(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ターミナルホルダやバスバーを用いたブラシレスモータは、絶縁部品(インシュレータ)と電気的な接続部品(ターミナルホルダやバスバー)が別体となっているため、部品点数が多く、組み付け工程・工数が増加するという問題がある。すなわち、電気接続部品を用いる場合、ステータコアに巻線を行った後、ターミナルホルダを用いて各相ごとに結線を行ったり、バスバーを用いて各コイルを結線したりする必要があり、そこでは「巻線工程→電気接続部品組み付け工程→結線処理工程→ヒュージング又はTIG溶接工程」の各工程を実施する必要がある。このため、ステータ形成過程において、組み付け工程が多くなり、生産性が悪化する、という問題があった。
【0005】
一方、上述のような電気接続部品を用いることなくステータを形成することも可能であるが、その場合、特許文献3のように、コイルを一筆書きにて巻線する必要が生じる。ところが、一筆書き巻線を行う場合、電気的な接続端子を配する場所として、1ヵ所ステータコア外周から大きく張り出した部分を設けるのが一般的である。このような張り出し部位は、サンルーフ用モータなど、狭い空間に配置される利便系モータでは、求められるサイズ要件を満たすことが難しくなる、という問題があった。
【0006】
本発明の目的は
、ブラシレスモータを用いた減速機構付きモータにおいて、モータ側と制御部側を接続する端子をスペース効率良く配置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
減速機構付きモータは、磁性材料にて形成されたヨークと、前記ヨーク内に配置され、巻線が巻装されたコイルを備えるステータと、マグネットを備え、前記ステータ内に回転自在に配置されるロータと、を有
し、前記ヨークの外周には、2つの平行な対向面からなる平面部と、該平面部の両端側にそれぞれ設けられ前記平面部をつなぐ連結部が形成され、前記ステータは、前記巻線が接続される3個のコイル接続端子が設けられたインシュレータを有し、前記3個のコイル接続端子のうちの1個は、前記平面部に対し一方の前記連結部側に配置され、他の2個の前記コイル接続端子は、前記平面部に対し他方の前記連結部側に配置される
3相駆動のブラシレスモータを使用した減速機構付きモータであって、前記ブラシレスモータが取り付けられ、その内部に、前記ブラシレスモータの回転軸と接続され該回転軸の回転を減速して出力軸に伝達する減速機構と、前記ブラシレスモータを駆動制御するための制御回路が収容されるフレームと、前記フレームに取り付けられ、一端側が前記コイル接続端子と、他端側が前記制御回路とそれぞれ電気的に接続される3個の中間ターミナルと、を備え、前記3個の中間ターミナルは、そのうちの2つが、前記出力軸の延伸方向から見て上下に重なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の
減速機構付きモータは、
3相駆動のブラシレスモータを使用し、該ブラシレスモータは、コイル接続端子が設けられたターミナルホルダ一体型のインシュレータを
有し、3個のコイル接続端子をヨーク平面部ではなく、連結部側に分散配置する。これにより、ブラシレスモータの小型化・薄型化が図られ、モータの二面幅(平面部間の距離)を小さくできる。また、少ない渡り線にて、一筆書き巻線も可能となる。
さらに、本発明の減速機構付きモータは、一端側がコイル接続端子と、他端側が制御回路とそれぞれ電気的に接続される3個の中間ターミナルを備え、これら3個の中間ターミナルは、そのうちの2つが、前記出力軸の延伸方向から見て上下に重なる位置に配置されており、中間ターミナルをこのように配置することにより、中間ターミナルとコイル接続端子の3つの接続部をバラバラに配置した場合に比して、接続部のレイアウト領域が整理され、ターミナル接続部をスペース効率良くレイアウトできる。
【0009】
前記インシュレータに、前記巻線が巻き付けられるコイル巻装部と、前記コイル接続端子が取り付けられる端子取付部と、を設け、前記端子取付部を、前記コイル巻装部よりも径方向外側に配置するようにしても良い。これにより、コイルを巻装する際に、コイル巻回用のノズルに「端子を避けるための動作」をさせる必要がなくなり、巻線作業が行いやすくなる。また、前記コイル巻装部のうち、前記端子取付部が設けられていないものの径方向外側に、前記巻線が案内されるガイド部を形成しても良い。
【0010】
前記コイル接続端子を、前記端子取付部に形成された端子挿入孔に挿入される差込部と、前記巻線が接続されるフック部と、該フック部と前記差込部をつなぐ中間部と、を備えた構成とし、前記端子取付部に、前記端子挿入孔の近傍に形成され、前記コイル接続端子の前記中間部が当接し、前記中間部を保持する端子ガイド部を設けても良い。これにより、フック部にテンションが加わっても、中間部の動きが規制され、それに引っ張られて中間部が曲がってしまうのを防止できる。
【0011】
前記巻線を、一方の前記連結部側に配置された第1相の前記コイル接続端子から、該コイル接続端子の位置に存在する第1相の第1コイル、該第1相の第1コイルと対向位置にある同相の第2コイル、該第1相の第2コイルに隣接する第2相の第1コイル、該第2相の第1コイルと対向位置にある同相の第2コイル、該第2相の第2コイルに隣接する第3相の第1コイル、該第3相の第1コイルと対向位置にある同相の第2コイルと、連続的に巻装・配線しても良い。この場合、前記巻線を、前記第1相の第2コイルと前記第2相の第1コイルとの間で第2相の前記コイル接続端子に接続し、前記第2相の第2コイルと前記第3相の第1コイルとの間で第3相の前記コイル接続端子に接続し、前記第3相の第2コイルの後段で前記第1相の前記コイル接続端子に接続された状態で配置しても良い。これにより、少ない渡り線にて、一筆書き巻線が可能となる。
【0012】
また、本発明の減速機構付きモータにおいて、前記3個の中間ターミナルのうちの2つを前記回転軸と垂直な第1軸上に同軸に配置し、他の組み合わせの2つを前記第1軸とは垂直な第2軸上に同軸で配置するようにしても良い。
【0014】
前記減速機構付きモータにおいて、前記平面部に対し他方の前記連結部側に配置された前記2個のコイル接続端子を、前記ブラシレスモータの端部からその回転軸の延伸方向に沿って異なる長さにて延出させ、延出長さの異なる前記コイル接続端子のうち、短い方の前記コイル接続端子を、長い方の前記コイル接続端子に対し、前記フレームの底面側に配置しても良い。これにより、作業者の手前側(上側)にある長い方のコイル接続端子が先に接続され、その後、奥(下側)にある短い方のコイル接続端子が接続される。このため、ターミナル接続作業では、長い方のコイル接続端子の挿入状態を確認しつつ、短い方のコイル接続端子の接続処理を行うことができ、誤組み付けの防止が図られる。
【0015】
また、前記フレームに、前記中間ターミナルを保持する端子保持部と、前記ブラシレスモータの回転軸を回転自在に支持する軸受を保持する軸受保持部と、を設け、前記端子保持部と前記軸受保持部を、前記回転軸方向に沿ってずれた位置に配置するようにしても良い。これにより、端子保持部と軸受保持部を共に肉厚な中実状の部位に形成することができ、フレームの剛性向上や耐久性向上が図られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の
減速機構付きモータにあっては、コイル接続端子が設けられたターミナルホルダ一体型のインシュレータを
有し、3個のコイル接続端子をヨーク平面部ではなく、連結部側に分散配置
したブラシレスモータを使用するので、ブラシレスモータの小型化・薄型化が可能となる。
【0017】
本発明の減速機構付きモータによれば、コイル接続端子と接続される3個の中間ターミナルのうちの2つずつを、フレーム側から見て上下・左右方向に各一列に配置するようにしたので、中間ターミナルとコイル接続端子の3つの接続部をバラバラに配置した場合に比して、ターミナル接続部を効率良くレイアウトすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態で
ある減速機構付きモータユニット1の構成を示す説明図、
図2は、
モータユニット1に使用されているブラシレスモータ11を軸方向から見た側面図である。
図1のモータユニット1は、モータと制御部が一体化されたいわゆる機電一体構造の減速機構付きモータであり、ブラシレスモータ11を備えたモータ部2と、ウォームギヤを用いた減速機構部3、及び、ブラシレスモータ11を駆動制御するための制御回路が搭載された制御部4とから構成されている。モータユニット1は、例えば、自動車の電動サンルーフの駆動源として使用される。
【0020】
モータ部2にはブラシレスモータ11が配されている。ブラシレスモータ11は、外側にステータ12、内側にロータ13を配したインナーロータ型のブラシレスモータとなっている。ステータ12は、ヨークを兼ねたモータケース14と、モータケース14の内周側に固定されたステータコア(コア部材)15、及び、ステータコア15に巻装されたコイル16とを備えている。モータケース14は、鉄等にて有底筒状に形成されており、断面が六角形状となっている。モータケース14の開口部には合成樹脂製のフレーム17が取り付けられている。フレーム17の上部は開口しており、開口部分にはカバー18が取り付けられる。モータケース14は、フレーム17のフランジ部17aに設けられたモータ取付用のネジ孔17bに、ネジ19によって固定される。
【0021】
ステータコア15は鋼板を多数積層した一体コア構造となっており、六角形状の継鉄部21と、継鉄部21から内側方向へ突出形成されたティース22とを備えている。ティース22は周方向に沿って複数個(ここでは6個)設けられている。各ティース22の間にはスロット23(6個)が形成されている。ステータコア15の内側には、軸方向両端側から、合成樹脂製のインシュレータ24が取り付けられている。各ティース22には、インシュレータ24を介して巻線25が巻装されコイル16が形成される。インシュレータ24には、各相(ここでは、U,V,Wの3相)に対応したコイルターミナル(コイル接続端子)26(26U,26V,26W)が設けられており、コイル16(巻線25)は、各コイルターミナル26U,26V,26Wに電気的に接続されている。
【0022】
ロータ13はステータ12の内側に配置されており、回転軸31と、ロータコア32、マグネット33を同軸状に配した構成となっている。回転軸31の外周には、鋼板を多数積層した円筒形状のロータコア32が取り付けられている。ロータコア32の外周には、周方向に沿って複数極に着磁されたマグネット33が固定されている。回転軸31の一端部は、モータケース14の底部に圧入された軸受34に回転自在に支持されている。回転軸31の他端部は、フレーム17の軸受保持部17c,17dに取り付けられた軸受メタル35,36によって回転自在に支持されている。
【0023】
回転軸31の端部(
図1において右端部)には、ウォーム37が形成されている。ウォーム37は、フレーム17内に配置されたウォームホイール38と噛合しており、ウォーム37とウォームホイール38により、減速機構部3が構成されている。ウォームホイール38は出力軸39に取り付けられている。モータユニット1では、ブラシレスモータ11の回転軸31の回転は、減速機構部3にて減速されて出力軸39に伝達され、出力軸39が回転駆動される。
【0024】
回転軸31には、ロータ13の回転を検知するためのセンサマグネット41が取り付けられている。センサマグネット41は、周方向に沿って複数極に着磁されている。フレーム17内には、センサマグネット41の磁極に対向する形で図示しないホールIC(磁気検出素子)が配されている。ホールICは、制御用ICや抵抗、コンデンサ等の素子が搭載された制御部4の制御基板42に配置されている。制御基板42とブラシレスモータ11は、フレーム17の端子保持部17eに圧入固定された中間ターミナル(基板接続端子)43によって電気的に接続されている。この場合、端子保持部17eは、軸受保持部17cに対して軸方向にずれた位置に設けられており、両者が軸方向に重ならないようになっている。このため、端子保持部17e,軸受保持部17cを共に肉厚な中実状の部位に形成することができ、フレーム17の剛性向上や耐久性向上が図られ、信頼性の向上や出力の増大を図ることが可能となる。
【0025】
モータユニット1では、ステータコア15にインシュレータ24を取り付け、コイル16が巻装・配線されたステータアッセンブリをフレーム17に圧入すると、ブラシレスモータ11のコイルターミナル26(26U,26V,26W)と中間ターミナル43(43U,43V,43W;
図12参照)の一端側が嵌合し電気的に接続される。その際、ターミナル同士の接続により中間ターミナル43に加わる荷重は、端子保持部17eによって受け止められる。制御基板42は、両ターミナル26,44を接続した後、フレーム17に組み付けられ、中間ターミナル43の他端側(基板接続部43a)と半田付け固定される。これにより、制御基板42とブラシレスモータ11が電気的に接続され、制御部4によるブラシレスモータ11の駆動制御が可能となる。
【0026】
ここで、本発明による
モータユニット1に使用されているブラシレスモータ11は、次のような点で従来のブラシレスモータとは異なる特徴を備えている。
(1)ステータのコイルターミナル配置
(2)コイルターミナル位置
(3)インシュレータにおけるコイルターミナル取付部構造
(4)コイルの巻線順序
(5)中間ターミナル配置
以下、各特徴について順に説明する。
【0027】
(1)コイルターミナル配置
図2に示すように、ブラシレスモータ11では、3相のコイルターミナル26U,26V,26Wがモータユニット1の二面幅Wdの中に収まるように配置されている。モータユニット1は、サンルーフ用モータのように設置幅(高さ)に制約のある条件にて使用され、そのサイズ要件を満たすべく、各コイルターミナル26を二面幅から突出しない形で設けている。
【0028】
ブラシレスモータ11のモータケース14は、モータユニット1の出力軸39に直交する形で延びる平坦面(
図1,2おける上下面)1a,1bに沿って配される平行な上下面(平面部)14a,14bと、上下面14a,14bを接続する形で上下方向に配される側方面(連結部)14c,14d・14e,14fを備えている。上下面14a,14bの距離は、出力軸39に対して直角方向の二面幅Wdによって規制され、ブラシレスモータ11は、コイルターミナル26の部位も含め、その規制値内に収まる必要がある。
【0029】
そこで
、ブラシレスモータ11では、上下面14a,14bに対し、一方側の側方面14c,14dの部位(
図2において右側の部位)と、他方側の側方面14e,14fの部位(
図2において左側の部位)にコイルターミナル26を分散配置する。つまり、上下面14a,14b側にはコイルターミナル26を配することなく、例えば、一方側の側方面14dにコイルターミナル26U、他方側の側方面14e,14fにコイルターミナル26V,26Wというように、一方側に複数個、他方側に1個のコイルターミナル26を配置する。
【0030】
従って、3相の各コイルターミナル26U,26V,26Wのうち少なくとも1つは、他のコイルターミナル26と隣り合わない位置に配置される。また、各コイルターミナル26U,26V,26Wは、ネジ孔17bが設けられたフランジ部17a側に配置されている。さらに、上下面14a,14bに近いコイルターミナル26の角部がステータコア15の幅Wd’(二面幅Wd側の厚さ)から外へ出ないように配置されている。これにより、ブラシレスモータ11の外径を二面幅Wd内に収めることができ、そのサイズ要件に応じてモータの小型化・薄型化を図ることが可能となる。
【0031】
また、3相の各コイルターミナル26U,26V,26Wを3ヶ所に分けて配置することにより、コイルターミナル26がステータコア15から径方向に突出する面積を低減することができる。すなわち、コイルターミナル1ヵ所あたりの張り出し面積が小さくなり、インシュレータ24の連続した断面係数を大きくとることができ、その分、インシュレータ24の剛性を向上させることが可能となる。また、インシュレータ24のコイルターミナル一ヶ所あたりの張り出し面積が小さくなることで、ステータアッセンブリが組み付けられるフレーム17の肉厚を厚くできるため、フレーム17の剛性も向上させることが可能となる。
【0032】
(2)コイルターミナル位置
ブラシレスモータ11においては、3相のコイルターミナル26U,26V,26Wがコイル16よりも径方向外側に配置されている。この場合、上下面14a,14b側には、コイル背後に寸法的な余裕はなく、コイルターミナル26は、側方面14c,14d・14e,14fに対応した4部位のうちの3カ所に配される。
図3は、ブラシレスモータ11におけるステータ12の構成を示す説明図であり、コイルターミナル26とコイル16の巻装状態を示している。
【0033】
図3に示すように、インシュレータ24には、コイル16が巻き付けられるコイル巻装部51と、コイルターミナル26が取り付けられる端子取付部52が設けられている。インシュレータ24は、絶縁機能と共にコイルターミナル26の保持機能を有しており、ブラシレスモータ11は、「インシュレータ・ターミナルホルダ一体型」の構成を採用している。このように、インシュレータとターミナルホルダを一体構造とすることにより、電気接続部品の組み付けが不要となり、組付工数や部品点数を削減することが可能となると共に、コイルターミナルの組み付け寸法誤差を低減することも可能となる。
【0034】
端子取付部52は、コイル巻装部51の背後、すなわち径方向外側に3個形成されている。また、コイル巻装部51のうち、端子取付部52のない部位の背後には、壁状のコイルガイド部53が形成されている。このように、コイルターミナル26をコイル16よりも径方向外側に配することにより、コイル16を巻装する際に、コイル巻回用のノズルに「端子を避けるための動作」をさせる必要がなくなり、巻線作業の効率化が図られ、ステータの製造工数を削減することが可能となる。
【0035】
(3)インシュレータにおけるコイルターミナル取付部構造
図4は、インシュレータ24における端子取付部52の構成を示す説明図、
図5は、端子取付部52を
図4の矢視P方向から見た様子を示す説明図、
図6はコイルターミナル26の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、端子取付部52には、コイルターミナル26が挿入される端子挿入孔54が形成されている。コイルターミナル26は、この端子挿入孔54にX方向から挿入される。一方、コイルターミナル26は、オス端子であり、
図6に示すように、端子挿入孔54に挿入される差込部61と、コイル16が接続されるフック部62、フック部62と差込部61をつなぐ中間部63とから構成されている。差込部61には係合爪64が設けられており、端子挿入孔54に差込部61を挿入すると、係合爪64の先端が端子取付部52に突出形成された端子保持部55に係合し、コイルターミナル26は端子取付部52に抜け止め固定される。
【0036】
端子取付部52の裏面側(矢視P側)には、
図5に示すように、インシュレータ本体側から延びるリブ56が設けられている。リブ56の底面56aは、ステータコア15の端面に当接する。コイルターミナル26は、ブラシレスモータ11をフレーム17に組み付ける際に中間ターミナル43と嵌合し、そのとき、中間ターミナル43側から荷重を受ける。リブ56は、この挿入荷重を受けるべく設けられており、ターミナル同士を接続する際、端子取付部52はリブ56によって支持される。従って、端子取付部52の剛性向上が図られ、係合爪64を介して挿入荷重を受けても端子取付部52が変形しにくくなり、中間ターミナル43との接続作業が行いやすくなると共に、挿入荷重による端子取付部52の破損も防止され、信頼性の向上も図られる。
【0037】
また、端子取付部52にはさらに、コイルターミナル26の中間部63を保持する端子ガイド部57が設けられている。端子ガイド部57は、
図4,5に示すように、端子挿入孔54の下端近傍に、端子挿入孔54に臨んで設けられており、端子挿入孔54にコイルターミナル26を挿入すると、その中間部63の側面63aが当接するようになっている。コイルターミナル26のフック部62にはコイル巻装時にテンション(引張力)が加わり、巻線25のテンションでターミナルが曲がってしまう恐れがある。これに対し、当該ブラシレスモータ11では、フック部62と差込部61をつなぐ中間部63が、インシュレータ24の端子ガイド部57によって支持され、その移動が規制されるため、フック部62にテンションが加わっても、それに引っ張られて中間部63が曲がってしまうことがなく、製品の歩留まりや信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
加えて、インシュレータ24のコイル巻装部51には、巻線25が巻装される巻回部51aと、巻回部51aの内径側に形成されたフランジ部51bが設けられている。巻回部51aとフランジ部51bの角隅部にはそれぞれ、コイル巻線時におけるノズルの軌道を考慮し、ノズル逃げとしてR形状の曲面部51cが形成されている。角隅部に曲面部51cを設けることにより、巻回部51aのより近くでノズルを作動させノズル動作距離を短縮することができ、巻線速度を向上させ、製造工数を削減することが可能となる。
【0039】
(4)コイルの巻線順序
図7はコイル16の結線図、
図8はコイル16の巻線状態を示す説明図、
図9はその巻線展開図である。
図7に示すようにコイル16はΔ結線となっており、始線〜終線の間ですべてのスロットの巻線作業が完了する、いわゆる一筆書き巻線となっている。
図8,9に示すように、ここでは、一方側の側方面14dに単独で配されたコイルターミナル26Uを始点とし、次のような順序で巻線作業が行われる。
(a)コイルターミナル26UからU相の第1コイルU1を巻装する。
(b)U1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するU相の第2コイルU2を巻装する。
(c)U2巻装後、U2からコイルターミナル26Vに結線し、U2に隣接するV相の第1コイルV1を巻装する。
(d)V1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するV相の第2コイルV2を巻装する。
(e)V2巻装後、V2からコイルターミナル26Wに結線し、V2に隣接するW相の第1コイルW1を巻装する。
(f)W1巻装後、間に2つのティース22を隔てて対向するW相の第2コイルW2を巻装する。
(g)W2巻装後、W2に隣接する位置のコイルターミナル26Uに結線する。この場合、巻線作業の最後に来るコイルW2では、巻線25のテンションを維持するため、
図10に示すように、コイルの巻き始めと巻き終わりの入口が同じ箇所となる。
【0040】
つまり、当該ブラシレスモータ11では、単独で存在するコイルターミナルから、対向する同相コイル16を巻装した後((b),(d),(f))、隣接する他相のコイル16を巻装する((c),(e))。このように、一体構造のステータコア15に対し、ターミナルホルダが一体化されたインシュレータを組み付け、上述のような一筆書き巻線にてΔ結線を行うことにより、電気接続部品の組み付け工程や結線処理工程が不要になり、生産時の工程を削減することができ、低コスト化を図ることが可能となる。
【0041】
一方、このような結線を行うに際しては、
図11に示すように、インシュレータ24の各端子取付部52近傍に設けられたポール58に巻線25を引っ掛ける。このように、一筆書き巻線の工程中に巻線25をポール58に沿わせることにより、巻線25をフック部62に係止する際、巻線25にテンションを付加できる。このため、コイルターミナル26と巻線25の密着度を高めることができ、ヒュージングなどの電気的接続性を向上させることが可能となる。
【0042】
さらに、巻線工程(d)において、V1からV2に巻線25を引き回すとき、その渡り線59が既に巻装が完了しているU1上を跨いで通過する。このコイルU1には、径方向外側にコイルターミナル26Uが存在するため、その背後に渡り線を通すことができない。一方、渡り線が先に存在すると、コイルU1の巻装作業が非常に行いにくい。これに対し、前述のような巻線工程を実行すれば、コイル形成後に渡り線が配されるため、特に支障を来すことなく巻線作業を行うことができる。また、一般的な一筆書き巻線と異なり、巻装が完了しているコイルの上を弦状に渡り線が通過する箇所が存在するため、渡り線の長さを短くすることも可能となる。なお、他のコイルターミナル26V,26Wでは、渡り線59はそれらの背後を通ることなく、フック部62に引っ掛けられた後、フック部62側の隣接コイル16に向かうため、渡り線の引き回しに関する問題は生じない。
【0043】
加えて、ブラシレスモータ11においては、渡り線59が重なる箇所においても、重複本数が最大4本に抑えられる。この場合、例えば特許文献3のモータでは、渡り線が6本重複する部位が存在し、巻線25の収容や取り回しが煩雑となる。この点、当該ブラシレスモータ11では、渡り線59の重なりは最大でも4本であるため、渡り線の収容保持が容易となり、インシュレータの小型軽量化が可能となる。
【0044】
(5)中間ターミナル配置
前述のように、モータユニット1では、ブラシレスモータ11と制御基板42は、コイルターミナル26と中間ターミナル43が結合されることにより電気的に接続される。
図12は、コイルターミナル26と中間ターミナル43の接続構造を示す説明図、
図13(a)は、モータユニット1におけるターミナル接続部71(71U,71V,71W)の位置を示す説明図である。ターミナル接続部71U,71V,71Wでは、それぞれ、コイルターミナル26U,26V,26Wの差込部61と、中間ターミナル43U,43V,43Wの嵌合部43bが接続される。
【0045】
一般に、機電一体構造の減速機構付きモータは、モータ側のターミナルと制御基板側のターミナルが存在し、両ターミナルの接続レイアウトがモータの体格や構造を左右する重要な要素となっている。近年、サンルーフ用モータは、ブラシ付きからブラシレスへの移行が進んでおり、それに伴って、両ターミナルの接続箇所が2つから3つに増加する。しかしながら、ターミナルが増えたにもかかわらず、装置フレームを大きくすることはできず、現状のスペース内に3つのターミナルをレイアウトしなければならない、という非常に困難な課題を有していた。
【0046】
これに対し、本発明によるモータユニット1では、ターミナル同士の接続箇所3つ(71U,71V,71W)のうちの2つが、出力軸39の延伸方向から見て上下に重なる位置に配置されている。すなわち、ターミナル接続部71U,71V,71Wは、
図13に示すように、上方の制御基板42側から見て、そのうちの2つ(71U,71V)がモータ回転軸31と垂直な軸(軸X:第1軸)上に同軸で配置され、他の組み合わせの2つ(71V,71W)が軸Xと垂直(回転軸31と平行)な軸(軸Y:第2軸)上に同軸で配置されている。また、ターミナル接続部71U,71V,71Wを、フレーム17側から回転軸31の延伸方向に沿って見ると、それらの2つずつ(例えば、71U,71Vと71V,71W)が上下・左右方向に重なるように一列に配置されている。
【0047】
ターミナル接続部71をこのように配置することにより、制御基板42上におけるターミナル接続部71のX−Y座標を1つずつにすることができ、3つの接続部をバラバラに配置した場合(
図13(b))に比して、ターミナル接続部71のレイアウト領域が整理される(
図13(b)の場合はX−Y座標が3つ)。従って、コイルターミナル26と中間ターミナル43の接続部を、スペースの少ない箇所に効率良くレイアウトすることが可能となり、中間ターミナル43が接続される制御基板42の作製も容易となる。
【0048】
また、モータユニット1では、コイルターミナル26U,26V,26Wの差込部61の長さと中間ターミナル43U,43V,43Wの嵌合部43bから基板接続部43aの先端までの長さとが、長尺×1、短尺×2の組み合わせにて構成されている。
図14は、コイルターミナル26と中間ターミナル43の長尺、短尺の区別を示す説明図である。ここでは、
図12に示すように、コイルターミナル26側は、26Uが長尺、26V,26Wが短尺、中間ターミナル43側は、43Vが長尺、43U,43Wが短尺となっており、26Uと26V,26Wは、回転軸31の延伸方向に沿って異なる長さにてブラシレスモータ11から延出している。そして、ターミナル接続部71Uでは26U(長尺)と43U(短尺)が、同71Vでは26V(短尺)と43V(長尺)が、同71Wでは26W(短尺)と43W(短尺)がそれぞれ組み合わされて接続される。
【0049】
このような組み合わせにて各コイルターミナル26および中間ターミナル43を配置すると、フレーム17側から見て、長尺のオスターミナルである26Uが手前(上側)に、短尺のオスターミナルである26V,26Wが奥(下側:フレーム17の下面1b側)に配置される。そこで、コイルターミナル26と中間ターミナル43を結合する工程を考えると、この場合、まず延出長の大きい26Uと、それに対応する43Uとが接続される。すなわち、他の短尺オスターミナルよりも先に、長尺オスターミナルである26Uが43Uと接続される。一般に、長尺のターミナルは、短尺のターミナルに比して、先端位置がずれ易く、長短のターミナルが存在する状態で複数ターミナルをトラブルなく結合させるのは容易ではない。また、同尺のターミナルが複数存在すると、誤組み付けの恐れもある。
【0050】
これに対し、本発明によるモータユニット1では、ターミナル26,44の接続に際し、手前側にある長尺オスターミナル26Uが先に接続され、その後、奥にある短尺オスターミナル26V,26Wが接続される。このため、ターミナル接続作業では、長尺オスターミナル26Uの挿入状態を確認しつつ、短尺オスターミナル26V,26Wの接続処理を行うことができる。従って、長尺オスターミナルの挿入完了を容易に視認でき、その後、確実に短尺オスターミナルを接続できるため、ターミナルの曲がりやターミナル間違いによる誤組み付けを防止することが可能となる。
【0051】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、端子取付部52を3個設けた構成を示したが、
図15のように、2相分を1つにまとめて端子取付部52を2個としても良い。また、コイルターミナル26の形状も前述のものには限られず、例えば、
図16のように、差込部61とフック部62が同方向に延びる形状であっても良い。但し、
図15,16の場合でも、コイルターミナル26を含めてステータ12が二面幅Wdのサイズ要件を満たしていることが必要である。
【0052】
さらに、前述の実施形態では、中間ターミナル43を制御基板42に半田付けする構成を示したが、
図17のような中間ターミナル65を用いて、中間ターミナル65と制御基板42をプレスフィットにて接続しても良い。また、その際、制御基板42をカバー18側に取り付け、カバー18をフレーム17に取り付ける際、それと共に中間ターミナル65と制御基板42がプレスフィットにて接続されるようにしても良い。
【0053】
加えて、ブラシレスモータ11のティース・スロット数はあくまでも例示であり、その個数は前述の6個には限定されない。また、巻線順序におけるIN・OUTは、その順序が逆になっても問題はない。同様に、3相のUVWもその順序は任意であり、例えば、反時計回りの順番がU,W,Vであっても良い。さらに、ターミナル接続部71における3相U,V,Wの組み合わせも任意であり、上述の例には限定されない。