特許第6629082号(P6629082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629082ロータリーキルン用セラミックチェーンおよびこれを備えるロータリーキルン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629082
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ロータリーキルン用セラミックチェーンおよびこれを備えるロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/18 20060101AFI20200106BHJP
   F27B 7/20 20060101ALI20200106BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20200106BHJP
   C04B 35/10 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   F27B7/18
   F27B7/20
   F27D25/00
   C04B35/10
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-12797(P2016-12797)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-133736(P2017-133736A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直幸
(72)【発明者】
【氏名】川島 博文
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187430(JP,A)
【文献】 特開2004−284311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/00− 7/42
F27D 25/00
C04B 35/10−35/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなるリング部材が鎖状に連結されてなり、
前記リング部材がそれぞれ、前記連結の連続方向に沿った外面に、外方に突出する断面三角状の稜線部を有し
前記稜線部を構成する、隣接する2つの面のなす内角が、直角以下の鋭角であることを特徴とするロータリーキルン用セラミックチェーン。
【請求項2】
前記リング部材が、アルミナ質セラミックスからなることを特徴とする請求項1に記載のロータリーキルン用セラミックチェーン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロータリーキルン用セラミックチェーンと、セラミックスからなる炉心管を備えることを特徴とするロータリーキルン。
【請求項4】
前記炉心管が、アルミナ質セラミックスからなることを特徴とする請求項に記載のロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン用セラミックチェーンおよびこれを備えるロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、携帯電話、タブレットパソコンなどの二次電池として広く採用されているほか、風力などの蓄電システム、ハイブリッドカー、電気自動車でも採用が進み、今後も需要の飛躍的な増加が見込まれている。
【0003】
そして、リチウムイオン電池の正極材料の熱処理にあたっては、円筒状の炉心管を備えたロータリーキルンが用いられているが、被処理物の移動速度のばらつきや温度のばらつき等により、炉心管の内壁に、被処理物が付着しやすいという問題があった。
【0004】
このように付着物が生じると被処理物の移動に支障が出るため、ロータリーキルンの稼働を止めて付着物を取り除かなければならなかった。そのため、ロータリーキルンの稼働効率を高めるべく、ロータリーキルンを稼働しながら被処理物の付着物を取り除くため、耐熱性の棒状部材を遊動自由に収容したり(特許文献1参照)、内壁に接するようにたるみを持たせた小判型のチェーンを上流側から下流側に架けて張ったり(特許文献2参照)することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−105079号公報
【特許文献2】特開2000−18831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記被処理物の付着は、炉心管の内壁の中でも、被処理物が投入される入口側において多く生じるものであることから、被処理物が投入される入口側において被処理物の付着物の除去効率を高めること求められている。
【0007】
本発明は、上記要求を解決すべく案出されたものであり、被処理物が投入される炉心管の入口側において、炉心管の内壁に付着する被処理物の除去効率を高めることができるロータリーキルン用セラミックチェーンおよびこれを備えるロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のロータリーキルン用セラミックチェーンは、セラミックスからなるリング部材が鎖状に連結されてなり、前記リング部材がそれぞれ、前記連結の連続方向に沿った外面に、外方に突出する断面三角状の稜線部を有し、前記稜線部を構成する、隣接する2つの面のなす内角が、直角以下の鋭角であることを特徴とするものである。なお、本発明における「稜線部」とは、隣接する面同士の境界にあたる辺(または、外縁部、エッジとも言われる)を指すものであり、該辺が鋭利となるように、その辺を挟む2つの面のなす角が、直角以下の鋭角となっている。また、「リング部材」は、チェーン(鎖)を構成する各リンクのうち、輪状、環状等のように無端状に連続する形状のものを言い、「連結の連続方向」とは、各リング部材の連結点を結んだ、鎖の長手方向(長さ方向)を指す。
【0009】
また、本発明のロータリーキルンは、上記構成のロータリーキルン用セラミックチェーンと、セラミックスからなる炉心管とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリーキルン用セラミックチェーンによれば、被処理物が投入される炉心管の入口側において、炉心管の内壁に付着する被処理物の剥離・除去効率を高めることができる。
【0011】
本発明のロータリーキルンによれば、高い稼働効率と、金属の混入が少ないため、被処理物の品質を優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1ータリーキルン用セラミックチェーンの一例を示す、(a)は正面図であり、(b),(c)はリング部材の変形例であり、(d)は実施形態のリング部材の側面図、(e)は(d)のリング部材をA方向から視た図である。
図2】本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーンにおける最も長い状態と短い状態とを示す模式図である。
図3】本実施形態のロータリーキルンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態ロータリーキルン用セラミックチェーンの一例について説明する。
図1は、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーンの一例を示す、(a)はチェーンの一部を示す正面図である。また、図1(b),(c)は、リングの内周が視認されるリング部材の正面図であり、図1(d)は実施形態のリング部材の側面図であり、図1(e)は図1(d)におけるA方向から視た図(図1における(a)を基準としたときの底面図)である。
【0014】
本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーン10は、複数のセラミックス製リンク(リング部材)を連結して構成されている。ここで、セラミックスとは、機械的強度および耐磨耗性に優れたものであり、具体例としては、アルミナ質セラミックス、窒化珪素質セラミックス、炭化珪素質セラミックスなどが挙げられる。なかでも、窒化珪素質セラミックスや炭化珪素質セラミックス等の非酸化物系のセラミックスに比べ安価であり、加工性に優れていながら、付着物の除去には十分な機械的強度および耐磨耗性を有しているため、アルミナ質セラミックスからなることが好適である。
【0015】
なお、本実施形態においてアルミナ質セラミックスとは、セラミックスを構成する全成分のうち、アルミナの含有量が80質量%以上を占めるセラミックスのことであり、機械的強度および耐磨耗性の観点からは、アルミナの含有量は99.5%以上であることが好適である。
【0016】
また、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーン10は、図1(a)に示すように、リング部材1a〜1fが鎖状に連結されてなるものである。
【0017】
さらに、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーン10は、リング部材1(1a〜1f)がそれぞれ、前記チェーン10(鎖)の連結の連続方向〔図1(a)においては図示上下方向〕に沿って伸びる、直線状の稜線部Rを有している。なお、図1(a)においては、リング部材1aのみに稜線部を示すRの符号を付しているが、図1(a)においては、リング部材1a〜1fのすべてが稜線部を有している例を示している。
【0018】
また、稜線部Rとは、個々のリング部材1において、隣接する面同士の境界にあたる辺(角部またはエッジ)を指すものであり、本発明においては特に、前記セラミックチェーン10の連続方向(連続軸)に対して平行な、各リング部材1の外周部分に位置する「外縁」を言う。また、稜線部Rの外縁は、ロータリーキルンの炉心管内壁の筒長方向(回転軸方向)に沿った形状に形成され、一度になるべく多くの炉内付着物を掻き取ることができるように、前記チェーン10の連続方向に沿って伸びる長い形状とされる。
【0019】
そして、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーン10は、セラミックスからなることにより、機械的強度および耐磨耗性に優れる。また、リング部材1が鎖状に連結されているため、リング部材1は遊動が可能である。さらに、各リング部材1が、チェーンが連続する長さ方向に沿った稜線部Rを有していることにより、付着物の掻き取り作用部である稜線部Rが遊動可能であるため、ロータリーキルンの内壁に付着した被処理物の付着物の除去効率が高い。
【0020】
なお、上述したように被処理物の付着物の除去効率が高いのは、以下の理由による。例えば、リング部材1aに相当する部分に強固な付着物が存在したとする。ロータリーキルンの回転に倣って、ロータリーキルン用セラミックチェーン10が移動すると、リング部材1aと付着物とが接することによって、リング部材1aはその場に留まることとなる。このとき、隣り合って連結されているリング部材1bの存在により、リング部材1aの稜線部R(本例では直線)の傾きが変わることとなる。また、このとき、ロータリーキルンの回転方向の後側(回転位相が遅れた側)にあたるリング部材1bの一部は、前記強固な付着物が付着した部位の内壁と接することとなり、リング部材1aの後押しをして、その掻き取り力を大きくする。さらには、遊動可能であることにより、リング部材1cが付着物の除去をアシストする。
【0021】
このように、稜線部Rの傾きの変化と、掻き取り力の増加と、他のリング部材1によるアシストとにより、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーン10は、被処理物の付着物の除去効率が高いのである。
【0022】
次に、リング部材1の形状について記載する。図1(b)は、リング部材1の正面視において、外周の角部がR面(面取り状の曲面)となっているものである。このように、外周の角部がR面となっているときには、リング部材1同士の接触によって角部が割れるおそれを少なくすることができる。なお、角部がC面(平面)となっていてもよい。
【0023】
次に、図1(c)は、外周の角部における一つの対角部分のみをR面としたものである。リング部材1の配置において、R面としていない(直角の)部分同士が隣接しないようにすれば、このような形状であっても角部の割れの抑制効果があり、R面としていない部分においては、掻き取り力が高まる。
【0024】
次に、図1(d)は、図1(a)のリング部材1b,1d,1fの側面図にあたるものであり、図1(e)は、図1(d)におけるA方向から視た図である。このように、外面が外部に向けて突出する鋭角な三角状になっているため、付着物の掻き取り力大きい。
【0025】
そして、リング部材1は、内周が視認される正面視(例えば、図1(b)や図1(c))において、外周形状が、チェーン10(鎖)の連結の連続方向に沿って伸びる直線状の長辺を有する、長方形状であることが好適である。
【0026】
このような構成を満たしているときには、掻き取り作用部位である稜線部Rを長く取ることができるため、被処理物の付着物の除去効率が高まる。なお、長辺と短辺との比は、1〜1.5:1であることが好適である。図1において示しているのは、1.2:1である。
【0027】
次に、図2は、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーンにおける最も長い状態と短い状態とを示す模式図である。なお、図2においては、識別のために、最も長い状態の方に10Lの符号を付し、最も短い状態の方に10Sの符号を付している。
【0028】
リング部材1の内周が視認される正面視において、内周の幅(図示面における横方向)は、リング部材1の厚みの2〜3.5倍であることが好適である。このような構成を満たしているときには、ロータリーキルン用セラミックチェーン10Sに示すような状態とすることができ、遊動領域が拡げることができるため、付着物の除去効率を高めることができる。
【0029】
次に、図3を用いて本実施形態のロータリーキルンについて説明する。
本実施形態のロータリーキルン20は、入口フード2、出口フード3、原料投入機トラフ4、炉心管5、加熱室6、ロータリーキルン用セラミックチェーン10を備えるものである。なお、セラミックチェーン10は、取り付け金具7により原料投入機トラフ4に取り付けられる。また、ロータリーキルン20は、上記構成以外に、炉心管5の回転駆動装置等を備える。
【0030】
そして、炉心管5は、図3において矢印で示すように、処理にあたって回転をするものであるが、原料投入機トラフ4は不動である。また、このロータリーキルン20は、入口フード2から出口フード3に向けて、1〜2°程度傾斜しているものである。
【0031】
ここで、被処理物の流れとしては、入口フード2から炉心管5内に投入された被処理物は、炉心管5が傾斜していることにより、炉心管5の回転に伴って出口フード3側へ移送され、加熱室6内においては熱が加えられて、さらに出口フード3へと移送される。
【0032】
このとき、本実施形態のロータリーキルン20によれば、上述したように、被処理物の付着物の除去効率が高いロータリーキルン用セラミックチェーン10を備えていることから、高い稼働効率を有する。
【0033】
また、ロータリーキルン用セラミックチェーン10は、金属からなるチェーンに比べて機械的強度および耐磨耗性に優れたものであり、炉心管5の内壁との接触による金属の混入が少ないため、被処理物の品質を優れたものとすることができる。
【0034】
なお、本実施形態のロータリーキルン20は、リチウムイオン電池の正極材のみならず、ジルコンチタン酸鉛系の圧電材料やチタン酸バリウム系の誘電体材料などに用いることができ、被処理剤を限定するものではない。
【0035】
また、炉心管5は、ロータリーキルン用セラミックチェーン10と同様に、安価であり、加工性に優れていながら、優れた機械的強度および耐磨耗性を有しているため、アルミナ質セラミックスからなることが好適である。さらに、ロータリーキルン用セラミックチェーン10および炉心管5が、アルミナ質セラミックスからなることがより好適である。
【0036】
次に、ロータリーキルン用セラミックチェーンの製造方法の一例について説明する。
まず、平均粒径が0.5〜2.0μmのアルミナ粉末を準備する。また、焼結助剤として、例えば、酸化珪素粉末、炭酸カルシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末を用いる。
【0037】
そして、それぞれの粉末を所定量秤量し、これらの粉末の合計100質量部に対し、1〜1.5質量部のPVA(ポリビニールアルコール)などのバインダと、100質量部の溶媒とを攪拌機内に入れて混合・攪拌してスラリーを得る。
【0038】
その後、噴霧造粒装置(スプレードライヤー)を用いてスラリーを噴霧造粒して顆粒を得た後、粉末プレス成形法や静水圧プレス成形法(ラバープレス法)により所定形状の成形体を成形する。また、成形後に切削加工を施すことにより、成形体を得てもよい。なお、成形体形状としては、リング部材が、連結(係合)方向に2分割された形状とする。
【0039】
次に、大気(酸化)雰囲気の焼成炉を用いて、1500〜1700℃の最高温度で所定時間保持して焼成し焼結体を得る。なお、得られた焼結体には研削加工を施してもよい。
【0040】
そして、得られた焼結体を用いて、接合面にガラスペーストを塗布し、鎖状に連結されたものとなるように組み合わせる。その後、熱処理を行なうことにより、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーンを得ることができる。
【0041】
また、他の方法としては、成形体の段階において、接合面に上述したスラリーを塗布し、鎖状に連結されたものとなるように組み合わせ、その後、大気(酸化)雰囲気の焼成炉を用いて、1500〜1700℃の最高温度で所定時間保持して焼成することによっても、本実施形態のロータリーキルン用セラミックチェーンを得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1:リング部材
1a,1b,1c,1d,1e,1f:リング部材
2:入口フード
3:出口フード
4:原料投入機トラフ
5:炉心管
6:加熱室
7:取り付け金具
10:セラミックチェーン
20:ロータリーキルン
図1
図2
図3