特許第6629218号(P6629218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6629218N−ベンジルトリプタンスリン誘導体、ならびにその調製方法および利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629218
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】N−ベンジルトリプタンスリン誘導体、ならびにその調製方法および利用
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20200106BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20200106BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200106BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
   C07D487/04 140
   C07D487/04CSP
   A61K31/519
   A61K31/5377
   A61P43/00 111
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P31/18
   A61P37/06
   A61P25/00
   A61P31/04
   A61P35/00
   A61P27/02
   A61P35/02
【請求項の数】15
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-552662(P2016-552662)
(86)(22)【出願日】2014年11月12日
(65)【公表番号】特表2016-535788(P2016-535788A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】CN2014090947
(87)【国際公開番号】WO2015070766
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年11月9日
(31)【優先権主張番号】201310560572.0
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516137742
【氏名又は名称】フーダン ユニヴァーシティ
【氏名又は名称原語表記】Fudan University
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チン
(72)【発明者】
【氏名】クアン,チュンシャン
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0281397(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102532144(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103054870(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102579452(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 31/519〜5377
A61P 25/00〜24
A61P 27/02
A61P 31/04〜18
A61P 35/00〜02
A61P 37/06
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノメチルトリプタンスリン誘導体において、以下の式1:
(式中、
が、水素またはフッ素に相当し;
が、−NRに相当し;
およびRがそれぞれ独立して、以下の組:H、置換または非置換のC1〜C4アルキル基、置換または非置換のC2〜C4アルケニル基、置換または非置換のC2〜C4アルキニル基、および置換または非置換のC3〜C6シクロアルキル基から選択され;
またはRおよびRが、隣接する窒素原子と一緒に、置換または非置換の5〜7員複素環を形成し、ここで、所望により、前記5〜7員複素環は、1〜2個の窒素原子ならびに以下の組:OおよびSから選択される0〜2個のヘテロ原子を含む5〜6員飽和環であって;
ここで、置換は、該当する基の1個または複数の水素原子が、以下の組:C1〜C4アルキル基、C1〜C4ハロアルキル基、t−ブトキシカルボニルアミノ保護基およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指す)
に示される一般構造を有することを特徴とする、アミノメチルトリプタンスリン誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体において、RおよびRがそれぞれ独立して、以下の組:C1〜C4アルキル基から選択され;または、RおよびRが、隣接する窒素原子と一緒に、置換または非置換の5〜6員飽和環を形成し、ここで、前記5〜6員飽和環が、1個または2個の窒素原子ならびに以下の組:Oから選択される任意選択的な1個のヘテロ原子を含むことを特徴とする、アミノメチルトリプタンスリン誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体において、Rが、以下の組:
から選択される置換または非置換の基であり、式中、
が、結合部位を示しここで、置換は、該当する基の1個または複数の水素原子が、以下の組:C1〜C4アルキル基およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指すことを特徴とする、アミノメチルトリプタンスリン誘導体。
【請求項4】
請求項1に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体において、前記誘導体の一般構造が、以下:
=HまたはF
(式中、置換基Rが、水素またはフッ素に相当する)
に示されるとおりであることを特徴とする、アミノメチルトリプタンスリン誘導体。
【請求項5】
請求項1または4に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体において、以下の組:
から選択される化合物であることを特徴とする、アミノメチルトリプタンスリン誘導体。
【請求項6】
請求項1または4に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩において、前記化合物はIDO阻害剤であることを特徴とする、化合物またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
請求項1または4に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製のための方法において、以下の工程:
(d)式5に示される化合物(2−ブロモメチル−トリプタンスリン)を、トリエチルアミンの存在下で、不活性溶媒中でRHと反応させて、式1(式中、RおよびRが、上に定義されるとおりである)に示される化合物を得る工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、工程(d)の前に工程(c):
(c)式4に示される化合物を、不活性溶媒中で臭素化剤と反応させて、式5に示される化合物を得る工程をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、使用される前記臭素化剤がNBSであることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項4に記載のアミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製のための方法において、合成経路が、以下:
=HまたはF
=以下の組から選択される置換または非置換の基
のとおりであり、具体的な工程は:
(1)メチルイサト酸無水物(3)の合成
5−メチルイサチンを、乾燥ジクロロメタン中で懸濁させ、およびメタ−クロロペルオキシ安息香酸を、0℃で何回かに分けて加え、次に、室温で1.5〜2.5時間撹拌し;TLCによって反応が完了したことを確認し、前記反応において生成された白色の固体をろ過して取り除き、および酢酸エチルで3回洗浄して、5−メチルイサト酸無水物を得る工程であって、5−メチルイサチンおよびメタ−クロロペルオキシ安息香酸のモル比が、(0.5〜1):1である、工程;
(2)2−メチルトリプタンスリン(4)の合成
メチルイサト酸無水物と、5−フルオロイサチンと、トリエチルアミンとの混合物を乾燥トルエン中で懸濁させ、次に、100〜120℃の温度で3.5〜4.5時間加熱し、および減圧下で前記溶媒を蒸留して取り除き;得られた黄色の固体をジクロロメタンに溶解させ、および酢酸エチルを加え、次に、得られた黄色の固体をろ過し、かつ酢酸エチルで3回洗浄して、2−メチルトリプタンスリンを得る工程であって、メチルイサト酸無水物、5−フルオロイサチンおよびトリエチルアミンのモル比が、(0.2〜0.5):(0.2〜0.5):1である、工程;
(3)2−ブロモメチル−トリプタンスリン(5)の合成
工程(2)で得られた前記2−メチルトリプタンスリンを、窒素ガスの保護下で、75〜85℃で乾燥ジクロロメタンに溶解させ、次に、N−ブロモスクシンイミド(NBS)とアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)との混合物を何回かに分けて加え;反応溶液を、75℃で15〜17時間加熱し、およびTLCによって反応が完了したことを確認し;前記反応溶液を室温に冷却し、前記反応溶液を塩溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ;有機相を濃縮して、黄色の生成物を得る工程であって、2−メチルトリプタンスリン、NBSおよびAIBNのモル比が、1:1:(0.005〜0.02)である、工程;および
(4)アミノメチルトリプタンスリン(1)の合成
1.5〜2.5時間にわたって乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中で、室温で2−ブロモメチル−トリプタンスリン、脂肪族アミンおよびトリエチルアミンを一緒に撹拌し、TLCによって反応が完了したことを確認し、50mlの水を加え、かつ10mlのジクロロメタンを用いた3回連続抽出を行い;続いて、得られたジクロロメタンの全体積を水で3回洗浄し、および次に、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ;シリカゲルを用いて、得られた濃縮された黄色の固体の分離を行って、黄色のN−ベンジルトリプタンスリン誘導体を得る工程であって、2−ブロモメチル−トリプタンスリン、前記脂肪族アミンおよびトリエチルアミンのモル比が、1:(1〜2):(2〜5)である、工程
であることを特徴とする、方法。
【請求項11】
医薬組成物において、(i)請求項1または4に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩;ならびに(ii)薬学的に許容できる担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項12】
トリプトファン代謝の異常に関連する疾患を治療するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物において、前記疾患は、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患、癌および眼疾患の1つまたは複数から選択されることを特徴とする、医薬組成物。
【請求項14】
トリプトファン代謝の異常に関連する疾患を治療するための医薬組成物の調製方法において、請求項1または4に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で、薬学的に許容できる担体と混合して、医薬組成物を生成し、前記疾患は、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患、癌および眼疾患の1つまたは複数から選択されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の医薬組成物において、前記癌はT細胞白血病または結腸癌であることを特徴とする、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬化学の技術分野に属し、特に、アミノメチルトリプタンスリン誘導体、ならびにその調製方法および利用に関する。
【背景技術】
【0002】
インドール−2,3−ジオキシゲナーゼ(IDOと略される;分子量(MW)48,000;EC 1.13.11.42)は、ヘム含有酵素であり、この酵素は、哺乳類のトリプトファン代謝経路における最初の酵素であり、律速酵素でもある。IDOは、必須アミノ酸であるトリプトファンが、酸素二原子による酸化を行ってN−ホルミルキヌレニンを生成する酸化反応を触媒し、生体内のトリプトファンの生理的な除去(physiological clean−up)に関与する。トリプトファンを分解することによって、IDOは、生体内のトリプトファンが少ない微環境を作り出し、それによって、癌、白内障および神経障害などの、トリプトファンの欠乏に密接に関連する様々な疾患の発症を引き起こす。したがって、IDOを標的にする高効率の阻害剤の探求は、近年、薬剤の研究開発の対象になっている。
【0003】
IFN−γは、IDO発現のいくつかの潜在的な誘導因子の1つである。高いレベルのIFN−γ刺激により持続される活性化の間、IDOは、遊離血清トリプトファンの利用可能性を低下させ、それによって、5−ヒドロキシトリプタミン生成を減少させる。これらの変化は、キノリン酸(同様にIDOによって誘導される)などの神経活性キヌレニン代謝産物の蓄積とともに、神経疾患/精神疾患の発症を促し、様々な精神疾患の原因となる一方、IDO活性およびトリプトファン分解を特徴とする慢性疾患に関連する症状も誘導する。
【0004】
IDO活性は、加齢性核白内障の発症にも関連する。IDOは、水晶体におけるUVフィルター生合成に関与する最初の酵素であり、律速酵素でもある。トリプトファンの分解により得られるUVフィルター化合物(3−ヒドロキシキヌレニンおよびキヌレニングルコシド)は、ヒト水晶体タンパク質中に存在するタンパク質を改変する。これらのUVフィルター化合物の量は、加齢に伴い増加し、徐々に水晶体を曇らせ、さらにはいわゆる加齢性核白内障を引き起こす。
【0005】
IDO発現は、局所的なTリンパ球増殖を阻止することによって引き起こされる免疫応答の抑制にも関連している。Tリンパ球は、トリプトファンの欠乏に非常に敏感であり、Tリンパ球は、トリプトファンが欠乏すると細胞周期のG1期で停止される。このT細胞によって媒介される免疫応答の抑制は、自己免疫疾患、同種移植の拒絶反応、神経変性疾患、うつ病、細菌またはウイルス感染(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))および癌を含む多くの疾患の原因である(Swanson et al.Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.2003,30,311)。
【0006】
ほとんどのヒト腫瘍は、IDOを構成的に(constitutively)発現することが分かっている。予め免疫されたマウスから得られるマウス腫瘍細胞は、IDOの発現が、拒絶反応からの保護を提供し得、1−MTの投与により、上記の影響がなくなることを示した。さらに、IDO阻害剤の同時投与により、癌治療の有効性が向上される。
【0007】
IDO阻害剤は、精神疾患の抑制、ならびに病理学的特徴としてIDOによって媒介されるトリプトファン代謝を含む他の疾患の治療に使用されてもよく;前記疾患は、AIDSなどのウイルス感染、ライム病および連鎖球菌感染などの細菌感染、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病)、うつ病、癌(T細胞白血病および結腸癌を含む)、眼疾患(白内障および加齢に伴う黄変など)および自己免疫疾患を含む。様々な異なるインビトロアッセイ(Takikawa,et al.J.Biol.Chem.1998,263,2041)が、反応基準物質(reaction reference)または自然源から得られた抽出物のIDO阻害活性を、スクリーニング(例えば、ハイスループットスクリーニングにより)および測定し、またはIDO阻害に関連する速度定数を決定するのに使用され得る。
【0008】
IDOは、多くの異なる疾患の病因に密接に関連しており、癌、アルツハイマー病、うつ病、白内障および他の重篤な疾患の標的であることが既に示されている。IDO阻害剤は、薬剤としての利用が広く見込まれているが、これまで、好適なIDO阻害剤が薬剤として販売されてこなかったため、新規の効率的なIDO阻害剤の探求は、重要な理論的意義および潜在的な利用価値を有する。
【0009】
既存の研究は、IDO阻害剤1−MT(1−メチル−トリプトファン)が、インビトロでのT細胞免疫刺激に対する腫瘍細胞の感受性を高めることができ;同じ薬剤が、腫瘍細胞の増殖を遅らせ、動物モデルにおけるインビボでの化学療法薬の抗腫瘍効果を高めることができ、実質的に全ての自然発生腫瘍について効果が観察されたことを示した。残念ながら、ほとんどの既存のIDO阻害剤の阻害効率は低く、インビボおよびインビトロ試験においてほとんどの一般的に使用されるIDO阻害剤、1−MTの阻害定数(Ki)は、わずか34μMである。
【0010】
したがって、当該技術分野において、新規の効率的なIDO阻害剤を開発する差し迫った必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、アミノメチルトリプタンスリン誘導体、ならびにその調製方法および利用を提供することである。
【0012】
本発明の第1の態様は、以下の式1に示される一般構造を有するアミノメチルトリプタンスリン誘導体を提供する。

式中、
が、水素またはフッ素に相当し;
が、−NRに相当し;
およびRがそれぞれ独立して、以下の組:H、置換または非置換のC1〜C4アルキル基、置換または非置換のC2〜C4アルケニル基、置換または非置換のC2〜C4アルキニル基、および置換または非置換のC3〜C6シクロアルキル基から選択され;
またはRおよびRが、隣接する窒素原子とともに、置換または非置換の5〜7員複素環を形成し、ここで、5〜6員飽和環が、1〜2個の窒素原子ならびに以下の組:OおよびSから選択される0〜2個のヘテロ原子を含み;
ここで、置換は、所与の基上に存在する1個または複数の水素原子(好ましくは、窒素原子上に存在する水素原子)が、以下の組:C1〜C4アルキル基、C1〜C4ハロアルキル基、アミノ保護基(好ましくは、t−ブトキシカルボニル)およびハロゲンから選択される置換基)で置換される場合を指す。
【0013】
別の好ましい実施形態において、RおよびRが、隣接する窒素原子と一緒に、置換または非置換の5〜6員飽和環を形成する場合、環上に存在する窒素原子は、任意選択的に、アミノ保護基を有し得る。
【0014】
別の好ましい実施形態において、前記アミノ保護基は、以下の組:t−ブトキシカルボニルから選択される。
【0015】
別の好ましい実施形態において、前記5〜7員複素環は、ヘテロアリール環ではない。
【0016】
別の好ましい実施形態において、前記5〜7員複素環は、飽和複素環、好ましくは5〜6員飽和複素環である。
【0017】
別の好ましい実施形態において、前記5〜7員複素環は、1個または2個のみのヘテロ原子を含有する。
【0018】
別の好ましい実施形態において、前記5〜7員複素環のヘテロ原子の全てをNが占めている。
【0019】
別の好ましい実施形態において、RおよびRが一緒に、それぞれ独立して、以下の組:C1〜C4アルキル基から選択され;または、RおよびRが、隣接する窒素原子と一緒に、置換または非置換の5〜6員飽和環を形成し、ここで、前記5〜6員飽和環が、1〜2個の窒素原子ならびに以下の組:Oから選択される任意選択的な1個のヘテロ原子を含む。
【0020】
別の好ましい実施形態において、RおよびRをHが同時に占めない。
【0021】
別の好ましい実施形態において、Rが環状イミンである。
【0022】
別の好ましい実施形態において、Rが、以下の組:

(式中、

が、結合部位を示し;
ここで、置換は、所与の基上に存在する1個または複数の水素原子が、以下の組:C1〜C4アルキル基およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指す)
から選択される置換または非置換の基である。
【0023】
別の好ましい実施形態において、RがFに相当する。
【0024】
本発明の第2の態様は、アミノメチルトリプタンスリン誘導体であって、前記誘導体の一般構造が、以下:

=HまたはF

(式中、置換基Rが、環状イミンまたはジアルキル置換アミンに相当し、かつRが、水素またはフッ素に相当する)
に示されるとおりである、アミノメチルトリプタンスリン誘導体を提供する。
【0025】
別の好ましい実施形態において、前記誘導体が、以下の組:

から選択される化合物である。
【0026】
本発明の第3の態様は、本発明の第1または第2の態様に示されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製のための方法であって、以下の工程:

(d)式5に示される化合物(2−ブロモメチル−トリプタンスリン)を、トリエチルアミンの存在下で、不活性溶媒中でRHと反応させて、式1(式中、RおよびRが、上に定義されるとおりである)に示される化合物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0027】
別の好ましい実施形態において、工程(d)で、前記不活性溶媒は、DMF、好ましくは無水DMFによって構成される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、工程(d)で、前記反応は約10〜40℃で行われる。
【0029】
別の好ましい実施形態において、工程(d)で、前記反応の持続時間は0.5〜12時間であり、1〜5時間の範囲が好ましい。
【0030】
別の好ましい実施形態において、工程(d)で、式5に示される化合物、RHおよびトリエチルアミンのモル比は、1:(1〜2):(2〜5)である。
【0031】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、工程(d)の前に工程(c):

(c)式4に示される化合物を、不活性溶媒中で臭素化剤と反応させて、式5に示される化合物を得る工程をさらに含み;ここで、使用される臭素化剤が、好ましくはNBSである。
【0032】
別の好ましい実施形態において、工程(c)における反応は、開始剤の存在下で行われ、好ましくはAIBNの存在下で行われる。
【0033】
別の好ましい実施形態において、工程(c)は、NBSおよびAIBNを混合し、その後、式4に示される化合物と反応させる工程を含む。
【0034】
別の好ましい実施形態において、工程(c)に示される不活性溶媒は、ジクロロメタンであり、無水ジクロロメタンが好ましい。
【0035】
別の好ましい実施形態において、工程(c)で、前記反応は約75〜85℃で行われる。
【0036】
別の好ましい実施形態において、工程(c)で、前記反応の持続時間は15〜17時間である。
【0037】
別の好ましい実施形態において、工程(c)で、式4に示される化合物、NBSおよびAIBNのモル比は、1:1:(0.005〜0.02)である。
【0038】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、工程(c)の前に工程(b):

(b)式3に示される化合物を、トリエチルアミンの存在下で、不活性溶媒中で、

と反応させて、式4に示される化合物を得る工程をさらに含む。
【0039】
別の好ましい実施形態において、工程(b)で、前記不活性溶媒はトルエン、好ましくは無水トルエンによって構成される。
【0040】
別の好ましい実施形態において、工程(b)で、前記反応は約100〜120℃で行われる。
【0041】
別の好ましい実施形態において、工程(b)で、前記反応の持続時間は3.5〜4.5時間である。
【0042】
別の好ましい実施形態において、工程(b)で、式3に示される化合物、

およびトリエチルアミンのモル比は、(0.2〜0.5):(0.2〜0.5):1である。
【0043】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、工程(b)の前に工程(a):

(a)式2に示される化合物を、不活性溶媒中で酸化剤と反応させて、式3に示される化合物を得る工程をさらに含み;ここで、使用される酸化剤は、好ましくはメタ−クロロペルオキシ安息香酸である。
【0044】
別の好ましい実施形態において、工程(a)に示される不活性溶媒は、ジクロロメタンであり、無水ジクロロメタンが好ましい。
【0045】
別の好ましい実施形態において、工程(a)で、前記反応は室温で行われる(10〜40℃の範囲が好ましい)。
【0046】
別の好ましい実施形態において、工程(a)で、前記反応の持続時間は1.5〜2.5時間である。
【0047】
別の好ましい実施形態において、工程(a)で、式2に示される化合物および酸化剤のモル比は、(0.5〜1):1である。
【0048】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様に示されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製のための方法であって、合成経路が、以下:

=HまたはF

に記載されるとおりであり、具体的な工程は:
(1)メチルイサト酸無水物(3)の合成
5−メチルイサチンを、乾燥ジクロロメタン中で懸濁させ、およびメタ−クロロペルオキシ安息香酸を、0℃で何回かに分けて加え、次に、室温で1.5〜2.5時間撹拌し;TLCによって反応が完了したことが確認されたら、反応において生成された白色の固体をろ過して取り除き、および酢酸エチルで3回洗浄して、5−メチルイサト酸無水物を得る工程であって、ただし、5−メチルイサチンおよびメタ−クロロペルオキシ安息香酸のモル比が、(0.5〜1):1である、工程;
(2)2−メチルトリプタンスリン(4)の合成
メチルイサト酸無水物と、5−フルオロイサチンと、トリエチルアミンとの混合物を乾燥トルエン中で懸濁させ、次に、100〜120℃の温度で3.5〜4.5時間加熱し、および減圧下で溶媒を蒸留して取り除き;得られた黄色の固体をジクロロメタンに溶解させ、および酢酸エチルを加え、次に、得られた黄色の固体をろ過し、かつ酢酸エチルで3回洗浄して、2−メチルトリプタンスリンを得る工程であって、ただし、メチルイサト酸無水物、5−フルオロイサチンおよびトリエチルアミンのモル比が、(0.2〜0.5):(0.2〜0.5):1である、工程;
(3)2−ブロモメチル−トリプタンスリン(5)の合成
工程(2)で得られた2−メチルトリプタンスリンを、窒素ガスの保護下で、75〜85℃で乾燥ジクロロメタンに溶解させ、次に、NBSとAIBNとの混合物を何回かに分けて加える。反応溶液を、15〜17時間にわたって75℃に加熱し、およびTLCによって反応が完了したことを確認する。反応溶液が室温に冷めたら、塩溶液での洗浄および無水硫酸ナトリウム上での乾燥を行い、有機相を濃縮して、黄色の生成物を得る工程であって、ただし、2−メチルトリプタンスリン、NBSおよびAIBNのモル比が、1:1:(0.005〜0.02)である、工程;
(4)N−ベンジルトリプタンスリン(1)の合成
1.5〜2.5時間にわたって乾燥DMF中で、室温で2−ブロモメチル−トリプタンスリン、脂肪族アミンおよびトリエチルアミンを一緒に撹拌し、およびTLCによって反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、かつ10mlのジクロロメタンを用いた3回連続抽出を行い;次に、得られたジクロロメタンの全体積を水で3回洗浄し、および次に、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させる。シリカゲルを用いて、得られた濃縮された黄色の固体の分離を行って、黄色のアミノメチルトリプタンスリン誘導体を得る工程であって、ただし、2−ブロモメチル−トリプタンスリン、脂肪族アミンおよびトリエチルアミンのモル比が、1:(1〜2):(2〜5)である、工程
である、方法を提供する。
【0049】
本発明の第5の態様は、病理学的特徴としてIDOによって媒介されるトリプトファン代謝の異常を含む疾患を予防および/または治療するように設計された薬剤の調製における、本発明の第1および第2の態様に示されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体の利用を提供する。
【0050】
本発明の第6の態様は、
(i)IDO阻害剤の調製;
(ii)トリプトファン代謝異常に関連する疾患の治療のための薬剤の調製;および
(iii)インビトロでのIDOの非治療的阻害
に使用されるための、本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩の利用を提供する。
【0051】
別の好ましい実施形態において、前記トリプトファン代謝異常に関連する疾患は、以下の組:腫瘍、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病など)、うつ病、癌(T細胞白血病および結腸癌を含む)、眼疾患(白内障および加齢に伴う黄変など)および自己免疫疾患から選択される。
【0052】
本発明の第7の態様は、(i)本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩;ならびに(ii)薬学的に許容できる担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0053】
別の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、トリプトファン代謝の異常に関連する疾患の治療に使用される。
【0054】
別の好ましい実施形態において、前記トリプトファン代謝異常に関連する疾患は、以下の組:腫瘍、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病など)、うつ病、癌(T細胞白血病および結腸癌を含む)、眼疾患(白内障および加齢に伴う黄変など)および自己免疫疾患から選択される。
【0055】
本発明の第8の態様は、本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む、IDO阻害剤を提供する。
【0056】
本発明の第9の態様は、インビトロでのIDO活性を非治療的に阻害するための方法において、以下のプロセス:本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を、有効な阻害をもたらす量で、阻害標的と接触させることを含む、方法を提供する。
【0057】
本発明の第10の態様は、トリプトファン代謝の異常に関連する疾患を治療するのに使用される医薬組成物の調製のための方法であって、本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で、薬学的に許容できる担体と混合して、医薬組成物を生成する方法を提供する。
【0058】
本発明の第11の態様は、トリプトファン代謝の異常に関連する疾患を治療するための方法であって、本発明の第1および第2の態様に記載の式1に示される化合物またはその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で治療対象に適用する方法を提供する。
【0059】
別の好ましい実施形態において、前記トリプトファン代謝異常に関連する疾患は、以下の組:腫瘍、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病など)、うつ病、癌(T細胞白血病および結腸癌を含む)、眼疾患(白内障および加齢に伴う黄変など)および自己免疫疾患から選択される。
【0060】
本発明の範囲内で、本発明の上記の技術特性および以下の本文(例えば、実施例)により詳細に記載される技術特性は、互いに組み合わせることができ、それによって、新規なまたは好ましい技術的解決法が生み出されることに留意されたい。これらは、スペースの制約により、本明細書において網羅的に列挙されていない。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の発明者らによって行われた長期の徹底的な研究の後、本発明者らは、高度に特異的なIDO阻害活性を示す、式1に示される構造を有するタイプのアミノメチルトリプタンスリン誘導体を意外にも発見し、ここで、非常に類似した構造を有する特定の他のアミノメチルトリプタンスリン誘導体と比べて、前記化合物においてIDO阻害活性(IC50)が意外にも著しく向上され(IC50値が、1〜3桁低下し得る)、したがって、前記化合物は、良好な利用可能性を有する。本発明は、上記の発見に基づいて本発明者らによって完成された。
【0062】
用語
特に規定されない限り、本発明に関する化合物の全ては、その全ての光学異性体または互変異性体を含むものとする。
【0063】
「C1〜C4アルキル基」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルまたは同様の基などの、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基を指す。
【0064】
「C2〜C4アルケニル基」という用語は、エテニル、プロペニル、ブテニルまたは同様の基などの、2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルケニル基を指す。
【0065】
「C2〜C4アルキニル基」という用語は、エチニル、プロピニル、ブチニルまたは同様の基などの、2〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキニル基を指す。
【0066】
「5〜7員複素環」という用語は、5〜7つの要素を含有する単環を指し、ここで、前記環は、完全共役π電子系を有さない。特に、本発明に関連して、前記環は、任意選択的に、1〜3個のヘテロ原子を含有してもよく、前記ヘテロ原子は、OおよびNを含む。飽和環の代表例としては、ピペラジニル基、モルホリノ基などが挙げられる。
【0067】
特に規定されない限り、「置換」という用語は、所与の基上に存在する1個または複数の水素原子が、以下の組:C1〜C4アルキル基、C1〜C4ハロアルキル基、アミノ保護基(好ましくは、t−ブトキシカルボニル)およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指す。
【0068】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrおよびIを指す。
【0069】
アミノメチルトリプタンスリン誘導体
トリプタンスリンは、化学名インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンを有するタイプのインドールキナゾリンアルカロイドである。トリプタンスリンは、純粋な形態で黄色の針状晶であり、主に、リュウキュウアイ(Strobilanthes cusia)、アイ(Polygonum tinctorium)およびホソバタイセイ(Isatis tinctoria)などの、タデ科(indigo family)に属する植物中で見られる。あるいは、トリプタンスリンは、特定の微生物を含有する発酵ブロスから抽出され得る。
【0070】
トリプタンスリンは、タデ科植物ならびに微生物の代謝産物から抽出され得るが、分離プロセスが長く、収率が低いため、研究に関連する薬剤および臨床薬の要求を満たすのが難しい。速い、高収率の、簡単でかつ容易に利用可能な合成経路を探求することによって初めて、より多くの資源を、トリプタンスリンの利用のために提供することができ、さらなる研究、開発および利用が可能になる。
【0071】
既存の技術の欠点を克服するために、本発明は、利用価値を有する活性化合物を得る目的で、トリプタンスリンの溶解度および薬理学的活性を向上させるために、トリプタンスリンに構造的変更を加えた。本発明に関する研究および薬理学的試験は、水溶性基をトリプタンスリン分子中に導入することによって生成されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体が、IDO阻害剤としてより効率的である可能性を有し、抗菌活性、抗炎症活性および抗腫瘍活性などの様々な薬理学的活性を示し、広い利用可能性を有することを示す。さらに、トリプタンスリン誘導体を合成するための従来の方法と比較して、本発明によって構成される合成方法は、操作が簡単であるという利点を提供する一方、穏やかな条件を使用し、高い収率をもたらし、かつ工業生産により適している。
【0072】
特に、本発明によって構成されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体は、以下の式1:

(式中、
が、水素またはフッ素に相当し;
が、−NRに相当し;
ここで、RおよびRがそれぞれ独立して、以下の組:C1〜C4アルキル基から選択され;または、RおよびRが、隣接する窒素原子と一緒に、置換または非置換の5〜6員飽和環を形成し、ここで、前記5〜6員飽和環が、少なくとも1個の窒素原子ならびに以下の組:OおよびNから選択される任意選択的な1〜2個のヘテロ原子を含み;
ここで、置換は、所与の基上に存在する1個または複数の水素原子(好ましくは、窒素原子上に存在する水素原子)が、以下の組:C1〜C4アルキル基、t−ブトキシカルボニル基およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指す)
に示される一般構造を有する。
【0073】
好ましくは、Rが、窒素原子ならびに以下の組:OおよびNから選択されるヘテロ原子を有するべきである。
【0074】
好ましくは、Rが、以下の組:

(式中、

が、結合部位を示し;
ここで、置換は、所与の基上に存在する1個または複数の水素原子が、以下の組:C1〜C4アルキル基およびハロゲンから選択される置換基で置換される場合を指す)
から選択される置換または非置換の基であるべきである。
【0075】
本発明によって記載される化合物、互変異性体、構造類似体またはその薬学的に許容できる塩、ならびに前記化合物の少なくとも1つの例、その構造類似体またはその薬学的に許容できる塩を含有する組成物は全て、IDOを阻害すること、ならびに病理学的特徴としてIDOによって媒介されるトリプトファン代謝を含む疾患の治療および/または予防のための利用に使用され得る。このような疾患としては、限定はされないが、腫瘍、癌、眼疾患、自己免疫疾患、精神疾患、うつ病および不安神経症が挙げられる。前記利用は、インビトロおよびインビボでの利用、ならびに薬剤、IDO阻害剤および医薬組成物の調製における利用を含む。特に、本発明の発明者らは、特に好ましい実施形態において、Rが、Fに相当する場合、化合物が、最適なIDO阻害活性を示すことを発見した。
【0076】
アミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製
近年、医薬品化学者らは、トリプタンスリンおよびその誘導体の合成を研究するために多大な労力を注いでおり、トリプタンスリンを合成するのに使用される主な方法は、イサチンと、イサト酸無水物との反応であったが;前記方法は、簡単であり、高い収率を提供し、穏やかな反応条件を使用する。さらに、さらなる官能基を、出発材料であるイサチンおよびイサト酸無水物に加えて、様々な異なる機能的トリプタンスリンを合成することができる。現在、イサチンを合成するのに使用される主な方法は、塩酸水溶液中で抱水クロラール、ヒドロキシルアミンおよびアニリンを反応させて、オキシムを生成し、その後、濃硫酸下で閉環を誘導して、イサチンを得る工程を含み;前記方法は、ハロゲンおよびアルキル含有トリプタンスリンの合成に非常に適しており、高い収率を提供する。しかしながら、前記活性基が、イサチンを合成するプロセス中に副反応を生じやすいため、この方法を用いて、活性基を含有するトリプタンスリンを生成するのは難しい。
【0077】
長い研究努力の末、本発明の発明者らは、活性基を有するトリプタンスリンを調製するのに使用され得る合成方法を開発することに成功した。特に、前記方法は、以下の工程:

(d)式5に示される化合物(2−ブロモメチル−トリプタンスリン)を、トリエチルアミンの存在下で、不活性溶媒中でRHと反応させて、式1に示される化合物を得る工程を含む。
【0078】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、以下の工程:

(c)式4に示される化合物(2−メチルトリプタンスリン)を、不活性溶媒中で臭素化剤と反応させて、式5に示される化合物を得る工程をさらに含み;ここで、使用される臭素化剤が、好ましくはNBSである。
【0079】
本発明の好ましい実施形態において、臭素化反応は、AIBNなどの開始剤の存在下で行われる。好ましい実施形態は、NBSおよびAIBNを混合し、その後、式4に示される化合物と反応させる工程を含む。
【0080】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、以下の工程:

(b)式3に示される化合物を、トリエチルアミンの存在下で、不活性溶媒中で、

と反応させて、式4に示される化合物を得る工程をさらに含む。
【0081】
別の好ましい実施形態において、前記方法は、以下の工程:

(a)式2に示される化合物を、不活性溶媒中で酸化剤と反応させて、式3に示される化合物を得る工程をさらに含み;ここで、使用される酸化剤は、好ましくはメタ−クロロペルオキシ安息香酸である。
【0082】
上記の工程において示される、反応時間、反応温度などは、実際の条件に基づいて調整することができ;例えば、当該技術分野に共通の方法(例えば、TLCアッセイ)は、反応の終了を確認するのに使用され得る。各工程に使用される溶媒は、特に決して限定されず、当該技術分野に共通の反応剤と反応しない不活性溶媒が使用され得る。上記の反応スキームが本出願において開示されると、各工程における具体的な条件が、当該技術分野において既存の知識を与えられた当業者によって設定され得ることを理解されたい。
【0083】
本発明によって構成されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体の調製のための方法の中でも、最適な合成経路が以下に示される:

(1)メチルイサト酸無水物(3)の合成
5−メチルイサチンを、乾燥ジクロロメタン中で懸濁させ、およびメタ−クロロペルオキシ安息香酸を、0℃で何回かに分けて加え、次に、室温で1.5〜2.5時間撹拌し;TLCによって反応が完了したことが確認されたら、反応において生成された白色の固体をろ過して取り除き、および酢酸エチルで3回洗浄して、5−メチルイサト酸無水物を得る工程であって、ただし、5−メチルイサチンおよびメタ−クロロペルオキシ安息香酸のモル比が、(0.5〜1):1である、工程;
(2)2−メチルトリプタンスリン(4)の合成
メチルイサト酸無水物と、5−フルオロイサチンと、トリエチルアミンとの混合物を乾燥トルエン中で懸濁させ、次に、100〜120℃の温度で3.5〜4.5時間加熱し、および減圧下で溶媒を蒸留して取り除き;得られた黄色の固体をジクロロメタンに溶解させ、および酢酸エチルを加え、次に、得られた黄色の固体をろ過し、かつ酢酸エチルで3回洗浄して、2−メチルトリプタンスリンを得る工程であって、ただし、メチルイサト酸無水物、5−フルオロイサチンおよびトリエチルアミンのモル比が、(0.2〜0.5):(0.2〜0.5):1である、工程;
(3)2−ブロモメチル−トリプタンスリン(5)の合成
工程(2)で得られた2−メチルトリプタンスリンを、窒素ガスの保護下で、75〜85℃で乾燥ジクロロメタンに溶解させ、次に、NBSとAIBNとの混合物を何回かに分けて加える。反応溶液を、15〜17時間にわたって75℃に加熱し、およびTLCによって反応が完了したことを確認する。反応溶液が室温に冷めたら、塩溶液での洗浄および無水硫酸ナトリウム上での乾燥を行って、有機相を濃縮して、黄色の生成物を得る工程であって、ただし、2−メチルトリプタンスリン、NBSおよびAIBNのモル比が、1:1:(0.005〜0.02)である、工程;
(4)N−ベンジルトリプタンスリン(1)の合成
1.5〜2.5時間にわたって乾燥DMF中で、室温で2−ブロモメチル−トリプタンスリン、脂肪族アミンおよびトリエチルアミンを一緒に撹拌し、およびTLCによって反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、かつ10mlのジクロロメタンを用いた3回連続抽出を行い;次に、得られたジクロロメタンの全体積を水で3回洗浄し、および次に、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させる。シリカゲルを用いて、得られた濃縮された黄色の固体の分離を行って、黄色のアミノメチルトリプタンスリン誘導体を得る。ここで、2−ブロモメチル−トリプタンスリン、脂肪族アミンおよびトリエチルアミンのモル比が、1:(1〜2):(2〜5)である。
【0084】
上の式において、各基についての定義は、上に示されるとおりである。
【0085】
IDO阻害剤およびそれらの利用
本発明によって構成されるアミノメチルトリプタンスリン誘導体は、高度に特異的なIDO阻害活性を示すため、病理学的特徴としてIDOによって媒介されるトリプトファン代謝の異常を含む疾患(腫瘍など)を治療および/または予防するのに使用される薬剤の調製に使用され得る。
【0086】
トリプトファン代謝の異常に関連する前記疾患は、当該技術分野において公知であるかまたは公知でない、病理学的特徴としてIDOによって媒介されるトリプトファン代謝の異常を含む任意の疾患を含み、好ましくは、前記トリプトファン代謝異常に関連する疾患は、以下の組:腫瘍、うつ病、不安神経症、AIDS、自己免疫疾患、精神疾患、ライム病感染、連鎖球菌感染、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病など)、うつ病、癌(T細胞白血病および結腸癌を含む)、眼疾患(白内障および加齢に伴う黄変など)および自己免疫疾患から選択される。
【0087】
既存の技術と比較して、本発明は、以下の主な利点を提供する:
(1)本発明は、類似の構造を有する化合物と比較して、活性の意外な向上を示す、新規な構造を有するIDO阻害剤の種類を提供する。前記化合物は、IDO阻害活性をもたらすだけでなく、同時にさらに改質された医薬品中間体として機能することもでき、新規な癌治療薬の開発において潜在的な利用価値を有する。
【0088】
(2)本発明は、アミノメチルトリプタンスリン誘導体の合成のための方法も提供し、前記合成経路は、操作が簡単であり、穏やかな反応条件を用い、溶媒の使用を減少させ、汚染を減少させるなどの利点を提供し、大量生産に適している。
【0089】
以下の節において、本発明が、特定の実施形態例によってさらに説明される。これらの実施例が、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図されていないことを理解されたい。特定の条件を規定しない以下の実施形態例に含まれる実験方法では、従来の条件または製造業者によって推奨される条件が使用される。特に示されない限り、パーセンテージおよび部分量は、重量基準で計算される。特に規定されない限り、以下の実施形態例に示される試薬および出発材料は、市販の製品に相当する。具体的な合成経路が以下に示される:

各工程の反応条件:
工程a.m−CPBA(2当量)、CHCl、室温;
工程b.EtN、トルエン、還流、75%;
工程c.NBS、AIBN、CHCl、還流;
工程d.KCO、KI、DMF、アミン。
【実施例】
【0090】
実施形態例1 − 2−((ジメチルアミノ)メチル)−8−フルオロ−インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1a)の合成
具体的な工程は以下のとおりである:
工程(1):6−メチル−1H−ベンゾ[d][1,3]オキサジン−,4−ジオン(3a)の合成

化合物2a(500mg、3mmol)を、10mlの乾燥ジクロロメタン中で懸濁させ、その後、メタ−クロロペルオキシ安息香酸(1.3g、6mmol、75%)を、0℃で何回かに分けて加えた。TLCにより、反応が室温で2時間にわたる混合物の撹拌の後に完了したことが示され、その後、反応において生成された白色の固体をろ過して取り除き、10mlの酢酸エチルで3回洗浄して、化合物3a(350mg、65%)を得た。
【0091】
工程(2):8−フルオロ−2−メチル−インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(4a)の合成

化合物3a(1g、5.6mmol)と、5−フルオロイサチン(0.93g、5.6mmol)と、トリエチルアミン(1.5ml、11.2mmol)との混合物を、乾燥トルエン(10ml)中で懸濁させ、110℃で4時間加熱した。溶媒を減圧下で蒸留して取り除き、このように得られた黄色の固体を、2mlのジクロロメタンに溶解させ、その後、2mlの酢酸エチルを加え、黄色の固体をろ過し、2mlの酢酸エチルで3回洗浄して、黄色の固体化合物、すなわち、化合物4a(1.1g、75%)を得た。
【0092】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、DMSO)δ 8.50(dd,J=8.8、4.2Hz、1H)、8.14(s,1H)、7.86(d,J=8.2Hz、1H)、7.82〜7.76(m,1H)、7.76〜7.67(m,1H)、7.44〜7.37(m,1H)、2.53(s,3H)。
【0093】
工程(3):2−(ブロモメチル)8−フルオロ−インドール[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(5a)の合成

NBS(381mg、2.14mmol)とAIBN(29mg、0.18mmol)との混合物を、窒素ガスの保護下で、80℃の温度で化合物4a(500mg、1.78mmol)を含有するジクロロメタン溶液(3.6ml)に、3回に分けて加えた。反応溶液を、16時間にわたって80℃に加熱した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、反応溶液を室温に冷まし、塩溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させたところ、有機相が濃縮されて、黄色の生成物(5a)が得られた。
【0094】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.66(dd,J=8.8、4.0Hz、1H)、8.45(d,J=1.9Hz、1H)、8.04(d,J=8.3Hz、1H)、7.90(dd,J=8.3、2.1Hz、1H)、7.61(dd,J=6.5、2.6Hz、1H)、7.52(td,J=8.6、2.7Hz、1H)、4.65(s,2H)。
【0095】
工程(4):2−((ジメチルアミノ)メチル)−8−フルオロインドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1a)の合成

化合物5a(500mg、1.39mmol)、ジメチルアミン塩酸塩(227mg、2.78mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行った。得られた濃縮された黄色の固体を、シリカゲルカラムを用いて分離させたところ、黄色の化合物(1a)が得られた。
【0096】
特性評価データ:
HNMR(400MHz、CDCl)δ 8.63(dd,J=8.8、4.1Hz、1H)、8.33(d,J=1.5Hz、1H)、7.98(d,J=8.3Hz、1H)、7.87(dd,J=8.3、1.8Hz、1H)、7.58(dd,J=6.5、2.6Hz、1H)、7.48(td,J=8.7、2.7Hz、1H)、3.61(s,2H)、2.30(s,6H)。
【0097】
実施形態例2 − 4−((8−フルオロ−6,12−ジオキソ−6,12−ジヒドロキシ−インドロ[2,1−b]キノリン−2−イル)メチル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1b)の合成
工程(1)〜(3)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0098】
工程(4):4−((8−フルオロ−6,12−ジオキソ−6,12−ジヒドロキシ−インドロ[2,1−b]キノリン−2−イル)メチル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1b)の合成

化合物5a(500mg、1.39mmol)、N−Bocピペラジン(546mg、2.78mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行った。得られた濃縮された黄色の固体を、シリカゲルカラムを用いて分離させたところ、黄色の化合物(1b)が得られた。
【0099】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.66(dd,J=8.8、4.0Hz、1H)、8.39(d,J=1.5Hz、1H)、8.01(d,J=8.3Hz、1H)、7.90(dd,J=8.3、1.8Hz、1H)、7.60(dd,J=6.5、2.6Hz、1H)、7.51(td,J=8.6、2.7Hz、1H)、3.71(s,2H)、3.47(m,4H)、2.46(m,4H)、1.48(s,9H)。
【0100】
実施形態例3 − 8−フルオロ−2−(ピペラジン−1−イルメチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1c)の合成

工程(1)〜(3)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0101】
工程(4):8−フルオロ−2−(ピペラジン−1−イルメチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1c)の合成
化合物5a(500mg、1.39mmol)、N−Bocピペラジン(546mg、2.78mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行ったところ、有機相が濃縮されて、黄色の固体が得られた。黄色の固体を、3mlのジクロロメタンに溶解させ、さらに1mlのトリフルオロ酢酸を室温で加えた。反応溶液を室温で1時間撹拌し、TLC(CHCl/MeOH=10/1、Rf 0.2)により、反応が完了したことが確認されたら、溶媒を減圧下で除去し、10mlの保護NaHCO溶液を加え、酢酸エチル(10ml×3)を用いて抽出を行い、その後、有機相を塩溶液で洗浄し、乾燥を行ったところ、濃縮された固体が得られ、それを、シリカゲルカラムを用いて分離させたところ、黄色の固体化合物(1c)が得られた。
【0102】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.65(dd,J=8.8、4.0Hz、1H)、8.37(s,1H)、8.00(d,J=8.3Hz、1H)、7.89(dd,J=8.3、1.6Hz、1H)、7.59(dd,J=6.5、2.6Hz、1H)、7.50(td,J=8.7、2.7Hz、1H)、3.70(s,2H)、3.51〜3.44(m,4H)、2.46(s,4H)。
【0103】
実施形態例4 − 8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1d)の合成

工程(1)〜(3)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0104】
工程(4):8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1d)の合成
化合物5a(220mg、0.61mmol)、N−メチルピペラジン(122mg、1.22mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行った。得られた濃縮された黄色の固体を、シリカゲルカラムを用いて分離させたところ、黄色の化合物(1d)が得られた。
【0105】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.65(dd,J=8.8、4.0Hz、1H)、8.38(d,J=1.5Hz、1H)、7.99(d,J=8.3Hz、1H)、7.87(dd,J=8.3、1.8Hz、1H)、7.59(dd,J=6.5、2.6Hz、1H)、7.50(td,J=8.7、2.7Hz、1H)、3.50(s,2H)、2.59(s,8H)、2.38(s,3H)。
【0106】
実施形態例5 − 8−フルオロ−2−((モルホリノ−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1e)の合成
工程(1)〜(3)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0107】
工程(4):8−フルオロ−2−((モルホリノ−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1e)の合成

化合物5a(500mg、1.39mmol)、モルホリン(242mg、2.78mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLC(EtOAc、Rf 0.5)により、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行ったところ、濃縮された黄色の固体が得られ、それを、シリカゲルカラム(EtOAc)を用いて分離させたところ、黄色の化合物(1e)が得られた。
【0108】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.66(dd,J=8.8、4.1Hz、1H)、8.39(s,1H)、8.01(d,J=8.3Hz、1H)、7.90(dd,J=8.3、1.7Hz、1H)、7.60(dd,J=6.5、2.7Hz、1H)、7.51(td,J=8.6、2.7Hz、1H)、3.79〜3.73(m,4H)、3.70(s,2H)、2.52(s,4H)。
【0109】
実施形態例6 − 2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1f)の合成
工程(1)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0110】
工程(2):2−メチル−インド[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(4b)の合成

化合物3a(1.7g、9.6mmol)と、イサチン(1.4g、9.6mmol)と、トリエチルアミン(2.7ml、19.2mmol)との混合物を、乾燥トルエン(18ml)中で懸濁させ、110℃で4時間加熱した。反応溶液を室温に冷ましてから、得られた黄色の固体をろ過し、2mlの酢酸エチルで3回洗浄して、黄色の固体化合物(4b)(0.5g、20%)を得た。
【0111】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.65(d,J=8.1Hz、1H)、8.25(s,1H)、7.94(dd,J=7.8、5.0Hz、2H)、7.85〜7.75(m,1H)、7.71〜7.64(m,1H)、7.44(t,J=7.5Hz、1H)、2.58(s,3H)。
【0112】
工程(3):2−ブロモメチル−インド[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(5b)の合成

NBS(381mg、2.14mmol)とAIBN(29mg、0.18mmol)との混合物を、窒素ガスの保護下で、80℃の温度で化合物4b(262mg、1.0mmol)を含有するジクロロメタン溶液(5ml)に、3回に分けて加えた。反応溶液を室温に冷ましてから、塩溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行ったところ、有機相が濃縮されて、黄色の生成物(5b)(245mg、91%)が得られた。
【0113】
工程(4):2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(1f)の合成

化合物5b(220mg、0.61mmol)、N−メチルピペラジン(116mg、1.616mmol)、ヨウ化カリウム(10mg)およびトリエチルアミン(0.5ml)を、2時間にわたって室温でDMFの5mlの溶液中で撹拌した。TLCにより、反応が完了したことが確認されたら、50mlの水を加え、10mlの酢酸エチルを用いて3回連続抽出を行い、その後、有機相を水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥を行った。得られた濃縮された黄色の固体を、シリカゲルカラムを用いて分離させたところ、黄色の化合物(1f)(120mg、55%)が得られた。
【0114】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl3)δ 8.66(d,J=8.1Hz、1H)、8.39(s,1H)、8.01(d,J=8.3Hz、1H)、7.94(d,J=7.5Hz、1H)、7.89(dd,J=8.2、1.7Hz、1H)、7.82(t,J=7.8Hz、1H)、7.45(t,J=7.5Hz、1H)、3.71(s,2H)、2.71〜2.41(m,8H)、2.33(s,3H)。
【0115】
実施形態例7 − IDO阻害活性の検出
大腸菌(Escherichia coli)で発現される、ヒトIDO遺伝子を含有するプラスミドの構築の際、抽出および精製を、Littlejohnらによって報告される方法にしたがって行った(Takikawa O,Kuroiwa T,Yamazaki F,et al.J.Biol.Chem.1988,263,2041−2048)。各化合物についてのIDO阻害活性を、文献に記載される方法を用いて検出した。50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、40mMのビタミンC、400μg/mlのカタラーゼ、20μMのメチレンブルーおよびIDO酵素を、96ウェルプレートにおいて一緒に混合した。次に、基質L−トリプトファンおよび試験される試料を、上記の混合物に加えた。反応を、37℃で60分間行い、その後、30%(w/v)のトリクロロ酢酸を加えることによって、反応を停止させた。96ウェルプレートを、15分間にわたって65℃に加熱して、ホルミルキヌレニンからキヌレニンへの転化を完了させ、5分間にわたって6000gで遠心分離を行った。100μlの上清を、各ウェルから除去し、新たな96ウェルプレートに移し、その後、2%(w/v)のp−(ジメチルアミノ)ベンズアルデヒドの酢酸溶液を加え、キヌレニンとの得られた反応の結果として生じた黄色が、マイクロプレートリーダーにおいて490nmで観察可能であり;実験結果が表1に示される。
【0116】
実施形態例8 − 阻害剤が可逆性であるか否かの判定
阻害剤の一定の濃度を所与として、一連の異なる酵素濃度を試験し、得られた反応速度を測定した。酵素濃度に対する反応速度のグラフ(ν−[E])をプロットし、得られた曲線の特徴に基づいて、阻害剤が可逆性であるか否かを判定することができた。
【0117】
反応条件:50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、40mMのビタミンC、400μg/mlのカタラーゼ、20μMのメチレンブルーおよび300mMの基質L−トリプトファンまたは同時に100mMの阻害剤を、500μlの反応系に加え、その後、混合物を、5分間にわたって37℃に維持し、その後、様々な体積のIDO酵素を、上記の混合物に加え、得られた反応を、37℃で30分間進行させ、200μLの30%(w/v)のトリクロロ酢酸を加えて、反応を停止させ;反応系を、15分間にわたって65℃に加熱して、ホルミルキヌレニンからキヌレニンへの転化を完了させ、その後、12,000rpmで10分間にわたって遠心分離を行い、上清を除去し、等体積の2%(w/v)のp−ジメチルアミノベンズアルデヒド酢酸溶液と混合し、490nmの波長でプレートリーダーを用いて測定を行った。ν−[E]をプロットし、実験結果が表1に示される。
【0118】
実施形態例9 − 阻害剤タイプの決定およびKi値の測定
50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、40mMのビタミンC、400μg/mlのカタラーゼ、20μMのメチレンブルーおよび100、250または300mMの基質L−トリプトファンを、500μlの反応系に加え、様々な濃度の化合物を、所与の単一の基質濃度で各反応系に加え、その後、混合物を、5分間にわたって37℃に維持し、その後、10μlのIDO(約20nM)を、上記の混合物に加え、得られた反応を、37℃で30分間進行させ、200μLの30%(w/v)のトリクロロ酢酸を加えて、反応を停止させ;反応系を、15分間にわたって水浴中で65℃に加熱して、ホルミルキヌレニンからキヌレニンへの転化を完了させ、その後、12,000rpmで10分間にわたって遠心分離を行い、上清を除去し、等体積の2%(w/v)のp−ジメチルアミノベンズアルデヒド酢酸溶液と混合し、490nmの波長でプレートリーダーを用いて測定を行った。ディクソンプロット(1/v−[I])を用いて、化合物によって構成される阻害剤のタイプを判定し、S/v−[I]のプロットを作成して、阻害剤のKi値を取得し;実験結果が表1に示される。
【0119】
実施形態例10 − 半数影響阻害濃度IC50の測定
50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、40mMのビタミンC、400μg/mlのカタラーゼ、20μMのメチレンブルー、150mMの基質L−トリプトファンおよび阻害剤を、一緒に混合した。100、200、400、600、800、1000または1200μMの阻害剤を含有する混合物を、5分間にわたって37℃に加熱し、次に、IDO酵素を、上記の混合物に加えた。反応を、30分間にわたって37℃で進行させ、その後、200μLの30%(w/v)のトリクロロ酢酸を加えて、反応を停止させ;反応系を、15分間にわたって65℃に加熱して、ホルミルキヌレニンからキヌレニンへの転化を完了させ、その後、12,000rpmで10分間にわたって遠心分離を行い、200μLの上清を除去し、等体積の2%(w/v)のp−ジメチルアミノベンズアルデヒド酢酸溶液と混合し、キヌレニンとの得られた反応の結果として生じた黄色が、マイクロプレートリーダーにおいて490nmで観察可能であり;このように得られた結果を、IC50計算ソフトウェアに送って、阻害剤のIC50値を取得し;実験結果が表1に示される。
【0120】

実施形態例11 − 半数影響阻害濃度IC50(細胞)の測定
リポソームLipofectamin 2000を用いて、HEK 293細胞に、pcDNA3.1−hIDOプラスミドをトランスフェクトした。細胞レベルで阻害活性を測定する場合、HEK293細胞培養培地は、50U/mLのペニシリン、50U/mLのストレプトマイシンおよび10%のFBSを含有する高グルコースDMEMに相当し、培養を、5%のCO下で、37℃で行った。プラスミドによる細胞のトランスフェクションの24時間後、試験薬を加え、インキュベーションを行い、その後、上清を、別の96ウェルプレートに移し、10μLの30%(w/v)のトリクロロ酢酸を加え、混合物を、15分間にわたって65℃に加熱して、ホルミルキヌレニンからキヌレニンへの転化を完了させ、その後、12,000rpmで10分間にわたって遠心分離を行い、等体積の2‰(w/v)のp−ジメチルアミノベンズアルデヒド酢酸溶液を混ぜ入れ、プレートリーダーを用いて490nmで吸光度を測定し;実験結果が表1に示される。
【0121】
実施形態例1〜6において得られた化合物のIDO阻害活性の測定を、上記の実施形態例7〜11に示される方法を用いて行い、インビボおよびインビトロ実験の両方で現在一般的に使用されるIDO阻害剤1−メチル−トリプトファン(1−MT、市販されている)を、対照として使用し;結果が表1に示される。
【0122】
実施例12 − T細胞増殖アッセイ
12.1.脾臓リンパ球の単離(リンパ球分離培地の説明書にしたがって行われる):
1.2匹のマウスを、頸椎脱臼によって殺処分し、脾臓を滅菌された台の上で取り出し、後の使用のために、RP1640培養培地を含有する6cmのプレートに置いた。
2.100μmのメッシュを、50mLの遠心分離管に入れ、各脾臓を、はさみを用いてより小さい片に切断し、ふるいの上で粉砕し、少量のRP1640を、保存のために加えた。
3.次に、得られたスラリーの体積の2倍に相当するリンパ球分離培地を加えた。
4.20分間にわたって800gで遠心分離を行い、その後、3つの分かれた層が見え、中間層が、わずかに黄色がかった色合いを示していた。
5.中間層中の細胞を取り出し、RP1640培養培地を加えて、逆洗を行った。次に、細胞を、室温で10分間にわたって250gで遠心分離し、細胞を収集した。
6.培養培地を吸い出し、細胞を、RP1640培地中で再懸濁させ、その後、細胞計数を行った。
【0123】
12.2.LLC(ルイス肺癌)細胞治療:
1.培地(高グルコースDMEM、10%のFBS)を吸い出し、PBSを用いて洗浄を1〜2回行った;
2.0.25%のトリプシンを加えて、消化を開始させた;
3.トリプシンを吸い出し、培養培地を加え、その後、細胞をピペットで取り、1.5mLの遠心分離管に移した;
4.遠心分離の後、上清の吸引を行い、細胞を1mLのDMEM培養培地中で再懸濁させた;
5.マイトマイシンC(最終濃度:25μg/mL)を加え、混合物を、均一になるまでピペットで吸引および排出し、混合物を30分間にわたって37℃の浴に入れた;
6.RP1640で3回洗浄を行い、細胞を計数し、試料を取っておいた。
【0124】
12.3.実験手順
1.処理されたLLC細胞(2×10個の細胞/ウェル;刺激細胞)および脾臓リンパ球(10個の細胞/ウェル;反応細胞)を、96ウェルプレートに加え、その後、RP1640(10%のFBSを加えて、体積を200μLにした;
2.グループ分けを行い、50μMのIDO阻害剤を投与群に加え、その後、試料を、37℃、95%の相対湿度(RH)、5%のCOの培養器に入れ、72時間にわたって培養した;
3.WST−1試薬キットを用いて、T細胞増殖を測定し、プレートリーダーを用いて、450nmの波長における吸光度値を測定した;
4.Tリンパ球増殖率の計算:
Tリンパ球増殖率(%)=[投与群ウェル(Tリンパ球+LLC細胞+IDO阻害剤)OD値
− 対照ウェル(Tリンパ球+LLC細胞)OD値]/対照ウェルl(Tリンパ球+LLC細胞)OD値×100%。
【0125】
12.4.実験結果
【0126】
実施形態例13 − 8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(実施形態例4)の抗腫瘍効果
1.LLCルイス腫瘍モデルの形成:Shanghai Slyke Experimental Animal Centerから購入した20±1gの重量の健常な雌C57BL/6マウスを、SPFグレードの実験室で飼育した。滅菌生理食塩水を用いて、ルイス肺癌細胞を1×10個/mLの濃度で懸濁させた。細胞を、滅菌操作条件下で、マウスの脇の下の領域に皮下接種し、0.2mLが各動物に接種された。
【0127】
2.実験のグループ分けおよび予防的投与:マウスを、10匹の動物の5つの群に無作為に分けた。対照群に、強制経口投与によって等体積の0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを与え;1−メチル−トリプトファン(1−MT)を、強制経口投与によって高用量群では150mg/kgおよび低用量群では75mg/kgの濃度で投与し;8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンを、強制経口投与によって高用量群では150mg/kgおよび低用量群では75mg/kgの濃度で投与した。腫瘍接種を、7日間の連続投与の後に行い、その後、投与を21日間にわたって継続し、腫瘍増殖を観察した。長軸(a)および短軸(b)に沿った腫瘍長さを、腫瘍接種の日から開始して、その後1日おきに測定した。腫瘍容積=ab/2である。投与を中断した翌日に、マウスを頸椎脱臼によって殺処分し、腫瘍を取り出し、秤量し、液体窒素中で保存した。
【0128】
3.予防的投与についての治療結果:1週間続く予防的投与、続いて接種後の連続投与の後、8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンを投与されたマウスは、著しく阻害されたインビボでのルイス肺癌腫瘍増殖を示し;投与を開始した20日後に、高用量群では、顕著な腫瘍形成が観察されなかった一方、対照群では、投与の開始のわずか11日後に腫瘍形成が認められ;1−MT群のマウスは、投与の開始の13日後に腫瘍形成を示した。腫瘍容積に基づいて、8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンおよび1−MT高用量群について観察された腫瘍抑制率はそれぞれ、62.15%および32.35%であった一方、低用量群では、腫瘍抑制率は、46.62%および27.00%であった。腫瘍重量に基づいて、8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンおよび1−MT高用量群について観察された腫瘍抑制率はそれぞれ、57.8%および28.2%であった。8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンを投与された動物は、正常体重、つやのある毛およびより柔軟な反応を示した。
【0129】
4.実験のグループ分けおよび接種後投与:腫瘍接種を行った48時間後に、マウスを、10匹の動物の4つの群に無作為に分けた。腫瘍直径が5mmに達したら、初期用量を投与した。対照群の動物に、強制経口投与によって等体積の0.5%のCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を投与し;1−MT群の動物に、強制経口投与によって200mg/kgの用量を投与し;8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン群の動物に、強制経口投与によって200mg/kgの用量を投与し;パクリタキセル群の動物に、1週間に1回の静脈注射によって100mg/kgの用量を投与し;8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キノリンオキサゾリン−6,12−ジオン+パクリタキセル群の動物に、2週間にわたって連続して200mg/kgの8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンおよび100mg/kgのパクリタキセル(尾静脈注射)を投与した。長軸(a)および短軸(b)に沿った腫瘍長さを、投与の日から開始して、その後1日おきに測定した。腫瘍容積=ab/2である。投与を中断した翌日に、マウスを頸椎脱臼によって殺処分し、腫瘍を取り出し、秤量し、液体窒素中で保存した。
【0130】
5.接種後投与の治療結果:動物に、強制経口投与による200mg/kgの8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンまたは1−MTの2週間の連続投与を行った後、インビボでのルイス肺癌腫瘍増殖は、対照群と比較して顕著な阻害を示し、腫瘍増殖の阻害は、1−MT群と比べて8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン群においてより顕著であった。腫瘍容積に基づいて、8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン、1−MT、パクリタキセルおよび8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン+パクリタキセル群について観察された腫瘍抑制率はそれぞれ、23.38%、15.68%、51.45%および72.48%であった。臨床診療に一般的に使用される化学療法薬として、パクリタキセルは、一般に、腫瘍増殖の阻害をもたらしたが、この薬剤は、より強い毒性の副作用も生じ;実験の過程で、マウスに体重減少、体毛の減少が観察され、全般的により少ない動きを示していた。一方、8−フルオロ−2−((4−メチル−ピペラジン−1−イル)メチル)インドロ[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンのみの投与では、腫瘍が完全に消失しなかったが、腫瘍のより顕著な阻害が観察され、このように処理されたマウスは、正常体重、つやのある毛およびより柔軟な反応を示した。
【0131】
比較例 − 2−メチル−インド[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオンの調製および活性試験
工程(1)は、実施形態例1に規定されるとおりである。
【0132】
工程(2):2−メチル−インド[2,1−b]キナゾリン−6,12−ジオン(4b)の合成

化合物3a(1.7g、9.6mmol)と、イサチン(1.4g、9.6mmol)と、トリエチルアミン(2.7ml、19.2mmol)との混合物を、乾燥トルエン(18ml)中で懸濁させ、110℃で4時間加熱した。反応溶液を室温に冷ましてから、得られた黄色の固体をろ過し、2mlの酢酸エチルで3回洗浄して、黄色の固体化合物(4b)(0.5g、20%)を得た。
【0133】
特性評価データ:
H NMR(400MHz、CDCl)δ 8.65(d,J=8.1Hz、1H)、8.25(s,1H)、7.94(dd,J=7.8、5.0Hz、2H)、7.85〜7.75(m,1H)、7.71〜7.64(m,1H)、7.44(t,J=7.5Hz、1H)、2.58(s,3H)。
【0134】
比較例において得られた化合物の活性を測定するのに、実施形態例9〜11に記載の測定方法を用いて、997.25μMのIDO阻害活性インビトロIC50を得た一方、KiおよびインビボIC50は測定しなかった。
【0135】
表1中の実験データが実証しているように、本出願に関する化合物は、現在利用可能な従来のIDO阻害剤、ならびに類似の構造を有する化合物と比べて極めて良好なIDO阻害活性を示す。より詳細には、既存の従来のIDO阻害剤1−MTと比較して、本出願によって構成される化合物について得られるインビトロおよび細胞内IC50値は、1〜3桁低下し、これは、本出願によって構成される化合物が、優れたIDO阻害活性をもたらすことを示している。
【0136】
阻害活性に関して、非常に類似した構造を有する他の化合物(比較例に示される化合物など)と比べて本出願によって構成される化合物において非常に顕著な改良があることが注目に値する。阻害活性は、構造中の活性基を同様に特徴とする特定のIDO阻害剤と比較してもなお大幅に向上されている。当該技術分野において典型的に観察される化合物の構造と活性との間の関連性を考慮すると、本出願によって構成される化合物と類似の構造との間で観察される相違は、非常に例外的な現象である。これは、本出願によって構成される化合物が、極めて独特のタイプの構造を構成し、その生物学的活性が意外であることを示す。
【0137】
本発明において言及される全ての刊行物は、各個々の刊行物が参照として引用されているかのように、参照により援用される。当業者は、本発明において提供される説明を読めば、本発明に対する様々な変形形態または変更形態をなし得るはずであり、これらの均等な形態も、本出願に含まれる特許請求の範囲内に含まれることが理解されるべきである。