(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629231
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】針シールドトリガを有する自動注射装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20200106BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20200106BHJP
A61M 5/50 20060101ALI20200106BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
A61M5/20 572
A61M5/32 510K
A61M5/50
A61M5/315 500
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-560770(P2016-560770)
(86)(22)【出願日】2015年4月7日
(65)【公表番号】特表2017-512596(P2017-512596A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】EP2015057526
(87)【国際公開番号】WO2015150578
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年4月5日
(31)【優先権主張番号】14163586.2
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン, セーアン ケレロプ
(72)【発明者】
【氏名】スティーファンスン, マス シェンストラム
(72)【発明者】
【氏名】メランデル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ケルスン, バスチャン ゴースヴィーイ
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−500150(JP,A)
【文献】
特表2013−534164(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/017415(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178 − 5/34
A61M 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持されたカートリッジ(600)から一回分の用量の薬剤を吐出する自動注射装置(100)であって、
ハウジングを形成するベース(200、220)と、
前記ベース(200、220)に対して固定して取り付けられる、針前部(510)を備える針(500)と、
前記ベース(200、220)に対して配置される薬剤カートリッジ(600)であって、
a)遠位端および近位端を有し、中心の長手方向軸を画定し、遠位に配置されて前記針(500)に接続される出口(610)を有する細長い本体(605)と、
b)前記本体(605)に収容され、前記出口(610)を介して用量の薬剤を吐出するために、軸に沿って遠位側に駆動されるピストン(630)とを
備える薬剤カートリッジ(600)と、
前記ピストン(630)と協働するプランジャ(310、320、400)と、
前記ピストン(630)を遠位側に駆動するために、前記プランジャ(310、320、400)に軸方向力を加えることにより前記プランジャ(310、320、400)に作用するように配置された螺旋状の圧縮ばねとして設けられた作動ばね(330)と、
伸長位置と収縮位置の間で、前記ベース(200、220)に対して軸方向に移動可能な針シールド(350、380)とを備え、
自動注射装置は、前記プランジャ(310、320、400)を、前記作動ばね(330)にエネルギーが蓄積された初期の軸方向位置に、解放可能に維持するように構成されたロック(320、328、380、388)を画定し、前記ロック(320、328、380、388)が、前記針シールド(350、380)により動作され、前記収縮位置への前記針前部(510)に対する前記針シールド(350、380)の動きによる前記針シールド(350、380)の手動の操作が、前記針前部を注射部位に手動で貫通させ、その後に前記ロック(320、328、380、388)を解除させ、
前記プランジャ(310、320、400)によりプランジャのねじ山(325)が画定され、前記ベース(200、220)により、前記ベース(200、220)と固定的に関連付けられて前記プランジャのねじ山(325)と協働するベースのねじ山(205)が画定され、
作動前において、a)前記プランジャのねじ山(325)と前記ベースのねじ山(205)とが係合し、b)前記ロック(320、328、380、388)により、前記プランジャ(310、320、400)と前記ベース(200、220)の間の相対的な回転が阻止されて、前記プランジャ(310、320、400)は前記初期の軸方向位置に維持され、
前記針シールド(350、380)が前記収縮位置に向けて移動すると、前記ロック(320、328、380、388)が解除されて、前記作動ばね(330)により作用する力により、前記プランジャ(310、320、400)と前記ベース(200、220)の間の相対的な回転が可能になって、前記プランジャ(310、320、400)が前記初期の軸方向位置から解放されて、用量の薬剤を吐出させ、
前記プランジャのねじ山(325)は、前記プランジャ(310、320、400)の初期の第1の軸方向変位中に前記ベースのねじ山と係合することにより前記ハウジングと係合し、また前記プランジャのねじ山(325)は、第2の軸方向変位において、前記ベースのねじ山(205)との係合を解放することにより前記ハウジングとの係合から解放されて、前記プランジャ(310、320、400)が軸方向変位をその後に継続できるようにする、
自動注射装置(100)。
【請求項2】
針シールドばね(340)は、前記針シールド(350、380)を、前記伸長位置に向けて付勢する、請求項1に記載の自動注射装置。
【請求項3】
前記針シールドばね(340)は、前記作動ばね(330)とは別個の要素である、請求項2に記載の自動注射装置。
【請求項4】
前記ロック(320、328、380、388)は、前記針シールド(350、380)が、前記収縮位置に向けて前記伸長位置から移動すると、軸方向に移動可能な第1のロック要素(380)を含み、前記第1のロック要素(380)および前記プランジャ(310、320、400)は、作動の前に、前記プランジャ(310、320、400)と前記ベース(200、220)の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状(388、328)を画定し、前記協働するロック幾何形状(388、328)は、前記針シールド(350、380)が前記収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、前記プランジャ(310、320、400)と前記ベース(200、220)の間で回転を可能にするように適合される、請求項1から3のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項5】
前記第1のロック要素(380)は、前記ベース(200、220)に対する回転が阻止され、また前記第1のロック要素(380)および前記プランジャ(310、320、400)が、作動の前に、前記プランジャ(310、320、400)と前記第1のロック要素(380)の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状を画定し、前記協働するロック幾何形状(388、328)は、前記針シールド(350、380)が前記収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、前記プランジャ(310、320、400)と前記第1のロック要素(380)の間で回転を可能にするように適合される、請求項4に記載の自動注射装置。
【請求項6】
保持されたカートリッジ(600)から一回分の用量の薬剤を吐出する自動注射装置(100)であって、
ハウジングを形成するベース(1200、220)と、
前記ベース(1200、220)に対して固定して取り付けられる、針前部(510)を備える針(500)と、
前記ベース(1200、220)に対して配置される薬剤カートリッジ(600)であって、
a)遠位端および近位端を有し、中心の長手方向軸を画定し、遠位に配置されて前記針(500)に接続される出口(610)を有する細長い本体(605)と、
b)前記本体(605)に収容され、前記出口(610)を介して用量の薬剤を吐出するために、軸に沿って遠位側に駆動されるピストン(630)とを
備える薬剤カートリッジ(600)と、
前記ピストン(630)と協働するプランジャ(1320)と、
前記ピストン(630)を遠位側に駆動するために、前記プランジャ(1320)に作用するように配置された作動ばね(330)と、
伸長位置と収縮位置の間で、前記ベース(1200、220)に対して軸方向に移動可能な針シールド(350、1380)とを備え、
自動注射装置は、前記プランジャ(1320)を、前記作動ばね(330)にエネルギーが蓄積された初期の軸方向位置に、解放可能に維持するように構成されたロック(1380、1388、1204、1208)を画定し、前記ロック(1380、1388、1204、1208)が、前記針シールド(350、1380)により動作され、前記針前部(510)に対する前記針シールド(350、1380)の手動の操作が、前記針前部を注射部位に手動で貫通させ、その後に前記ロック(1380、1388、1204、1208)を解除させ、
前記プランジャ(1320)によりプランジャのねじ山(1325)が画定され、前記ベース(1200、220)により前記プランジャのねじ山(1325)と協働するベースのねじ山(1205)が画定され、
作動前において、a)前記プランジャのねじ山(1325)と前記ベースのねじ山(1205)とが係合し、b)前記ロック(1380、1388、1204、1208)により、前記プランジャ(1320)と前記ベース(1200、220)の間の相対的な回転が阻止されて、前記プランジャ(1320)は前記初期の軸方向位置に維持され、
前記針シールド(350、1380)が前記収縮位置に向けて移動すると、前記ロック(1380、1388、1204、1208)が解除されて、前記プランジャ(1320)と前記ベース(1200、220)の間の相対的な回転が可能になって、前記プランジャ(1320)が前記初期の軸方向位置から解放されて、用量の薬剤を吐出させ、
前記ベースのねじ山(1205)は、前記ベース(1200、220)に対して軸方向に固定されるが、回転可能に取り付けられた回転可能な構成要素(1204)により画定され、前記プランジャのねじ山(1325)は、前記ベース(1200、220)に対する回転が阻止され、前記ロックは、前記針シールド(350、1380)が、前記伸長位置から前記収縮位置に向けて移動すると、軸方向に移動可能である第1のロック要素(1380)を含み、前記第1のロック要素(1380)および前記回転可能な構成要素(1204)は、作動の前に、前記回転可能な構成要素と前記ベース(1200、220)の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状(1388、1208)を画定し、前記協働するロック幾何形状(1388、1208)は、前記針シールド(350、1380)が前記収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、前記回転可能な構成要素(1204)と前記ベース(1200、220)の間で回転を可能にするように適合される、自動注射装置。
【請求項7】
前記第1のロック要素(1380)は、前記ベース(1200、220)に対する回転が阻止され、また前記第1のロック要素(1380)および前記回転可能な構成要素(1204)は、作動の前に、前記回転可能な構成要素(1204)と前記第1のロック要素(1380)の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状(1388、1208)を画定し、前記協働するロック幾何形状(1388、1208)は、前記針シールド(350、1380)が前記収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、前記回転可能な構成要素(1204)と前記第1のロック要素(1380)の間で回転を可能にするように適合される、請求項6に記載の自動注射装置。
【請求項8】
前記プランジャのねじ山(1325)は、前記プランジャ(1320)に対して回転方向に固定され、また前記プランジャは、前記ベース(1200、220)に対して回転方向に固定される、請求項6または7に記載の自動注射装置。
【請求項9】
前記プランジャのねじ山(1325)は、前記プランジャ(1320)の初期の第1の軸方向変位中に、前記ベースのねじ山と係合し、また前記プランジャのねじ山(1325)は、第2の軸方向変位において、前記ベースのねじ山(1205)との係合から解放されて、前記プランジャ(1320)が、軸方向変位をその後に継続できるようにする、請求項6から8のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項10】
前記プランジャのねじ山(325、1325)の外径は、前記薬剤カートリッジ(600)の本体(605)の円筒形部分の内径よりも大きい、請求項1から9のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項11】
前記プランジャのねじ山(325、1325)は、前記プランジャ(310、320、400、1320)の近位端に収容される、請求項1から10のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項12】
前記作動ばね(330)は、前記プランジャ(310、320、400、1320)の長手方向の穴の内部に配置された螺旋状の圧縮ばねである、請求項1から11のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項13】
前記自動注射装置(100)は、前記ベース(200、220、1200)内に薬剤カートリッジ(600)を交換不能に収容し、また前記薬剤カートリッジは、工具を使用せずに、前記自動注射装置から取り外すことができない、請求項1から12のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項14】
前記プランジャ(310、320、400、1320)を、前記初期の軸方向位置から解放するために、前記プランジャと前記ベース(200、220、1200)の間で回転させるように作用する力は、少なくとも部分的に、前記作動ばね(330)により加えられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の自動注射装置。
【請求項15】
前記初期の軸方向位置から前記プランジャと前記ベースを解放するために前記プランジャと前記ベースとの間で回転させるように作用する力は、すべて前記作動ばねにより加えられる、請求項14に記載の自動注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を注射する注射装置に関する。特に、保持カートリッジから薬剤を注射する自動注射装置、およびこの種の注射装置の性能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
病気により、患者は、週1回、毎日1回、または毎日複数回など、規則的に薬剤を注射する必要がある。針に対する患者の不安を解消するために、注射装置の操作を極く簡単にした全自動型の注射装置が開発されてきた。この種の注射装置は、通常、ユーザが注射装置を注射部位へと位置決めして注射装置を作動するようになっている。作動により、注射装置は針を皮膚の中に挿入させ、薬剤の用量を排出させた後、シールド位置に針を移動させる。
【0003】
一般に、この種の注射装置の場合、主な関心は、出口端部に針カニューレが固定して取り付けられたガラス製カートリッジを備える装置に向けられてきている。針カニューレは、当初は、キャップ部材により滅菌状態で覆われている。キャップ部材は、注射装置の保管中は針カニューレに対するストッパとして働くが、使用の際には除去する必要がある。この種の注射装置は、通常、使用前や使用後に針をシールドする針シールド部分をさらに含む。この種の注射装置は、米国特許第7449012号、米国特許第7717877号、およびWO2008/116688に記載されている。
【0004】
製造者によっては、貫通可能な隔壁を有するカートリッジが好まれる。この隔壁は、保管中は、カートリッジ出口を封止する封止材となるが、使用時には、針カニューレにより突き通される。この種のカートリッジを用いる従来装置は、米国特許第2752918号、米国特許第5658259号、米国特許第6743203号、米国特許第6210369号、およびWO94/07553に開示されている。そのタイプの装置は、針アセンブリとカートリッジとを分離した格納状態で保管し、装置を作動すると、連結されて、カートリッジと針アセンブリとが流体連通する。また、針をユーザの皮膚へ自動的に穿刺して、薬剤を自動投与する機能が、通常、組み込まれている。
【0005】
上記の装置は高レベルの自動化を提供することを目的としたものであるが、真皮に針を自動挿入する注射装置もまた、挿入を制御することがユーザにとって楽ではなく、ユーザを不安にさせるおそれがある。
【0006】
薬剤を自動投与する注射装置である自動注射装置は、通常、注射のための駆動源として、駆動ばねを使用する。使用する前に、駆動ばねは、事前に張力が加えられた状態で保持され、装置を作動すると、その位置から駆動ばねが解放される。作動後、駆動ばねは、張力からのエネルギーを使用して、カートリッジのピストンを前方に駆動する。
【0007】
針シールドの動作でトリガされる自動注射装置に関する1つの問題は、解放機構が、一般に、以下のような1以上の構成要素に依存していることである。その構成要素は、過度の力がかかる要素であって、カートリッジの薬剤を吐出するようにプランジャが解放される状態に駆動ばねを維持する要素である。トリガの動作原理は、駆動ばねからエネルギーが解放されるように、変形することでロックを解除する1以上の構成要素に依存するのが通常である。駆動ばねから過度の力が生じることから、この原理は、針シールドの動きの性能が低下する結果になりやすい。
【0008】
このような従来技術の装置に鑑みて、本発明の目的は、針シールドの動きによる針シールドトリガの性能を改良し、動作中における制御を改善した自動注射装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、優れた性能を有する装置を実現し、同時に、低減されたコストで製造を可能にする手段を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は、保持されたカートリッジから一回分の用量の薬剤を吐出する自動注射装置に関し、自動注射装置は、
ベースと、
ベースに対して配置された薬剤カートリッジであって、
a)遠位端および近位端を有し、中心の長手方向軸を画定する細長い本体であって、遠位に配置されて、針に接続される出口を有する細長い本体、および
b)本体に収容されるピストンであり、軸に沿って遠位側に駆動され、出口を介して用量の薬剤を吐出するピストンを含む、薬剤カートリッジと、
ピストンと協動するプランジャと、
プランジャに作用してピストンを遠位側に駆動するように配置された作動ばねと、
伸長位置と収縮位置の間で、ベースに対して軸方向に移動可能な針シールドと
を備え、
自動注射装置は、作動ばねに張力が加えられている初期の軸方向位置にプランジャを解放可能に維持する、針シールドにより動作されるロックを画定し、
プランジャはプランジャのねじ山を画定し、またベースは、プランジャのねじ山と協動するベースのねじ山を画定し、
作動する前に、a)プランジャのねじ山はベースのねじ山と係合し、b)ロックにより、プランジャとベースの間の相対的な回転が阻止されて、プランジャは初期の軸方向位置に維持され、
針シールドが収縮位置に向けて移動されると、ロックが解除されて、プランジャとベースの間の相対的な回転が可能になり、プランジャを初期の軸方向位置から解放させ、かつ薬剤の用量を吐出させる。
【0011】
第1の態様による自動注射装置では、装置は、針シールドでトリガされる吐出アセンブリを含み、ベースに対する針シールドの移動により、予め応力がかけられた作動ばねが作動されて、プランジャの軸方向移動を解放する。作動ばねに蓄積されたエネルギーは、針シールドが、伸長位置から収縮位置へと軸方向に移動したとき変化しないので、この移動を実施するために針シールドに加えられる力は、作動ばねにより加えられた力により打ち消されることはない。
【0012】
いくつかの実施形態では、ベースは装置のハウジングを形成する。いくつかの実施形態では、自動注射装置は、ベースに対して固定して取り付けられる針を収容する。針は、針前部を備え、また針後部を備えることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、針前部は、針シールドに対して手動で操作可能に構成され、したがって、針シールドが、注射部位に対して保持されたとき、逆も同様であるが、針シールドに対する針前部の手動の操作により、針前部を注射部位に手動で貫通させ、その後にロックを解除させる。ロックが解除されると、自動注射装置はトリガされた状態になる。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、装置の一部に対して手動で加えられる押す力が、針前部を注射部位に手動で貫通させる針に作用する手動の力へと伝達されるように装置を構成することにより、ユーザは、注射針の挿入の改良された制御を得る。同時に、この構成を使用することにより、針は、投与中にユーザから隠される。針挿入手技の改良された制御を提供することにより、ユーザに対する潜在的な不安が軽減され得る。作動の第1の部分は、針をユーザの皮膚に挿入するために、針を針シールドに対して前方に移動させる。動きの第2の部分は、吐出アセンブリを作動させる。こうすることは、装置を作動させる前に、ユーザが針を手動で挿入できるようにし、またユーザが操作を中止することを望む場合、投与を停止させることができる。
【0015】
針は、針前部に対して、針後部に対して、または両方に対して滅菌障壁を組み込むことができる。いくつかの実施形態では、滅菌障壁のそれぞれは、針前部および針後部のそれぞれの少なくとも一部を収容するための閉じたキャビティとして構成された可撓性のあるシースとして形成することができる。針は、針ハブから遠位方向および近位方向にそれぞれ突き出した針前部および針後部を有する針カニューレを含む針アセンブリの一部を形成することができる。針アセンブリは、針前部および針後部に対して、それぞれ滅菌シースを形成する前カバーおよび後カバーを含むことができる。前カバーおよび後カバーのそれぞれは、カバーが針ハブの方へと強制されたとき、針の尖った先端により貫通可能なゴム製シースとして形成することができる。
【0016】
注射装置は、駆動ラムに結合された、蓄えられたエネルギー源の形態の、かつロックが解除されると駆動ラムを駆動するように構成された作動器を備えることができる。エネルギー源は、作動ばね、予め歪ませたばね、圧縮ガスなど、蓄えられたエネルギー源として提供することができる。他の形態では、エネルギー源は、注射機構を作動させる前に、装置の初期動作中にチャージされる(charged)ように構成される。
【0017】
特定の形態では、作動器は、軸方向力をプランジャに加える螺旋状の圧縮ばねとして提供される。プランジャは、駆動ラムと、駆動ラムおよび保持されたカートリッジのピストンの間に位置するスペーシング部材とを含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、自動注射装置は、針前部をそのシールドされた状態へと強制するように、または針前部がシールドされる状態へと針シールドを強制するように、針シールドおよび針と関連付けられた針シールドばねを含むことができる。いくつかの実施形態では、針シールドばねは、作動器もしくは作動ばねとは別個の要素である。
【0019】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、ロックは、針シールドが、伸長位置から収縮位置に向けて移動すると軸方向に移動可能な第1のロック要素を含む。第1のロック要素およびプランジャは、作動の前に、プランジャとベースの間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが共同するロック幾何形状を画定し、協動するロック幾何形状は、針シールドが収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、プランジャとベースの間の回転を可能にするように適合される。
【0020】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、第1のロック要素はベースに対する回転が阻止されており、またロック要素およびプランジャは、作動の前に、プランジャとロック要素の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状を画定し、協働するロック幾何形状は、針シールドが収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、プランジャとロック要素の間で回転を可能にするように適合される。
【0021】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、ベースのねじ山は、固定的にベースに関連付けられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ロック要素は、第1のロック機構を画定し、またプランジャは、協動するロック機構を画定し、第1のロック機構および協動するロック機構の一方は、軸方向トラックを画定し、また第1のロック機構および協動するロック機構の他方は、トラック追従子を画定する。このような実施形態では、軸方向トラックは、中心の長手方向軸と平行な方向に延びるトラックとして形成することができる。
【0023】
したがって、針シールドが、伸長位置から収縮位置に向けて移動したとき、ロック要素とプランジャの間に相対的な回転を生ずることなく、ロックは解除される。
【0024】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、ベースのねじ山は、ベースに対して軸方向に固定されるが、回転可能に取り付けられた回転可能な構成要素により画定され、プランジャのねじ山は、ベースに対する回転が阻止され、ロックは、針シールドが伸長位置から収縮位置に向けて移動すると、軸方向に移動可能である第1のロック要素を含み、ロック要素および回転可能な構成要素は、作動の前に、回転可能な構成要素とベースの間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協動するロック幾何形状を画定し、協働するロック幾何形状は、針シールドが収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、回転可能な構成要素とベースの間で回転を可能にするよう適合される。
【0025】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、第1のロック要素は、ベースに対する回転が阻止され、またロック要素および回転可能な構成要素は、作動の前に、回転可能な構成要素とロック要素の間で回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協動するロック幾何形状を画定し、協働するロック幾何形状は、針シールドが、収縮位置に向けて移動すると、ロックが解除されて、回転可能な構成要素とロック要素の間で回転を可能にするよう適合される。
【0026】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、プランジャのねじ山は、プランジャに対して回転方向に固定され、またプランジャは、ベースに対して回転方向に固定される。
【0027】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、プランジャのねじ山は、プランジャの初期の第1の軸方向変位中に、ベースのねじ山と係合し、またプランジャのねじ山は、第2の軸方向変位において、ベースのねじ山との係合から解放されて、プランジャが軸方向変位をその後に継続できるようにする。
【0028】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、プランジャのねじ山の外径は、カートリッジの円筒形部分の内径よりも大きい。
【0029】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、プランジャのねじ山は、プランジャの近位端に収容される。
【0030】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、作動ばねは、プランジャの長手方向の穴の内部に配置された螺旋形状の圧縮ばねである。
【0031】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、装置は、ベース内に、カートリッジを交換不能に収容し、またカートリッジは、工具を使用せずに装置から取り外すことができない。
【0032】
自動注射装置のいくつかの実施形態では、プランジャを初期の軸方向位置から解放するために、プランジャとベースの間で回転させるように作用する力は、少なくとも部分的に、作動ばねにより加えられる。
【0033】
いくつかの実施形態では、プランジャを初期の軸方向位置から解放するために、プランジャとベースの間で回転させるように作用する力は、すべて作動ばねにより加えられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、針シールドを収縮位置へと移動させるために、針シールドに対して外部から加えられる力は、初期の軸方向位置からプランジャを解放させるために、プランジャとベースの間で回転させるように作用する力成分に伝達されない。
【0035】
カートリッジ本体は、近位方向を向いている後面を画定することができる。カートリッジの遠位に配置された出口は、遠位方向に延びる針前部および近位方向に延びる針後部の両方を有する針アセンブリの針後部により突き通されるように適合された貫通可能な隔壁を備えることができる。代替構成では、カートリッジ本体の出口部分は、カートリッジ本体部分に対して固定して取り付けられた注射針を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、作動器は、カートリッジおよび針後部を、ロックが解除されるとカートリッジの隔壁が針後部により突き通され、その後に続いて駆動ラムを移動して、薬剤を、針を介して投薬させる状態に入るようにすることができる。
【0037】
注射装置は、作動器および針シールドが互いに対して移動したとき、針前部および針シールドを互いに対して移動させるように、機械的に針と関連付けられる作動器を組み込むことができる。いつかの実施形態では、針は、作動器が針シールドに対して移動すると、実質的に作動器の動きに従う。
【0038】
いくつかの実施形態では、作動器は、カートリッジを少なくとも部分的に収容するハウジング部分を画定するように構成され、ここで、ハウジング部分は、ユーザの手により把持されるように適合される。このような実施形態では、作動器は、作動器が針シールドに対して移動したとき、力を作動器から針に伝達するように針に結合することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「薬剤(medicament)」という用語は、液体、溶液、ゲル、または微細な懸濁液など、制御された方法で、中空の針もしくはカニューレなどの送達手段を通過できる任意の薬剤を含む、流動性のある薬剤を包含することを意味する。投与前に、液体の形態に溶かされる凍結乾燥された薬剤もまた、上記の定義に包含される。代表的な薬剤は、ペプチド、タンパク質(例えば、インスリン、インスリン類似体、およびCペプチド)、およびホルモンなどの医薬品、生物学的に誘導された、もしくは活性作用物質、ホルモンおよび遺伝子ベースの作用物質、栄養的な製剤、ならびに固体(調合された)もしくは液体の形態の他の物質を含む。
【0040】
本発明を、次に図面を参照してさらに詳細に述べるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1a-1b】本発明による、初期のシールドされた状態にある第1のタイプの注射装置100の例示的な実施形態の正面断面図および側面断面図である。
【
図2a-2b】針前部が針シールドから完全に突き出ている状態を示す装置100の正面断面図および側面断面図である。
【
図3a-3b】カートリッジが、流体送達のために針に接続され、かつ吐出が開始されている状態を示す装置100の正面断面図および側面断面図である。
【
図4a-4b】カートリッジから薬剤の所定用量が吐出され、かつ針シールドがシールドされた状態に戻っている状態を示す装置100の正面断面図および側面断面図である。
【
図5】装置100のトリガ要素の詳細な斜視図である。
【
図6】装置100の解放ナットの詳細な斜視断面図である。
【
図7】注射装置100の解放ナットアセンブリの横断面図である。
【
図8a】注射装置100の上部ハウジング部分の部分的に切断された斜視図である。
【
図8b】注射装置100の解放ナットアセンブリの斜視横断面図である。
【
図9】第2のタイプの自動注射装置の代替的なトリガ解放機構に対する主要な構成要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下のものは、所定量の液体薬剤を投与するための医療用注射装置100の例示的な実施形態の説明である。
図1aから
図4bは、注射装置100の動作中におけるその様々な状態を示しており、様々な図は、動作原理の詳細な評価を提供する。
【0043】
注射装置100は、中心の長手方向軸に沿って延びる全体的に管状のハウジングを含む。ハウジングは、装置の遠位端に配置された下側ハウジング部分220と、装置の近位端に配置された上部ハウジング部分200とを含むベースを形成する。下側ハウジング部分220および上部ハウジング部分200は、互いに接合されて密閉容器を形成し、薬剤カートリッジ600を収容する。
【0044】
注射装置100は、装置100の針端部を保護するために、装置100の遠位端に取り付けられる取外し可能な保護キャップ(図示せず)をさらに含むことができる。下側ハウジング部分220は、2つの対向する窓222を含む。キャップが、装置100から取り外されたとき、窓222は、装置100内に含まれる薬剤の視覚的検査を可能にする。さらに窓222は、装置のユーザが、ハウジング内に配置された薬剤カートリッジ600のピストンの存在もしくは位置を調べることにより、装置100が注射に使用されたかどうかを判定することが可能になる。示された実施形態では、上部ハウジング部分200は、製作上の理由で、下側ハウジング部分220とは別個の要素として形成されるが恒久的に固定される、ただし、代替の実施形態では、下側ハウジング部分220と一体に形成することもできる。
【0045】
図1aおよび
図1bは、保護キャップが取り外された後で、投与動作前の状態における装置100の正面断面図および側面断面図を示している。下側ハウジング部分220の遠位端から突き出て示されているのは、針シールド350であり、針シールド350は、下側ハウジング部分220に対して同軸にかつ摺動可能に配置される。針シールド350は、下側ハウジング部分220の内部に配置された針アセンブリ500の前端部が、シールドされた状態にある遠位の伸長位置と、針アセンブリ500の針前部端が、針シールド350の遠位の壁面の中心部分に配置された窓孔354を通して突き出る第2の近位の収縮位置との間でハウジングに対して摺動可能である。
【0046】
注射装置100は、針シールド350が遠位の伸長位置から収縮位置に向けて移動したとき、用量を注射することがトリガされるように構成される。保護キャップは、下側ハウジング部分220に取り付けられたとき、針シールド350が操作されることを阻止し、したがって、注射装置100の早すぎるトリガを阻止する。
【0047】
下側ハウジング部分220は、カートリッジの内側と流体連通を確立するために、針によって突き通されるように適合されたカートリッジ隔壁620により覆われた出口610と、摺動可能に配置されたピストン630とを有する薬剤で充填されたカートリッジ600を収容する。ピストン630は、カートリッジ600から薬剤を投薬するために、針が、カートリッジ隔壁620を突き通したとき、出口610の方向に駆動可能である。投薬は、吐出アセンブリにより制御される。カートリッジ600は、近位の格納位置から、遠位の活動位置へと下側ハウジング部分220に対して移動可能に配置される。
【0048】
カートリッジ600に対して、初期には分離された構成で配置された、針アセンブリ500の形態の針ユニットが、下側ハウジング部分220の遠位方向に存在する。示された実施形態では、針アセンブリ500は、針ハブ501から遠位方向および近位方向にそれぞれ突き出ている針前部510と、針後部520とを有する針カニューレを含む。針前部510および針後部520は共に、ユーザの皮膚およびカートリッジ隔壁620をそれぞれ突き通すための尖った先端511および521を含む。
【0049】
図に示されていないが、針アセンブリ500はさらに、針前部510および針後部520のそれぞれに対する滅菌シースを形成する前カバーおよび後カバーを含むことができる。前カバーおよび後カバーはそれぞれ、カバーが針ハブ501の方向に強制されたとき、針の尖った先端511/521により貫通させることのできるゴム製シースとして形成することができる。装置を使用する前に、2つのカバーのそれぞれは、針前部510および針後部520のそれぞれを封止する伸長位置にある。前カバーおよび後カバーは、接着、溶接、締まり嵌め、別の取付け要素、または同様のものにより、ハブ501に取り付けることができる。
【0050】
針カニューレは、接着、締まり嵌め、または同様の接合プロセスにより、ハブ501に取り付けることができる。示された実施形態では、ハブ501は、ハウジングとは別個の要素であるが、代替の実施形態では、ハウジング200/220の一部として形成することもできる。ハブ501は、カートリッジに沿って近位方向に、さらに遠くカートリッジの近位の位置へと延びる全体的に管状構造として形成される。このように、ハブ501は、カートリッジの外側の円筒形壁に沿ってカートリッジ600を支持する。したがって、ハブ501は、カートリッジホルダとして機能するように設計され、そのカートリッジホルダに対して、カートリッジ600は、近位の格納位置と、遠位の活動位置との間で軸方向に摺動することができる。
【0051】
示された実施形態では、針ハブ501、したがって、針カニューレは、装置100のハウジングに対して軸方向に取り付けられ、したがって、針カニューレは、ハウジングが針シールド350に対して移動したとき、ハウジングの軸方向の動きに従う。
【0052】
示された実施形態では、針シールド350は、初期に針前部510を覆うように配置された遠位面を有する全体的に管状の部材として形成される。針シールド350は、下側ハウジング部分220に対して摺動可能に取り付けられ、予め規定された軸方向距離により、限定された軸方向移動が可能である。
【0053】
針シールド350は、針シールド350に対して近位に位置するトリガ要素380と協働する。トリガ要素380はまた、全体的に管状の要素として形成され、針シールドから、上部ハウジング部分200の近位端に近い位置まで、近位方向に軸に沿って延びる。装置100の組み立てられた状態では、針シールド350およびトリガ要素380は、単一のエンティティとして機能する、すなわち、トリガ要素380の動きは、針シールド350の軸方向の動きに従う。したがって、トリガ要素380は、針シールド350の伸長位置に対応する遠位の位置から、針シールド350の収縮位置に対応する近位の位置まで移動可能である。示された実施形態では、針シールド350およびトリガ要素380のそれぞれは、ハウジング200/220に対して回転方向の動きが阻止されるように取り付けられる。
【0054】
トリガ要素380は、シールドばね340により遠位方向に強制され、したがって、針シールドに対して、外部からの力が何も加えられない場合、針シールドは、
図1aおよび
図1bで示されるその遠位の伸長位置にある。この位置では、トリガ要素380および/または針シールド350上の停止幾何形状が、2つの構成要素を、さらに遠位方向に移動することを阻止する。装置100が、針シールドを用いて注射部位に押し付けられたときなど、針シールドを、ハウジングに対して近位方向に移動させるために、針シールド350に対して、外部からの力がかかった場合、外部からの力は、針シールドばね340により提供される力とは反対に作用して、針シールド350およびトリガ要素380は、近位方向に移動するように強制される。針シールド350が、近位の収縮位置にあるとき、トリガ要素380の近位端面は、トリガ要素および針シールド350がハウジングに対してさらに近位方向に移動するのを阻止する(
図2aおよび
図2bを参照のこと)。
【0055】
装置100が注射部位から除去されると、針シールド350は、シールドばね340からの力により遠位方向に移動することになる。注射が行われた後、針シールド350が、
図4aおよび
図4bで示すように、その遠位位置に再度達したとき、この位置にロックされて、針シールドを動作できなくする(以下でさらに説明する)。
【0056】
針アセンブリ500は、下側ハウジング部分220の遠位端に配置され、したがって、針シールドがその伸長位置にあるとき、針シールド350は、針アセンブリを完全に覆う。針シールド350が、その近位の収縮位置にあるとき、針前部510は、針シールド350の窓孔354を通して突き出ている。
【0057】
図1bで示すように、カートリッジ600は、針ハブ501から半径方向内側に延びる2つの弾性アーム530により、その近位の格納位置に維持される。
図1bで示される初期状態では、弾性アーム530は、カートリッジが遠位方向に移動しないように、カートリッジ600の首部分を支持し、かつ保持する位置にある。弾性アーム530は、カートリッジ600を、遠位の活動位置に移動させるように作用する十分な力が、カートリッジ600に加えられたとき、半径方向外側に撓むように適合される。しかし、針シールド350がその遠位の伸長位置にある初期状態では、針シールド350のブロック幾何形状351が、弾性アーム530を囲んで、外側方向に撓まないようにし、したがって、カートリッジ600が遠位方向に移動するのを阻止する。以下で述べるように、ブロック幾何形状351は、針シールド350がその近位の収縮位置へと移動したとき、軸方向に移動するように構成され、弾性アーム530が半径方向外側に撓むようにするための場所を作る。
【0058】
注射装置100の吐出アセンブリは、ピストン630を前進させて、カートリッジ600から用量を吐出するように、装置の中心の長手方向軸に沿って遠位方向に駆動されるプランジャ装置に基づく。示された実施形態におけるプランジャ装置は、駆動ラム310と、スペーサ部材400とを含む。装置100では、作動器330が、装置の近位部分に配置され、駆動ラム310に対して遠位方向の力を加えるための蓄えられたエネルギー源を提供する。スペーサ部材400は、駆動ラム310と、カートリッジ600のピストン630との間に位置する全体的に管状の部材である。スペーサ部材400は、ピストンを遠位方向に前進させるために、ピストン630に対して駆動ラム310により加えられる力を伝達するための中間部材として働く。
【0059】
作動器は、示された実施形態では、予め応力がかけられた螺旋形状の圧縮バネとして提供される作動ばね330の形態で提供される。作動ばね330は、装置の製作中に圧縮ばねを歪ませることにより付勢される。駆動ラム310は、さらに中空であり、作動ばね330を駆動ラム310内に配置することができる。作動ばね330の内部に配置されたガイド要素360は、作動ばね330を横に曲がらないようにガイドするのを支援する。ガイド要素360は、作動ばね330の近位端を支持するための座として働くように配置された座部分を、その近位端に設ける。
【0060】
スペーサ部材400は、スペーサ部材400の遠位端から所定の距離に位置する停止面401を備えて形成され、カートリッジ600の後端611と協働して、カートリッジ600の内側でピストン630に対するストローク位置の正確な終端を規定する。カートリッジ600の充填中に、ピストン630は、カートリッジ600の後端611に対して正確に位置決めできるので、吐出動作の完了時に、停止面401が、カートリッジ600の後端611に当たることを利用することにより、吐出される用量の正確な容積を正確に制御することができる。
【0061】
示された実施形態では、スペーサ部材400、およびハウジングに関連付けられた協働部材が、クリックアームと協働して、注射中に、かつ/または注射の完了時に、クリック音を生成するように適合された突起など、1つまたは複数の対のクリック生成要素をさらに含むことができる。
【0062】
前述のように、示された実施形態では、予め応力がかけられた作動ばね330の形態の作動器は、駆動ラム310を遠位方向に強制する。注射装置100の非作動状態では、駆動ラム310と関連付けられた解放ナット320が、上部ハウジング構造200およびトリガ要素380と協働して、駆動ラム310を、作動ばね330の力に対向して、初期の軸方向位置に保持する。吐出アセンブリを作動させると、すなわち、トリガ要素を動作させることにより、解放ナット320は解放されて、駆動ラムを前方に押し出し、ピストン630に対して遠位方向の力を提供することができる。
【0063】
装置の製作中に圧縮される予め応力がかけられたばねを用いることの代替として、装置は、装置を使用するときの最初の手順として、ばねを圧縮するための機構を含むことができる。さらに、他の実施形態では、作動器は、吐出アセンブリの回転駆動を推進するようにねじり力を加えるために予め応力がかけられたねじりばねとして形成することができる。代替的に、作動器は、ガスなどの加圧された媒体の形態とすることができる。さらに代替的に、作動器は、電気化学セルなどのガス発生器を含むことができる。
【0064】
駆動ラム310は、中心の長手方向軸に沿って延び、かつ閉じた遠位端と、その近位端で半径方向外側に延びるカラーを有する開放端部分とを画定する、深絞りされた金属管として提供される。解放ナット320は、駆動ラム310の近位端に配置されて、駆動ラム310を囲む。解放ナット320は、駆動ラム310のカラーに対して配置される円周方向のカラーを画定する軸方向の穴321を有する。このように、解放ナット320は、駆動ラム310が、解放ナット320に対して遠位方向に移動するのを阻止する。
【0065】
解放ナット320は、装置が、トリガする前の初期状態にあるとき、ハウジングと関連付けられたねじ山205に係合するねじ山325を画定する。解除可能なロックは、解放ナット320とハウジングの間で相対的な回転を阻止するように働き、したがって、駆動ラム310を初期の軸方向位置に維持する。
【0066】
示された実施形態では、ロックは、解放ナット320とハウジングの間の相対的な回転を阻止するトリガ要素380により提供される。
図5および
図7で示すように、トリガ要素380の軸方向トラック386は、上部ハウジング部分200の各軸方向リブ206により係合されるように構成されて、トリガ要素がハウジングに対して回転しないようにするが、軸方向の変位は可能にする。示された実施形態では、解放ナット320の2つの半径方向外側に延びる突起328が、トリガ要素380の内側表面上の半径方向内側に延びる対応する軸方向トラック388に係合するように適合される(
図5、
図6、および
図7を参照のこと)。軸方向トラック388はそれぞれ、限られた軸方向長さを有し、軸方向トラック386の遠位端の位置に、開放された隣接する領域を画定する。トリガ要素380に対して解放ナット320の十分な軸方向変位が行われたとき、解放ナット320の回転が可能になる。しかし、トリガ前の初期状態では、トリガ要素380が、トリガ要素380のトリガ点に対して遠位に位置する限り、解放ナット320は回転が阻止される。トリガ要素380のトリガ点は、トリガ要素380の近位位置に近接しているが、遠位方向にある点に位置する。
【0067】
解放ナット320がハウジングに対する回転が阻止される限り、解放ナット320のねじ山325と、ハウジングのねじ山205との間のねじ係合は、解放ナット320が軸方向に移動するのを阻止する。したがって、吐出アセンブリを作動させる前では、トリガ要素380がトリガ点に対して遠位に位置する限り、駆動ラム310はまた、遠位方向への移動が阻止される。
【0068】
ねじ接続325/205のリード、および突起328と軸方向トラック388の間の係合の寸法は、トリガ要素380がトリガ点の方向に変位したとき、解放ナット320が回転に対して解放されると、突起328は、軸方向トラック388と再度係合することはできないように構成される。したがって、装置をトリガするために、針シールド350に対して力を加えることによって吐出アセンブリが作動すると、針シールドに対して加えられた力における潜在的な解放の場合、駆動ラム310の遠位の移動は中断することができない、すなわち、駆動ラム310は、要素401/611により画定される意図された投与終了位置まで、その遠位の移動を続けることになる。
【0069】
図8aは、上部ハウジング部分200の部分的に切断された斜視図を示しており、トリガ要素および解放ナット320を見ることができる。解放ナット、トリガ要素、および上部ハウジング部分は共に、解放ナットアセンブリを形成する。明確化のために、示された図は、トリガ前の初期状態における、注射装置100の選択された構成要素を示すだけであるが、作動ばね330および駆動ラム310などのさらなる構成要素は、除かれている。解放ナット320のねじ山325と、ハウジングのねじ山325との間の係合を見ることができる。
図8bは、解放ナットアセンブリを斜視断面図で示す。
【0070】
以下では、主として
図1aから
図4aを参照しながら、注射装置100の動作を述べるものとする。
【0071】
装置100を動作させる第1のステップとして、前に述べた保護キャップが装置から取り外される。上記で述べたように、
図1aおよび
図1bは、その初期の格納状態にある装置を示しているが、保護キャップは、ハウジング200/220から取り外されている。針シールド350は、その伸長位置にあり、したがって、針前部510はシールドされた状態にある。
【0072】
上記の記述によれば、ハウジング200/220は、針シールド350に対する作動器として働く、すなわち、ハウジングがユーザの手によって把持され、かつ装置100の遠位端が注射部位に対して押し付けられると、針シールド350は、皮膚に対して拘束されたままであり、ハウジングは、針シールド350に対して遠位方向に移動して、装置100の吐出アセンブリを作動させる。
【0073】
装置100が作動すると、針シールド350は、針アセンブリ500に向けて、下側ハウジング部分220に対して近位方向に移動する。その動きにより、針前部510は、針シールド350の小さな窓孔354を通過する。針カニューレが窓孔354に対して移動するとき、上記で述べた前カバー(図示せず)は、好ましくは、開口部の周りの幾何形状により妨げられ、それにより、針前部510は、前カバーを貫通することができるが、前カバーは、針シールド350と針ハブ501の間で圧縮されている。代替的には、前カバーは、同様に窓孔354を通って移動することもできる。このような場合では、前カバーは、患者の皮膚に対して押し付けられて、装置100と注射部位の間で圧縮されることになる。前カバーの圧縮は、蛇腹状にすることができるが、あるいは例えば、半径方向外側になど、横方向に曲げることもできる。前カバーは、針シールド350と針ハブ501の間で常に圧縮されることを保証する特有の幾何形状を有することができる。針シールド350の窓孔354はまた、前カバーを確実に正しく圧縮するために特有の幾何形状を有することもできる。
【0074】
図1aおよび
図1bで示された状態では、トリガ要素380は、シールドばね340により加えられた圧力に起因して、その遠位の位置にある。ハウジングに対して解放ナット320を回転方向にロックする解除可能なロックは、使用可能な状態にあり、したがって、駆動ラム310は、その初期位置にある。カートリッジ600は、その近位の格納位置に配置されている。
【0075】
針シールド350が所定の位置に、すなわち、収縮位置に達すると、針シールド350は、停止限度に達することになる、
図2aおよび
図2bを参照のこと。この状態で、針前部510は、患者の皮膚に挿入され、前カバー(図示せず)が圧縮されることになる。針シールド350の動きに従って、トリガ要素380は、その近位の位置へと、すなわち、トリガ点を過ぎて近位の位置へと移動している。
【0076】
図8bを参照すると、トリガ要素380がその近位の位置に移動したとき、トリガ要素380の軸方向トラック388は、解放ナット320の突起328との係合が解除されるように変位した状態にあることになる。この状況は、
図2aで最もよく見ることができる。作動ばね330が、駆動ラム310および解放ナット320に対して遠位方向に力を加えているため、ねじ係合325/205は、解放ナット320を回転させることになる。
図2aおよび
図2bでは、解放ナット320は、上部ハウジング部分200に対してわずかに回転しており、またねじ係合により、解放ナット320および駆動ラム310は、遠位方向に向けてわずかに軸方向に移動している。駆動ラム310とスペーシング部材400の間の初期の間隔はなくなっており、したがって、作動ばねの力は、駆動ラム310およびスペーシング部材400により、カートリッジ600のピストン630に対して作用させることができる。
【0077】
針シールド350、したがって、ブロック幾何形状351は、近位の位置に移動されており、したがって、弾性アーム530は、自由に外方向に曲がることになる。
図3aおよび
図3bで示すように、作動ばね330からの力は、まず、駆動ラム310およびスペーシング部材400、そしてピストン630を遠位方向に、ある距離だけ変位させる。この段階の第1の部分中では、針後部520は、なおカートリッジの隔壁620から離れており、したがって、カートリッジは、ピストン630と共に動くように強制される。作動ばね330の力は、弾性アーム530を外側に曲げるのに必要な力を克服するのに十分である。しかし、
図3bおよび
図4bでは、弾性アーム351が、カートリッジ600の壁部分に対して重なって示されていることに留意されたい。弾性アーム351が実際にどのように曲がるかに関するより正確な図は、弾性アームが外側方向に曲がって、カートリッジ600の外側の円筒形面に対して置かれるように描かれることになる。
【0078】
最初に、カートリッジ600が遠位方向に移動すると、スペーサ部材400の停止面401と、カートリッジ600の後端611との間の距離は、ピストン630が、概して、カートリッジ600の本体に対して移動しないので、変わらないままである。しかし、カートリッジ600が遠位方向に完全に移動した後、ピストン630は、カートリッジ600の内側でその移動を開始し、前記距離は減少する。
【0079】
何らかの時点で、カートリッジ600は、針ハブ501に形成された停止機構に当たるその遠位の活動位置へと完全に移動する。針後部620は、カートリッジの隔壁620を貫通し、針カニューレと、カートリッジ600に含まれた薬剤との間の流体連通が使用可能になる。この位置では、針カニューレは、患者の皮膚と、カートリッジ600に含まれる薬剤の両方と接触状態にある。針カニューレとカートリッジ600の間の流体連通が確立された後、薬剤は、いまや作動ばね330により上部ハウジング部分200に対して力が加えられ、かつ遠位方向に強制される駆動ラム310によって、患者に注射される。
図3aおよび
図3bで示す状態では、作動ばね330により加えられる力は、カートリッジ600から流体の第1の部分を吐出するように、駆動ラム310に作用している。
【0080】
作動ばね330は、ピストン630に作用し続けて、ピストンを、投与機構の最後により決められた、予め規定された投与終了位置まで前進させる。スペーサ部材400の停止面401がカートリッジ600の後端611に達したとき、駆動ラム310の移動は停止されて、薬剤の吐出が停止される(
図4bを参照のこと)。
【0081】
図4aおよび
図4bは、注射部位に対して後退した後の注射装置100を示している。装置が取り外されると、針シールド350は、下側ハウジング部分220に対して前方に移動し、針シールドは、シールドばね340によって押されて、前カバー(図示せず)に対する圧縮力を解放する。針シールド350は、もはや前カバーを収縮置に保持しないので、前カバーは、針前部510を覆うその伸長位置へと戻る傾向になる。代替の実施形態では、前カバーは、その収縮位置に留まることもできる。
【0082】
装置100が患者から取り外されると、針前部510は、患者の皮膚から外される。前記前カバーがその伸長位置に戻る実施形態では、前カバーは、針カニューレから吐出される過度の薬剤が、装置から滴り落ちるのを阻止することになる。後カバー(これも図示せず)は、カートリッジ600からの圧力により、その収縮位置に留まる。
【0083】
針シールド350は、近位の収縮位置から遠位の伸長位置に、すなわち、針前部510がそのシールドされた状態に戻った後、針シールド350の近位の移動を固定させるロックを含むことができる。
【0084】
上記で述べた第1のタイプの自動注射装置によれば、プランジャが、ベースのねじ山と係合するプランジャのねじ山を含むトリガ原理が述べられている。プランジャは、ねじ接続により、トリガ前状態に維持されており、相対的な回転は阻止される。トリガされると、プランジャのねじ山およびベースのねじ山は互いに対して回転することが可能になり、最終的に、プランジャを遠位方向に移動させることができる。
【0085】
全体的な原理によれば、第2のタイプの自動注射装置では、上記で述べたトリガ原理を、第1のタイプの自動注射装置に対してわずかに変更された代替の自動注射装置で使用することができる。変更は、主として、プランジャの解放ナットが、自動注射装置の格納中と動作中で共に、回転しないようにできることに依存している。その代わりに、ベースのねじ山は、格納中には、ハウジングに対して回転が阻止される回転可能な構成要素上に構成することができる。注射器の回転可能な構成要素は、ハウジングに対して回転可能に取り付けられるが、ハウジングに対して軸方向に移動しないようにすることができる。トリガの後に続いて、回転可能な構成要素は、ベースのねじ山構成要素と、プランジャのねじ山構成要素との間のねじ接続に従って、解放ナットに対して回転することが可能になる。
【0086】
図9に対して参照が行われ、
図9は、このような第2のタイプの自動注射装置に必要となる基本的な構成要素を示している。
図8bと
図9を比較すると、上記で述べた実施形態は、ハウジング1200に対して回転可能に取り付けられているが、軸方向への移動は阻止される回転可能な構成要素1204を画定することにおいて変更されている。回転可能な構成要素1204は、ベースねじ構成要素1205を画定する。解放ナット1320は、初期にベースねじ構成要素1205と係合するように適合されたプランジャねじ構成要素1325を画定する。解放ナット1320は、ハウジングに対する回転が阻止される。前記回転を阻止するための手段は、例えば、駆動ラムの図示されない幾何形状に係合する解放ナット1320の軸方向トラック1321を形成することにより提供することができる。駆動ラムは、駆動ラム、スペーシング部材、およびハウジングの間で、適切な回転ロックを形成することにより、非回転にすることができる。
【0087】
図9で示す実施形態では、トリガ要素1380は、ハウジング1200に対する回転が阻止される。トリガ要素および回転可能な構成要素は、トリガの前に、回転可能な構成要素とハウジングの間の回転方向のロックを維持するように構成された、それぞれが協働するロック幾何形状1388、1208を画定する。回転可能な構成要素1204は、作動ばねにより強制されることにより、吐出する回転方向に付勢される。トリガ要素1380が、その初期の伸長位置にあるとき、協働するロック幾何形状1388、1208は、係合して、回転可能な構成要素1204が、吐出する回転方向に回転するのを阻止する。自動注射装置がトリガされるとき、トリガ要素1380は、そのトリガ位置に向けて近位方向に押される。こうすることは、協働するロック幾何形状1388、1208を、互いに対して変位させる。ねじ山1325/1205の間のねじ係合に起因して、作動ばねから生ずる力は、回転可能な構成要素1204を回転させる傾向になる。トリガ要素1380が、トリガ位置に対して近位方向に移動すると、協働するロック幾何形状1388、1208の係合が解除されることにより、回転可能な構成要素1204の回転がいまや可能になる。
【0088】
いくつかの好ましい実施形態が、前述の内容で示されてきたが、本発明は、これらのものに限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲で定義される主題に含まれる他の方法でも実施できることが強調されるべきである。