【課題を解決するための手段】
【0011】
  この目的のため、独立請求項に係る電気音響変換器が提供される。従属請求項は、発明の好ましい実施形態を提供する。
【0012】
  2つの変換器方式が提示される。圧電材料としてLiNbO
3を有する変換器のための方式と、圧電材料としてLiTaO
3を有する変換器のための方式である。
【0013】
  圧電材料としてLiNbO
3を有する電気音響変換器は、縦方向と、縦方向と直交する横方向とを含む。縦方向は、音波の主な伝播方向を規定する。横方向は、変換器の電極指の向きを主に規定する。
【0014】
  変換器はさらに、変換器および音響活性領域内を伝播する音波の横速度プロファイルを含む。音響活性領域は、反対極性の電極指のオーバーラップ領域、すなわち、変換器にRF信号が印加されると縦方向に伝播している音波が励起される区域と主に定義される。
【0015】
  横速度プロファイルは、この活性領域内に周期構造を有する。周期構造は、複数の極小値と、極小値よりも大きい複数の極大値とを有する。さらに、周期構造の両側に、横速度プロファイルのエッジ構造が位置している。エッジ構造内の速度は、周期構造の極大値よりも低い。
【0016】
  周期構造は、最大速度を有する2つの最も外側の区間を有することも可能である。
  すなわち、活性領域内の周期構造に隣接して配置される単位セル当たり、低速度の2本のストライプが存在する。ここで、単位セルは、音波長λの縦方向における長さを有する音響トラックの区分を指す。
【0017】
  圧電材料としてLiTaO
3を有する電気音響変換器は、縦方向と、縦方向と直交する横方向とを含む。縦方向は、音波の主な伝播方向を規定する。横方向は、変換器の電極指の向きを主に規定する。
【0018】
  変換器はさらに、変換器および音響活性領域内を伝播する音波の横速度プロファイルを含む。音響活性領域は、反対極性の電極指のオーバーラップ領域、すなわち、変換器にRF信号が印加されると縦方向に伝播している音波が励起される区域と主に定義される。
【0019】
  横速度プロファイルは、この活性領域内に周期構造を有する。周期構造は、複数の極小値と、極小値よりも大きい複数の極大値とを有する。さらに、周期構造の両側に、横速度プロファイルのエッジ構造が位置している。エッジ構造内の速度は、周期構造の極小値よりも高い。
【0020】
  周期構造は、最小速度を有する2つの最も外側の区間を有することも可能である。
  すなわち、活性領域内の周期構造に隣接して配置される各単位セル内に、高速度の2本のストライプが存在する。
【0021】
  特に圧電基板であるLiTaO
3を有する変換器では、ダミーフィンガーの存在が好まれ得る。
【0022】
  単位セル当たり2本のストライプは変換器の長さにわたって延在し、変換器当たり合計2本のストライプがもたらされ得る。
【0023】
  速度プロファイルは、Δv/v導波路であり得る。すなわち、周期構造はΔv/v導波路の一部であり得る。
【0024】
  周期構造およびエッジ構造は、縦方向に延在する選択された速度値のストライプの領域を確立する。
【0025】
  「周期構造」という文言は、横方向における速度プロファイルの形状を指す。したがって、周期構造において、速度プロファイルは、互いに隣接して配置されて横方向に延在する、高速度または低速度の同一区間を含む。
【0026】
  周期構造は、正弦波構造、鋸歯構造、方形波構造からなり得る。しかし、周期構造は、これらの構造の組合せで構成されてもよい。
【0027】
  周期構造は、周期的な長さにおける周期性を有することも可能であるが、最小および最大速度値の振幅は、たとえば放物線、正弦関数または余弦関数などのプロファイルに従う。
【0028】
  周期構造とエッジ構造との組合せは、不要な横モードだけでなくSHモードも効果的に抑制またはさらには除去される変換器の活性領域内の速度プロファイルを規定することがわかった。従来の手段は2つ以上の不要なモードの一方のみ、すなわち不要な横モードのみしか抑制できず、変換器の効率を低下させ得るため、これは驚くべきことである。
【0029】
  一実施形態では、エッジ構造は、周期構造のそれぞれの側に直接隣接して配置される、単位セル当たり2本のストライプを含む。したがって、エッジ構造は、間に他の区間を有さずに周期構造の両側に直接位置している。
【0030】
  原則として、エッジ構造の長さは周期構造の周期的な長さに限定されない。当該長さは、周期的な長さよりも大きくてもよいし、周期的な長さよりも小さくてもよい。しかし、一実施形態では、特に圧電材料としてLiNbO
3を用いて動作する場合、エッジ構造は、周期構造の周期、すなわち周期的な長さの50%よりも大きい長さlを有する。
【0031】
  一実施形態では、特に圧電材料としてLiTaO
3を用いて動作する場合、エッジ構造は、周期構造の周期、すなわち周期的な長さの50%よりも小さい長さlを有する。
【0032】
  変換器自体に言及する場合の「長さ」という用語は、縦方向における伸びを意味する。変換器自体に言及する場合の「幅」という用語は、横方向における伸びを意味する。
【0033】
  電極指または速度プロファイルに言及する場合の「長さ」という用語は、横方向における伸びを意味する。電極指または速度プロファイルに言及する場合の「幅」という用語は、縦方向における伸びを意味する。
【0034】
  一実施形態では、変換器はさらに、エッジ構造の両側に位置する単位セル当たりにギャップ構造の1本のストライプを含む。音響活性領域内の単位セル当たりの電極指の数は、ギャップ領域内の電極指の数の2倍である。したがって、各単位セルにはギャップ構造の1本のストライプのみが存在する。ギャップ構造において、速度は周期構造の極大値よりも大きい。活性領域はギャップ構造の縦方向の区間同士の間に配置され、すなわち、ギャップ構造は活性領域の一部ではない。
【0035】
  ギャップ構造は、1つの極性の電極指の端部が、それぞれの他方の電極の要素、たとえばバスバー自体またはバスバーに接続されたダミーフィンガーに対向する、トランスデューサの圧電材料の区域に対応することも可能である。
【0036】
  一実施形態では、ギャップ構造のストライプは、0.5λから10λの、または特に2λから4λの長さを有する。ここで、「長さ」という用語は、横方向に沿った伸びを指す。
【0037】
  ここで、λは、縦方向に伝播する不要な音波の波長を指す。波長λは、変換器のたとえば平均の周期的な長さの指構造の周期的な長さによって主に規定される。
【0038】
  ギャップ構造の両側に、速度が減少した構造が位置し得る。速度の減少は、付加的な金属層によって達成され得る指幅の増加または質量負荷に起因し得る。
【0039】
  一実施形態では、ギャップ構造は0.2から0.8の金属化率ηを有する。金属化率ηは以下のように規定される。
【0040】
【数1】
【0041】
  式中、w
iは、縦方向に沿った長さλの距離内の電極指のi番目の電極指の幅を指す。従来の変換器では、活性領域においてnは2に等しい。スプリットフィンガー変換器では、nは4に等しい場合がある。ギャップ構造に対応する音響トラックの領域には、1つの極性の電極指のみが存在し得る。したがって、nは1に等しい場合がある。
【0042】
  一実施形態では、変換器は、圧電基板と、基板上に配置されて縦方向と平行に配列された2本のバスバーと、櫛型の電極指とを含む。指は基板上に配置され、バスバーの一方に接続され、横方向と平行に配列される。
【0043】
  反対極性の指のオーバーラップが、活性領域を規定する。
  基板上の電極指の存在によって、速度プロファイルを成形する便利な方法が確立される。指の質量によって、波伝播の指音響インピーダンスおよび電気抵抗率の詳細、特に波速度を操作することができる。たとえばバスバーおよび電極指の電極構造の材料を介して、基板のある場所における基板の質量負荷を増加させると、主に波速度の減少に繋がる。たとえば高いヤング率を有する材料を介して、音響トラックの剛性パラメータを増加させると、主に速度の増加に繋がる。
【0044】
  したがって、一実施形態では、横速度プロファイルは、以下から選択される1つ以上の測定値、すなわち、
  ・  指幅の増加による質量負荷の増加によって減少した速度、
  ・  指厚の増加による質量負荷の増加によって減少した速度、
  ・  電極指上に堆積された付加的な材料による質量負荷の増加によって減少した速度、
  ・  ギャップ領域内のダミーパッチによる質量負荷の増加によるギャップ領域内の減少した速度、
  ・  電極指上のストライプ内に堆積された材料による質量負荷の増加によって減少した速度、
  ・  指幅の減少による質量負荷の減少によって増加した速度、
  ・  指厚の減少による質量負荷の減少によって増加した速度、
  ・  電極指から除去された材料による質量負荷の減少によって増加した速度
を介して調節される。
【0045】
  低速度の領域内の金属化率ηは、0.3から0.8の範囲であり得る。0.4から0.75の値が好まれ得る。
【0046】
  高速度の領域内の金属化率ηは、0.15から0.75の範囲であり得る。0.2から0.6の値が好まれ得る。
【0047】
  周期構造における周期的な長さは0.2から3λの範囲であり得、λは(縦方向における)音波長である。
【0048】
  周期的な長さによって分割される高速度の長さの間の比率は、0.2から0.8の範囲であり得る。0.4から0.6の比率が好まれ得る。
【0049】
  LiNbO
3基板については、以下が当てはまる。エッジ構造の区間の長さは、0.2λから3λの範囲であり得る。0.3λから2.5λの長さが好まれ得る。
【0050】
  LiTaO
3基板については、以下が当てはまる。エッジ構造の区間の長さは、0.1λから1λの範囲であり得る。0.2λから0.7λの長さが好まれ得る。
【0051】
  横速度プロファイルはさらに、周期もしくは非周期または対称もしくは非対称の構造を含むことも可能である。しかし、音響トラック内の横速度プロファイルは上述の構造からなることも可能である。
【0052】
  上述のような変換器では、基本モードn=1についての正規化したオーバーラップ積分<Φ/Ψ
n>は0.95以上の範囲にあり得る。オーバーラップ積分は、(正規化した)励起関数Φと(正規化した)波モード形状Ψ
nとの一致を記述しており、異なるモードΨ
nは直交しているため、1直下の値はより高いモードが励起されることを防止する。
【0053】
  例示的かつ非限定的な実施形態および関連の図面に基づいて、変換器をより詳細に説明する。