(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流制御部は、前記他方の相に電流を流すタイミングから前記SRモータが所定の角度だけ回転した後に、前記一方の相に流している電流を徐々に減少させる請求項1に記載のモータ制御装置。
前記電流制御部は、前記他方の相に流す電流を徐々に増加させ、前記他方の相に流れる電流値が閾値に到達してから前記SRモータが所定の角度だけ回転した後に、前記一方の相に流している電流を徐々に減少させる請求項1に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。
【0015】
実施形態におけるモータ制御装置は、多相のSRモータにおける通電相を一方の相から他方の相に切り替える場合に、一方の相と他方の相との両方の相に通電するオーバーラップ区間の少なくとも一部の区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる。
以下、実施形態のモータ制御装置を、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態におけるモータ制御装置1について図面を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態におけるモータ制御装置1を適用する電動車両のシステム100の構成図である。
第1の実施形態における電動車両のシステム100は、モータ制御装置1、アクセルペダル4、アクセル操作検出部5、シフトポジションセンサ6、SRモータ7、回転角センサ8及びバッテリ9を備える。
【0017】
アクセル操作検出部5は、運転者が操作するアクセルの駆動力を選択する入力装置、例えば、アクセルペダル4の操作量(踏力量)を検出する。アクセル操作検出部5は、そのアクセルペダル4の操作量に応じたアクセル信号をモータ制御装置1に出力する。例えば、アクセル操作検出部5は、可変抵抗器を有し、アクセルペダル4と可変抵抗器の抵抗値を制御するつまみ部とを剛性部材で接続する。そして、アクセル操作検出部5は、アクセルペダル4の操作量に応じて変化する可変抵抗器により分圧させた電圧を検出し、検出した電圧をアクセル信号としてモータ制御装置1に出力する。また、アクセル操作検出部5は、アクセルペダル4の踏力量を検出する圧力センサ等を有し、その検出結果をアクセル信号としてモータ制御装置1に出力してもよい。
【0018】
シフトポジションセンサ6は、モータ制御装置1に接続されている。シフトポジションセンサ6は、運転席に設けられるシフトレバー(図示せず)の位置を検出する。シフトポジションセンサ6は、シフトレバーの位置を示すシフト信号をモータ制御装置1に出力する。これにより、モータ制御装置1は、シフトポジションセンサ6から取得したシフト信号に基づいて複数のシフトポジションのうちのいずれのシフトポジションが選択されたかを判定する。例えば、複数のシフトポジションは、走行ポジションと後進走行ポジションとを含む。
【0019】
SRモータ7は、リアギア10を介して後輪11を駆動する多相のSRモータである。SRモータ7の詳細は後述する。
回転角センサ8は、SRモータ7に備えられている。回転角センサ8は、SRモータ7のロータの回転角度を検出する検出装置であり、例えばレゾルバである。回転角センサ8は、検出した回転角度に応じた出力信号をモータ制御装置1に出力する。
【0020】
モータ制御装置1は、SRモータ7の各相に対応するコイル(後述する)の通電を切り替えることにより、SRモータ7を回転駆動する。
モータ制御装置1は、アクセル操作検出部5からアクセル信号を取得する。モータ制御装置1は、シフトポジションセンサ6からシフト信号を取得する。モータ制御装置1は、SRモータ7の回転速度を検出する回転角センサ8の出力信号を取得する。モータ制御装置1は、シフト信号によりSRモータ7を回転させる方向を決定する。そして、モータ制御装置1は、アクセル信号に基づいて、SRモータ7に流す電流の目標値である電流指令値を算出する。モータ制御装置1は、SRモータ7に流れる電流値が算出した電流指令値になるように、フィードバック制御を行う。
【0021】
以下に、第1の実施形態におけるSRモータ7のモータ制御装置1について具体的に説明する。
図2は、第1の実施形態におけるモータ制御装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2に示すように、第1の実施形態におけるモータ制御装置1は、駆動回路12及び制御装置13を備える。
【0022】
例えば、SRモータ7は、4つの突極部を有するロータ31と、ロータ31を外囲するように設けられ内側のロータに向かって6つの突極部を有するステータ32とを備える。したがって、回転角センサ8は、このロータ31の回転角を検出する。
【0023】
ステータ32の6つの突極部は、それぞれ巻線して励磁コイルを形成し、対向する突極部を対とするコイルLu,Lv,Lwを形成する。コイルLu,Lv,Lwに対して選択的に通電されることで、ステータ32の突極部がロータ31の突極部を磁気吸引して、ロータ31に駆動トルクを発生させる。これにより、SRモータ7が回転することになる。
【0024】
駆動回路12は、バッテリ9に接続される。駆動回路12は、コンデンサ51、スイッチング素子52〜57及びダイオード58〜63を備える。
例えば、スイッチング素子52〜57は、IGBT(Insulated gate bipolar transistor)、FET(Field Effective Transistor)、及びBJT(bipolar junction transistor)の何れか一つで構成されてもよい。本実施形態では、スイッチング素子52〜57は、n型チャネルのFETである場合について、説明する。
【0025】
コンデンサ51は、一端がバッテリ9の正極に接続され、他端がバッテリ9の負極に接続される。
スイッチング素子52は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード58のカソードに接続される。ダイオード58のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。ダイオード59は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがスイッチング素子53のドレインに接続される。スイッチング素子53のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
【0026】
スイッチング素子54は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード60のカソードに接続される。ダイオード60のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。
ダイオード61は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがスイッチング素子55のドレインに接続される。スイッチング素子55のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
スイッチング素子56は、ドレインがバッテリ9の正極に接続され、ソースがダイオード62のカソードに接続される。ダイオード62のアノードは、バッテリ9の負極に接続される。
ダイオード63は、カソードがバッテリ9の正極に接続され、アノードがスイッチング素子57のドレインに接続される。スイッチング素子57のソースは、バッテリ9の負極に接続される。
【0027】
すなわち、コンデンサ51と、直列に接続されたスイッチング素子52及びダイオード58と、直列に接続されたスイッチング素子53及びダイオード59と、直列に接続されたスイッチング素子54及びダイオード60と、直列に接続されたスイッチング素子55及びダイオード61と、直列に接続されたスイッチング素子56及びダイオード62と、直列に接続されたスイッチング素子57及びダイオード63とは、それぞれバッテリ9に対して並列に接続される。
【0028】
また、スイッチング素子52とダイオード58との接続点には、SRモータ7のコイルLuの一端が接続され、スイッチング素子53とダイオード59との接続点には、コイルLuの他端が接続される。スイッチング素子54とダイオード60との接続点には、SRモータ7のコイルLvの一端が接続され、スイッチング素子55とダイオード61との接続点には、コイルLvの他端が接続される。スイッチング素子56とダイオード62との接続点には、SRモータ7のコイルLwの一端が接続され、スイッチング素子57とダイオード63との接続点には、コイルLwの他端が接続される。
【0029】
上述のように、駆動回路12は、Hブリッジ回路により構成される。そして、制御装置13から出力される制御信号がスイッチング素子52〜57のゲートに入力され、入力される制御信号に応じて、スイッチング素子52〜57のオンとオフとが切り替えられる。これにより、バッテリ9からの電流が、SRモータ7が有するコイルLu,Lv,Lwそれぞれに通電される。
電流センサ20は、SRモータ7が有するコイルLu,Lv,Lwそれぞれに流れる電流を検出して制御装置13に出力する。
【0030】
制御装置13は、SRモータ7の通電相を一方の相から他方の相に切り替える場合に、一方の相と他方の相との両方の相に同時に通電するオーバーラップ区間を設ける。そして、制御装置13は、そのオーバーラップ区間の少なくとも一部の区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる。
【0031】
以下、本実施形態における制御装置13について、具体的に説明する。
制御装置13は、電流指令値生成部132、回転方向指令生成部133、電流検出部134、位置検出部135、回転速度検出部136、指令傾斜幅決定部137、進角・通電角設定部138、電流制御部140、通電タイミング出力部141、電流指令値補正部142及びゲート駆動部143を備える。
【0032】
電流指令値生成部132は、アクセル操作検出部5から出力されたアクセル信号に応じて、SRモータ7のコイルLu,Lv,Lwそれぞれに流す電流の目標値(以下、「電流指令値」)を取得する。そして、電流指令値生成部132は、取得した電流指令値を指令傾斜幅決定部137、進角・通電角設定部138及び電流指令値補正部142に出力する。例えば、電流指令値生成部132は、アクセルペダル4の操作量と、電流指令値とが関連付けられたテーブルを備え、アクセル操作検出部5から出力されたアクセル信号が示すアクセルペダル4の操作量に対応する電流指令値をそのテーブルから取得することで、電流指令値を算出する。また、電流指令値生成部132は、アクセル操作検出部5から出力されたアクセル信号が示すアクセルペダル4の操作量から、実験的に電流指令値を決定してもよい。
【0033】
回転方向指令生成部133は、シフトポジションセンサ6から出力されるシフト信号に基づいてSRモータ7の回転方向を取得する。例えば、電流指令値生成部132は、シフトポジションセンサ6から出力されるシフト信号に基づいてシフトポジションが前進走行ポジションであると判定した場合には、SRモータ7の回転方向が正回転であると判定する。そして、電流指令値生成部132は、SRモータ7の回転方向が正回転であることを示す回転方向指令信号を電流指令値補正部142及び通電タイミング出力部141に出力する。一方、電流指令値生成部132は、シフトポジションセンサ6から出力されるシフト信号に基づいてシフトポジションが後進走行ポジションであると判定した場合には、SRモータ7の回転方向が逆回転であると判定する。そして、電流指令値生成部132は、SRモータ7の回転方向が逆回転であることを示す回転方向指令信号を電流指令値補正部142及び通電タイミング出力部141に出力する。
【0034】
電流検出部134は、電流センサ20より出力されるSRモータ7のコイルLu,Lv,Lwそれぞれに流れる電流値を検出し、電流制御部140に出力する。例えば各電流センサ20から出力される各相電流(巻線電流)の検出信号に基づき、SRモータ7に通電されている相電流を検出し、この相電流の検出値を電流制御部140に出力する。
【0035】
位置検出部135は、回転角センサ8が出力する信号に基づいて、ロータ31の回転角(ロータ31の回転位置)を検出して、回転速度検出部136、通電タイミング出力部141及び電流指令値補正部142に出力する。
回転速度検出部136は、位置検出部135が出力するロータ31の回転角を示す信号の単位時間あたりの変化量を検出し、検出した変化量からロータ31の回転速度(回転数)を算出して指令傾斜幅決定部137及び進角・通電角設定部138に出力する。
【0036】
進角・通電角設定部138は、電流指令値生成部132から出力された電流指令値と、回転速度検出部136から出力された回転速度とに応じて進角及び通電角を通電タイミング出力部141に出力する。進角・通電角設定部138は、進角マップ部138a及び通電角マップ部138bを含み構成される。
【0037】
進角マップ部138aは、電流指令値生成部132が出力する電流指令値と、回転速度検出部136が出力する回転速度とに基づいて、進角を通電タイミング出力部141に出力する。例えば、進角マップ部138aは、電流指令値とロータ31の回転速度との組み合わせごとに進角の値を対応付けたマップである。ここで、進角は、SRモータ7の各相のコイルLu,Lv,Lwそれぞれに対する通電開始位相及び通電終了位相を各相のインダクタンス変化に応じた所定位置(例えば、インダクタンスの増大開始位相及び減少開始位相等)から通電角を進角側に変化させる角度を表す。なお、進角は、電流指令値と回転数の増加に対して増加傾向にある。なお、例えば、進角マップ部138aは、シミュレーションや、実機による測定結果などから設定される。
【0038】
通電角マップ部138bは、電流指令値生成部132が出力する電流指令値と、回転速度検出部136が出力する回転速度とに基づいて、通電角を通電タイミング出力部141に出力する。例えば、通電角マップ部138bは、電流指令値とロータ31の回転速度との組み合わせごとに通電角の値を対応付けたマップである。ここで、通電角は、SRモータ7の各相の各コイルLu,Lv,Lwそれぞれに対して対応付けられる。なお、通電角マップ部138bは、シミュレーションや、実機による測定結果などから設定される。
【0039】
通電タイミング出力部141は、位置検出部135から出力されるロータ31の回転位置と、進角・通電角設定部138から出力される進角及び通電角とに基づいて、現在通電している(現在の通電相)コイルと次に通電するコイルとの両方のコイルに同時に通電するオーバーラップ区間を、回転方向指令信号が示す回転方向において決定する。そして、通電タイミング出力部141は、決定したオーバーラップ区間を示すタイミング信号をゲート駆動部143に出力する。例えば、通電タイミング出力部141によるオーバーラップ区間の算出は、回転速度と通電角マップとを用いて行われてもよいし、実験により行われてもよい。
【0040】
指令傾斜幅決定部137は、電流指令値生成部132から出力される電流指令値と、回転速度検出部136から出力されるロータ31の回転速度とに基づいて、指令値傾斜幅を決定する。指令値傾斜幅は、オーバーラップ区間の少なくとも一部の区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる幅(ロータ31の回転角)である。例えば、指令傾斜幅決定部137は、電流指令値と、ロータ31の回転速度と、指令値傾斜幅とが関連付けられたテーブルを備え、電流指令値生成部132から出力される電流指令値と、回転速度検出部136から出力されるロータ31の回転速度とに対応する指令値傾斜幅をそのテーブルから取得することで、指令値傾斜幅を決定する。また、指令値傾斜幅は固定であってもよいし、電流指令値の大きさやロータ31の回転速度によって変化してもよい。
【0041】
指令傾斜幅決定部137は、決定した指令値傾斜幅を電流指令値補正部142に出力する。なお、オーバーラップ区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる区間を傾斜通電区間と称される場合がある。この傾斜通電区間は、指令値傾斜幅に基づいて決定されてもよい。
【0042】
電流制御部140は、回転方向指令信号が示す回転方向の傾斜通電区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる。
【0043】
電流指令値補正部142は、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を取得する。電流指令値補正部142は、位置検出部135から出力されたロータ31の回転位置を取得する。電流指令値補正部142は、指令傾斜幅決定部137から出力された指令値傾斜幅を取得する。
【0044】
電流指令値補正部142は、位置検出部135から出力されたロータ31の回転位置が傾斜通電区間か否かを判定する。電流指令値補正部142は、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間である場合には、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を所定の傾きで変化させる補正を行う。例えば、電流指令値補正部142は、ロータ31及びステータ32の突極が対向位置に近い方の相の電流指令値を、ロータ31の回転位置に応じて補正する。補正された電流指令値を電流指令補正値とした場合に、電流指令補正値は、例えば、以下の式で表される。
【0045】
電流指令補正値=電流指令値−電流指令値×(現在のロータ31の回転位置/指令傾斜幅)・・・(1)
【0046】
図3は、第1の実施形態における電流指令値補正部142の電流指令値の補正処理について、説明する図である。
図3に示すように、電流指令値補正部142は、現在通電している(現在の通電相)コイルと次に通電するコイルとの両方のコイルに同時に通電するオーバーラップ区間において、現在通電しているコイルに流す電流の電流指令値を補正する。例えば、V相のコイルLvとU相のコイルLuとに同時に通電するオーバーラップ区間の傾斜通電区間において、V相からU相に通電相が切り替えられる場合には、電流指令値補正部142は、V相のコイルLvの電流指令値を減少させる補正を行う。
【0047】
また、U相のコイルLuとW相のコイルLwとに同時に通電するオーバーラップ区間の傾斜通電区間において、U相からW相に通電相が切り替えられる場合には、電流指令値補正部142は、U相のコイルLuの電流指令値を減少させる補正を行う。W相のコイルLwとV相のコイルLvとに同時に通電するオーバーラップ区間の傾斜通電区間において、W相からV相に通電相が切り替えられる場合には、電流指令値補正部142は、W相のコイルLwの電流指令値を減少させる補正を行う。なお、
図3に示す例では、オーバーラップ区間が傾斜通電区間である場合について説明するが、これに限定されない。すなわち、少なくともオーバーラップ区間の一部に傾斜通電区間を含んでいればよい。例えば、電流指令値補正部142は、一方の相から他方の相に通電相を切り替える場合に、他方の相に電流を流すタイミング(オーバーラップ区間を開始するタイミング)からSRモータ7のロータ31が所定の角度だけ回転した後に、一方の相に流している電流の電流指令値を徐々に減少させてもよい。なお、この所定の角度は、0度以上である。
【0048】
電流指令値補正部142は、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間でない場合には、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を電流制御部140に出力する。
電流指令値補正部142は、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間である場合には、補正した電流指令値である電流指令補正値を、新たな電流指令値として電流制御部140に出力する。
【0049】
電流制御部140は、電流差分算出部1411及びPWM出力部1412を備える。
PWM出力部1412は、SRモータ7に通電されている相電流のPWM(Pulse Width Modulation)制御を行う。電流差分算出部1411は、電流指令値補正部142から供給される電流指令値と電流検出部134から供給される電流検出値との偏差(以下、「電流差分値」という。)を算出する。電流制御部140は、算出した電流差分値をPWM出力部1412に出力する。
【0050】
PWM出力部1412は、電流差分値が減少するように、スイッチング素子52〜57のデューティ比を決定する。PWM出力部1412は、算出したデューティ比をゲート駆動部143に出力する。ここで、PWM出力部1412は、電流差分値に基づいて、一般的に公知のPI(Proportional Integral)制御、又は、PID(Proportional Integral Derivative)制御等を用いて上述のデューティ比を算出してもよい。
【0051】
ゲート駆動部143は、通電タイミング出力部141から出力されたタイミング信号と、PWM出力部1412から出力されたデューティ比とに基づいて、駆動回路12が備えるスイッチング素子52〜57のオン状態又はオフ状態にする制御信号をスイッチング素子52〜57のゲートに出力する。
【0052】
以下に、第1の実施形態における制御装置13の電流指令値を補正する処理の流れについて、説明する。
図4は、第1の実施形態における制御装置13の電流指令値を補正する処理の流れを示す図である。
【0053】
電流指令値生成部132は、アクセル操作検出部5から出力されたアクセル信号に応じて、SRモータ7のコイルLu,Lv,Lwそれぞれに流す電流の電流指令値を取得する(ステップS101)。電流指令値生成部132は、取得した電流指令値を電流指令値補正部142及び指令傾斜幅決定部137に出力する。
【0054】
回転方向指令生成部133は、シフトポジションセンサ6から出力されるシフト信号に基づいてSRモータ7の回転方向を取得する(ステップS102)。電流指令値生成部132は、取得したSRモータ7の回転方向を示す回転方向指令信号を電流指令値補正部142に出力する。
【0055】
位置検出部135は、回転角センサ8が出力する信号に基づいて、ロータ31の回転角(ロータ31の回転位置)を取得して、回転速度検出部136及び電流指令値補正部142に出力する(ステップS103)。
【0056】
指令傾斜幅決定部137は、電流指令値生成部132から出力される電流指令値と、回転速度検出部136から出力されるロータ31の回転速度とに基づいて、指令値傾斜幅を決定する(ステップS104)。指令傾斜幅決定部137は、決定した指令値傾斜幅を電流指令値補正部142に出力する。
【0057】
電流指令値補正部142は、位置検出部135から出力されたロータ31の回転位置が傾斜通電区間か否かを判定する(ステップS105)。電流指令値補正部142は、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間である場合には、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を補正する。例えば、電流指令値補正部142は、ロータ31及びステータ32の突極が対向位置に近い方の相の電流指令値を、式(1)を用いてロータ31の回転位置に応じて補正する(ステップS106)。電流指令値補正部142は、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間でない場合には、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を電流制御部140に出力する。
【0058】
上述したように、第1の実施形態におけるモータ制御装置1は、通電相を一方の相から他方の相に切り替える場合に、一方の相と他方の相との両方の相に通電するオーバーラップ区間を設ける通電タイミング出力部と、そのオーバーラップ区間の少なくとも一部の区間において、一方の相と他方の相との少なくともいずれかの相に流す電流を徐々に変化させる。これにより、オーバーラップ区間において発生するトルク変化を低減可能となる。例えば、通電相を一方の相から他方の相に切り替える場合において実施される、一方の相と他方の相の二相同時通電において、一方の相のコイルの電流指令値を傾斜させることにより、急峻なトルク変化を緩和できる。また、従来のモータ制御装置は、一方の相のコイルの通電が停止するため、ステータ32に対して径方向に発生している力が急激に開放され、ステータ32が振動する。そのため、その振動によりステータ32の作動音が発生していた。本実施形態のモータ制御装置1は、一方の相のコイルの電流指令値を傾斜させることにより、急峻なトルク変化を緩和する。したがって、ステータ32が径方向に発生している力が緩やかに開放されるため、ステータ32の振動が低減される。そのため、ステータ32の作動音が低減される。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態におけるモータ制御装置1Aについて図面を用いて説明する。第2の実施形態は、一方の相から他方の相に切り替える場合に、他方の相に流す電流を徐々に増加させ、他方の相に流れる電流値が閾値に到達してからSRモータ7が所定の角度だけ回転した後に、一方の相に流している電流を徐々に減少させる。
【0060】
図5は、第2の実施形態におけるモータ制御装置1Aを適用する電動車両のシステム100Aの構成図である。
第2の実施形態における電動車両のシステム100Aは、モータ制御装置1A、アクセルペダル4、アクセル操作検出部5、シフトポジションセンサ6、SRモータ7、回転角センサ8及びバッテリ9を備える。
【0061】
図6は、第2の実施形態におけるモータ制御装置1Aの概略構成の一例を示す図である。
図6に示すように、第1の実施形態におけるモータ制御装置1Aは、駆動回路12及び制御装置13Aを備える。
制御装置13Aは、電流指令値生成部132、回転方向指令生成部133、電流検出部134、位置検出部135、回転速度検出部136、指令傾斜幅決定部137、進角・通電角設定部138、電流制御部140A、通電タイミング出力部141、電流指令値補正部142A及びゲート駆動部143を備える。
【0062】
電流制御部140Aは、一方の相から他方の相に切り替える場合に、他方の相に流す電流を徐々に増加させ、他方の相に流れる電流値が閾値に到達してからSRモータ7が所定の角度だけ回転した後に、一方の相に流している電流を徐々に減少させる。
【0063】
電流指令値補正部142Aは、オーバーラップ区間において、電流指令値補正部142と同様の機能を備えるとともに、他方の相に流す電流の電流指令値を補正する機能を備える。なお、以下の説明において、一方の相をV相とし、他方の相をU相とする。
【0064】
電流指令値補正部142Aは、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を取得する。電流指令値補正部142Aは、位置検出部135から出力されたロータ31の回転位置を取得する。電流指令値補正部142Aは、指令傾斜幅決定部137から出力された指令値傾斜幅を取得する。
【0065】
電流指令値補正部142Aは、位置検出部135から出力されたロータ31の回転位置が傾斜通電区間か否かを判定する。電流指令値補正部142Aは、ロータ31の回転位置が傾斜通電区間である場合には、電流指令値生成部132から出力された電流指令値を所定の傾きで変化させる補正を行う。
【0066】
図7は、第2の実施形態における電流指令値補正部142Aの電流指令値の補正処理について、説明する図である。
図7に示すように、電流指令値補正部142Aは、現在通電しているV相のコイルLvと次に通電するU相のコイルLuとの両方のコイルに同時に通電するオーバーラップ区間において、コイルLu及びコイルLvに流す電流の電流指令値を補正する。例えば、V相のコイルLvとU相のコイルLuとに同時に通電するオーバーラップ区間の傾斜通電区間において、電流指令値補正部142Aは、オーバーラップ区間の開始時からコイルLuの電流指令値を徐々に増加させる。これにより、コイルLuに対して通電する際に発生する急峻なトルク変化を低減することができる。
【0067】
また、電流指令値補正部142Aは、コイルLuに流れる電流値が閾値に到達してからSRモータ7が所定の角度(0度以上)だけ回転した後に、コイルLvに流している電流を徐々に減少させる。これにより、これにより、コイルLvの通電を停止する際に発生するSRモータ7の急峻なトルク変化を低減することができる。なお、
図7に示す例では、オーバーラップ区間が傾斜通電区間である場合について説明するが、これに限定されない。すなわち、少なくともオーバーラップ区間の一部に傾斜通電区間を含んでいればよい。
【0068】
上述したように、第2の実施形態におけるモータ制御装置1Aは、一方の相から他方の相に切り替える場合に、他方の相に流す電流を徐々に増加させ、他方の相に流れる電流値が閾値に到達してからSRモータ7が所定の角度だけ回転した後に、一方の相に流している電流を徐々に減少させる。これにより、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、他方の相に電流を流す際に発生する急峻なトルク変化を低減することができる。
【0069】
上述の実施形態において、電流制御部140、140Aは、
図8に示すように、オーバーラップ区間において、駆動回路12のローサイドスイッチング素子とハイサイドスイッチング素子との両方のオン状態又はオフ状態を同時にPWM制御してもよい。例えば、従来の方法として、ハイサイドスイッチング素子のみPWM制御する方法がある。ただし、この方法では、電流がコイルを介して還流する経路が形成されるため、このコイルのインダクタンスの影響により電流指令値に実際の相電流値が追従しない場合がある。したがって、このような場合にハイサイドスイッチング素子及びローサイドスイッチング素子の両方のスイッチング素子を同時にPWM制御することで、電流指令値に対する実際にコイルに流れる相電流値の追従性が向上する。例えば、第2の実施形態において、電流制御部140Aは、コイルLvに流している電流を徐々に減少させる傾斜通電区間において、ハイサイドスイッチング素子及びローサイドスイッチング素子の両方のスイッチング素子を同時にPWM制御することで電流指令値に対して相電流の追従が向上することができる。
【0070】
また、上述の実施形態において、ダイオード58〜63は、IGBT、FET及びBJT等のスイッチング素子に代替されてもよい。
【0071】
モータ制御装置1の各部は、ハードウェアにより実現されてもよく、ソフトウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、プログラムが実行されることにより、コンピュータが、モータ制御装置1の一部として機能してもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されていてもよく、ネットワークに接続された記憶装置に記憶されていてもよい。
【0072】
上述した実施形態における制御装置13をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0073】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0074】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。