特許第6629101号(P6629101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629101ハウジングユニット及び開閉体のロック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629101
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】ハウジングユニット及び開閉体のロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/34 20140101AFI20200106BHJP
   E05B 81/28 20140101ALI20200106BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20200106BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   E05B83/34
   E05B81/28
   E05B47/00 R
   B60K15/05 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-38212(P2016-38212)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-155449(P2017-155449A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】中里 宏
(72)【発明者】
【氏名】児玉 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大畦 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺道 裕太
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001384(JP,A)
【文献】 実開昭57−022428(JP,U)
【文献】 実公昭48−007210(JP,Y1)
【文献】 欧州特許出願公開第01090796(EP,A1)
【文献】 特開2004−197300(JP,A)
【文献】 特開2002−317576(JP,A)
【文献】 特開2002−106223(JP,A)
【文献】 実開昭62−94494(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05C 1/00−21/02
B60K 15/05
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するハウジングと、
前記ハウジングにヒンジを介して連結されたアーム部を有し、前記ヒンジを中心とする回転動作により前記凹部の開口を開閉する開閉体と、
前記開閉体を前記凹部の開口を閉塞する閉位置でロックするロック装置と、を備えるハウジングユニットであって、
前記ロック装置は、
前記アーム部に臨むロック片と、
前記ロック片を前記アーム部に向けて進退移動させる駆動源と、
前記アーム部に設けられた、前記開閉体が閉位置にあるときに前記ロック片を嵌め入れ可能なロック孔を有するロック片嵌合部と、
前記アーム部に設けられた、前記開閉体が閉位置以外の開位置にあるときに前記ロック片の進行方向への移動を規制するロック規制部と、を備える
ことを特徴とするハウジングユニット。
【請求項2】
請求項1に記載されたハウジングユニットにおいて、
前記ハウジングの外周には、前記アーム部が収容されるアーム収容部が前記凹部から側方に張り出して設けられ、
前記ヒンジは、前記アーム収容部に設けられ、該アーム収容部の張り出し方向と交差する方向に延びる枢支軸を有し、
前記駆動源及び前記ロック片は、前記枢支軸の軸方向における一方側で前記アーム収容部及び前記凹部と隣接する位置に配置されている
ことを特徴とするハウジングユニット。
【請求項3】
請求項2に記載されたハウジングユニットにおいて、
前記ロック片は、前記ヒンジの枢支軸に沿う方向に進退可能な姿勢で設けられ、
前記アーム部のうち前記駆動源側に位置する部分には、当該アーム部の長手方向に延び、且つ前記ロック片の後退方向に臨む平面部が設けられ、
前記平面部は、前記ロック孔を有し、前記ロック片嵌合部及び前記ロック規制部を構成している
ことを特徴とするハウジングユニット。
【請求項4】
凹部を有する車体にヒンジを介して連結されたアーム部を有し、前記ヒンジを中心とする回転動作により前記凹部の開口を開閉する開閉体を、前記凹部の開口を閉塞する閉位置でロックするロック装置であって、
前記アーム部に臨むロック片と、
前記ロック片を前記アーム部に向けて進退移動させる駆動源と、
前記アーム部に設けられた、前記開閉体が閉位置にあるときに前記ロック片を嵌め入れ可能なロック孔を有するロック片嵌合部と、
前記アーム部に設けられた、前記開閉体が閉位置以外の開位置にあるときに前記ロック片の進行方向への移動を規制するロック規制部と、を備える
ことを特徴とする開閉体のロック装置。
【請求項5】
請求項4に記載された開閉体のロック装置において、
前記ロック片は、前記アーム部の幅方向における一方側に、前記ヒンジの枢支軸に沿う方向に進退可能な姿勢で設けられ、
前記アーム部には、当該アーム部の長手方向に延び、且つ前記ロック片の後退方向に臨む平面部が設けられ、
前記平面部は、前記ロック孔を有し、前記ロック片嵌合部及び前記ロック規制部を構成している
ことを特徴とする開閉体のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の給油口などを収容するハウジングユニット及び開閉体のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の給油口は、車体のリヤフェンダ部で車体内方へ凹む凹部内に設けられ、燃料を補給する際にその凹部の開口を閉塞する開閉体、いわゆるフューエルリッドを開くことで外部に露出される。この給油口を開閉するリッドは、凹部の側方位置にあるヒンジに連結されたアーム部を有し、その開き動作に伴ってアーム部が凹部の開口から外方に延び出るほどに当該開口から離れるようになっており、給油口に給油ガンを差し込むための作業空間が確保される構造となっていることが多い。
【0003】
この種のリッドには、不正な開操作を防止することを目的にロック装置が設けられている。このようなロック装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたロック装置は、アーム部の幅方向における側方位置に配置されたロック片を駆動源(アクチュエータ)によってアーム部に向けて進退させる機能を有し、駆動源によって進行方向へ移動させたロック片(ロックロッド)をアーム部の側面に開口したロック孔に嵌め込むことにより、リッドの回転動作を規制するようになっている。
【0004】
また、そうしたロック装置の制御としては、所定の運転条件や車両操作によってリッドのロック状態を自動的に切り替えることが知られている。このようなロック装置の制御例は、特許文献2に開示されている。特許文献2に開示されたロック装置の制御では、自動車のドアがロック状態に切り替わるのと同時にリッドをロック状態に切り替え、ドアがアンロック状態に切り替わるのと同時にリッドもアンロック状態に切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−001384号公報
【特許文献2】特開2014−159673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示のロック装置では、リッドが開いたままの状態で上述したような自動的な切替え動作が行われ、意図せずロック片が進行方向に移動してロック状態へ移行されると、ロック片がロック孔から外れた位置で進行移動して、アーム部の背面側に突き出してしまう。そうなると、リッドを閉めようとしても、アーム部がロック片に閊えるためにリッドを閉めることができなくなる。また、ロック片が突き出た状態にあることは外見では判断できないため、それを知らずにリッドを閉めようとして、アーム部やロック片が破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開閉体が開いた状態にあるときにロック片が進行方向に移動しても開閉体が閉まらなくなることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、開閉体が開いているときのロック片の進行方向への移動を規制するようにした。
【0009】
具体的には、本発明は、ロック機能を有した開閉体付きのハウジングユニットと開閉体のロック装置とを対象とし、以下の解決手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、第1の発明は、ハウジングユニットであって、凹部を有するハウジングと、このハウジングにヒンジを介して連結されたアーム部を有し、ヒンジを中心とする回転動作により凹部の開口を開閉する開閉体と、この開閉体を凹部の開口を閉塞する閉位置でロックするロック装置とを備える。そして、第1の発明は、ロック装置が、アーム部に臨むロック片と、このロック片をアーム部に向けて進退移動させる駆動源と、アーム部に設けられた、開閉体が閉位置にあるときにロック片を嵌め入れ可能なロック孔を有するロック片嵌合部と、アーム部に設けられた、開閉体が閉位置以外の開位置にあるときにロック片の進行方向への移動を規制するロック規制部とを備えることを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のハウジングユニットにおいて、ハウジングの外周に、アーム部が収容されるアーム収容部が凹部から側方に張り出して設けられた構成を有する。ヒンジは、アーム収容部に設けられ、アーム収容部の張り出し方向と交差する方向に延びる枢支軸を有する。そして、第2の発明は、駆動源及びロック片が、枢支軸の軸方向における一方側でアーム収容部及び凹部と隣接する位置に配置されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第2の発明のハウジングユニットにおいて、ロック片が、ヒンジの枢支軸に沿う方向に進退可能な姿勢で設けられた構成を有する。アーム部のうち駆動源側に位置する部分には、当該アーム部の長手方向に延び、且つロック片の後退方向に臨む平面部が設けられている。そして、第3の発明は、その平面部が、ロック孔を有し、ロック片嵌合部及びロック規制部を構成していることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、開閉体のロック装置であって、凹部を有する車体にヒンジを介して連結されたアーム部を有し、ヒンジを中心とする回転動作により凹部の開口を開閉する開閉体を、凹部の開口を閉塞する閉位置でロックする機能を有する。そして、第4の発明は、アーム部に臨むロック片と、このロック片をアーム部に向けて進退移動させる駆動源と、アーム部に設けられた、開閉体が閉位置にあるときにロック片を嵌め入れ可能なロック孔を有するロック片嵌合部と、アーム部に設けられた、開閉体が閉位置以外の開位置にあるときにロック片の進行方向への移動を規制するロック規制部とを備えることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の開閉体のロック装置において、ロック片が、アーム部の幅方向における一方側に、ヒンジの枢支軸に沿う方向に進退可能な姿勢で設けられた構成を有する。アーム部には、当該アーム部の長手方向に延び、且つロック片の後退方向に臨む平面部が設けられている。そして、第5の発明は、その平面部が、ロック孔を有し、ロック片嵌合部及びロック規制部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、開閉体が開いた状態にあるときに意図せずロック片が進行方向へ移動してもそのロック片の移動はロック規制部によって規制されるので、ロック片がアーム部の背面側に突き出ることを防止できる。それによって、アーム部がロック片に閊えて開閉体が閉まらなくなる事態に陥ることを回避でき、開閉体の閉じ動作でアーム部やロック片が破損することもない。
【0016】
また、第1の発明に係るハウジングユニットは、ハウジングと開閉体とロック装置とが組み立てられた組立て品であるので、ハウジングに代えて車体に設けられた凹部に開閉体及びロック装置を組み付ける場合に比べて、車体への組付け作業が容易である。
【0017】
第2の発明によれば、アーム収容部が凹部から側方に張り出しているため、ヒンジの枢支軸の軸方向における一方側でアーム収容部及び凹部と隣接する位置にはスペースが形成されるが、そのスペースに駆動源及びロック片を配置するようにしたので、ハウジング、開閉体、駆動源及びロック片をコンパクトにまとめてハウジングユニットを小型化することができる。
【0018】
第3の発明によれば、ロック片嵌合部及びロック規制部の両方をアーム部に設けられた平面部によって構成するようにしたので、第2の発明に係るハウジングユニットを簡単な構造で実現することができる。
【0019】
また、第3の発明によれば、ロック片がロック片嵌合部及びロック規制部と近接した位置に設けられるので、ロック片嵌合部のロック孔に嵌め入れるために必要なロック片の進行方向への移動ストロークを縮めることができる。それにより、ロック片自体の長さを短くすることができるので、ハウジングユニットの小型化によりいっそう寄与することができる。
【0020】
第4の発明によれば、第1の発明のロック装置と同じ構成を備えるので、第1の発明と同じ作用効果が得られて、開閉体が開いた状態にあるときにロック片が進行方向に移動しても、開閉体が閉まらなくなることと、開閉体の閉動作でアーム部やロック片が破損することとを防止できる。
【0021】
第5の発明によれば、ロック片嵌合部及びロック規制部の両方をアーム部に設けられた平面部によって構成するようにしたので、第4の発明に係るロック装置を簡単な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るフューエルフィラーボックスアセンブリのリッド閉状態での全体斜視図である。
図2】実施形態に係るフューエルフィラーボックスアセンブリのリッド開状態での全体斜視図である。
図3】実施形態に係るフューエルフィラーボックスアセンブリの側面図である。
図4図1のIV−IV線におけるフューエルフィラーボックスアセンブリの断面図である。
図5】実施形態に係るフューエルフィラーボックスアセンブリでのリッドの全開状態と開閉補助動作を切り替える分岐位置とを示す図3相当図である。
図6】実施形態に係るフューエルフィラーボックスアセンブリのリッド開位置でのロック規制状態を示す図4相当図である。
図7】その他の実施形態に係るロック装置を備えた燃料供給部のリッド開状態での全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0024】
この実施形態では、本発明に係るハウジングユニット及びそのロック装置について、自動車の車体左側のリヤフェンダ部に取り付けられる、ロック機能を有したリッド付きのフューエルフィラーボックスアセンブリ(以下、単に「ボックスアセンブリ」と称する)を例に挙げて説明する。ボックスアセンブリは、自動車に搭載の燃料タンクに連通接続されたフューエルパイプの給油口を収容し、自動車の燃料供給部を構成する部品である。
【0025】
−ボックスアセンブリの構成−
図1に、このボックスアセンブリ1のリッド5を閉じた状態での全体斜視図を示す。図2に、このボックスアセンブリ1のリッド5を開いた状態での全体斜視図を示す。図3に、このボックスアセンブリ1の側面図を示す。また、図4に、図1のIV−IV線におけるボックスアセンブリ1の断面図を示す。なお、図1では、リッド5をロックした状態を示しており、便宜上、そのリッド5を構成するアウタ部材41の図示を2点鎖線で表した外縁形状のみとして省略し、リッド5の内部構造を部分的に図示している。
【0026】
ボックスアセンブリ1は、図1図4に示すように、ハウジングとしてのインレットボックス3と、インレットボックス3の開口を開閉する開閉体としてのフューエルリッド(以下、単に「リッド」と称する)5と、リッド5の開閉動作を補助する開閉補助機構7と、リッド5をインレットボックス3の開口を閉塞した閉位置でロックするロック装置9とを備え、これらが一体に組み合わせられてモジュール化された組立て品である。こうしたボックスアセンブリ1は、予め組み立てられるため、車体への組み付け作業が比較的容易である。
【0027】
<インレットボックスの構成>
インレットボックス3は、射出成形などで成形される樹脂成形品であって、例えばポリプロピレン(PP:Polypropylene)やそれにガラス繊維や炭素繊維などの繊維補強材を含有した熱可塑性樹脂からなる。このインレットボックス3は、概略円形カップ状に形成された凹部11と、凹部11から前側方に張り出したアーム収容部13とを有する。これら凹部11及びアーム収容部13の両内部空間は、インレットボックス3内の空間として繋がっている。
【0028】
凹部11の底壁15には、フューエルパイプの給油口部が挿通されるパイプ孔17が設けられている。このパイプ孔17の周縁には、フューエルパイプとの間を密閉するゴム製のグロメット19が設けられている。また、凹部11の開口は、円形の一部を直角に切り欠いたような形状とされている。この開口の切欠き形状は、アーム収容部13の直ぐ上側に位置している。凹部11の開口周縁には、当該開口の外側方に突出したフランジ部21が全周に亘って設けられている。
【0029】
フランジ部21は、その周方向に所定の間隔をあけて形成された複数の貫通孔23を有する。このフランジ部21の裏面、つまり車内側に臨む面には、水密性を有するゴム製のシール部25が一体に設けられている。ボックスアセンブリ1は、自動車のリヤフェンダ部に形成された開口の段落ちした周縁にシール部25を密着させた状態で、フランジ部21周縁に設けられた図示しない係合爪を当該開口の周縁部分に係合させることにより、当該リヤフェンダ部に取り付けられる。
【0030】
シール部25は、各貫通孔23を通してフランジ部21の表面側、つまり車外側に突出する突起27を有する。この突起27は、リッド5の閉位置でその裏面(後述するリッド本体35の裏面)に対向し、リッド5が閉じ動作において凹部11の開口周縁に当接する際の衝撃を吸収する緩衝用に設けられている。このようなシール部25は、例えば、インレットボックス3の成形時に2色成形によって併せて成形される。
【0031】
また、凹部11のうち開口の切欠き形状に対応する部分には、当該凹部11の周壁が内方へ突出し且つ外側が凹んだ縦断面L字状の駆動源搭載部29が設けられている。この駆動源搭載部29の下壁のうち左端寄りの部分、つまり車外側の部分には、後述するロック片65が挿通される挿通孔30が形成されている。
【0032】
また、アーム収容部13の内部には、リッド5を開閉可能に支持するヒンジ33が設けられている。ヒンジ33は、アーム収容部13の張り出し端寄りで左側(車外側)の隅に位置しており、上下方向に延びる枢支軸をなす支持ピン31を有する。この支持ピン31の両端部は、アーム収容部13の上下両側の壁部に形成された図示しないピン孔に挿通されて回転自在に支持されている。
【0033】
<リッドの構成>
リッド5は、フランジ部21の外径よりも一回り大きな円形状の外形を有するリッド本体35と、リッド本体35の一端部、具体的にはリッド5が閉位置にあるときに前側に位置する端部の裏面から前側方へ延びるアーム部37とを有する。このリッド5は、車内側に位置するインナ部材39と、車外側に位置するアウタ部材41とを組み合わせてなり、両部材39,41の間に内部空間を有する。
【0034】
インナ部材39及びアウタ部材41は共に、射出成形などで成形される樹脂成形品であって、例えばインレットボックス3と同じ熱可塑性樹脂からなる。インナ部材39は、リッド本体35の内側半体とアーム部37を構成している。アウタ部材41は、リッド本体35の外側半体を構成している。アウタ部材41の外周縁部のうちアーム部37とは反対側の部分、つまり後方側に位置する部分には、車外側に突出した把手部42が設けられている。
【0035】
インナ部材39のうちリッド本体35を構成するインナ本体部の外周縁には、アウタ部材41側に立ち上がった外周板部56が設けられている。また、インナ本体部の内部空間側の面には、リッド5の回転径方向(閉位置では前後方向)に間隔をあけて対峙する一対の爪片43が上下両側に一組ずつ設けられている。アウタ部材41のうち各爪片43に対応する部分の内部空間側の面には、断面L字状の係合片45が設けられている。アウタ部材41は、それら各係合片45を対応する爪片43に係合させることによりインナ部材39に取り付けられている。
【0036】
アーム部37は、概略U字形状やスワンネック形状をなしていて、アーム収容部13内でヒンジ33に接続され、ヒンジ33を介してインレットボックス3に連結されている。このアーム部37は、リッド本体35からその裏側に向けて張り出した凸面をなす湾曲部47と、この湾曲部47の先端部分からリッド本体35の側方位置に向けて延びる折返し部49とを有する。
【0037】
折返し部49の先端部分には、アーム部37の幅方向に貫通したピン孔51が形成されている。このピン孔51には、支持ピン31が締り嵌め状態に挿通されている。アーム部37は、そのピン孔51を通した支持ピン31に固定されており、ヒンジ33を介してアーム収容部13に回転自在に連結されている。
【0038】
湾曲部47は、ピン孔51又はその付近を中心とする円周に沿った概略円弧状に形成されている。この湾曲部47は、アーム部37の本体をなすベース板部52と、このベース板部52の上下両端に設けられた一対の側板部53,55とを有する。一対の側板部53,55は、アーム部37の長手方向に延びており、外周板部56と一繋ぎに形成されている。
【0039】
これら一対の側板部53,55のうち上側に位置する側板部53(後述する駆動源67側に位置する側板部53)は、上面が平坦な面に形成された平面部である。この上側の側板部53のうちアーム部37の基端側の部分には、上下方向に貫通するロック孔57が形成されている。このロック孔57は、ベース板部52とは反対側に開放された切欠きであって、ロック装置9の一部(後述のロック片嵌合部69)を構成している。
【0040】
リッド本体35は、ヒンジ33を中心とする回転動作により凹部11の開口を開閉する。インナ部材39のうちリッド本体35を構成する部分は、リッド5が閉位置にあるときに凹部11の開口内に位置する。アウタ部材41は、リッド5が閉位置にあるときに凹部11の外側でその開口を覆う。このアウタ部材41の表面、つまりリッド本体35の外面には、自動車の外装と同じ色の塗装が施されている。
【0041】
<開閉補助機構の構成>
開閉補助機構7は、カム形状のカム駒59と、トーションばね61とによって構成されている。カム駒59は、アーム収容部13の下側でヒンジ33に対応する部分に配置されている。カム駒59のベース円の中心部分は、アーム収容部13のピン孔から下方に突出した支持ピン31の端部に固定されている。それにより、カム駒59は、支持ピン31の回転動作、つまりはリッド5の開閉動作に連動して回転し、ベース円から突出するトップ部59aの位置が変位するようになっている。
【0042】
トーションばね61は、上記カム駒59と、アーム収容部13の下面に設けられた円柱形の支持突片63との間に装着されている。具体的には、トーションスプリング61の一端部は、カム駒59のトップ部59aに揺動自在に取り付けられている。また、トーションばね61の他端部は、円弧状に形成された支承部61aを有しており、支持突片63に対し、その支承部61aを嵌合させて当該支持突片63の周方向に揺動自在に支持されている。
【0043】
図5に、ボックスアセンブリ1でのリッド5の全開状態と開閉補助機構7が補助動作を切り替える分岐位置(二点鎖線で示す位置)とを表した図3相当図を示す。開閉補助機構7では、図5に示すように、補助する動作が当該リッド5の回転方向における位置に応じて開き動作と閉じ動作とのいずれかに切り替わる。
【0044】
すなわち、リッド5が所定の位置(図5に二点鎖線で示す位置)よりも閉じ側の位置にあるときは、トーションばね61の付勢力によってカム駒59が下面視で時計回りの方向に付勢される。それにより、リッド5が閉じ方向D1に回転されて、リッド5の閉じ動作が補助される。また、リッド5が所定の位置よりも開き側の位置にあるときには、トーションばね61の付勢力によってカム駒59が下面視で反時計回りの方向に付勢される。それにより、リッド5が開き方向D2に回転されて、リッド5の開き動作が補助される。
【0045】
<ロック装置の構成>
ロック装置9は、アーム部37に臨むロック片65と、ロック片65をアーム部37に向けて進退移動させる駆動源67と、進行方向へ移動したロック片65と嵌合されるロック片嵌合部69と、ロック片65の進行方向への移動を規制するロック規制部71とを備える。
【0046】
ロック片65及び駆動源67は、インレットボックス3に設けられた駆動源搭載部29の凹所に一体に搭載されて、支持ピン31の軸方向における一方側であり、アーム部37の幅方向における一方側でもあるアーム収容部13の上側で当該アーム収容部13及び凹部11と隣接する位置に配置されている。こうして、アーム収容部13及び凹部11に隣接する位置に形成されるスペースを駆動源67の搭載部分として利用すれば、ボックスアセンブリ1の小型化を図ることができる。
【0047】
ロック片65は、駆動源67に対し進退動作によって当該駆動源67のケースから出没可能に組み付けられている。このロック片65は、駆動源搭載部29の挿通孔30に対応する箇所に支持ピン31に沿う方向に進退可能な姿勢で設けられており、リッド5が閉位置にあるときにその挿通孔30と通してロック孔57と対応する。
【0048】
駆動源67は、詳細な図示は省略するが、自動車の制御装置から出力される制御信号に応じてロック片65を進退移動させ、ロック片65の進行方向への移動が阻害された場合には無理に同方向への移動を行わせず、所定の付勢力でロック片65を進行方向へ付勢する構成とされている。
【0049】
こうした駆動源67の構成としては、例えば、上記の制御信号に応じて駆動するモータと、モータの駆動によって回転される減速ギアと、減速ギアの回転によって進退方向にスライドするギア付きスライダと、ギア付きスライダの進退移動をロック片65に伝達するコイルばね等の付勢部材とを備える構成が挙げられる。
【0050】
ロック片嵌合部69は、アーム部37上側の側板部53のうち上記ロック孔57が形成された部分からなる。すなわち、ロック片嵌合部69は、ロック孔57及びその周縁部のことである。ロック孔57は、アーム部37の側板部53を貫通した上述した通りの切欠きであって、ロック片65を嵌め入れ可能なサイズに形成されており、リッド5が閉位置にあるときにのみロック片65と対応する。
【0051】
図6に、ボックスアセンブリ1でのリッド5が開位置にあるときのロック規制を説明するための図4相当図を示す。ロック規制部71は、アーム部37上側の側板部53のうち上記ロック片65を除く部分で構成されている。したがって、このロック規制部71は、平板状に形成されていて、駆動源67側に臨む平坦な上面を有する。このように、アーム部37上側の側板部53は、ロック片嵌合部69及びロック規制部71の両方を構成している。
【0052】
ロック規制部71は、図6に示すように、リッド5の開閉動作が行われると、ロック片65の対応箇所を経由して移動されるようになっており、リッド5が閉位置以外の開位置にあるときにはロック片65と常に対応する。換言すると、ロック片65は、リッド5の回転域において、閉位置を除く全範囲でロック規制部71と対応し、閉位置でのみロック孔57と対応して進行方向への移動が全ストロークに亘って許容される。
【0053】
−ボックスアセンブリのロック動作−
次に、上記構成のボックスアセンブリ1でのリッド5のロック動作について説明する。
【0054】
ボックスアセンブリ1では、ロック片65が後退した位置にあるとき、つまり駆動源67のケース内に収納された状態にあるときには、リッド5がインレットボックス3に固定されていないアンロック状態である。このアンロック状態では、リッド5を自由に開け閉めすることができる。
【0055】
また、ボックスアセンブリ1では、リッド5が閉じられた状態で、エンジンの制御装置からのロック状態への切り替えを指示する制御信号が駆動源67に送られると、駆動源67は、図1に示すように、ロック片65を進行方向へ移動させてロック孔57に嵌め込む。そうすると、ロック片65がロック片嵌合部69に掛け止められて、リッド5がインレットボックス3に固定されたロック状態となる。このロック状態では、リッド5を開け閉めすることができない。
【0056】
また、ボックスアセンブリ1では、リッド5が開いた状態にあるときに意図せずロック片65が進行方向へ移動した場合、そのロック片65は、ロック規制部71に突き当たって、それ以上の進行方向への移動が規制される。これによって、ロック片65がアーム部37の背面側に突き出るのを防止でき、アーム部37がロック片65に閊えてリッド5が閉まらなくなる事態に陥るのを回避できる。
【0057】
この場合、ロック片65は、ロック規制部71の平坦な上面に対し所定の付勢力によって突き当たった状態とされる。この状態においても、ロック片65をロック規制部71に摺動させながら、リッド5を閉じることが可能である。そして、リッド5が閉位置にまで回転されると、その時点で、ロック片65が所定の付勢力により進行方向に移動してロック孔57に嵌まり込み、リッド5がロックされる。
【0058】
−実施形態の効果−
この実施形態に係るボックスアセンブリ1によると、リッド5が開いた状態にあるときにロック片65が進行方向に移動しても、リッド5が閉まらなくなる事態に陥ることを回避でき、リッド5の閉じ動作でアーム部37とその背面側に突き出したロック片65とが干渉し合って破損することもない。
【0059】
《その他の実施形態》
図7に、車体のリヤフェンダ部101にリッド5を直接取り付けた態様の自動車の燃料供給部103を示す。なお、図7では、便宜上、上記実施形態のボックスアセンブリ1の構成に相当する部分には、同一の符号を付している。
【0060】
上記実施形態では、リッド5がインレットボックス3とモジュール化されたボックスアセンブリ1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、図7に示すように、車体のリヤフェンダ部101に凹部11を有したインレットボックス3が一体に設けられ、この凹部11の開口を開閉するリッド5がリヤフェンダ部101に直接取り付けられた構造において、リッド5をロックするロック装置9に対しても適用可能である。こうした構造に適用されるロック装置9は、少なくとも、上記実施形態と同様な構成を有するロック片65、駆動源67、ロック片嵌合部69及びロック規制部71を備える。
【0061】
こうした形態によっても、上記実施形態と同様に、リッド5が開いた状態にあるときにロック片65が進行方向に移動しても、リッド5が閉まらなくなったり、リッド5の閉じ動作でアーム部37やロック片65が破損したりすることを防止できる。
【0062】
以上のように、本発明に係る技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、ここに開示する技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0063】
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0064】
上記実施形態では、ロック片嵌合部69のロック孔57は切欠きからなるとしたが、これに限らない。切欠きはロック孔57の一例に過ぎず、当該ロック孔57は、ロック片65を嵌め入れ可能なものであれば、円形や四角形等の貫通孔であってもよく、ロック片65が対応する側に開口した凹部であっても構わない。
【0065】
また、上記実施形態では、ロック片嵌合部69及びロック規制部71が共にアーム部37上側の側板部53によって構成されているとしたが、これに限らない。それらロック片嵌合部69及びロック規制部71は、リッド5の開閉動作においてアーム部37と一体に回転移動するものであれば、アーム部37とは別体の部材によって構成されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、リッド5を構成するインナ部材39とアウタ部材41とが爪片43と係合片45との係合によって組み合わせられている構成を例に挙げて説明したが、これらインナ部材39とアウタ部材41とは、タッピングスクリュー等の締結具により組み合わせられて強固に固定されていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、本発明に係るハウジングユニット及び開閉体のロック装置について自動車の燃料供給部を構成するボックスアセンブリ1を例に挙げて説明したが、これに限らない。本発明は、電気自動車の給電口(充電口)を収容する給電部を構成するボックスアセンブリ及びそのリッドのロック装置にも適用することができるし、その他、凹部が設けられた被取付体に対し凹部開口を開閉する開閉体が取り付けられた構造体であれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、本発明は、自動車の給油口や給電口などを収容するハウジングユニット及び開閉体のロック装置について有用である。
【符号の説明】
【0069】
1…ボックスアセンブリ(ハウジングユニット)、
3…インレットボックス(ハウジング)、5…リッド(開閉体)、7…開閉補助機構、
9…ロック装置、11…凹部、13…アーム収容部、15…底壁、17…パイプ孔、
19…グロメット、21…フランジ部、23…貫通孔、25…シール部、
27…突起、29…駆動源搭載部、30…挿通孔、31…支持ピン(枢支軸)、
33…ヒンジ、35…リッド本体、37…アーム部、39…インナ部材、
41…アウタ部材、42…把手部、43…爪片、45…係合片、47…湾曲部、
49…折返し部、51…ピン孔、52…ベース板部、53,55…側板部、
56…外周板部、57…ロック孔、59…カム駒、59a…トップ部、
61…トーションスプリング、61a…支承部、63…支持突片、65…ロック片、
67…駆動源、69…ロック片嵌合部、71…ロック規制部、
101…リヤフェンダ部(車体)、103…燃料供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7