(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6629290
(24)【登録日】2019年12月13日
(45)【発行日】2020年1月15日
(54)【発明の名称】蓋部を用いる電気的デバイスの搭載方法、および、当該方法における使用に適した蓋部
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20200106BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20200106BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20200106BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20200106BHJP
【FI】
H01L23/48 S
H01L21/60 321E
H01L23/02 J
H01L23/02 C
H01L23/12 501S
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-503064(P2017-503064)
(86)(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公表番号】特表2017-515317(P2017-515317A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015056912
(87)【国際公開番号】WO2015150335
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】102014206601.8
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ノラ ブッシェ
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シュトロギース
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヴィルケ
【審査官】
庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−031724(JP,A)
【文献】
特開2014−017485(JP,A)
【文献】
特開2014−011236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 21/60
H01L 23/02
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的なデバイス(12)を基板(13)上に搭載する方法であって、
前記デバイスは、前記基板側の下面(26)と、当該下面(26)とは反対側の上面(27)とを有し、
前記デバイス(12)の前記下面(26)を、前記基板(13)によって提供されるモジュールに機械的に結合し、
コンタクトパターン部(16)を介して、前記デバイス(12)の上面(27)と前記基板(13)の搭載面(23)とを機械的に結合し、
接合時に生じる複数の接合結合部は、少なくとも2つの異なる接合レベルに位置しており、
前記コンタクトパターン部(16)は、蓋部(11)の内側面において延在する導体路の形態であり、
搭載時に、
前記蓋部(11)を前記基板(13)の搭載面(23)に載置し、前記コンタクトパターン部(16)と当該基板(13)との機械的コンタクトを、当該基板(13)の搭載面(23)により成される第1の接合レベル(28)において形成し、
前記蓋部(11)は前記デバイス(12)を覆い、
前記蓋部(11)の内側面に、前記デバイスの上面(27)の高さにある第2の接合レベル(29)において、前記コンタクトパターン部(16)と当該デバイス(12)との電気的コンタクトが形成され、
先に前記基板(13)と前記デバイス(12)と前記蓋部(11)とを組み合わせてから、その後に、
前記第1の接合レベル(28)と前記第2の接合レベル(29)とにおいて前記デバイス(12)に前記接合結合部(35)を同一の作業工程で、昇温により、または昇温と昇圧とにより作製し、
前記蓋部(11)を前記基板(13)に載置する前に、前記コンタクトパターン部(16)のコンタクト面に付加材料(17)を設け、
前記接合結合部の作製を、拡散はんだまたは焼結により行う、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
先に、第3の接合レベル(30)を成す、前記搭載面(23)とは反対側の裏面(24)で、前記基板(13)を部品(31)と組み合わせてから、その後に、
前記第1の接合レベル(28)と前記第2の接合レベル(29)とにおいて前記デバイス(12)に前記接合結合部(35)を作製する作業工程で、前記部品(31)と前記基板(13)との結合部も作製する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記蓋部(11)は外部において、前記基板に対して平行に延在する平坦な面を有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記基板(13)における搭載時に前記デバイス(12)と係合する少なくとも1つの接合面(15)が、前記内側面に設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記接合面(15)を前記電気的なデバイス(12)の上面(27)と係合させ、前記接合面(15)と前記上面(27)との係合により生じるコンタクト面は、前記電気的コンタクト外に位置する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
基板(13)と、当該基板(13)上に搭載された少なくとも1つのデバイス(12)とを備えた電気的なモジュール用の蓋部であって、
前記基板上に載置できる支持面(21)と、
前記デバイスを収容できる空洞と、
を有し、
前記蓋部の内側面において延在するコンタクトパターン部(16)が設けられており、当該コンタクトパターン部(16)は前記支持面(21)から前記空洞(22)内まで繋がっており、
前記コンタクトパターン部(16)の端部は、それぞれ異なるレベルに位置し、当該端部には、付加材料(17)が被着されており、前記支持面(21)は、前記付加材料(17)によって実現されており、
前記付加材料(17)は、拡散はんだまたは焼結材料から成り、
前記蓋部は、異なるレベルの複数の面を有する1つの部品として構成されている、
ことを特徴とする蓋部。
【請求項7】
前記蓋部はLTCC部品またはMID部品として構成されている、請求項6記載の蓋部。
【請求項8】
前記支持面(21)は前記蓋部(11)の縁部によって形成されている、請求項6または7記載の蓋部。
【請求項9】
前記蓋部(11)の外側面は平坦である、請求項6から8までのいずれか1項記載の蓋部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板側の下面と、基板とは反対側の上面とを有する電気的デバイスを、基板上に搭載する方法に関する。当該方法では、デバイスの下面を、基板によって提供されるモジュールと機械的に結合する。その後、デバイスの上面をコンタクトパターン部と機械的に結合させる。その接合時に生じる複数の接合結合部は、少なくとも2つの異なる接合レベルに位置する。
【0002】
本発明はさらに、基板と、当該基板上に搭載された少なくとも1つのデバイスとを備えた電気的モジュール用の蓋部にも関する。蓋部は、基板上に載置することができる支持面を有する。蓋部は、基板上に載置することができる支持面を有する。さらに蓋部は、デバイスを収容することができる空洞も有する。デバイスは、その上面と、基板上に搭載される下面との双方に、コンタクトを備えている。よって、これらのコンタクトは、それぞれ異なる接合レベルに位置する。
【0003】
接合レベルは、基板上に搭載されてコンタクトされるときに、電子的デバイスのコンタクトがそれぞれ異なる平面に位置することによって定まるものである。ここで「平面」との文言は、技術的な意味で解釈されるものであり、数学的な意味で解釈されるものではない。平面ひいてはこれに関連する接合レベルは、コンタクト対象の複数のデバイスの所定の接合結合がなされる領域を定めるものである。このように複数のデバイスを上下に配置することにより、複数の接合レベルも有利には上下に位置し、特に、互いに平行な向きとなる。
【0004】
電子的デバイスを基板上に搭載する手法は公知である。かかる搭載手法は、パワーエレクトロニクスの電子的モジュールの実装に際しても用いられる。たとえば独国特許出願公開第10062108号明細書(DE 100 62 108 A1)に、焼結層を介して電子パワーデバイスを基板に結合することができるパワーモジュールを構成できる旨が記載されている。この基板は、パワーエレクトロニクスにおいて通常使用されるDCBセラミック基板である(「DCB」とは「銅直接接合(Direct Copper Bond)」の略称である)。焼結層を用いてパワーデバイスの上面を、たとえば、放熱器を成す追加的な熱容量に接続することができる。また、基板は下面でも同様に、焼結層を用いて他の放熱器に結合することもできる。
【0005】
独国特許出願公開第102007047698号明細書(DE 10 2007 047 698 A1)には、特別なツールを用いて電子的モジュールの焼結結合を成すことができることが記載されている。かかるツールは、焼結処理中に、焼結すべき部品に圧力を加えることができるように、焼結すべき部品に接触する加圧面を有する。ツールにおける誤差補償により、誤差に起因して、焼結されるモジュールの製造精度が低くなっていても、加えられる圧力が均等になることが保証される。この焼結処理では、圧力形成の他にさらに、規定された時間にわたって所定の焼結温度に達し続けていることが必要である。焼結結合に代えて、はんだ結合を行うことも可能である。
【0006】
米国特許出願公開第2013/0201631号明細書(US 2013/0201631 A1)には、モジュールにおいて既に搭載された接合結合部が、現在実施中の熱処理によって溶融状態に戻らないように、焼結プロセスに必要な温度を選択することに留意すべき旨が記載されている。このことは、当該結合プロセス前に既になされた部品結合部が有する結合材料のプロセス温度(軟化温度、焼結温度、融点)が、十分なセーフティ間隔をもって、現在実施中のプロセス温度を上回ることにより達成される。このようにして、既に形成された接合結合部の完全性は、現在進行中の結合プロセスにより脅かされることはない。
【0007】
デバイスを基板上に搭載した後は、通常はさらに、適切なコンタクトパターン部を介してこのデバイスを基板にコンタクトさせなければならない。その際には、デバイスの上面にあるコンタクトが、これに対応する、基板上のコンタクトに結合される。こうするためには、周知のボンディングワイヤの他に、米国特許出願公開第2012/0106109号明細書(US 2012/0106109 A1)には金属導体パターン部を使用することも可能である旨が記載されている。この金属導体パターン部はたとえば、リードフレームの一部とすることができる。適切に曲げられているこの導体パターン部は有利には、焼結またははんだにより、該当のコンタクト面に結合される。他の一手段として、フレックスフィルムに導体パターンをたとえば印刷したものによって、コンタクトパターン部を実現する手段もある。独国特許出願公開第102009016112号明細書(DE 10 2009 016 112 A1)には、かかるフレックスフィルムも、焼結結合を用いてデバイスの上面および基板の搭載面の該当のコンタクト面と結合できる旨が記載されている。
【0008】
パワーエレクトロニクス装置の構成において実現される電気出力により、パワーエレクトロニクスモジュールには大きな熱負荷および電気的負荷がかかるので、電気的接続部および他の接合結合部は高い信頼性を有していなければならない。まさに焼結結合が、かかる目的のために格別に適している。というのも、焼結結合部の熱的安定性と接合結合部の欠陥無しの形成とを保証できるからである。しかし、焼結結合によりパワーエレクトロニクスモジュールの実装を行うということは、たとえばはんだと比較して、現在のところ、製造にある程度の追加コストがかかることを意味する。
【0009】
本発明の課題は、基板上に電気的デバイスを搭載する方法であって、これを簡略化し、またパワーエレクトロニクスデバイスの搭載も可能とする方法を実現することである。さらに本発明の課題は、冒頭に述べた形式の蓋部であって、上述の改善された方法で用いることができる蓋部を実現することでもある。
【0010】
上記課題は、冒頭に述べた方法については、本発明では、コンタクトパターン部を導体路の形態で蓋部の内側面に形成することにより解決される。搭載時にはこの蓋部を基板の搭載面に載置し、コンタクトパターン部と基板との電気的コンタクトは、当該基板の搭載面により成される第1の接合レベルにおいて形成される。蓋部はデバイスを覆い、蓋部の内側面には、デバイスの上面の高さにある第2の接合レベルにおいて、コンタクトパターン部とデバイスとの電気的コンタクトが形成される。これは具体的には、コンタクトパターン部のコンタクト面が、基板の搭載面の高さにある第1の接合レベルと、デバイスの上面の高さにある第2の接合レベルとにそれぞれ設けられている、ということである。これにより、コンタクトパターン部は2つの異なる接合レベルを接続し、これらの接合レベルは、有利には、たとえばボンディングワイヤまたは露出したリードフレームを用いずに、搭載ステップにおいて蓋部を載置することにより高信頼性で接合することができる。このようにして、複数の異なる接合レベルにあるコンタクト面のコンタクト時の製造誤差を小さくすることもできる。というのも、これらのコンタクト面は、比較的簡単かつ正確に製造できる部品すなわち蓋部に、その製造時に既に組み込んでおくことができるからである。よって、独立した個別のコンタクトパターン部を後で実装する必要はなくなる。コンタクトパターン部の位置決めは有利には、基板上における蓋部の位置決めと同時に行われる。
【0011】
本発明の一実施形態では、基板、デバイス、および、コンタクトパターン部を備えた蓋部が、まず最初に相互に、達成すべき配置構成で位置決めされる。その後に初めて、デバイスに接合結合部を、とりわけ電気的結合部を、少なくとも2つの接合レベルにおいて同一の作業工程で昇温によって、または昇温と昇圧とによって作製しなければならない。換言すると本発明では、電子的モジュールを基板に実装するための方法は、2つの規定されたプロセス段階で実施しなければならない。第1のプロセス段階では、基板によって提供されるモジュールの搭載すべきすべての部品を相互に位置決めする。ここで接合結合部の形成にもなるが、この接合結合部は未だ完成していない。第2の製造段階において、接合結合部を仕上げる。こうするためには、適切な接合法を適用する必要があり、その際には、形成すべき機械的結合の方式に応じて、昇温(たとえばはんだの場合)、または昇温と昇圧(たとえば拡散はんだまたは焼結の場合)を行う必要がある。有利には、これら複数の接合結合部を一作業工程で作製することができる。こうするためには、作製すべきすべての接合結合部を、この1つの作業工程の場合において設定されるプロセスパラメータに合わせて設計する必要がある。ここで、所定の温度レベルに達する。さらに、結合部の少なくとも一部に、追加的に圧力を加えることができる。実際に選択される結合方式と、付加材料が必要な場合にはこの付加材料とは、必ずしもすべての接合結合部において正確に同一である必要はない。重要なのは、どの結合方式およびどの材料であっても、プロセスパラメータが互いに合わせて調整されていること、および、これによってすべての接合結合部を一作業工程で同時に形成できることのみである。
【0012】
上述のようにすべての接合結合部が同時に形成されることにより、とりわけ、特に電気的な結合部が複数の異なる接合レベルに位置するコンタクトパターン部を実装することも可能になるという利点が得られる。このようにして、接合結合部を形成するために追加の作業工程を要することなく、これら複数の接合レベルを接続することができる。有利にはこのことは、デバイスの下面が、基板の搭載面によって定まる第1の接合レベルに位置し、当該デバイスの上面が第2の接合レベルに位置することにより達成される。第1の接合レベルは、通常は基板によって定まる平面によって定義される。この平面上(これは、たとえば筐体等の平坦でない基板の場合、必ずしも数学的な意味での平坦である必要はない)には、基板上の電気的デバイスの各下面とそれぞれコンタクトする複数の接合結合部の群が位置する。かかる場合、デバイスの上面は、電気的コンタクト面を有している場合、当該電気的デバイスの空間的な高さ寸法によって第1の接合レベルから離隔している第2の接合レベルを定義する。各電気的デバイスの高さが異なることにより、第2の接合レベルが一平面内に位置することなく、デバイスの各上面のすべてのコンタクト面が全体として、第2の接合レベルを定義することが可能である。
【0013】
複数の電気的デバイスを上下に積層する場合には、これによって、積層体の各「階」に別の接合レベルが生じ、電気的接続時にこの別の接合レベルを適切なコンタクトパターン部により、場合によっては接続しなければならない。各電気的デバイスのコンタクトがそれぞれ異なる接合レベルに割り当てられるように電気的デバイスを配置することにより、電気的モジュールの実装を容易化することができ、後で有利には電気的な結合部をすべての接合レベルにおいて一作業工程で作製するため、デバイスおよびコンタクトパターン部をレベルごとに事前搭載できる(すなわち、相互に位置決めできる)という利点が得られる。
【0014】
本発明の他の一実施形態では、基板は、搭載面とは反対側の裏面で、第3の接合レベルを成すコンタクト面を形成する。この接合レベルでは、部品が配置される。次に、本発明の手法で、まさに、電気的デバイスにおいて第1の接合レベルと第2の接合レベル(および、場合によっては他の接合レベル)に接合結合部を作製する作業工程で、昇温により、または昇温と昇圧とにより、部品と基板との間に接合部を作製する。このことにより、実装方法がさらに簡略化するという利点が得られる。結合部の作製時に一作業工程において考慮できる異なる接合レベルが多くなるほど、実装プロセスの簡略化は大きくなり、これにより最終的には、実装プロセスの経済性にも好影響が及ぼされる。
【0015】
基板の裏面に搭載される部品は、たとえば、パワーエレクトロニクスモジュールにおいて損失熱を排出するための放熱器とすることができる。この放熱器は、複数の電子的モジュールを共に実装するために用いられる基体として構成することもできる。他の一手段としては、基板の両面に電気的デバイスを装着することも可能である。かかる場合、冷却はたとえば、基板の冷却路によって行うことができる。
【0016】
本発明の特殊な一実施形態では、すべての接合結合部を同一の接合法により作製する。既に述べたように、接合結合部ごとに異なる接合法を選択することも可能である。しかし、選択された複数の異なる接合法を、所定のプロセス条件下(圧力、温度)で行えるようにするとの条件を満たす必要がある。とりわけ温度は、実装すべきすべての電気的モジュールにおいて等しくなければならない。とりわけ温度は、実装すべき電気的モジュール全体において等しくなければならない。圧力は、たとえば複数の接合工具を用いることにより、または、たとえばばね剛性が異なる複数のばね機構によって、接合すべき構成体の各異なる構成要素ごとに異なる製造圧を加える1つの接合工具を用いることにより、ばらつくことが可能である。すべての電気的結合部を同一の接合法で作製する場合でも、当該条件は成立する。特に有利には、選択された接合法(とりわけ拡散はんだまたは焼結)において同一の付加材料を選択することにより、モジュール全体について接合法に係る製造条件が画一的となるようにすることができる。しかし、複数の付加材料を選定することも可能である。ただし、これらを上述のように所定の接合条件下で作製できる場合に限る。
【0017】
本発明の他の一実施形態では、接合結合部の他に、部品(たとえば放熱器)と基板(裏面)との間の結合部も、当該選択された接合法により作製する。こうすることにより、一作業工程で基板の搭載面の接合結合部と共に作製できるという上述の利点が、部品と基板との間の結合部の接合にも及ぶことができる。もちろん、基板の裏面に搭載される部品が電気的部品である場合には、ここの結合部も電気的結合部とすることができる。
【0018】
本発明のさらに他の実施形態では、接合法として拡散はんだまたは焼結を使用する。これらの手法は有利には、パワーエレクトロニクスデバイスを実装する場合に特に適している。というのも、このようにして形成された結合部の欠陥密度は低く、かつ熱的安定性が高いからである。拡散はんだのプロセスフローは、焼結に類する。付加材料は、接合すべき部品間の領域に挿入され、この付加材料は温度と、場合によっては昇圧した圧力との影響下で、低融点の合金成分および高融点の合金成分の拡散に寄与する。このような局所的な濃度変化によって、接合区域、および隣接する部品との当該接合区域の界面において、高い温度安定性を有する高融点の金属間化合物が生成される。このようにして生じた結合部は、非常に高い導電性および熱伝導性と、高い機械的強度とを有する。
【0019】
さらに有利には、達成すべき配置構成に位置決めする前に、基板および/またはデバイスおよび/または蓋部のコンタクトパターン部および/または部品に、付加材料を被着することもできる。既に述べたように、この付加材料は接合を、たとえば焼結または拡散はんだを容易化できるものである。しかし、焼結プロセスまたは拡散プロセスを担当する結合成分は、形成すべき結合部に対応したコンタクト面中に含有させることもできる。もっとも、古典的なはんだの場合には、付加材料として常にはんだ材料を用いる必要がある。
【0020】
本発明の他の一実施形態では、蓋部は外部において、基板に対して平行に延在する平坦な面を有する。これは、実装方法のフローに大きな利点を奏するものであり、これにより実装方法のフローが簡素化する。つまり、平坦な面によって、実装すべきモジュールに圧力をかけるための接合工具の接触を簡単に行うことができる。その他、かかる工具により、当該工具を加熱する場合、必要なプロセス熱を入熱させることも可能となる。また、蓋部の特に総面積寸法にわたって延在する平坦な面を使用できる場合も、接合すべき部品への、とりわけ蓋部へのプロセス熱の移動を改善することができる。また、接合工具の幾何学的条件を蓋部に合わせて調整する必要がないという他の利点も得られる。接合工具には標準的に、圧力印加のための平坦な面を設けることができる。その際には基本的に、使用事例がそれぞれ異なる複数の蓋部を、すなわち、サイズまたは内側面のパターニングがそれぞれ異なる複数の蓋部を、同一の接合工具により搭載することができる。
【0021】
本発明の他の一実施形態は、基板における搭載時にデバイスと係合する少なくとも1つの接合面が、内側面に設けられている、というものである。かかる実施形態により、有利には、蓋部を載置することによってデバイスの向きも、基板に対して少なくとも1つの空間的方向に一義的に定めて固定することができる。たとえば、接合面を蓋部の内側面において水平面として設けることができる。かかる接合面により、デバイスを基板の表面に対して垂直な方向に位置決めすることができる。接合面によってとりわけ、たとえば焼結処理を用いてまたは拡散はんだ結合を形成することによって電気的コンタクトを接合するために必要とされる所要圧力を形成することもできる。このような接合圧の形成は、基板上における蓋部の載置高さとの比較において接合面のオーバーサイズによって実現され、この接合面により蓋部の弾性変形が生じる。換言すると、蓋部によって基板上に形成された空洞内におけるデバイスより下方の内法高さが、搭載された状態の当該デバイスの全高より小さい、ということである。かかる構成によって接合力Pが実現され、これはたとえば、接合工具を介して伝達される。
【0022】
本発明の他の一実施形態は、蓋部が基板上に載置される前に、コンタクトパターン部のコンタクト面に付加材料を設ける、というものである。この付加材料は、接合結合部の高信頼性の形成を保証するものでなければならない。たとえば、拡散はんだを行う場合、この付加材料は拡散はんだから成ることができる。また、焼結結合部を作製する場合には、焼結材料を用いることも可能である。はんだ材料を用いる他の手段、とりわけ高温はんだを用いる手段もある。焼結材料、拡散はんだまたは高温はんだを用いることは、モジュールにパワーエレクトロニクスデバイスを装備する場合に特に有利である。これは、動作時に比較的大きく加熱するものなので、熱負荷には、形成された電気的コンタクトも耐える必要がある。コンタクトパターン部に付加材料を設けることができ、このことはさらに、デバイス自体には付加材料を設けなくてもよいという利点を奏する。その必要な付加材料は、基板とコンタクトパターン部とに被着することができる。その際には有利には、2つの部品すなわち基板と蓋部とに付加材料を設けるだけで十分である。上記2つの部品に付加材料を設ける代わりに複数のデバイスに付加材料を設けなければならない場合よりも、2つの部品に付加材料を設ける方が取扱いが簡単である。
【0023】
上記課題はさらに、冒頭に述べた蓋部であって、当該蓋部の内側面に、支持面から空洞内まで繋がっているコンタクトパターン部が設けられている蓋部によっても解決される。かかる蓋部は、冒頭にて既に詳細に説明したように、本願にて記載されている方法により基板上に搭載されるのに適したものである。本発明では、モジュールの複数の異なる接合レベルにあるコンタクト面の接続は、蓋部の内側面に組み込まれたコンタクトパターン部が、基板の高さ(第1の接合レベル)に位置する支持面から、それより高い位置にコンタクト面(第2の接合レベル)が位置するデバイスの上面まで延在することにより、実現することができる。したがって、本発明の蓋部を使用することにより、電気的デバイスを基板上に搭載する方法が簡略になるという利点が得られる。
【0024】
蓋部は有利には、LTCC部品またはMID部品とすることができる。LTCC部品は、いわゆるLTCC技術で作製された部品である。この略称は、「低温同時焼成セラミック」法、すなわち、低温で作製されるセラミックであって、電気回路またはコンタクトパターン部を成し得る導体路も埋め込んで焼成したものを意味する。かかる部品の作製は自明のものであり、たとえば、Boleslav Psota et al.,「Usage of LTCC Technology in Electronic Packaging,36
th Int. Spring Seminar on Electronics Technology, IEEE 2013」第206頁以降に記載されている。
【0025】
蓋部をMID部品とする場合、このことは、いわゆるMID技術を用いることを意味する。この略称は、いわゆる「成形回路部品(Molded Interconnect Devices)」を作製する手法を意味する。かかる手法では、コンタクトパターン部をたとえば部品内に埋め込んで成形する。この技術も周知であり、たとえばN. Bachnak,「3D-MID Technology MEMS Connectivity at System Level」IEEE 2012、第572頁行以降に記載されている。
【0026】
特に有利なのは、蓋部においてコンタクトパターン部のコンタクト面に付加材料が被着されていることである。これは既に述べたように、高温はんだ、拡散はんだまたは焼結材料とすることができる。このようにして、蓋部がモジュール上に実装された後は、この付加材料は接合結合部を形成するために用いられる。接合は、上記にて既に述べた手法で行うことができる。
【0027】
また、支持面が蓋部の縁部によって形成されることも有利である。その際には、蓋部はその縁部で基板上に載置される。縁部が環状である場合には、蓋部を基板上に載置すると閉じられた空洞が生じ、この空洞は有利には、コンタミネーションおよび他の周囲影響からモジュールが保護されることを保証するものとなる。その他、蓋部の縁部には、コンタクト面または付加材料が設けられたコンタクト面を設けることもできる。というのもこれにより、コンタクトパターン部と基板とのコンタクトを行うことができるからである。
【0028】
また、蓋部の外側面が平坦であることも、特に有利である。外側面が平坦であることにより、実装が簡略化するという、既に述べた利点が得られる。というのも、接合工具は平坦な幾何学的形態を有し、これにより簡単な幾何学的形態を有することができ、また、(外側面が平坦な)種々の幾何学的形態の蓋部に接合工具を用いることもできるからである。もちろん、蓋部の外側面が支持面に対して平行であると有利である。というのも基板は、水平方向の位置決めで取り付けられる場合、接合工具を水平方向に接しても取り付けることが可能だからである。
【0029】
電気的デバイスの材料としては、シリコン、シリコンカーバイド、ヒ化ガリウムまたは窒化ガリウムを使用することができる。これらの材料は有利には、パワーエレクトロニクスデバイスに使用される。基板はたとえば、セラミックから作製することができる。セラミックには、銅、銀または金をコーティングすることができ、このコーティングは、電気的コンタクト面および導体路を形成するためにパターニングすることができる。付加材料としては、接合法に応じて、たとえばアンチモン含有合金または従来の高鉛含有はんだ等の高温はんだ、材料系Sn‐Cu,Sn‐Cu‐Ni,Sn‐Cu‐Agの拡散はんだ、および、有利には銀含有の焼結ペーストまたは焼結フィルムを使用することができる。以下、付加材料の例を例示列挙する。
【0030】
焼結結合部:
温度範囲が200〜280℃である銀焼結ペースト(たとえば、ヘレウス社のマイクロボンドASPシリーズ(Microbond ASP)のmAgicペースト)
拡散はんだ結合部:
SnCu,SnAg,SnNi材料系、および、高融点の金属間化合物を形成できる他の材料系。この場合、たとえば以下のような種々の配合を使用することができる:
・低融点の合金(たとえばSnCu)から成る母材マトリクス中に高融点の粒子(たとえばCu)を拡散したものを含む1ペースト系、
・順次塗布法(高融点のCuの後に、SnCu合金)による2ペースト系、または、
・低融点の付加材料(たとえばSnCu合金)を高融点の界面(たとえばCu)間に被着し、プロセス条件下で拡散の濃度変化により高融点の接合区域を生成する手法。
【0031】
以下、図面を参照して本発明の詳細な個別的事項を説明する。図面中の同一のまたは対応する要素には、それぞれ同一の符号を付しており、これらについては、各図面の相違点がどのようになっているかについてのみ重複して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例の蓋部の概略的な断面図であり、なおかつ、本発明の一実施例の方法の第1のステップに関する図でもある。
【
図2】本発明の上述の実施例の方法の後続のステップを、一部断面図で示す側面図である。
【
図3】本発明の上述の実施例の方法の後続のステップを、一部断面図で示す側面図である。
【0033】
図1には蓋部11を示しており、この蓋部11は
図3では、電気的デバイス12が搭載された基板13上に載置できるものである。蓋部11は、MID部品を作製するために用いられたプラスチック材料から成る。蓋部には内側面18が設けられており、この内側面18にはコンタクトパターン部16がMID技術を用いて埋め込み成形または他の態様で形成されている。これにより、コンタクトパターン部16の上面全体が、蓋部11の内側面18において露出した状態で、コンタクトパターン部16は蓋部の材料に組み込まれている。コンタクトのためのコンタクト面を成すコンタクトパターン部の端部に、拡散はんだの形態の付加材料17が設けられている。蓋部は内側面18の他に外側面19も有しており、外側面19は、平坦な加圧面を有する接合工具20aを蓋部の当該外側面19に接触できるように(
図3参照)、平坦に形成されている。ここで接合面15が使用され、これは
図3に示されているように、搭載すべきデバイス12の上面27に載置される。
【0034】
さらに、蓋部の内側面18に支持面21が形成されており、この支持面21は
図1の断面図では、蓋部の外縁部に設けられた付加材料17によって実現される。付加材料が設けられていない場合には、この支持面21は蓋部11の材料によって形成することもできる(図示されていない)。支持面は、後続のステップにおいて基板上に直接載置できるようにするためのものである。これにより、蓋部の内側は周辺から封止することができ、内側には空洞22が得られる(
図3参照)。
【0035】
図2には基板13を示しており、この基板13は搭載面23と裏面24とを有する。これは、詳細には示されていないDCBセラミック基板であり、その銅層は詳細には示していない。搭載面23および裏面24には、付加材料17を有する別の領域が設けられており、この別の領域には後で、複数の接合相手が搭載される(
図3参照)。搭載面23上の図示されていない銅層は、搭載されるデバイス12のコンタクトを適切に行えるように、適切にパターニングされている。
【0036】
図3には、実装される電気的モジュールがどのような構成になっているかを示している。同図では、基板13の搭載面23上において付加材料の領域(
図2参照)に、デバイス12がその下面26で基板13の搭載面23に載置されていることが分かる。デバイス12はその上面27に、詳細には図示されていない電気的コンタクトを備えている。基板13とデバイス12とから上述のように構成されたモジュール上に、
図1に示された蓋部11を載置する。その際には、コンタクトパターン部16の端部と付加材料(
図1参照)とが、デバイス12の上面27と基板13の搭載面23とに載ることとなる。その際には、コンタクトパターン部16の端部がそれぞれ異なるレベルに位置するように留意すべきである。かかるレベルは
図3では、基板13の搭載面23によって定まる第1の接合レベル28、および、デバイス12の上面27によって定まる第2の接合レベル29として示されている。第3の接合レベル30は、基板13の下面24によって成される。この第3の接合レベル30は、放熱器として構成されたベース板31を固定するためのものであり、このベース板31は部品として、付加材料(
図2参照)を介して基板13の下面24に熱伝導結合されている。ベース板31内には、冷却のためにたとえば冷却路32を設けることができる。
図3のモジュールは事前搭載されたものである。具体的には、個々の構成要素(ベース板31、基板13、デバイス12、コンタクトパターン部16)が相互に、達成すべき配置構成で位置決めされた状態になっている、ということである。付加材料17により、かかる配置構成は後続の製造工程におけるハンドリングのために、既に十分な安定性を有している。こうするためにはさらに、詳細に図示されていない接合補助手段を設けることができる。この接合補助手段はたとえば、外部工具、たとえばクランプ等から成るものとすることができる。また、各部品内に接合補助手段を、たとえばクリップ結合部を組み込むことも可能である(図示されていない)。かかる接合補助手段を用いたモジュールの各構成要素の保持は、モジュールの最終的な実装までの単なる一時的なものである。
【0037】
最終的な実装も、
図3に示されている。モジュールを適切な工具内に挟む。この工具は接合工具20a,20bから構成され、両接合工具20a,20bを上方と下方とから、完成すべきモジュール25に接近させる。接合工具は載置面34を有し、この載置面34により、接合すべき部品に加圧力Pをかけることができる。この載置面34は有利には平坦に形成されている。このことは、ベース板31および蓋部11の双方が適切に、接合工具20a,20bに対応する平坦な載置面を提供することにより達成される。よって、接合工具を温度Tにするための、詳細に図示されていないヒータが、載置面34全体を介してモジュール25に熱を伝えることができる。接合工具における熱はたとえば、図示されていない電気抵抗ヒータを用いて発生させることができる。所要の加圧力Pと相俟って、付加材料(
図1参照)が
図3の接合結合部35に変換され、これによりモジュールが安定的に実装される。