特許第6629046号(P6629046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629046マーキング機能を有する工具のためのマーカー用油性インキ組成物とそのためのマーカー用レフィル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629046
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】マーキング機能を有する工具のためのマーカー用油性インキ組成物とそのためのマーカー用レフィル
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20200106BHJP
   C09D 11/16 20140101ALI20200106BHJP
   B25B 23/15 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   B43K7/02
   C09D11/16
   B25B23/15
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-219805(P2015-219805)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-88724(P2017-88724A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】福尾 英敏
【審査官】 田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−000691(JP,A)
【文献】 特開2014−058021(JP,A)
【文献】 特開2006−218622(JP,A)
【文献】 特開2002−226760(JP,A)
【文献】 特開2005−179468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 7/02
B25B 23/15
C09D 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーキング機能を有するねじ部材締付け工具に着脱自在に取付けられるマーカー用レフィルであって、油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に設けたマーキング体を有し、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物を付着させて、ドット状のマーキングを付与するためのマーカー用レフィルであって、
上記マーキングチップが、その先端の開口部を内側にかしめたかしめ部を有し、上記マーキング体であるボールの一部を上記かしめ部より突出させつつ、回転自在に上記開口部内のボールハウスに抱持すると共に、上記ボールの後方に配設した付勢部材によって上記ボールを上記かしめ部の内側に押圧し、密着させてなるボールペンチップであり、
上記油性インキ組成物が有機溶媒、油溶性染料、樹脂及び変性シリコーンオイルを含み、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあり、上記変性シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルはそのポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるか、又はそのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるマーカー用レフィル。
【請求項2】
前記ねじ部材が樹脂製又は金属製である請求項1に記載のマーカー用レフィル。
【請求項3】
マーキング機能を備えたねじ部材締付け工具にマーカー用レフィルを取付け、ここに、上記マーカー用レフィルは油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に設けたマーキング体を有し、ねじ部材の締付けトルクが予め、設定した値に至ったとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物をドット状に付着させて、そこに厚みのあるマーキングを付与するねじ部材頭部表面へのマーキング方法であって、
上記マーキングチップが、その先端の開口部を内側にかしめたかしめ部を有し、マーキング体であるボールの一部を上記かしめ部より突出させつつ、回転自在に上記開口部内のボールハウスに抱持すると共に、上記ボールの後方に配設した付勢部材によって上記ボールを上記かしめ部の内側に押圧し、密着させてなるボールペンチップであり、
上記油性インキ組成物が有機溶媒、油溶性染料、樹脂及び変性シリコーンオイルを含み、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあり、上記変性シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルはそのポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるか、又はそのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるねじ部材頭部表面へのマーキング方法。
【請求項4】
前記ねじ部材が樹脂製又は金属製である請求項3に記載のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマーキング機能を有する工具のためのマーカー用油性インキ組成物とそのためのマーカー用レフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マーキング機能を有する工具が種々知られている。ここに、マーキング機能を有する工具とは、作業者がそのようなマーキング機能を工具を用いて、作業用部材による所定の作業を行い、そして、その作業が終了したときに、その作業者がその作業が終了したことを自ら確認し、また、第三者に知らしめるために、その工具の有するマーキング機能によって上記作業が終了した上記作業用部材に油性インキ組成物にてマーキングを付与することをいう。
【0003】
上述したようなマーキング機能を有する工具としては、例えば、ねじ、ビス、ボルト、ナット等の金属製や樹脂製のねじ部材を作業用部材として用いるねじ部材締付け作業において、ねじ部材の締付けトルクが予め、設定した値に達したとき、マーカー用の油性インキ組成物を収容したマーカー用レフィルの有するマーキング手段、例えば、上記油性インキ組成物を収容したフェルトペン構造のマーカーを上記ねじ部材頭部表面に当接させて、そこに上記油性インキ組成物にてマーキングを付与するマーキング機能を備えたねじ部材締付け工具、例えば、トルクドライバー、トルクレンチ、インパクトレンチ等が種々、知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0004】
そこで、マーキング機能を有する工具として、上記マーキング機能を有するねじ部材締付け工具について説明すれば、そのような工具は、その内部に取替え自在に装着し、又は工具の外部に取替え自在に装着したマーカー用レフィルを有し、このマーカー用レフィルは、先端にマーキング体を備えたマーキングチップを有し、ねじ部材の締付けトルクが予め、設定した値に達したとき、上記マーキング体をねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体に供給されるインキ組成物を上記ねじ部材頭部に塗布してマーキングを付与する。
【0005】
より詳しくは、上述したようなマーキング機能を有するねじ部材締付け工具は、ねじ部材の締付け作業において、締付けトルクが予め、設定した値に達したとき、上記マーカー用レフィルを上記ねじ部材に向かって前進させ、先端のマーキング体をねじ部材頭部表面に当接させて、そこに上記油性インキ組成物を塗布し、付着させて、マーキングを付与し、そして、このようにして、マーキング体がねじ部材の頭部にマーキングを付与した後、上記マーカー用レフィルを締付け工具における当初の位置に復帰させ、次の締付けに備えさせる適宜の機構や手段を備えている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0006】
従来、知られているマーキング機能を有するねじ部材締付け工具においては、上記マーカー用レフィルの先端のマーキングチップが有するマーキング体は、代表的には、上述したように、先端がフェルトペン構造を有している。
【0007】
即ち、従来のマーキング機能を有するねじ部材締付け工具においては、マーカー用の油性インキ組成物はインキ収容部からマーキングチップ内を毛細管現象によって先端のフェルトペン構造を有するマーキング体に常時、供給されており、マーキング体がねじ部材頭部に当接したとき、上記マーキング体が油性インキ組成物をねじ部材頭部に塗布してマーキングを付与する。
【0008】
ここに、上記油性インキ組成物は、通常、速乾性のものである。従って、上述したようなフェルトペン構造のマーキング体をマーキングに用いる従来のマーキング機能を有するねじ部材締付け工具は、これをマーキング機能を使用することなしに、そのまま、長期間にわたって放置したとき、マーキング体の表面やその近傍において油性インキ組成物が乾燥し、固化して、ねじ部材の締付け作業において、工具の有する上記マーキング機能が働かなくなることが往々にしてある。
【0009】
一方において、金属表面や樹脂表面のような非吸収性の表面に筆記性を有するマーキングペン用油性インキ組成物は既に知られている。例えば、アルコール溶媒やグリコールエーテル溶媒に油溶性染料と樹脂と変性シリコーンオイルを溶解させてなるマーキングペン用油性インキ組成物が知られている(例えば、特許文献8及び9参照)。
【0010】
これらのマーキングペン用油性インキ組成物は、フェルトペン構造のマーキング体を備えたマーカーに用いるときは、上記非吸収性の表面に滑らかに線を描くことはできるが、そのようなマーキングペン用油性インキ組成物を、例えば、ボールペンチップを備えた筆記具に用いても、上記油性インキ組成物は粘度が低すぎるので、インキ組成物がボールペンチップ先端から過度に流出して、上記非吸収性の表面で広がるので、上述したようなねじ部材締付け工具のためのマーキングに用いることはできない。
【0011】
特に、従来、知られているマーキング用油性インキ組成物によっては、金属や樹脂からなる非吸収性のねじ部材頭部表面のような狭小な部位に厚みがあり、立体的であって、視認性にすぐれるマー吸収キングを付与することは困難である。
【0012】
他方、従来のボールペン用油性インキ組成物は、通常、金属や樹脂からなる非吸収性の表面にマーキングすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2014−58021号公報
【特許文献2】特開2014−100756号公報
【特許文献3】特開平07−100771号公報
【特許文献4】特開平10−128678号公報
【特許文献5】特開2013−119132号公報
【特許文献6】特開2014−100756号公報
【特許文献7】特開2007−015052号公報
【特許文献8】特開平11−21492号公報
【特許文献9】特開平11−21493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述したような従来のマーキング機能を備えた工具における問題、特に、マーキング機能の不使用の間に、フェルトペン構造のマーキング体において、油性インキ組成物が乾燥し、固化して、マーキング機能が働かなくなる問題を解決し、更には、従来のマーキング用油性インキ組成物によっては、工具を用いる作業用部材による所定の作業が終了した後、その作業の終了した作業用部材の狭小な箇所、例えば、作業用部材が金属製や樹脂製のねじ部材であれば、その頭部の狭小な表面に厚みがあって、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを付与することが困難である問題を解決するためになされたものである。
【0015】
即ち、本発明は、マーキング機能の不使用時には、マーキング体へのインキ組成物の供給が阻止されるが、工具を用いる作業用部材による所定の作業が終了したとき、例えば、ねじ部材締付け工具による金属製や樹脂製のねじ部材の締付け作業においては、ねじ部材の締付け作業を行って、ねじ部材締付けトルクが予め、設定した値に達したときに、マーキング体にインキ組成物が供給されて、上記インキ組成物を上記作業用部材、例えば、上記ねじ部材頭部表面にドット状に塗布して、上記作業用部材、例えば、上記ねじ部材頭部表面に厚みがあって、立体的で視認性にすぐれるマーキングを付与することができ、かくして、マーキング機能の不使用の間のマーキング体におけるインキの乾燥、固化を防止することができ、そのうえ、場合によっては、油分等が塗布されていることもある上記作業用部材、例えば、上記ねじ部材の頭部表面にインキ組成物の弾きや走り等のばらつきなしに、上述したように、厚みを有し、立体的で、視認性にすぐれるドット状のマーキングを付与することができる、マーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物と、そのような油性インキ組成物を収容し、先端にマーキング体を有し、上記マーキング機能を有する工具に取付けて用いる、マーカー用レフィルを提供することを目的とする。
【0016】
更に、本発明は、上述したように、マーキング機能を備えた工具に上記マーカー用レフィルを取付けて、作業の終了した作業用部材にマーキングを付与する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明において、上記作業としては、例えば、家電製品、自動車、配電基盤等の製造工程における種々の組立作業や、また、土木、建設現場等でのねじ、ビス、ボルト、ナット等のねじ部材締付け作業を挙げることができる。
【0018】
また、本発明において、上記作業用部材やねじ部材は、少なくともマーキングを付与すべき表面が金属や樹脂からなる非吸収性表面を有し、通常は、上記作業用部材やねじ部材自体はその表面が金属や樹脂からなり、従って、マーキングを付与すべき表面は非吸収性である。
【0019】
本発明によれば、マーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物、即ち、作業者がそのようなマーキング機能を工具を用いて作業用部材による所定の作業を行い、そして、その作業が終了したときに、当該作業の終了した作業用部材の表面にマーキングを付与するための油性インキ組成物であって、有機溶媒、油溶性染料、樹脂及び変性シリコーンオイルを含み、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあり、上記変性シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルはそのポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるか、又はそのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルである油性インキ組成物が提供される。
【0020】
本発明による上記油性インキ組成物は、20℃において、粘度が10〜24mPa・sの範囲にあることが好ましく、特に、15〜24mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0021】
また、本発明による上記油性インキ組成物においては、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、そのポリエーテル基のすべて、即ち、ポリエーテル基の100重量%がポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであることが好ましい。
【0022】
更に、本発明による上記油性インキ組成物は、上記変性シリコーンオイルをインキ組成物に基づいて、0.1〜4.5重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明による上記油性インキ組成物においては、上記有機溶媒は、アルキレングリコール及び炭素原子数1〜3の脂肪族低級アルコールから選ばれるす少なくとも1種であることが好ましく、特に、上記有機溶媒が70重量%以上のプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むものであることが好ましい。
【0024】
上記樹脂は、ケトン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン−有機酸共重合体樹脂及びポリアクリル酸エステル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
また、本発明によれば、マーキング機能を有する工具に着脱自在に取付けられるマーカー用レフィルであって、上述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に設けたマーキング体を有し、上記工具による作業用部材を用いる所定の作業が終了したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記作業用部材に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記作業用部材に上記油性インキ組成物を付着させて、ドット状のマーキングを付与するためのマーカー用レフィルが提供される。
【0026】
特に、本発明によれば、上記マーカー用レフィルのより好ましい態様として、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具に着脱自在に取付けられるマーカー用レフィルであって、上述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に保持したマーキング体を有し、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物を付着させて、ドット状のマーキングを付与するためのマーカー用レフィルが提供される。
【0027】
本発明による上記マーカー用レフィルにおいて、上記マーキングチップの好ましい一例は、その先端の開口部を内側にかしめたかしめ部を有し、マーキング体であるボールの一部を上記かしめ部より突出させつつ、回転自在に上記開口部内のボールハウスに抱持すると共に、上記ボールの後方に配設した付勢部材によって上記ボールを上記かしめ部の内側に押圧し、密着させてなるものである。
【0028】
本発明によるマーカー用レフィルにおいて、上記マーキングチップの別の好ましい一例は、円柱体とその先端方向に向かって延設した、先端方向に断面が小さくなる錐体をマーキング体として有し、上記錐体を上記マーキングチップの先端の開口部より一部を突出させつつ、進退自在に保持し、上記円柱体は環状溝を有し、上記環状溝に弾性材料からなる環状部材を環状弁体として嵌装し、上記錐体の後方に配設した付勢部材によって上記錐体を上記開口部の内壁面に押圧し、密着させると共に、上記円柱体に設けた環状弁体を上記開口部の内側内壁面に押圧し、密着させてなるものである。
【0029】
本発明においては、上記錐体は円錐体又は角錐体であることが好ましい。
【0030】
更に、本発明によれば、マーキング機能を備えた工具に上述したマーカー用レフィルを取付け、ここに、上記マーカー用レフィルは上記油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に設けたマーキング体を有し、上記工具による作業用部材を用いる所定の作業が終了したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記作業の終了した作業用部材に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記作業用部材の表面に上記油性インキ組成物をドット状に付着させて、そこに厚みがあって、視認性にすぐれるマーキングを付与するマーキング方法であって、上記油性インキ組成物が上述したものであるマーキング方法が提供される。
【0031】
特に、本発明によれば、上記マーキング方法の好ましい態様として、マーキング機能を備えたねじ部材締付け工具を用いるねじ部材の締め付け作業が終了した後、上記ねじ部材頭部表面にマーキングを付与する方法であって、上記ねじ部材締付け工具にマーカー用レフィルを取付け、ここに、上記マーカー用レフィルは上述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に保持させたマーキング体を有し、ねじ部材の締付けトルクが予め、設定した値に至ったとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物をドット状に付着させて、そこに厚みがあって、視認性にすぐれるマーキングを付与するねじ部材頭部表面へのマーキング方法が提供される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物によれば、作業用部材の表面に油分等が塗布されているような場合であっても、作業の終了後に当該作業用部材の表面に弾きや走りなしに、上記インキ組成物をドット状によく付着させて、厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを安定して付与することができる。
【0033】
特に、本発明によるマーキング機能を有するねじ部材締付け工具のための油性インキ組成物によれば、油分等が塗布されていることもある金属製や樹脂製のねじ部材頭部表面に、ねじ部材の締付け作業の終了後に、弾きや走りなしに、上記インキ組成物をドット状によく付着させて、厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを安定して付与することができる。
【0034】
本発明によるマーキング機能を有する工具のためのマーカー用レフィルは、上述したような油性インキ組成物を収容しており、上記工具による作業用部材の所定の作業が終了したときに限って、マーカー用レフィルの有するマーキングチップのマーキング体に上記油性インキ組成物が供給されて、上記作業終了後の作業用部材の表面に厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを付与することができる。
【0035】
特に、本発明によるマーキング機能を有するねじ部材締付け工具のためのマーカー用レフィルは、上述したような油性インキ組成物を収容しており、締付け工具によるねじ部材締付け作業において、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したときに限って、マーカー用レフィルの有するマーキングチップのマーキング体に上記油性インキ組成物が供給されて、上記ねじ部材頭部表面に厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングが付与される。
【0036】
従って、本発明によるマーキング機能を有する工具、例えば、ねじ部材締付け工具のためのマーカー用レフィルによれば、マーキング機能の不使用の間、上記油性インキ組成物はマーキング体に供給されることがないので、従来のマーキング機能を有する工具におけるフェルトペン構造のマーキング体のように、油性インキ組成物がマーキング体の表面やその近傍において乾燥し、固化して、マーキング機能を阻害するようなことがなく、作業終了後の作業用部材、例えば、締付け作業の終了したねじ部材頭部表面にインキ組成物の弾きや走りなしに、厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを安定して付与することができる。
【0037】
また、本発明によるマーキング方法によれば、工具による作業用部材を用いる所定の作業が終了したときに限って、マーカー用レフィルの有するマーキングチップのマーキング体に油性インキ組成物が供給されて、上記作業用部材の表面に厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを付与することができ、従来のマーキング機能を有する工具におけるフェルトペン構造のマーキング体のように、油性インキ組成物がマーキング体の表面やその近傍において乾燥し、固化して、マーキング機能を阻害するようなことがない。
【0038】
特に、本発明によるマーキング方法によれば、マーキング機能の不使用の間、上記油性インキ組成物はマーキング体に供給されることがないので、従来のマーキング機能を有するねじ部材締付け工具におけるフェルトペン構造のマーキング体のように、油性インキ組成物がマーキング体の表面やその近傍において乾燥し、固化して、マーキング機能を阻害するようなことがなく、締付け作業の終了したねじ部材頭部表面にインキ組成物の弾きや走りなしに、厚みがあり、立体的で、視認性にすぐれ、好ましい場合には、形状がいわば半球状であるマーキングを安定して付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明によるマーカー用レフィルの一例を示す一部断面正面図である。
図2】本発明によるマーキングチップの一例であるボールペンチップの先端部を示す断面図である。図(a)は縦断面図である。図(b)は図(a)のA−A面における横断面図であるが、ボールは示していない。
図3】本発明によるマーキングチップの一例である上記ボールペンチップにおけるボールの状態と作動を示す断面図である。図(a)はボールがボールペン先端方向に付勢部材によって付勢されて、ボールハウスのかしめ部の内側に押圧され、密着している状態を示す。図(b)はボールがねじ部材頭部表面に当接して、付勢部材に抗して、ボールハウスのかしめ部の内側から離脱している状態を示す。
図4】本発明によるマーキングチップの別の一例である錐体マーキングチップの先端部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(油性インキ組成物)
本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物は、作業者がそのようなマーキング機能を有する工具を用いて作業用部材による所定の作業を行い、そして、その作業が終了したときに、その作業者がその作業が終了したことを自ら確認し、また、第三者に知らしめるために、その工具の有するマーキング機能によって上記作業が終了した上記作業用部材に油性インキ組成物にてマーキングを付与するための油性インキ組成物である。
【0041】
本発明によるそのようなマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物、好ましくは、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具のための油性インキ組成物は、有機溶媒、油溶性染料、樹脂及び変性シリコーンオイルを含み、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあり、上記変性シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルはそのポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その合計量の50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるものである。
【0042】
(有機溶媒)
本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物は、マーキングチップが所定の作業の終了した作業用部材、例えば、金属製や樹脂製のねじ部材頭部表面に当接して、ドット状に塗布したとき、速やかに乾燥して、厚みがあって、立体的で、視認性にすぐれるマーキングを形成するように、有機溶媒は、アルキレングリコール及び炭素原子数1〜3の脂肪族低級アルコールから選ばれるす少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
上記アルキレングリコールエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができるが、なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましく、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0044】
上記炭素原子数1〜3の脂肪族低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができるがなかでも、エタノールやイソプロパノールが好ましい。
【0045】
特に、本発明においては、有機溶媒は、有機溶媒に基づいて、70重量%以上がプロピレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましい。
【0046】
例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルを70重量%以上含み、必要に応じて、上記炭素原子数3以下の脂肪族低級アルコールとプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む有機溶媒は、本発明においてにおいて好ましく用いられる有機溶媒である。
【0047】
上記炭素原子数3以下の脂肪族低級アルコール、特に、エタノールは油性インキ組成物を速乾性とするために好ましい有機溶媒であるが、しかし、エタノールを単独で有機溶媒として用いてなる油性インキ組成物は、所定の粘度を有し難く、また、エタノールは吸水しやすいので、作業の終了した作業用部材の表面、例えば、締付けの終了したねじ部材頭部表面に塗布して、塗膜を付与したとき、塗膜から蒸発する際の気化熱によって、塗膜表面の空気が冷却され、塗膜表面で結露して、その結果、塗膜表面の樹脂が不溶化して、塗膜が白化することがある。
【0048】
そこで、本発明においては、有機溶媒としてエタノールを用いるときは、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテルと併用して、有機溶媒の蒸発速度を幾分遅らせると共に、水分をプロピレングリコールモノn−ブチルエーテルと一緒に蒸発させることによって、油性インキ組成物の速乾性を確保しつつ、塗膜の白化を防ぐことが好ましい。
【0049】
本発明による油性インキ組成物は、上述したような有機溶媒を、通常、50〜90重量%の範囲で含み、好ましくは、55〜80重量%の範囲で含む。油性インキ組成物における有機溶媒の割合が多すぎるときは、マーキングの濃度が小さく、視認性に劣る。一方、インキ組成物における有機溶媒の割合が少なすぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が過度に大きくなって、マーキングを安定して行うことが困難になる。
【0050】
(染料)
本発明による油性インキ組成物において、着色剤としては、前記有機溶媒に溶解し得る油溶性染料が用いられる。また、上記有機溶媒に溶解し得る溶解助剤(可溶化剤)を用いて、上記有機溶媒に溶解させることができる染料も好適に用いられる。
【0051】
本発明による油性インキ組成物において用いることができる油溶性染料の具体例として、例えば、油溶性赤色染料(オリエント化学工業(株)製バリファストレッド1308等)、油溶性青色染料(オリエント化学工業(株)製オイルブルー613、オイルブルーBA等)、油溶性黄色染料(保土谷化学工業(株)製スピンイエローC−GNH等)を挙げることができる。
【0052】
本発明において、上記油溶性染料は、油溶性インキ組成物に基づいて、通常、1〜15重量%の範囲で用いられ、好ましくは、2〜12重量%の範囲で用いられる。油溶性インキ組成物における染料の含有量が多すぎるときは、得られるインキ組成物の粘度が高すぎて、安定してマーキングを行うことができない。しかし、油溶性インキ組成物における染料の含有量が少なすぎるときは、マーキングの色濃度が低く、視認性に劣る。
【0053】
(樹脂)
本発明による油性インキ組成物は、前記油溶性有機溶媒に溶解し得る樹脂を含む。この樹脂は、本発明による油性インキ組成物において、分散剤として機能するほか、金属製や樹脂製ねじ部材頭部表面への本発明による油性インキ組成物による塗膜に定着性を与える機能を有する。
【0054】
上記樹脂は、前記有機溶媒に溶解する樹脂であれば、いずれでも用いることができる。具体例として、例えば、ケトン樹脂や、アルキルフェノール樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のフェノール系樹脂、また、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、ロジン変性キシレン樹脂等のキシレン系樹脂、更には、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン−有機酸共重合体樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明によれば、上記樹脂は、油性インキ組成物に基づいて、3〜30重量%の範囲、好ましくは、5〜25重量%の範囲で用いられる。インキ組成物における樹脂の含有量が少なすぎるときは、インキ組成物による塗膜が作業用部材の表面、特に、金属や樹脂からなるねじ部材頭部表面への定着性に劣るおそれがある。しかし、インキ組成物における樹脂の含有量が余りに多いときは、得られるインキ組成物が過度に高い粘度を有し、その結果、作業用部材の表面、例えば、上記ねじ部材頭部表面に安定してマーキングを施すことが困難となる。
【0056】
(変性シリコーンオイル)
本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物は変性シリコーンオイルを含む。本発明において、上記変性シリコーンオイルは、ポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルは、それが有するポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるか、又はそのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルである。
【0057】
本発明において、上記変性シリコーンオイルは、特に、金属や樹脂からなる作業用部材、例えば、金属製や樹脂製のねじ部材頭部表面に前記油性インキ組成物をドット状に塗布したとき、インキ組成物の広がりを防止して、厚みがあり、立体的であって、視認性にすぐれる塗膜、即ち、マーキングを付与する機能を有し、本発明においては、インキ組成物に基づいて、0.1〜4.5重量%、好ましくは、0.5〜4重量%の範囲で用いられる。
【0058】
インキ組成物における上記変性シリコーンオイルの含有量が少なすぎるときは、安定して、厚みのある立体的なマーキングを特に、金属製や樹脂製の作業用部材、例えば、ねじ部材頭部表面に形成することができない。しかし、インキ組成物における変性シリコーンオイルの含有量が余りに多いときは、得られるインキ組成物が過度に高い粘度を有し、その結果、特に、金属製や樹脂製の作業用部材、例えば、ねじ部材頭部表面に安定してマーキングを施すことが困難となる。
【0059】
特に、本発明においては、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、そのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルが好ましく用いられる。ポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルは、ポリオキシプロピレン基が多いので、得られるインキ組成物が金属や樹脂からなる非吸収性の表面に対するなじみが弱く、より厚みのある立体的なマーキングを付与することができる。
【0060】
上記変性シリコーンオイルは市販品として入手することができる。ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるTEGO Glide A115(エボニック・デグサ社)やTSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)、ポリエーテル基の50重量%がポリオキシエチレン基であり、残余の50重量%がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるTSF4450(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)等を挙げることができる。
【0061】
また、カルボキシル変性シリコーンオイルとしては、例えば、TSF4770(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)等を挙げることができる。
【0062】
上述した変性シリコーンオイルの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、通常、1000〜30000の範囲であり、好ましくは、2000〜20000の範囲である。
【0063】
(粘度)
本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物は、20℃において、粘度が8〜25mPa・sの範囲にあることが必要である。上記粘度は、コーン・プレート型粘度計を用いて、20℃で測定した粘度である。
【0064】
本発明によるインキ組成物は、上記変性シリコーンオイルを含むと共に、上記範囲の粘度を有することによって、マーカー用レフィルの有するマーキング体を金属製や樹脂製の作業用部材の表面に当接させたときに、上記マーキング体がマーキングチップの開口部において後退して、マーキング体と開口部内壁面との間に空隙を生じ、その結果、マーカー用レフィルのインキ収容管に収容されているインキ組成物がマーキング体に供給され、マーキング体がインキ組成物を上記金属製や樹脂製の作業用部材の表面、例えば、ねじ部材頭部表面にドット状に塗布して、厚みのある立体的なマーキングを安定して形成する。
【0065】
特に好ましくは、本発明によるマーキング機能を有するねじ部材締付け工具のための油性インキ組成物は、10〜24mPa・sの範囲にあり、最も好ましくは、15〜24mPa・sの範囲にある。
【0066】
(その他の成分)
本発明による油性インキ組成物は、必要に応じて、例えば、蔗糖安息香酸エステル等のような可塑剤や、また、粘度調整剤、構造粘性付与剤、染料可溶化剤、乾燥性付与剤等を適宜量、含んでいてもよい。
【0067】
(製造)
本発明による油性インキ組成物は、その製造方法において何ら制限されるものではないが、例えば、次のような方法によって製造することができる。
【0068】
即ち、有機溶媒と樹脂とを加熱下に攪拌混合して、樹脂を有機溶媒に溶解させ、次いで、染料と、必要に応じて、その他の添加剤を加え、加熱下に攪拌混合し、その後、常温下、変性シリコーンオイルを加え、均一に攪拌混合すれば、本発明による油性インキ組成物を得ることができる。
【0069】
(マーカー用レフィル)
本発明によるマーカー用レフィルは、マーキング機能を有する工具に着脱自在に取付けられるレフィルであって、前述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に設けたマーキング体を有し、工具による作業用部材を用いる所定の作業が終了したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記作業用部材に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記作業用部材の表面に上記油性インキ組成物を付着させて、ドット状のマーキングを付与するためのものである。
【0070】
上記油性インキ組成物は、前述したように、有機溶媒、油溶性染料、樹脂及び変性シリコーンオイルを含み、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあり、上記変性シリコーンオイルがポリエーテル変性シリコーンオイルとカルボキシル変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であり、上記ポリエーテル変性シリコーンオイルはそのポリエーテル基がポリオキシエチレン基とポリオキシプロピレン基からなり、その50重量%以上がポリオキシプロピレン基であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるか、又はそのポリエーテル基がすべてポリオキシプロピレン基であるポリオキシプロピレン変性シリコーンオイルであるものである。
【0071】
本発明によるマーカー用レフィルは、前述したように、マーキング機能を有する工具に着脱自在に取付けられるレフィルであり、好ましくは、ねじ部材締付け工具に着脱自在に取付けられるレフィルであって、前述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管と上記インキ収容管の先端に取付けたマーキングチップと上記マーキングチップの先端に保持させたマーキング体を有し、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物を付着させて、ドット状のマーキングを付与するためのものである。
【0072】
以下に本発明によるマーカー用レフィルの具体例として、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具に着脱自在に取付けられるマーカー用レフィルについて、詳細に説明する。
【0073】
本発明によるマーカー用レフィルは、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具に着脱自在に取付けられるものであって、前述した油性インキ組成物を収容したインキ収容管とその先端に、必要に応じて、適宜のホルダーを介して、取付けたマーキングチップを有する。
【0074】
上記マーキングチップは、その先端の開口部からマーキング体の先端部を突出させつつ、マーキング体を進退自在に抱持しており、上記マーキング体がねじ部材頭部表面に当接したとき、マーキング体がねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物をドット状に塗布して、上記ねじ部材表面に厚みがあり、立体的で視認性にすぐれるマーキングを形成する。
【0075】
ねじ部材を締付けて、締付けトルクが予め、設定した値に達したとき、上記マーカー用レフィルをねじ部材頭部に向かって前進させ(下降させ)、マーキングチップの先端部のマーキング体を上記ねじ部材頭部表面に当接させて、マーキングチップに供給される油性インキ組成物を上記ねじ部材頭部表面に塗布して、そこにマーキングを付与する機能を備えた締付け工具は、前述したように、既に、種々のものが知られている。
【0076】
以下において、マーカー用レフィルが「前進する」とは、マーカー用レフィルが当初の位置からねじ部材頭部(即ち、作業用部材)に向かって移動することをいい、通常、当初の位置からねじ部材頭部(即ち、作業用部材)に向かって「下降する」ことと同義である。マーカー用レフィルが当初の位置に「後退する」とは、マーカー用レフィルの有するマーキング体がねじ部材頭部表面(即ち、作業用部材)に当接している状態から、マーカー用レフィルが上記当初の位置に「復帰する」ことをいい、当初の位置まで「戻る」ことと同義であり、通常、「上昇する」ことと同義である。
【0077】
また、「マーキングチップの先端部の開口部からマーキング体の先端部を突出させつつ、マーキング体を進退自在に抱持している」とは、「マーキング体がチップの先端の開口部から突出しつつ、チップの軸方向に前進、後退し得るように保持されている」ことをいい、「前進する」とは、「チップ先端の開口部から一部突出しているマーキング体が開口部から外側方向に向かって更に移動する」ことをいい、「後退する」とは、「チップ先端の開口部から一部突出しているマーキング体が開口部の内側方向に向かって移動して、当初の位置に復帰する」ことをいう。
【0078】
本発明によるマーキング機能を有するねじ部材締付け工具は、ねじ部材頭部表面にマーキングを付与するための油性インキ組成物を収容したマーカー用レフィルを取替え自在に工具の内部に有し、又は工具の外部に取替え自在に付設されている。
【0079】
既に、種々の機構や手段が知られているので、その詳細は省略するが、本発明においても、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具は、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したとき、上記マーカー用レフィルをねじ部材方向に前進(下降)させて、マーキング体をねじ部材頭部に当接させ、これによって、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物をドット状に付着させ、マーキングを施した後、上記マーカー用レフィルを締付け工具における当初の位置に後退(上昇)させ、復帰させる機構を備えている。
【0080】
即ち、本発明によるマーカー用レフィルは、その先端のマーキング体がねじ部材頭部表面に当接し、次いで、ねじ部材頭部表面から離れる間に、マーキング体が当接した箇所に厚みのある立体的な塗膜、即ち、マーキングを形成し、付与する。
【0081】
ここにおいて、本発明によるマーキング機能を有する工具のための油性インキ組成物は、前述した変性シリコーンオイルを成分として所定量を含有すると共に、20℃において、限られた範囲の粘度、即ち、8〜25mPa・s、好ましくは、10〜24mPa・s、最も好ましくは、15〜24mPa・sの範囲の粘度を有することによって、マーキング体が所定の作業の終了した作業用部材、例えば、ねじ部材頭部表面に当接したとき、そこにインキ組成物をドット状に付着させ、厚みがあり、立体的で視認性にすぐれる塗膜、即ち、マーキングを付与することができる。


【0082】
ボールペン用油性インキ組成物は、有機溶媒として、通常、高沸点有機溶媒を主溶媒としており、従って、高粘度を有し、通常、20℃で粘度が約8000〜14000mPa・s程度であって、紙のような吸収性表面への筆記に適している。即ち、ボールペン用インキ組成物にて紙のような吸収性表面に筆記したとき、その筆跡はインキ組成物は紙の内部に浸透することによって乾燥するものである。従って、ボールペン用インキ組成物によっては、金属や樹脂からなるねじ部材頭部表面のような非吸収性の表面には筆記できず、また、仮にボールペン用インキ組成物を塗布しても、インキ組成物は乾燥しない。
【0083】
一方、油性マーキングペン用インキ組成物は、ボールペン用油性インキ組成物に比較して、著しく低い粘度、例えば、5mPa・s程度の粘度を有するので、ボールペンチップを備えたレフィルに上記従来の油性マーキングペン用インキ組成物を充填し、マーキング体であるボールを金属や樹脂からなるねじ部材頭部表面のような非吸収性の表面に当接させれば、インキ組成物が過度に流出して、上記表面で広がるので、ドット状のマーキングを形成することができず、まして、厚みのある立体的なマーキングを形成することができない。
【0084】
図1は、本発明によるマーキング機能を有する工具用のマーカー用レフィル1の一例を示す。マーカー用レフィルは、円筒状のインキ収容管2の先端に適宜のホルダー3を介してマーキングチップ4を取付けてなり、上記マーキングチップはその先端の開口部にマーキング体5を抱持している。
【0085】
図1に示すマーカー用レフィルにおいては、マーキングチップ4として、後述するボールペンチップを示しており、従って、マーキング体5は、ボールペンチップの先端の開口部から一部突出しつつ、開口部(後述するボールハウス)において進退自在に抱持されているボールである。
【0086】
マーカー用レフィルの有するインキ収容管内には油性インキ組成物6が収容されており、上記インキ組成物が逆流しないように、収容されているインキ組成物の消費に併せて、インキ組成物に追随する逆流防止体7がンキ組成物の後端にインキ組成物に接触して、インキ収容管内に配設されている。また、インキ収容管の後端には、通常、栓体8が取付けられている。
【0087】
本発明において、マーカー用レフィルが有するマーキングチップの好ましい第1の例は、その先端の開口部を内側にかしめたかしめ部を有し、マーキング体であるボールの一部を上記かしめ部より突出させつつ、回転自在に上記開口部の内部のボールハウスに抱持すると共に、上記ボールの後方に配設した付勢部材によって上記ボールを上記かしめ部の内側に押圧し、密着させてなるボールペンチップであり、上記ボールをねじ部材頭部のような作業用部材の表面に当接させたときは、ボールは上記付勢部材に抗して、ボールハウス内に後退する。
【0088】
図2は、上述したように、上記マーカー用レフィルが有するマーキングチップの好ましい一例としてのボールペンチップ9の先端部を示す。ボールペンチップは、その先端部に開口部10を有し、外形が略円錐状の筒体をなし、上記開口部は内側にかしめた環状のかしめ部11を有し、このように開口部を形成する環状のかしめ部を含む開口部の内側の空間はボールハウス12に形成されている。上記ボールハウスは、マーキング体であるボール5の一部を上記ボールペンチップの先端の開口部10より突出させつつ、上記ボールを回転自在に抱持している。上記ボールハウスの後方には中心孔13が軸方向に延びて、前記レフィルのインキ収容管に連通するように形成されている。
【0089】
図2(a)に示すように、上記ボールハウス12は、上記かしめ部11に連続する側壁面14と接続面15と座面16に囲まれた空間であって、上記側壁面は上記環状に開口部を形成するかしめ部に連続して軸方向に延びる壁面であり、上記接続面は上記側壁面に連続して略水平に延びる壁面である。更に、上記接続面から連続して上記座面が環状に形成されて、ボールハウスを形成している。後述するように、マーキング体であるボールがねじ部材頭部表面に当接して、付勢部材19に抗してボールハウス内を後退したときに、上記座面がボールを支持する。
【0090】
上述したように、上記ボールハウスの後方には、中心孔13が軸方向に延びており、この中心孔の外周に前記インキ収容管内に連通するように矢溝17が軸方向に延びて形成されていて、インキ収容管内のインキ組成物が上記矢溝によってボールハウスに供給されている。図2(b)には3本の矢溝17が示されている。
【0091】
図3は、ボールハウス12におけるボール5の状態と作動を示す。図3に示すように、上記ボールは付勢部材、図3においては、コイルばね18から伸びる棒体19にてチップの先端方向、即ち、開口部10の方向に付勢されて、上記先端の環状の開口部を形成するかしめ部11の内側に密着しているので、インキ組成物はボールハウス内にとどまっている。上記ボールハウスは、その後方の前記中心孔13に連なり、上述したように、上記中心孔には矢溝16が軸方向に延びて、前記インキ収容管と連通するように形成されていて、前記インキ収容管からボールハウス内に油性インキ組成物が供給される。
【0092】
このようなボールペンチップによれば、図3(b)に示すように、マーカー用レフィルが所定の作業の終了した作業用部材、例えば、ねじ部材頭部方向に前進して、ボール5が上記作業用部材の表面、例えば、ねじ部材頭部表面に当接すれば、ボールが上記付勢部材18に抗してボールハウス12内を後退し、先端の開口部10において、ボールとかしめ部11の内側との間に空隙を生じ、かくして、ボールハウス内のインキ組成物はボールハウスから上記空隙を通過して、開口部から突出しているボールの突出部に至って、ボールは所定の作業の終了した作業用部材の表面、例えば、上記ねじ部材頭部表面にインキ組成物をドット状に塗布し、かくして、所定の作業の終了した作業用部材の表面にマーキングを付与する。
【0093】
本発明によるマーカー用レフィルが有するマーキングチップの別の好ましい第2の例は、円柱体とその先端方向に向かって延設した、先端方向に断面が小さくなる錐体をマーキング体として有し、上記錐体を上記マーキングチップの先端の開口部より一部を突出させつつ、進退自在に保持しており、上記円柱体は環状溝を有し、上記環状溝には弾性材料からなる環状部材を環状弁体として嵌装し、上記錐体の後方に配設した付勢部材によって上記錐体を上記開口部の内壁面に押圧し、密着させてなるものである。上記錐体の先端部を所定の作業の終了した作業用部材の表面、例えば、ねじ部材頭部表面に当接させれば、錐体は、上記付勢部材に抗して後退する。
【0094】
図4は、上記第2のマーキングチップ20の先端部の一例を示す。このマーキングチップは、先端に開口部21を有する管体22を有し、この管体内にマーキング体23が付勢部材、例えば、コイルばね24によって、チップの先端方向に付勢され、マーキング体の錐体状の先端部が開口部から突出するように付勢されている。
【0095】
即ち、図示したマーキングチップ20は、前述したボールペンチップにおけるマーキング体であるボールに代えて、上記円柱体25から先端方向に向かって断面が小さくなる、略半球体の塗布体26を先端に有する錘体27をマーキング体として有する。
【0096】
チップの先端の開口部21の内壁面28は、上記錐体に対応する第1のテーパー面29を有し、上記錐体は、通常は、付勢部材、例えば、前記コイルばね24によって、チップの先端方向に付勢されて、上記第1のテーパー面に密着している。この第1のテーパー面に連続して、角度の異なる第2のテーパー面30が形成されている。
【0097】
更に、マーキング体の上記円柱体25は、上記錐体への接続部において、環状溝31を有し、この環状溝に弾性材料、例えば、ゴム製のリング部材32、例えば、ゴム製のOリングが嵌装されており、マーキング体が付勢部材によって先端方向に付勢されているので、上記リング部材が上記第2のテーパー面30に押圧され、密着して、インキ組成物を前記管体の空間内にとどめて、インキ組成物がマーキング体の先端の塗布体から流出することを防止している。
【0098】
このようなマーキングチップによれば、マーキング体である前記錐体の先端がねじ部材頭部に当接すれば、前記錐体を含むマーキング体が前記付勢部材に抗して後退して、上記リング部材32が前記第2のテーパー面30から離脱すると共に、前記錐体と上記第1のテーパー面との間に空隙が生じて、インキ組成物が錐体先端の塗布部に供給され、かくして、錐体先端の塗布部が所定の作業の終了した作業用部材の表面、例えば、ねじ部材頭部表面にドット状にインキ組成物を塗布して、マーキングを付与する。
【0099】
本発明において、マーキング機能を有する工具のためのマーカー用レフィルは、上述した例示のものに限定されるものではなく、工具による作業用部材を用いる所定の作業が終了したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体が上記作業用部材に当接し、上記マーキング体が上記付勢部材に抗して後退して、上記マーキング体に上記油性インキ組成物が供給されて、上記作業用部材の表面に上記油性インキ組成物を付着させ、かくして、ドット状のマーキングを形成することができればよい。
【0100】
例えば、マーキング機能を有するねじ部材締付け工具のためのマーカー用レフィルであれば、ねじ部材の締付け作業において、ねじ部材の締付けトルクが設定値に達したとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体が上記ねじ部材頭部に当接し、上記マーキング体が上記付勢部材に抗して後退して、上記マーキング体に上記油性インキ組成物が供給されて、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物を付着させ、かくして、ドット状のマーキングを形成することができればよい。
【0101】
このようにして、本発明によれば、マーキング機能を備えた工具、例えば、ねじ部材締付け工具に前述した油性インキ組成物を収容したマーカー用レフィルを取付け、ねじ部材の締付けトルクが予め、設定した値に至ったとき、上記マーカー用レフィルが有し、付勢部材によって付勢されているマーキング体を上記ねじ部材頭部に当接させ、上記マーキング体を上記付勢部材に抗して後退せしめて、上記マーキング体に上記油性インキ組成物を供給し、かくして、上記ねじ部材頭部表面に上記油性インキ組成物をドット状に付着させることによって、そこに厚みのあるマーキングを付与することができる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0103】
以下の実施例及び比較例において用いた成分の詳細は以下のとおりである。
【0104】
染料
赤色染料:オリエント化学工業(株)製バリファストレッド1308
青色染料1:オリエント化学工業(株)製オイルブルー613
青色染料2:オリエント化学工業(株)製オイルブルーBA
樹脂
ロジン変性マレイン酸樹脂:荒川化学工業(株)製マルキード33
アルキルフェノール樹脂1:荒川化学工業(株)製タマノル510
アルキルフェノール樹脂2:日立化成工業(株)製ヒタノール1140
スチレン−マレイン酸樹脂:荒川化学工業(株)製アラスター700
可塑剤
蔗糖安息香酸エステル:第一工業製薬(株)製モノペットSB
【0105】
有機溶剤
ダウアノールPM:ダウ・ケミカル製プロピレングリコールモノメチルエーテル
エタノール:日本アルコール販売(株)製
ダウアノールPNB:ダウ・ケミカル製プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル
変性シリコーンオイル
TEGO Glide A115:エボニック・デグサ製ポリオキシプロピレン変性シリコーンオイル
TSF4460:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製ポリオキシプロピレン変性シリコーンオイル
TSF4450:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製ポリオキシエチレンプロピレン変性シリコーンオイル(オキシエチレン量及びオキシプロピレン量共に50重量%)
TSF4440:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製ポリオキシエチレン変性シリコーンオイル
TSF4470:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製カルボキシル変性シリコーンオイル
【0106】
以下の実施例及び比較例においては、得られた油性インキ組成物の粘度は、東機産業(株)製B型粘度計VISCOMETER TVE−25Lを用いて、以下の測定条件にて測定した。コーンロータの角度及び半径:1°34′及び24cm、回転数:20ppm、時間:180秒、温度:20℃。
【0107】
また、以下の実施例及び比較例においては、ボールペンチップを有するレフィルを製作し、これをマーキング機能を有するねじ部材締付け工具に取付けた。
【0108】
このようなねじ部材締付け工具を用いて、ねじ部材の締付けトルクを所定の値に設定し、金属製ねじ部材の締付けを行って、上記ねじ部材頭部表面にマーキングを付与し、このときのマーキング体からのインキの流出性とねじ部材頭部表面に付与されたマーキング性状を観察して、インキ流出性とマーキング性状を下記のようにして評価した。
【0109】
マーキング性状
上記ねじ部材頭部表面に付与されたマーキングを観察して、インキ組成物に弾きや走りがなく、マーキングが厚みのあるドット状であるときを○(良好)とし、インキ組成物に弾きや走りが幾分あって、マーキングにインキ組成物の広がりが幾分あり、厚みが殆どないときを△(やや不良)とし、インキ組成物に弾きや走りがあって、広がりが著しく、厚みがないときを×(不良)とした。ここに、インキの走りとは、マーキング体をねじ部材頭部表面に当接させたときに、マーキング体がインキ組成物が当接した部分を超えて、インキ組成物が伸びて、広がって、マーキングの形状が乱れることをいう。
【0110】
インキ流出性
ねじ部材締付け工具にインキ組成物を充填したレフィルを取付けて、金属製ねじ部材を所定のトルクにて100回締付けて、上記ねじ部材頭部表面にマーキングを付与した後、レフィル中のインキ組成物の減量によって評価した。インキ組成物の減量が基準値以上であったときを○(良好)とし、基準値未満であったときを×(不良)とした。
【0111】
以上の結果を表1及び表2に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、実施例による油性インキ組成物はいずれも、所定量の変性シリコーンオイルを含むと共に、20℃における粘度が8〜25mPa・sの範囲にあって、インキ流出性がよく、金属製ねじ部材の頭部表面に形成されるマーキングはいずれも、厚みのある立体的なドット状のものであった。
【0115】
これに対して、比較例2によるインキ組成物は変性シリコーンオイルを含み、また、比較例4によるインキ組成物は変性シリコーンオイルを含まないが、いずれも粘度が8mPa・sよりも小さいので、インキ流出性はよいが、金属製ねじ部材の頭部表面でインキ組成物が広がって、厚みのある立体的なマーキングを安定して付与することができなかった。比較例8によるインキ組成物は、変性シリコーンオイルを含まず、また、粘度も高すぎるので、インキ流出性、マーキング正常のいずれにおいても、劣っていた。
【0116】
また、比較例1、3及び5によるインキ組成物はいずれも、粘度は8〜25mPa・sの範囲にあるが、変性シリコーンオイルを含まないので、インキ流出性はよいが、金属製ねじ部材の頭部表面でインキ組成物が広がって、厚みのある立体的なマーキングを安定して付与することができなかった。
【0117】
比較例6及び7によるインキ組成物はいずれも、変性シリコーンオイルの含有量が多すぎる結果、却って、マーキング性状に劣るものであった。
【0118】
比較例9によるインキ組成物は、変性シリコーンオイルがポリオキシエチレン変性シリコーンオイルであるので、厚みのある立体的なマーキングを安定して形成することができなかった。
【符号の説明】
【0119】
1…マーカー用レフィル
2…インキ収容管
3…ホルダー
4…マーキングチップ
5…マーキング体(ボール)
6…インキ組成物
9…ボールペンチップ
10…開口部
11…かしめ部
12…ボールハウス
13…中心孔
14…側壁面
15…接続面
16…座面
17…矢溝
18…コイルばね
19…棒体
20…マーキングチップ
21…開口部
22…管体
23…マーキング体
24…コイルばね
25…円柱体
26…塗布体
27…錘体
28…内壁面
29…第1のテーパー面
30…第2のテーパー面
31…環状溝
32…ゴム製リング部材
図1
図2
図3
図4