいう)41を用意する。犠牲管41の外径は1mm以上40mm以下であるとよく、犠牲管41の長さは10mm以上300mm以下であるとよい。犠牲管41は、例えばプラスチックやロストワックス等を用いることができる。
【0059】
次いで、図5(A)に示すように、犠牲管41の内面41aにメッキ法、CVD法またはPVD法により導電膜42を形成する(図1のステップS1)。導電膜42は、後の電解メッキ法によるメッキ工程用の電極として機能するものである。導電膜42は、例えば金、銀、亜鉛、クロム、ニッケル、スズ、白金、銅、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択された一の金属、または前記一の金属の合金、または前記群から選択された複数の金属を含む合金等を用いることができる。
【0060】
次いで、図5(B)に示すように、犠牲管41の内面の導電膜42上にフォトレジスト膜43を図8のディスペンサー30によって塗布する。詳細には、図8に示すように、犠牲管41(第1の管ともいう)の内部に、先端に吐出部材33を備えた管31(第2の管ともいう)を挿入し、プランジャー32を矢印35の方向に押すことで、管31の先端の吐出部材33から適量のレジスト液43bを吐出させながら、管31を矢印36の方向に引きつつ犠牲管41を回転させる。更に詳細に説明すると、図21に示すように、吐出部材33は、犠牲管41の内部に管31を挿入した際に犠牲管41の内面側に位置するレジスト液を溜める液溜まり部33aを有し、管31の内部を通ったレジスト液43bが吐出部材33の液溜まり部33aで溜められ、その液溜まり部33aで溜められたレジスト液43bが犠牲管41の内面に塗布される。これにより、犠牲管41の内面の導電膜42上にレジスト液43bからなるフォトレジスト膜43を均一に塗布することができる(図1のステップS2)。次いで、フォトレジスト膜43をベークする(図1のステップS3)。このフォトレジスト膜43は、光反応性レジスト膜である。
【0061】
次いで、図5(C)に示すように、犠牲管41の内面41a上のフォトレジスト膜43に露光パターン(例えば図2に示すようなステントパターン44)を描画する(図1のステップS5)。以下に詳細に説明する。
【0062】
犠牲管41内にファイバー光源(露光光照射装置)40のガイドパイプ11を挿入し、ガイドパイプ11の開孔部11aを犠牲管41の内面のフォトレジスト膜と対向するように配置する(図3及び図4参照)。
【0063】
次いで、光ファイバー15aによって伝送された露光光16aはレンズ17によって集光され、この集光された露光光16aは平面ミラー18によってガイドパイプ11の長手方向に対して90°程度進行方向が変えられて反射され、その反射した露光光は開孔部11aを通ってガイドパイプ11の外側に出射される(図3参照)。この出射された露光光16aを図5(C)に示すように犠牲管41の内面41aのフォトレジスト膜43に照射する。この際、図4に示すように、矢印θpのようなガイドパイプ11の回転動作と、矢印xpのようなガイドパイプ11の長手方向の移動動作と、露光光16aの照射のオンとオフを組み合わせて動作させる。この回転動作と移動動作は、サーボモーター等を含む駆動部によって行われる。露光光16aの照射のオンとオフの動作は、ファイバー光源40の点灯消灯信号を連動させることによって行われる。その結果、点画の組み合せによって例えば図2に示すようなステントパターン44がフォトレジスト膜に露光パターンとして描画される。
【0064】
図2に示す矢印θpが図4に示す矢印θpのガイドパイプ11の回転動作に対応し、図2に示す矢印xpが図4に示す矢印xpのガイドパイプ11の長手方向の移動動作に対応する。また、図2に示す光源ONの点画16aが露光光16aの照射のオンに対応し、図2に示す光源OFFが露光光16aの照射のオフに対応する。これらの矢印θpの回転動作と、矢印xpの移動動作と、露光光16aの照射のオンとオフを組み合わせて動作させることで、図2に示すステントパターン44を露光パターンとして描画することができる。
【0065】
詳細には、図2に示すように、光源をショットで1点1点打ち、これが少し重なるように位置決めを行う。例えばガイドパイプ11を矢印θpに連続的に回転させながら、ガイドパイプ11を矢印xpの方向に断続的に動かし、必要とされるステントパターン44を点画で繋いで行くことにより、ステントパターン44を隙間無く複雑な制御無く描画する事が可能になる。
【0066】
この後、図5(D)に示すように、フォトレジスト膜43を現像する(図1のステップS6)。これにより、犠牲管41の内面41aにレジストパターン43aを形成することができる。
【0067】
次いで、図5(E)に示すように、レジストパターン43aから露出する導電膜42上に電解メッキ法によりメッキ膜(電鋳膜)44を形成する(図1のステップS7)。つまり、犠牲管41の内部にメッキ液(電鋳液)を流し、導電膜42に電流を流すことにより、レジストパターン43aから露出する導電膜42上にメッキ膜44が形成される。このメッキ膜44が管状物のステントとなる。なお、レジストパターン43aで保護された導電膜42上にはメッキ膜44が形成されない。なお、メッキ膜44の厚さは0.03mm以上0.3mm以下であるとよい。また、メッキ膜44は、例えばPt、PtPd、Pt合金、PtW、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、金、銀、銅等を用いることができる。
【0068】
次いで、図5(F)に示すように、犠牲管41の内面41a上のレジストパターン43aを剥離する(図1のステップS8)。
【0069】
次いで、図5(G)に示すように、導電膜42をエッチングにより除去する(図1のステップS9)。これにより、メッキ膜44を犠牲管41から除去すれば(図1のステップS10)、メッキ膜44からなる管状物のステントを製造することが可能となる(図5(H)参照)。
【0070】
その後、必要に応じてメッキ膜44からなるステントの表面研磨や端面R処理等の表面処理を施してもよいし、ステントの表面に貴金属をコーティングしてもよい。
【0071】
なお、フォトレジスト膜にはポジ型とネガ型があるため、それに応じて露光すべき領域が決められる。
【0072】
図2に示すステントパターン44の外形精度は犠牲管41の内面41a上のフォトレジスト膜43での露光光16aの焦点の大きさと位置決め精度に依存し、最小では数μm以下のレジストパターン描画が可能となる。例えば、途中で線の太さを変えて線材強度を制御した形状のステントが作製出来たり、犠牲管41の内面41aに描画可能なため、例えばバイファケーションの様な枝分かれする管の結合部分も内側から描画可能であり、これまでに無い形状が作製可能となる。
【0073】
本実施形態では、外径及び内径が一定である同径の犠牲管41を用いているが、例えば図11(A)に示すように、端部の径が異なる犠牲管を用いることも可能であり、また図11(B)に示すように、枝状に分岐した犠牲管を用いることも可能である。この場合、犠牲管の内面に露光パターンを描画可能なため、犠牲管の端部の径が異なる部分にもメッキ膜を形成することが可能であり、また犠牲管の枝状に分岐した部分にもメッキ膜を形成することが可能である。従って、従来技術では製造できない管状物を製造することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、露光光16aを犠牲管41の内面41a上のフォトレジスト膜43に照射する際に、矢印θpのような回転動作と矢印xpのような移動動作をガイドパイプ11が行っているが、ガイドパイプ11の位置を固定し、矢印θpのような回転動作と矢印xpのような移動動作を犠牲管41が行うことでもフォトレジスト膜に露光パターンを描画することができる。
【0075】
また、犠牲管41の外面上にフォトレジスト膜を塗布し、犠牲管41の外側に配置した描画ユニットにて露光パターンを描画すれば、犠牲管41の外面上にレジストパターンを形成することが可能である。この場合、犠牲管41の外面の側からのメッキ膜(電鋳膜)の形成も可能となる。
【0076】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を実施する際の線状パターンを露光する方法を説明するための模式図である。
【0077】
本実施形態では、図1のステップS5のフォトレジスト膜43に露光パターンを描画する方法が第1の実施形態と異なり、その他の部分は第1の実施形態と同様であるので、異なる部分についてのみ説明する。
【0078】
図6に示すように、ステントパターン54の内側を線画によって描画する際には、矢印θpのようなガイドパイプ11の回転動作と、矢印xpのようなガイドパイプ11の長手方向の移動動作と、移動機構によって光ファイバー15aをガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる動作を組合せて露光光16bの焦点を調整する。これにより、点画16bの大きさを大きくして線画の太さを太くしたり、点画の大きさを小さくして線画の太さを細くすることができる。その結果、ステントパターン54の内側を効率良く短時間で描画することができる。
【0079】
また、ステントパターン54の外形を線画によって描画する際には、矢印θpの回転動作と、矢印xpの移動動作と、ガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる動作を組合せて露光光16cの焦点を調整する。これにより、点画16cの大きさを小さくして線画の太さを細くすることで、ステントパターン54の外形を精度良く描画することができる。
【0080】
つまり、上記のように犠牲管41の内面で焦点を結ぶ露光光の焦点を可変にし、θp、xp、xfを全て制御しながらステントパターン54を描画することで、一区切りのパターンの外形とその内面を最小限の描画距離で書くことが出来るため、高速露光が可能となる。
【0081】
また、本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
[第3の実施形態]
図3に示す露光光照射装置では、ガイドパイプ11内にレンズ17及び平面ミラー18を配置しているのに対し、本実施形態による露光光照射装置では、図9に示すように、ガイドパイプ11内に集光ミラー19を配置する点が第1の実施形態と異なり、この点以外については第1の実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0083】
この集光ミラー19は、光ファイバー15aによって伝送された露光光16aを集光させて反射するミラーであり、例えば集光機能を兼ね備えた非軸放物面ミラーや楕円ミラーを用いることができる。
【0084】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
[第4の実施形態]
図10(A)〜(G)は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための図である。本実施形態では、管状物としてステントを例に挙げて説明する。
【0086】
まず、図10(A)に示すように、導電性を有する小径の金属管(基材管ともいう)61を用意する。金属管61の外径及び長さは第1の実施形態の犠牲管と同様である。金属管61は、例えば導電性がありかつ後の工程でエッチング可能な銅やアルミニウム、黄銅等を用いることができる。
【0087】
次いで、図10(B)に示すように、金属管61の内面61aにフォトレジスト膜43を塗布し、ベークして形成する。このフォトレジスト膜43の形成方法は、第1の実施形態と同様である。
【0088】
次いで、図10(C)に示すように、金属管61の内面61a上のフォトレジスト膜43に露光パターンを描画する。この露光パターンの描画方法は第1の実施形態と同様である。
【0089】
この後、図10(D)に示すように、フォトレジスト膜43を現像する。これにより、金属管61の内面61aにレジストパターン43aを形成することができる。
【0090】
次いで、図10(E)に示すように、レジストパターン43aから露出する金属管61上に電解メッキ法によりメッキ膜(電鋳膜)44を形成する。つまり、金属管61の内部にメッキ液(電鋳液)を流し、金属管61に電流を流すことにより、レジストパターン43aから露出する金属管61の内面にメッキ膜44が形成される。このメッキ膜44が管状物のステントとなる。なお、レジストパターン43aで保護された金属管61上にはメッキ膜44が形成されない。なお、メッキ膜44の厚さ及び材質は第1の実施形態と同様である。
【0091】
次いで、図10(F)に示すように、金属管61の内面61a上のレジストパターン43aを剥離する。これにより、メッキ膜44が金属管61から離され、メッキ膜44からなる管状物のステントを製造することが可能となる(図5(G)参照)。
【0092】
その後、必要に応じてメッキ膜44からなるステントの表面研磨や端面R処理等の表面処理を施してもよいし、ステントの表面に貴金属をコーティングしてもよい。
【0093】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
本実施形態では、外径及び内径が一定である同径の金属管61を用いているが、例えば図11(A)に示すように、端部の径が異なる金属管を用いることも可能であり、また図11(B)に示すように、枝状に分岐した金属管を用いることも可能である。この場合、金属管の内面に露光パターンを描画可能なため、金属管の端部の径が異なる部分にもメッキ膜を形成することが可能であり、また金属管の枝状に分岐した部分にもメッキ膜を形成することが可能である。従って、従来技術では製造できない管状物を製造することが可能となる。
【0095】
[第5の実施形態]
図12図15は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための図である。本実施形態では、管状物としてステントを例に挙げて説明する。なお、図15に示す被加工用管51は管形状を有するが、図15では被加工用管51の一部の断面を示している。
図13及び図14に示す露光光照射装置はi線等の露光光を照射する装置であり、露光光としては例えばレーザー光またはLED光を用いることができる。
図13及び図14において、図3及び図4と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0096】
光ファイバー15aをガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる移動機構(図示せず)を有している。この移動機構によってレンズ17と光ファイバー15aの先端との距離を調整することができる。これにより、ガイドパイプ11の開孔部11aから出射される露光光16aの焦点位置を、被加工用管51の内径に応じて調整することができる。例えば、被加工用管51の内面で焦点を結ぶ露光光のフォーカスを2〜200μm程度まで可変とすることができる。
【0097】
なお、本実施形態では、図13に示すように緩衝部材20を平面ミラー18とガイドパイプ11との間にも配置しているが、図16に示すように平面ミラー18とガイドパイプ11との間に緩衝部材20を配置しないで実施してもよい。
【0098】
次に、ステントの製造方法について図12及び図15を参照しつつ説明する。
まず、図15(A)に示すように、小径の被加工用管(基材管ともいう)51を用意する(図12のステップS1)。被加工用管51の外径は1mm以上40mm以下であるとよく、被加工用管51の厚さは0.03mm以上0.5mm以下であるとよい。また、被加工用管51の長さは10mm以上300mm以下であるとよい。被加工用管51は、例えばコバルトクロム合金、金、銀、銀合金、白金、白金合金、ニッケル合金、Ni−Ti合金、チタン、チタン合金、タンタル、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0099】
次いで、図15(B)に示すように、被加工用管51の内面51aにフォトレジスト膜53を図17のディスペンサー30によって塗布し、被加工用管51の外面51bにフォトレジスト膜53を塗布する(図12のステップS2)。詳細には、図17に示すように、被加工用管(第1の管ともいう)51の内部に、先端に吐出部材を備えた管31(第2の管ともいう)を挿入し、プランジャー32を矢印35の方向に押すことで、管31の先端の吐出部材33から適量のレジスト液43bを吐出させながら、管31を矢印36の方向に引きつつ被加工用管51を回転させる。これにより、被加工用管51の内面51aにレジスト液43bからなるフォトレジスト膜53を均一に塗布することができる。次いで、フォトレジスト膜53をベークする(図12のステップS3)。このフォトレジスト膜53は、光反応性レジスト膜である。
【0100】
次いで、被加工用管51の外面41b上のフォトレジスト膜53の全面を露光する(図12のステップS4)。なお、ネガ型レジストの場合は外面41b上のフォトレジスト膜43の全面露光を行うが、ポジ型レジストの場合は全面露光を行う必要がない。
【0101】
次いで、図15(C)に示すように、被加工用管51の内面51a上のフォトレジスト膜53に露光パターン(例えば図2に示すようなステントパターン44)を描画する(図12のステップS5)。以下に詳細に説明する。
【0102】
被加工用管51内にファイバー光源(露光光照射装置)40のガイドパイプ11を挿入し、ガイドパイプ11の開孔部11aを被加工用管51の内面のフォトレジスト膜と対向するように配置する(図13及び図14参照)。
【0103】
次いで、光ファイバー15aによって伝送された露光光16aはレンズ17によって集光され、この集光された露光光16aは平面ミラー18によってガイドパイプ11の長手方向に対して90°程度進行方向が変えられて反射され、その反射した露光光は開孔部11aを通ってガイドパイプ11の外側に出射される(図13参照)。この出射された露光光16aを図15(C)に示すように被加工用管51の内面51aのフォトレジスト膜53に照射する。この際、図14に示すように、矢印θpのようなガイドパイプ11の回転動作と、矢印xpのようなガイドパイプ11の長手方向の移動動作と、露光光16aの照射のオンとオフを組み合わせて動作させる。この回転動作と移動動作は、サーボモーター等を含む駆動部によって行われる。露光光16aの照射のオンとオフの動作は、ファイバー光源40の点灯消灯信号を連動させることによって行われる。その結果、点画の組み合せによって例えば図2に示すようなステントパターン44がフォトレジスト膜に露光パターンとして描画される。
【0104】
図2に示す矢印θpが図14に示す矢印θpのガイドパイプ11の回転動作に対応し、図2に示す矢印xpが図14に示す矢印xpのガイドパイプ11の長手方向の移動動作に対応する。また、図2に示す光源ONの点画16aが露光光16aの照射のオンに対応し、図2に示す光源OFFが露光光16aの照射のオフに対応する。これらの矢印θpの回転動作と、矢印xpの移動動作と、露光光16aの照射のオンとオフを組み合わせて動作させることで、図2に示すステントパターン44を露光パターンとして描画することができる。
【0105】
詳細には、図2に示すように、光源をショットで1点1点打ち、これが少し重なるように位置決めを行う。例えばガイドパイプ11を矢印θpに連続的に回転させながら、ガイドパイプ11を矢印xpの方向に断続的に動かし、必要とされるステントパターン44を点画で繋いで行くことにより、ステントパターン44を隙間無く複雑な制御無く描画する事が可能になる。
【0106】
この後、図15(D)に示すように、フォトレジスト膜53を現像する(図12のステップS6)。これにより、被加工用管51の内面51aにレジストパターン53aを形成することができる。
【0107】
次いで、図15(E)に示すように、レジストパターン53aをマスクとして被加工用管51をウェットエッチングすることで、レジストパターン53aから露出する被加工用管51がエッチングされ、レジストパターン53aで保護された被加工用管51が残される(図12のステップS7)。この残された部分の被加工用管が管状物のステント51cとなる。ウェットエッチングのエッチング液としては、塩酸、硝酸、硫酸、無水クロム酸、フッ化水素酸、フッ化アンモン、塩化第二鉄液、過硫酸アンモン、王水、シアン化ソーダ、過酸化水素、過硫酸塩、カ性ソーダ、及びこれらの混合液等を用いることができる。なお、ウェットエッチングにより被加工用管51を加工するため、被加工用管のエッチングされた部分にはテーパーが形成される。このテーパー形状は、ウェットエッチングの際の条件により調整することができる。
【0108】
次いで、図15(F)に示すように、被加工用管51の内面51a上のレジストパターン53a及び外面51b上のフォトレジスト膜53を剥離する(図12のステップS8)。これにより、エッチング加工された被加工用管51からなる管状物のステント51cを製造することが可能となる。
【0109】
その後、必要に応じてステント51cの表面研磨や端面R処理等の表面処理を施してもよいし、ステント51cの表面に貴金属をコーティングしてもよい。
【0110】
なお、フォトレジスト膜にはポジ型とネガ型があるため、それに応じて露光すべき領域が決められる。
【0111】
図2に示すステントパターン44の外形精度は被加工用管51の内面51a上のフォトレジスト膜53での露光光16aの焦点の大きさと位置決め精度に依存し、最小では数μm以下のレジストパターン描画が可能となる。例えば、途中で線の太さを変えて線材強度を制御した形状のステントが作製出来たり、被加工用管51の内面51aに描画可能なため、例えばバイファケーションの様な枝分かれする管の結合部分も内側から描画可能であり、これまでに無い形状が作製可能となる。
【0112】
なお、本実施形態では、露光光16aを被加工用管51の内面51a上のフォトレジスト膜53に照射する際に、矢印θpのような回転動作と矢印xpのような移動動作をガイドパイプ11が行っているが、ガイドパイプ11の位置を固定し、矢印θpのような回転動作と矢印xpのような移動動作を被加工用管51が行うことでもフォトレジスト膜に露光パターンを描画することができる。
【0113】
また、被加工用管51の外面51b上のフォトレジスト膜に、被加工用管51の外側に配置した描画ユニットにて露光パターンを描画すれば、被加工用管51の外面51b上にレジストパターンを形成することが可能である。この場合、被加工用管51の外面51b上のレジストパターンをマスクとしてエッチングすることで被加工用管51を加工してステントを形成することも可能となる。
【0114】
また、本実施形態では、外径及び内径が一定である同径の被加工用管51を用いているが、例えば図11(A)に示すように、端部の径が異なる被加工用管を用いることも可能であり、また図11(B)に示すように、枝状に分岐した被加工用管を用いることも可能である。この場合、被加工用管の内面に露光パターンを描画可能なため、被加工用管の端部の径が異なる部分をエッチング加工することが可能であり、また被加工用管の枝状に分岐した部分をエッチング加工することが可能である。従って、従来技術では製造できない管状物を製造することが可能となる。
【0115】
[第6の実施形態]
図6は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を実施する際の線状パターンを露光する方法を説明するための模式図である。
【0116】
本実施形態では、図12のステップS5のフォトレジスト膜53に露光パターンを描画する方法が第5の実施形態と異なり、その他の部分は第5の実施形態と同様であるので、異なる部分についてのみ説明する。
【0117】
図6に示すように、ステントパターン54の内側を線画によって描画する際には、矢印θpのようなガイドパイプ11の回転動作と、矢印xpのようなガイドパイプ11の長手方向の移動動作と、移動機構によって光ファイバー15aをガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる動作を組合せて露光光16bの焦点を調整する。これにより、点画16bの大きさを大きくして線画の太さを太くしたり、点画の大きさを小さくして線画の太さを細くすることができる。その結果、ステントパターン54の内側を効率良く短時間で描画することができる。
【0118】
また、ステントパターン54の外形を線画によって描画する際には、矢印θpの回転動作と、矢印xpの移動動作と、ガイドパイプ11の長手方向xfに移動させる動作を組合せて露光光16cの焦点を調整する。これにより、点画16cの大きさを小さくして線画の太さを細くすることで、ステントパターン54の外形を精度良く描画することができる。
【0119】
つまり、上記のように被加工用管の内面で焦点を結ぶ露光光の焦点を可変にし、θp、xp、xfを全て制御しながらステントパターン54を描画することで、一区切りのパターンの外形とその内面を最小限の描画距離で書くことが出来るため、高速露光が可能となる。
【0120】
また、本実施形態においても第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
[第7の実施形態]
図13に示す露光光照射装置では、ガイドパイプ11内にレンズ17及び平面ミラー18を配置しているのに対し、本実施形態による露光光照射装置では、図18に示すように、ガイドパイプ11内に集光ミラー19を配置する点が第5の実施形態と異なり、この点以外については第5の実施形態と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0122】
この集光ミラー19は、光ファイバー15aによって伝送された露光光16aを集光させて反射するミラーであり、例えば集光機能を兼ね備えた非軸放物面ミラーや楕円ミラーを用いることができる。
【0123】
本実施形態においても第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0124】
[第8の実施形態]
図19及び図20は、本発明の一態様に係る管状物の製造方法を説明するための断面図である。なお、図19及び図20は、被加工用管を長手方向に平行な面で切断した断面図である。本実施形態では、管状物としてステントを例に挙げて説明する。
【0125】
まず、図19(A)に示すように、小径の被加工用管(基材管ともいう)61を用意する。被加工用管61の外径、厚さ及び長さは第5の実施形態の被加工用管51と同様である。また、被加工用管61は、Co−Cr合金、ステンレス、Ni−Ti合金等の第5の実施形態の被加工用管51と同様の材質を用いることができる。
【0126】
次に、図19(B)に示すように、被加工用管61の内面61a及び外面61bに電解メッキ法によりメタルマスク用メッキ膜62を形成する。このメタルマスク用メッキ膜62は、後の工程で被加工用管61をエッチングする際のエッチングマスクとして用いるため、被加工用管61に対するエッチング選択比が取れる材質であればよく、例えばCu、Au、Pt及びPt合金等を用いることができる。
【0127】
次いで、図19(C)に示すように、メタルマスク用メッキ膜62上にネガ型レジスト膜63を第5の実施形態と同様の方法で塗布し、ベークする。
【0128】
次いで、被加工用管61の外面61b上のネガ型レジスト膜63の全面を露光する。
【0129】
次いで、図19(D)に示すように、被加工用管61内に露光光照射装置のガイドパイプ11を挿入し、ガイドパイプ11の開孔部を被加工用管61の内面61aのネガ型レジスト膜63と対向するように配置する。次いで、第5の実施形態と同様の方法で、ガイドパイプ11の開孔部から露光光16aを被加工用管61の内面61aのネガ型レジスト膜63に照射する。これにより、ネガ型レジスト膜63に露光パターンが描画される。
【0130】
この後、図20(A)に示すように、ネガ型レジスト膜63を現像することにより、被加工用管61の内面61aのメタルマスク用メッキ膜62上にレジストパターン63aが形成される。次いで、レジストパターン63aをマスクとしてマスク用メッキ膜62をエッチングすることで、被加工用管61の内面61aにはメタルマスク62aが形成される。
【0131】
次いで、図20(B)に示すように、レジストパターン63aを剥離する。
【0132】
次に、図20(C)に示すように、メタルマスク62aをマスクとして被加工用管61をウェットエッチングすることで、メタルマスク62aから露出する被加工用管61がエッチングされ、メタルマスク62aで保護された被加工用管61が残される。この残された部分の被加工用管が管状物のステント61cとなる。ウェットエッチングのエッチング液としては、第5の実施形態と同様のものを用いることができる。なお、ウェットエッチングにより被加工用管61を加工するため、被加工用管のエッチングされた部分にはテーパーが形成される。このテーパー形状は、ウェットエッチングの際の条件により調整することができる。
【0133】
次いで、図20(D)に示すように、ステント61cがメタルマスク62aから離され、ステント61cが製造される。
【0134】
その後、必要に応じてステント61cの表面研磨や端面R処理等の表面処理を施してもよいし、ステント61cの表面に貴金属をコーティングしてもよい。
【0135】
なお、本実施形態では、外径及び内径が一定である同径の被加工用管61を用いているが、例えば図11(A)に示すように、端部の径が異なる被加工用管を用いることも可能であり、また図11(B)に示すように、枝状に分岐した被加工用管を用いることも可能である。この場合、被加工用管の内面に露光パターンを描画可能なため、被加工用管の端部の径が異なる部分をエッチング加工することが可能であり、また被加工用管の枝状に分岐した部分をエッチング加工することが可能である。従って、従来技術では製造できない管状物を製造することが可能となる。
【0136】
本実施形態においても第5の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態では、レジストパターンに比べてエッチング耐性の高いメタルマスク62aを用いているため、エッチング加工の精度をより高くすることができる。
【0137】
なお、上記の第1〜第8の実施形態を互いに組み合わせて実施することも可能である。
【0138】
また、本実施形態に従う構造とされたステントは、Y字形の分岐形状やテーパー形状、端部厚肉形状の他、基幹筒部と分岐筒部の径寸法が異なるステントや、それら基幹筒部と分岐筒部の少なくとも一方がテーパー筒形状とされたステント、長さ方向で部分的にテーパーが付されたステントや、長さ方向の端部や中央部分に厚肉部分が設けられたステント、カバードステントのカバーを除くステント本体、長さ方向中間部分で湾曲または屈曲したステントなど、各種の異形状のステントに対して適用可能である。
【0139】
更にまた、本実施形態に従う構造とされたステントは、脳動脈瘤治療用におけるフローダイバータの場合にも適用される。フローダイバータとは、例えば脳動脈瘤の血管内治療のために改良された間隙率の低い血流迂回デバイス等のことである。また、本発明の態様に従う構造とされたステントは、ステントレトリバーシステムにおける先端部分の場合にも適用される。ステントレトリバーシステムとは、例えば網で効率よく血栓を圧しつけ絡めて取り除くための網型筒形状の血栓回収デバイス等のことである。
【0140】
更にまた、本実施形態に従う構造とされたステントは、上記製品群以外にも、脳血管用コイル、ガイドワイヤ、造影用マーカ、下大動脈フィルタ、末梢保護フィルタ、医療用クリップ、医療用針、バネ類を用いた金属で作製可能な医療機器であればあらゆる態様で採用される。
【符号の説明】
【0141】
11 ガイドパイプ(管)
11a 開孔部
15a 光ファイバー
16a 露光光、点画(レジストの液滴)
16b,16c 露光光
17 レンズ
18 平面ミラー
19 集光ミラー
20 緩衝部材
30 ディスペンサー
31 管
32 プランジャー
33 吐出部材
33a 液溜まり部
35,36 矢印
40 ファイバー光源(露光光照射装置)
41 犠牲管、円柱状部材
41a 内面
41b 側面
42 導電膜
43 フォトレジスト膜
43a レジストパターン
43b レジスト液
44 メッキ膜(電鋳膜),ステントパターン
51 被加工用管
51a 内面、被加工用管の内部
51b 外面
51c 管状物のステント
53 フォトレジスト膜
53a レジストパターン
54 ステントパターン
61 金属管,被加工用管、耐エッチング剤
61a 内面
61b 外面
61c 管状物のステント
62 メタルマスク用メッキ膜
62a メタルマスク
63 ネガ型レジスト膜
63a レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21