(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、この発明による装置、方法、プログラムの一実施の形態について説明する。この発明の経路案内装置は、例えば、スマートフォンなどと呼ばれる高機能携帯電話端末、タブレットPCなどとして、また、これらの装置において実現できる。しかし、以下においては説明を簡単にするため、この発明による経路案内装置を高機能携帯電話端末によって実現する場合を例にして説明する。
【0014】
[経路案内装置の構成例]
図1は、この実施の形態の経路案内装置1の構成例について説明するためのブロック図である。
図1に示した経路案内装置において、送受信アンテナ101A及び無線通信部101は通信機能を、制御部102は当該経路案内装置の各部を制御する機能を、記憶装置103は、例えば大容量の半導体メモリを備え、情報記憶保持機能を実現する。操作部104は、経路案内装置1の筐体の所定の位置に設けられた、電源のオン/オフスイッチ、音量調整キー、その他の幾つかのファンクションボタンなどからなる部分である。
【0015】
地
図DB105、歩行者NWDB106のそれぞれは、例えば、大容量の半導体メモリに形成され、所定のデータを記憶保持する。ここで、地
図DB105における文字「DB」は、データベース(Data Base)の略称である。また、歩行者NWDB106における文字「NWDB」はネットワークデータベース(Network Data Base)の略称である。
【0016】
地
図DB105は、例えば、市街図、道路図、広域図、地方図、全国図を表示するための地図データを記憶する。市街図、道路図、広域図、地方図、全国図を表示するための地図データは、地図を描画するための例えばベクトルデータやラスタデータ、注記(注釈)データなどを含む。また、市街図、道路図、広域図、地方図、全国図などは、種々の縮尺のものが用意されている。
【0017】
歩行者NWDB106は、ノードデータ及びリンクデータからなる歩行者ネットワークデータを記憶保持する。ノードデータは、ランドマーク、建物、施設、交差点、分岐点、屈曲点などの地点を表す。また、リンクデータは、ノードデータを結ぶ線分によって、歩行者が歩行可能なルートを示す。具体的に、リンクデータは、歩行者が通行可能な一般道、種々の道路に付随する歩道、横断歩道、歩道橋、建物内や公園内の通り抜け可能な歩行者用通路など、歩行者が通行可能な種々の道路(通路)を示す。そして、各リンクデータには、そのリンクを構成するノードの番号と、リンクコストと、リンク種別等の情報が対応付けられている。
【0018】
リンクコストは、そのリンクが表す道路を通行する際に使用者(ユーザ)にかかる負荷を表している。この実施の形態においてリンクコストは、そのリンクが表す道路の長さに応じて設定されている。なお、リンクコストは、そのリンクが表す道路を通行するのに要する時間に応じて設定されていてもよい。そして、リンクコストは、いわゆるダイクストラ法により、リンクコストが最小となる経路を探索する場合に参照される。リンク種別は、当該リンク部分が、一般道、種々の道路に付随する歩道、横断歩道、歩道橋、建物内や公園内の通り抜け可能な歩行者用通路などを示す。
【0019】
センサ部107は、6軸センサ、地磁気センサ(方位センサ)などの種々のセンサなどからなる。そして、センサ部107は、経路案内装置1の様々な状態を検出することができる。具体的には、経路案内装置1の傾きや向きが分かる。これにより、経路案内装置1が縦向きや横向きなどのどのような姿勢なのか、また、その姿勢で縦方向(長手方向)、横方向(縦方向に交差する方向)、表示画面に直交する方向は、どの方向を向いているのかを検知できる。
【0020】
無線LAN(Local Area Network)部108及び無線LANアンテナ108Aは、例えば、Wi−Fi(登録商標)規格の無線LANに対応し、近隣に位置する無線LANのアクセスポイントを通じて通信を行う機能を実現する。なお、インターネット上に設けられた所定の管理サーバ装置において、各アクセスポイントの識別IDと設置位置などが管理されている。
【0021】
このため、現在位置において、受信した複数のアクセスポイントの識別IDと受信電界強度とを当該管理サーバ装置に送信することにより、当該管理サーバ装置において経路案内装置1の現在位置を特定し、この特定した現在位置の通知を受けることができる。また、経路案内装置1が、管理サーバで管理されている各アクセスポイントの識別IDと設置位置などからなるデータベースを備えていれば、通信したアクセスポイントの識別IDと受信電界強度とを用いて、自機において自機の現在位置を特定することもできる。
【0022】
GPS部109及びGPSアンテナ109Aは、複数の人工衛星からの信号を受信して自機の現在位置を取得する現在位置取得機能を実現する。そして制御部102は、無線LANアンテナ108A及び無線LAN通信部108を通じて受信したアクセスポイントからの信号を利用した現在位置取得機能とGPSアンテナ109A及びGPS部109により実現される現在位置取得機能とを併用できる。これにより、制御部102は、より正確に自機の現在位置を特定することができるようにしている。
【0023】
表示部111Dは、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やOELD(organic electroluminescence display)などの薄型の表示装置である。タッチセンサ111Sは、表示部111Dの表示画面の上側または下側に重畳配置され、使用者の指等により指示された位置を検出する。これら表示部111Dとタッチセンサ111Sとによって、いわゆるタッチパネル110を構成している。タッチパネル110は、表示出力と操作入力が可能なユーザーインターフェースを実現する。
【0024】
音声処理部112は、制御部102からの種々の音声データから音声出力端子113に供給する音声信号を形成し、これを音声出力端子113に供給する。また、音声処理部112は、制御部102や後述する案内処理部114からの制御に応じて、音声出力端子113に供給する音声信号の音量、音質、テンポ、曲調(キー)などを調整する処理ができるものである。音声出力端子113は、イヤホン2やスピーカとの接続部を構成する。
【0025】
この実施の形態において、音声出力端子113には、イヤホン2が接続されている。これにより、音声処理部112からの音声信号は、音声出力端子113を通じてイヤホン2に供給され、イヤホン2から再生音声が放音される。このように、音声処理部112と音声出力端子113に接続されたイヤホン2とによって、音楽を再生して放音したり、アラーム音を再生して放音したり、種々の音声メッセージなどを再生して放音したりするなど、音声出力インターフェースを実現している。
【0026】
案内処理部114は、制御部102の制御の下、音声処理部112が出力する音声信号に対して施す処理を制御する。音声処理部112は、イヤホン2の左チャンネルのイヤホンと右チャンネルのイヤホンのそれぞれから放音する音声の音量レベルをチャンネルごとに調整できる。このため、案内処理部114は、左チャンネルのイヤホンと右チャンネルのイヤホンのそれぞれから放音される音声の音量レベルを、チャンネルごとにどの程度の音量レベルにするのかを制御し、再生音声の音量レベルの変化により経路案内を行う。なお、音声処理部112は、音量の他、音質、テンポ、曲調(キー)などを調整することもできるものである。このため、案内処理部114は、必要に応じて音質、テンポ、曲調(キー)などを変更するように、音声処理部112を制御することもできる。
【0027】
なお、制御部102は、目的地と、現在位置と、進行方向と、地図情報とに基づいて、案内処理部114を介して音声処理部112が出力する音声信号に対して施す処理を制御する。これにより、処理された音声信号に応じた音声がイヤホン2から放音されることになるが、イヤホン2から放音される音声の出力態様によって、使用者に対する経路案内を行うことができるようにしている。
【0028】
このように、この実施の形態においては、制御部102と案内処理部114とが協働して、案内処理手段としての機能を実現している。もちろん、案内処理部114が、制御部102が実現する機能をも備え、目的地と、現在位置と、進行方向と、地図情報とに基づいて、音声処理部112が出力する音声信号に対して施す処理を制御するように構成することもできる。なお、制御部102と案内処理部114とが協働して音声処理部112に対して行う制御の詳細については後述する。
【0029】
また、制御部102と案内処理部114とが協働して行う経路案内処理時において利用される情報の内、目的地は、タッチパネル110を通じて使用者によって入力される情報である。また、現在位置は、経路案内装置1が起動されているときには常時、GPSアンテナ109A及びGPS部109を通じて順次に取得される情報である。また、進行方向は、センサ部107によって検出される経路案内装置1の向き、GPS部109を通じて順次に取得される現在位置の変化の方向(移動軌跡の方向)、あるいは、これらを考慮することにより制御部102において検知される情報である。
【0030】
また、目的地は一度入力された後は変わらないが、現在位置及び進行方向は、使用者が目的地に向って移動している場合には、時間の経過に従って変化するものである。このため、現在位置及び進行方向は、順次に最新の現在位置及び進行方向が取得され、利用される。
【0031】
経路探索部115は、この実施の形態においては、現在位置を出発地とし、使用者により入力された目的地までの移動経路(移動ルート)を、歩行者NWDB106の歩行者ネットワークデータを用いて探索する。探索されたルートは地図上に示され、これが表示部111Dに表示されて使用者に提供される。そして、制御部102は、タッチパネル110を通じて使用者からの経路の選択入力を受け付けて、選択された経路を経路案内に用いる経路として設定し、設定された当該経路を辿って目的地に向うように、経路案内を行うこともできるようにされる。
【0032】
音楽再生部116は、制御部102の制御の下、記憶装置103に蓄積されている多数の音楽データ(楽曲データ)の中から、使用者からの指示に応じた音楽データを抽出し、これを音声処理部112に供給する。これにより、記憶装置103から読み出した音楽データに応じた音楽が再生される。また、音楽再生部116は、記憶装置103に蓄積されている多数の音楽データを、所定の順番で連続して再生するようにしたり、再生順番を任意に変更して再生するようにするいわゆるシャッフル再生を行うようにしたりすることもできる。すなわち、音楽再生部116は、この実施の形態の経路案内装置1において、音楽再生機能を実現する。
【0033】
地図表示処理部117は、制御部102の制御の下、例えば、経路案内時において、自機の現在位置を含むエリアの地図を表示するための地図データを地
図DB105から読み出して、これを表示部111Dに供給する。これにより表示部111Dに、当該地図データに応じた地図が表示される。また、地図表示処理部117は、自機の現在位置の変化に応じて、現在位置を含むエリアの地図を順次に変える処理も行う。また、地図表示処理部117は、使用者からの指示に応じた場所を含む地図を表示する処理も行う。
【0034】
そして、この実施の形態の経路案内装置1は、地図表示と音声ガイダンスとにより経路案内を行う従来の経路案内装置とは異なる。すなわち、基本的に使用者は地図表示を常時確認する必要はなく、また、例えば、「次の交差点を右折です。」などといった音声ガイダンスを提供することもない。この実施の形態の経路案内装置1は、再生している例えば音楽の音量制御など、再生音声の出力態様を変えることにより、使用者に対して経路案内を行うものである。
【0035】
[音楽等による経路案内処理]
図2は、
図1に示した構成を有する経路案内装置1において行われる音楽等の再生音声を利用した経路案内処理について説明するためのフローチャートである。
図2に示すフローチャートの処理は、例えば、経路案内装置1の表示部111Dに表示された「音楽による経路案内機能」に対応するアイコンが選択された場合に、制御部102により実行される。
【0036】
そして、制御部102は、まず、GPS部109を通じて自機の現在位置を取得し(ステップS101)、当該現在位置を出発地とし、目的地などの必要となる情報の入力を受け付けるための初期画面を表示部111Dに表示する(ステップS102)。次に、制御部102は、タッチパネル110を通じて、目的地などの経路案内に必要になる情報の入力を受け付ける(ステップS103)。表示部111Dには、ステップS102において初期画面が表示されているので、この初期画面に対してタッチパネル110を通じて使用者は情報の入力を行うことになる。
【0037】
なお、ステップS103では、目的地の他、経路探索モードや経路案内モードの選択などの入力も受け付けられる。経路探索モードには、例えば、「時間優先」、「距離優先」、「右左折の少ない経路優先」、「階段の少ない経路優先」といったものがある。また、経路案内モードには、詳しくは後述もするが、音楽の音量制御により目的地の方向を案内する「目的地方向案内モード」と、音楽の音量制御により探索された経路を辿れるように案内する「経路詳細案内モード」とがある。
【0038】
そして、制御部102は、経路探索部115を制御して、ステップS103で受け付けた情報を考慮し、出発地(現在位置)から目的地に至る経路(ルート)を探索する(ステップS104)。次に、制御部102は、経路探索部115と地図表示処理部117とを制御し、探索処理の結果得られた経路を示すようにした地図を表示部111Dに表示して、使用者からの経路の選択及び設定入力を受け付ける(ステップS105)。
【0039】
ステップS105では、複数の経路が探索された場合、その全てが表示部111Dに表示され、使用者は自分の目的の合った経路を選択することができる。また、ステップS105では、選択した経路の変更入力や選択した経路の確定入力といった経路選択に関する一連の操作入力を行うことができるようにされる。
【0040】
この後、制御部102は、使用者からの音楽再生指示を受け付けて、音楽再生部116を制御し、音楽の再生を開始する(ステップS106)。ステップS106では、同じ音楽を繰り返し再生したり、いわゆるシャッフル再生を行ったり、指示されたフォルダに格納されて異なる音楽の音楽データを順番に再生したりするなどのことができる。そして、制御部102は、GPS部109からの現在位置の取得処理と自機の進行方向の検知処理とを開始する(ステップS107)。これにより、経路案内装置1は、常時、その時点の現在位置及び進行方向を把握することができる。
【0041】
なお、進行方向の検知は、使用者が移動している状態における経路案内装置1の姿勢を特定し、その姿勢の時における使用者の移動している方向を進行方向として検知する。したがって、使用者が経路案内装置1を手に持って地図表示を見ながら歩いているときでも、また、使用者が経路案内装置1を上着の内ポケットに入れて歩いているときでも、その他の種々の場合であっても、使用者の進行方向を適切に検知できなければならない。
【0042】
このため、制御部102は、センサ部107からの経路案内装置1の姿勢と向きだけでなく、必要に応じて、現在位置の変化の軌跡や探索された経路などをも考慮する。すなわち、経路案内装置1の姿勢は現在どのような状態であり、使用者はどの方向に移動しているから、経路案内装置1のセンサ部107で検出される方向のどの方向が使用者の進行方向(使用者の向き)であるのかを適切に検知できるようにしている。
【0043】
例えば、経路案内装置1が表示部111Dを使用者の方に向けて使用者の上着の内ポケットに入れられている姿勢にあるとする。この姿勢の場合、経路案内装置1の表示部111Dの表示画面は、重力方向(鉛直方向)とほぼ並行な状態にある。この場合、使用者の進行方向は、表示部111Dの表示画面に直交すると共に、表示部111Dのある前面方向から経路案内装置1の背面に向う方向となる。したがって、経路案内装置1のセンサ部107において検出される、表示部111Dの表示画面に直交し、表示部111Dのある前面方向から経路案内装置1の背面に向う方向が示す方位(方角)が、使用者の進行方向となる。
【0044】
また、例えば、経路案内装置1が使用者の手に持たれ、使用者が表示部111Dを上から覗き込むようにして見ている姿勢にあるとする。この姿勢の場合、経路案内装置1の表示部111Dの表示画面は、重力方向(鉛直方向)と交差する状態にある。この場合、使用者の進行方向は、表示部111Dの表示画面の下側から上側に向う方向となる。もちろん、経路案内装置1が縦向きなのか、横向きなのかも考慮され、また、経路案内装置1の傾きも考慮される。したがって、経路案内装置1のセンサ部107において検出される、表示部111Dの下側から上側に向かう方向が示す方位(方角)が、使用者の進行方向となる。
【0045】
そして、制御部102は、案内処理部114を制御して、上述したように、ステップS103で受け付けた経路案内モードに応じた経路案内処理を実行する(ステップS108)。この実施の形態において、ステップS108では、音楽の音量制御により目的地の方向を案内する「目的地方向案内モード」による経路案内と、音楽の音量制御により探索された経路を辿れるように案内する「経路詳細案内モード」による案内の何れかが行われる。
【0046】
経路案内装置1を所持する使用者が目的地に到着したり、経路案内処理を終了させたりした場合には、ステップS108で実行された経路案内処理は終了し、所定の終了処理を実行して(ステップS109)、この
図2に示す処理を終了する。なお、ステップS109の終了処理は、表示部111Dの表示を
図2に示した音楽による経路案内機能を実行させる前の表示に戻すなどの所定の処理が実行される。
【0047】
このようにして、この実施の形態の経路案内装置1では、再生音声の出力態様によって経路案内を行うようにしている。なお、
図2には示さなかったが、例えば、ステップS103やステップS105、ステップS106などの使用者からの操作入力を受け付けるステップでは、「音楽等の再生音声を利用した経路案内処理」を終了させるための終了操作を受け付けることもできるようにされている。
【0048】
このため、使用者からの終了操作を受け付けた時には、例えば、割り込み処理により、所定の終了処理を行って、
図2に示す処理を終了することもできるようになっている。すなわち、使用者の終了指示を受け付けた場合にも、この
図2に示す音楽等の再生音声を利用した経路案内処理を終了させることもできるようになっている。
【0049】
以下では、
図2に示したステップS108で実行される目的地案内モード時の処理と経路詳細案内モード時の処理のそれぞれについて具体的に説明する。
【0050】
[目的地方向案内モード]
図3は、
図2に示したステップS108の処理において実行される目的地方向案内モード時の経路案内処理を説明するためのフローチャートである。また、
図4は、
図3に示した目的地方向案内モードの音量制御の例を説明するための図である。以下に説明する目的地方向案内モードは、イヤホン2を通じて使用者により聴取される再生音声の音量を制御することにより、使用者が常に目的地の方向を認識できるようにし、使用者が目的地へ迷うことがないように誘導できるようにするものである。
【0051】
制御部102は、
図3に示す目的地方向案内モードの経路案内処理を実行すると、まず、使用者の向き(進行方向)を特定する(ステップS201)。この実施の形態の経路案内装置1では、
図2のステップS107で開始された処理により、センサ部107からの経路案内装置1の姿勢と向き、現在位置の変化の軌跡、探索された経路などをも考慮して、使用者の進行方向が検知されるようになっている。ステップS201では、この検知結果に基づいて、現時点における使用者の進行方向を特定する。
【0052】
次に、制御部102は、地図上において、現在位置から目的地の方向である目的地方向を特定する(ステップS202)。そして、制御部102は、ステップS201で特定した進行方向と、ステップS202で特定した目的地方向とのなす角度を算出する(ステップS203)。例えば、
図4に示すように、地図上において現在位置Oが特定され、現在位置Oから実線矢印で示した方向(
図4の上方向であって文字Aが示す方向(A方向))が進行方向であると特定されたとする。そして、例えば、当該地図上において、目的地方向が現在位置Oから文字Bが示す方向(B方向)であったとする。この場合、現在位置Oを頂点とし、進行方向(A方向)と目的地方向(B方向)とのなす角の角度θは、余弦定理により求めることができる。
【0053】
簡単には、
図4に示したように、現在位置Oを1つの頂点とし、進行方向(A方向)と目的地方向(B方向)とを結ぶ直線Lを引き、進行方向(A方向)と直線Lとの交点をP、目的地方向(B方向)と直線Lとの交点をQとする。そして、辺PQの長さをa,辺OQの長さをb、辺OP間の長さをcとし、これらの辺の長さa,b,cを求める。そして、求めた長さa,b,cを、余弦定理の式である「cosθ=b
2+c
2−a
2/2bc」に代入すれば、cosθが求められ、これから角度θが特定できる。
【0054】
なお、
図4を用いて説明した場合のように、現在位置O及び位置P,Qは、地図上において、また、地図に対応した座標上において特定することができる。特に、位置Pは進行方向上にあればよく、また、位置Qは目的地方向上にあればよい。したがって、進行方向と目的地方向とのなす角の角度θは、メモリ上に形成される座標上に現在位置O及び位置P,Qを展開することで、計算により求めることができる。
【0055】
そして、制御部102は、ステップS201で特定した進行方向に対して、ステップS202で特定した目的地方向は、どちら側にあるのかを判別する(ステップS204)。すなわち、制御部102は、
図4に示すように、実線矢印で示した方向(
図4の上方向(A方向))が進行方向であるとする。そして、目的地方向が同じA方向であれば、進行方向に対する目的地方向は前方であると判別できる。
【0056】
以下同様に、
図4において、目的地方向がB方向であれば、進行方向に対する目的地方向は左前方であり、目的地方向がC方向であれば、進行方向に対する目的地方向は左方向であると判別できる。また、目的地方向がD方向であれば、進行方向に対する目的地方向は左後方であり、目的地方向がE方向であれば、進行方向に対する目的地方向は後方であると判別できる。また、目的地方向がF方向であれば、進行方向に対する目的地方向は右後方であり、目的地方向がG方向であれば、進行方向に対する目的地方向は右方向であると判別できる。そして、目的地方向がH方向であれば、進行方向に対する目的地方向は右前方であると判別できる。
【0057】
そして、ステップS204の判別処理の結果に応じて、制御部102は、案内処理部114を介して、音声処理部112を制御し、イヤホン2の左右それぞれから放音する音声の音量を制御(調整)する。具体的に、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は前方であると判別したときには、
図4のA方向の位置に示したように、イヤホン2の左右それぞれからの音声の音量レベルが均等になるように制御する(ステップS205)。
【0058】
また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は左前方であると判別したときには、
図4のB方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを大きくし、右からの音量レベルを小さくするように制御する(ステップS206)。また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は左後方であると判別したときには、
図4のD方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを小さくし、右からの音量レベルを0(ゼロ)にするように制御する(ステップS207)。
【0059】
また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は後方であると判別したときには、
図4のE方向の位置に示したように、イヤホン2の左右それぞれからの音量レベルを0(ゼロ)にし、音楽を放音しないように制御する(ステップS208)。また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は右後方であると判別したときには、
図4のF方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを0(ゼロ)にし、右からの音量レベルを小さくするように制御する(ステップS209)。
【0060】
また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は右前方であると判別したときには、
図4のH方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを小さくし、右からの音量レベルを大きくするように制御する(ステップS210)。なお、左右の音量レベルは、ステップS203で算出した進行方向と目的地方向のなす角の角度に応じて調整する。すなわち、
図4に示した例の場合であって、目的地方向が進行方向に対して左前方(B方向)である場合には、角度θが大きくなるに従って、左の音量レベルを大きくし、右の音量レベルを小さくするようにし、角度θが小さくなるに従って、左の音量レベルを小さくし、右の音量レベルを大きくするようにする。このようにすれば、左右の音量の違いにより、使用者は目的地のある方向を適切に認識できる。
【0061】
また、
図3のフローチャートにおいては、個別のステップとしては示さなかったが、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は真左の方向であると判別したとする。この場合には、
図4のC方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを大きくし、右からの音量レベルを0(ゼロ)にするように制御する。また、ステップS204の判別処理において、進行方向に対する目的地方向は真右の方向であると判別したとする。この場合には、
図4のG方向の位置に示したように、イヤホン2の左からの音量レベルを0(ゼロ)にし、右からの音量レベルを大きくするように制御する。
【0062】
これにより、例えば、右左折すべき交差点を通りすぎてしまうといった不都合を確実に防止することができる。例えば、簡単な例を示せば、次の交差点を左折し直進すれば目的地に到着するとする。この場合、当該交差点の近傍では、イヤホン2の主に左イヤホンから音声が大きく聞こえ、右イヤホンからは音声は聞こえなくなるので、左折すべき交差点を間違えることがない。そして、当該交差点を左折すれば、目的地方向は進行方向と一致するので、イヤホン2の左右から同音量レベルの音楽が放音される。これにより、辿っている経路に誤りがないことを使用者は確実に認識できる。
【0063】
そして、ステップS205〜ステップS210に示した音量調整処理の後において、制御部102は、設定された目的地と、自機の現在位置とに基づいて、目的地に到着したか否かを判別する(ステップS211)。ステップS211の判別処理において、目的地に到着していないと判別したときには、制御部102は、ステップS201からの処理を繰り返す。また、ステップS211の判別処理において、目的地に到着したと判別したときには、制御部102は、目的地に到着したことを示す音声を音声処理部112及び音声出力端子113を通じてイヤホン2から放音し(ステップS212)、
図3に示した処理を抜けて、
図2に示したメインルーチンに戻り、音楽等の再生音声を利用した経路案内処理を終了する。
【0064】
なお、上述の説明からも分かるように、ステップS204〜ステップS210の処理は、ステップS203で求めた進行方向と目的地方向のなす角の角度に応じた音量制御を行う処理であるといえる。例えば、
図4において、目的地方向が反時計回りに変わっていく場合を考える。この場合、角度θが0度では、進行方向と目的地方向が一致しているので、イヤホン2の左右の音量レベルは同じである。そして、角度θが0から90度の範囲(
図4の左上部の範囲)では、角度θが大きくなるに従って、左イヤホンの音量レベルは変わらないが、右イヤホンの音量レベルは徐々に小さくなっていく。そして、角度θが90度になると、
図4のC方向に示したように、左イヤホンの音量レベルは大きいままであるのに対して、右イヤホンの音量レベルは0(ゼロ)になる。
【0065】
そして、角度θが90度から180度の範囲(
図4の左下部)では、角度θが大きくなるに従って、左イヤホンの音量レベルが小さくなっていく。この範囲では、右イヤホンの音量レベルは0(ゼロ)のままである。そして、角度θが180度になると、
図4のE方向に示したように、左イヤホンの音量レベルも0(ゼロ)になり、左右とも音量レベルは0(ゼロ)になる。
【0066】
ここでは、
図4において、目的地方向が反時計回りに変わっていく場合を考えたが、目的地方向が時計回りに変わっていく場合には、左右の音量制御が逆になる。すなわち、角度θが0から90度の範囲(
図4の右上部の範囲)では、角度θが大きくなるに従って、右イヤホンの音量レベルは変わらないが、左イヤホンの音量レベルは徐々に小さくなっていく。そして、角度θが90度になると、
図4のG方向に示したように、右イヤホンの音量レベルは大きいままであるのに対して、左イヤホンの音量レベルは0(ゼロ)になる。
【0067】
そして、角度θが90度から180度の範囲(
図4の右下部の範囲)では、角度θが大きくなるに従って、右イヤホンの音量レベルが小さくなっていく。この範囲では、左イヤホンの音量レベルは0(ゼロ)のままである。そして、角度θが180度になると、
図4のE方向に示したように、右イヤホンの音量レベルも0(ゼロ)になり、左右とも音量レベルは0(ゼロ)になる。
【0068】
これにより、使用者は、常時、目的地がどの方向にあるのかを認識できる。そして、
図2に示したステップS105の処理で提供される経路を、地図上で確認しておけば、地図を確認しながら移動しなくても、イヤホン2からの音楽の聞こえ方に応じて、選択した経路を辿ることができる。これにより、立ち止まって地図を確認する必要もなく、確実かつ迅速に目的地に到着することができる。しかも、使用者は好みの音楽を聴きながら目的地に向かうことができるので、気分よくリズミカルに歩を進めることができ、安全に移動時間を短縮できる効果も期待できる。
【0069】
また、上述したように、進行方向と目的地方向とのなす角θの角度に応じて、左右の音量レベルを制御することを説明したが、当該角度θに応じて、音量の変わる速さで曲がる角度の緩急を通知するようにすることもできる。すなわち、進行方向と目的地方向とのなす角θが小さい場合には、左右の音量レベルとも早く目的とする音量レベルになるようにする。これにより、大きく曲がるのではなく、若干左に行く道、あるいは、若干右に行く道を選択するように指示できる。また、進行方向と目的地方向とのなす角θが大きい場合には、左右の音量レベルとも角度に応じて遅く目的とする音量レベルになるようにする。これにより、音量レベルの変化に応じて大きく曲がる道を選択するように指示できる。
【0070】
なお、
図4では、音量レベルは、大、小、0(ゼロ)として説明したが、上述もしたように、進行方向と目的地方向とのなす角の角度θに応じて、左右の音量レベルを適切に調整制御することが可能である。
【0071】
[経路詳細案内モード]
図5、
図6は、
図2に示したステップS108の処理において実行される経路詳細案内モードの経路案内処理を説明するためのフローチャートである。また、
図7は、
図5、
図6に示した経路詳細案内モードの音量制御の例を説明するための図である。以下に説明する経路詳細案内モードは、イヤホン2を通じて使用者により聴取される再生音声の音量を制御することにより、設定された経路を忠実に辿ることができるようにし、使用者を目的地へ迷うことがないように誘導できるようにするものである。
【0072】
そして、制御部102は、
図5、
図6に示す経路詳細案内モードの経路案内処理を実行すると、まず、移動している出発地から目的地までの経路上において、次の交差点は右左折のある交差点か否かを判別する(ステップS301)。この判別処理は、自機の進行方向と、自機の現在位置と、歩行者NWDB106の歩行者ネットワークデータと、探索された経路とに基づいて判別できる。なお、自機(使用者)の進行方向、及び、現在位置は、目的地方向案内モード時の処理の場合と同様に、
図2に示したステップS107において開始される処理により検知または取得されるものを用いる。
【0073】
ステップS301の判別処理において、次の交差点は右左折のある交差点ではないと判別したとする。この場合、制御部102は、案内処理部114を通じて音声処理部112を制御し、イヤホン2の左右それぞれのイヤホンからは再生されている音楽を均等な音量レベルで出力するようにする
(ステップS302)。なお、既に均等の音量レベルで音楽が再生されている場合には、ステップS302の処理はスルーできるようになっている。
【0074】
ステップS301の判別処理において、次の交差点は右左折のある交差点であると判別したとする。この場合、制御部102は、案内処理部114を介して音声処理部112を制御して、イヤホン2の左右両方のイヤホンから放音される音楽の音量を下げる(ステップS303)。これにより、次の交差点は、右左折のある交差点であることを使用者に知らせる。
【0075】
次に、制御部102は、ステップS301で右左折があると判別された交差点は、左折すべき交差点か否かを判別する(ステップS304)。このステップS304の判別処理は、ステップS301の判別処理で取得した情報に基づいて判別できる。すなわち、ステップS301の判別処理でも、次の交差点は、左折または右折する必要のある交差点か否かを判別しており、その結果を用いることができる。
【0076】
ステップS304の判別処理において、次の交差点は左折すべき交差点であると判別したとする。この場合、制御部102は、案内処理部114を介して音声処理部112を制御し、まず、右音量を上げ、次に、右音量を下げながら左音量を上げるように音量レベルの調整制御を行う(ステップS305)。このような、音量レベルの演出を行うことにより、次の交差点を左折することを使用者に指示する。
【0077】
図7(A)は、ステップS305で行われる左折の場合の音量レベルの調整制御の一例について説明するための図である。左折の場合、
図7(A)に示すように、直進している状態ではステップS1Lに示すように、イヤホン2の左右それぞれから放音される音声の音量レベルLL,RLは、いずれも音量レベルが値5で均等であるとする。すなわち、この状態は、直進を指示する状態である。
【0078】
この場合に、次の交差点が左折する交差点であるとすると、まず、左右両方の音量レベルLL,RLを値0に下げ(ステップS2L)、次の交差点は左折または右折する交差点であることを通知する。次に、右音量レベルだけ値5に上げる(ステップS3L)。この後、左音量レベルを値0から値2に上げ、同時に右音量レベルを値5から値4に下げる(ステップS4L)。次に、左音量レベルを値2から値4に上げ、同時に右音量レベルを値4から値2に下げる(ステップS5L)。そして、左音量レベルを値4から値5に上げ、同時に右音量レベルを値2から値0に下げる(ステップS6L)。以降、左折が完了するまで、ステップS2LからステップS6Lの処理を繰り返す。これにより、左折する交差点を適切に案内できる。
【0079】
また、ステップS304の判別処理において、次の交差点は左折すべき交差点ではない(右折する交差点である)と判別したとする。この場合、制御部102は、案内処理部114を介して音声処理部112を制御し、まず、左音量を上げ、次に、左音量を下げながら右音量を上げるように音量レベルの調整制御を行う(ステップS306)。このような、音量レベルの演出を行うことにより、次の交差点を右折することを使用者に指示する。
【0080】
図7(B)は、ステップS306で行われる右折の場合の音量レベルの調整制御の一例について説明するための図である。右折の場合、
図7(B)に示すように、直進している状態ではステップS1Rに示すように、イヤホン2の左右それぞれのイヤホンから放音される音声の音量レベルLL,RLは、いずれも音量レベルが値5で均等であるとする。すなわち、この状態は、直進を指示する状態である。
【0081】
この場合に、次の交差点が右折する交差点であるとすると、まず、左右両方の音量レベルLL,RLを値0に下げ(ステップS2R)、次の交差点は左折または右折する交差点であることを通知する。次に、左音量レベルだけ値5に上げる(ステップS3R)。この後、右音量レベルを値0から値2に上げ、同時に左音量レベルを値5から値4に下げる(ステップS4R)。次に、右音量レベルを値2から値4に上げ、同時に左音量レベルを値4から値2に下げる(ステップS5R)。そして、右音量レベルを値4から値5に上げ、同時に左音量レベルを値2から値0に下げる(ステップS6R)。以降、右折が完了するまで、ステップS2RからステップS6Rの処理を繰り返す。これにより、右折する交差点を適切に案内できる。
【0082】
そして、制御部102は、自機の進行方向と、自機の現在位置と、歩行者NWDB106の歩行者ネットワークデータと、探索された経路とに基づいて、左折または右折が完了したか否かを判別する(ステップS307)。ステップS307の判別処理において、左折または右折は完了していないと判別したときには、ステップS303からの処理を繰り返し、探索された経路を辿れるように、左折または右折の誘導処理(ステップS303〜ステップS307の処理)を繰り返す。
【0083】
ステップS307の判別処理において、左折または右折は完了したと判別したときには、制御部102は、案内処理部114を介して音声処理部112を制御し、イヤホン2の左右から音量レベルを左右均等にした音楽を放音するようにする(ステップS308)。この後、制御部102は、自機の進行方向と、自機の現在位置と、歩行者NWDB106の歩行者ネットワークデータと、探索された経路とに基づいて、設定された経路から外れたか否かを判別する(ステップS309)。この判別処理は、曲がるべき方向を間違えたか否かを判別するものである。
【0084】
ステップS309の判別処理で、設定された経路から外れていないと判別した場合には、
図6のステップS310の処理に進み、目的地に到着したか否かを判別する(ステップS310)。ステップS310の判別処理において、目的地に到着したと判別したとする。この場合、制御部102は、目的地に到着したことを示す音声を音声処理部112及び音声出力端子113を通じてイヤホン2から放音し(ステップS311)、この
図5、
図6に示す処理を抜けて、
図2に示したメインルーチンに戻り、音楽による経路案内を終了する。また、ステップS310の判別処理において、目的地には到着していないと判別した場合には、
図5に示したステップS301からの処理を繰り返すことになる。
【0085】
また、ステップS309の判別処理で、設定された経路から外れたと判別した場合には、間違った方向に曲がってしまったので、
図6のステップS312の処理に進み、イヤホン2から放音する音楽の音量を上げ下げして経路を間違えたことを注意喚起する(ステップS312)。そして、制御部102は、自機の進行方向と、自機の現在位置と、歩行者NWDB106の歩行者ネットワークデータと、探索された経路
と、設定された経路に基づいて、当該設定された経路に戻ったか否かを判別する(ステップS313)。
【0086】
ステップS313の判別処理において、設定された経路に戻っていないと判別したときには、制御部102は、経路探索部115を制御し、現在位置から目的地までのルートの再探索処理(リルート処理)を実行し(ステップS314)、新たな経路を設定する。この後、制御部102は、音楽再生部116を制御し、再生する音楽を変更する(ステップS315)。再生する音楽の途中変更により、経路変更されたこと(リルートされたこと)が使用者に通知される。
【0087】
そして、制御部102は、新たなルートを示した地図を表示部111Dに表示し、使用者に提供できるようにする(ステップS316)。ステップS315の処理により音楽が途中変更された場合には、使用者はリルートされたことを知ることができる。この場合、ステップS316において表示部111Dに表示される地図を見て、新たな経路を確認し、目的地に向うことができるようにされる。ステップS316の処理の後と、ステップS313の判別処理において、設定された経路に戻ったと判別したときには、制御部102は、
図5に示したステップS301からの処理を繰り返し、経路詳細案内モードの音楽による経路案内処理が継続するようにされる。
【0088】
これにより、使用者はイヤホン2から再生される音楽の音量レベルの変化に応じて、事前に右左折する交差点が分かると共に、左折するのか、右折するのかの区別もできるので、探索されて設定された経路を、確実に辿ることができるようにされる。しかも、基本的に移動中においては、地図を確認する必要もほとんどないため、移動時間の短縮も期待できる。
【0089】
なお、
図7に示した音量レベルのレベル値は、一例を示したものにすぎず、更に細かく制御することももちろん可能である。
【0090】
[実施の形態の効果]
このように、この実施の形態の経路案内装置1の場合には、「次の交差点を左折(右折)して下さい。」、「このまま直進して下さい。」といった種々の音声メッセージを一切使用することなく、放音される音声の音量レベルの調整制御により、経路案内を行える。このため、使用者は、自分の好みの音楽を聴きながら、当該再生される音楽のイヤホン2から放音される左右の音量レベルの変化に応じて、進むべき方向を適切に知り、迷うことなく目的地に向うことができる。
【0091】
また、移動中において、立ち止まって地図を頻繁に確認する必要もなく、また、自分の好みの音楽を聴きながら移動できるので、移動時間の短縮も期待できる。この実施の形態の経路案内装置1は、土地勘のない場所で、徒歩により比較的に近距離にある目的地に向かう場合に効果的である。
【0092】
[変形例]
なお、上述した実施の形態では、再生音声の音量レベルの調整制御により、再生音声の出力態様を変化させ、経路案内を行うようにしたが、これに限るものではない。音量以外にも、テンポ、曲調、キーの調整制御により、再生音声の出力態様を変化させ、経路案内を行うようにしてもよい。例えば、直進は通常テンポ、左折は通常より早いテンポ、右折は通常より遅いテンポというように決めて、経路案内を行うこともできる。また、直進は通常の曲調、左折はよりメジャー調に曲調を変え、右折の場合にはよりマイナー調に曲調を変えるというように決めて、経路案内を行うこともできる。また、直進は通常のキー(音程)、左折は通常より高いキー、右折は通常より低いキーというように決めて、経路案内を行うこともできる。
【0093】
その他にも、目的地の近傍まで到達したら、音量レベルを上げたり、テンポや曲調やキーを変えたりしてもよいし、また、再生する音楽(楽曲)を変えるようにすることもできる。また、再生される音楽は、いわゆるステレオ音声である必要はなく、モノラル音声であってももちろんよい。
【0094】
また、
図1に示したような左耳用と右用の2つのイヤホンからなるイヤホンではなく、片耳だけのイヤホンもある。このように、片耳だけのイヤホンを用いる場合でも、例えば、直進は通常の音声レベル、左折は通常よりも大きな音声レベル、右折は通常よりも小さな音声レベルというように決めれば、経路案内が可能である。また、片耳だけのイヤホンを用いる場合にも、上述したテンポや曲調の調整制御を行うことにより、経路案内を行うことができる。
【0095】
また、両耳用イヤホンを用いる場合と片耳用のイヤホンを用いる場合とで、再生音声についての調整制御の内容を変えるように、使用者が切り替えるようにすることもできる。また、音声出力端子113の音声接続端子の接続状態に応じて、両耳用イヤホンが接続されたのか、片耳用のイヤホンが接続さえたのかを自動的に判別できれば、自動的に、両耳用イヤホンを用いる場合と片耳用のイヤホンを用いる場合とで、再生音声についての調整制御の内容を変えるようにすることができる。
【0096】
そのほか、音量レベル、テンポ、曲調、キーなどの調整制御を組み合わせて、経路案内を行うようにしてもよい。
【0097】
また、上述した実施の形態では、音楽を再生して聴取しながら移動する場合を例にして説明したが、これに限るものではない。再生される音声は、例えば、リズム音などの電子音や合成音など、種々の音声を用いることができる。しかし、どのような音声を再生する場合であっても、再生される音声自身が、経路を案内する意味を有する音声メッセージである必要はない。
【0098】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、受付手段の機能は、タッチパネル110が実現し、現在位置取得手段の機能は、GPS部109が実現し、検知手段の機能は、制御部102とセンサ部107が協働して実現している。また、案内処理手段の機能は、制御部102と案内処理部114が協働して実現している。また、探索手段の機能は、経路探索部115が実現している。また、方向特定手段、交差点判別手段、方向判別手段の各機能は、制御部102が実現している。
また、音楽再生手段の機能は、音楽再生部116が実現している。
【0099】
また、
図2、
図3、
図5及び
図6に示したフローチャートの処理が、この発明の経路案内方法の一実施の形態に対応している。また、
図2、
図3、
図5及び
図6に示したフローチャートの処理を実行するプログラムが、この発明の経路案内プログラムの一実施の形態に対応している。また、音声処理部112、案内処理部114、経路探索部115、音楽再生部116、地図表示処理部117の各機能は、制御部102で実行されるプログラムにより、制御部102の機能として実現することもできる。