(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グレーティングは少なくとも2層のポリマー層を含み、前記液晶エラストマーはシロキサン側鎖型液晶エラストマーであり、前記少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相は可視域全域の光を反射する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のグレーティング。
前記ポリマー層の各層は、紫外線重合性の液晶性モノマーと光開始剤をさらに含有し、前記紫外線重合性の液晶性モノマーは、光開始剤による光開始によって重合して、ポリマーネットワークを形成する、
請求項4または5に記載のグレーティング。
前記ポリマー層の各層には、質量分率が69〜96.9%である前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が2〜20%である前記紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である前記光開始剤が含有される、
請求項6に記載のグレーティング。
前記紫外線重合性の液晶性モノマーは、1,4−ビス〔4−(6’−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ〕−2−メチルベンゼンであり、前記光開始剤は、ベンジルジメチルケタールである、
請求項6または7に記載のグレーティング。
前記ポリマー層は少なくとも2層のポリマー層を含み、前記液晶エラストマーはシロキサン側鎖型液晶エラストマーであり、前記少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相は可視域全域の光を反射する、
請求項15に記載の製造方法。
前記ポリマー層には、質量分率が69〜96.9%である前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が1〜10%である前記ナノオーダーの物質、質量分率が2〜20%である前記紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である前記光開始剤が含有される、
請求項17に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は少なくとも、表示パネルとの組合せで裸眼3D表示を実現でき、かつ2D表示を行うときの光透過率を向上させるグレーティング、表示装置およびグレーティングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の少なくとも1つの実施例で提供されるグレーティングは、対向して設けられる第1基板および第2基板と、グレーティング構造を有し、かつ前記第1基板の前記第2基板に向く面に設けられる第1透明電極と、前記第2基板の前記第1基板に向く面に設けられ、かつ前記第1透明電極に対応する第2透明電極と、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に位置され、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質および液晶エラストマーが含有されるポリマー層と、を含むグレーティングであって、
前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加された場合、前記ナノオーダーの物質が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、前記液晶エラストマーはコレステリック相を示して全波長の光を反射しており、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、前記ポリマー層は透明状態になる。
【0006】
本発明の実施例に係るグレーティングによれば、ポリマー層にはナノオーダー物質および液晶エラストマーが含有され、電圧が印加されていない場合、ポリマー層は、ガラス質を示し透明状態になる。そのため、2D表示が可能になる。且つ、厚さが数十ミリメートルである従来の液晶グレーティングに比べて、ポリマー層の厚さがマイクロメートルオーダーとなされ、2D表示をするときの光透過損失を減らす。また、ポリマー層は、従来技術で採用された液晶層全層型の液晶グレーティングに対して、第1透明電極上だけに設けられ、2D表示をするときの光透過損失の減少にも有利である。例えば四酸化三鉄ナノ材料のようなナノオーダーの物質が電圧が印加されると電磁エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有し、その自体が電磁気特性を有する上、ナノオーダーのサイズおよび高い比表面積によるナノ効果により、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換でき、ポリマー層が加熱され、液晶エラストマーがコレステリック相を示し、該ポリマー層が全波長の光を反射する。そこで、バリアフェンス式グレーティングの機能を実現でき、3D表示が行われる。また、ポリマー層は、数ナノメートルの厚さに製造できるため、グレーティングの厚さが大幅に減少され、グレーティングと表示パネルが表示装置に組み立てられる場合、裸眼3D表示装置の厚さがさらに減少される。
【0007】
ナノオーダーの物質として、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換できれば、いずれも本発明の実施例に適用される。本発明の1つの実施例において、前記ナノオーダーの物質は、四酸化三鉄ナノ粒子または四酸化三鉄ナノロッドである。本発明のもう1つの実施例において、前記ナノオーダーの物質は、四酸化三鉄ナノ粒子である。電磁気特性が四酸化三鉄ナノ粒子の固有特性であり、かつナノ粒子自体がナノオーダーのサイズおよび高い比表面積によるナノ効果を有するため、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換できる。
【0008】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層に対する前記ナノオーダーの物質の質量分率は、1〜10%である。
【0009】
全波長の光を実現するポリマー層の層数は限定されない。本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層は少なくとも2層あり、前記液晶エラストマーはシロキサン側鎖型液晶エラストマーであり、前記少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相は全波長の光を吸収する。
【0010】
本発明の1つの実施例において、ポリマー層の各層の厚さは、1.0μm以下である。本発明のもう1つの実施例において、前記ポリマー層の各層の厚さは、0.2〜1.0μmである。そのため、グレーティングの厚さが非常に小さく、表示パネルと共に組み立てられた表示装置の厚さが大幅に減少される。
【0011】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層の各層は、紫外線重合性の液晶性モノマーが光開始剤による光開始によって重合して形成されたポリマーネットワークをさらに含む。
【0012】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層の各層には、質量分率が69〜96.9%である前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が2〜20%である前記紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である前記光開始剤が含有される。
【0013】
本発明の1つの実施例において、前記紫外線重合性の液晶性モノマーは、1,4−ビス〔4−(6’−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ〕−2−メチルベンゼンであり、前記光開始剤は、ベンジルジメチルケタールである。
【0014】
本発明の1つの実施例において、前記シロキサン側鎖型液晶エラストマーは、式IIIに表されるメチルハイドロジェンポリシロキサンに、式Iに表される液晶性モノマーと式IIに表される架橋剤によってグラフトさせて得られ、
【化1】
そのうち、式IにおけるKは3〜10のいずれかの整数であり、式IIにおけるnは3〜10のいずれかの整数であり、式IIIにおけるmは4〜30のいずれかの整数である。
【0015】
本発明の1つの実施例において、式Iに表される液晶性モノマーと式IIに表される架橋剤とのモル比は1:9〜9:1である。
【0016】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層は2層構造であり、前記2層のポリマー層は緑色光と紫色光をそれぞれ反射する、または、前記2層のポリマー層は黄色光と青色光をそれぞれ反射する。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施例は、表示パネルおよび前記表示パネルの出光側に位置された上記のいずれか1つのグレーティングを備える表示装置を提供する。
本発明の実施例に係る表示装置は、上記のグレーティングを採用するため、小さい厚さを有し、2D表示をするときの光透過損失が減少される。
【0018】
本発明の1つの実施例において、前記グレーティングの第1基板は、前記表示パネルの出光側の下地基板である。
表示パネルの出光側の下地基板がグレーティングの第1基板として用いられると、表示装置の厚さがさらに減少できる。
【0019】
本発明の1つの実施例において、前記表示装置は、前記グレーティングにおける前記第1透明電極および前記第2透明電極に電圧を印加させるための駆動回路をさらに備える。
【0020】
本発明の少なくとも1つの実施例は、
第1および第2基板上に、グレーティング構造を有しかつ対応して設置される第1および第2透明電極をそれぞれ形成するステップと、
前記第1透明電極上にポリマー層を形成するステップと、
前記第1および第2基板をセルに組み立てるステップと、を含み、
前記ポリマー層には電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質、および液晶エラストマーが含有され、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加された場合、前記ナノオーダーの物質が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、前記ポリマー層はコレステリック相を示して全波長の光を反射しており、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、前記ポリマー層は透明状態になる、グレーティングの製造方法を提供する。
【0021】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層は少なくとも2層であり、前記液晶エラストマーはシロキサン側鎖型液晶エラストマーであり、前記少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相は全波長の光を反射する。
【0022】
本発明の1つの実施例において、前記第1透明電極上に2層のポリマー層を形成するステップは、
前記第1透明電極上に、前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、前記ナノオーダーの物質、紫外線重合性の液晶性モノマーおよび光開始剤が含有される1層目の混合物層を塗布するステップaと、
前記混合物層を第1温度に加熱することで、前記シロキサン側鎖型液晶エラストマーが第1ピッチを形成するステップbと、
紫外線が、前記第1透明電極に対応される開口を有するマスクを通して、設定のピッチが形成された1層目の混合物層に照射されることで、前記紫外線重合性の液晶性モノマーはポリマーネットワークを形成して前記第1ピッチを安定させ、第1波長の光を反射でき、前記混合物層を室温まで冷却し、エッチングによって1層目のポリマー層パターンを形成するステップcと、
第1ピッチを有する1層目のポリマー層パターンが形成された前記第1透明基板上に2層目の混合物層を塗布するステップdと、
前記2層目の混合物層を第2温度に加熱し、ステップcを繰り返して、第2ピッチを有しかつ第2波長の光を反射できる2層目のポリマー層を形成するステップeと、を含む。
【0023】
本発明の1つの実施例において、前記ステップbでの温度を調整し、かつ前記ステップa〜cを少なくとも1回繰り返して、少なくとも3層の、異なるピッチを有するポリマー層を取得する。
【0024】
前記混合物層には、質量分率が69〜96.9%である前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が1〜10%であるナノオーダーの物質、質量分率が2〜20%である前記紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である前記光開始剤が含有される。
【0025】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層が2層ある場合、前記第1ピッチの閾値は150〜5000nmであり、前記第2ピッチの閾値は150〜5000nmである。
【0026】
本発明の1つの実施例において、前記ポリマー層が2層あると、前記第1温度の閾値は30〜120℃であり、前記第2温度の閾値は30〜120℃である。
【0027】
以下、本発明の実施例に係る目的、技術思想およびメリットをより明確にさせるため、本発明の実施零に係る技術思想について、本発明の実施例の図面を参照しながら全体として明確に説明する。説明された実施例が本発明の一部の実施例のみであり、本発明の全ての実施例ではないことは明白であろう。当業者には、開示された本発明の実施例に基づき、容易に成し遂げることができた他の実施例の全ては本発明の精神から逸脱しない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例に係る目的、技術思想およびメリットをより明確にさせるため、本発明の実施零に係る技術思想について、本発明の実施例の図面を参照しながら全体として明確に説明する。説明された実施例が本発明の一部の実施例のみであり、本発明の全ての実施例ではないことは明白であろう。当業者には、開示された本発明の実施例に基づき、容易に成し遂げることができた他の実施例の全ては本発明の精神から逸脱しない。
【0030】
本発明の実施例は、表示パネルと共に裸眼3D表示を実現でき、2D表示をするときの光透過損失を減らすグレーティング、該グレーティングを有する表示装置および該グレーティングの製造方法を提供する。該グレーティングはポリマー層を含んでおり、電圧が印加されていない場合、ポリマー層がガラス質を示して透明状態になり、2D表示を実現できる。電圧が印加された後、ナノオーダーの物質が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換してポリマー層を加熱するため、液晶エラストマーがコレステリック相を示し、一定の波長の光を反射できる。ポリマー層は、可視域全域の光を反射できるため、バリアフェンス式グレーティングの機能を実現でき、3D表示を行う。
【0031】
表示装置がRGBまたは他の基本色光を合成することで白色光に生成して表示機能を実現するため、グレーティングにおけるポリマー層が表示装置に用いられる基本色光のすべてを反射できれば、可視域全域の光を反射でき、バリアフェンス式グレーティングの機能を実現できる。
【0032】
以下、本発明の実施例に係る実施態様について、図面を参照しながら説明する。
【0033】
本発明の少なくとも1つの実施例は、
図1に示されたグレーティングを提供する。
図1は、本発明の1つの実施例に係るグレーティングの構造概略図である。
該グレーティングは、対向して設けられる第1基板21および第2基板22と、グレーティング構造を有し、かつ第1基板21の第2基板22に向く面に設けられる第1透明電極23と、第2基板22の第1基板21に向く面に設けられ、かつ第1透明電極23に対向する第2透明電極24と、第1透明電極23と第2透明電極24との間に位置され、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質および液晶エラストマーが含有されるポリマー層25と、を含んでおり、
第1透明電極23と第2透明電極24との間に電圧が印加された場合、ナノオーダーの物質が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、液晶エラストマーはコレステリック相を示して全波長の光を反射しており、第1透明電極23と第2透明電極24との間に電圧が印加されていない場合、ポリマー層25は透明状態になる。
【0034】
本発明の実施例に係るグレーティングにおいて、ポリマー層25にはナノオーダー物質および液晶エラストマーが含有され、電圧が印加されていない場合、ポリマー層25は、ガラス質を示し透明状態になる。そのため、2D表示が可能になる。且つ、厚さが数十ミリメートルである従来の液晶グレーティングに比べて、ポリマー層25の厚さがマイクロメートルオーダーとなされ、2D表示をするときの光透過損失を減らす。また、ポリマー層25は、従来技術で採用された液晶層全層型の液晶グレーティングに対して、第1透明電極上だけに設けられ、2D表示をするときの光透過損失の減少にも有利である。ナノオーダーの物質は、電圧が印加されると電磁エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有する。例えば、ナノオーダーの物質が四酸化三鉄ナノ材料である場合、その自体が電磁気特性を有する上、ナノオーダーのサイズおよび高い比表面積によるナノ効果により、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換でき、ポリマー層が加熱され、液晶エラストマーがコレステリック相を示して一定の波長の光を反射する。該ポリマー層が全波長の光を反射できるため、バリアフェンス式グレーティングの機能を実現でき、3D表示が行われる。また、ポリマー層25は、数ナノメートルの厚さに製造できるため、グレーティングの厚さが大幅に減少され、グレーティングと表示パネルが表示装置に組み立てられる場合、裸眼3D表示装置の厚さがさらに減少される。ポリマー層25は、
図1のように、第1透明電極1上に位置され、かつ第1透明電極23の電極ユニット毎に対応される構造である。
【0035】
本実施態様において、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質の含有量が1%以下になると、加熱ムラが発生し、かつ加熱速度が遅くなる問題がある。ナノオーダーの物質の含有量が10%以上になると、ナノオーダーの物質を無駄にするおそれがある。そこで、本発明の実施態様において、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質の質量分率は、1〜10%とされる。
【0036】
ナノオーダーの物質は、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換できれば、いずれも本発明の実施例に適用できる。例えば、ナノオーダーの物質は、四酸化三鉄ナノ粒子または四酸化三鉄ナノロッドとされる。四酸化三鉄ナノロッドが均一に混合されないという問題があるため、好ましくは、ナノオーダーの物質は四酸化三鉄ナノ粒子である。電磁気特性が四酸化三鉄ナノ粒子の固有特性であり、かつナノ粒子自体がナノオーダーのサイズおよび高い比表面積によるナノ効果を有するため、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換できる。
【0037】
該ポリマー層25は、
図1のように少なくとも2層あり、液晶エラストマーはシロキサン側鎖型液晶エラストマー(Side−chain polysiloxane liquid crystalline elastomers)であり、少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相は全波長の光を反射する。該ポリマー層25の層数には限定がなく、これらのポリマー層25のコレステリック相が全波長の光を反射できればよい。
【0038】
また、ポリマー層25の各層の厚さは、例えば0.2〜1.0μm(マイクロメートル)である。ポリマー層25の各層の厚さが1.0μm以下であることで、該グレーティングは、厚さが非常に小さく、表示パネルと共に組み立てられてきた表示装置の厚さが大幅に減少する。ポリマー層の厚さは、例えば、0.2μm、0.3μm、0.5μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、または1.0μmであってもよく、そのうち、ポリマー層の各層の厚さは同一でもよく、異なってもよい。
【0039】
また、ポリマー層25の各層は、例えば、紫外線重合性の液晶性モノマーが光開始剤による光開始によって重合して形成されたポリマーネットワークをさらに含む。
【0040】
ポリマー層25の各層には、質量分率が69〜96.9%であるシロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が2〜20%である紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である光開始剤が含有される。
【0041】
本発明の1つの実施例において、紫外線重合性の液晶性モノマーは、1,4−ビス〔4−(6’−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ〕−2−メチルベンゼンであり、化学式は下記の通りである。
【化2】
光開始剤は、ベンジルジメチルケタールであり、化学式は下記の通りである。
【化3】
【0042】
本発明の1つの実施例において、シロキサン側鎖型液晶エラストマーは、式IIIに表されるメチルハイドロジェンポリシロキサンに、式Iに表される液晶性モノマーと式IIに表される架橋剤によってグラフトさせて得られ、
【化4】
そのうち、式IにおけるKは3〜10のいずれかの整数であり、式IIにおけるnは3〜10のいずれかの整数であり、式IIIにおけるmは4〜30のいずれかの整数である。
【0043】
本発明の1つの実施例において、式Iに表される液晶性モノマーと式IIに表される架橋剤とのモル比は1:9〜9:1である。
図2は、本発明に係るグレーティングに用いられるシロキサン側鎖型液晶エラストマーの化学構造の概略図であり、
図2に示すように、x(楕円形の側鎖)は液晶性モノマー基を表し、y(長方形の側鎖)は架橋剤基を表し、z(主鎖)はメチルハイドロジェンポリシロキサンを表す。
【0044】
本発明の実施例に用いられるシロキサン側鎖型液晶エラストマーは、ガラス転移温度以上でコレステリック相を示し、一定の波長の可視光線を反射する。
図3は、
図2に示された、m=6、n=4、k=4であるシロキサン側鎖型液晶エラストマーの反射波長と温度の関係を示す曲線図である。
図3からわかるように、温度が60℃から85℃まで上昇する場合、反射波長が780nmから380nmに減少し、可視域全域を覆う。そのため、温度の調整によって、シロキサン側鎖型液晶エラストマーは可視域のうち任意の波長の光を反射できる。
【0045】
図4は、本発明の1つの実施例に係るグレーティングに用いられたシロキサン側鎖型液晶エラストマーのポリマー層の構造概略図であり、該ポリマー層は、シロキサン側鎖型液晶エラストマー50と、ポリマーネットワークの繰り返し単位51(紫外線重合性の液晶性モノマーの末端二重結合が解けらてなる構造に相当する)と、ポリマーネットワーク52と、光開始剤53と、光エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質54(例えば、四酸化三鉄ナノ粒子)と、を含む。
【0046】
ポリマー層が2層ある場合、該2層のポリマー層は、それぞれに緑色光と紫色光を反射、または、それぞれに黄色光と青色光を反射する。
【0047】
本発明の少なくとも1つの実施例は、さらに、
図5に示すような表示装置を提供する。
図5は、本発明の1つの実施例に係る表示装置の構造概略図である。該表示装置は、表示パネルおよび上記のいずれか1つのグレーティングを備え、前記グレーティングは、表示パネルの出光側に位置されるように配置される。液晶表示パネルを例として、表示パネルは、第3基板11と、第4基板12と、第3基板11と第4基板12との間に位置された液晶層13と、を含んでおり、例えば、第3基板11はアレイ基板であり、第4基板12はカラーフィルタ基板であり、グレーティングは表示パネルの出光側に位置され、グレーティングの第1基板21は貼合によって表示パネルと結合される。
図5に示された表示装置は、上偏光板15と下偏光板14をさらに含み、上偏光板15はグレーティングの第2基板22上に位置され、下偏光板14は表示パネルの第3基板11下に位置される。また、上偏光板15は、
図5に示された位置に限定されず、グレーティングの第1基板21と表示パネルの第4基板12との間に位置されてもよい。
【0048】
本発明の実施例に係る表示装置は、上記のグレーティングを採用するため、小さい厚さを有し、2D表示をするときの光透過損失が減少される。
【0049】
本発明の1つの実施例において、該表示装置は、該グレーティングにおける第1透明電極および第2透明電極の間に電圧を印加させるための駆動回路をさらに備える。該表示装置の駆動回路が第1透明電極と第2透明電極との間に電圧を印加させると、電磁気特性を有する四酸化三鉄ナノ粒子は、そのナノ効果によって電磁エネルギーを熱エネルギーに変換させ、所在するポリマー層を加熱させてコレステリック相を示すため、3D表示を実現できる。
【0050】
該表示装置の形式には限定がなく、例えば、電子ペーパー、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、デジタルフォトフレーム、携帯電話、タブレットなどのいずれか表示機能付き製品または部品であってもよい。
【0051】
図6は本発明の1つの実施例に係る表示装置の構造概略図であり、グレーティングの第1基板は表示パネルの出光側の下地基板16である。
【0052】
表示装置の厚さをさらに減少させるために、表示パネルの出光側の下地基板16を直接にグレーティングの第1基板とする。すなわち、
図6に示された表示装置になる。液晶表示パネルを例として、該表示装置には上から順次に上偏光板15、第2基板22、第2透明電極24、ポリマー層25、第1透明電極23、下地基板16、液晶層13、第3基板11、および下偏光板14が含まれ、下地基板16は一般にカラーフィルタ基板における下地基板であり、第3基板11は一般にアレイ基板である。
【0053】
表示パネルの出光側の下地基板16をグレーティングの第1基板として直接に採用、すなわち、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有する混合物層を液晶表示パネルの出光側の下地基板16上に直接に塗布した場合、混合物層の各層の厚さは0.2〜1.0μmだけであり、表示装置の厚さをさらに減少できる。グレーティングの厚さが大幅に減少したので、3D表示パネルにおける光透過率の影響が減少され、表示効果が向上する。
【0054】
本発明の少なくとも1つの実施例は、グレーティングの製造方法をさらに提供する。
図7に示すように、
図7は本発明の実施例に提供されたグレーティングの製造方法のフローチャートである。
該方法は、
第1および第2基板上に、グレーティング構造を有しかつ対応して設置される第1および第2透明電極をそれぞれ形成するステップ101と、
前記第1透明電極上にポリマー層を形成するステップ102と、
前記第1および第2基板をセルに組み立てるステップ103と、を含み、
前記ポリマー層には電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質、および液晶エラストマーが含有され、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加された場合、前記ナノオーダーの物質が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換することで、前記ポリマー層はコレステリック相を示して全波長の光を反射しており、前記第1透明電極と前記第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、前記ポリマー層は透明状態になる。
【0055】
本実施態様において、製造されたグレーティングの構造は、
図1のように、上から順次に第2基板22、第2透明電極24、ポリマー層25、第2透明電極23、および第2電極21を有する。そのうち、第2透明電極24と、ポリマー層25と、第1透明電極23とは、製造する際に同じマスクを用ることで、これら3つの層において保留部分が互いに対応される。つまり、
図1に示された積層構造を形成する。
【0056】
勿論、厚さをさらに減少させるために、表示パネルの出光側の下地基板上に、グレーティング構造を有する第1透明電極を直接に形成してから、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有するポリマー層を少なくとも2層形成し、その後、第2透明電極を有する第2基板を該ポリマー層上に覆ってもよい。
【0057】
本発明の1つの実施例において、ステップ102で前記第1透明電極上にポリマー層を形成する。該ポリマー層が2層存在する場合、その製造工程は、
前記第1透明電極上に、前記シロキサン側鎖型液晶エラストマー、前記ナノオーダーの物質、紫外線重合性の液晶性モノマーおよび光開始剤が含有される混合物層を塗布するステップaと、
前記混合物層を設定の第1温度に加熱することで、前記シロキサン側鎖型液晶エラストマーが設定の第1ピッチを形成するステップbと、
紫外線が、前記第1透明電極に対応される開口を有するマスクを通して、設定のピッチが形成された混合物層に照射されることで、紫外線重合性の液晶性モノマーはポリマーネットワークを形成して前記第1ピッチを安定させ、第1波長の光を反射でき、前記混合物層を室温まで冷却し、エッチングによって1層目のポリマー層を形成するステップcと、
第1ピッチを有する1層目のポリマー層が形成された前記第1透明基板上に2層目の混合物層を塗布するステップdと、
ステップbでの第1温度を第2温度に調整し、ステップcを繰り返して、第2ピッチを有しかつ第2波長の光を反射できる2層目のポリマー層を形成するステップeと、
を含み、そのうち、ステップeにおいて、
シロキサン側鎖型液晶エラストマーは、2層目の混合物層を設定の第2温度まで加熱することで、設定の第2ピッチを形成しており、紫外線が、前記第1透明電極に対応する開口を有するマスクを通して、設定のピッチが形成された2層目の混合物層に照射されることで、紫外線重合性の液晶性モノマーはポリマーネットワークを形成して前記第2ピッチを安定させ、第2波長の光を反射でき、2層目の混合物層を室温まで冷却し、エッチングによって2層目のポリマー層を形成する。
【0058】
本発明の1つの実施例において、前記ステップbでの第1温度を調整し、前記ステップa〜cを少なくとも1回繰り返して、少なくとも3層の、異なるピッチを有するポリマー層を取得する。
【0059】
本実施態様において、3層およびそれ以上のポリマー層を製造する場合、前記ステップbでの第1温度を調整し、前記ステップa〜cを少なくとも1回繰り返す。3層のポリマー層を例にすると、該サイクルを1回実行して2層目のポリマー層上に位置される3層目のポリマー層を取得する。すなわち、加熱温度を第3温度に調整して第3ピッチを取得し、応じて第3反射波長を取得する。4層のポリマー層を例にすると、該サイクルを2回実行して2層目のポリマー層上に位置される3層目のポリマー層と、3層目のポリマー層上に位置される4層目のポリマー層とを取得する。すなわち、まず、加熱温度を第3温度閾値に調整して第3ピッチを取得し、応じて第3反射波長を取得してから、加熱温度を第4温度に調整して第4ピッチを取得し、応じて第4反射波長を取得して、4層目のポリマー層を取得する。
【0060】
該実施態様において、2層のポリマー層の形成を例にすると、まず、第1透明電極上に、上記の成分を含有する混合物層を1層塗布し、その後、温度T
1まで加熱して設定のピッチP
1を混合物層に形成させてから、マスクを用いて混合物層に紫外線を照射することで、照射された紫外線重合性の液晶性モノマーを重合させてポリマーネットワークを形成し、これにより、ピッチP
1を安定させる。その後、室温まで冷却してエッチングによって第1透明電極上に位置される1層目のポリマー層を形成する。続いて、1層目のポリマー層上に、上記の成分を含有する混合物層をさらに1層塗布し、その後、温度T
2まで加熱してピッチP
2を混合物層に形成させてから、同じマスクを用いて混合物層に紫外線を照射することで、照射された紫外線重合性の液晶性モノマーを重合させてポリマーネットワークを形成し、これにより、ピッチP
2を安定させる。次に、室温まで冷却してエッチンによって1層目のポリマー層上に位置される2層目ポリマー層を形成する。
【0061】
温度T
1および温度T
2は、混合物層がコレステリック相を示す温度であり、30〜120℃であってもよい。得られた2層のポリマー層が全波長の光を反射できれば、温度T
1および温度T
2の具体的数値には限定がない。ピッチP
1およびピッチP
2の具体的数値は限定されず、ピッチP
1が150〜5000nmであってもよく、ピッチP
2が150〜5000nmであってもよい。
【0062】
ポリマー層のピッチは、ポリマー層の反射波長を決める。そのため、混合物層における各成分の含有量が一定である場合、加熱温度の調整によってピッチの大きさを調整できる。また、加熱温度が一定になると、混合物層におけるシロキサン側鎖型液晶エラストマーの含有量を調整することでピッチの大きさを調整できる。ポリマー層の反射波長は、この2つの調整手段によって変わる。
【0063】
ポリマー層各層の製造ステップは下記の通りである。まず、混合物を第1透明電極上に塗布してから、第1透明電極と同じパターンを有するマスクを用いて紫外線を照射する。すなわち、第1透明電極に対応する部分が紫外線に照射されるものの、第1透明電極の間の隙間部分がマスクに覆われで、この隙間部分は紫外線に照射されない。これで、隙間部分の紫外線重合性の液晶性モノマーには架橋反応が発生しなく、第1透明電極に対応する位置での紫外線重合性の液晶性モノマーのみに架橋結合によりポリマーネットワークを形成する。その後、溶剤によりエッチングを行う。すなわち、溶剤を用いて紫外線に照射されない混合物を除去する。溶剤は、例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどの有機溶剤である。
【0064】
各層の混合物層には、質量分率が69〜96.9%であるシロキサン側鎖型液晶エラストマー、質量分率が1〜10%であるナノオーダーの物質、質量分率が2〜20%である紫外線重合性の液晶性モノマー、および質量分率が0.1〜1%である光開始剤が含有される。
【0065】
グレーティングにおける2層のポリマー層を例として、該グレーティングの原理を説明する。
図8aは電圧が印加されていないときの、グレーティングにおけるポリマー層の構造概略図である。室温で、電圧が印加されていない場合、ポリマー層25はガラス質を示し、このとき、グレーティングが透明状態になり、2D表示を行う。一方、電圧が印加された場合、ポリマー層25における四酸化三鉄ナノ粒子が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換して、ポリマー層25の温度を上昇させる。これで、シロキサン側鎖型液晶エラストマーがコレステリック相に変換して、紫外線重合によって固定されたピッチになり、可視域において一定の波長の光を反射する。
図8bは、電圧が印加されたときのグレーティングにおけるポリマー層の構造概略図である。そのうち、1層目のポリマー層はピッチがP
1で、可視光線λ
1を反射でき、2層目のポリマー層はピッチがP
2で、可視光線λ
2を反射できる。温度や、混合物層における各成分比に対する調整などによって、2層のポリマー層は可視域全域の光を反射でき、グレーティングとして機能して、3D表示を実現する。
【0066】
ポリマー層のコレステリック相が可視域全域の光を反射できれば、ポリマー層は、3層、4層、5層、またはそれ以上の層を有する構造であってもよい。ポリマー層は、例えば、3層あり、この3層のポリマー層が、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ反射する。例えば、表示装置は一般的にRGBの3つの基本色を合成して白色光に生成し、表示を行う。ポリマー層が赤色光、緑色光、および青色光を反射できると、このポリマー層は可視域全域の光を反射でき、グレーティングとして3D表示を実現できる。表示装置において他の基本色を合成して白色光に生成することによって表示することは勿論であろう。ポリマー層がこれらの基本色をすべて反射できれば、グレーティングとして3D表示を実現できる。
【0067】
以下、幾つかの実施例を例に挙げて本発明に関る実施態様を説明するが、本発明の実施例は下記の実施例に限定されない。下記の実施例において、ナノオーダーの物質として四酸化三鉄ナノ粒子を用いて、本発明に係る実施例に提供された表示装置を製造する。
(実施例1)
3D液晶表示装置の製造ステップは、下記の通りである。
ステップ1
慣用方法で液晶表示パネルを製造する。
ステップ2
液晶表示パネルの出光側の下地基板上に、エッチングによってグレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。例えば、まず、下地基板の基板面を覆う透明電極層を製造し、続いて透明電極層の一部をエッチングして、グレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。
ステップ3
図2に示された、質量比が5:4であり、n=4、k=4である、架橋剤(ビナフトール)bと液晶性モノマーaを、m=6のメチルハイドロジェンポリシロキサンcにグラフトして、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを形成しており、得られたシロキサン側鎖型液晶エラストマー、四酸化三鉄ナノ粒子、紫外線重合性の液晶性モノマー、および光開始剤を、89.75%、5%、5%、および0.25%の質量分率で均一に混合させて、混合物を取得する。
ステップ4
第1透明電極上に、厚さが0.5μmである、ステップ3で得られた混合物を1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度65℃まで加熱して混合物層に490nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が680nmである可視光線、すなわち黄色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋反応によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって第1透明電極上に位置される1層目のポリマー層を取得する。
ステップ5
1層目のポリマー層上に、厚さが0.3μmである、ステップ3で得られた混合物をさらに1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度80℃まで加熱して混合物層に290nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が460nmである可視光線、すなわち青色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋結合によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって1目層のポリマー層上に位置される2層目のポリマー層を取得する。
ステップ6
2層目のポリマー層上に、第2透明電極付きの第2基板を覆う。第2透明電極は、2層目のポリマー層に向き、かつ2層目のポリマー層に対応する。すなわち、第2透明電極、2層のポリマー層、および第1透明電極が積層され設置されることで、グレーティングを有する表示パネルを製造し、バックライトモジュールと共に3D表示装置に組み立てられる。
【0068】
室温で、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有する2層のポリマー層がガラス質を示し、3次元グレーティングが透明状態になる。このときは、2D表示を行う。一方、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加された場合、ポリマー層における、電磁気特性を有する四酸化三鉄ナノ粒子が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換してポリマー層の温度を上昇させ、シロキサン側鎖型液晶エラストマーがコレステリック相に変換して、紫外線重合によって固定されたピッチになる。すなわち、1層目のポリマー層が黄色光を反射し、2層目のポリマー層が青色光を反射し、両者が可視域全域の光を反射することで、グレーティングとして3D表示を行う。従来技術での厚さが数十ミリメートルである液晶グレーティングに対して、1層目のポリマー層の厚さは0.5μmであり、2層目のポリマー層の厚さは0.3μmであり、グレーティングの厚さが大幅に減少する。
【0069】
(実施例2)
3D液晶表示装置の製造ステップは、下記の通りである。
ステップ1
慣用方法で液晶表示パネルを製造する。
ステップ2
表示パネルの出光側の下地基板上に、エッチングによってグレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。例えば、まず、下地基板の基板面を覆う透明電極層を製造し、続いて透明電極層の一部をエッチングして、グレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。
ステップ3
図2に示された、質量比が3:2であり、n=6、k=6である、架橋剤(ビナフトール)bと液晶性モノマーaを、m=4のメチルハイドロジェンポリシロキサンcにグラフトして、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを形成しており、得られたシロキサン側鎖型液晶エラストマー、四酸化三鉄ナノ粒子、紫外線重合性の液晶性モノマー、および光開始剤を、81.5%、8%、10%、および0.5%の質量分率で均一に混合させて、混合物を取得する。
ステップ4
第1透明電極上に、厚さが0.4μmである、ステップ3で得られた混合物を1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度70℃まで加熱して混合物層に340nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が540nmである可視光線、すなわち緑色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋反応によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって第1透明電極上に位置される1層目のポリマー層を取得する。
ステップ5
1層目のポリマー層上に、厚さが0.6μmである、ステップ3で得られた混合物をさらに1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度85℃まで加熱して混合物層に265nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が420nmである可視光線、すなわち紫色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋反応によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって1目層のポリマー層上に位置される2層目のポリマー層を取得する。
ステップ6
2層目のポリマー層上に、第2透明電極付きの第2基板を覆って、グレーティングを有する表示パネルを得る。第2透明電極は、2層目のポリマー層に向き、かつ2層目のポリマー層に対応する。すなわち、第2透明電極、2層のポリマー層、および第1透明電極が積層され設置され、且つ、バックライトモジュールと共に3D表示装置に組み立てられる。
【0070】
室温で、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有する2層のポリマー層がガラス質を示し、3次元グレーティングが透明状態になる。このときは、2D表示を行う。一方、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加された場合、ポリマー層における、電磁気特性を有する四酸化三鉄ナノ粒子が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換してポリマー層の温度を上昇させ、シロキサン側鎖型液晶エラストマーがコレステリック相に変換して、紫外線重合によって固定されたピッチになる。すなわち、1層目のポリマー層が緑色光を反射し、2層目のポリマー層が紫色光を反射し、両者が可視域全域の光を反射することで、グレーティングとして3D表示を行う。従来技術での厚さが数十ミリメートルである液晶グレーティングに対して、1層目のポリマー層の厚さは0.4μmであり、2層目のポリマー層の厚さは0.6μmであり、グレーティングの厚さが大幅に減少する。
【0071】
(実施例3)
3D液晶表示装置の製造ステップは、下記の通りである。
ステップ1
慣用方法で液晶表示パネルを製造する。
ステップ2
表示パネルの出光側の下地基板上に、エッチングによってグレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。例えば、まず、下地基板の基板面を覆う透明電極層を製造し、続いて透明電極層の一部をエッチングして、グレーティング構造を有する第1透明電極を形成する。
ステップ3
図2に示された、質量比が1:1であり、n=8、k=8である、架橋剤(ビナフトール)bと液晶性モノマーaを、m=10のメチルハイドロジェンポリシロキサンcにグラフトして、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを形成しており、得られたシロキサン側鎖型液晶エラストマー、四酸化三鉄ナノ粒子、紫外線重合性の液晶性モノマー、および光開始剤を、85.6%、6%、8%、および0.4%の質量分率で均一に混合させて、混合物を取得する。
ステップ4
第1透明電極上に、厚さが0.8μmである、ステップ3で得られた混合物を1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度70℃まで加熱して混合物層に440nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が630nmである可視光線、すなわち黄色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋反応によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって第1透明電極上に位置される1層目のポリマー層を取得する。
ステップ5
1層目のポリマー層上に、厚さが0.5μmである、ステップ3で得られた混合物をさらに1層塗布して混合物層を取得しており、この混合物層を温度80℃まで加熱して混合物層に280nmのピッチを形成する。該混合物層は、波長が450nmである可視光線、すなわち青色光を反射できる。マスク(マスクの開口は第1透明電極に対応)を通して混合物層に強度が5mw/cm
2である紫外線を照射することで、混合物層中の紫外線重合性の液晶性モノマーが架橋反応によりポリマーネットワークを形成して、このときのピッチを安定させる。その後、室温まで冷却して、エッチングによって1目層のポリマー層上に位置される2層目のポリマー層を取得する。
ステップ6
2層目のポリマー層上に、第2透明電極付きの第2基板を覆って、グレーティングを有する表示パネルを得る。第2透明電極は、2層目のポリマー層に向き、かつ2層目のポリマー層に対応する。すなわち、第2透明電極、2層のポリマー層、および第1透明電極が積層され設置され、且つ、バックライトモジュールと共に3D表示装置を組み立てる。
【0072】
室温で、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加されていない場合、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有する2層のポリマー層がガラス質を示し、3次元グレーティングが透明状態になる。このときは2D表示を行う。一方、第1透明電極と第2透明電極との間に電圧が印加された場合、ポリマー層における、電磁気特性を有する四酸化三鉄ナノ粒子が電磁エネルギーを熱エネルギーに変換してポリマー層の温度を上昇させ、シロキサン側鎖型液晶エラストマーがコレステリック相に変換して、紫外線重合によって固定されたピッチになる。すなわち、1層目のポリマー層が黄色光を反射し、2層目のポリマー層が青色光を反射し、両者が可視域全域の光を反射することで、グレーティングとして、3D表示を行う。従来技術での厚さが数十ミリメートルである液晶グレーティングに対して、1層目のポリマー層の厚さは0.8μmであり、2層目のポリマー層の厚さは0.5μmであり、グレーティングの厚さが大幅に減少する。
【0073】
従来の液晶グレーティングに対して、本発明の実施例に係るグレーティングを採用すると、表示パネルの出光面上に直接に貼り付けることができ、または、表示パネルの出光側の下地基板を該グレーティングの第1基板として直接に採用できる。すると、表示装置の厚さを減少できる。本発明の実施例に用いられる、シロキサン側鎖型液晶エラストマーを含有するポリマー層が、さらに、電磁エネルギーを熱エネルギーに変換するナノオーダーの物質を含有するため、電圧が印加された場合、ポリマー層の温度が上昇して、シロキサン側鎖型液晶エラストマーがガラス質からコレステリック相に変換して少なくとも2層のポリマー層のコレステリック相の液晶性エラストマーが可視域全域の光を反射できる。そのため、バリアフェンス式グレーティングの構造を実現でき、3D表示を行う。シロキサン側鎖型液晶エラストマーが温度に応じて可視域全域の光を反射できるため、加熱温度または混合物の成分の含有量に対する調整によって異なるポリマー層を取得して、可視域全域の光を反射でき(例えば、同じ温度の場合、混合物層におけるシロキサン側鎖型液晶エラストマーの含有量が異なると、形成されたポリマー層のピッチが異なり、反射波長も応じて異なる)、さらに、ポリマー層の厚さおよび反射波長を一層よく制御できる。
【0074】
上述した実施態様は本発明に係る例示的なものであり、本発明の保護範囲はこれらのものに限定されず、特許請求の範囲により決定される。
【0075】
本出願は、2015年3月20日に出願された中国特許出願第201510125758.2号に基づく優先権を主張し、この中国特許出願に開示された内容は本出願の一部として本明細書に組み込まれた。